(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺部材の端末が取り付けられ、相手部材に接続される端末部材を備え、該端末部材が前記相手部材の挿入開口部に挿入されて前記相手部材に接続される端末接続構造であって、
前記端末部材が、
前記長尺部材の端末が取り付けられる取付部、および、前記取付部から延び、前記挿入開口部に挿入される挿入部を備えた端末部材本体と、
前記端末部材本体の挿入部に嵌合される嵌合子とを備え、
前記嵌合子が、
前記嵌合子の軸方向の一端側に設けられ、軸方向にスリットが設けられた環状の基部と、
前記挿入開口部への挿入時に弾性変形して挿入開口部に挿入され、挿入開口部に挿入された後に広がり、相手部材の内側係合部と係合する複数の弾性片と、
前記複数の弾性片の間で前記挿入部の軸方向に延び、軸方向両端が前記端末部材本体と係合して前記嵌合子の前記挿入部に対する軸方向の移動を規制する複数の規制部と、
前記複数の規制部を、前記挿入部の周方向で互いに連結する連結部と
を備え、
前記複数の規制部は、前記挿入部の外周に沿ってほぼ等間隔で設けられた2つの規制部を有し、
前記連結部が、前記挿入部の周方向で前記2つの規制部同士を連結するように半円状に設けられていることを特徴とする端末接続構造。
前記長尺部材がコントロールケーブルであり、前記端末部材本体の取付部が、前記挿入部よりも大きい柱状に形成され、前記取付部に、前記コントロールケーブルのインナーケーブルのケーブルエンドが係止される係止凹部が形成され、前記係止凹部は、前記取付部のうち、前記挿入部が延びる側の端面において開口し、前記連結部が前記取付部の端面に係合するとともに、前記連結部が前記取付部の端面における係止凹部の開口幅よりも長く形成されていることを特徴とする請求項2記載の端末接続構造。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照し、本発明の端末接続構造を詳細に説明する。
【0014】
図1および
図2に示されるように、本発明の端末接続構造1は、長尺部材2の端末21a、21bが取り付けられ、相手部材3に接続される端末部材4を備え、端末部材4が相手部材3の挿入開口部3aに挿入されて相手部材3に接続されている。端末接続構造1は、相手部材3と長尺部材2とを、端末部材4を介して接続するために用いられ、たとえば、複数のコントロールケーブルを互いに中継接続する車両用のシート操作装置や、フューエルリッドの開閉機構、トランクの開閉機構などに適用することができる。また、車両用以外の用途にも適用することが可能である。
【0015】
長尺部材2は、所定の長さを有し、端末部材4を介して離れた地点間を接続するために用いられる。また、長尺部材2は、たとえば、一方側に加えられた操作力を、離れた位置にある他方側へと伝達するために用いることができる。長尺部材2は、離れた地点を接続するものであれば、特に限定されないが、たとえば、
図1および
図2に示すように、インナーケーブル22a、22bとアウターケーシング23a、23bとを備えたコントロールケーブルや、操作力を伝達するロッド状の部材であっても構わない。なお、本実施形態では、コントロールケーブルのインナーケーブル22a、22bの一端側の端末21a、21bが端末部材4に取り付けられているが、アウターケーシング23a、23bの端末が端末部材4に取り付けられても構わない。また、
図1では、端末部材4には、長尺部材2が2つ取り付けられているが、端末部材4に取り付けられる長尺部材2の数は特に限定されず、1つでも、3つ以上であってもよい。
【0016】
端末部材4は、詳細は後述するが、相手部材3に接続され、長尺部材2を相手部材3に接続する接続部として機能する。長尺部材2の端末21a、21bと端末部材4との間の取り付け方は特に限定されるものではなく、本実施形態で示すように、長尺部材2の端末21a、21bを係合により取り付けてもよいし、鋳込み、溶接、螺合等、他の公知の固着手段で取り付けても構わない。長尺部材2が取り付けられる端末部材4は、上述したように、相手部材3の挿入開口部3aに挿入されて相手部材3に接続される。
【0017】
相手部材3は、端末部材4が接続される接続対象であり、
図1に示されるように、端末部材4を挿入することが可能な挿入開口部3aを有している。相手部材3は、端末接続構造1の用途に応じて、端末部材4を接続することができるものであれば、その形状や構造は限定されるものではない。また、挿入開口部3aは、挿入される端末部材4の形状に応じて適宜変更が可能であるが、後述するように、端末部材4の嵌合子6の弾性片61が、端末部材4の挿入開口部3aへの挿入時に、挿入開口部3aの開口縁と当接し、端末部材4の挿入完了後に弾性片61が広がった際に、弾性片61が挿入開口部3aの周囲に設けられた内側係合部3bと係合し、弾性片61と係合して、端末部材4が相手部材3から抜け出ることを防止する大きさにされている。
【0018】
なお、本実施形態では、相手部材3は、
図1に示されるように、端末部材4を挿入可能な内部空間Sを有する略筒状のジョイント部材として示されている。
図1に示した実施形態では、相手部材3(ジョイント部材)の一方側に端末部材4が接続され、他方側に他のインナーケーブル22cが接続されることにより、他のインナーケーブル22cと長尺部材2とを相手部材3(ジョイント部材)により連結している。相手部材3と端末部材4との間の接続構造については後述するが、本実施形態の場合は、他のインナーケーブル22cに引き操作を加えると、相手部材3(ジョイント部材)を介して、2つの長尺部材2を引き操作できるように構成されている。より具体的には、
図1に示されるように、相手部材3は、相手部材3の一端側に端末部材4が接続され、他端側に他のインナーケーブル22cの端末21cが係止され、筒状のジョイントケースC内にスライド可能に収容されている。
【0019】
ジョイントケースCは、2つの部材を係合させて相手部材3を収容しており、一方側(
図1中、右側)の部材には、2つのアウターケーシング23a、23bの端末が固定され、他方側(
図1中、左側)の部材には、他のインナーケーブル22cが挿通されるアウターケーシング23cの端末が固定されて、中継機構を構成している。このような中継機構は、上述したように、たとえば車両のシート操作装置に適用することができる。なお、本実施形態では、1つの長尺部材(アウターケーシング23c、インナーケーブル22c)と、2つの長尺部材2(アウターケーシング23a、インナーケーブル22aと、アウターケーシング23b、インナーケーブル22b)とを中継接続する中継機構が示されている。しかしながら、このような構造には限定されず、たとえばフューエルリッドの開閉機構など、1つの長尺部材と1つの長尺部材とを中継接続する中継機構に適用しても構わないし、2つの長尺部材と2つの長尺部材とを接続するものであっても構わない。また、本実施形態では、端末部材4は相手部材3の一端側のみに接続されているが、相手部材3の両端に接続されてもよい。また、端末部材4は、長尺部材2の端末を接続するために、ブラケットなどに取り付けられても構わない。
【0020】
つぎに、端末部材4の構造、および、端末部材4と相手部材3との間の接続構造について説明する。端末部材4は、
図1および
図2に示されるように、端末部材本体5と、端末部材本体5に取り付けられる嵌合子6とを備えている。端末部材本体5は、長尺部材2と相手部材3とを接続する部材であり、長尺部材2の端末21a、21bが取り付けられる取付部51、および、取付部51から延び、挿入開口部3aに挿入される挿入部52を備えている。
【0021】
端末部材本体5の取付部51は、長尺部材2の端末21a、21bが取り付けられる部位である。取付部51の形状は、長尺部材2の端末21a、21bを取り付けることができるものであればよく、
図2、
図3(a)および(b)に示されるように、外形が略円柱状であってもよいし、角柱状、その他の形状であってもよい。取付部51への長尺部材2の端末21a、21bの取り付け方は、上述したように特に限定されるものではなく、長尺部材2の端末21a、21bを係合等、公知の固着手段により取り付けられる。長尺部材2の端末21a、21bを係合により取付部51に取り付ける場合、係合固定の方法は特に限定されないが、取付部51の外周側から係合してもよいし、長尺部材2が1つだけの場合などは、端末部材本体5の挿入部52の内部に空洞を設けて、挿入部52の内部を通して、長尺部材2の端末21a、21bを、取付部51に係合してもよい。なお、本実施形態では、
図3(a)および(b)に示されるように、端末部材本体5の取付部51は、挿入部52よりも大きい柱状に形成され、取付部51に、コントロールケーブルのインナーケーブル22a、22bのケーブルエンド(端末21a、21b)が係止される係止凹部51aが形成されている。係止凹部51aは、取付部51の両端面のうち、挿入部52が延びる側の端面51b(
図3(b)参照)において開口し、取付部51の軸方向長さを短くして、端末部材本体5を小型・軽量化している。係止凹部51aは、
図3(a)および(b)に示されるように、取付部51の外周側および端面51bに開口している。係止凹部51aには、インナーケーブル22a、22bの端末21a、21bが、取付部51の外周側から係合され、インナーケーブル22a、22bの取付時にインナーケーブル22a、22bをガイドするガイド溝51cに沿ってインナーケーブル22a、22bが取り付けられる。
【0022】
また、
図3(a)および(b)に示す端末部材本体5の形状は、あくまで一例であり、取付部51と挿入部52の大きさ(軸方向、軸周りの大きさ)は、特に限定されるものではない。また、係止凹部51aの形状も、図示した形状に限られず、長尺部材2の端末21a、21bの形状等に応じて適宜変更が可能である。また、本実施形態では、ガイド溝51cは、
図3(a)に示されるように、係止凹部51aから、取付部51の周方向に沿って延びた後、取付部51の軸方向に延びたものを示しているが、ガイド溝51cの形状は、特に図示した形状に限定されるものではない。その他、長尺部材2の端末21a、21bの取付部51への係合構造は、用いられる長尺部材2の本数や、端末21a、21bの形状や大きさ、端末部材本体5の形状や大きさに応じて適宜変更が可能であり、公知の係合構造を用いることができる。
【0023】
図2、
図3(a)および(b)に示されるように、取付部51からは挿入部52が取付部51と同軸上に延びている。挿入部52は、
図1に示されるように、嵌合子6が嵌合され、相手部材3の挿入開口部3aに挿入される部位である。挿入部52は、嵌合子6を嵌合することができ、嵌合子6を嵌合した後に、相手部材3の挿入開口部3aに挿入することができれば、その形状は特に限定されない。たとえば、挿入部52は挿入開口部3aに挿入しやすくするために、軸状に形成することができ、
図3(a)および(b)に示されるように、略円柱状に形成してもよいし、略角柱状に形成してもよいし、内部に空洞を有した略円筒状、略角筒状に形成してもよい。
【0024】
挿入部52は、端末部材本体5の先端側に位置する先端部位52aと、先端部位52aと軸方向で連続し、嵌合子6が嵌合される嵌合部位52bとを有している。詳細は後述するが、嵌合部位52bには、嵌合子6が嵌合するとともに、嵌合子6が軸方向に移動しないように、嵌合部位52bの先端側(
図3(a)および(b)中、左側)と、基端側(取付部51側。
図3(a)および(b)中、右側)に段部St1、St2が形成されている。段部St1、St2のうち、基端側の段部St2は、
図2、
図3(a)および(b)に示されるように、挿入部52の途中にあってもよいし、後述する他の実施形態(
図7(a)および(b)参照)のように、挿入部52と取付部51の境界部を段部St2としてもよい。
【0025】
つぎに、挿入部52に取り付けられる嵌合子6について説明する。嵌合子6は、挿入部52に嵌合して取り付けられて、挿入部52を挿入開口部3aに挿入した後、端末部材4が、操作時などに挿入開口部3aから抜け出ないようにする機能を有する。嵌合子6は、
図4(a)〜(c)に示されるように、複数の弾性片61と、複数の弾性片61の間で挿入部52の軸方向に延びる複数の規制部62と、複数の規制部62を、挿入部52の周方向で互いに連結する連結部63とを備えている。嵌合子6は、
図1に示されるように、端末部材本体5の挿入部52の嵌合部位52bに嵌合できるように、嵌合部位52bの形状に対応した全体形状(略円筒形状)を呈し、嵌合部位52bへの嵌合時や、挿入開口部3aへの挿入時などに弾性変形可能なように、金属や合成樹脂など、所定の強度を有し、弾性変形可能な材料から構成されている。より詳細に説明すると、本実施形態の嵌合子6は、嵌合部位52bの先端側(
図4(a)、(c)中、左側)において、弾性片61および規制部62が周方向で連結されて、略環状の基部64を形成している。略環状の基部64には、嵌合子6を挿入部52の先端部位52aから嵌合する際に、基部64が拡径可能なように、軸方向に沿ってスリットSLが設けられている。嵌合子6の挿入部52への嵌合は、嵌合子6が挿入部52から外れないように嵌め込まれるものであればよく、たとえば、
図2に示されるように、嵌合子6の基端部側(
図2中、右側)を挿入部52の先端部位52aから、規制部62や基部64を外側に広げながら圧入して嵌め込み、嵌め込み後に規制部62や基部64が元の状態に復元することにより嵌合することができる。
【0026】
複数の弾性片61は、
図5(a)〜(c)に示されるように、挿入開口部3aへの挿入時に弾性変形して挿入開口部3aに挿入され、挿入開口部3aに挿入された後に広がり、相手部材3の内側係合部3bと係合する。弾性片61が、相手部材3の内側係合部3bと係合することにより、嵌合子6が嵌合された端末部材本体5が、長尺部材2が操作されたときなどに相手部材3の挿入開口部3aから抜け出ることが防止される。弾性片61は、
図4(a)、
図5(a)〜(c)に示されるように、基部64から挿入部52の基端側に向かって外側に広がって延びた板バネ状に形成され、複数の(2つの)弾性片61が周方向でほぼ均等に離間するように設けられている。弾性片61は、
図5(a)に示されるように、挿入開口部3aへの挿入時に、挿入開口部3aの開口縁と当接するように外側に広がっており、
図5(b)に示されるように、挿入開口部3aの開口縁と当接した後、挿入部52を挿入開口部3aにさらに押し込むことにより、外側に広がった弾性片61が、挿入部52の軸心方向に向かって内側に弾性変形して挿入開口部3aに挿入される。挿入された後は、
図5(c)に示されるように、弾性変形した弾性片61は元の状態に戻って外側に広がる。元の状態に戻った弾性片61は、
図5(c)に示されるように、相手部材3の内側係合部3bと係合可能となり、端末部材4に取り付けられた長尺部材2が引き操作されても、端末部材本体5は、挿入開口部3aから抜け出ることがない。そして、たとえば、
図1において、図中左側のインナーケーブル22cが左側に引き操作されると、相手部材3もジョイントケースC内を左側に移動する。相手部材3が左側に移動すると、弾性片61が相手部材3の内側係合部3bと係合しているため、端末部材4も相手部材3とともに左側に移動する。これにより、
図1中、右側の2つの長尺部材2(インナーケーブル22a、22b)が操作される。
【0027】
図4(a)〜(c)に示した嵌合子6では、弾性片61は、略環状の基部64から直線的に延びたものを示しているが、挿入部52の挿入開口部3aへの挿入時に弾性変形し、挿入後は相手部材3の内側係合部3bと係合して、端末部材本体5が挿入開口部3aから抜け出ることを防止することができるものであれば、その形状は特に限定されない。また、嵌合子6に設けられる弾性片61の数は、端末部材本体5が相手部材3の挿入開口部3aから抜け出ないように、弾性片61が相手部材3の内側係合部3bと係合するものであれば、特に限定されるものではなく、
図4(a)〜(c)に示されるように2つであってもよいし、3つ以上であっても構わない。
【0028】
弾性片61は、
図5(b)に示されるように、挿入部52を挿入開口部3aに挿入するときに、挿入開口部3aの開口縁と当接しながら挿入されるため、弾性片61は挿入開口部3aの開口縁から挿入方向(
図5中、左側)とは反対方向(
図5中、右側)の反力を受ける。したがって、弾性片61が受けた挿入方向とは反対方向の反力により、嵌合子6が挿入部52に対して軸方向でずれないように、嵌合子6の軸方向両端が端末部材本体5と係合して嵌合子6の挿入部52に対する軸方向の移動を規制する複数の規制部62が設けられている。
【0029】
規制部62は、
図5(a)〜(c)に示されるように、規制部62の軸方向両端が端末部材本体5と係合しており、規制部62の先端側の端部62aが、嵌合部位52bの先端側の段差St1と係合し、規制部62の基端側の端部62bが、嵌合部位52bの基端側の段差St2と係合する。これにより規制部62は、挿入部52が挿入開口部3aへ挿入されるときには、規制部62の基端側の端部62bと嵌合部位52bの基端側の段差St2とが係合して、嵌合子6が、挿入部52に対して基端側に移動することを規制する。そして、挿入部52が挿入開口部3aに挿入された後に、長尺部材2の操作などにより、相手部材3の内側係合部3bと弾性片61が係合すると、嵌合子6は内側係合部3bからの反力により、嵌合子6を、挿入部52に対して挿入部52の先端方向に移動させる方向の力が加わるが、規制部62の先端側の端部62aと嵌合部位52bの先端側の段差St1とが係合して、嵌合子6が、挿入部52に対して先端側に移動することを規制する。
【0030】
ここで、規制部62における「軸方向の移動を規制する」とは、上述したように、嵌合子6が挿入部52(嵌合部位52b)から外れるような軸方向の移動を規制するという意味である。なお、嵌合子6が挿入部52の嵌合部位52bとの間のわずかなクリアランス間で軸方向に移動するような場合など、規制部62の長さが嵌合部位52bよりも短く形成されていることにより、嵌合子6が嵌合部位52bにおいて、嵌合部位52bから外れることなく軸方向に移動するような場合は、ここでいう「軸方向の移動」には含まれない。
【0031】
規制部62は、嵌合子6に設けられた複数の弾性片61の間に設けられている。すなわち、弾性片61から周方向で離間して、または隣接して、複数の弾性片61の間に設けられる。本実施形態では、
図4(a)〜(c)に示されるように、2つの弾性片61の間に、2つの規制部62が設けられている。しかしながら、規制部62の数は特に限定されず、たとえば、4つの弾性片61が設けられる場合には、4つの弾性片61の間の4つの空間全てに規制部62を設ける必要はなく、少なくとも2つの規制部62が設けられていればよい。規制部62は、本実施形態では、挿入部52の嵌合部位52bの軸方向長さとほぼ同じ長さを有し、挿入部52の形状に沿って軸方向に直線的に設けられているが、嵌合子6の挿入部52に対する軸方向の移動を規制することができる形状であれば、規制部62の形状は適宜変更することが可能である。
【0032】
なお、複数の規制部62は、連結部63により連結されているが、この連結部63の詳細については後述する。
【0033】
嵌合子6は、
図2に示されるように、挿入部52の先端側(先端部位52a)から嵌め込まれる。このとき、嵌合子6の規制部62は弾性変形しながら径方向外側に広がり、そのまま嵌合子6を挿入部52の基端側に向けて嵌め込んでいくと、挿入部52の先端部位52aにより略環状の基部64が弾性変形して広がる。略環状の基部64が先端部位52aを越えると、嵌合子6は元の形状に復元し、嵌合部位52bに嵌め込まれる。この状態で、環状の基部64の先端側、規制部62の先端側の端部62aと、連結部63の基端側と、規制部62の基端側の端部62bが、両段部St1、St2に挟み込まれて挿入部52の嵌合部位52bに嵌合し、嵌合子6が端末部材本体5に取り付けられる。
【0034】
従来の構造の場合も、上述した特許文献1に示されるように、略環状の基部と規制部とを有した構造は存在し、同様の取り付け方法で取り付けられていた。この従来の構造で、嵌合子を挿入部に取り付ける場合について、
図6a〜
図6fを用いて説明する。
【0035】
従来の構造では、
図6aに示す状態から、嵌合子600の規制部620の先端部を、挿入部520の先端部位520aに押し込んで取り付ける。しかし、嵌合子600を挿入部520に対して強く押し込んだ際に、嵌合子600と挿入部520の軸が合うように、しかも均一に力を加えて押し込まなければ、
図6bに示されるように、挿入部520の軸に対して嵌合子600の軸が傾いてしまうことがある。この状態のまま嵌合子600が挿入部520に強く押し込まれると、
図6cに示されるように、少なくとも一方の規制部620(
図6cにおいては図中、下側の規制部620)が塑性変形してしまう場合がある。このような場合に、嵌合子600をそのまま挿入部520に差し込んでいくと、
図6dに示されるように、嵌合子600は挿入部520の嵌合部位520bに取り付けられるが、塑性変形した規制部620は、挿入部520の嵌合部位520bの基端側の段部St2に係合せず、嵌合子600の挿入部520に対する軸方向の移動が規制できなくなる。すなわち、
図6eに示されるように、規制部620の基端側の端部が嵌合部位520bの基端側の段部St2に係合できない状態で、相手部材300の挿入開口部300aに挿入していくと、挿入開口部300aの開口縁と外側に広がった弾性片610とが当接する。挿入開口部300aの開口縁と弾性片610とが当接した後、そのまま挿入していくと、弾性片610は、挿入開口部300aの開口縁から、図中右側に向かって反力を受けて、嵌合子600は開口縁から右側に力を受ける。嵌合子600の規制部620のうちの一方は、塑性変形して段部St2と係合しておらず、嵌合子600の嵌合部位520bへの嵌合が不安定となっている。したがって、そのまま挿入部520を挿入開口部300aに挿入していくと、
図6fに示されるように、不安定な嵌合状態となっている嵌合子600が嵌合部位520bの段差St2を越えて嵌合部位520bの軸方向外側に乗り上げてしまう。このような場合には、端末部材を相手部材にうまく取り付けることができなくなる場合があり、後加工、修正加工して取り付けたり、嵌合子600を交換して再度取り付け作業をしなければならない場合もある。
【0036】
一方、本発明の嵌合子6は、
図4(a)〜(c)に示されるように、複数の規制部62を、挿入部52の周方向で互いに連結する連結部63を有している。すなわち、規制部62は、
図6a〜
図6fに示される従来のものとは異なり、規制部62同士が周方向で互いに連結されている。規制部62が塑性変形してしまうのは、規制部62が挿入部52に嵌合する際に、外側に広がりすぎてしまうからであるが、規制部62同士が周方向で互いに連結されている場合は、連結された規制部62のうち、一方の規制部62が外側に広がろうとしても、その広がろうとする一方の規制部62と連結された他方の規制部62と連結部63により、一方の規制部62の広がりが抑制される。したがって、一方の規制部62が塑性変形してしまうような変形位置まで移動することを防止することができるとともに、挿入部52に嵌合するときに挿入部52から受ける力を、それぞれの規制部62だけで受けるのではなく、連結された他方の規制部62や、連結部63により分散させることができる。また、規制部62が一時的に弾性変形したとしても、連結部63の弾性復元力も手伝って、規制部62が元の位置へ戻りやすくなっている。したがって、嵌合子6が挿入部52に嵌合されるときに、規制部62が一時的に外周側に広がったとしても、連結部63が規制部62同士を連結することにより、規制部62の端部が確実に端末部材本体5と係合する元の位置まで戻すことができる。それにより、規制部62の基端側の端部62bが確実に挿入部52の嵌合部位52bの基端側の段部St2と確実に係合する。したがって、嵌合子6の挿入部52に対する軸方向の移動を確実に規制することができ、
図5(a)〜(c)に示したように、嵌合子6が嵌合された挿入部52を相手部材3の挿入開口部3aに挿入するときに、弾性片61が挿入開口部3aの開口縁から反力を受けても、嵌合子6が挿入部52に対して軸方向にずれることがない。これにより、端末部材4を相手部材3に対して、確実に接続することができる。また、嵌合子6が挿入部52に対して軸方向にずれることがないので、嵌合子6と端末部材本体5との間でのガタが抑制され、ガタに起因する異音も抑制することができる。
【0037】
連結部63は、上述したように、複数の規制部62を連結して、規制部62の塑性変形を防止する部位である。したがって、連結部63は、複数の規制部62を連結して、規制部62の塑性変形を防止することができるものであれば、その形状や位置、個数は特に限定されない。たとえば、本実施形態では、
図4(a)〜(c)に示されるように、嵌合子6に2つの規制部62が設けられ、その2つの規制部62を連結部63により連結しているが、たとえば、嵌合子6に4つの規制部が設けられている場合、4つのうち2つの規制部を1つの連結部により連結し、さらに2つの規制部をもう1つの連結部により連結してもよいし、4つ全ての規制部を1つの連結部により連結しても構わない。また、本実施形態では、
図4(a)〜(c)に示されるように、連結部63は、複数の規制部62のうち、挿入部52の基端側の端部62b同士を連結している。この場合、挿入部52の基端側となる、規制部62の端部62b同士を連結することにより、規制部62の塑性変形を規制部62の軸方向全体にわたって抑えることができる。しかしながら、連結部63を設ける位置は、規制部62の端部62bに限定されず、規制部62の長手方向の中央や、中央から端部62bまでの間など、規制部62の塑性変形を防止することができる位置に設けられていればよい。
【0038】
また、連結部63は、挿入部52の周方向で規制部62同士を連結しているが、ここでいう挿入部52の周方向とは、嵌合子6が挿入部52に取り付けられた際の、挿入部52の軸周りのことをいい、挿入部52の軸周りで規制部62同士が連結され、規制部62の塑性変形を防止することができるように連結部63が設けられていればよい。したがって、連結部63が挿入部52の外周に沿って挿入部52の外周に接触するように設けられているものに限られず、挿入部52の外周から離間するように連結部63が設けられていても構わない。なお、本実施形態では、挿入部52が略円柱状に形成され、連結部63が、円柱状の挿入部52の周方向に沿うように、円弧状に形成されている。連結部63が、円弧状に形成されている場合、嵌合子6を挿入部52に嵌合したときに、嵌合子6が略円柱状の挿入部52の外周に確実に嵌合し、嵌合子6の挿入部52への取り付けがより確実になる。また、連結部63が円弧状に形成されていることにより、挿入部52への嵌合時に、円弧状の連結部63が、円弧の径が大きくなるように弾性変形しながら嵌合するため、連結部63と連結されている規制部62の塑性変形をより防止することができる。しかしながら、連結部63の形状は円弧状に限定されるものではなく、挿入部52の形状に応じて適宜変更が可能であるし、挿入部52の形状とは異なる形状としても構わない。
【0039】
また、本実施形態では、
図4(a)〜(c)に示されるように、規制部62が略円柱状の挿入部52の外周に沿ってほぼ等間隔で2つ設けられ、連結部63は、規制部62の基端側同士を連結し、連結部63は、挿入部52の外周に沿ってアーチ状(半円状)に設けられている。アーチ状に設けられた連結部63は、挿入部52の周方向のうち約半分を覆い、周方向のうち約半分は開放している。また、弾性片61の軸方向の長さは、規制部62の長さよりも短くなっている。この場合、嵌合子6を挿入部52に嵌合する場合、規制部62の基端側の端部62b側から挿入部52の先端部位52aに嵌め込んでもよいし、規制部62の基端側の端部62b側から嵌め込まずに、
図4(a)および(c)に示す規制部62の側部62c側から挿入部52の軸方向に垂直な方向に挿入部52を押し込むことにより嵌合することもできる。したがって、
図4(a)〜(c)に示した実施形態の構成によれば、端末部材本体5と嵌合子6との組み付けの自由度が高まり、かつ規制部62の塑性変形を防止することができる。
【0040】
図7(a)および(b)は、上述の実施形態の変形例である。上述の実施形態では、嵌合部位52bの基端側の段部St2が、取付部51と挿入部52の境界部からわずかに先端側に位置していたが、
図7(a)および(b)に示す変形例では、嵌合部位52bの基端側の段部St2が取付部51と挿入部52の境界部に位置している。
図7(a)および(b)に示す変形例では、端末部材本体5の取付部51が、挿入部52よりも大きい柱状に形成され、取付部51に、コントロールケーブルのインナーケーブル22a、22bのケーブルエンド(端末21a、21b)が係止される係止凹部51aが形成されている。係止凹部51aは、取付部51のうち、挿入部52が延びる側の端面51bにおいて開口し、連結部63が取付部51の端面51bに係合するとともに、連結部63が取付部51の端面51bにおける係止凹部51aの開口幅Wよりも長く形成されている。連結部63が取付部51の端面51bに係合し、連結部63が係止凹部51aの開口幅Wよりも長く形成されていることにより、挿入部52を相手部材3の挿入開口部3aに挿入する際に、規制部62が取付部51の端面51bで係止凹部51aに嵌まり込まず、嵌合子6が挿入部52に対して軸方向にずれることがなく、確実に係止される。すなわち、係止凹部51aの開口幅Wよりも幅広の連結部63が設けられていることにより、係止凹部51aが端面51bで開口している場合であっても、規制部62が係止凹部51aの端面51bの開口に嵌まり込んで、嵌合子6が軸方向にずれてしまうことがなくなる。よって、係止凹部51aを、取付部51の端面51bにおいて開口させることにより、取付部51の軸方向の長さを短くすることができ、さらに、嵌合子6の挿入部52に対する軸方向でのずれを確実に防止することができる。