特許第6185823号(P6185823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185823ウォータージェットピーニング用ノズル、ウォータージェットピーニング装置及びウォータージェットピーニング施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185823
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ウォータージェットピーニング用ノズル、ウォータージェットピーニング装置及びウォータージェットピーニング施工方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/02 20060101AFI20170814BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20170814BHJP
   B23P 17/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B05B1/02 101
   B05D7/00 L
   B23P17/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-229901(P2013-229901)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-89533(P2015-89533A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松井 祐二
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】吉久保 富士夫
(72)【発明者】
【氏名】新田 一陽
(72)【発明者】
【氏名】永島 利治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 昇
(72)【発明者】
【氏名】波東 久光
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−262506(JP,A)
【文献】 特開2002−102808(JP,A)
【文献】 特開2002−242900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00− 9/08
B05D 7/00− 7/26
B23P 17/00
G21C 13/00−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された水の通路である水室及びこの水室の下流に形成されて前記水室に連絡されるスロート部のそれぞれ内部に形成されたノズル本体と、外筒部材とを備え、
前記ノズル本体が、前記スロート部に連絡され、前記ノズル本体の軸方向において前記ノズル本体の一端部から突出する突出管を有し、
前記外筒部材が、前記突出管の周囲を取り囲んで前記ノズル本体の前記一端部に取り付けられ、前記ノズル本体の軸方向において前記突出管の先端よりも突出しており、
前記突出管の先端に形成された噴射口に連絡されて前記突出管の周囲を取り囲む噴射領域が、前記外筒部材内に形成され、
前記外筒部材の、前記軸方向において前記突出管の前記先端よりも突出している部分が、環状の開口形成部になっており、
前記噴射領域が、前記外筒部材内で、前記突出管の前記先端よりも前記水室側及び前記突出管の前記先端よりも前記開口形成部の先端側に存在しており、
前記噴射領域を外部に開放する開口部が前記開口形成部によって囲まれて形成され、
前記開口部の開口面積が、前記噴射領域の、前記外筒部材の半径方向における最大の断面積よりも小さくなっており、
前記噴射領域に面する、前記外筒部材の内面であって前記突出管の前記先端から前記開口形成部の先端部に亘って形成された前記内面が、前記軸方向において、連続した曲面を形成していることを特徴とするウォータージェットピーニング用ノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のウォータージェットピーニング用ノズルと、前記ウォータージェットピーニング用ノズルが取り付けられて前記ウォータージェットピーニング用ノズルを走査するノズル走査装置と、前記ウォータージェットピーニング用ノズルに供給する加圧水を吐出する高圧ポンプとを備えたウォータージェットピーニング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のウォータージェットピーニング用ノズルを水中においてウォータージェットピーニング施工対象物に対向させて配置し、高圧ポンプで加圧された水の噴射流を、前記ウォータージェットピーニング用ノズルの前記突出管の先端に形成された噴射口から、前記ウォータージェットピーニング用ノズルの前記噴射領域に噴射させ、前記噴射流に含まれる気泡が崩壊するときに発生する衝撃波を前記ウォータージェットピーニング施工対象物に当てることにより前記ウォータージェットピーニング施工対象物の残留応力を改善することを特徴とするウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項4】
前記ウォータージェットピーニング用ノズルを原子炉圧力容器内に充填された水に浸漬させ、前記原子炉圧力容器内に設けられた、前記ウォータージェットピーニング施工対象物である炉内構造物に対して、前記噴射口から前記噴射流を噴出する請求項に記載のウォータージェットピーニング施工方法。
【請求項5】
前記炉内構造物が前記原子炉圧力容器の底部に設けられた管状部材であり、前記噴射口から、前記管状部材に対して、前記噴射流を噴出する請求項に記載のウォータージェットピーニング施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータージェットピーニング用ノズル、ウォータージェットピーニング装置及びウォータージェットピーニング施工方法に係り、特に、原子力プラントに適用するのに好適なウォータージェットピーニング用ノズル、ウォータージェットピーニング装置及びウォータージェットピーニング施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの構造部材の溶接部及び熱影響部などの表面近傍に残留応力が存在する場合には、この溶接部及びこれの熱影響部などにウォータージェットピーニング(以下、WJPと称する)を施工して構造部材(WJP施工対象物)の表面付近に存在する引張残留応力を圧縮残留応力に改善することが行われている。WJPは、残留応力を改善する構造部材を水中に浸漬させた状態で、水中で噴射ノズルから高圧の水流を噴射して行われる。噴射された高圧水流に含まれるキャビテーション気泡が崩壊することによって衝撃波が生じる。この衝撃波が水中の構造部材の表面に衝突することによって、その構造部材の表面付近の引張残留応力が圧縮残留応力に改善される。このため、構造部材における応力腐食割れ(SCC)の発生が抑制される。WJPによる応力改善方法は、例えば、特開平7−270590号公報に記載されている。
【0003】
特開平7−270590号公報に記載された応力改善方法では、ウォータージェットピーニング装置(以下、WJP装置という)を、原子炉圧力容器の底部を貫通してその底部に取り付けられた制御棒駆動機構ハウジングの上端部(原子炉圧力容器内に位置する)に着座させ、高圧水流を、WJP装置の噴射ノズルから制御棒駆動機構ハウジングと原子炉圧力容器の溶接部に向かって噴射させている。この高圧水流に含まれるキャビテーション気泡の崩壊によって発生する衝撃波がその溶接部の表面に衝突することにより、その溶接部表面の残留応力が改善される。
【0004】
WJP装置に用いられる噴射ノズルとしては、特公平4−43712号公報、特開平8−257998号公報及び特開平9−262506号公報に記載された噴射ノズルが知られている。
【0005】
特公平4−43712号公報に記載された噴射ノズルは、スロート部、及びこのスロート部の先端に存在する噴射口が連絡される円錐状の開口部(ホーン)を内部に形成している。スロート部では高圧水の流速が増大される。その開口部は、スロート部の出口から噴射ノズルの先端に向かって流路断面積を徐々に増加している。噴射ノズルの軸方向における開口部の長さがスロート部のその長さの4〜20倍あり、開口部の開き角θが20°〜60°の範囲内にある。高圧水の噴射流がスロート部から開口部に噴射されたとき、噴射流の周囲にキャビテーション気泡が積極的に形成される。
【0006】
特開平8−257998号公報の図5に記載された噴射ノズルは、噴射口を有するスロート部を形成したノズル本体に円筒部を形成している。この円筒部の内径はスロート部の内径よりも大きくなっている。このため、特開平8−257998号公報の図5に記載された噴射ノズルは、特公平4−43712号公報に記載された噴射ノズルのように、噴射口を有するスロート部の下流に、断面積が徐々に拡大される開口部を形成しているのではなく、ノズル本体の円筒部内に、スロート部の下流端である噴射口から、断面積が急激に拡大される急拡大部(噴射領域)を形成している。この噴射領域の断面積は、急激に拡大した後、噴射ノズルの先端に向かって直線的に徐々に減少している。このため、噴射ノズルの先端(円筒部の先端)での噴射領域の断面積は、急激に拡大した位置での最大の断面積よりも小さくなっており、噴射領域において最も小さくなっている。外部に開放される円筒部の開口部が、噴射領域の断面積が最も小さくなっている噴射ノズルの先端部に形成される。高圧水の噴射流が、スロート部の噴射口から噴射領域内に噴射され、さらに、円筒部の開口部を通って噴射ノズルの外部に達する。
【0007】
特開平9−262506号公報に記載された噴射ノズルは、噴射口を有するスロート部を形成したノズル本体に、環状張り出し縁部を先端に形成した円筒状のキャップを取り付けている。キャップの内径はノズル本体の外径と実質的に同じである。環状張り出し縁部は、キャップの半径方向においてキャップの円筒部からキャップの中心軸に向かって伸びている。環状張り出し縁部に囲まれた開口部がキャップの先端部に形成される。この開口部の内径はノズル本体の外径よりも小さくなっている。噴射領域が、ノズル本体の先端と環状張り出し縁部の間でキャップ内に形成される。高圧水の噴射流が、スロート部の噴射口から噴射領域内に噴射され、さらに、その開口部を通して噴射ノズルの外部に達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−270590号公報
【特許文献2】特公平4−43712号公報
【特許文献3】特開平8−257998号公報
【特許文献4】特開平9−262506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開平8−257998号公報及び特開平9−262506号公報のそれぞれに記載された各噴射ノズルを、水中で、原子力プラントの、ウォータージェットピーニング施工対象物(WJP施工対象物)である構造部材に対向させて配置する。各噴射ノズルを用いてその構造部材に対してWJPを施工するとき、高圧水の噴射流が、噴射ノズルのスロート部の先端に形成された噴射口から構造部材に向かって、噴射ノズルの円筒部内に形成された噴射領域内に噴射され、さらに、噴射ノズル先端の開口部を通って噴射ノズルの外部に達する。噴射された噴射流に含まれたキャビテーション気泡の崩壊によって発生した衝撃波が水中の構造部材の表面に衝突することによって、その構造部材の表面付近の引張残留応力が圧縮残留応力に改善される。
【0010】
特開平8−257998号公報及び特開平9−262506号公報に記載された各噴射ノズルは、前述したように、ノズル本体の下流側で噴射ノズル内に、ノズル本体の一部である円筒部またはノズル本体に取り付けられた円筒部(キャップ)によって取り囲まれた噴射領域を形成し、さらに、この噴射領域を噴射領域の外部に連通させる、断面積が噴射領域の他の部分の断面積よりも小さくなっている開口部を先端部に形成している。このため、噴射流が噴射されたとき、各噴射ノズルの噴射領域内の水が、噴射流のエネルギーによって随伴流となって噴射流に混入されて開口部より噴射領域の外部に排出される。その噴射領域が、噴射領域内における随伴流の発生によって水不足になり、負圧状態になる。この負圧を解消するために、噴射ノズルの外部に存在する水が、水不足解消流となって逆流し、円筒部の先端部に形成された開口部を通して噴射領域内に流入する。
【0011】
特開平8−257998号公報及び特開平9−262506号公報に記載された各噴射ノズルでは、噴射領域に面している、ノズル本体の先端面と円筒部材の内面の間に形成される、噴射領域のコーナー部において、噴射領域内に流入する水不足解消流の影響によってそのコーナー部で渦が発生し、この渦の発生に伴って発生するキャビテーション気泡も多くなる。発生したキャビテーション気泡は、水不足解消流の流れに乗って噴射領域内で噴射流の位置まで移動する。このため、噴射流に伴って噴射ノズルの外部に達するキャビテーション気泡が多くなる。発生する衝撃波が強くなり、大きな圧縮残留応力が構造部材に付与され、構造部材の残留応力の改善効果が増大する。
【0012】
発明者らが特開平8−257998号公報及び特開平9−262506号公報に記載された各噴射ノズルの噴射領域内での水の流動状態を検討した結果、発明者らは、後述するように、噴射領域の前述のコーナー部で発生する渦によって発生したキャビテーション気泡の一部が、噴射口から噴射された噴射流の位置まで移動することができず、噴射領域内で消滅してしまうということを見出した。コーナー部で消滅するキャビテーション気泡の発生は、キャビテーション気泡の発生に用いられた噴射流のエネルギーを浪費することになる。噴射流のエネルギーの浪費は、その浪費の分だけ、WJP施工対象物の残留応力の改善効果を抑制することになる。
【0013】
本発明の目的は、ウォータージェットピーニング施工対象物の残留応力をさらに改善することができるウォータージェットピーニング用ノズル、ウォータージェットピーニング装置及びウォータージェットピーニング施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、加圧された水の通路であるスロート部が形成されたノズル本体と、外筒部材とを備え、
外筒部材が、スロート部に連絡され、ノズル本体の一端部から突出する突出管の周囲を取り囲んでノズル本体のその一端部に取り付けられた外筒ベース部、外筒ベース部につながる円筒部、及び円筒部につながる開口形成部を有し、
外筒部材内に形成された噴射領域が、突出管の先端に形成された噴射口に連絡され、且つ外筒ベース部、円筒部及び開口形成部によって囲まれており、
噴射領域を外部に開放する開口部が開口形成部によって囲まれて形成され、
開口部の開口面積が、噴射領域の、外筒部材の半径方向における最大の断面積よりも小さくなっており、
噴射領域から外側に向かって凸になっている第1の曲面が、外筒ベース部の開口部側の端部から円筒部の内面に亘って、噴射領域に面して形成されていることにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウォータージェットピーニング施工対象物の残留応力をさらに改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好適な一実施例である実施例1のウォータージェットピーニング方法に用いられるウォータージェットピーニング用ノズルの縦断面図である。
図2図1に示すウォータージェットピーニング用ノズルを用いた実施例1のウォータージェットピーニング方法を示す説明図である。
図3】比較例であるウォータージェットピーニング用ノズルにおける噴出した噴射流に伴う水流の状態を示す説明図である。
図4】従来のウォータージェットピーニング用ノズルにおける噴出した噴射流に伴う水流の状態を示す説明図である。
図5】従来の他のウォータージェットピーニング用ノズルにおける噴出した噴射流に伴う水流の状態を示す説明図である。
図6】従来の他のウォータージェットピーニング用ノズルにおける噴出した噴射流に伴う水流の状態を示す説明図である。
図7図1に示すウォータージェットピーニング用ノズルにおける噴出した噴射流に伴う水流の状態を示す説明図である。
図8】図及び図7に示すウォータージェットピーニング用ノズルの拡大図である。
図9図1に示すウォータージェットピーニング用ノズルによる応力改善効果を示す特性図である。
図10図1に示すウォータージェットピーニング用ノズルによる噴射距離の裕度の応力改善効果を示す説明図である。
図11】本発明の他の好適な実施例である実施例2のウォータージェットピーニング方法が施工される加圧水型原子炉の原子炉圧力容器の局部断面斜視図である。
図12図11のXII部の拡大図である。
図13】実施例2のウォータージェットピーニング方法に用いられるウォータージェットピーニング装置の構成図である。
図14図13に示すウォータージェットピーニング装置の下部の内部構造を示す拡大図である。
図15図13に示す旋回機構部の拡大縦断面図である。
図16図11に示す原子炉圧力容器の下鏡部において最も低い位置で下鏡部を貫通して設けられた炉内計装筒に設置された、図13に示すウォータージェットピーニング装置の噴射ノズルと、その炉内計装筒と下鏡部の溶接部との位置関係を示す説明図である。
図17図11に示す原子炉圧力容器の下鏡部が傾斜している位置において下鏡部を貫通して設けられた炉内計装筒に設置された、図13に示すウォータージェットピーニング装置の噴射ノズルと、その炉内計装筒と下鏡部の溶接部との位置関係を示す説明図である。
図18図11に示す原子炉圧力容器の下鏡部において最も低い位置で下鏡部に溶接された炉内計装筒の溶接部を施工する際のウォータージェットピーニングおいて、図4に示す従来のウォータージェットピーニング用ノズル及び図1に示すウォータージェットピーニング用ノズルのそれぞれの走査範囲を示す説明図である。
図19図11に示す原子炉圧力容器の下鏡部の傾斜している位置において下鏡部に溶接された炉内計装筒の溶接部を施工する際のウォータージェットピーニングおいて、図4に示す従来のウォータージェットピーニング用ノズル及び図1に示すウォータージェットピーニング用ノズルのそれぞれの走査範囲を示す説明図である。
図20】本発明の他の好適な実施例である実施例2のウォータージェットピーニング方法に用いられるウォータージェットピーニング用ノズルの縦断面図である。
図21】本発明の他の好適な実施例である実施例3のウォータージェットピーニング方法に用いられるウォータージェットピーニング用ノズルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明者らは、上記した目的を達成できるウォータージェットピーニング用ノズル(以下単に、噴射ノズルという)の検討を行うため、図3図4図5図6及び図7に示す種々の噴射ノズルを用いて水中での水の噴射実験を行った。図3図4図5図6及び図7には、各噴射ノズルから水中に水の噴射流を噴射した場合における、水中での水の流動状態が併せて示されている。
【0018】
各噴射ノズルの構造及び噴射流を噴射したときにおける水の流動状態を説明する。
【0019】
比較例の噴射ノズル35は、突出管4をノズル本体3の先端側端面に設けており、水室5をノズル本体3内に形成している。水室5に連絡されるスロート部7がノズル本体3及び突出管4内に形成され、スロート部7は突出管4の先端の位置で噴射口を形成する(図3参照)。
【0020】
水中に配置された噴射ノズル5の水室5に供給された高圧水は、スロート部7を通って突出管4の先端に形成された噴射口から水中に噴射流32Aとなって噴射される。噴射流32Aの噴射によって、噴射口付近において、噴射流32Aの周囲の水が随伴流33Aとなって噴射流32Aと共に流れる。随伴流33Aの生成によって噴射口付近の周囲水が不足するため、水不足解消流34Aが周囲水の不足分を解消しようとして噴射口付近に流れ込む(図3参照)。噴射ノズル35では、水不足解消流34Aが噴射流32A及び随伴流33Aとほぼ同じ方向に流れるため、水不足解消流34Aと噴射流32A及び随伴流33Aとの衝突及び干渉が起こりにくい。この結果、水流の衝突により生じる渦の量があまり多くないので、キャビテーション気泡の発生効率はあまり高くない。
【0021】
図4に示す噴射ノズル36は特公平4−43712号公報に記載された噴射ノズルである。噴射ノズル36は、ノズル本体3A内に、水室、スロート部37及び円錐状の開口部であるホーン38を形成している。スロート部37の一端部が水室に連絡され、スロート部37の他端部は噴射口となってホーン38に開口している。ホーン38の断面積は、スロート部37から先端に向かって徐々に増大している。
【0022】
噴射ノズル36はノズル本体の先端部にホーン38を形成しているので、スロート部37の噴射口からホーン38内に高圧水の噴射流32Bが噴射されたとき、ホーン38内の水が随伴流33Bとして噴射流32Bに随伴してホーン38の外部に排出される。このため、ホーン38の、スロート部37に近い上流部では、水が不足し、負圧状態になる。この負圧を解消するために、水不足解消流34Bが、ホーン38の外側から外部からホーン38内に流れ込み、噴射流32B及び随伴流33Bに対してやや斜めにこれらの流れ方向と逆行するようにして衝突する。水不足解消流34Bが噴射流32B及び随伴流33Bと逆行してこれらの流れに衝突するため、渦が大量に発生し、キャビテーション気泡の発生効率が増加する。この結果、WJPによる、WJP施工対象物における残留応力の改善効果が大きくなる。しかしながら、水不足解消流34Bが噴射流32Bに逆行して噴射流32Bに衝突するときに噴射流32Bのエネルギー損失が増加する怖れがある。また、このような水流の衝突で渦が発生しているため、渦は噴射流32Bの上流付近にとどまりやすく、発生した渦の寿命も短い。WJPの施工に適した噴射流32Bの噴射距離は短くなり、噴射距離の裕度も低下する。噴射距離とは、噴射ノズルの噴射口とWJP施工対象物のWJP施工面との間の距離である。
【0023】
図5に示す噴射ノズル88は特開平8−257998号公報の図5に記載された噴射ノズルである。噴射ノズル88は、前述したように、噴射口を有するスロート部37を形成したノズル本体3Bに円筒部94を形成している。噴射ノズル88内には、円筒部94に囲まれた噴射領域91が形成される。噴射ノズル88では、スロート部37先端の噴射口から円筒部94の内面に向って形成されて噴射領域91に面する、ノズル本体3Bの先端面89が、その噴射口から上流に向かって少し傾斜しているため、ノズル本体3Bの先端面89と円筒部94の内面の間に、噴射領域91の鋭角のコーナー部95が形成される。円筒部94の厚みは、噴射領域コーナー部95から円筒部94の先端に向かって徐々に増大する。噴射領域91の断面積は、逆に、噴射領域91のコーナー部95から円筒部94の先端に向かって徐々に減少する。噴射領域91の断面積のうちで、円筒部94の先端に形成される開口部96の断面積が最も小さくなる。
【0024】
水中に配置された噴射ノズル88のスロート部37先端の噴射口から高圧水の噴射流32Dが噴射されているとき、前述したように、随伴流が生成されて噴射領域91内の水が噴射流32Dに混入されて開口部96より噴射領域91の外部に排出される。この結果、噴射領域91が負圧状態になり、噴射ノズル88の外部に存在する水が水不足解消流92となって開口部96を通して噴射領域91内に流入する。渦93が、水不足解消流92の流動によって噴射領域91のコーナー部95に発生する。渦93の発生は、前述したように、噴射流32Dに伴って噴射領域91の外部に達するキャビテーション気泡を増大させ、構造部材の残留応力の改善効果を増大させる。
【0025】
発明者らが噴射ノズル88の噴射領域91内での水の流動状態を検討した結果、発明者らは、発生した渦93はコーナー部95で局所的に循環し続ける渦になりやすいため、このような渦93により発生したキャビテーション気泡の一部が、水不足解消流92の流れに乗ることができずにそのコーナー部95で局所的に循環し続ける渦に伴って循環し続け、噴射領域91内で、噴射口から噴射された噴射流32Dの位置まで移動することができなくなり、そして、このようなキャビテーション気泡がコーナー部95で循環している間に消滅してしまうという現象が生じていることを見出した。コーナー部95内で消滅するキャビテーション気泡の発生は、キャビテーション気泡の発生に用いられた水不足解消流92のエネルギー、すなわち、噴射流32Dのエネルギーを浪費することになる。コーナー部95内で消滅するキャビテーション気泡の発生よる噴射流32Dのエネルギーの浪費は、それだけ、WJP施工対象物の残留応力の改善効果を抑制することになる。また、WJPの施工に適した噴射流32Dの噴射距離が噴射流32Dのエネルギーの浪費によって短くなり、噴射流32Dの噴射距離の裕度も低下する。噴射距離とは、噴射ノズルの噴射口とWJP施工対象物のWJP施工面との間の距離である。
【0026】
図6に示す噴射ノズル97は特開平9−262506号公報に記載された噴射ノズルである。噴射ノズル97は、水室5、噴射口98を有するスロート部37Aを形成したノズル本体3Cに、環状張り出し縁部101を先端に形成した円筒状のキャップ100を取り付けている。環状張り出し縁部101は、キャップ100の半径方向においてキャップ100の円筒部からキャップ100の中心軸に向かって伸びている。環状張り出し縁部101に囲まれた開口部102がキャップ100の先端部に形成される。この開口部102の内径はノズル本体3Cの外径よりも小さくなっている。噴射領域103が、ノズル本体3Cの先端と環状張り出し縁部101の間でキャップ100内に形成される。噴射領域103の直角のコーナー部104が、ノズル本体3Cの先端面108とキャップ100の円筒部の内面の間に形成される。
【0027】
水中に配置された噴射ノズル97の噴射口98から高圧水の噴射流32Eが噴射されているとき、噴射ノズル88と同様に、随伴流が生成されて噴射領域103内の水が噴射流32Eに混入されて開口部102より噴射領域103の外部に排出される。噴射領域103が負圧状態になり、噴射ノズル97の外部に存在する水が水不足解消流105となって開口部102を通して噴射領域103内に流入する。渦106が、水不足解消流105の流動によって噴射領域103のコーナー部104に発生する。渦106の発生は、前述したように、噴射流32Eに伴って噴射領域103の外部に達するキャビテーション気泡を増大させ、構造部材の残留応力の改善効果を増大させる。
【0028】
発明者らが噴射ノズル97の噴射領域103内での水の流動状態を検討した結果、発明者らは、噴射ノズル88と同様に、噴射ノズル97においても、コーナー部104で局所的に循環している渦106により発生したキャビテーション気泡の一部が、噴射領域103内で、噴射口98から噴射された噴射流32Eの位置まで移動できずに、コーナー部104で循環している間に消滅してしまうという現象を生じることを見出した。コーナー部104内で消滅するキャビテーション気泡の発生は、キャビテーション気泡の発生に用いられた水不足解消流105のエネルギー、すなわち、噴射流32Eのエネルギーを浪費することになる。この結果、WJP施工対象物の残留応力の改善効果が抑制され、また、噴射流32Eの噴射距離の裕度も低下する。
【0029】
図7に示す噴射ノズル2は、図3に示す噴射ノズル35において、突出管4を取り囲む円筒状の外筒(外筒部材)9を、ノズル本体3の先端側端面(突出管4側の端面)に取り付けた構成を有する。外筒9は、外筒ベース部10、円筒部10B及び開口形成部11を有し、外筒ベース部10、円筒部10B及び開口形成部11が一体になって構成されている。外筒ベース部10は突出管4が挿入される貫通孔を形成している。外筒ベース部10に形成された貫通孔に突出管4が挿入された状態で、外筒ベース部10が、ノズル本体3の先端側端面及び突出管4の外面に接触されてノズル本体3の先端側端面に取り付けられている。噴射領域17が、外筒9内に形成され、突出管4の先端よりも噴射ノズル2の先端側に形成されている。円筒部10Bが噴射領域17を取り囲んで外筒ベース部10につながっており、円筒部10Bの外径は外筒ベース部10の外径と同じである。このため、円筒部10Bの外面は外筒ベース部10の外面に連続してつながっている。円筒部10Bは、外筒9において、厚みが最も薄くなっている部分の一つである。円筒部10Bは、外筒ベース部10の外面を含む、外筒ベース部10の環状の突出部(外筒ベース部10の外周部に位置する)であるとも言える。
【0030】
開口形成部11は、外側に向かって湾曲した環状の部材であって、図8に示すように、突出管4の先端よりも噴射ノズル2の先端部側に配置されており、図8に示す一点鎖線の位置で円筒部10Bにつながっている。開口形成部11の厚みは、円筒部10Bの最も厚みが薄くなっている部分(図8に示された一点鎖線付近)での厚みと同じである。開口形成部11は、内側に形成された曲面12Cが噴射領域17と対向するように配置されている。噴射領域17に連通して噴射領域17を外部に開放する開口部13が、開口形成部11の先端部によって囲まれて形成されている。開口部13の開口面積は、噴射領域17の、噴射ノズル2、すなわち、外筒9の半径方向における最大の断面積よりも小さくなっている。さらに、開口部13の直径は突出管4の内径よりも大きくなっている。
【0031】
曲面12Aが、外筒ベース部10の、噴射領域17に面する端部及び円筒部10Bの内面に亘って形成されており、円筒部10Bと開口形成部11の境界である図8に示された破線から水室5側に向かう範囲A1において形成されている。曲面12Aにつながる曲面12Bが、外筒ベース部10の、噴射領域17に面する端部において突出管4側に形成されている。曲面12Bは、突出管4の先端から水室5側に向かう図8に示された範囲A2において形成されている。曲面12Bの形成によって、突出管4を取り囲む環状の突出部10Aが形成される。突出部10Aの内面は突出管4の外面に接触しており、突出管4及び突出部10Aのそれぞれの先端部は、互いに、隙間を埋めるように接合されている。外筒ベース部10に、開口形成部11の内面には、円筒部10Bと開口形成部11の境界である図8に示された破線から開口部13に向かう範囲A3において、曲面12Cが形成されている。結果的に、噴射領域17は、スロート部7先端の噴射口8及び開口部13を除いて、曲面12A、曲面12B及び曲面12Cによって取り囲まれている。曲面12A,12B及び12Cは、いずれも、噴射領域17から外側に向かって凸になっている曲面である。
【0032】
水中に配置された噴射ノズル2の水室5に供給された高圧水は、スロート部7を通って突出管4の先端に形成された噴射口8から噴射領域17内の水中に噴射流32となって噴射される。噴射流32は、開口部13を通して噴射領域17から噴射ノズル2の外部に達する。噴射流32が噴射されているとき、随伴流33が生成されて噴射領域17内の水が噴射流32に混入されて開口部13より噴射領域17の外部に排出される。この結果、噴射領域17が開口部13において開口形成部11によって絞られているので、噴射領域17が負圧状態になり、噴射ノズル2の外部に存在する水が水不足解消流34となって開口部13を通して噴射領域17内に流入する。
【0033】
噴射ノズル2では、噴射ノズル88及び97のように、ノズル本体と円筒部の間に鋭角のコーナー部95及び直角のコーナー部104が形成されず、噴射領域17から外側に向かって凸になる曲面12Aが外筒ベース部10の噴射領域17に面する端部及び円筒部10Bに亘って形成されている。このため、噴射ノズル2では、水不足解消流34が、噴射領域17内において、円筒部10Bの内面及び曲面12Aに沿ってスムーズに流れ、噴射領域17の曲面12Aに面する部分において、噴射ノズル88及び97のコーナー部95及び104で発生する渦が生じ難くなる。また、このような渦によってキャビテーション気泡が循環し続けることもなくなる。
【0034】
噴射ノズル2では、噴射領域17内で消滅するキャビテーション気泡が極めて少なくなり、噴射ノズル88及び97で生じる噴射領域内での水不足解消流92,105のエネルギーの浪費が解消される。水不足解消流34は、噴射領域17内でエネルギーを浪費することなく、より大きなエネルギーを保有して噴射口8から噴射された噴射流32に衝突する。この結果、より多くのキャビテーション気泡が発生し、これらの気泡を含む噴射流32が開口部13から噴射ノズル2の外部に達する。噴射流32に同伴されるキャビテーション気泡の増大に伴って、これらの気泡の崩壊により発生する衝撃波の強度がより増大し、強度が増大した衝撃波が板部材31の表面に衝突する。板部材31の表面にはより大きな圧縮残留応力が付与される。発生するキャビテーション気泡の量が増大するほど、WJP施工対象物である構造部材の応力改善効果が増大する。
【0035】
さらに、噴射ノズル2では、噴射領域17から外側に向かって凸になる曲面12Bが、前述したように、噴射領域17に面して外筒ベース部10に形成されているため、噴射領域17において曲面12Aに沿って流れた水不足解消流34が曲面12Bに沿って噴射流32に向かってスムーズに流れる。水不足解消流34が曲面12Bに沿って流れている間においても水不足解消流34のエネルギーの浪費が極めて少ない。また、水不足解消流34は、曲面12Bに沿って流れることによって噴射流32の流れ方向に流れの向きを変えるため、噴射流32と衝突する際に噴射流32の流れ方向の流動成分を有している。このため、水不足解消流34の衝突による噴射流32のエネルギー損失が著しく小さくなり、WJP施工対象物に対するWJPの施工に適した噴射距離が長くなる。この結果、噴射ノズル2では、噴射距離の裕度が増加する。
【0036】
以上の検討結果を反映した本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0037】
本発明の好適な一実施例である実施例1のウォータージェットピーニング方法(WJP方法)を、図1及び図2を用いて説明する。本実施例のWJP方法に用いられる噴射ノズルは、図7に示す噴射ノズル2である。
【0038】
本実施例のWJP方法では、図2に示されるウォータージェットピーニング装置(以下、WJP装置という)1が用いられる。WJP装置1は、噴射ノズル2、WJP施工対象物である板部材31を浸漬する水槽99、給水ホース109、高圧ポンプ110、高圧ホース14及びノズル走査装置18を備えている。
【0039】
ノズル走査装置18は、支柱19、移動装置21,23,25、第1アーム22及び第2アーム24を有する。支柱19が、基台20の上面に取り付けられ、上下方向に伸びている。上下方向に移動する移動装置21が支柱19に移動可能に設けられる。水平方向でX方向に伸びる第1アーム22が移動装置21に設置されている。第1アーム22に沿ってX方向に移動する移動装置23が、第1アーム22に移動可能に設置されている。水平方向でX方向に直交するY方向に伸びる第2アーム24が移動装置23に取り付けられている。移動装置25が、第2アーム24に移動可能に設置される。上下方向に伸びる支持部材26が移動装置25に取り付けられる。噴射ノズル2が支持部材26の先端部(下端部)に取り付けられる。基台20は、水槽(容器)99が設置された床に設置される。
【0040】
給水ホース109の一端部は上部が開放された水槽99の底部に接続され、給水ホース109の他端部が高圧ポンプ110に接続される。高圧ポンプ110の吐出口に接続される高圧ホース14が、支持部材26に取り付けられ、噴射ノズル2に接続される。高圧ホース14は噴射ノズル2の水室5に連絡される。圧力計15及び流量計16が高圧ホース14に取り付けられる。制御装置27及び29が操作盤28に接続され、圧力計15及び流量計16が制御装置29に接続される。
【0041】
WJP装置1を用いて行う本実施例のウォータージェットピーニング方法を、説明する。WJP施工対象物である板部材31が、水槽99に充填された水30に浸漬して配置される。
【0042】
噴射ノズル2は、水30中に位置しており、板部材31上のWJPの開始位置の真上に位置決めされる。この位置決めは、オペレータが操作盤28に必要情報を入力することにより行われる。制御装置27は、入力した情報に基づいて、移動装置21,23及び25をそれぞれ所定位置に移動させる。噴射ノズル2が、移動装置21によってZ方向(上下方向)の座標値に、移動装置23の移動によってX方向の座標値に、移動装置25の移動によってY方向の座標値に位置決めされる。移動装置21によって噴射ノズル2をZ方向に走査することによって、噴射ノズル2の噴射口8と板部材31の間の距離、すなわち、噴射距離を調節することができる。本実施例では、移動装置25による噴射ノズル2の走査により、噴射距離が設定噴射距離にセットされる。移動装置23及び25をそれぞれ走査することにより、噴射ノズル2の噴射口8の位置が、板部材31のX方向及びY方向におけるWJP開始位置にセットされる。
【0043】
操作盤28からの制御指令を入力した制御装置27の出力信号に基づいて、高圧ポンプ110が駆動され、給水ホース109を通して供給される水槽99内の水30が高圧ポンプ110で昇圧される。昇圧されて高圧ポンプ110から吐出された高圧水が高圧ホース14を通して噴射ノズル2の水室5内に供給される。水室5に流入した高圧水は、噴射ノズル2内の流路断面積が減少する絞り部6、及びノズル本体3及び突出管4内に形成されたスロート部7を通って突出管4の先端に形成された噴射口8から噴射流32になって噴射領域17に噴射され、開口部13を通して噴射ノズル2の外部に達する。圧力計15は高圧ホース14内を流れる高圧水の圧力を計測し、流量計16はこの高圧水の流量を計測する。制御装置29は圧力計15及び流量計16による各計測値を入力し、高圧ポンプ110の回転数等を制御する。
【0044】
噴射流32の噴射によって、前述したように、噴射領域17内及び噴射ノズル2の外部において噴射流32の周囲に存在する水が随伴流33となって噴射流32と共に流れる。この結果、噴射ノズル2の外部に存在する水30が、水不足解消流34になって開口部13を通して負圧状態になった噴射領域17に流入する。噴射ノズル2の噴射領域17では、前述したように、水不足解消流34が、円筒部10Bの内面及び曲面12Aに沿ってスムーズに流れ、噴射領域17の曲面12Aに面する部分において、噴射ノズル88及び97のコーナー部95及び104で発生する渦が生じ難くなる。このような噴射ノズル2では、噴射領域17内における水不足解消流34のエネルギーの浪費が著しく少なくなり、水不足解消流34はより大きなエネルギーを保有して噴射流32と衝突する。このため、より多くのキャビテーション気泡が発生し、前述したように、板部材31の表面にはより大きな圧縮残留応力が付与される。
【0045】
さらに、水不足解消流34は、噴射領域17において、噴射領域17から外側に向かって凸になる曲面12Bに沿って流れることにより、噴射流32が流れる方向にスムーズに流れの向きを変える。この結果、前述したように、水不足解消流34との衝突による噴射流32のエネルギー損失が著しく低減され、噴射距離の裕度が増大する。
【0046】
噴射ノズル2が噴射流32を噴射しながらある方向(例えば、Y方向)に移動されることにより、板部材31のY方向に沿った表面に圧縮残留応力が付与される。噴射ノズル2のY方向への移動は移動装置25の移動によって行われる。
【0047】
噴射ノズル2によるWJP施工対象物の残留応力改善効果を図9により説明する。図9において、実線41は、噴射ノズル2を用いてWJPを行った後におけるWJP施工対象物である板状の試験材の水平方向における残留応力の測定結果を示している。破線40は、図4に示した噴射ノズル36を用いてWJPを行った後におけるWJP施工対象物である板状の試験材(例えば、ステンレス鋼板)の水平方向における残留応力の測定結果を示している。噴射ノズル2及び36のそれぞれによるWJPの施工に用いた板状のそれぞれの試験材は同じ材質である。実線41及び破線40は、共に、水平方向におけるWJPの施工中心からの距離による、WJP施工後における各試験材の残留応力の変化を示している。
【0048】
発明者らは、噴射ノズル2及び36のそれぞれを用い、予め網掛領域39で示す引張残留応力が付与された2つの試験材を、順次、水に浸漬させ、噴射ノズルとして噴射ノズル2及び36別々に用いてWJPを施工した。この結果、いずれのケースの試験材においても、WJP施工後の残留応力が、網掛領域9の引張残留応力よりも改善された。噴射ノズル2によるWJPでは、噴射ノズル36による破線40の圧縮残留応力よりも大きな圧縮残留応力(実線41参照)が試験材に付与された。
【0049】
さらに、発明者らは、噴射ノズル2及び36のそれぞれにおける噴射距離の裕度を確認するため、複数の板状の試験材(例えば、ステンレス鋼板)を、順次、水に浸漬させ、噴射ノズル2及び36のそれぞれを用いて噴射距離を変えて各試験材に対してWJPを施工した。すなわち、それぞれの噴射ノズルに対して幾つかの噴射距離がそれぞれ設定され、噴射ノズルごとに各噴射距離で別々の試験材に対してWJPを施工した。また、WJP施工時においてそれぞれの噴射ノズルから各試験片に噴射されたWJPを施工した各試験材に加わる加振力を測定するため、ロードセルを水槽内の水中でそれぞれの噴射ノズルに対向させて配置した。各噴射ノズルとロードセルとの間の噴射距離は、WJPを施工した各試験片に対する噴射距離と同じく設定した。噴射ノズル2及び36のそれぞれからロードセルに向かって水流を噴射させ、噴射距離を変えながらそれぞれのケースにおける加振力をロードセルによって測定した。ロードセルによる加振力の測定は、噴射流に含まれるキャビテーション気泡の崩壊によって生じる衝撃波のエネルギーを評価する測定法の一つである。WJP施工対象物の応力改善効果とこのWJP施工対象物の加振力測定結果がほぼ一致することが、これまでに明らかになっている。加振力が大きい程、WJP施工対象物の応力改善効果が大きくなる。
【0050】
発明者らは、前述の各噴射ノズルを用いて噴射距離を変えて各試験材に対して行ったWJPの施工結果、及びそれらの噴射ノズルを用いて同様に噴射距離を変えて行ったロードセルによる加振力の測定結果を整理し、図10に示した。図10は、噴射距離を変えて行った加振力の測定結果に基づいて得られた、十分な加振力が得られる有効噴射距離の範囲、すなわち、十分な応力改善効果が得られる有効噴射距離の範囲を、噴射ノズル2及び36のそれぞれに対して示したものである。噴射ノズル2において得られる有効噴射距離の範囲は、噴射ノズル36において得られる有効噴射距離の範囲よりも広くなっている。これによって、噴射ノズル2の噴射距離の裕度が、噴射ノズル36のその裕度よりも大きいことが確認できた。
【0051】
本実施例は、噴射ノズル2を用いているので、前述したように、噴射領域17内でのキャビテーション気泡の消滅による水不足解消流34のエネルギーの浪費を著しく低減することができ、板部材31の表面に残留応力の改善効果をさらに向上させることができる。板部材31の表面に付与される圧縮残留応力がさらに大きくなる。
【0052】
また、本実施例によれば、外筒ベース部10の噴射領域17に面する端面で突出管4側に外側に向かって凸になる曲面12Bが形成されているため、噴射領域17内において突出管4側に流動する水不足解消流34が曲面12Bによって流動する方向に向きを変える。向きを変えた水不足解消流34は、噴射流32の流れ方向の流動成分を有した状態で、噴射流32と衝突する。この結果、噴射流32と水不足解消流34の衝突による噴射流32のエネルギーが損失する度合いが低減される。噴射ノズル2から噴射された噴射流32のWJP施工に適した噴射距離が長くなり、噴射ノズル2における噴射距離の裕度が増大する。これにより、噴射ノズル2の、WJP施工対象物である板部材31に対する位置合わせが容易になる。すなわち、噴射ノズル2と板部材31との間の距離が最適値からずれたとしても、板部材31に付与される圧縮残留応力の値はあまり変化しなく、適切な圧縮残留応力を付与することができる。このように、噴射ノズル2は噴射距離の裕度が増大する。
【0053】
本実施例では、外筒9を、ノズル本体3の先端側端から突出した突出管4の周囲に配置してノズル本体3に取り付けているので、突出管4による外筒9の位置決めを精度良く行うことができ、外筒9のノズル本体3への取り付けを容易に行うことができる。
【実施例2】
【0054】
本発明の好適な他の実施例である実施例2のウォータージェットピーニング方法(WJP方法)を、図11から図15を用いて説明する。本実施例のWJP方法に用いられる噴射ノズルは、図1に示す噴射ノズル2である。また、本実施例のWJP方法は、加圧水型原子炉の原子炉圧力容器内の底部に設けられた炉内計装筒と原子炉圧力容器の底部との溶接部に対して行われる例を示している。
【0055】
加圧水型原子炉の原子炉圧力容器42は、図11に示すように、原子炉圧力容器42の底部である下鏡部43を有している。管状部材である複数の炉内計装筒44が下鏡部43を貫通して下鏡部43に取り付けられている(図12参照)。各炉内計装筒44と下鏡部43は溶接部45により接合されている。この溶接部45は炉内計装筒44を取り囲んでいる。加圧水型原子炉の運転時には、原子炉圧力容器42の上端に蓋が取り付けられて原子炉圧力容器42は密封されている。図11は、加圧水型原子炉の運転停止時で蓋が取り外されて上端が開放された原子炉圧力容器42を示している。
【0056】
本実施例のWJP方法は、原子炉圧力容器42の下鏡部43と炉内計装筒(ウォータージェットピーニング施工対象物)44の溶接部45(ウォータージェットピーニング施工対象箇所)を対象に実施される。このWJP方法に用いられるWJP装置を図13ないし図15を用いて説明する。
【0057】
本実施例で用いられるWJP装置46は、図13ないし図15に示すように、噴射ノズル2、高圧ポンプ110(図示せず)、ケーシング47、噴射ノズル移動装置54及び旋回機構部64を備えている。噴射ノズル2は実施例1で用いられた噴射ノズル2である。噴射ノズル移動装置54及び旋回機構部64はノズル走査装置である。ケーシング47は、旋回機構部64の第2ケーシング47B及び旋回機構部64よりも下方の旋回する第1ケーシング47Aを含んでいる。第2ケーシング47Bはケーシング47の上端部に位置している。ノズル走査装置は噴射ノズル移動装置54及び旋回機構部64を有する。
【0058】
旋回機構部64の構造を図15を用いて説明する。旋回機構部64は、第2ケーシング47B及び旋回装置68を有する。第2ケーシング47Bは、第1ケーシング47Aの上端にベアリング75により回転可能に設置される。リング状の支持部材66及び67が、第2ケーシング47B内に配置され、第2ケーシング47Bの内面にそれぞれ取り付けられている。支持部材67は第2ケーシング47Bの下端部に位置しており、支持部材66は支持部材67よりも上方に配置される。
【0059】
旋回装置68は、モータ69、減速装置70、歯車71及び旋回軸72を有する。外面に歯車が形成された旋回軸72が、支持部材66及び67のそれぞれの中心を貫通して配置され、旋回軸72の上端が支持部材66にベアリング74により回転可能に支持された円板状の旋回部材73の下面に取り付けられる。旋回軸72は支持部材66に支持される。旋回軸72の下端は、第1ケーシング47A内に配置されて第1ケーシング47Aの上端部に取り付けられた支持部材65に取り付けられる。モータ69が支持部材67の上面に設置される。歯車71が、モータ69に連結された減速装置70の回転軸に取り付けられる。この歯車71は旋回軸72の外面に形成された歯車と噛み合っている。
【0060】
軸受部49が、第1ケーシング47Aの下端部に取り付けられた支持部材52にベアリング51により回転可能に取り付けられる。突起部50が、軸受部49の下端部に設けられ(図14及び図15参照)、第1ケーシング47Aの下方に向かって伸びている。突起部50の横断面積は、第1ケーシング47Aの下端から離れるに従って減少する。開口部53(図13参照)が第1ケーシング47Aの下端部に形成される。開口部53はケーシング47の軸方向に伸びている。48は、開口部53の形成によって生じる、第1ケーシング47Aの周方向における端面である。
【0061】
噴射ノズル移動装置54は、スイーベルユニット55、中継ボックス59、昇降テーブル112及びアーム部材63を有する(図13及び図14参照)。昇降テーブル112の上端部は、第1ケーシング47A内に設けられたボールネジ(図示せず)と噛み合うボールナットを有する支持板(図示せず)に取り付けられている。このボールネジの両端部が第1ケーシング47Aの内面に軸受により回転可能に取り付けられ、第1ケーシング47Aの内面に設置されたモータの回転軸がボールネジの一端部に連結されている(図示せず)。第1ケーシング47Aの軸方向に伸びる板状の昇降テーブル112の下端部は開口部53に位置している。
【0062】
一対のリンク60及び一対のリンク61のそれぞれの一端部が、別々に回転軸により回転可能に、昇降テーブル112の下端部に取り付けられる。一対のリンク60が取り付けられた回転軸は、昇降テーブル112に回転可能に取り付けられ、昇降テーブル112内に設けられたモータ(図示せず)により回転される。一対のリンク60及び一対のリンク61のそれぞれの他端部が、別々に回転軸により回転可能に、中継ボックス59に取り付けられる。これらの回転軸は、中継ボックス59に回転可能に取り付けられる。アーム部材63の一端部が中継ボックス59に取り付けられ、アーム部材63の他端部が中継ボックス59の下方に配置されたスイーベルユニット55のケーシング56に取り付けられる。アーム部材63及びスイーベルユニット55はケーシング47の外部に配置される。
【0063】
噴射ノズル2が、ケーシング56に回転可能に取り付けられた回転軸57に取り付けられている。ケーシング56内に設置されたモータ(図示せず)の回転軸が、減速機(図示せず)を介して回転軸57のケーシング56側の端部に連結される。回転軸57の他端部が、ケーシング56の側面に取り付けられた水受け部58内に挿入され、水受け部58に回転可能に取り付けられる。水受け部58と回転軸57の間には、水漏れを防止するためのシールが施されている。回転軸57の水受け部58の端部から噴射ノズル2に至る高圧水供給通路(図示せず)が、回転軸57内に形成されている。この高圧水供給通路は水受け部58内の水流入領域に連絡される。
【0064】
中継ブロック62が、中継ボックス59よりも上方の位置で第1ケーシング47A内に固定されている。高圧水供給通路(図示せず)が、中継ブロック62内にも形成される。第1高圧ホース14Aが第1ケーシング47A内に配置され、第1高圧ホース14Aの一端部が中継ブロック62に接続される(図14参照)。この第1高圧ホース14Aは中継ブロック62内に形成された高圧水供給通路に連絡される。第1高圧ホース14Aは、第1ケーシング47Aの上端部において第1ケーシング47Aの内部から第1ケーシング47Aの外部に取り出される(図15参照)。
【0065】
第2高圧ホース14Bが中継ボックス59を貫通しており、第2高圧ホース14Bの一端部が中継ブロック62に接続され、第2高圧ホース14Bの他端部が水受け部58に接続される(図14参照)。第2高圧ホース14Bは中継ブロック62内に形成された高圧水供給通路と水受け部58内の水流入領域を連絡する。第2高圧ホース14Bは、第1ケーシング47A内に逆U字状に配置されたケーブルベア(登録商標)111に取り付けられている。
【0066】
電力供給用のケーブル78は第1ケーシング47A内を通って中継ボックス59に接続される。このケーブル78はケーシング56内に設置された前述のモータに接続される。原子圧力容器42を取り囲む原子炉格納容器(図示せず)の外部に設置された制御装置(図示せず)に接続された制御ケーブル77も第1ケーシング47A内を通って中継ボックス59に接続される。
【0067】
WJP装置46を用いた本実施例のWJP方法を以下に説明する。加圧水型原子炉の運転が停止された後、原子炉圧力容器42を密封している蓋(図示せず)が取り外され、原子炉圧力容器42から装荷されている燃料集合体及び炉内構造物が取り出される。
【0068】
WJP装置46が、原子炉圧力容器42の上方に設置されたマニピュレータ76により原子炉圧力容器42内の水中を下降され、炉内計装筒44の上端まで降ろされる。原子炉圧力容器42内には水が充填されている。噴射ノズル2が下鏡部43と炉内計装筒44の溶接部45の位置まで下降したとき、WJP装置46の下降が停止される。WJPが施工されるとき、WJP装置46の第1高圧ホース14Aは原子炉格納容器外に設置された高圧ポンプ110に接続されている。
【0069】
溶接部45に対してWJPを施工する前において、下鏡部43と炉内計装筒44の溶接部45におけるWJP施工開始位置への噴射ノズル2の位置決めが行われる。この位置決めについて説明する。
【0070】
噴射ノズル2の、炉内計装筒44の軸方向における位置決めは、噴射ノズル移動装置54によって噴射ノズル2を炉内計装筒44の軸方向において移動させて行われる。すなわち、第1ケーシング47A内に設置されたボールネジがモータにより回転されると、このボールネジに噛み合うボールナットを有する支持板が炉内計装筒44の軸方向で下降し、昇降テーブル112及びアーム部材63も炉内計装筒44の軸方向において下降する。この移動により、噴射ノズル2の噴射口が、WJP施工箇所である下鏡部43と炉内計装筒44の溶接部45の表面付近に位置決めされる。昇降テーブル112及びアーム部材63が炉内計装筒44の軸方向に移動するとき、この移動に合せて、ケーブルベア111の逆U字の頂部の位置も、その軸方向に移動する。昇降テーブル112及びアーム部材63の下降により、やがて、噴射ノズル2の噴射口が炉内計装筒44の軸方向において溶接部45のWJP開始位置に位置決めされる。
【0071】
噴射ノズル2の水平方向における位置決めは以下のように行われる。昇降テーブル112内に設けられたモータを回転させて一対のリンク60のそれぞれの一端部が取り付けられた回転軸を回転させる。これにより、一対のリンク60が第1ケーシング47Aの軸方向において回転され、中継ボックス59を第1ケーシング47Aに近づける(または遠ざける)ように移動させる。なお、一対のリンク60が回転すると、従動リンクである一対のリンク61もリンク60と同様に回転する。一対のこのようなリンク60,61の回転によっても、アーム部材63は昇降テーブル112と平行な状態に保持される。一対のリンク60及び一対のリンク61は、平行リンク機構を構成している。この結果、スイーベルユニット55に取り付けられた噴射ノズル2が水平方向において移動し、噴射ノズル2の噴射口とWJP施工箇所(溶接部45)の間の水平方向の距離を所定の距離に合せることができる。
【0072】
溶接部45に対する、噴射ノズル2の噴射角は、第1ケーシング47A内に設けられたモータを駆動することによって調節される。ケーブル78を通した電力の供給によりこのモータが回転されて回転軸57が回転し、噴射ノズル2が回転軸57を中心に回転される。噴射ノズル2の噴射口8が下鏡部43と炉内計装筒44との溶接部45の表面に向いたとき、モータによる回転軸57の回転が停止される。噴射ノズル2の状態は、第1ケーシング47Aに設けられた監視カメラ(図示せず)によって監視される。
【0073】
高圧ポンプ110の駆動により高圧ポンプ110から吐出された高圧水が、第1高圧ホース14A及び第2高圧ホース14Bを通して噴射ノズル2内の水室5に供給され、スロート部7を通して突出管4の先端の噴射口8に導かれる。この噴射口8から噴射領域17内に噴射された噴射流32が溶接部45に向って流れる。前述したように、噴射ノズル2の外筒ベース部10の噴射領域17に面する端面で円筒部10B側に曲面12Aを形成しているので、水不足解消流34が噴射領域17内で曲面12Aに沿ってスムーズに流動方向を変えることができる。このため、実施例1と同様に、噴射領域17内を流れる水不足解消流34のエネルギーの浪費が抑えられ、より大きな圧縮残留応力が溶接部45の表面に付与される。また、水不足解消流34が、噴射領域17内で曲面12Bに沿って流れて流れの向きを噴射流32の流れ方向に変更されるので、実施例1と同様に、噴射距離の裕度も増大する。
【0074】
溶接部45は炉内計装筒44の全周に亘って存在するため、噴射流32を噴射している噴射ノズル2を、炉内計装筒44の回りに旋回させる必要がある。この噴射ノズル2の旋回は、旋回機構部64の旋回装置68を用いて行われる。モータ69が駆動されると、モータ69の回転力が減速装置70を介して歯車71に伝えられ、歯車71が回転される。このため、歯車71により旋回軸72が回転し、第1ケーシング47Aが回転する。第1ケーシング47Aの回転により、噴射流32を噴射している噴射ノズル2が、炉内計装筒44の周囲を旋回し、その溶接部45に沿って移動する。第1高圧ホース14A、制御ケーブル77及びケーブル78のねじりを防止するために、モータ69は正転及び逆転を交互に繰り返す。このため、噴射ノズル2は、噴射流32を噴射しながら、炉内計装筒44の周囲を、時計回りに180°及び反時計回りに180°の旋回を繰り返すことになる。このようにして、溶接部45の全周に亘って、この溶接部45の表面及び熱影響部の表面に圧縮残留応力を付与することができる。なお、モータ69が駆動したとき、第2ケーシング47B及び突起部50は旋回しない。
【0075】
原子炉圧力容器42の下鏡部43において最も低い位置で下鏡部43を貫通して設けられた炉内計装筒44と下鏡部43の溶接部45(下鏡部43の、実質的に水平になっている部分での溶接部45)に対してWJPを施工する場合には、この炉内計装44の上端に設置された設置されたWJP装置46のアーム部材63に設置された噴射ノズル2は、図16において実線で示された噴射ノズル2に対して180°反対側の破線で示された噴射ノズル2のように、旋回装置68により旋回された後における原子炉圧力容器42の水平断面で180°ずれた位置でも、原子炉圧力容器42の軸方向で同じ位置に位置している(図16参照)。このため、下鏡部43において最も低い位置で下鏡部43に取り付けられた炉内計装筒44の溶接部45の表面に対するWJPは、旋回装置68を駆動して第1ケーシング47Aを回転させて、噴射流32を噴射している噴射ノズル2を、炉内計装筒44の周りで旋回させながら行われる。このとき、昇降テーブル112は、第1ケーシング47Aの軸方向に移動されない。
【0076】
原子炉圧力容器42の下鏡部43が傾斜している位置で下鏡部43を貫通して設けられた炉内計装筒44と下鏡部43の溶接部45に対してWJPを施工する場合には、この炉内計装44の上端に設置された設置されたWJP装置46のアーム部材63に設置された噴射ノズル2は、原子炉圧力容器42の中心側に位置する実線で示された噴射ノズル2、及びこの位置に対して180°反対側の破線で示された噴射ノズル2のように、原子炉圧力容器42の水平断面で180°ずれた位置では、原子炉圧力容器42の軸方向で異なる位置に位置している(図17参照)。下鏡部43の傾斜している位置で下鏡部43に取り付けられた炉内計装筒44の溶接部45の表面に対するWJPは、昇降テーブル112を第1ケーシング47Aの軸方向に移動しながら第1ケーシング47Aを回転させ、噴射流32を噴射している噴射ノズル2を、炉内計装筒44の周りで旋回させて行われる。
【0077】
例えば、下鏡部43の最も低い位置で下鏡部43を貫通して設けられた炉内計装筒44から下鏡部43の傾斜している位置で下鏡部43を貫通して設けられた炉内計装筒44へのWJP装置46の移動は、以下のように行われる。前者の炉内計装筒44と下鏡部43の溶接部45に対するWJPの施工が終了したとき、マニピュレータ76を用いて、この炉内計装筒44の上端に着座されているWJP装置46を上昇させ、WJP装置46の突起部50の下端が炉内計装筒44の上端よりの上方に達したとき、WJP装置46を後者の炉内計装筒44の真上まで移動させる。その後、WJP装置46を、下降させて後者の炉内計装筒44の上端に着座させる。
【0078】
WJP装置46による該当する全ての炉内計装筒44の溶接部45へのWJPの施工が終了した後、WJP装置46はマニピュレータ76により引き上げられ、原子炉圧力容器42内から取り出される。
【0079】
有効噴射距離の範囲が広くなって噴射距離の裕度が増大することによる、WJP施工上の利便性を、図18及び図19を用いて説明する。図18は原子炉圧力容器42の下鏡部43の最も低い位置に設けられた炉内計装筒44の溶接部45に対する噴射ノズルの走査範囲を示し、図19は下鏡部43の傾斜している位置に設けられた炉内計装筒44の溶接部45に対する噴射ノズルの走査範囲を示している。また、図18及び図19に示された各WJP施工領域79(具体的には、79a,79b,79c及び70dで示された各WJP施工領域)は、炉内計装筒44の溶接部及び熱影響部の残留応力を改善するためのWJP施工領域を示している。
【0080】
図18及び図19に示す各WJP施工領域79に対して、WJP装置46に設けられた噴射ノズル2から噴射流32を斜め45°の角度で噴射することを想定する。
【0081】
まず、図18に示す下鏡部43の最も低い位置に設けられた炉内計装筒44に対するWJP施工領域79(溶接部4及び熱影響部)に対するWJPの施工について説明する。WJP施工領域79a、79bに対してWJPを施工する場合では、噴射ノズル36の有効噴射距離の範囲は領域80a及び80bとなり、噴射ノズル2の有効噴射距離の範囲は領域82a及び82bとなる。噴射ノズル2及び36の有効噴射距離は一部重なっているため、領域80aの一部と領域82aの一部が重なり、領域80bの一部と領域82bの一部も重なるため、図が煩雑になり、WJP施工領域79a及び79bに対する両噴射ノズルの有効噴射距離の範囲の違いが分かりづらくなる関係上、図18では、領域80aと領域82a、及び領域80bと領域82bをそれぞれ便宜的に離して表示している。
【0082】
噴射ノズル36を用いてWJP施工領域79a及び79bのそれぞれに対してWJPを施工する場合には、噴射ノズル36の走査ラインは、十分な残留応力改善効果を得るために、領域80a及び80b内において設定する必要がある。残留応力改善効果が最も大きくなる噴射ノズル36の走査ラインを選択すると、この走査ラインは、領域80a内に代表して示す走査ライン81aとなる。領域80bにおいても同様な走査ラインになる。噴射ノズル2の替りに噴射ノズル36を取り付けたWJP装置46による噴射ノズル36の走査の利便性を考慮した場合には、領域80b内に示す1つの交点(ノズル走査方向変更点)を有する2本の直線で示される走査ライン81bしか選択することができない。
【0083】
これに対して、噴射ノズル2を用いてWJP施工領域79a及び79bのそれぞれに対してWJPを施工する場合には、噴射ノズル2の走査ラインは、十分な残留応力改善効果を得るために、領域82a及び82b内において設定する必要がある。噴射ノズル2の有効噴射距離の範囲が噴射ノズル36のその範囲よりも広い関係上、領域82a及び82bは領域80a及び80bよりも広くなる。残留応力改善効果が最も大きくなる噴射ノズル2の走査ラインを選択すると、この走査ラインは、領域82a内に代表して示す走査ライン83aとなる。領域82bにおいても同様な走査ラインになる。WJP装置46による噴射ノズル2の走査の利便性を考慮した場合には、領域82b内に示す1本の直線で示される走査ライン83bを選択することがでる。領域82aにおいても同様な1本の直線で示される走査ラインを選択することができる。
【0084】
噴射ノズル2を用いた場合には、ノズル走査方向変更点を減らすことができるので、噴射ノズルの走査の簡便化が図れるとともに、噴射ノズルの走査距離が短くなり、WJPの施工に要する時間も短縮できる。
【0085】
図19に示す下鏡部4が傾斜している位置に設けられた炉内計装筒44に対するWJP施工領域79c、79d(溶接部4a、この熱影響部、溶接部4b及びこの熱影響部)に対するWJPの施工について説明する。WJP施工領域79c、79dに対してWJPを施工する場合では、噴射ノズル36の有効噴射距離の範囲は領域80c及び80dとなり、噴射ノズル2の有効噴射距離の範囲は領域82c及び82dとなる。領域80cと領域82c及び領域60dと領域82dは、煩雑化を避けるために図18と同様に、離して表示している。
【0086】
噴射ノズル36を用いた場合には、噴射ノズルの走査の利便性を考慮して、残留応力改善効果が最も大きくなる噴射ノズル36の走査ラインを選択すると、領域80cでは走査ライン81cとなり、領域80dでは走査ライン81dとなる。走査ライン81c及び81dは、走査ライン81bと同様に、2本の直線で示される走査ラインである。これに対して、噴射ノズル2を用いた場合には、噴射ノズルの走査の利便性を考慮して、残留応力改善効果が最も大きくなる噴射ノズル2の走査ラインを選択すると、領域82cでは走査ライン83cとなり、領域82dでは走査ライン83dとなる。
【0087】
原子炉圧力容器42の下鏡部43には多数の炉内計装筒44が設けられており、しかも、炉内計装筒44を設置した部分における下鏡部43の傾斜角が異なっている。このため、噴射距離の裕度が増大した噴射ノズル2の走査の利便性の向上は、それらの炉内計装筒44の溶接部45に対するWJPの施工作業に要する時間を著しく低減することができる。
【0088】
さらに、本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0089】
本実施例で用いたWJP装置46は、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器の下鏡部におけるスタブチューブと下鏡部の溶接部、スタブチューブに挿入された制御棒駆動機構ハウジングとスタブチューブとの溶接部、及び炉内中性子検出器ハウジングと下鏡部の溶接部のそれぞれに対するWJPの施工に用いることができる。スタブチューブ、制御棒駆動機構ハウジング及び炉内中性子検出器ハウジングは、いずれも、原子炉圧力容器の炉底部である下鏡部に取り付けられる管状部材である。
【実施例3】
【0090】
本発明の好適な他の実施例である実施例3のウォータージェットピーニング方法(WJP方法)を、図20を用いて説明する。本実施例のWJP方法に用いられる噴射ノズルは、図20に示す噴射ノズル2Aである。また、本実施例のWJP方法は、加圧水型原子炉の原子炉圧力容器内の底部に設けられた炉内計装筒と原子炉圧力容器の底部との溶接部に対して行われる例を示している。
【0091】
本実施例に用いられる噴射ノズル2Aは、ノズル本体3D、ノズル本体3Dの先端に設けられた突出管4A、及び外筒9Bを有している。突出管4Aは先端部で内部にスロート部7を形成しており、スロート部7の先端が噴射口87になっている。スロート部7は突出管4A内に形成された水室5に連絡され、スロート部7および噴射口87の流路断面積は水室5の流路断面積よりも小さくなっている。外筒9Bは、噴射ノズル2の外筒9において外筒ベース部10を外筒ベース部10Dに替えた構成を有する。外筒ベース部10Dは外筒ベース部10において曲面12Bを平面状の端面86に替えた構成を有する。端面86につながる曲面12Aが、外筒ベース部10Dの、噴射領域17に面する端部及び円筒部10Bの内面に亘って形成されている。
【0092】
突出管4Aを取り囲む円筒状の外筒(外筒部材)9B、具体的には、外筒ベース部10Dが、ノズル本体3Dの先端側端面(突出管4A側の端面)に取り付けられている。噴射領域17Bが、外筒9B内で外筒ベース部10Dの端面86よりも噴射ノズル2の先端側に形成されており、曲面12A及び12C、及び端面86によって囲まれている。突出管4Aの先端部は、端面86より噴射領域17B内に突出する。端面86は突出管4Aの外面に対して垂直に配置されている。外筒9Bの開口形成部11で囲まれた開口部13の開口面積は、噴射領域17Bの、噴射ノズル2Aの半径方向における最大の断面積よりも小さくなっている。
【0093】
本実施例のWJP方法では、噴射ノズル2Aがスイーベルユニット55に取り付けられているWJP装置46が、原子炉圧力容器42内の水中を下降され、所定の炉内計装筒44の上端に着座される。この炉内計装筒44と下鏡部43の溶接部45に対するWJPが、噴射ノズル2Aを用いて施工される。高圧ポンプ110から吐出された高圧水が、実施例2と同様に、噴射ノズル2Aに供給され、噴射ノズル2Aの噴射口87から噴射流32となって噴射される。噴射流32は、開口部13を通して溶接部45の表面に向かって流れる。水不足解消流34は、開口部13を通して負圧状態になった噴射領域17Bに向かって流れ、噴射領域17B内で曲面12Aに沿って流れて突出管4Aに向かうようにスムーズに流れの方向を変えることができる。このため、噴射ノズル2Aを用いた本実施例によれば、実施例1と同様に、噴射領域17内を流れる水不足解消流34のエネルギーの浪費が抑えられ、より大きな圧縮残留応力が溶接部45の表面に付与される。
【0094】
噴射領域17B内で曲面12Aに沿って流れた水不足解消流34は、さらに、外筒ベース部10Dの端面86に沿って流れて、突出管4Aの外面に当たって噴射流32の流れ方向に流れの向きを変える。このように流れの向きを変えた水不足解消流34が噴射流32と衝突するため、噴射距離の裕度が増大する。
【0095】
本実施例は、実施例2で生じる効果を得ることができる。
【0096】
支持部材26の先端部に噴射ノズル2Aを取り付けた、実施例1に適用されるWJP装置1を用いることにより、噴射ノズル2Aから噴射流を噴射して発生したキャビテーション気泡の崩壊を利用し、水槽99内の水30に浸漬させた板部材31に対して圧縮残留応力を付与してもよい。
【実施例4】
【0097】
本発明の好適な他の実施例である実施例4のウォータージェットピーニング方法(WJP方法)を、図21を用いて説明する。本実施例のWJP方法に用いられる噴射ノズルは、図21に示す噴射ノズル2Bである。また、本実施例のWJP方法は、加圧水型原子炉の原子炉圧力容器内の底部に設けられた炉内計装筒と原子炉圧力容器の底部との溶接部に対して行われる例を示している。
【0098】
噴射ノズル2Bは、実施例3で用いられる噴射ノズル2Aにおいて突出管4Aの先端を外筒ベース部10Dの端面86の位置に位置させた構成を有している。噴射ノズル2Bでは、突出管4Aの先端部が噴射領域17Bに突出していない。噴射ノズル2Bの他の構成は噴射ノズル2Aと同じである。
【0099】
本実施例のWJP方法では、噴射ノズル2Bがスイーベルユニット55に取り付けられているWJP装置46が、原子炉圧力容器42内の水中を下降され、所定の炉内計装筒44の上端に着座される。この炉内計装筒44と下鏡部43の溶接部45に対するWJPが、噴射ノズル2Bを用いて施工される。高圧ポンプ110から吐出された高圧水が、実施例2と同様に、噴射ノズル2Bに供給され、噴射ノズル2Bの噴射口87から噴射流32となって噴射される。噴射流32は、開口部13を通して溶接部45の表面に向かって流れる。水不足解消流34は、開口部13を通して負圧状態になった噴射領域17Bに向かって流れ、噴射領域17B内で曲面12Aに沿って流れて噴射口87に向かうようにスムーズに流れの方向を変えることができる。噴射領域17B内で曲面12Aに沿って流れた水不足解消流34は、さらに、外筒ベース部10Dの端面86に沿って流れて、噴射口87から噴射された噴射流32と衝突する。曲面12Aに沿って流れた水不足解消流34は噴射領域17内でのエネルギーの浪費が抑えられ、より大きなエネルギーを保有した状態で噴射流32と衝突するため、より多くのキャビテーション気泡が発生し、より大きな圧縮残留応力が溶接部45の表面に付与される。
【0100】
しかしながら、噴射ノズル2Bは、噴射ノズル2のように曲面12Bを有していなく、噴射ノズル2Aのように突出管4Aの先端部が噴射領域17Bに突出していないため、噴射ノズル2Bでは、端面86に沿って流れる水不足解消流34は、噴射流32の流動方向の成分が小さくなる。このため、噴射ノズル2Aにおける噴射距離の裕度は、噴射ノズル2,2Aのその裕度程、増大しない。
【0101】
支持部材26の先端部に噴射ノズル2Bを取り付けた、実施例1に適用されるWJP装置1を用いることにより、噴射ノズル2Bから噴射流を噴射して発生したキャビテーション気泡の崩壊を利用し、水槽99内の水30に浸漬させた板部材31に対して圧縮残留応力を付与してもよい。
【0102】
噴射ノズル2の替りに噴射ノズル2A及び2Bのいずれかを取り付けた実施例2に適用されたWJP装置46を、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器の下鏡部におけるスタブチューブと下鏡部の溶接部、スタブチューブに挿入された制御棒駆動機構ハウジングとスタブチューブとの溶接部、及び炉内中性子検出器ハウジングと下鏡部の溶接部のそれぞれに対するWJPの施工に用いることができる。スタブチューブ、制御棒駆動機構ハウジング及び炉内中性子検出器ハウジングは、いずれも、原子炉圧力容器の炉底部である下鏡部に取り付けられる管状部材である。
【0103】
なお、加圧水型原子炉の炉内計装筒44、及び沸騰水型原子炉のスタブチューブ、制御棒駆動機構ハウジング及び炉内中性子検出器ハウジングは炉内構造物である。これらの管状部材以外の炉内構造物、例えば、沸騰水型原子炉の圧力容器内に配置された炉心シュラウドの溶接部に対しても、噴射ノズル2,2A及び2Bのうちのいずれか1つの噴射ノズルを用いてWJPを施工することができる。
【符号の説明】
【0104】
1,46…ウォータージェットピーニング装置、2,2A,2B…噴射ノズル、3,3D…ノズル本体、4…突出管、7…スロート部、8,87…噴射口、9,9B…外筒、10,10D…外筒ベース部、10B…円筒部、11…開口形成部、12A,12B,12C…曲面、13…開口部、14…高圧ホース、14A…第1高圧ホース、14B…第2高圧ホース、17,17B…噴射領域、18…ノズル走査装置、31…板部材、42…原子炉圧力容器、43…下鏡部、44…炉内計装筒、45…溶接部、47…ケーシング、54…噴射ノズル移動装置、64…旋回機構部、86…端面、99…水槽、110…高圧ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21