特許第6185876号(P6185876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185876
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   G03G15/20 515
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-83313(P2014-83313)
(22)【出願日】2014年4月15日
(65)【公開番号】特開2015-203778(P2015-203778A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100161953
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 敬直
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕徳
(72)【発明者】
【氏名】森口 元樹
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−113089(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0177251(US,A1)
【文献】 特開2007−212907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられる定着ベルトと、
前記定着ベルトに圧接して定着ニップを形成し、回転可能に設けられる加圧部材と、
前記定着ベルトを前記加圧部材側に向かって押圧する押圧部材と、
前記定着ベルトの径方向内側に配置され、輻射熱を放射する熱源と、
前記定着ベルトの内周面に接触し、前記熱源から放射される輻射熱を吸収する熱伝達部材と、を備え、
前記熱伝達部材の一部は、前記定着ベルトと前記押圧部材の間に挟まれており、
前記熱伝達部材は、
前記定着ベルトの内周面の用紙搬送方向上流側の部分に接触する第1熱伝達部と、
前記第1熱伝達部の前記定着ニップ側の端部から用紙搬送方向下流側に向かって延出し、前記定着ベルトと前記押圧部材の間に挟まれる第2熱伝達部と、を備え、
前記第2熱伝達部の用紙搬送方向下流側の端部から前記定着ベルトの回転中心を通過して前記第1熱伝達部に至る直線の長さは、前記熱伝達部材を内周面に接触させていない状態の前記定着ベルトの内周径よりも長いことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着ベルトの内周面の用紙搬送方向下流側の部分に接触し、前記定着ベルトを用紙搬送方向下流側に向かって付勢する付勢部材を更に備えていることを特徴とする請求項に記載の定着装置。
【請求項3】
前記押圧部材を支持する支持部材と、
前記熱源から前記支持部材に向かって放射される輻射熱を前記熱伝達部材に向かって反射する反射部材と、を更に備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
回転可能に設けられる定着ベルトと、
前記定着ベルトに圧接して定着ニップを形成し、回転可能に設けられる加圧部材と、
前記定着ベルトを前記加圧部材側に向かって押圧する押圧部材と、
前記定着ベルトの径方向内側に配置され、輻射熱を放射する熱源と、
前記定着ベルトの内周面に接触し、前記熱源から放射される輻射熱を吸収する熱伝達部材と、
前記押圧部材を支持する支持部材と、
前記熱源から前記支持部材に向かって放射される輻射熱を前記熱伝達部材に向かって反射する反射部材と、を備え、
前記熱伝達部材の一部は、前記定着ベルトと前記押圧部材の間に挟まれており、
前記反射部材は、前記熱伝達部材と部分的に接触していることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
前記押圧部材は、
前記定着ベルトを前記加圧部材側に向かって押圧する本体部と、
前記本体部の前記定着ニップから離間する側の面に設けられる突起部と、を備え、
前記支持部材は、前記突起部の用紙搬送方向下流側に配置される規制片を備えていることを特徴とする請求項に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙にトナー像を定着させる定着装置と、この定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンターなどの電子写真方式の画像形成装置は、用紙(記録媒体)にトナー像を定着させる定着装置を備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、定着ベルトと、定着ベルトに圧接して定着ニップを形成する加圧部材(特許文献1の「加圧ローラ31」参照)と、定着ベルトを加圧部材側に向かって押圧する押圧部材(特許文献1の「ニップ形成部材26」参照)と、輻射熱を放射する熱源(特許文献1の「加熱手段25」参照)と、を備えた定着装置が開示されている。
【0004】
このような構成の定着装置において、熱源によって定着ベルトを直接加熱すると、定着ベルトが過昇温して、定着ベルトと押圧部材の間に塗布される潤滑剤の性能(耐熱性)が低下するという問題がある。更に、定着ベルトが過昇温することで定着ベルトが変形し、接触式の温度検出部(サーミスター)と定着ベルトの接触が失われて通常の制御ができなくなったり、非接触式の過昇温防止装置(サーモスタット)と定着ベルトの距離が変化したりするという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1では、定着ベルトの内周面に接触する熱伝達部材(特許文献1の「支持部材60」参照)を熱源によって加熱し、熱伝達部材からの伝熱によって定着ベルトを加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−128075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、定着ニップと対応する領域において熱伝達部材が定着ベルトに接触していない(特許文献1の図2等参照)。そのため、定着ニップと対応する領域において熱伝達部材から定着ベルトに熱を伝達することができず、用紙にトナー像を確実に定着させることが困難になる恐れがある。また、ウォームアップ時間(用紙にトナー像を定着可能な温度まで定着ニップを加熱するのに必要な時間)が長くなり、省エネルギー性が低下する恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、用紙にトナー像を確実に定着させると共に、ウォームアップ時間を短縮して省エネルギー性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の定着装置は、回転可能に設けられる定着ベルトと、前記定着ベルトに圧接して定着ニップを形成し、回転可能に設けられる加圧部材と、前記定着ベルトを前記加圧部材側に向かって押圧する押圧部材と、前記定着ベルトの径方向内側に配置され、輻射熱を放射する熱源と、前記定着ベルトの内周面に接触し、前記熱源から放射される輻射熱を吸収する熱伝達部材と、を備え、前記熱伝達部材の一部は、前記定着ベルトと前記押圧部材の間に挟まれていることを特徴とする。
【0010】
このような構成を採用することで、定着ニップと対応する領域において熱伝達部材の一部を定着ベルトに接触させ、熱伝達部材の一部から定着ベルトに熱を伝達することが可能となる。そのため、用紙にトナー像を確実に定着させることができると共に、ウォームアップ時間を短縮して省エネルギー性を高めることが可能となる。
【0011】
前記熱伝達部材は、前記定着ベルトの内周面の用紙搬送方向上流側の部分に接触する第1熱伝達部と、前記第1熱伝達部の前記定着ニップ側の端部から用紙搬送方向下流側に向かって延出し、前記定着ベルトと前記押圧部材の間に挟まれる第2熱伝達部と、を備え、前記第2熱伝達部の用紙搬送方向下流側の端部から前記定着ベルトの回転中心を通過して前記第1熱伝達部に至る直線の長さは、前記熱伝達部材を内周面に接触させていない状態の前記定着ベルトの内周径よりも長くても良い。
【0012】
このような構成を採用することで、定着ベルトの内周面に熱伝達部材を確実に接触させることが可能となり、熱伝達部材から定着ベルトへの熱伝達性能を高めることができる。
【0013】
前記定着ベルトの内周面の用紙搬送方向下流側の部分に接触し、前記定着ベルトを用紙搬送方向下流側に向かって付勢する付勢部材を更に備えていても良い。
【0014】
このような構成を採用することで、定着ベルトの内周面に熱伝達部材をより一層確実に接触させることが可能となり、熱伝達部材から定着ベルトへの熱伝達性能を更に高めることができる。
【0015】
前記押圧部材を支持する支持部材と、前記熱源から前記支持部材に向かって放射される輻射熱を前記熱伝達部材に向かって反射する反射部材と、を更に備えていても良い。
【0016】
上記のように押圧部材を支持部材によって支持することで、押圧部材の反りを規制することが可能となる。また、熱源から支持部材に向かって放射される輻射熱を反射部材によって熱伝達部材に向かって反射することで、輻射熱が支持部材に照射されるのを防止し、支持部材に熱が逃げてしまうのを抑制することが可能となる。
【0017】
前記反射部材は、前記熱伝達部材と部分的に接触していても良い。
【0018】
このような構成を採用することで、反射部材の温度が熱伝達部材の温度より高くなった場合に、熱伝達部材を介して反射部材の熱を定着ベルトに伝達することが可能となる。そのため、反射部材の温度上昇を抑制することが可能となり、反射部材を支持する部材が過昇温したり、定着ベルトの回転が停止した際に反射部材からの熱伝達によって定着ベルトが過昇温したりするのを抑制することが可能となる。
【0019】
前記押圧部材は、前記定着ベルトを前記加圧部材側に向かって押圧する本体部と、前記本体部の前記定着ニップから離間する側の面に設けられる突起部と、を備え、前記支持部材は、前記突起部の用紙搬送方向下流側に配置される規制片を備えていても良い。
【0020】
このような構成を採用することで、定着ベルトの回転時に押圧部材が用紙搬送方向下流側に移動するのを確実に規制することが可能となる。
【0021】
本発明の画像形成装置は、上記したいずれかの定着装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、用紙にトナー像を確実に定着させると共に、ウォームアップ時間を短縮して省エネルギー性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの概略を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る定着装置において、定着ベルト及びその周辺部を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る定着装置において、定着ベルトの径方向内側に配置される部材を示す分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る定着装置において、定着ベルト及びその周辺部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、図1を用いて、プリンター1(画像形成装置)の全体の構成について説明する。
【0025】
プリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備えており、プリンター本体2の下部には、用紙(記録媒体)を収納する給紙カセット3が収容され、プリンター本体2の上面には排紙トレイ4が設けられている。プリンター本体2の上面には、排紙トレイ4の側方に上カバー5が開閉可能に取り付けられ、上カバー5の下方にはトナーコンテナ6が収納されている。
【0026】
プリンター本体2の上部には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器7が排紙トレイ4の下方に配置され、露光器7の下方には、画像形成部8が設けられている。画像形成部8には、像担持体である感光体ドラム10が回転可能に設けられており、感光体ドラム10の周囲には、帯電器11と、現像器12と、転写ローラー13と、クリーニング装置14とが、感光体ドラム10の回転方向(図1の矢印X参照)に沿って配置されている。
【0027】
プリンター本体2の内部には、用紙の搬送経路15が設けられている。搬送経路15の上流端には給紙部16が設けられ、搬送経路15の中流部には、感光体ドラム10と転写ローラー13によって構成される転写部17が設けられ、搬送経路15の下流部には定着装置18が設けられ、搬送経路15の下流端には排紙部19が設けられている。搬送経路15の下方には、両面印刷用の反転経路20が形成されている。
【0028】
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作について説明する。
【0029】
プリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置18の温度設定等の初期設定が実行される。そして、プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0030】
まず、帯電器11によって感光体ドラム10の表面が帯電された後、露光器7からのレーザー光(図1の二点鎖線P参照)により感光体ドラム10に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。次に、この静電潜像を、現像器12がトナーによりトナー像に現像する。
【0031】
一方、給紙部16によって給紙カセット3から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて転写部17へと搬送され、転写部17において感光体ドラム10上のトナー像が用紙に転写される。トナー像を転写された用紙は、搬送経路15を下流側へと搬送されて定着装置18に進入し、この定着装置18において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、排紙部19から排紙トレイ4に排出される。なお、感光体ドラム10上に残留したトナーは、クリーニング装置14によって回収される。
【0032】
次に、定着装置18について詳細に説明する。以下、説明の便宜上、図2における紙面手前側を定着装置18の前側(正面側)とする。図2の矢印Yは、用紙の搬送方向(本実施形態では、左右方向)を示している。各図に適宜付される矢印Frは、定着装置18の前側(正面側)を示している。
【0033】
図2に示されるように、定着装置18は、箱型形状の定着フレーム21と、定着フレーム21の上部に収容される定着ベルト22と、定着フレーム21の下部に収容される加圧ローラー23(加圧部材)と、定着ベルト22の径方向内側に配置される押圧部材24と、定着ベルト22の径方向内側且つ押圧部材24の上側に配置される支持部材25と、定着ベルト22の径方向内側且つ支持部材25の右上側に配置されるヒーター26(熱源)と、定着ベルト22の径方向内側且つヒーター26の上下両側及び右側に配置される熱伝達部材27と、定着ベルト22の径方向内側且つヒーター26の左側に配置される反射部材28と、定着ベルト22の径方向内側且つ支持部材25の左側に配置される板バネ29(付勢部材)と、を主体として構成されている。
【0034】
定着フレーム21の右側部には、用紙の搬送経路15の下側に進入ガイド31が設けられている。定着フレーム21の左側部には、用紙の搬送経路15の上下両側に排出ガイド32が設けられている。
【0035】
図3に示されるように、定着フレーム21の前後両端部には、所定の間隔を介して対向する一対のガイド壁33が設けられている。一対のガイド壁33の間には、ハウジング34が配置されている。ハウジング34の左右両側部には、ガイド溝35が上下方向に設けられている。各ガイド溝35は、一対のガイド壁33の内縁部に係合している。
【0036】
各ハウジング34の前後方向外側の面には、ヒーター取付片36が固定されている。各ハウジング34の前後方向内側の面には、装着凹部37が設けられている。装着凹部37には、プーリー38が回転可能な状態で装着されている。プーリー38は、定着ベルト22の前後両端部に取り付けられている。これにより、プーリー38を介して定着ベルト22が各ハウジング34に回転可能に支持されており、前後方向に延びる回転軸Aを中心に定着ベルト22が回転可能となっている。つまり、本実施形態では、前後方向が定着ベルト22の回転軸方向である。
【0037】
定着ベルト22(図2等参照)は、前後方向に長い略円筒状を成している。定着ベルト22は、可撓性を有しており、周方向には無端状である。定着ベルト22は、例えば、基材層と、この基材層を被覆する離型層と、によって構成されている。定着ベルト22の基材層は、PI(ポリイミド)などの樹脂によって形成されている。定着ベルト22の基材層は、例えば、内径φ30mm、厚さ90μmである。定着ベルト22の離型層は、例えば、PFAチューブによって形成されており、耐熱性及びトナー離型性を有している。定着ベルト22の離型層は、例えば、厚さ30μmである。なお、各図において、定着ベルト22の各層(基材層、離型層)は、特に区別されずに表示されている。定着ベルト22の外周面の右側部には、定着ベルト22の温度を検出するための第1サーミスター40が接触している。
【0038】
加圧ローラー23(図2等参照)は、前後方向に長い略円柱状を成している。加圧ローラー23は、例えば、円柱状の芯材41と、この芯材41に周設される弾性層42と、この弾性層42を被覆する離型層(図示せず)と、によって構成されている。加圧ローラー23の芯材41は、例えば、アルミニウム等の金属によって形成されている。加圧ローラー23の芯材41は、例えば、外径φ26mmである。加圧ローラー23の弾性層42は、断熱性を有しており、例えば、シリコンゴムによって形成されている。加圧ローラー23の弾性層42は、例えば、厚さ3mmである。加圧ローラー23の離型層(図示せず)は、例えば、PFAチューブによって形成されている。加圧ローラー23の離型層は、例えば、厚さ30μmである。
【0039】
加圧ローラー23は、定着ベルト22の下側(外側)に定着ベルト22と平行に配置されている。加圧ローラー23は、バネなどを用いた加圧機構(図示せず)によって上側(定着ベルト22側)に所定の荷重(例えば、300N)で加圧されており、定着ベルト22に圧接している。これにより、定着ベルト22と加圧ローラー23の間に定着ニップ43が形成されている。加圧ローラー23は、軸受部材(図示せず)によって回転可能に支持されている。加圧ローラー23の外周面の下端部には、加圧ローラー23の温度を検出するための第2サーミスター44が接触している。加圧ローラー23は、モーター等によって構成される駆動源45に駆動ギア(図示せず)を介して接続されている。
【0040】
押圧部材24(図4図5等参照)は、前後方向に長い形状を成している。押圧部材24は、例えば、LCP(Liquid Crystal Polymer:液晶ポリマー)等の耐熱性樹脂によって形成されている。
【0041】
押圧部材24は、平板状の本体部46と、本体部46の上面(定着ニップ43から離間する側の面)に前後方向に間隔をおいて設けられる複数個(本実施形態では3個)の突起部47と、を備えている。本体部46の下面の前後両端部には、係合溝48が設けられている。本体部46の下面は、定着ベルト22を下側(加圧ローラー23側)に向かって押圧している。
【0042】
支持部材25(図4図5等参照)は、前後方向に長い形状を成している。支持部材25は、例えば、SUS等の金属から成る一枚の板金を屈曲させることによって形成されている。
【0043】
支持部材25は、底板50と、底板50の左端部から上側に向かって屈曲される第1側板51と、第1側板51の上端部から右側に向かって屈曲される天板52と、底板50の右端部から上側に向かって屈曲される第2側板53と、を備えている。
【0044】
支持部材25の底板50の下面には、押圧部材24の本体部46の上面が当接している。これにより、押圧部材24が支持部材25に支持されており、押圧部材24の前後方向の反りが規制されている。支持部材25の底板50の左側部には、複数個(本実施形態では3個)の挿入穴54が前後方向に間隔をおいて設けられている。各挿入穴54には、押圧部材24の各突起部47が挿入されている。支持部材25の第1側板51の下端部には、各挿入穴54の左側(用紙搬送方向下流側)に、複数個(本実施形態では3個)の規制片55が前後方向に間隔をおいて設けられている。各規制片55は、押圧部材24の各突起部47の左側(用紙搬送方向下流側)に配置されており、押圧部材24の各突起部47に当接している。
【0045】
支持部材25の前後両端部には、それぞれ保持部材56が取り付けられている。各保持部材56の前後方向内側の部分は、支持部材25の前後両端部に挿入されている。各保持部材56は、各ハウジング34(図3等参照)に支持されている。
【0046】
ヒーター26(図4図5等参照)は、例えば、ハロゲンヒーターによって構成されている。ヒーター26は、熱伝達部材27と反射部材28によって囲まれている。ヒーター26は、通電によって発熱し、輻射熱(輻射光)を放射するように構成されている。ヒーター26の前後両端部は、ヒーター取付片36(図3等参照)に取り付けられている。
【0047】
熱伝達部材27(図4図5等参照)は、前後方向に長い形状を成している。熱伝達部材27は、例えば、アルミニウムやSUS等の熱伝導性の高い金属から成る一枚の板金を屈曲及び湾曲させることによって形成されている。熱伝達部材27は、例えば、厚さ0.5mmである。
【0048】
熱伝達部材27は、第1熱伝達部61と、第1熱伝達部61の下端部(定着ニップ43側の端部)から左側(用紙搬送方向下流側)に向かって延出する第2熱伝達部62と、第2熱伝達部62の左端部(用紙搬送方向下流側の端部)から上側(定着ニップ43から離間する側)に向かって屈曲されるガイド部63と、第1熱伝達部61の上端部(定着ニップ43から離間する側の端部)から下側(定着ニップ43側)に向かって屈曲される第1屈曲部64と、第1屈曲部64の下端部(定着ニップ43側の端部)から左側(用紙搬送方向下流側)に向かって屈曲される第2屈曲部65と、を備えている。
【0049】
熱伝達部材27の内面には、ヒーター26からの輻射熱が照射される部分(例えば、第1熱伝達部61と第1屈曲部64)に、光熱変換塗料(例えば、オキツモ株式会社製の耐熱塗料No.8000)が塗布されている。熱伝達部材27の外面には、定着ベルト22の内周面と接触する部分(例えば、第1熱伝達部61と第2熱伝達部62)に、ニッケルメッキ又はフッ素コーティングが施されている。
【0050】
熱伝達部材27の第1熱伝達部61は、右側(用紙搬送方向上流側)に向かって円弧状に湾曲しており、ヒーター26の上下両側及び右側を覆っている。第1熱伝達部61は、定着ベルト22の内周面の右側部分(用紙搬送方向上流側の部分)に接触している。
【0051】
熱伝達部材27の第2熱伝達部62は、左右方向(用紙搬送方向)に沿って延びている。第2熱伝達部62は、定着ベルト22の内周面の下側部分(定着ニップ43側の部分)に接触している。第2熱伝達部62は、定着ベルト22の下側部分と押圧部材24の本体部46の間に挟まれている。第2熱伝達部62の左端部P1(用紙搬送方向下流側の端部)から定着ベルト22の回転軸A(定着ベルト22の回転中心)を通過して第1熱伝達部61上の点P2に至る直線Lの長さは、熱伝達部材27を内周面に接触させていない状態(組み付け前の状態)の定着ベルト22の内周径よりも長い。第2熱伝達部62の前後両端部の上面には、押圧部材24の本体部46の下面に設けられた各係合溝48に係合可能な係合突起66が設けられている。
【0052】
熱伝達部材27のガイド部63は、押圧部材24の本体部46の左側(用紙搬送方向下流側)に配置されており、押圧部材24の本体部46に接触している。
【0053】
反射部材28(図4図5等参照)は、前後方向に長い形状を成している。反射部材28は、例えば、高輝度アルミニウム等の金属から成る一枚の板金を屈曲させることによって形成されている。反射部材28は、例えば、厚さ0.5mmである。反射部材28は、支持部材25の右側及び上側を覆うように設けられている。
【0054】
反射部材28は、鉛直方向に沿って設けられる反射部67と、反射部67の上端部(定着ニップ43から離間する側の端部)から左側(用紙搬送方向下流側)に向かって屈曲される固定部68と、を備えている。
【0055】
反射部材28の反射部67の右側面(ヒーター26側の面)は、ヒーター26から放射される輻射熱を熱伝達部材27の第1熱伝達部61に向かって反射する反射面(鏡面)である。反射部67は、ヒーター26と支持部材25の間を仕切るように設けられている。
【0056】
反射部材28の固定部68は、ビス70(締結部材)によって支持部材25の天板52及び熱伝達部材27の第2屈曲部65に固定されている。固定部68と支持部材25の天板52の間には、ビス70の外周に装着された断熱スペーサー71が介装されている。そのため、固定部68の下面は、支持部材25の天板52の上面に接触していない。固定部68の上面は、熱伝達部材27の第2屈曲部65の下面に接触している。
【0057】
板バネ29は、例えば、SUS等の金属によって形成されている。板バネ29は、例えば、厚さ0.2mmである。板バネ29の基端部72は、熱伝達部材27の第2屈曲部65と反射部材28の固定部68の間に挟まれている。板バネ29の先端部73は、定着ベルト22の内周面の左側部分(用紙搬送方向下流側の部分)に接触しており、定着ベルト22を左側(用紙搬送方向下流側)に向かって付勢している。つまり、板バネ29の先端部73は、定着ベルト22の内周面の右側部分(熱伝達部材27の第1熱伝達部61が接触する部分)とは反対側の部分に接触している。
【0058】
上記のように構成された定着装置18において、用紙にトナー像を定着させる際には、図2に矢印Cで示されるように、駆動源45によって加圧ローラー23を回転させる。このように加圧ローラー23が回転すると、図2に矢印Dで示されるように、加圧ローラー23に圧接する定着ベルト22が加圧ローラー23とは逆方向に従動回転する。このように定着ベルト22が回転すると、熱伝達部材27の第1熱伝達部61及び第2熱伝達部62に対して定着ベルト22が摺動する。
【0059】
また、用紙にトナー像を定着させる際には、ヒーター26を稼働(点灯)させる。このようにヒーター26が稼働すると、ヒーター26から輻射熱が放射される。ヒーター26から熱伝達部材27の第1熱伝達部61に向かって放射された輻射熱は、図2に矢印Eで示されるように、第1熱伝達部61に直接到達し、第1熱伝達部61によって吸収される。一方で、ヒーター26から支持部材25に向かって放射された輻射熱は、図2に矢印Fで示されるように、反射部材28の反射部67によって熱伝達部材27の第1熱伝達部61に向かって反射され、第1熱伝達部61に到達し、第1熱伝達部61によって吸収される。以上のような作用により、熱伝達部材27が加熱されると共に、熱伝達部材27からの熱伝達によって定着ベルト22が加熱される。この状態で、用紙が定着ニップ43を通過すると、トナー像が加熱されて溶融し、用紙にトナー像が定着される。
【0060】
ところで、本実施形態では、定着ベルト22の熱容量を小さくするために、定着ベルト22に弾性層を設けずに、基材層と離型層によって定着ベルト22を構成している。このような構成を採用すると、定着ニップ43を通過する用紙によって定着ニップ43の熱が奪われた際に、特に用紙の下流端部(用紙のうちで最も遅く定着ニップ43に進入する部分)に対するトナー像の定着性が悪化する恐れがある。
【0061】
しかしながら、本実施形態では上記のように、熱伝達部材27の第2熱伝達部62が定着ベルト22の下部(定着ニップ43と対応する部分)と押圧部材24の本体部46の間に挟まれている。このような構成を採用することで、定着ニップ43と対応する領域において第2熱伝達部62を定着ベルト22の下部に接触させ、第2熱伝達部62から定着ベルト22の下部に熱を伝達することが可能となる。そのため、用紙が定着ニップ43を通過している間も第2熱伝達部62から定着ベルト22に熱を伝達し続けることが可能となり、弾性層を有しない定着ベルト22を用いる場合であっても、下流端部を含む用紙の全域にトナー像を確実に定着させることができる。これに伴って、ウォームアップ時間を短縮して省エネルギー性を高めることが可能となる。
【0062】
また、熱伝達部材27の第2熱伝達部62の左端部P1(用紙搬送方向下流側の端部)から定着ベルト22の回転軸A(定着ベルト22の回転中心)を通過して第1熱伝達部61上の点P2に至る直線Lの長さは、熱伝達部材27を内周面に接触させていない状態(組み付け前の状態)の定着ベルト22の内周径よりも長い。このような構成を採用することで、定着ベルト22の内周面に熱伝達部材27を確実に接触させることが可能となり、熱伝達部材27から定着ベルト22への熱伝達性能を高めることができる。
【0063】
また、定着ベルト22の内周面の左側部分(用紙搬送方向下流側の部分)には板バネ29の先端部73が接触しており、この板バネ29の先端部73によって定着ベルト22が左側(用紙搬送方向下流側)に向かって付勢されている。このような構成を採用することで、定着ベルト22の内周面に熱伝達部材27をより一層確実に接触させることが可能となり、熱伝達部材27から定着ベルト22への熱伝達性能を更に高めることができる。
【0064】
また、押圧部材24が支持部材25によって支持されているため、押圧部材24の前後方向の反りを規制することが可能となる。また、ヒーター26から支持部材25に向かって放射される輻射熱を反射部材28の反射部67によって熱伝達部材27の第1熱伝達部61に向かって反射しているため、輻射熱が支持部材25に照射されるのを防止し、支持部材25に熱が逃げてしまうのを抑制することが可能となる。
【0065】
また、反射部材28の固定部68が熱伝達部材27の第2屈曲部65に接触しているため、反射部材28の温度が熱伝達部材27の温度より高くなった場合に、熱伝達部材27を介して反射部材28の熱を定着ベルト22に伝達することが可能となる。そのため、反射部材28の温度上昇を抑制することが可能となり、反射部材28を支持する部材が過昇温したり、定着ベルト22の回転が停止した際に反射部材28からの熱伝達によって定着ベルト22が過昇温したりするのを抑制することが可能となる。
【0066】
また、押圧部材24の突起部47の左側(用紙搬送方向下流側)に配置される規制片55が支持部材25に設けられている。そのため、定着ベルト22の回転時に押圧部材24が左側(用紙搬送方向下流側)に移動するのを確実に規制することが可能となる。
【0067】
また、ヒーター26によって加熱される熱伝達部材27からの熱伝達によって定着ベルト22を加熱する構成を採用している。そのため、ヒーター26によって定着ベルト22を直接加熱する場合と比較して、定着ベルト22が過昇温しにくくなり、定着ベルト22と熱伝達部材27の間に潤滑剤が塗布される場合に、潤滑剤の性能(耐熱性)が低下しにくくなる。
【0068】
また、定着ベルト22の内周面に熱伝達部材27を接触させることで、定着ベルト22の走行軌道を安定させることが可能となり、定着ベルト22の外周面に第1サーミスター40が接触した状態を確実に維持することができる。更に、非接触式の過昇温防止装置(サーモスタット)と定着ベルト22の距離が変化するような不都合を回避することが可能となる。
【0069】
本実施形態では、基材層と離型層によって定着ベルト22を構成する場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、定着ベルト22が基材層と離型層の間に弾性層を備えていても良い。この弾性層は、例えば、JIS硬度5度、厚さ200μmのシリコンゴムによって形成される。
【0070】
本実施形態では、定着ベルト22の基材層がPI(ポリイミド)などの樹脂によって形成される場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、定着ベルト22の基材層がSUSやニッケルなどの金属によって形成されていても良い。この場合には、熱伝達部材27に対する定着ベルト22の摺動性を向上させるために、定着ベルト22の基材層の径方向内側に摺動層を設けても良い。この摺動層は、例えば、PI(ポリイミド)やフッ素系樹脂によって形成される。
【0071】
本実施形態では特に説明を行わなかったが、他の異なる実施形態では、定着ベルト22と熱伝達部材27の間に、潤滑剤を塗布しても良い。このような構成を採用することで、熱伝達部材27に対する定着ベルト22の摺動性を向上させることが可能となる。上記の潤滑剤としては、例えば、フッ素グリスやシリコングリスやシリコンオイルなどを用いることができる。
【0072】
本実施形態では、反射部材28が熱伝達部材27と部分的に接触する場合について説明した。一方で、他の異なる実施形態では、反射部材28が熱伝達部材27に対して非接触であっても良い。
【0073】
本実施形態では特に説明を行わなかったが、他の異なる実施形態では、熱伝達部材27をカーボン材料によって形成しても良い。この場合には、熱伝達部材27の内面に光熱変換塗料を塗布しなくても良いし、熱伝達部材27の外面にニッケルメッキ又はフッ素コーティングを施さなくても良い。
【0074】
本実施形態では、高輝度アルミニウムによって反射部材28を形成する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、反射部材の表面に銀メッキを施しても良い。
【0075】
本実施形態では、ハロゲンヒーターをヒーター26として用いる場合について説明したが、他の異なる実施形態では、セラミックヒーターなどをヒーター26として用いても良い。
【0076】
本実施形態では、プリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ、複合機等の他の画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 プリンター(画像形成装置)
18 定着装置
22 定着ベルト
23 加圧ローラー(加圧部材)
24 押圧部材
25 支持部材
26 ヒーター(熱源)
27 熱伝達部材
28 反射部材
29 板バネ(付勢部材)
43 定着ニップ
46 本体部
47 突起部
55 規制片
61 第1熱伝達部
62 第2熱伝達部
A 定着ベルトの回転軸(回転中心)
図1
図2
図3
図4
図5