特許第6185813号(P6185813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185813イメージセンサ用ウエハ積層体の分断方法並びに分断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185813
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】イメージセンサ用ウエハ積層体の分断方法並びに分断装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170814BHJP
   C03B 33/033 20060101ALI20170814BHJP
   C03B 33/027 20060101ALI20170814BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01L21/78 V
   C03B33/033
   C03B33/027
   B28D5/00 A
   H01L21/78 T
   H01L21/78 G
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-203711(P2013-203711)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-70135(P2015-70135A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】上村 剛博
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−140916(JP,A)
【文献】 特開2013−122984(JP,A)
【文献】 特開2005−001264(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/006391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B28D 5/00
C03B 33/027
C03B 33/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスウエハと、複数のフォトダイオード形成領域が縦横にパターン形成されたシリコンウエハとが、前記各フォトダイオード形成領域を囲むように配置された樹脂層を介して貼り合わされた構造を有するイメージセンサ用のウエハ積層体の分断方法であって、
円周稜線に沿って所定の刃先角度を有する刃先が形成されたガラス用スクライビングホイールを、前記ガラスウエハの外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら転動させることによって、ガラスウエハの外表面にスクライブラインを形成するガラススクライブ工程、及び、
先端にダイヤモンドによる突状の刃先を有するダイヤモンドポイントカッタ、又は、前記ガラス用スクライビングホイールよりも円周稜線に沿った刃先角度が小さい刃先が形成されたシリコン用スクラビングホイールを、前記シリコンウエハの外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら移動又は転動させることによって、シリコンウエハの外表面にスクライブラインを形成するシリコンスクライブ工程を有し、
ガラススクライブ工程及びシリコンスクライブ工程に次いで、前記シリコンウエハの外表面側、又は、ガラスウエハの外表面側から前記スクライブラインに沿って押圧部材を押しつけることにより、前記ウエハ積層体を撓ませてガラスウエハ並びにシリコンウエハを、それぞれのスクライブラインに沿って分断する分断工程を有するようにしたイメージセンサ用のウエハ積層体の分断方法。
【請求項2】
前記ウエハ積層体は、TSVが形成されているCMOSイメージセンサ用であることを特徴とする請求項1に記載のイメージセンサ用のウエハ積層体の分断方法。
【請求項3】
ガラスウエハと、複数のフォトダイオード形成領域が縦横にパターン形成されたシリコンウエハとが、前記各フォトダイオード形成領域を囲むように配置された樹脂層を介して貼り合わされた構造を有するイメージセンサ用のウエハ積層体の分断装置であって、
リング体からなり円周稜線に沿って所定の刃先角度を有し、前記ガラスウエハの外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら転動することによって、前記ガラスウエハの外表面にスクライブラインを形成するガラス用スクライビングホイールと、
先端部にダイヤモンドによる突状の刃先が形成され、前記シリコンウエハの外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら移動することによって、シリコンウエハの外表面にスクライブラインを形成するダイヤモンドポイントカッタ、又は、前記ガラス用スクライビングホイールよりも円周稜線に沿った刃先角度が小さく、前記シリコンウエハの外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら転動することによって、シリコンウエハの外表面にスクライブラインを形成するシリコン用スクラビングホイールとのいずれかと、
前記シリコンウエハの外表面側又は前記ガラスウエハの外表面側から前記スクライブラインに沿って押圧することにより、前記ウエハ積層体を撓ませて、ガラスウエハ並びにシリコンウエハを前記それぞれのスクライブラインに沿って分断する押圧部材とを備えたことを特徴とするイメージセンサ用のウエハ積層体の分断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMOSイメージセンサのウエハレベルパッケージがパターン形成されたウエハ積層体を個片化するための分断方法並びにその分断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低電力、高機能、高集積化が重要視されるモバイルフォン、デジタルカメラ、光マウス等の各種小型電子機器分野において、CMOSイメージセンサの使用が急増している。
【0003】
図8は、CMOSイメージセンサのウエハレベルパッケージ(チップサイズの単位製品)W1の構成例を概略的に示す断面図である。ウエハレベルパッケージW1は、(個片化された)ガラスウエハ1と(個片化された)シリコンウエハ2とが樹脂隔壁4を挟んで接合された積層構造を有している。
シリコンウエハ2の上面(接合面側)にはフォトダイオード領域(センシング領域)3が形成され、その周囲を樹脂隔壁4が格子状に取り囲むように配置することで、フォトダイオード領域3が設けられた内側空間が気密状態になるようにしてある。さらに、(フォトダイオード領域3の外側の)シリコンウエハ2の上面には金属パッド5が形成され、この金属パッド5が形成された部分の直下にはシリコンウエハ2を上下に貫通するビア(貫通孔)6が形成されている。ビア6には電気的導電性に優れた導電材7が充填され、ビア6下端にははんだバンプ8が形成されている。このように、ビア6を形成するとともに導電材7を充填して電気的接続を行う構成をTSV(Through Silicon Via)という。
なお、上記したはんだバンプ8の下面に、所定の電気回路がパターニングされたPCB基板など(図示略)が接合される。
【0004】
チップサイズの単位製品であるウエハレベルパッケージW1は、図8図10に示すように、母体となる大面積のガラスウエハ1と大面積のシリコンウエハ2とが樹脂隔壁4を介して接合されたウエハ積層体Wの上に、X−Y方向に延びる分断予定ラインLで格子状に区分けされて多数個がパターン形成されており、このウエハ積層体Wが当該分断予定ラインLに沿って分断されることにより、(個片化された)チップサイズのウエハレベルパッケージW1となる。
【0005】
ところで、シリコンウエハを分断してウエハレベルパッケージの製品にする加工では、CMOSイメージセンサ用を含め、従来から、特許文献1〜特許文献4に示すようなダイシングソーが用いられている。ダイシングソーは、高速回転する回転ブレードを備え、回転ブレードの冷却と切削時に発生する切削屑を洗浄する切削液を回転ブレードに噴射しながら切削するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−090403号公報
【特許文献2】特開平6−244279号公報
【特許文献3】特開2002−224929号公報
【特許文献4】特開2003−051464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したダイシングソーは、回転ブレードを用いた切削による分断であるため、切削屑が多量に発生し、たとえ切削液で洗浄したとしても、切削液の一部が残留したり、或いは切削時の飛散により切削屑がパッケージ表面に付着することがあって、品質や歩留まりの低下の大きな原因となる。また、切削液の供給や廃液回収のための機構や配管を必要とするため装置が大掛かりとなる。加えて、切削によってガラスウエハを分断するものであるから、切削面に小さなチッピング(欠け)が発生することが多く、きれいな分断面を得ることができない。また、高速回転する回転ブレードの刃先はノコ歯状もしくは連続した凹凸状で形成されているため、刃先の摩耗や破損が生じやすく使用寿命が短い。さらに、回転ブレードの厚みは強度の面からあまり薄くすることができず、小径のものであっても60μm以上の厚みで形成されているので、切削幅がそれだけ必要となって材料の有効利用が制限される要因の一つにもなるなどの問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、上記した従来課題の解決を図り、ダイシングソーを用いることなく、ドライ方式の簡単な手法で効果的に、かつ、きれいに分断することができるイメージセンサウエハ・パッケージの分断方法並びにその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。すなわち本発明の分断方法は、ガラスウエハと、複数のフォトダイオード形成領域が縦横にパターン形成されたシリコンウエハとが、前記各フォトダイオード形成領域を囲むように配置された樹脂層を介して貼り合わされた構造を有するイメージセンサ用のウエハ積層体の分断方法であって、円周稜線に沿って所定の刃先角度を有する刃先が形成されたガラス用スクライビングホイールを、前記ガラスウエハの外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら転動させることによって、ガラスウエハの外表面にスクライブラインを形成するガラススクライブ工程、及び、先端にダイヤモンドによる突状の刃先を有するダイヤモンドポイントカッタ、又は、前記ガラス用スクライビングホイールよりも円周稜線に沿った刃先角度が小さい刃先が形成されたシリコン用スクラビングホイールを、前記シリコンウエハの外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら移動又は転動させることによって、シリコンウエハの外表面にスクライブラインを形成するシリコンスクライブ工程を有し、前記ガラススクライブ工程及びシリコンスクライブ工程に次いで、前記シリコンウエハの外表面側、又は、ガラスウエハの外表面側から前記スクライブラインに沿って押圧部材を押しつけることにより、前記ウエハ積層体を撓ませてガラスウエハ並びにシリコンウエハを、それぞれのスクライブラインに沿って分断する分断工程を有するようにした。
ここで、押圧部材は、シリコンウエハの外表面側から押しつけてもよく、ガラスウエハの外表面側から押しつけてもよいが、一般にガラスウエハの方が分断されにくい傾向があるため、シリコンウエハの外表面側から押しつけることが好ましい。
また、ガラススクライブ工程とシリコンスクライブ工程とはどちらを先に実行してもよく、ガラスウエハの外表面とシリコンウエハの外表面とを同時にスクライブしてもよいが、特に分断工程においてシリコンウエハの外表面に押圧部材を押しつける場合には、ウエハ積層体の反転等の点より、ガラススクライブ工程を先に実行することが好ましい。
【0010】
また、別の観点からなされた本発明の分断装置は、ガラスウエハと、複数のフォトダイオード形成領域が縦横にパターン形成されたシリコンウエハとが、前記各フォトダイオード形成領域を囲むように配置された樹脂層を介して貼り合わされた構造を有するイメージセンサ用のウエハ積層体の分断装置であって、リング体からなり円周稜線に沿って所定の刃先角度を有し、前記ガラスウエハの外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら転動することによって、前記ガラスウエハの外表面にスクライブラインを形成するガラス用スクライビングホイールと、先端部にダイヤモンドによる突状の刃先が形成され、前記シリコンウエハの外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら移動することによって、シリコンウエハの外表面にスクライブラインを形成するダイヤモンドポイントカッタ、又は、前記ガラス用スクライビングホイールよりも円周稜線に沿った刃先角度が小さく、前記シリコンウエハの外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら転動することによって、シリコンウエハの外表面にスクライブラインを形成するシリコン用スクラビングホイールとのいずれかと、前記シリコンウエハの外表面側又は前記ガラスウエハの外表面側から前記スクライブラインに沿って押圧することにより、前記ウエハ積層体を撓ませて、前記ガラスウエハ並びにシリコンウエハを前記それぞれのスクライブラインに沿って分断する押圧部材とを備えるようにしている。
本発明において、前記ガラス用スクライビングホイールは、円周稜線に沿って溝又は切欠きが形成され、残存した稜線(突起)が刃先となるスクライビングホイールであって、ガラスウエハへのカカリ及び/又はスクライブラインに沿って形成される垂直クラックのガラスウエハの厚み方向への伸展(浸透性)が良好なスクライビングホイールとしてもよく、また、円周稜線に沿って溝及び切欠きが形成されていない通常のスクライビングホイールであってもよい。前記ガラス用スクライビングホイールは、円周稜線に対して垂直方向の断面における刃先先端の角度(刃先角度)が、例えば、95度〜155度であることが好ましい。
一方、前記シリコン用スクライビングホイールは、円周稜線に沿って溝及び切欠きが形成されていない通常のスクライビングホイールであり、刃先角度が、ガラス用スクライビングホイールの刃先角度よりも小さいスクライビングホイール(例えば、刃先角度:85度〜135度)であることが好ましい。
なお、上述したガラス用スクライビングホイールとシリコン用スクライビングホイールの好ましい範囲は一部重複しているが(95度〜135度)、たとえ、この数値範囲のホイールを使用する場合であっても、シリコン用スクライビングホイールの刃先角度が、ガラス用スクライビングホイールの刃先角度よりも相対的に小さくなるように組み合わせたホイールの対を使用することが必要である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、押圧部材の押しつけによって、ガラスウエハ並びにシリコンウエハのそれぞれに形成したスクライブラインに沿って分断されるものであるから、従来のダイシングソーの切削による場合のような大きな切削幅を必要とせず、材料を有効利用することができる。また、切削による場合のようなチッピングや切屑などの発生を抑制することができ、きれいな切断面で歩留まりよく分断することができる。特に、シリコンウエハのスクライブにダイヤモンドポイントカッタを使用する場合には、ダイヤモンドポイントカッタが固定刃であることとあいまって、シリコンウエハに低荷重でスクライブラインを形成することができるので、シリコンウエハの切断端面にチッピング等の不要な疵が形成されにくいという利点もある。また、シリコンウエハのスクライブにシリコン用スクライビングホイールを使用する場合には、刃先角度がガラス用スクライビングホイールの刃先角度よりも小さいシリコン用スクライビングホイールを使用することによって、相対的に低荷重でスクライブラインを形成することができるので、シリコンウエハの切断端面におけるチッピング等の不要な疵の発生を抑制することができる。
【0012】
特に本発明では、従来のダイシングソーのような切削液を使用せず、ドライ環境下で分断するものであるから、切削液の供給や廃液回収のための機構や配管を省略でき、かつ、切断後の洗浄や乾燥工程も省略できて装置をコンパクトに構成することができる。また、円周稜線に沿って刃先を有するリング体で形成されたスクライビングホイールや、刃体の先端部にダイヤモンドによる刃先を備えたダイヤモンドポイントカッタは、歯こぼれ等が生じやすい従来の回転ブレードに比べて使用寿命が長いので、ランニングコストを抑えることができるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の分断方法の第一段階を示す図。
図2】本発明の分断方法の第二段階を示す図。
図3】本発明の分断方法の第三段階を示す図。
図4図3の別実施例を示す図。
図5】本発明に用いるスクライビングホイールとそのホルダ部分を示す図。
図6】本発明に用いるダイヤモンドポイントカッタとそのホルダ部分を示す図。
図7】本発明に用いられるスクライブ機構の概略的な正面図。
図8】CMOSイメージセンサ用のウエハレベルパッケージの一例を示す断面図。
図9】母材となるCMOSイメージセンサ用ウエハ積層体の一部を示す断面図。
図10図8のCMOSイメージセンサ用ウエハ積層体を示す概略的な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るイメージセンサ用のウエハ積層体の分断方法の詳細を、図面に基づいて説明する。
図1は本発明の分断方法の第一段階である、加工対象となるCMOSイメージセンサ用のウエハ積層体Wの一部断面を示すものである。ウエハ積層体Wの構造は、上述した図8図10に示したものと基本的に同じ構造である。
すなわち、母体となる大面積(例えば直径8インチ)のガラスウエハ1と、その下面側に配置されるシリコンウエハ2とが格子状の樹脂隔壁4を介して接合される。
シリコンウエハ2の上面(接合面側)にはフォトダイオード形成領域(センシング領域)3が設けられている。フォトダイオード領域3にはフォトダイオードアレイが形成されており、イメージセンサの受光面として機能する。そして、フォトダイオード領域3近傍には、金属パッド5が形成され、この金属パッド5が形成された部分の直下にはシリコンウエハ2を上下に貫通するビア(貫通孔)6が形成されている。ビア6には電気的導電性に優れた導電材7が充填され(TSV)、ビア6下端にははんだバンプ8が形成されている。なお、上記したはんだバンプ8の下面に、所定の電気回路がパターニングされたPCB基板など(図示略)が接合される。
このCMOSイメージセンサ用ウエハ積層体Wは、図10に示したようにX−Y方向に延びる格子状の分断予定ラインLに沿って分断されることにより個片化され、チップサイズの単位製品であるウエハレベルパッケージW1が取り出されることになる。
【0015】
次に分断加工手順について説明する。ウエハ積層体Wを図10の分断予定ラインLに沿って分断する際に、最初に、図5に示すようなスクライビングホイール10を用いてガラスウエハ1の表面にスクライブラインS1を加工する。
スクライビングホイール10は、超硬合金や焼結ダイヤモンドなどの工具特性に優れた材料で形成されており、円周稜線(外周面)に刃先10aが形成されている。具体的には直径が1〜6mm、好ましくは1.5〜4mmで刃先角度が85〜150度、好ましくは105〜140度のものを使用するのが好ましいが、加工されるガラスウエハ1の厚みや種類に応じて適宜選択される。
このスクライビングホイール10はガラス用であり、ホルダ11に回転可能に支持され、昇降機構12を介してスクライブ機構Aのスクライブヘッド24(図7参照)に取り付けられている。
【0016】
スクライブ機構Aは、ウエハ積層体Wを載置して保持するテーブル15を備えている。テーブル15は、水平なレール17に沿ってY方向(図7の前後方向)に移動できるようになっており、モータ(図示略)によって回転するネジ軸18により駆動される。さらにテーブル15は、モータを内蔵する回転駆動部19により水平面内で回動できるようになっている。
【0017】
テーブル15を挟んで設けてある両側の支持柱20、20と、X方向に水平に延びるビーム(横桟)21とを備えたブリッジ22が、テーブル15上を跨ぐようにして設けられている。ビーム21には、X方向に水平に延びるガイド23が設けられ、このガイド23に上記したスクライブヘッド24が、モータMによってビーム21に沿ってX方向に移動できるように取り付けられている。また、スクライブヘッド24には、スクライビングホイール10とともに後述するダイヤモンドポイントカッタ25も取り付けられている。
【0018】
上記したスクライブ機構Aのテーブル15上に、図1に示すように、ガラスウエハ1を上向きにした状態でウエハ積層体Wを載置し、スクライビングホイール10をガラスウエハ1の外表面で分断予定ラインに沿って押圧しながら転動させることにより、ガラスウエハ1にスクライブラインS1を形成する。なお、スクライブラインS1はウエハレベルパッケージW1の樹脂隔壁4の外側に形成される。
【0019】
次いで第二段階として、図2に示すようにウエハ積層体Wを反転し、ダイヤモンドポイントカッタ25を、シリコンウエハ2の外表面の分断予定ラインに沿って押圧しながら移動させることによって、シリコンウエハ2の外表面にスクライブラインS2を形成する。
ダイヤモンドポイントカッタ25は、図6に示すように、刃体25aの先端下面にダイヤモンドによる突状の刃先25bを備えており、ホルダ26に取り付けられている。ホルダ26は、スクライビングホイール10と同様に、昇降機構27を介して上記したスクライブ機構Aのスクライブヘッド24に保持され、分断予定ラインの方向に沿って移動できるように形成されている。
【0020】
続いて第三段階として、図3に示すように、下側になっているガラスウエハ1の外表面で、スクライブラインS1を挟むようにその両脇に沿って延びる左右一対の受台13、13を配置し、上側になっているシリコンウエハ2の外表面からスクライブラインS2に向けて押圧部材14を押しつける。本実施例では、この押圧部材14として長尺で板状のブレイクバーを用いたが、これに換えて押しつけながら転動するローラで形成することもできる。押圧部材14としてのブレイクバーは、流体シリンダなどの昇降機構(図示略)を介して上下に昇降できるように形成されている。
【0021】
この押圧部材14を押しつけることにより、ガラスウエハ1並びにシリコンウエハ2が押圧方向とは反対側に撓んで、ガラスウエハ1のスクライブラインS1並びにシリコンウエハ2のスクライブラインS2に沿って亀裂が厚み方向に浸透して分断され、これにより個片化されたウエハレベルパッケージW1が分断予定ラインに沿って完全分断される。
この撓みによる分断において、ガラスウエハ1もシリコンウエハ2もそれぞれのスクライブラインS1、S2から亀裂が厚み方向に浸透して分断されるものであるから、従来のダイシングソーによる切削加工の場合のような切削幅を必要とせず、材料を有効利用することができるとともに、切削による場合のようなチッピングや切屑などの発生を抑制することができて、きれいな切断面で歩留まりよく分断することができる。
【0022】
また、本発明では従来のダイシングソーのように切削液を使用せず、ドライ環境下で分断するものであるから、切削液の供給や廃液回収のための機構や配管を省略でき、かつ、切断後の洗浄や乾燥工程も省略できて、装置をコンパクトに構成することができる。さらに、本発明で用いた円周稜線に沿って刃先10aを有するリング体で形成されたスクライビングホイール10や、刃体25aの先端部にダイヤモンドによる刃先25bを備えたダイヤモンドポイントカッタ25は、歯こぼれなどが生じやすい従来の回転ブレードに比べて使用寿命が長いので、ランニングコストを安く抑えることができる。
【0023】
本発明において、押圧部材14によるブレイク加工時に、ガラスウエハ1を受ける左右一対の受台13、13に換えて、図4に示すように、ガラスウエハ1が撓む程度に凹ませることが可能な厚みを有するクッション材16を、ガラスウエハ1のスクライブラインS1形成面に接して配置するようにしてもよい。
【0024】
以上本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施形態に特定されるものではない。例えば上記実施例では、スクライビングホイール10とダイヤモンドポイントカッタ25とを共通のスクライブヘッド24に保持させたが、それぞれを別のスクライブヘッドに保持するように構成してもよい。
また、ダイヤモンドポイントカッタ25に換えて、ガラス用スクライビングホイール10よりも刃先角度が小さいシリコン用スクライビングホイールを使用してもよい。
その他本発明ではその目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の分断方法は、ガラスウエハとシリコンウエハを貼り合わせたウエハ積層体の分断に利用できる。
【符号の説明】
【0026】
A スクライブ機構
S1 ガラスウエハのスクライブライン
S2 シリコンウエハのスクライブライン
W ウエハ積層体
W1 ウエハレベルパッケージ
1 ガラスウエハ
2 シリコンウエハ
10 スクライビングホイール
10a 刃先
14 押圧部材
15 テーブル
25 ダイヤモンドポイントカッタ
25a 刃体
25b 刃先
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10