特許第6185817号(P6185817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185817配水管用青色着色樹脂組成物および配水管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185817
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】配水管用青色着色樹脂組成物および配水管
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20170814BHJP
   C08K 5/3467 20060101ALI20170814BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20170814BHJP
   C08K 5/3447 20060101ALI20170814BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C08L23/04
   C08K5/3467
   C08K3/22
   C08K5/3447
   F16L11/12 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-214644(P2013-214644)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2015-78258(P2015-78258A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修平
(72)【発明者】
【氏名】小沼 邦浩
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】平本 知己
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4781594(JP,B2)
【文献】 特開平11−147976(JP,A)
【文献】 特開2004−315715(JP,A)
【文献】 特開2004−256564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
C08K 3/00−5/59
F16L 11/00−11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.946〜0.969g/cmであり、温度190℃、荷重2.16kgで測定したMFR(メルトフローレート)が0.01〜5g/10分であるポリエチレン樹脂と、
前記ポリエチレン樹脂100質量部当たり、フタロシアニンブルー顔料0.0005〜0.07質量部、ベンズイミダゾロン顔料0.0001〜0.03質量部、および二酸化チタン顔料0.001〜0.2質量部とを含む配水管用青色着色樹脂組成物。
【請求項2】
230℃の加熱温度および20kg/cmの圧力で2分間予熱し、230℃の加熱温度および200kg/cmの圧力で2分間加圧し、20℃の冷却温度で10分間冷却することにより作製された前記組成物の20mm×60mm×4mmの大きさの試験片の色調が、マンセル標準色表の値で、色相10B〜10PB、明度2〜6および彩度4〜14の色立体範囲に入る請求項1に記載の配水管用青色着色樹脂組成物。
【請求項3】
230℃の加熱温度および20kg/cmの圧力で2分間予熱し、230℃の加熱温度および200kg/cmの圧力で2分間加圧し、20℃の冷却温度で10分間冷却することにより作製された前記組成物の20mm×60mm×4mmの大きさの試験片において、JWWAK144:2009(水道管ポリエチレン管)に準拠した塩素水試験を168時間実施した後の前記試験片の色調が、マンセル標準色表の値で、色相10B〜10PB、明度2〜6および彩度4〜14の色立体範囲に入る請求項1または2に記載の配水管用青色着色樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の配水管用青色着色樹脂組成物からなる配水管。
【請求項5】
前記配水管が単層管である、請求項に記載の配水管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐塩素水性に優れた配水管用青色着色樹脂組成物に関する。詳しくは、コバルト顔料を含有せず、そして、塩素を含有する水道水などの水に長期間接触しても、水中の塩素による劣化が少なく、かつ色調バランスが維持される配水管用青色樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日本における上水道配水管は、鋼管、ダグタイル鋳鉄管および塩化ビニル管などの材料で構成されていた。しかしながら、1995年1月に発生した阪神淡路大震災では、このような材料で構成された配水管にはヒビ割れおよび亀裂などが生じ、それらの配水管は耐震性が低いことが確認された。一方、ガス管および水道管などの配管として使用されているポリエチレン管の場合、阪神淡路大震災においても、ヒビ割れ、亀裂などの配管の被害が殆どなく、ポリエチレン管は耐震性に優れていることが判明した。2011年3月に発生した東日本大震災においても、ポリエチレン管は、津波以外では殆ど被害を受けなかったことが報告されており、耐震性が優れている配管としてのポリエチレン管の期待はさらに高まっている。
【0003】
地中埋設配水管は、水をイメージする青色顔料で着色されることにより、他の配管と色で区別される。また、屋外で使用する配水管は、配水管の耐候性保持のためカーボンブラックで着色される。配水管をこのように着色するために、配水管の材料である樹脂に顔料が添加される。上水道配水管に用いられる一層管では、配水管の樹脂に添加した顔料が水に溶け出し、水に含まれる塩素と反応して、樹脂の劣化を促進させる。これにより、塩素含有水が接触する配水管の内面には点状突起または小径膨れ(以下膨れという)が発生する。時には、膨れの一部が剥離し、その剥離片の一部が水中に混入するという問題が生じる。このため、飲食に使用される上水が流通する上水道配水管には、膨れの発生に対して、すなわち耐塩素水性に対して、JWWAK144:2009(水道管ポリエチレン管)に規定されるような厳しい性能が要求されている。
【0004】
そこで、塩素含有水が接触する配水管内面を顔料無添加樹脂層で、配水管外面を顔料添加樹脂層で構成する二層管が提案されている。しかし、二層管の製造には特殊成型機が必要であること、一層管と比較し二層管の製造が難しいことなどから、耐塩素水性が優れている一層管用の着色された樹脂組成物が望まれている。
【0005】
上水道配水管用の一層管を着色する顔料は優れた耐塩素水性を有していることが必要である。耐塩素水性試験を行ったとき、樹脂中に添加した顔料が塩素と反応すると、顔料の変色や退色が生じる。とくに青色の一層管の場合、上水道配水管の水のイメージを損なわないように塩素水試験を行ったとき、一層管の変退色が少ないことが望ましい。青色着色に用いるフタロシアニンブルーを添加したポリオレフィンの一層管を使用して塩素水試験を行うと、一層管の青色が激しく退色する。このような塩素水試験後の変退色性に優れている青色顔料にはコバルトブルーが挙げられる。コバルトブルーは樹脂に対する着色力が低いため、他の顔料と比較し多量のコバルトブルーを樹脂に添加する必要はある。このように多量のコバルトブルーが添加された樹脂の一層管は、変退色性が非常に優れており、耐塩素水性も良好である。よって、コバルトブルーは、上水道配水管の用途に使用する配管の樹脂に添加する青色の顔料として最も適した顔料であると考えられていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4781594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
化学物質の環境リスクに対する関心は年々高まり、2012年9月「労働安全衛生法(以下、労安法)施行令の改正」にて、『コバルトおよびその無機化合物』に対しても健康障害防止措置に関する施行令が公布され、2013年1月から施行となった。この労安法の改正により、コバルト顔料を0.1%以上含有する製剤にはコバルト含有の表示が義務付けられたため、コバルト顔料は取扱安全性にリスクを伴うこととなった。飲食に供される水が直接接する上水管に、取扱安全性にリスクがある物質を用いるのは望ましいことではない。
【0008】
コバルトブルー以外の青色顔料に、コバルトブルーと同じ無機青顔料である群青が挙げられる。しかし、群青の退色性はコバルトよりも劣り、群青の着色力は低く、コストも高い。このため、コバルトブルーを群青に置き換えるメリットは少ない。青系有機顔料として一般的に使用されるものには、スレン系ブルーおよびシアニンブルーが挙げられる。しかし、スレン系ブルーは変色が激しく、シアニンブルーには退色の問題がある。よって、いずれの青系有機顔料の場合も変退色が起こるため、コバルトブルーを用いた場合のように、塩素水に長期間接触する前後で同様の青色の色調バランスを維持することは非常に困難である。
【0009】
本発明の目的は上記の問題を解決することである。すなわち、環境リスク低減のためにコバルト顔料を使用せず、耐塩素水性に優れ、水道水などに長期間接触しても青色の色調バランスを維持することができ、一層管でも耐塩素水性を有する配水管用の青色着色樹脂組成物、およびその青色着色樹脂組成物からなる配水管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の複数の顔料をポリエチレン樹脂に添加することにより、コバルト顔料を含まず、耐塩素水性に優れ、塩素水に長期間接触しても青色の色調バランスを維持できる配水管用青色着色樹脂組成物を得られることを見出し、本発明は完成に至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]密度が0.946〜0.969g/cmであり、温度190℃、荷重2.16kgで測定したMFR(メルトフローレート)が0.01〜5g/10分であるポリエチレン樹脂と、ポリエチレン樹脂100質量部当たり、フタロシアニンブルー顔料0.0005〜0.07質量部、ベンズイミダゾロン顔料0.0001〜0.03質量部、および二酸化チタン顔料0.001〜0.2質量部とを含む配水管用青色着色樹脂組成物
[2]230℃の加熱温度および20kg/cmの圧力で2分間予熱し、230℃の加熱温度および200kg/cmの圧力で2分間加圧し、20℃の冷却温度で10分間冷却することにより作製された組成物の20mm×60mm×4mmの大きさの試験片の色調が、マンセル標準色表の値で、色相10B〜10PB、明度2〜6および彩度4〜14の色立体範囲に入る上記[1]に記載の配水管用青色着色樹脂組成物。
]230℃の加熱温度および20kg/cmの圧力で2分間予熱し、230℃の加熱温度および200kg/cmの圧力で2分間加圧し、20℃の冷却温度で10分間冷却することにより作製された組成物の20mm×60mm×4mmの大きさの試験片において、JWWAK144:2009(水道管ポリエチレン管)に準拠した塩素水試験を168時間実施した後の試験片の色調が、マンセル標準色表の値で、色相10B〜10PB、明度2〜6および彩度4〜14の色立体範囲に入る上記[1]または[2]に記載の配水管用青色着色樹脂組成物。
]上記[1]〜[]のいずれかに記載の配水管用青色着色樹脂組成物からなる配水管。
]配水管が単層管である、上記[]に記載の配水管。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コバルト顔料を含まず、耐塩素水性に優れ、塩素水に長期間接触しても青色の色調バランスを維持できる配水管用着色樹脂組成物および配水管を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の配水管用青色着色樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂、フタロシアニンブルー顔料、ベンズイミダゾロン顔料、および二酸化チタン顔料を含む。以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
[配水管]
本明細書において、「配水管」は、配水管のみならず、配水管継手も含む。
【0014】
[青色]
本明細書において「青色」とは、人間が目視して青色に見える色であればとくに限定されないが、たとえば、可視スペクトルの波長域が約360nm以上約480nm未満である色である。
【0015】
[ポリエチレン樹脂]
本発明に使用されるポリエチレンは、押出成形および射出成形などの成形方法で成形される樹脂として使用される従来公知のポリエチレン樹脂である。ポリエチレン樹脂の密度は、好ましくは0.945〜0.970g/cm3であり、より好ましくは0.946〜0.969g/cm3、さらに好ましくは0.947〜0.968g/cm3である。ポリエチレン樹脂の密度が0.945〜0.970g/cm3であると、成形した樹脂組成物は、配水管として用いるのに十分な曲げ弾性率、剛性および耐圧性を有するようになる。ポリエチレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.001〜10g/10分であり、より好ましくは0.01〜5g/10分であり、さらに好ましくは0.02〜1.0g/10分である。ポリエチレン樹脂のMFRが0.001〜10g/10分であると、分子量が増大し流動性が低下してポリエチレン樹脂の成形性が確保できなくなることを抑制できるとともに、成形した樹脂組成物の耐衝撃性が低下したり、耐久性が低下したりすることを抑制できる。なお、ポリエチレン樹脂の密度は、JIS K6922−1,2:1997に準拠して測定されたものであり、ポリエチレン樹脂のMFRは、JIS K6922−2:1997に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgにおいて測定されたものである。
【0016】
[フタロシアニンブルー顔料]
本発明に使用されるフタロシアニンブルー顔料は、本発明の樹脂組成物を青色に着色する主顔料である。フタロシアニンブルー顔料は、たとえば、分子中に塩素を有しないか、もしくは1個の塩素を有する金属フタロシアニン顔料および/または無金属フタロシアニン顔料である。
【0017】
フタロシアニンブルー顔料の含有量は、ポリエチレン樹脂100質量部当たり、0.0005〜0.07質量部であり、好ましくは0.005〜0.05質量部である。フタロシアニンブルー顔料の含有量が、ポリエチレン樹脂100質量部当たり0.0005〜0.07質量部であると、樹脂組成異物は十分な青色を呈するようになり、塩素水に長期間接触した後も青色の色調バランスを維持できるとともに、塩素水に接触したときの樹脂組成物の膨れの発生を抑制できる。
【0018】
[ベンズイミダゾロン顔料]
本発明に使用されるベンズイミダゾロン顔料は、本発明の樹脂組成物の色に赤味を付与するための補色顔料として用いられる。ベンズイミダゾロン顔料には、たとえば、C.I.Pigment Red 185、C.I.Pigment Red 176、C.I.Pigment Red 208およびC.I.Pigment Violet 32などが挙げられる。なお、フタロシアニンとともに用いる補色顔料には、ベンズイミダゾロン顔料以外に、ジメチルキナクリドン、DPPレッドおよびポリアゾレッドなどがある。しかし、塩素水試験を行うと、ジメチルキナクリドンおよびDPPレッドでは、樹脂組成物の変色が著しく、ポリアゾレッドでは、ポリアゾレッドの堅牢性が高過ぎるため塩素水試験後の樹脂組成物の赤味が強くなる。一方、ベンズイミダゾロン顔料は塩素水試験による変色が少ない。また、ベンズイミダゾロン顔料の退色性はフタロシアニン顔料と同等である。よって、フタロシアニン顔料を青色の着色顔料として用いた場合、青色の色調バランスの観点から、赤みを付与する捕色顔料としてベンズイミダゾロン顔料を用いるのが最適である。
【0019】
ベンズイミダゾロン顔料の含有量は、ポリエチレン樹脂100質量部当たり、0.0001〜0.03質量部であり、好ましくは0.002〜0.02質量部である。ベンズイミダゾロン顔料の含有量が、ポリエチレン樹脂100質量部当たり0.0001〜0.03質量部であると、樹脂組成物に対する着色が十分になるとともに、塩素水に長期間接触した後も青色の色調バランスを維持でき、塩素水に接触したときの樹脂組成物の膨れの発生を抑制できる。
【0020】
[二酸化チタン顔料]
本発明に使用される二酸化チタン顔料は、本発明の樹脂組成物に隠蔽性を付与する。二酸化チタン顔料の含有量は、ポリエチレン樹脂100質量部当たり、0.001〜0.2質量部であり、好ましくは0.02〜0.2質量部である。二酸化チタン顔料の含有量が、ポリエチレン樹脂100質量部当たり0.001〜0.2質量部であると、十分な隠蔽性を樹脂組成物に付与できるとともに、樹脂組成物の色調が白くなることを抑制できる。
【0021】
[ポリエチレンワックス]
配水管用青色着色樹脂組成物における耐塩素水性、親和性および硬度などをさらに向上させるために、配水管用青色着色樹脂組成物にポリエチレンワックスを添加してもよい。たとえば、ポリエチレンワックスの添加量は、ポリエチレン樹脂100質量部当たり、好ましくは0.002〜0.5質量部であり、より好ましくは0.002〜0.2質量部である。
【0022】
[その他の添加成分]
本発明の配水管用青色着色樹脂組成物は、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、ポリエチレン樹脂、フタロシアニンブルー顔料、ベンズイミダゾロン顔料および二酸化チタン顔料以外の添加成分を含んでもよい。たとえば、そのような添加成分には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、抗菌剤および架橋剤などの各種添加剤、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂およびポリウレタン系樹脂などのポリエチレン樹脂以外の樹脂、タルク、クレー、シリカおよびアルミナなどの無機系充填剤、ならびに顔料を均一に分散させる目的で添加される分散剤が挙げられる。分散剤には、ポリオレフィン系樹脂微粉末、ポリオレフィン系ワックス、エチレンビスアマイド系ワックスおよび金属セッケンなどが挙げられる。本発明の配水管用青色着色樹脂組成物は、これらの添加成分を単独でもしくは2種以上の組み合わせで含んでもよい。さらに、これらの添加成分は、成形時の最終顔料配合の20もしくは30倍等に高倍率化したマスターバッチを製造した後に、ナチュラル樹脂とともに稀釈し使用してもなんら問題ない。
【0023】
[配水管用青色着色樹脂組成物]
本発明の配水管用青色着色樹脂組成物では、230℃の加熱温度および20kg/cm2の圧力で2分間予熱し、230℃の加熱温度および200kg/cm2の圧力で2分間加圧し、20℃の冷却温度で10分間冷却することにより作製された配水管用青色着色樹脂組成物の20mm×60mm×4mmの大きさの試験片の色調が、マンセル標準色表の値で、色相10B〜10PB、明度2〜6および彩度4〜14の色立体範囲に入ることが好ましい。これにより、青色の色調バランスが優れている配水管用青色着色樹脂組成物を得ることができる。
【0024】
本発明の配水管用青色着色樹脂組成物では、230℃の加熱温度および20kg/cm2の圧力で2分間予熱し、230℃の加熱温度および200kg/cm2の圧力で2分間加圧し、20℃の冷却温度で10分間冷却することにより作製された配水管用青色着色樹脂組成物の20mm×60mm×4mmの大きさの試験片の色調変化試験で、JWWAK144:2009(水道管ポリエチレン管)に準拠した塩素水試験を168時間実施した後のその試験片の色調が、マンセル標準色表の値で、色相10B〜10PB、明度2〜6および彩度4〜14の色立体範囲に入ることが好ましい。これにより、塩素水に長期間接触した後も優れた青色の色調バランスを維持できる配水管用青色着色樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
[配水管]
本発明の配水管は、本発明の配水管用青色着色樹脂組成物からなる。これにより、本発明の配水管は、コバルト顔料を含まず、耐塩素水性に優れ、塩素水に長期間接触しても青色の色調バランスを維持できる。また、本発明の配水管は、単層管の場合も、上記効果を有する。
【実施例】
【0026】
次に実施例および比較例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例及び比較例における評価方法を以下に示す。
【0027】
[塩素水試験]
実施例および比較例の試験片を用いて、JIS K 6762に準拠した下記試験条件の耐塩素水性試験を行った。
(試験条件)
・塩素水濃度 :2000±100ppm
・試験温度 :60±1℃
・塩素水pH :6.5±0.5
・試験時間 :168時間
【0028】
[色調の測定]
分光測色計(ミノルタ株式会社製、SPECTROMETER CM−3600D)を使用して、塩素水試験前および塩素水試験後の試験片のマンセル標準色表における色相、明度および彩度を測定した。なお、色調の測定において、試験片のマンセル標準色表における色相、明度および彩度が、色相10B〜10PB、明度2〜6および彩度4〜14の色立体範囲に入る場合、後述の表1および表2において、「OK」と表し、上記色立体範囲に入らない場合、「NG」と表した。
【0029】
[外観試験]
上記塩素水試験後の試験片を目視にて観察して、試験片の膨れの発生の有無を調べた。なお、後述の表1および表2において、外観試験において膨れの発生がない場合「OK」と表し、膨れの発生がある場合、「NG」と表した。
【0030】
実施例及び比較例の試験片の作製例を以下に示す。
[実施例1の試験片の作製例]
高密度ポリエチレン(密度:0.949g/cm3、MFR:0.05g/10分)100質量部、ポリエチレンワックス(密度:0.94g/cm3、分子量3000)0.0023質量部、銅フタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue 15:3)0.0005質量部、ベンズイミダゾロン(C.I.Pigment Red 185)0.0003質量部、および二酸化チタン(C.I.Pigment White 6)0.003質量部を混合して作製した混合物を二本ロールにより185℃の混練温度で2分間混練し樹脂組成物を得た。次いで、230℃の加熱温度および20kg/cm2の圧力で2分間予熱し、230℃の加熱温度および200kg/cm2の圧力で2分間加圧し、20℃の冷却温度で10分間冷却することにより、厚さ4mmのプレスシートを作製した。そして、そのプレスシートから20mm×60mm×4mmの大きさの試験片を切り出し、実施例1の試験片を作製した。
【0031】
[実施例2の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.13質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.035質量部に、ベンズイミダゾロンの配合量を0.0003質量部から0.02質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.015質量部に変更した点を除いて、実施例2の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0032】
[実施例3の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.2質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.07質量部に、ベンズイミダゾロンの配合量を0.0003質量部から0.03質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.2質量部に変更した点を除いて、実施例3の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0033】
[実施例4の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.14質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.06質量部に、ベンズイミダゾロンの配合量を0.0003質量部から0.03質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.1質量部に変更した点を除いて、実施例4の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0034】
[実施例5の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.044質量部に、銅フタロシアニンブルー0.0005質量部から無金属フタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue 16)0.01質量部に、ベンズイミダゾロンの配合量を0.0003質量部から0.004質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.06質量部に変更した点を除いて、実施例5の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0035】
[比較例1の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.518質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.005質量部に、ベンズイミダゾロン0.0003質量部から群青0.395質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.017質量部に変更した点を除いて、比較例1の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0036】
[比較例2の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.02質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.006質量部に、ベンズイミダゾロン0.0003質量部からジメチルキナクリドン(C.I.Pigment Red 122)0.004質量部およびDPPレッド(C.I.Pigment Red 254)0.001質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.017質量部に変更した点を除いて、比較例2の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0037】
[比較例3の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.036質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.01質量部に、ベンズイミダゾロン0.0003質量部から無置換キナクリドン(C.I.Pigment Violet 19)0.012質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.033質量部に変更した点を除いて、比較例3の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0038】
[比較例4の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.034質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.01質量部に、ベンズイミダゾロン0.0003質量部からポリアゾレッド(C.I.Pigment Red 144)0.004質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.042質量部に変更した点を除いて、比較例4の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0039】
[比較例5の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.032質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.01質量部に、ベンズイミダゾロン0.0003質量部からジオキサジンバイオレット(C.I.Pigment Violet 37)0.005質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.038質量部に変更した点を除いて、比較例5の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0040】
[比較例6の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.13質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.1質量部に、ベンズイミダゾロンの配合量を0.0003質量部から0.01質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.04質量部に変更した点を除いて、比較例6の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0041】
[比較例7の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.19質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.15質量部に、ベンズイミダゾロンの配合量を0.0003質量部から0.02質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.04質量部に変更した点を除いて、比較例7の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0042】
[比較例8の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.11質量部に、銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.05質量部に、ベンズイミダゾロンの配合量を0.0003質量部から0.04質量部に、および二酸化チタンの配合量を0.003質量部から0.04質量部に変更した点を除いて、比較例8の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0043】
[比較例9の試験片の作製例]
ポリエチレンワックスの配合量を0.0023質量部から0.002質量部に、および銅フタロシアニンブルーの配合量を0.0005質量部から0.0003質量部に変更した点を除いて、比較例9の試験片は、実施例1の試験片と同様の方法で作製された。
【0044】
実施例1〜5における評価結果を表1に、比較例1〜9における評価結果を表2にそれぞれ示す。
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
[結果]
実施例1〜5と比較例1〜5とを比較することにより、フタロシアニンブルー顔料、ベンズイミダゾロン顔料および二酸化チタン顔料の組み合わせにより、塩素水に長期間接触しても青色の色調バランスを維持できる配水管用着色樹脂組成物を得られることがわかった。また、実施例1〜5と比較例6〜9とを比較することにより、ポリエチレン樹脂100質量部当たりのフタロシアニンブルー顔料の含有量を0.0005〜0.07質量部、ポリエチレン樹脂100質量部当たりのベンズイミダゾロン顔料の含有量を0.0001〜0.03質量部、およびポリエチレン樹脂100質量部当たりの二酸化チタン顔料の含有量を0.001〜0.2質量部にすることにより、コバルト顔料を含まなくても青色を呈し、耐塩素水性に優れ、塩素水に長期間接触しても青色の色調バランスを維持できる配水管用着色樹脂組成物を得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の配水管用青色着色樹脂組成物および配水管は、塩素を含有する水が流通する配水管、とくに上水道配水管に好適に利用することができる。