(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の感圧センサ(センサ素子)を詳細に説明する。
図1は、本発明の感圧センサの横断面図であり、
図2は、本発明の感圧センサ(センサ素子)を軸方向に沿って切開して内面を上側面として平面化することによって展開した展開図である。
【0011】
本発明の感圧センサは、外部からの圧力を感知するものである。本発明の感圧センサは、感圧センサの外部から力が加わったことを、導電線が接触して通電することにより圧力を感知して、スイッチとして機能するものであり、特にその用途は限定されないが、たとえば、挟み込み防止機能を有したドア、窓、シャッター等の開閉装置、通過車両の検出、足踏み式のスイッチなど、様々な用途に用いることができる。
【0012】
図1および
図2に示されるように、本発明の感圧センサ1は、導電線2と樹脂糸3とがそれぞれ逆方向に編まれて所定の目開きS(
図2参照)を有し、導電線2が、陽極用導電線21および陰極用導電線22が平行となるように配置された編組体B(
図2参照)、および編組体Bが内側に設けられた樹脂コート層4を備えている。
【0013】
感圧センサ1は、編組体Bと樹脂コート層4とにより、可撓性を有する中空の管状体を構成する。感圧センサ1は、外部から樹脂コート層4に荷重が加わった際に、感圧センサ1の荷重が加わった部位が径方向内側に押圧されて変形し、管状体が潰れて中空の内側空間が消失して樹脂コート層4の内表面に設けられた電極同士が接触することとなる。電源(図示せず)より導電線2に電力が供給され、樹脂コート層4の内表面に設けられた導電線2の陽極用導電線21と陰極用導電線22とが接触することで、電気的に導通することにより、導電線2と接続された検出部(図示せず)により電流が検出されて、外部負荷を感知するように構成されている。なお、本発明の圧力センサは、内側空間を有する中空管状の樹脂コート層4の内表面に編組体Bが設けられ、管状体が潰れて中空の内側空間が消失した際に、編組体Bを構成する導電線2が接触して導電線2に流れる電気が通電可能とされた管状体をセンサ素子として備えていれば、電源及びその電力供給方法並びに電流検知手段については、公知技術を用いることができる。
【0014】
導電線2は、外部負荷を感知するための電極として用いられる。導電線2は、導電線2同士が接触して、電源(図示せず)より導電線2に供給された電力が電流検知手段(図示せず)により検知可能に通電することができれば、材料や構造は特に限定されるものではない。たとえば、導電線2は、銅線や銀線を用いることができる。銅線や銀線としては、たとえば、糸材の表面に銅箔、銀箔を施したものであってもよい。導電線2の径は、樹脂コート層4が潰れて導電線2同士の接触を阻害するものでなければ特に限定されるものではなく、たとえば、0.1〜0.5mmであることが好ましい。
図1に示されるように、陽極用導電線21および陰極用導電線22は、それぞれ、複数の導電線(
図1では、3本)が隣接して一組の導電線を構成し、陽極用導電線21と陰極用導電線22とが複数組(
図1では、4組)互いに平行に、かつそれぞれの組同士が互いに接触しないように、螺旋状となるように樹脂糸3と共に編まれて管状の編組体を構成している。
【0015】
陽極用導電線21および陰極用導電線22は、
図1において、それぞれ導電線3本を一組として構成された導電線群として設けられることで検知の容易性と柔軟性とを向上させているが、感圧センサ1の変形時に陽極用導電線21と陰極用導電線22とが接触して外部負荷を感知できる程度の幅を有するものであれば、特に導電線群の本数は限定されず、2本であっても、4本であっても、それ以上であっても構わない。また、陽極用導電線21と陰極用導電線22は、
図1では、合計4組設けられているが、陽極用導電線21と陰極用導電線22とが、感圧センサ1の変形時に接触するように配置されるものであれば、何組であっても構わない。また、一組の導電線群は、導電線が接触して束として配されていても所定の間隔で隣接して設けられていてもよい。なお、陽極用導電線21および陰極用導電線22は、
図1の実施例では、導電線群として用いているが、低感知荷重および小曲げを両立できれば、導電線群として用いず、陽極用導電線21および陰極用導電線22のそれぞれとして用いられる導電線同士が所定の間隔で配されて感圧センサを構成するものであってもよい。
【0016】
樹脂糸3は、
図2に示されるように、導電線2と逆方向に編まれて、導電線2とともに編組体Bを構成する。すなわち、樹脂糸3は、導電線2がS撚りに撚られたときには、Z撚りで撚られ、導電線2がZ撚りで撚られたときには、S撚りに撚られる。導電線2および樹脂糸3は、公知の製紐機などにより、導電線2と樹脂糸3とを交互に編み込まれ、編組体Bが形成される。樹脂糸3は、複数組の導電線2が互いに対して接触しない状態で編組体の構成を編み込みの際に維持することができ、樹脂コート層4に導電線2の固定をすることができる。より具体的には、樹脂糸3を熱などにより樹脂コート層4と溶着させて、樹脂糸3と樹脂コート層4とを一体化させ、導電線2が樹脂コート層4の内面から外れることを防止する。なお、
図2では、樹脂糸3は、導電線2と逆方向に、導電線2と同じピッチで編まれているが、樹脂糸3は、導電線2を固定することができるものであれば、導電線2と同じピッチでなくても構わない。また、樹脂糸3は、荷重に応じて樹脂コート層4と編組体Bとで構成された管状体の荷重負荷により、変形し、感圧センサとして所定の繰り返し使用ができる程度に樹脂コート層4と編組体Bとを固定するものであればよい。
【0017】
導電線2と樹脂糸3が互いに編み込まれた編組体Bは、
図2に示されるように、所定の目開きSを有している。「目開き」とは、編組体Bを構成する編み込まれた導電線2と樹脂糸3において、隣接する導電線2と、その導電線2と交わる隣接する樹脂糸3とにより囲まれて孔として形成された領域のことをいう。編組体Bの目開きSの面積は、樹脂コート層4の内側の表面積に対して所定の割合であればよい。ここでいう「樹脂コート層4の内側の表面積」とは、樹脂コート層4と編組体Bとで構成された管状体の単位長さ当りにおける、編組体Bが除去されて平滑な内面として仮定した場合の樹脂コート層4で形成された中空管状体の内表面の面積を意味するものであり、目開きSの「割合」とは、
図2に示されるように、この樹脂コート層4の内側の表面積に対する、導電層2と樹脂糸3が編まれている箇所以外の部分の面積の比率をいうものである。この目開きSにより、導電線2同士が互いに接触せず樹脂コート層4に保持され、かつ、感圧センサ1を軽量化することができる。目開きSの面積比率は、樹脂コート層4で構成される管状体の長さ方向における単位長さ当たりに含まれる導電線2の量が多くなることにより、重量が重くなったり、編組体を構成する導電線の量が少なくなることにより、編組体を樹脂コート層に保持する前における編組体の形状維持の困難性による生産性の低下が生じないようにされていればよい。
【0018】
樹脂糸3の材料としては、樹脂コート層4に対して溶着可能なものであれば、特に限定されず、オレフィン系樹脂等、熱融着可能な熱可塑性樹脂を用いることができる。また、樹脂糸3は、繊維状の芯に樹脂を被覆したものであっても、全体を樹脂により製造しても構わないが、樹脂糸3の全体を溶着可能な樹脂とすることにより、樹脂糸3と樹脂コート層4とが一体化しやすく、樹脂コート層4から剥がれにくくなるため好ましい。また、樹脂糸3と樹脂コート層4の材料として、少なくとも特定の同種樹脂成分を互いに含む樹脂や、同種の樹脂材料を用いることが好ましく、樹脂糸3と樹脂コート層4が相溶しやすい組み合わせとなるような樹脂を選ぶことにより、樹脂糸3が樹脂コート層4から剥がれにくくなり、導電線2の保持性を向上することができ、感圧センサ1の耐久性が良くなる。なお、樹脂糸3の線径は、導電線2と同様に、特に限定されるものではないが、編組体Bの樹脂コート層4への固定の低下を防止するために、たとえば、0.1〜0.5mmであることが好ましい。
【0019】
樹脂糸3が溶着される樹脂コート層4は、
図1に示されるように、感圧センサ1の外被として構成するとともに、樹脂コート層4の内部に形成された空間に編組体Bが配置され、導電線2を外部から絶縁し、感圧センサ1の内部の導電線2を保持する機能を有している。また、樹脂コート層4は、感圧センサ1の外部から負荷が加わった場合に変形し、負荷が取り除かれた後には、元の形状に復元する弾性を有している。このような点から、樹脂コート層4は、所定の荷重に対して弾性変形可能であって、破壊されずにほぼ元の形状へ復元可能なものであれば、その材料は特に限定されないが、上述したように、樹脂糸3と同種の材料を用いることが好ましい。
【0020】
樹脂コート層4は、押出し成形など公知の成形方法により、編組体Bの外層として形成することができる。樹脂コート層4の材料となる樹脂を溶融させて編組体Bの外側に押し出し成形して樹脂コート層4を形成したり、樹脂チューブを編組体B外層に配して熱収縮させて樹脂コート層4を形成する場合には、樹脂コート層4の成形時に、樹脂糸3が樹脂コート層4に溶着され、編組体Bと樹脂コート層4とが一体化して、導電線2が樹脂コート層4に固定され、感圧センサ1となる。なお、製造方法については、特に限定されるものではなく、芯部材の周りに導電線2および樹脂糸3を編み、樹脂コート層4を被覆した後に、芯を抜いてもよいし、芯がない状態で導電線および樹脂糸3を編み、樹脂コート層4を被覆しても構わない。なお、樹脂コート層4の厚さは、後述する効果を奏するような範囲で必要な感圧センサ1の外径や、編組体Bの外径に応じて適宜変更が可能であるが、たとえば、0.3〜2mmであることが好ましい(感圧センサの径に対して5〜28%)。
【0021】
本発明の感圧センサ1は、編組体Bの内径D(
図1参照)とピッチP(
図2参照)とを、編組体Bの内径Dが1〜4mm、より好ましくは2〜3mm、編組体Bの導電線2のピッチPが3〜30mm、より好ましくは6〜15mmとし、かつ、編組体Bの内径DとピッチPの積を10〜40とすることにより、感知荷重を25N以下、最小曲げ半径を10
mm以下とすることができ、背反する特性である、低感知荷重特性および小曲げ特性を両立することができる。これにより、感圧センサを小さな最小曲げ半径で湾曲して配索する必要がある部位にも、座屈することなく配索が可能であり、かつ湾曲した部位であっても、所定以下の荷重で感知することが可能となる。また、低い荷重でも感圧センサが反応するため、たとえば挟み込み防止を感知する場合において、ドアにおける湾曲した形状に追随して配置することができるので、車両のドアの挟み込み防止装置として特に有用である。ここで、編組体Bの内径Dとは、
図1に示されるように、編組体Bの内側(
図1に仮想的に二点鎖線で示している)の径、すなわち、略筒状に形成された編組体Bの軸心を挟んで対向する導電線2間の距離をいう。また、ピッチPとは、
図2に示されるように、導電線2が編組体Bにおいて、編組体Bの周回り方向における所定の位置から、軸方向に変位して螺旋状に一周して、周回り方向における所定の位置に戻ったときの軸方向長さをいう。また、編組体Bの内径Dが1mmより小さい、又は内径Dが4mmより大きい場合、及び編組体BのピッチPが3mmより小さい、又は30mmより大きい場合は編組体Bの製造が困難となる。
【実施例】
【0022】
つぎに、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0023】
まず、実施例および比較例において測定した感圧センサの感知荷重および最小曲げ半径の測定方法について説明する。
【0024】
(感知荷重)
長さ200mmの感圧センサである導電線と編組体とからなる管状体に対して、導電線を構成する陽極用導電線と陰極用導電線とが接触したときに、公知の電源回路より陽極用導電線と陰極用導電線とへ3Vの電圧が印加されるように電源回路と導電線とを接続する。そして、陽極用導電線と陰極用導電線線との接触により通電したことを抵抗値により検知するために公知の抵抗検知装置を陽極用導電線と陰極用導電線とに接続し、当該抵抗検知装置により管状体に対して荷重を加えた際の抵抗値を検知できるように回路構成をした。室温下で、安定した台の上に感圧センサを固定し、半径2mmの円弧状部を備えた半円柱状部分を有する圧子を用いて、感圧センサの上部から、圧子の円弧状部により感圧センサの管状体中間部に荷重を加え、徐々に荷重を強めていき、陽極用導電線と陰極用導電線が接触して抵抗検知装置により100Ω以下の抵抗値が検知されたときの荷重を測定した。
【0025】
(最小曲げ半径)
長さ200mmの感圧センサである導電線と編組体とからなる管状体を用いて、温度20℃の条件下で、感圧センサをU字形に曲げ、感圧センサの一端を一方の固定台に固定し、他端が接続された移動台を徐々に固定台に向けて近付け感圧センサを湾曲させ、感圧センサが座屈したときの固定台と移動台との間の距離(感圧センサの湾曲の直径に相当)を測定し、その距離から感圧センサが座屈したときの半径(mm)を求め、最小曲げ半径を求めた。
【0026】
実施例1
導電線として、繊維糸の外側を銅箔で被覆した、直径が0.20mmの銅被覆線を用い、樹脂糸としては、径が0.20mmのポリプロピレン製の糸を用いた。導電線として、3本の当該銅被覆線を一組として、4組の導電線群(陽極用導電線を2組、陰極用導電線を2組)ができるように用意し、樹脂糸は4本用意した。撚線機により、4組の導電線が互いに所定の間隔を開けて、撚りピッチが6mmとなるようにS撚りに撚り、4本の樹脂糸は、導電線と同ピッチで、互いに所定の間隔を開けてZ撚りに撚った。導電線と樹脂糸を交互に編み込むことにより、内径が2.05mmの編組体を得た。この編組体の外側に、押出し成形によりオレフィン系エラストマーを被覆し、外径4mmの感圧センサを作製した。作製した感圧センサについて、感知荷重、最小曲げ半径を調べた。その結果を表1および
図3に示す。
【0027】
実施例2〜13、比較例1〜4
内径、ピッチ以外は実施例1と同様にして作製し、表1に示す内径、ピッチを有する感圧センサを作製し、実施例1と同様に、感知荷重、最小曲げ半径を調べた。結果を表1および
図3に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例14〜25、比較例5〜9
実施例1〜13の感圧センサは外径が4mmであったが、実施例14〜25では、感圧センサの外径を6mmとなるように作製し、内径、ピッチを表1に示す感圧センサを作製した。実施例1〜13と同様に、感知荷重、最小曲げ半径を調べた。結果を表2および
図4に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表1および表2、
図3および
図4に示されるように、編組体の内径と導電線のピッチの積が10〜40の範囲にある実施例では、感圧センサの外径が変化しても、感知荷重がいずれも25N以下であり、かつ、最小曲げ半径が10mm以下であった。一方、編組体の内径と導電線のピッチが10〜40の範囲外となる比較例においては、感知荷重が25N以上、又は最小曲げ半径が10mm以上であった。したがって、編組体の内径と導電線のピッチの積を10〜40とすることにより、低感知荷重および小曲げを両立することができる感圧センサが得られることがわかった。
【0032】
また、表1および表2、
図3および
図4から、編組体の内径と導電線のピッチの積が20〜37である場合(編組体の内径が2〜2.5mm、導電線のピッチが9〜12mm)には、感知荷重が12N以下であり、かつ、最小曲げ半径が10mm以下であり、
図3および
図4から、感知荷重および最小曲げ半径の数値が低い値で安定していることがわかる。したがって、編組体の内径と導電線のピッチの積を20〜37とすることにより、感知荷重が約12N以下であり、最小曲げ半径が10mm以下であるため、感圧センサが製造・出荷時等に曲げられても破損しにくい。また、製造時のばらつきによる感知荷重と最小曲げ半径のばらつきが抑制されるため、製品の歩留まりが向上し、生産性を向上させることができる。また、車両の挟み込み防止機能付のドアなどにおいて、子供の指や、木の枝などの異物が挟み込まれた場合であっても、感知する可能性が高まり、かつ、湾曲部にも配索が可能となり、湾曲部での精度の高い感知も可能となる。