【実施例1】
【0012】
以下、本発明を適用した車体前部構造の実施例1について説明する。
実施例1の車体前部構造は、例えば、乗用車等の自動車の車体前端部に設けられるものである。
図1は、実施例1の車体前部構造を車両前方側から見た模式図である。
図2は、
図1のII−II部矢視断面図である。
図2(a)は、
図1のa−a部矢視断面図であって、締結箇所以外における断面を示し、
図2(b)は、
図1のb−b部矢視断面図であって、締結箇所における断面を示している。
【0013】
車体前部構造1は、バンパビーム10、グリル20、バンパフェイス30等を有して構成されている。
バンパビーム10は、車両の前面衝突時に車体後部側へ荷重を伝達する車体構造部材である。
バンパビーム10は、車幅方向にほぼ沿って延びた梁状の部材である。
バンパビーム10は、図示しない左右のフロントサイドフレームの前端部に取り付けられている。
【0014】
図2等に示すように、バンパビーム10は、本体部11、フランジ部12等を有して構成されている。
本体部11は、上下方向に沿った長辺を有する矩形閉断面を有する。
フランジ部12は、本体部11の上面部における前後方向の中間部から上方へ突き出している。
【0015】
グリル20、バンパフェイス30は、車体前部において車外に露出して設けられた外装部材である。
グリル20、バンパフェイス30は、例えばPP等の樹脂系材料によって形成されている。
【0016】
グリル20は、エンジンルーム内に走行風を導入する開口が形成された枠状の部材である。
図1に示すように、グリル20は、一例として、横長の六角形状の枠体として形成されている。
グリル20の上端部は、図示しないフードの前端部と隣接して配置されている。
グリル20の左右側端部は、図示しない前照灯と隣接して配置されている。
グリル20の下端部は、バンパフェイス30の上端部と隣接して配置されている。
【0017】
グリル20の中央部には、エンブレム21等の意匠部材が取り付けられている。
グリル20は、枠体の周辺部に分散して配置されたスクリュSによって取り付けられている。
図2に示すように、グリル20の下枠部22は、バンパフェイス30の上端部にスクリュSによって締結されている。
図2(b)に示すように、締結箇所においては、下枠部22は、前面部23、上面部24、下面部25、被締結部26等が一体に形成されている。
【0018】
前面部23は、車両前方側に面して配置された意匠面であって、上端部が下端部に対して後退する方向に後傾して配置されている。
前面部23は、上下方向における中間部において車両前方側が凸となるように屈曲して形成されている。
上面部24は、前面部23の上端部から車両後方側へ突き出して形成されている。
上面部24は、グリル20の内縁部を構成する意匠面である。
下面部25は、前面部23の下端部から車両後方側に突き出した面部である。
下面部25は、実質的に平板状に形成されるとともに、ほぼ水平に配置されている。
【0019】
被締結部26は、タッピングビスであるスクリュSが挿入され締結される円筒状の部分である。
被締結部26は、上面部24及び下面部25からそれぞれ突出した支持部24a、25aによって支持されている。
被締結部26は、中心軸が車両前後方向にほぼ沿うように実質的に水平に配置されている。
【0020】
また、
図2(a)に示すように、締結箇所以外においては、下枠部22は、下面部25の前後方向長さが締結箇所に対して短く形成されている。
すなわち、締結箇所以外においては、下面部25の後端部は、締結箇所に対して車両前方側に配置されている。
【0021】
バンパフェイス30は、グリル20の下方に設けられている。
バンパフェイス30は、
図2(b)に示す締結箇所においては、前面部31、上面部32、締結面部33等を一体に形成して構成されている。
前面部31は、車両外部に露出して設けられた意匠面である。
前面部31の上端部は、グリル20の下枠部22の前面部23の下端部と隣接して配置されている。
【0022】
上面部32は、前面部31の上端部から後方側へ突き出した面部である。
上面部32は、実質的に平板状に形成されるとともに、ほぼ水平に配置されている。
上面部32は、グリル20の下枠部22の下面部25と、微小な隙間を隔てて対向して配置されている。
【0023】
締結面部33は、上面部32の後端部から上方へ突出して形成されたフランジ状の面部である。
締結面部33には、スクリュSが挿入される開口が設けられている。
締結面部33は、開口からスクリュSを挿入してグリル20の被締結部26に締結することによって、グリル20の下枠部22と固定されている。
締結面部33及びスクリュSの頭部は、バンパビーム10のフランジ部12と車両前後方向に間隔Bを隔てて配置されている。
【0024】
また、バンパフェイス30は、
図2(a)に示す締結箇所以外の領域においては、嵌合部34、突出部35、フランジ面部36が形成されている。
嵌合部34は、前面部31の上端部に隣接して設けられ、断面形状が車両前方側に開口したU字型の溝状に形成されている。
嵌合部34には、グリル20の下枠部21の下面部25が挿入され係合する。
突出部35は、嵌合部34の上方から、車両後方側に突き出して形成された面部である。
突出部35は、例えば、ほぼ水平方向に沿って延在し、後端部の車両前後方向における位置は、締結箇所におけるスクリュSの車両後方側の端部と実質的に同じ位置に配置されている。
フランジ面部36は、突出部35の後端部から上方へ立ち上げられた実質的に平板状の面部であって、バンパビーム10のフランジ部12と車両前後方向に間隔Aを隔てて配置されている。
【0025】
実施例1においては、締結箇所におけるスクリュSの頭部とフランジ部12との間隔Bは、非締結箇所におけるフランジ面部36とフランジ部12との間隔Aと実質的に一致するように設定されている。
フランジ面部36は、締結箇所に設けられる締結面部33と車幅方向に接続されており、締結面部33に対して段状に車両後方側へ張り出して形成されている。
また、締結箇所における車体前端部からスクリュSの頭部までの距離βは、非締結箇所における車体前端部からフランジ面部36の後面までの距離αと実質的に一致するように設定されている。
【0026】
次に、上述した実施例1の効果を、以下説明する本発明の比較例と対比して説明する。
なお、以下説明する比較例及び実施例の説明において、上述した実施例1と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
比較例の車体前部構造においては、フランジ部36は設けられておらず、突出部35の後端部は、締結箇所における締結面部33よりも前方側にオフセットして配置されている。
【0027】
図3に示すように、比較例においては、締結箇所における下枠部22の前端部からスクリュSの後端部までの距離βは、締結箇所以外における下枠部22の前端部から突出部35の後端部までの距離αに対して大きくなる。
その結果、締結箇所では、下枠22等が後退可能なストローク(間隔B)が、締結箇所以外における後退可能なストローク(間隔A)に対して減少し、歩行者脚部との衝突時における衝撃吸収性能が非締結箇所に対して部分的に低下してしまうことになる。
【0028】
これに対し、
図2に示す実施例1においては、バンパフェイス30に車両後方側へ突出したフランジ部36を設けたことによって、締結箇所以外におけるグリル20とバンパフェイス30との接合部の後端部の前後位置を、締結箇所と揃えることができる。(α≒βとなるよう設定できる。)
その結果、締結箇所以外の領域、締結箇所が設けられる領域がそれぞれバンパビーム10に対して後退可能なストローク(間隔A,B)を実質的に同程度として、車幅方向にわたって歩行者保護性能を均一化することができる。
【実施例3】
【0031】
次に、本発明を適用した車体前部構造の実施例3について説明する。
図5は、実施例3の車体前部構造の断面図である。
図5は、締結箇所における断面を示している。
実施例3の車体前部構造は、実施例2の後部部品50に代えて、以下説明する段付プレート60を備えている。
【0032】
段付プレート60は、バンパフェイス30の締結面部33の後方側に配置され、スクリュSによってこれらと共締めされる平板状の部材である。
段付プレート60は、スクリュSが挿入される開口の周囲に、スクリュSの頭部を収容する段状の凹部61が形成されている。
段付プレート60の凹部61以外における表面62は、車両前後方向における位置が、スクリュSの後端部(突端部)と実質的に一致する位置に配置されている。
表面62は、グリル20の下枠22の実質的に全幅にわたって延在して配置されている。
以上説明した実施例3においても、上述した実施例1の効果と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0033】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
車体前部構造を構成する各部材の形状、構造、材質、製法、配置等は、各実施例に限定されず、適宜変更することが可能である。
また、各実施例においては、バンパフェイスとグリルとの接合部の後方に設けられる他部品は、一例としてバンパビームであったが、これに限らず、他の部品でもよい。
例えば、歩行者衝突を検出する感圧式のセンサ等とすることもできる。この場合、突出部を設けることによって、歩行者脚部が車幅方向におけるどの位置に衝突した場合であっても、安定した検出感度を得ることができる。