(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パネルコンテナの表面を移動できるように構成された土台部と、前記土台部に設けられ前記パネルコンテナを把持できるように構成されたマニピュレータと、を有するサービスユニットを用い、
前記サービスユニットが、空の前記パネルコンテナを把持した状態で、既に連結されている前記パネルコンテナ上の所定位置まで移動し、当該所定位置において、既に連結されている前記パネルコンテナに、把持しているパネルコンテナを連結することで、前記連結部及び前記支持部の少なくとも一部を形成する、請求項8に記載の宇宙大型構造物の構築方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、上記の方法では、カウンターウエイトを宇宙空間に放出して適切な位置に設置及び維持するのは容易ではなく、また、テザーワイヤの張力は非常に小さく、この張力を適切な値に調整及び維持することも容易ではない。このような理由から、テザー方式の宇宙大型構造物を宇宙空間で構築及び維持するのは非常に難しいと考えられている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、テザー方式と同様にカウンターウエイトを備えながらも、容易に構築及び維持できる宇宙大型構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある形態に係る宇宙大型構造物は、地球の軌道上を周回する宇宙大型構造物であって、構造物本体と、前記構造物本体よりも地球から遠い位置又は近い位置に配置されたカウンターウエイトと、前記構造物本体と前記カウンターウエイトを連結する連結部と、を備え、前記連結部は柱状の構造体である。かかる構成によれば、連結部の先端にカウンターウエイトを設置することにより、カウンターウエイトを適切な位置に容易に設置することができ、その設置位置を容易に維持することができる。
【0008】
上記の宇宙大型構造物において、前記連結部に固定され、前記連結部に対して垂直の方向に延びる複数の支持部と、前記支持部と前記構造物本体を連結する支持ワイヤと、をさらに備えていてもよい。かかる構成によれば、構造物本体の複数箇所を支持ワイヤによって支持することができるため、構造物本体の変形を抑えることができる。
【0009】
上記の宇宙大型構造物において、前記支持部は、前記連結部のうち該宇宙大型構造物の重心位置に相当する部分に固定していてもよい。かかる構成によれば、支持部に構造物等が連結されたりしても、宇宙大型構造物の姿勢が不安定になりにくい。
【0010】
上記の宇宙大型構造物において、前記複数の支持部のうち少なくとも1つの支持部の先端に宇宙機がドッキング可能なドッキングポートが設けられていてもよい。地球を周回する構造物及び宇宙機の速度は、地球からその重心位置までの距離によって決まる。そのため、宇宙大型構造物の重心の軌道上にある宇宙機は宇宙大型構造物と同じ速度となる。よって、宇宙大型構造物の重心位置に相当する位置に設けられたドッキングポートを設けることにより、宇宙機はドッキングポートと同じ速度でドンキングポートにドッキングすることができる。
【0011】
上記の宇宙大型構造物において、前記構造物本体は太陽光パネルであって、前記カウンターウエイトは前記構造物本体よりも地球から遠い位置に位置し、該宇宙大型構造物は太陽光を前記太陽光パネルへ反射する反射鏡をさらに備え、前記反射鏡は前記複数の支持部のうち少なくとも1つの支持部の先端に設けられていてもよい。かかる構成によれば、反射鏡が宇宙大型構造物の重心位置に相当する位置に設けられた支持部の先端に設けられているため、例えば、組立時の資材等補給や、組立作業において重力勾配の影響を極力小さくすることができる。
【0012】
上記の宇宙大型構造物において、前記太陽光パネルは、パネルコンテナによって搬送された多数の単体パネルを有し、前記連結部及び前記支持部の少なくとも一部は、空の前記パネルコンテナによって形成されていてもよい。かかる構成によれば、連結部及び支持部の少なくとも一部の構成品を別途地球から宇宙空間へ搬送する必要がないため、搬送コスト等を抑えることができる。
【0013】
また、本発明のある形態に係る宇宙大型構造物の構築方法は、該宇宙大型構造物の構成品を該宇宙大型構造物へ搬送する際、前記構成品を収容した宇宙機を前記ドッキングポートにドッキングさせる。かかる方法によれば、宇宙大型構造物の構成品を収容した宇宙機のドッキングが容易であるため、宇宙大型構造体の構築を比較的容易に行うことができる。
【0014】
上記の構築方法において、構築中の宇宙大型構造物が完成後の当該宇宙大型構造物と相似関係になるように構築してもよい。かかる方法によれば、宇宙大型構造物を安定して構築することができる。
【0015】
また、本発明の他の形態に係る宇宙大型構造物の構築方法は、前記太陽光パネルは、パネルコンテナによって搬送された多数の単体パネルを有し、前記連結部及び前記支持部の少なくとも一部を、空の前記パネルコンテナによって形成してもよい。かかる方法によれば、連結部及び支持部の少なくとも一部の構成品を別途地球から宇宙空間へ搬送する必要がないため、搬送コスト等を抑えることができる。
【0016】
上記の構築方法において、前記パネルコンテナの表面を移動できるように構成された土台部と、前記土台部に設けられ前記パネルコンテナを把持できるように構成されたマニピュレータと、を有するサービスユニットを用い、前記サービスユニットが、空の前記パネルコンテナを把持した状態で、既に連結されている前記パネルコンテナ上の所定位置まで移動し、当該所定位置において、既に連結されている前記パネルコンテナに、把持しているパネルコンテナを連結することで、前記連結部及び前記支持部の少なくとも一部を形成してもよい。かかる方法によれば、単純な構造のサービスユニットを用いて連結部及び支持部を形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
上述した宇宙大型構造物によれば、カウンターウエイトを備えているにもかかわらず容易に構築及び維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、宇宙大型構造物である宇宙太陽光発電システム100(以下、単に「発電システム」と称す)の実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、発電システム100の斜視図である。発電システム100は、
図1の紙面下方側に常に地球が位置するようにして、地球の自転にあわせて地球を周回する。
図1に示すように、発電システム100は、発送電パネル10と、カウンターウエイト30と、連結部40と、反射鏡50と、を備えている。以下、これらの各構成要素について順に説明する。
【0021】
<発送電パネル>
発送電パネル10は、太陽光によって発電を行うとともに、発電した電気のエネルギを電波又はレーザーを利用して地球へ送る装置である。発送電パネル10は発電システム100の本体にあたる。本実施形態の発送電パネル10は、全体として円板状の形状を有している。ただし、発送電パネル10は、矩形板状など他の形状であってもよい。発送電パネル10のうちカウンターウエイト30に対向する面は太陽光によって発電を行う発電面であり、発電面の反対側に位置する面は地球に電気のエネルギを供給する送電面である。
【0022】
発送電パネル10は、独立して発電及び送電を行う複数の単体パネル11によって構成されている。
図2は、単体パネル11の斜視図である。
図2に示すように、単体パネル11は長手方向に隣接する他の単体パネル11と連結して2枚一組となるように構成されている。各単体パネル11は、矩形状の上枠13と下枠14を有している。下枠14には発送電を行うパネル本体15が固定されている。上枠13と下枠14の間には、両枠13、14に対して垂直方向に延びる複数の連結部材16と、両枠13、14に対して斜めに延びる複数のテレスコピック部材17、18が、両枠13、14との接続箇所において回動可能となるように取り付けられている。「テレスコピック部材」とは、所定長さまで伸長又は収縮すると、その長さを保持する部材である。
【0023】
単体パネル11は折り畳まれた状態で地球から宇宙空間へと搬送される。
図3は、単体パネル11の側面図であり、折り畳まれた単体パネル11が展開される様子を示している。
図3(A)は、単体パネル11が完全に折り畳まれた状態を示している。この状態から一方の単体パネル11の下端を引っ張ると、収縮型のテレスコピック部材17が縮み、伸長型のテレスコピック部材18が伸張して、
図3(B)、(C)、(D)で示すように順に展開される。
【0024】
図2へ戻って、単体パネル11は、幅方向両端部分に幅方向連結部19、20を有しており、これらによって幅方向に隣接する他の単体パネル11と結合する。また、単体パネル11は、長手方向両端部分に長手方向連結部21、22を有しており、これらによって長手方向に隣接する他の単体パネル11と結合する。また、単体パネル11の複数箇所にはカムフオロワ23が設けられている。カムフォロワ23は、単体パネル11を展開する際に使用されるとともに、後述するサービスユニット90が単体パネル11上を移動する際にも使用される。
【0025】
<カウンターウエイト>
カウンターウエイト30は、
図1に示すように、発送電パネル10よりも地球から遠い位置に配置されている。カウンターウエイト30は発電システム100が地球を周回することにより生じる遠心力により地球から離れる方向に引っ張られる。一方、発送電パネル10は地球の引力により地球に近づく方向に引っ張られる。そのため、カウンターウエイト30と発送電パネル10は、連結部40を介して互いに引っ張り合うこととなり、発電システム100全体の姿勢を安定させることができる。なお、カウンターウエイト30は、連結される宇宙大型構造物の機能等に応じて、本体よりも地球から近い位置に配置してもよい。
【0026】
本実施形態のカウンターウエイト30は、複数のパネルコンテナ31によって形成されている。
図4は、パネルコンテナ31の斜視図である。パネルコンテナ31は、折り畳まれた状態の単体パネル11を収容して地球から宇宙空間へと搬送するものである。本実施形態では、単体パネル11をパネルコンテナ31から展開した後に、空になったパネルコンテナ31でカウンターウエイト30を形成する。そのため、カウンターウエイト30を構成する構成品を別途地球から宇宙空間へ搬送する必要がない。
【0027】
図4に示すように、パネルコンテナ31は、直方体の形状を有している。パネルコンテナ31の各面には公知の連結装置32が複数設けられている。この連結装置32によってパネルコンテナ31は隣接する他のパネルコンテナ31と結合する。また、パネルコンテナ31には、複数の把持部33と複数のカムフォロワ34が設けられている。把持部33は後述するサービスユニット90のマニピュレータ96に電源及び信号を供給するグラプルフィクスチャ(PDGF;Power and Data Grapple Fixture)であってもよい。この場合、パネルコンテナ31には、電力を供給するための太陽電池パネル及びバッテリ、並びにデータを送信するための制御装置や通信機器が設けられていてもよい。なお、パネルコンテナ31の外郭部分は、フレームとパネルで形成してもよく、フレームのみで形成してもよい。
【0028】
パネルコンテナ31の結合作業は、複数のサービスユニット90によって行われる。
図5はサービスユニット90の平面図であり、
図6はサービスユニット90の側面図である。サービスユニット90は、単体パネル11とほぼ同じ大きさの矩形枠状の土台部91を備えている。土台部91は、発送電パネル10及びパネルコンテナ31に沿って移動できるように、これらに設けられたカムフォロワ23、34と噛合うレール92が土台部91の外周縁に沿って設けられている。また、土台部91は、ターンテーブル93を有している。ターンテーブル93は、四隅に設けられた保持部94によって、パネルコンテナ31を立てた状態又は横にした状態で保持し、そのまま回転できるように構成されている。なお、土台部91には、太陽電池パネル95の他、バッテリ、制御装置、及びアンテナや通信機器が設けられている。
【0029】
また、土台部91にはマニピュレータ96が取り付けられている。マニピュレータ96のハンド部97が土台部91の四隅に設けられた把持部98(グラプルフィクスチャ)の1つを把持しており、この把持部98を介してマニピュレータ96は電源を得るとともに、制御信号を受信する。マニピュレータ96の他のハンド部97が、例えば単体パネル11の一部やパネルコンテナ31の把持部33を把持し、把持した部分に土台部91を引き寄せることで土台部91を単体パネル11上やパネルコンテナ31上で移動させることができる。ただし、土台部91に対して相対的に移動可能な挟持部を設け、この挟持部によって単体パネル11やパネルコンテナ31の一部を把持して土台部91を移動させるようにしてもよい。なお、サービスユニット90は、長手方向又は幅方向に2台連結した状態で移動してもよい。2台連結して移動することにより、少なくとも一方のサービスユニット90のレール92を確実に単体パネル11等に噛合わせることができ、サービスユニット90が脱線するのを防ぐことができる。また、サービスユニット90を2台連結して移動する場合、カムフォロワ23、34の数を少なくすることができる。
【0030】
<連結部>
連結部40は、発送電パネル10とカウンターウエイト30を連結する部分である。本実施形態の連結部40は、パネルコンテナ31を長手方向につなげたものであって、柱状の構造体である。このように本実施形態では、連結部40が柱状の構造体であるため、連結部40の長さを調整することでカウンターウエイト30を適切な位置に容易に配置させるとともに、その位置を維持することができる。また、テザーワイヤを用いないため、テザーワイヤの張力の調整及び維持を行う必要もない。よって、本実施形態に係る発電システム100によれば、カウンターウエイト30を備えているにもかかわらず、構築及び維持を容易に行うことができる。
【0031】
また、
図1に示すように、連結部40には、連結部40に対して垂直の方向に延びる4本の支持部41が固定されている。支持部41は、連結部40のうち発電システム100の重心位置に相当する部分に固定されている。この支持部41も柱状の構造体でありパネルコンテナ31によって形成されている。
図7は、
図1において連結部40から紙面手前側に向かって延びる支持部41の先端部分の拡大図である。
図7に示すように、支持部41の連結部40とは反対側の先端にはドッキングポート42が設けられている。ドッキングポート42は、宇宙機がドッキングできるように構成されている。なお、
図1において紙面奥側に向かって延びる支持部41の連結部40とは反対側の先端にもドッキングポート42が設けられている。
【0032】
図7では、宇宙機の一例として、コンテナセット43を示している。コンテナセット43は、構築中の発電システム100に単体パネル11を搬送する宇宙機であって、複数のパネルコンテナ31とロケットエンジン44によって構成されている。なお、構築中の発電システム100は完成後の発電システム100と相似関係となるように作業が進められる。つまり、構築中においても、支持部41は未完成状態にある発電システム100の重心位置に配置されている。ドッキングポート42の近傍、すなわち支持部41の先端には前述のサービスユニット90が配置されている。サービスユニット90は、マニピュレータ96でパネルコンテナ31の把持部33を把持するマニピュレータバーシングを行う。そして、マニピュレータ96によってパネルコンテナ31の把持部33を把持したままコンテナセット43をドッキングポート42に引き寄せて結合する。なお、宇宙機は直接ドッキングポートにドッキングしても良い。
【0033】
ここで、地球を周回する物体の速度は、地球からその物体の重心位置までの距離によって決まる。発送電パネル10の速度についても、発送電パネル10の重心位置ではなく、発電システム100の重心位置によって決まる。つまり、発送電パネル10は、発送電パネル10の重心と同じ軌道上にある物体とは異なる速度で地球を周回することになる。そのため、仮に、発送電パネル10にドッキングポートを設けたとすると、そのドッキングポートに近づく宇宙機はドッキングポートと異なる速度で移動するため、宇宙機の速度を逐一制御する必要がありドッキングが難しくなる。これに対し、本実施形態では、ドッキングポート42が発電システム100の重心と同じ軌道上に位置することになるため、ドッキングしようとする宇宙機とドッキングポート42は同じ速度で移動する。よって、ドッキングを容易に行うことができる。
【0034】
さらに、
図1に示すように、支持部41には、発送電パネル10の複数箇所と連結する複数の支持ワイヤ45が設けられている。発送電パネル10は巨視的には非常に薄いため変形しやすいが、本実施形態では、発送電パネル10全体を支持ワイヤ45によって支持することができるため、発送電パネル10の変形を抑えることができる。また、支持ワイヤ45の張力や長さを調整することにより、さらに発送電パネル10の変形を抑えたり制振したりすることも可能である。なお、連結部40と支持部41との間には補強ワイヤ46が複数設けられており、支持部41及び連結部40全体の剛性を向上させている。また、補強ワイヤ46を設ける位置は
図1で示す位置に限られない。例えば、連結部40が傾かないように、連結部40のさらに多くの個所と支持部41との間に補強ワイヤ46を設けてもよい。
【0035】
なお、連結部40及び支持部41は、カウンターウエイト30と同様に複数の空のパネルコンテナ31を連結することにより形成されている。パネルコンテナ31を他のパネルコンテナ31に連結(結合)する作業は、前述のサービスユニット90によって行われる。前述のとおり、サービスユニット90の土台部91はパネルコンテナ31の表面を移動できるように構成されており、マニピュレータ96はパネルコンテナ31を把持できるように構成されている。サービスユニット90のマニピュレータ96が、空のパネルコンテナ31の把持部33を把持し、ターンテーブル93の四隅に設けられた保持部94とパネルコンテナ31の連結装置32を連結させた後、既に連結されているパネルコンテナ31上の所定位置まで移動し、当該所定位置において、既に連結されているパネルコンテナ31に、把持しているパネルコンテナ31を連結する。この作業を繰り返すことで、連結部40及び支持部41が形成される。
【0036】
<反射鏡>
反射鏡50は、発送電パネル10に向けて太陽光を反射させる装置である。発電システム100は、地球と太陽の間に位置して発電面に太陽光が直接当たるときは問題なく発電を行うことができる。ところが、発電システム100が地球からみて太陽と反対側に位置しているときは発電面に太陽光が直接当たらない。このとき、反射鏡50によって発送電パネル10の発電面に向けて太陽光を反射させれば、発送電パネル10によって発電を行うことができる。
【0037】
図1に示すように、本実施形態に係る発電システム100は、2つの反射鏡50を有しており、それぞれ紙面左右方向に延びる支持部41の先端に設けられている。各反射鏡50は、7つの鏡ユニット51によって構成されているが、7つ以上で構成されていても7つ以下で構成されていても良い。以下、鏡ユニット51の構築方法について説明する。
図8乃至
図10は、鏡ユニット51の背面側から見た斜視図であって、鏡ユニット51の構築方法を示している。なお、ここでいう「背面」とは、鏡ユニット51の発送電パネル10に対向する反射面とは逆の面である。
【0038】
鏡ユニット51を構築するにあたり、まず、
図8に示すように、基礎柱52、裏柱53、表柱54を形成する。基礎柱52は、鏡ユニット51の中心から六方向に放射状に延びる柱である。裏柱53は、背面側に位置し鏡ユニット51の中心から各基礎柱52に対して垂直に延びる柱である。表柱54は、反射面側に位置し鏡ユニット51の中心から各基礎柱52に対して垂直に延びる柱である。なお、表柱54は、裏柱53よりも長い。
【0039】
続いて、
図8に示すように、各基礎柱52の先端を順につなぐようにして補強ワイヤ55を張るとともに、各基礎柱52の中央部分を順につなぐようにして補強ワイヤ56を張る。さらに、各基礎柱52の中央部分から、裏柱53の先端、表柱54の先端、及び表柱54の中央部分に向かって補強ワイヤ57を張る。なお、補強ワイヤ56は、各基礎柱52の中央部分以外の部分に取り付けても良く、補強ワイヤ57は表柱54の中央部分以外の部分に取り付けても良い。
【0040】
続いて、鏡ユニット51の中央と6本の基礎柱52の先端、合せて7カ所を中心として7枚の鏡フィルム58を取り付ける。はじめに、
図9に示すように、鏡フィルム58の中心となる位置から放射線状に延びる6本の骨柱59を形成する。そして、
図12に示すように、6本の骨柱59が交わる位置に予め鏡フィルム58を巻いておいたフィルムドラム60を設置し、フィルムドラム60から鏡フィルム58を展開する。鏡フィルム58の頂点にあたる部分にワイヤ61を取り付け、例えば各骨柱59の先端に設けたワイヤ61の巻取装置によって、各骨柱59に沿ってそのワイヤ61を引っ張れば、鏡フィルム58を展開することができる。鏡フィルム58を展開した後は、その鏡フィルム58を骨柱59に固定する。
【0041】
以上のようにして、全ての鏡フィルム58を所定の位置に取り付ければ、鏡ユニット51が完成する。
図10は、完成した鏡ユニット51を背面側から見た斜視図である。また、
図11は、完成した鏡ユニット51を反射面側から見た斜視図である。
図11に示すように、鏡フィルム58の反射面側には、表柱54以外の柱は現れていない。そのため、反射面側には太陽光を遮断するような部材はほとんどないことから、反射面では効率よく太陽光を反射することができる。
【0042】
図13は、反射鏡50の反射面側から見た斜視図である。
図13に示すように、反射鏡50は、中央に配置された1つの鏡ユニット51と、これを取り囲むようにして配置された6つの鏡ユニット51を備えている。また、反射鏡50は、中央に位置する鏡ユニット51の表柱54の先端及び中央部分から、それぞれ各鏡ユニット51の表柱54の先端及び中央部分に向かって反射面と平行に延びる補強柱62を備えている。また、各補強柱62の先端を順につなぐようにして補強ワイヤ63が設けられている。
【0043】
さらに、中央に位置する鏡ユニット51の表柱54の先端と、支持部41(
図1の紙面左右に延びる支持部)の先端とが、回転連結部64を介して三次元的に回動自在に連結されている。つまり、反射鏡50は、支持部41に回動自在に支持されている。また、支持部41の先端よりも基端寄り(連結部40寄り)の部分には、ワイヤ調整装置(長さ調整装置)65が設けられている。中央に位置する鏡ユニット51を取り囲む6つの鏡ユニット51の表柱54の先端と、ワイヤ調整装置65との間には調整ワイヤ(調整部材)66が設けられている。ワイヤ調整装置65は、各調整ワイヤ66の長さを調整することができる。本実施形態に係る発電システム100は上記のように構成されているため、ワイヤ調整装置65によって各調整ワイヤ66の長さを調整することで、回転連結部64を支点として発送電パネル10に対する反射鏡50の角度を調整することができる。
【0044】
<展開構造体>
上述した鏡ユニット51を構成する各柱52、53、54、59、62は、宇宙空間で展開される展開構造体70によって形成されている。以下、この展開構造体70について説明する。
図14は展開構造体70の斜視図である。以下では、便宜上、
図14の紙面上下方向を展開構造体70の上下方向とし、展開構造体70の長手方向を前後方向とし、上下方向及び前後方向に直交する方向を展開構造体70の左右方向として説明する。
【0045】
図14に示すように、展開構造体70は、縦部材71と、前後連結部材72と、左右連結部材73と、テレスコピック部材74とを備えている。左右方向に間隔をおいて平行に並んだ2本の縦部材71は対を成しており、この対が前後方向に複数列配置されている。前後連結部材72は、前後方向に並んだ縦部材71の上端部分同士、及び前後方向に並んだ縦部材71の下端部分同士をそれぞれ渡すようにして各部分に左右方向の軸回りに回動可能に取り付けられている。左右連結部材73は、左右方向に並んだ縦部材71の上端部分同士、及び左右方向に並んだ縦部材71の下端部分同士をそれぞれ渡すようにして各部分に前後方向の軸回りに回動可能に取り付けられている。なお、左右連結部材73は、縦部材71の下端部分に取り付けられたものは上方に向かって、縦部材71の上端部分に取り付けられたものは下方に向かって、中央部分が屈曲するように構成されている。テレスコピック部材74は、前後方向に並んだ縦部材71のうち一方の縦部材71の上端部分と他方の縦部材71の下端部分を渡すようにして両部分に左右方向の軸回りに回動可能に取り付けられている。なお、左右方向に並んだ縦部材71のうち一方の縦部材71の上端部分と他方の縦部材71の下端部分、及び一方の縦部材71下端部分と他方の縦部材71の上端部分を渡すようにして各部分に補強ワイヤ75が取り付けられている。
【0046】
また、前述したように、テレスコピック部材74は、所定長さまで伸長又は収縮すると、その長さを保持する部材である。展開構造体70で使用されているテレスコピック部材74は、展開構造体70が折り畳まれた状態から展開されると収縮する収縮型のものである。また、前後に隣接するテレスコピック部材74は、互いに異なる方向に傾斜している。例えば、前から1番目のテレスコピック部材74は後端部分が前端部分よりも上方に位置するように傾斜しており、前から2番目のテレスコピック部材74は後端部分が前端部分よりも下方に位置するように傾斜している。
【0047】
図15は、展開構造体70を前方から見た図であり、展開構造体70が左右方向に折り畳たまれる様子を示している。
図15(A)に示すように展開構造体70が展開された状態から、
図15(B)に示すように左右連結部材73をその中央部分を支点として折り曲げると、左右方向に並んだ縦部材71が互いに接近する。そして、
図15(C)に示すように左右方向に並んだ縦部材71を接触又は近接させることにより、展開構造体70は左右方向に完全に折り畳まれた状態となる。このとき、展開構造体70は、左右方向に対して垂直な平面状の形状を有している。
【0048】
図16は、展開構造体70を左方から見た図であり、展開構造体70が後側の部分から順に前後方向に折り畳まれる様子を示している。
図16に示すように、前後方向に並んだ縦部材71の距離を縮めると、テレスコピック部材74が伸びて、前後方向に並んだ縦部材71が相対的に上下方向に移動する。これにより、展開構造体70は、
図16で示す後側部分のように、各部材71〜74の間に大きな隙間が生じることなく前後方向に折り畳たまれる。
【0049】
以上のとおり、本実施形態によれば、展開構造体70のうちの各ブロック(4つの縦部材71によって形成される直方体の部分)に着目すると、各ブロックは左右方向に折り畳まれて平面状に変形し、その上でさらに前後方向に折り畳まれることになるため、最終的には平面状ではなく上下方向に延びる棒状に変形する。よって、本実施形態によれば、展開構造体70を非常に小さく折り畳むことができる。
【0050】
また、折り畳まれた展開構造体70は、折り畳む手順とは逆の手順で展開される。展開構造体70を展開する際、まず、展開構造体70を前後方向に伸ばしてゆく。このとき、テレスコピック部材74が収縮してゆき、所定の長さにまで達するとその長さを維持する。これにより、展開構造体70の前後方向の寸法は、展開状態の寸法に維持される。続いて、折り曲げられている左右連結部材73をまっすぐにしてゆくと、左右に隣接する縦部材71は互いに離間してゆく。そして、左右連結部材73が完全にまっすぐになったところで、その状態が維持される。これにより、展開構造体70の左右方向の寸法は、展開状態の寸法に維持される。以上により、展開構造体70は展開された状態となる。
【0051】
さらに、本実施形態では、展開構造体70を形成する複数の前後連結部材72のうち一部の前後連結部材72が伸縮可能に構成されている。
図17は、伸縮可能に構成された前後連結部材72(以下、「伸縮連結部材72A」と称す)の断面図である。
図17に示すように、伸縮連結部材72Aは、筒状の固定軸76と、一部が固定軸76の内部に挿入され固定軸76に対して摺動可能な可動軸77とを備えている。固定軸76の内部にはボールねじ78と、ボールねじ78を回転させる電動モータ79とが設けられている。また、可動軸77の内部にはボールねじ78が挿入されるナット80が設けられている。伸縮連結部材72Aは、以上のように構成されているため、電動モータ79でボールねじ78を回転させることにより、固定軸76に対して可動軸77を軸方向に移動させることができ、ひいては伸縮連結部材72Aの長さを変更することができる。
【0052】
図18は、展開構造体70の側面図であって、伸縮連結部材72Aを伸縮させた状態を示している。図中の破線で示した部分が、伸縮連結部材72Aである。
図18(A)に示すように、展開構造体70に設けられた伸縮連結部材72Aを他の前後連結部材72と同じ長さにした場合、展開構造体70は全体として直線状の形状を有している。一方、
図18(B)に示すように、展開構造体70に設けられた伸縮連結部材72Aを他の前後連結部材72よりも短くした場合、展開構造体70は全体として折れ曲がった形状となる。
【0053】
本実施形態では、このような伸縮連結部材72Aを有する展開構造体70を用いて鏡ユニットの各柱52、53、54、59、62を形成している。そのため、伸縮連結部材72Aを伸縮させることで、例えば鏡ユニット51の骨柱59(
図10参照)を折れ曲がった状態にすることにより、鏡フィルム58の発送電パネル10に対する角度を調整することができる。そのため、前述したように、調整ワイヤ66によって反射鏡50全体の角度を調整することに加え、各鏡ユニット51の角度を微調整することにより、反射鏡50によって太陽光を発送電パネル10に向けて効率よく反射させることができる。