特許第6185831号(P6185831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185831旭光文字板及び旭光文字板を備えた自動車用メータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185831
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】旭光文字板及び旭光文字板を備えた自動車用メータ
(51)【国際特許分類】
   G01D 13/04 20060101AFI20170814BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   G01D13/04 Z
   B60K35/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-257019(P2013-257019)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-114228(P2015-114228A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100192474
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 健次
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】藤田 順雄
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 創
【審査官】 櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−40773(JP,A)
【文献】 特開2006−208221(JP,A)
【文献】 特許第4543046(JP,B2)
【文献】 特開2007−249028(JP,A)
【文献】 特開平8−21749(JP,A)
【文献】 特開2009−282101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 13/04
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形金型の金型目付成形面によって旭光目付領域が成形される樹脂製の基板本体と、
前記旭光目付領域の中心から半径方向外側に交差せずに放射状に延びて最外周端における間隔が1μm以下となるように形成され、前記旭光目付領域に旭光模様を付与する複数の微細な溝と、
前記基板本体の少なくとも前記旭光目付領域に被着される金属薄膜と、
を備えることを特徴とする旭光文字板。
【請求項2】
請求項1に記載の旭光文字板であって、
前記溝は、隣合う溝同士で深さが異なることを特徴とする旭光文字板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の旭光文字板であって、
前記基板本体が、転写性の良い樹脂材料により成形されることを特徴とする旭光文字板。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の旭光文字板を備えることを特徴とする自動車用メータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旭光文字板及び旭光文字板を備えた自動車用メータに関する。
【背景技術】
【0002】
熱、振動等による使用環境条件が過酷な例えば自動車用メータに用いられる文字板には、ステンレスやアルミニウムなどの金属により製造されることで、自動車用メータに金属感、高級感或いは装飾性を持たせるようにしたものが知られている(特許文献1等参照)。同文献の文字板は、板部材が金属からなり且つ表面に旭光目付が施される。
【0003】
旭光目付は、ブラシなどにより金属表面に微細な溝の目付を行うことで、溝に反射した外部光により、金属文字板の表面に放射状の光沢が生まれる。ブラシによる目付は、金属文字板の中心に向かう方向にブラシをストロークさせ、表面に微細な溝を形成する。それと同時に文字板を回転させる。即ち、ブラシをストロークさせた後、文字板を微小角度だけ回転させ、次のストロークを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−4495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の目付方法では、一回のストロークでブラシ幅に相当する複数本の目付が同時に施される。先のストロークの目付は、文字板の中心へ向かう直線上の目付であり、後のストロークも同様である。そのため、先のストロークと後のストロークの目付は、互いに交差する箇所が多数現れる。このような交差する箇所が多数現れた旭光目付は、白色の光沢となり、金属加工としての質感が低下する。また、ブラシなどにより金属文字板の一枚一枚に微細な溝による目付を行うことは、全く同じ旭光模様を量産することに向かず、材料コスト、製造コストも嵩み高価となる。更に、金属文字板は、重量が大きく、特に車輌用の自動車用メータに用いられる場合には軽量化の点で不利となる。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、樹脂成形品でありながら、あたかも本物の金属を切削して製造されたような見栄えを視認者に与えることができ、金属切削品に比べ低コストで得られる旭光文字板及び旭光文字板を備えた自動車用メータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 成形金型の金型目付成形面によって旭光目付領域が成形される樹脂製の基板本体と、前記旭光目付領域の中心から半径方向外側に交差せずに放射状に延びて最外周端における間隔が1μm以下となるように形成され、前記旭光目付領域に旭光模様を付与する複数の微細な溝と、前記基板本体の少なくとも前記旭光目付領域に被着される金属薄膜と、を備えることを特徴とする旭光文字板。
【0008】
上記(1)の構成の旭光文字板によれば、樹脂製の基板本体の表面には、成形金型の金型目付成形面から転写された旭光目付領域が成形される。旭光目付領域には、微細な溝が交差せずに放射状に多数施される。つまり、目付の溝は、交差せずに、中心から半径方向外側に真直に延びて整然と配置される。放射状に延びる微細な溝は、最外周端における間隔が1μm以下とされている。これにより、それぞれの溝で反射した光が互いに干渉し、虹色模様として見える。本構成によれば、最外周端における間隔が1μm以下とされることで、光の干渉が生じ、虹色の光沢が得られる。特に、最外周端における溝の間隔が1μm以下とされることで、金属調としての質感がより効果的に強調される。
【0009】
(2) 上記(1)の構成の旭光文字板であって、前記溝は、隣合う溝同士で深さが異なることを特徴とする旭光文字板。
【0010】
上記(2)の構成の旭光文字板によれば、隣合う溝毎に反射される反射光の波長が異なるものとなり、現れる光沢における違和感のある規則性が抑制される。これにより、旭光模様が作為的とならず、より本物感に富んだ金属感が得られる。
【0011】
(3) 上記(1)または(2)の構成の旭光文字板であって、前記基板本体が、転写性の良い樹脂材料により成形されることを特徴とする旭光文字板。
【0012】
上記(3)の構成の旭光文字板によれば、成形金型の金型目付成形面に形成された旭光目付の微細な金型溝を、樹脂成形品である基板本体により微細な溝として忠実に再現することができる。
【0013】
(4) 上記(1)〜(3)の何れか1つの構成の旭光文字板を備えることを特徴とする自動車用メータ。
【0014】
上記(4)の構成の自動車用メータによれば、金属調としての質感を低下させる白色の光沢が生じず、旭光模様が虹色の光沢を有するので、視認者に高級感の印象を与えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る旭光文字板及び旭光文字板を備えた自動車用メータによれば、樹脂成形品でありながら、あたかも本物の金属を切削して製造されたような見栄えを視認者に与えることができ、金属切削品に比べ低コストで得られる旭光文字板及び旭光文字板を備えた自動車用メータを提供することができる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る旭光文字板を備える車両用コンビネーションメータの正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
図2】(a)は図1に示した速度計の正面図、(b)は(a)のB部における旭光目付領域の要部拡大図である。
図3】(a)は図2の(b)におけるB−B断面を模式的に表した断面図、(b)は金型目付成形面と樹脂材料を模式的に表した断面図である。
図4図3の(a)に示した旭光目付領域における光の干渉を表す作用図である。
図5】比較例に係る金属文字板のブラシによる目付のストローク方向を模式的に表した要部拡大正面図である。
図6】比較例に係る金属文字板の要部拡大写真である。
図7】本実施形態に係る旭光模様が付された旭光文字板の要部拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1の(a)、(b)に示すように、本発明の一実施形態に係る旭光文字板11を備える車両用コンビネーションメータ13は、ケース15と、速度計17と、燃料計19と、回転計21と、水温計23と、シフト表示部25と、ターン表示部27と、マルチ表示部29と、を備える。例えば速度計17及び回転計21は、配線板31に内機33が固定される。内機33には指針35の回転軸37が突設される。ケース15には見返し39が取り付けられ、見返し39は配線板31や内機33等を覆い、開口から上記の各種メータ類を表出させている。見返し39の表側は、ケース15に取り付けられる透明カバー41によって更に覆われる。
【0019】
本実施形態に係る旭光文字板11は、上記の車両用コンビネーションメータ13における自動車用メータである速度計17、回転計21、燃料計19及び水温計23に適用することができる。以下、本実施形態においては、速度計17における旭光文字板11を例に説明する。
【0020】
図1図2に示すように、旭光文字板11は、基板本体43と、溝47と、金属薄膜45と、を有する(図3の(a)参照)。
【0021】
本実施形態に係る基板本体43は、円板状の合成樹脂材からなり、図3の(b)に示す成形金型49の金型目付成形面51によって旭光目付領域53が成形される。基板本体43の内側には円板状の中央円板部55が設けられ、中央円板部55は中心Cに指針35の回転軸37が貫通する軸孔57を有する。
【0022】
基板本体43は、中央円板部55の外側に、環状の旭光目付領域53が連設されている。旭光目付領域53には、円周方向に所定間隔で目盛突起59が突設されている。基板本体43は透明な樹脂材で成形されており、導光板として作用する。そこで、目盛突起59の突出端面からは、図示しない光源から導光された光が出射される。旭光目付領域53の外側は、目盛付き傾斜面61となる。目盛付き傾斜面61の外側には、急傾斜してリング状となる枠壁部63が連設されている。枠壁部63の更に外側には、外側に下り傾斜する逆傾斜面が連設される。逆傾斜面は、速度文字65が所定間隔で設けられた外周文字板67となる。
【0023】
本実施形態の旭光目付領域53は、基板本体43の表面に軸孔57を中心に少なくとも円環状に設けられる。ここで、少なくとも円環状に設けられるとは、中央円板部55も含めて旭光模様が付されてもよい意味である。
【0024】
本実施形態に係る溝47は、図2の(c)に示すように、旭光目付領域53の中心Cから半径方向外側に交差せずに放射状に延びている。溝47は、微細な複数の溝からなり、最外周端54において、その間隔(溝底の間隔P)が2μm以下(好ましくは略1μm)として配置されている。本実施形態において、溝47は、最外周端54における間隔が1μm以下となるように形成されて旭光目付領域53に旭光模様が付与される。これら溝47は、成形金型49の金型目付成形面51から転写されることで形成される。
【0025】
本実施形態に係る溝47は、隣合う溝同士で深さが異なる。溝47の深さを異ならせることで旭光模様が目視により作為的とならず、より本物感に富んだ金属調表面となる。これらすべての溝47の延長線上に基板本体43の中心Cがある(図2の(b)参照)。本構成では、中心部分のないリング状の基板本体43を例に挙げるが、基板本体43が円板状の部品の場合、それぞれの溝47は基板本体43の中心Cまで延在して収束する。
【0026】
なお、図3の(b)に示す金型目付成形面51の金型溝71の深さDは、最大1μmでランダムとされる。具体的には、この金型目付成形面51にて基板本体43を樹脂成形し、後述するアンダーコート69と金属薄膜45で覆われた旭光文字板11の溝47を測定すると、図3(a)に示した溝47の深さdは、0.024〜0.437となる(なお、この測定値は、旭光目付領域53の一部分である)。このことから、金型目付成形面51の金型溝71の深さDは、1μm以下で推移していると考えられる。
【0027】
本実施形態において、旭光模様は、金型目付成形面51から転写される。金型目付成形面51は、エッチング、バフ、研磨等によっては形成されない。これは、旭光模様の再現性を確保し、成形金型49の量産を可能とするためである。
【0028】
成形金型49は、各生産拠点用として複数のものが製造される。この際、金型を製作する加工情報は、共通の加工データとして加工機械に記憶される。この加工機械としては、例えばNC(Numerical Control)フライス盤を用いることができる。微細溝入れ加工用の工具としては、例えば超精密ダイヤモンド切削工具を使用することができる。この種の超精密ダイヤモンド切削工具は、数百nmの超微細溝入れ加工が可能となる。その結果、精密プラスチック金型の材料である無電解ニッケルめっきや銅、アルミ等への超微細溝入れ加工が可能となる。加工データは、金型素材の位置や主軸の動き等を数値化したものとなる。これにより、旭光目付は、任意の成形金型49の金型目付成形面51においても、均一な品質で形成される。
【0029】
また、基板本体43を成形する樹脂材料には、転写性に優れるものが使用される。樹脂材料の転写製の良さを左右する性能として、流動性が挙げられる。流動性が高いと、成形時に金型形状に樹脂材料が隙間無く充填されるため、金型形状に追従した成形品を得ることができる。一方、流動性が低い樹脂材料の場合、樹脂材料の充填が不十分なまま固まってしまい、金型の形状に追従しない成形品となってしまう。
【0030】
流動性を備える樹脂材料としては、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP)等の熱可塑性プラスチックを好適に用いることができる。これにより、成形金型49に射出される樹脂材料は、金型目付成形面51に形成されている旭光目付模様を、基板本体43の旭光目付領域53に忠実に転写することができる。
【0031】
本実施形態に係る金属薄膜45は、基板本体43の少なくとも旭光目付領域53に被着される。旭光目付領域53は、金型目付成形面51に形成した旭光目付を転写した樹脂成形部分の環状平板部に対し、金属薄膜45を施すことで金属調に仕上げられている。ここで、従来では、成膜する金属としてアルミを使用していたが、本構成では、チタンが用いられる。基板本体43とチタンの密着性を高めるために、チタン成膜前に、基板本体43の旭光目付の施された領域には、図3の(a)に示すアンダーコート69がコーティングされる。つまり、旭光目付の施された領域に、アンダーコート69を介してチタン薄膜からなる金属薄膜45が成膜されている。チタン薄膜は、蒸着によって成膜される。
【0032】
金属薄膜45の膜厚は、0.001〜1μmの範囲内の値とされることが望ましい。これにより、旭光目付において、より本物感に富んだ金属調表面が、より確実に表現され得る。
【0033】
なお、本実施形態では、金属薄膜45としてチタン薄膜が用いられるが、本発明に係る旭光文字板は、金属薄膜45として、この他の金属、例えばアルミ、ステンレス、金、銀、白金、銅、亜鉛、ニッケル、クロム、錫、モリブデン等が用いられることを妨げるものではない。特に、後述するように、塩化物溶液中での腐食を考慮する必要のない場合には、ステンレスを用いても本構成と同等の効果を得ることができる。また、金属調の風合いとして艶消し等が求められる場合には、不動態皮膜である酸化アルミニウムを形成したアルミ薄膜を旭光目付に成膜してもよい。但し、これらの場合においてもトップコート層を設けないことが要件となる。これは、形成された目付の溝形状にトップコートが追従できず、外部光の反射によりトップコートが目立ってしまうことを抑制するためである。
【0034】
次に、上記構成を有する旭光文字板11の作用を説明する。
本実施形態に係る旭光文字板11によれば、樹脂製の基板本体43の表面には、成形金型49の金型目付成形面51から転写された旭光目付領域53が成形される。旭光目付領域53には、微細な溝47が交差せずに放射状に多数施されている。つまり、目付の溝47は、交差せずに、中心Cから半径方向外側に真直に延びて整然と配置されている。
【0035】
図4に示すように、外部光は、微細な溝47により反射角θで反射され、人間の目に到達する。放射状に延びる微細な溝47は、最外周端54における間隔(ピッチP)が1μm以下とされている。これにより、例えば外部光75と外部光77がそれぞれの溝47で反射した反射光79と反射光81が互いに干渉し、虹色模様として見える。溝47の間隔をピッチP、外部光の波長をλとすると、反射光が互いに強め合う条件は、Psinθ=mλ(但し、mは整数)が成り立つ。
【0036】
即ち、経路の差が波長の整数倍になると、反射光79と反射光81は山と山、谷と谷が同期して伝播するので、外部光75と外部光77とが強め合うことになる。実際は、様々な反射角の反射光が視界に入る。図4はその内の1つを示したものである。従って、図7のような旭光目付領域53には、溝毎に色の異なる光沢を見ることになる。また、見る角度を変えると、溝1本1本の光沢色も変化することとなる。なお、放射状に延びる微細で平行な溝47は、溝47の間隔が1.5〜2.0μm付近においても虹色模様として見える。
【0037】
一方、図5に示す比較例に係る金属文字板73は、ブラシ(図示略)により目付が施されている。ブラシによる目付は、金属文字板73の中心に向かう方向にブラシをストロークさせ、表面に微細な溝47を形成する。それと同時に金属文字板73を矢印R方向に回転させる。即ち、ブラシをストロークさせた後、金属文字板73を微小角度だけ回転させ、次のストロークを行う。このため、一回のストロークSでブラシ幅に相当する複数本の目付(溝47)が同時に施される。先のストローク83の目付は、金属文字板73の中心へ向かう直線上の目付であり、後のストローク85も同様である。そのため、先のストローク83と後のストローク85の目付は、互いに交差する箇所が多数現れる。このように、溝47の交差する箇所が多数発生していると、光の干渉が発生せず、図6に示すように、白色の光沢となる。
【0038】
これに対し、本実施形態に係る旭光文字板11によれば、最外周端54における間隔が1μm以下とされることで、光の干渉が生じ、図7に示す虹色の光沢が得られる。特に、最外周端54における溝47の間隔が1μm以下とされることで、金属調としての質感がより効果的に強調される。
【0039】
また、本実施形態に係る旭光文字板11では、隣合う溝同士で深さが異なるので、隣合う溝毎に反射される反射光の波長が異なるものとなり、現れる光沢における違和感のある規則性が抑制される。これにより、旭光模様が作為的とならず、より本物感に富んだ金属感が得られる。
【0040】
更に、本実施形態に係る旭光文字板11では、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP)等の転写性の良い樹脂材料により成形されるので、成形金型49の金型目付成形面51に形成された旭光目付の微細な金型溝71を、樹脂成形品である基板本体43により微細な溝47として忠実に再現することができる。
【0041】
そして、本実施形態に係る旭光文字板11を備える自動車用メータでは、金属調としての質感を低下させる白色の光沢が生じず、旭光模様が虹色の光沢を有するので、視認者に高級感の印象を与えることができる。
【0042】
ここで、上述した本発明に係る旭光文字板及び旭光文字板を備えた自動車用メータの実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
[1] 成形金型49の金型目付成形面51によって旭光目付領域53が成形される樹脂製の基板本体43と、前記旭光目付領域53の中心Cから半径方向外側に交差せずに放射状に延びて最外周端54における間隔が1μm以下となるように形成され、前記旭光目付領域53に旭光模様を付与する複数の微細な溝47と、前記基板本体43の少なくとも前記旭光目付領域53に被着される金属薄膜45と、を備えることを特徴とする旭光文字板11。
[2] 上記[1]の構成の旭光文字板11であって、前記溝47は、隣合う溝同士で深さが異なることを特徴とする旭光文字板11。
[3] 上記[1]または[2]の構成の旭光文字板11であって、前記基板本体43が、転写性の良い樹脂材料により成形されることを特徴とする旭光文字板11。
[4] 上記[1]〜[3]の何れか1つの構成の旭光文字板11を備えることを特徴とする自動車用メータ(速度計)17。
【0043】
従って、本実施形態に係る旭光文字板11及び旭光文字板11を備えた速度計17によれば、樹脂成形品でありながら、あたかも本物の金属を切削して製造されたような見栄えを視認者に与えることができ、金属切削品に比べ低コストで得られる旭光文字板11及び旭光文字板11を備えた速度計17を提供することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0044】
11…旭光文字板
17…速度計(自動車用メータ)
43…基板本体
45…金属薄膜
47…溝
49…成形金型
51…金型目付成形面
53…旭光目付領域
C…中心
P…ピッチ(間隔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7