(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的な遊技機においては、遊技場の従業員等がメンテナンス等を行えるように、遊技盤が固定される中枠や、遊技盤の前面に対向するガラス板が固定される前扉といった扉体が、ヒンジ機構を介して枠体(基体)に開閉自在に軸支されている。
【0003】
上記のようなヒンジ機構は、枠体側に設けられた固定側板金部材と扉体側に設けられた可動側板金部材とを有し、これら板金部材のいずれか一方に設けられた軸部が、他方に設けられた嵌合孔に着脱自在に嵌合することにより構成されている。
【0004】
ここで、遊技場においては、遊技機を複数台一列に並べて配置し、これらの間に球貸装置等の構造物を併設するようなレイアウトを採ることが多く、扉体等の開閉がこのような構造物によって支障を来さないよう、扉体等の回転軸心をなるべく前方側(遊技機の正面側)に配置することが求められている。
【0005】
その為、遊技機のヒンジ機構における固定側板金部材の多くは、枠体の前方側(遊技機の正面側)に突出し、この突出した部分で扉体等を軸支するような構造として利便が図られている。
【0006】
ところで、近年の遊技機においては、遊技場でより多くの遊技客の興味をそそるよう、扉体の前面側や中枠の一部等遊技者の目に直接触れるような部分に遊技機の仕様や世界観に沿った様々な装飾が施される傾向にある。
【0007】
この傾向は上記のようなヒンジ機構についても例外ではなく、遊技者の目に触れる部分についてはヒンジ機構の動きを妨げない範囲で極力露出しないよう装飾カバーで覆い、遊技機のデザイン性を損なわないような工夫がなされている(例えば、特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態における遊技機1の斜視図である。
図1に示すように、遊技機1は、略矩形状に組まれた四辺によって囲繞空間が形成される外枠2(基体)と、この外枠2内に収容される中枠3(扉体)と、この中枠3の前方に配置される前扉4を備えて構成される。中枠3には遊技盤5(
図3参照)が保持され、前扉4(扉体)にはガラス製または樹脂製の透過板6が保持される。以下の説明において、図中LR方向を遊技機1の幅方向とし、図中F方向を遊技機1の前面側または正面側とし、図中B方向を遊技機1の背面側として説明する。
【0017】
外枠2は、
図2に示すように、遊技機1の幅方向(水平方向)に互いに対向配置される一対の側壁板2aと、鉛直方向に互いに対向配置され、側壁板2aの両端にL字金具によって取り付けられる天板2bおよび底板2cから構成される略矩形の枠体となっている。外枠2の下側部分には底板2cに沿って幕板部2dが設けられる。この幕板部2dの上面には、外枠2内に収容された中枠3が載置される載置面2eが設けられている。幕板部2dの一部は外枠2の正面側(図中F方向側)に向って張り出すように設けられており、外枠2および幕板部2dにより、側面視略L字形状となるよう構成されている。また、外枠2の一側辺側(図中L方向側)の上端部および下端部には、中枠3および前扉4を開閉自在に軸支する一対のヒンジ機構が配置されている。
【0018】
中枠3は、
図3に示すように、遊技盤5を収容可能に形成されるとともに発射装置や錠前ユニット等の各種部品が設けられている。また、中枠3は外枠2および前扉4よりも周長が短く、外枠2に対して中枠3および前扉4が閉じられた状態では、中枠3が外枠2および前扉4内に収容されるとともに、外枠2、中枠3および前扉4が平行になり、遊技盤5と透過板6とが所定の間隔を維持して平行に対面するように構成されている。
【0019】
遊技盤5には、レール7や図示せぬ多数の釘や風車等の構造物が配設された遊技領域8が設けられている。この遊技領域8は中枠3と前扉4が閉じられた状態において、遊技盤5と透過板6との間に形成される空間であって、発射装置からレール7に沿って打ち出された遊技球が構造物に衝突しながら不規則な方向に流下、転動可能な空間となっている。
【0020】
また、遊技領域8には、遊技球が入球可能な始動口や大入賞口(いずれも図示せず)、これらに入球しなかった遊技球を遊技盤5の背面側に排出するアウト口9等が設けられている。始動口に遊技球が入球すると所定の賞球を払い出すとともに、大入賞口の開放抽選が行われ、この抽選の結果は遊技盤5に設けられた液晶表示器(図示せず)による表示の他、この表示に合わせて発光体が発光したり、スピーカ10から効果音や音楽等の音声が出力されたりすることによって報知演出が行われ、遊技者に報知される。なお、大入賞口に遊技球が入球すると始動口に入球した場合よりも多くの賞球が払い出される。
【0021】
図1に戻って説明を続ける。前扉4の前面には、発光体が内蔵された装飾部11の他、貸し出された遊技球や払い出された賞球を受け入れる上皿12や、上皿12に入りきらなくなった遊技球を受け入れる下皿13などが設けられている。これらの部品の表面には遊技機1の世界観や仕様に応じたデザインが直接施されたり、同様のデザインが施された樹脂製の装飾カバー等でその表面が覆われたりして全体として統一感のある装飾がなされている。
【0022】
また、前扉4の前面下部の自由端側(R方向側)には遊技機1の前方に向かって突出する操作ハンドル14が設けられている。この操作ハンドル14は回動自在に形成されており、遊技者がこの操作ハンドル14を回動操作することにより、操作量に応じた強度で遊技球が遊技領域8に向かって発射される。
【0023】
次に、中枠3および前扉4を開閉自在に軸支する一対のヒンジ機構について説明する。このヒンジ機構は外枠2の一側辺側(図中L方向側)の上端に設けられた上部ヒンジ機構15と、外枠2の一側辺側(図中L方向側)の下端にもうけられた下部ヒンジ機構16から構成されている。
【0024】
上部ヒンジ機構15は、
図3に示すように、外枠2に設けられ正面側に向かって突出した軸受体15aと、中枠3に設けられ当該軸受体15aの上面に取り付けられるとともに、下方に向かって突出する軸部(図示せず)を有する軸支体15bからなる。この軸支体15bの軸部を軸受体15aに嵌合させることにより、中枠3が外枠2に回転自在に軸支される。
【0025】
図4は、外枠2に対して中枠3および前扉4が閉じられた状態における下部ヒンジ機構16の斜視図であり、
図5は外枠2に対して中枠3および前扉4が開放された状態における下部ヒンジ機構16の斜視図である。
図6は、外枠2に対して中枠3および前扉4が開放された状態を示す下部ヒンジ機構16の側面図である。なお、
図6においては説明を容易にするため中枠3および前扉4の構造を省略している。以下、
図4〜
図6を用いて下部ヒンジ機構16について説明する。
【0026】
下部ヒンジ機構16は、外枠2の一側辺側(L方向側)下端に設けられた下側プレート18(支持体)と、前扉4に設けられた上側プレート19とを備えて構成される。
【0027】
下側プレート18は、
図4〜
図6に示すように、上面視略台形状に形成された金属性の薄板部材からなり、外枠2の一側辺側(L方向側)の幕板部2dに固定される。本実施形態においては説明の便宜上、下側プレート18のうち、
図6に示すように、上面視において幕板部2dの載置面2e(
図2参照)と重なる部分を固定部18aと、この固定部18aから延在し幕板部2dから正面側(F方向側)に突出して形成された部分を本体部18bと称する。ここで、幕板部2dにおける固定部18aが固定される部分は、固定部18aの板厚と同程度に一段低く切り欠かれており、下側プレート18を幕板部2dに固定すると、下側プレート18の上面は幕板部2dの載置面2eと略面一となるよう形成されている。また、本体部18bの上面には鉛直方向上方に向って突出する円柱状の軸部18c(被嵌合部)が設けられている。
【0028】
上側プレート19は、
図4〜
図6に示すように、下側プレート18と略同一形状に形成された金属製の薄板部材であり、中枠3の一側端側(L方向側)の下部に設けられている。上側プレート19には、下側プレート18の軸部18cに対応する位置に軸受孔19a(嵌合部)が形成されており、この軸受孔19aと軸部18cが嵌合することにより、中枠3が外枠2に対して回転自在に軸支されるような構造となっている。また、上側プレート19の下面は中枠3の底面と略面一になるように形成され、この上側プレート19の下面は中枠3の底面の一部を担うように構成される。そして、軸受孔19aと軸部18cを嵌合させた状態において、下側プレート18の上面と上側プレート19の下面すなわち中枠3の底面の一部は対面配置された状態となっている。
【0029】
下側プレート18の本体部18bの側面部および先端部は、
図4に示すように、樹脂製のヒンジカバー20により覆われている。これは下部ヒンジ機構16を保護するとともに、遊技機1の前面部分に多用される樹脂製のパーツと異なる質感の金属製の下部ヒンジ機構16が露出することによって、遊技機1の統一感のあるデザイン性を損なわないようになされるものである。そのため、ヒンジカバー20の上縁は中枠3の開閉動作を妨げない範囲で極力下側プレート18が露出しないように形成される。
【0030】
ヒンジカバー20は、
図4に示すように、固定端側側面カバー部21、正面カバー部22、自由端側側面カバー部23を備えている。なお、本実施形態において、固定端側側面カバー部21、正面カバー部22、自由端側側面カバー部23は一体的に形成されるものであるが、それぞれを別体として構成するものであってもよい。
【0031】
固定端側側面カバー部21は、
図6に示すように、外枠2の一方の側壁板2a(
図2参照)から本体部18b先端にかけての下側プレート18の側面(遊技機1正面視においてL方向側の側面)を覆うように設けられている。遊技機1の正面側(F方向側)における固定端側側面カバー部21の上縁は、本体部18bの上面よりも下方に位置するように形成されるとともに遊技機1の背面側(B方向側)における上縁よりも低い位置となるように形成されている。すなわち、固定端側側面カバー部21の上縁は、遊技機1の背面側(B方向側)から遊技機1の正面側(F方向側)に向って下り傾斜となるような傾斜面24が設けられている。
【0032】
また、この傾斜面24は、
図6に示すように、遊技機1の鉛直方向に引かれた仮想垂線L1と交差する部分を転換部25として、この転換部25を境に遊技機1の背面側の第1傾斜面24aと遊技機1の正面側の第2傾斜面24bとからなる。
【0033】
そして、遊技機1の背面側に位置する第1傾斜面24aの傾斜角度が遊技機1の正面側の第2傾斜面24bの傾斜角度よりも大きくなるように構成されている。すなわち、遊技機の正面に対して直交し、かつ、転換部25を通過するように形成された仮想水平線L2と第1傾斜面24aとのなす角をθ1と、当該仮想水平線L2と第2傾斜面24bとのなす角をθ2とした場合、これらのなす角の関係が、θ1>θ2となるように形成されている。
【0034】
以上説明したような遊技機1が遊技場に設置される場合、遊技者に遊技球を提供するための球貸装置(図示せず)が併設されることになる。この球貸装置は、遊技機1の正面視左方側(L方向側)に近接配置され、ICカード等の挿入口や操作ボタン等を有するパネル面が遊技機1の正面側(F方向側)に向くように構成されている。このパネル面は遊技者が無理なく操作できるよう極力遊技機1の正面側方向(F方向側)に配置することが求められており、通常、
図6に仮想線Lsで示すような位置までせり出して配置されている。これにより、球貸装置の側面が一種の壁として作用し、下側プレート18上に乗り上げた球の移動をせき止めてしまい、固定端側側面カバー部21の上面と球貸装置の側面との間で球が滞留してしまうという事態が起こっていた。このような状態に気付かず中枠3等を閉めてしまうと、滞留している遊技球の挟み込みが生じ、最悪の場合、遊技機1や球貸装置が破損し甚大な損害を被る虞があり改善が求められていた。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、中枠3の開放時にこぼれ落ちた遊技球が固定端側側面カバー部21の上に滞留してしまった場合においても第1傾斜面24aまたは第2傾斜面24bにより遊技球を固定端側側面カバー部21の上から転動させることができる。これにより、遊技球の挟み込みを防止し、遊技機1等が破損するのを防ぐことができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、第1傾斜面24aよりも遊技者側に位置する第2傾斜面24bの傾斜角度(θ2)を第1傾斜面24aの傾斜角度(θ1)に比べて緩やか(θ1>θ2)となるよう構成していることから、単純に傾斜角度を急にしただけの構成に比して下部ヒンジ機構16の金属部分の露出を抑えることができる。より詳しく説明を加えると、固定端側側面カバー部21上に遊技球が滞留することを効果的に防ぐためには第1傾斜面24aの傾斜角度(θ1)程度の急傾斜が必要になると考えられる。しかし、仮に、この傾斜角度(θ1)を維持したまま傾斜面を形成した場合、
図6の仮想線L3(第1傾斜面24aを傾斜角度θ1としたまま延在させた場合の仮想線)上の斜線部分で示す部分まで下側プレート18が露出することになってしまう。その結果、特に遊技者の目につきやすい遊技機1の正面側において下部ヒンジ機構16の金属部分の露出が多くなってしまうこととなり、遊技機1に施されたデザイン性を大きく損なうことになる。そこで、本実施形態のように第1傾斜面24aから連なる第2傾斜面24bの傾斜角度(θ2)を第1傾斜面24aの傾斜角度(θ1)に比べて緩やか(θ1>θ2)となるよう構成することで下部ヒンジ機構16の金属部分の露出、特に遊技者の目につきやすい下部ヒンジ機構16の正面側の露出を抑えることが可能となっている。
【0037】
このように、本発明によれば、遊技機1のデザイン性を損なうことなく、固定端側側面カバー部21の上面部分への遊技球の滞留を防止するという、相反する目的を両立することができる。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0039】
例えば、上記実施形態では、傾斜面24は転換部25を境に遊技機1の背面側の第1傾斜面24aと遊技機1の正面側の第2傾斜面24bとの二段階で変化する場合について説明したが、傾斜面24は二段階に限る必要はなく、三段階や四段階等の多段階で変化するようにしてもよいし、遊技機1の背面側から正面側にかけて、曲率を徐々に変化させることで連続的に傾斜角度が変化するようにしてもよい。いずれにしても、固定端側側面カバー部21の上縁は、下側プレート18の本体部18bの突出方向の先端側が、本体部18bの上面よりも下方に位置し、突出方向の基端側が先端側よりも上方に位置する傾斜面で構成されるとともに、この傾斜面は、基端側の傾斜角度が先端側の傾斜角度よりも大きいものであればよい。
【0040】
また、上記実施形態では、下側プレート18に軸部18cを設け、上側プレート19の軸受孔19aに嵌合させる場合について説明したが、下側プレート18に軸受孔を設け、上側プレート19に軸部を設けるように構成してもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、外枠2と中枠3を軸支するヒンジ機構およびヒンジカバー20について説明したが、これに限る必要はなく、外枠2と前扉4とにおけるヒンジ機構およびヒンジカバーについてももちろん適用可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、外枠2に、扉体としての中枠3および前扉4が開閉自在に軸支される場合について説明したが、扉体は1つでもよく、また、扉体の構成や、扉体を軸支する基体の構成は適宜設計可能であることは言うまでもない。