(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予熱部には、前記第2収容空間内の空気を前記予熱空間に供給する予熱給気管と、前記予熱空間内の空気を排出する予熱排気管とが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の紡糸延伸装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1には詳細には記載されていないが、一般的な紡糸延伸工程では、上流側のゴデットローラによって糸は延伸可能な温度(ポリマーのガラス転移温度より少し上の温度:例えば、ポリエステルであれば約80℃)まで加熱される。加熱された糸は、上流側のゴデットローラと下流側のゴデットローラの間で延伸される。さらに、延伸された糸は、その延伸状態を熱固定するために、下流側のゴデットローラにおいて、上流側のゴデットローラよりも高い温度(例えば、120〜150℃)に加熱される。
【0006】
ここで、特に、上流側のゴデットローラでは、以下のような理由から、糸を所定の温度まで加熱することが難しいのが現状である。まず、紡糸装置から紡出された溶融ポリマーが、冷却装置にて冷却されて固化することによって糸となる。つまり、上流側のゴデットローラで加熱する直前の糸はほぼ常温である。さらに、冷却後の糸には通常油剤が付与されるが、油剤を構成する成分の大部分は水であるため、上流側のゴデットローラでは、水分を多量に含んだ糸を加熱することになる。これらの理由から、従来の構成では、上流側のゴデットローラにおいて、糸の温度を延伸可能な温度まで確実に上昇させるには、糸に対して大きな熱エネルギーを与える必要があり、その分、ローラからの放熱等による熱損失が大きいものとなっていた。これについて、本願発明者は、糸の加熱効率の向上のために、まず、上流側のゴデットローラに巻き付けられる前の糸を予熱して、糸の温度をある程度高くしてからゴデットローラで加熱することが有効であると考えた。
【0007】
この点、前記特許文献1では、上流側のローラユニットの保温ボックスにおいて、この保温ボックス内の空気の一部を糸入口側(連通流路)へ戻している。しかし、この上流側のローラユニットのゴデットローラの温度は、下流側のローラユニットと比べるとかなり低いため、保温ボックス内の空気の温度もそれほど高くない(100℃以下)。従って、このような構成では、上流側のゴデットローラに巻掛けられる前の糸を予熱する効果は低い。
【0008】
本発明の目的は、糸走行方向上流側に位置する加熱ローラに巻掛けられる前の糸を、十分に予熱することが可能な、紡糸延伸装置を提供することである。
【0009】
第1の発明の紡糸延伸装置は、紡糸装置から紡出される糸を延伸する紡糸延伸装置であって、前記糸が巻掛けられる第1加熱ローラと、前記第1加熱ローラから送られた糸が巻掛けられ、且つ、そのローラ表面温度が前記第1加熱ローラよりも高い、第2加熱ローラと、前記第1加熱ローラが収容される第1収容空間を有する第1保温部と、前記第2加熱ローラが収容される第2収容空間を有する第2保温部と、前記第1加熱ローラに巻掛けられる前の糸が走行する予熱空間を有し、且つ、前記第2保温部の前記第2収容空間に接続された予熱部と、を備え、
前記予熱部において、前記予熱空間を走行する前記糸に、前記第2収容空間から供給された空気が供給されて、前記糸が前記第1加熱ローラに巻掛けられる前に予熱されることを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、予熱部において、予熱空間を走行する、第1加熱ローラに巻掛けられる前の糸に対して、第1加熱ローラよりも高温の第2加熱ローラを収容する第2収容空間からの高温の空気が供給される。予熱空間を走行する糸が、高温の空気に触れることによって、糸が十分に予熱される。このように、第2収容空間の高温空気の熱、いわゆる、排熱を利用して、予熱部において複数の糸を十分な温度まで予熱できるため、紡糸延伸装置の全体の加熱効率が向上する。
【0011】
第2の発明の紡糸延伸装置は、前記第1の発明において、前記予熱部には、前記第2収容空間内の空気を前記予熱空間に供給する予熱給気管と、前記予熱空間内の空気を排出する予熱排気管とが接続されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明によれば、予熱部の予熱空間には、予熱給気管から高温の空気が供給されるとともに、予熱空間内の空気が予熱排気管から排出される。従って、予熱給気管から予熱空間内に、第2収容空間内の高温の空気を供給し続けることができるため、予熱空間内を走行する糸を十分に予熱することができる。
【0013】
第3の発明の紡糸延伸装置は、前記第2の発明において、前記第2保温部には、前記第2収容空間内の空気を排出する主排気管が接続され、前記予熱給気管と前記予熱排気管が、ともに、前記主排気管に接続されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明では、第2収容空間の空気を排出する主排気管から予熱給気管を介して、主排気管を流れる高温の空気の一部が予熱部へ供給される。また、予熱部の予熱空間から排出される空気は、予熱排気管を介して主排気管に戻される。これによれば、第2収容空間内の空気を排出するための主排気管に、予熱給気管及び予熱排気管を接続するだけで、予熱部への給気及び予熱部からの排気が可能となり、給排気の構成が簡単になる。また、既に主排気管が設置されている既存設備に対して簡単な設備変更を行うだけで、予熱部への給気と予熱部からの排気を実現できる。
【0015】
第4の発明の紡糸延伸装置は、前記第2又は第3の発明において、前記予熱給気管には、前記予熱部に供給される空気量を調整する流量調整弁が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明によれば、予熱給気管に設けられた流量調整弁によって、予熱部に供給される高温の空気の量を調整できる。例えば、流量調整弁によって空気流量を調整することにより、予熱空間内の空気温度を適切な範囲内に維持することができる。また、供給される空気の流速が速いと、予熱空間を走行する糸に対して糸揺れ等の問題を生じさせることも考えられるが、流量調整弁によって空気量を調整することで前記の糸揺れ等を抑制することができる。
【0017】
第5の発明の紡糸延伸装置は、前記第2〜第4の何れかの発明において、前記予熱給気管には、フィルタが設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
第2収容空間から排出された空気には、糸に付与されている油剤成分、あるいは、糸屑等の塵などが含まれうる。本発明では、予熱給気管に設けられたフィルタにより、上記の油剤成分や塵等が除去された上で、高温の空気が予熱部に供給される。従って、予熱空間を走行する糸に前記油剤成分や塵等が付着することが抑制される。
【0019】
第6の発明の紡糸延伸装置は、前記第1〜第5の何れかの発明において、1つの保温ボックス内に、隔壁によって区画された前記第1収容空間と前記第2収容空間とが形成され、前記1つの保温ボックスが、前記第1保温部と前記第2保温部の両方を備えていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明では、1つの保温ボックス内に、第1加熱ローラと第2加熱ローラの両方が収容されるため、紡糸延伸装置を小型化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る紡糸巻取機の概略構成図である。
図1に示すように、紡糸巻取機1は、紡糸延伸装置3と糸巻取装置4とを備えている。
【0023】
紡糸装置2の紡糸口金から連続的に紡出された、ポリエステル等の溶融繊維材料は、冷却筒5において冷却風が吹き付けられることによって固化して、複数の糸Yとなる。紡糸延伸装置3は冷却筒5の下側に配置され、冷却筒5から下方に送り出されてきた複数の糸Yを延伸する。紡糸延伸装置3は、油剤ガイド10と、5つのゴデットローラ11〜15と、保温ボックス16と、予熱ボックス17等を備えている。
【0024】
油剤ガイド10は、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yにそれぞれ油剤を付与するものである。油剤ガイド10によって油剤が付与された複数の糸Yは、後述する予熱ボックス17で予熱された後、櫛歯状の糸ガイド18によって分けられた上で、案内ローラ19を介して5つのゴデットローラ11〜15に送られる。尚、
図1では、糸ガイド18は、予熱ボックス17よりも糸走行方向下流側に設置されているが、予熱ボックス17で予熱された後の糸Yを速やかに保温ボックス16内に送り込むことができるように、糸ガイド18が予熱ボックス17よりも糸走行方向上流側に設置されてもよい。
【0025】
5つのゴデットローラ11〜15は、保温ボックス16内に収容されている。保温ボックス16は、断熱材料によって形成された直方体形状の箱体である。保温ボックス16には、複数の糸Yを保温ボックス16内に導入するための糸導入口16aと、複数の糸Yを保温ボックス16内から外部へ導出するための糸導出口16bとが形成されている。また、保温ボックス16の内部には、それぞれ断熱材料で形成された2つの隔壁22,23が設けられ、これら2つの隔壁22,23によって、保温ボックス16内の空間が上下2つの空間24a,24bに区画されている。下側の第1収容空間24aには、3つのゴデットローラ11〜13が収納され、上側の第2収容空間24bには、2つのゴデットローラ13,14が収納されている。
【0026】
糸導入口16aから保温ボックス16内に導入された複数の糸Yは、5つのゴデットローラ11〜15に対して、下側のゴデットローラ11から順に巻掛けられている。5つのゴデットローラ11〜15は、図示しないモータによってそれぞれ回転駆動される。また、5つのゴデットローラ11〜15は、それぞれ、内部にヒータ20を有する加熱ローラである。
【0027】
下側3つのゴデットローラ11〜13(本発明の第1加熱ローラ)は、複数の糸Yを延伸可能な温度(ガラス転移温度より少し高い温度:ポリエステル繊維の場合は約80℃)まで加熱するための加熱ローラである。3つのゴデットローラ11〜13の加熱温度(ローラ表面温度)は、糸Yのガラス転移温度以上の第1温度(例えば、ポリエステル繊維の場合は80〜95℃)に設定されている。一方、上側2つのゴデットローラ14,15(本発明の第2加熱ローラ)は、複数の糸Yの延伸された状態を熱固定するための加熱ローラである。2つのゴデットローラ14,15の加熱温度(ローラ表面温度)は、下側3つのゴデットローラ11〜13の第1温度よりも高い第2温度(例えば、120〜150℃)に設定されている。また、上側2つのゴデットローラ14,15の糸送り速度は、下側3つのゴデットローラ11〜13よりも速くなっている。尚、5つのゴデットローラ11〜15のそれぞれについての、ヒータ20の温度制御(糸の加熱制御)、及び、モータの回転制御(糸送り速度制御)は、制御装置21によって行われる。
【0028】
尚、保温ボックス16の、下側の第1収容空間24aを形成する部分が本発明の第1保温部25aに相当し、上側の第2収容空間24bを形成する部分が本発明の第2保温部25bに相当する。このように、1つの保温ボックス16内に、低温のゴデットローラ11〜13と高温のゴデットローラ14,15の両方が収容されるため、それぞれを別々の保温ボックスに収容する構成と比べて、紡糸延伸装置3を小型化することができる。
【0029】
保温ボックス16内に導入された複数の糸Yは、まず、下側3つのゴデットローラ11〜13によって送られる間に、延伸可能な温度まで加熱される。次に、予熱された複数の糸Yは、2つのゴデットローラ13,14の間の糸送り速度差によって延伸される。さらに、複数の糸Yは、上側2つのゴデットローラ14,15によって送られる間にさらに高い温度まで加熱されて、延伸された状態が熱固定される。上記のようにして延伸された複数の糸Yは、糸導出口16bから保温ボックス16外に導出され、さらに、案内ローラ26によって糸巻取装置4に送られる。
【0030】
予熱ボックス17(本発明の予熱部)は、保温ボックス16よりも糸走行方向における上流側に配置されている。この予熱ボックス17は、保温ボックス16内のゴデットローラ11に巻掛けられる前の糸Yを予熱するものである。予熱ボックス17の構成については、後で詳述する。
【0031】
糸巻取装置4は、紡糸延伸装置3の下方に配置されている。この糸巻取装置4は、ボビンホルダ27と、コンタクトローラ28等を備えている。ボビンホルダ27は、
図1の紙面垂直方向に延びる長尺な形状を有し、図示しないモータによって回転駆動される。このボビンホルダ27には、その軸方向に沿って複数のボビン29が並べて装着される。糸巻取装置4は、ボビンホルダ27を回転させることによって、複数のボビン29に複数の糸Yを同時に巻取り、複数の巻取パッケージ30を形成する。コンタクトローラ28は、複数の巻取パッケージ30の表面に接触して所定の接圧を付与し、巻取パッケージ30の形状を整える。
【0032】
次に、予熱ボックス17とその周辺構成について説明する。
図2は、予熱ボックスとその周辺構成を示す図である。
【0033】
予熱ボックス17の説明の前に、保温ボックス16内の、特に、第2収容空間24b内の高温空気を排出する主排気管31について説明しておく。第2収容空間24b内では、糸Yに付着した油剤の一部成分が第2収容空間24b内の高温状態によって揮発し、その揮発物が空気に混じって油煙が生じる。そこで、このような油煙を含む空気を、主排気管31によって排出することで、紡糸延伸装置3が収容された室内に油煙が漏れて、この油煙が室内に充満することを防止する。さらに、第2収容空間24b内の高温空気が漏れることにより、室内の温度が上昇することを防止する。
【0034】
図2に示すように、保温ボックス16の、第2保温部25bを構成する側壁部には、高温の2つのゴデットローラ14,15が収容された第2収容空間24bに連通する主排気管31が接続されている。主排気管31は、保温ボックス16から上方に延びている。これにより、第2収容空間24b内の高温(例えば、120〜150℃程度)の空気は、主排気管31から排出される。尚、第2収容空間24b内の空気には、油剤ガイド10で付与された糸Yの油剤成分が含まれている。また、この空気には糸屑等の塵も含まれている。そこで、保温ボックス16と主排気管31の接続部分には、第2収容空間24bから主排気管31へ排出される空気から、上記の油剤成分や塵を除去するためのフィルタ32が設けられている。これにより、空気中の油剤成分や塵等による、主排気管31内の汚れや詰まり等が抑制される。また、主排気管31の途中部には、主排気管31を閉止したり、あるいは、主排気管31の流路抵抗を調整したりするための弁33が設けられている。
【0035】
図2に示すように、予熱ボックス17は、断熱材料で形成された直方体形状の箱体である。予熱ボックス17の上壁部には糸入口17aが形成され、下壁部には糸出口17bが形成されている。そして、予熱ボックス17の内部空間(以下、予熱空間35という)には、糸入口17aから糸出口17bに向けて上下に糸Yが走行する。
【0036】
主排気管31の、弁33よりも下側の部分には予熱給気管36が主排気管31から分岐するように設けられ、この予熱給気管36は、予熱ボックス17の一方(図中左側)の側壁部に接続されている。また、予熱ボックス17の他方(図中右側)の側壁部には予熱排気管37が接続され、この予熱排気管37は、主排気管31の、弁33よりも上側の部分に接続されている。これにより、第2収容空間24bから排出された高温の空気の一部が、主排気管31から、予熱給気管36を介して予熱ボックス17の予熱空間35に供給され、さらに、予熱空間35内を走行する糸Yに接触して糸Yを予熱する。一方で、予熱空間35内の空気は、予熱排気管37から主排気管31に戻されて排出される。尚、予熱ボックス17に供給されるまでの空気の温度低下を抑えるために、主排気管31の、保温ボックス16から予熱給気管36の分岐部までの部分と、予熱給気管36は、断熱材でカバーされていることが好ましい。
【0037】
予熱給気管36には、この予熱給気管36を流れる空気の流量を調整するための流量調整弁38が設けられている。また、予熱ボックス17と予熱給気管36との接続部にはフィルタ39も設けられている。このフィルタ39は、先に説明した主排気管31のフィルタ32と同じく、予熱給気管36を流れる空気から、油剤成分や塵等を除去するためのものである。また、予熱ボックス17と予熱排気管37との間にも、予熱ボックス17内で発生した糸屑を捕捉するためのフィルタが設けられてもよい。
【0038】
また、主排気管31から予熱ボックス17に供給される空気の温度を検出する温度センサ40が設置されていることが好ましい。温度センサ40は、
図2のように予熱給気管36に設けられてもよいが、予熱ボックス17に設けられてもよい。
【0039】
以上の構成において、予熱ボックス17の予熱空間35には、保温ボックス16のゴデットローラ14,15を収納する第2収容空間24bから、主排気管31、及び、予熱給気管36を介して、高温の空気が供給される。これにより、予熱空間35においては、上下に走行する複数の糸Yに対して、側方から高温の空気が供給されることによって、複数の糸Yが高温の空気と直接触れることになり、これら複数の糸Yが十分に予熱される。このように、第2収容空間24bから排出される高温空気の熱、いわゆる、排熱を利用して、予熱ボックス17内で、常温の複数の糸Yを十分な温度まで予熱できるため、紡糸延伸装置3の全体の加熱効率が向上する。
【0040】
予熱給気管36から供給された高温の空気は、予熱空間35を通って予熱排気管37から排出される。従って、予熱空間35内に、第2収容空間24b内の高温の空気を供給し続けることができるため、予熱空間35内を走行する糸Yを十分に予熱することができる。
【0041】
また、第2収容空間24bの空気を排出する主排気管31から予熱給気管36が分岐し、この予熱給気管36を介して、主排気管31を流れる高温の空気の一部が予熱ボックス17へ供給される。また、予熱空間35から排出される空気は、予熱排気管37を介して、主排気管31に戻される。つまり、第2収容空間24b内の空気を排出するための主排気管31に、予熱給気管36及び予熱排気管37を接続するだけで、予熱ボックス17への給気及び予熱ボックス17からの排気が可能となり、給排気の構成が簡単になる。また、既に主排気管31が設置されている既存設備に対して、予熱給気管36と予熱排気管37を接続するという、簡単な設備変更を行うだけで、予熱ボックス17への給気と予熱ボックス17からの排気を実現できる。
【0042】
予熱給気管36に、流量調整弁38が設けられているため、この流量調整弁38によって、予熱ボックス17に供給される高温の空気の量を調整できる。例えば、予熱給気管36から供給される空気の温度が高く、且つ、その供給量が多いと、予熱空間35内の温度が高くなり過ぎて複数の糸Yが過熱され、ガラス転移温度まで達してしまう虞もある。そこで、温度センサ40の検出温度を確認しながら流量調整弁38を操作することによって、予熱空間35内の空気温度を適切な範囲内に維持することができる。また、供給される空気の流速が速いと、予熱空間35を走行する糸Yに対して糸揺れ等の問題を生じさせることも考えられるが、流量調整弁38によって空気量を調整することで糸揺れ等を抑制することもできる。
【0043】
予熱給気管36(詳細には、予熱給気管36と予熱ボックス17との接続部)にはフィルタ39が設けられている。そのため、このフィルタ39により、第2収容空間24bからの高温の空気から、油剤成分や糸屑等の塵などが除去された上で、高温の空気が予熱ボックス17に供給される。従って、予熱空間35を走行する糸Yに、前記油剤成分や塵などが付着することが抑制される。
【0044】
尚、第2収容空間24bからの空気に含まれている油剤成分は、元々、油剤ガイド10で糸Yに付与されて油剤に含まれているものであり、空気中の油剤成分自体が、予熱ボックス17で糸Yに直接付着しても大きな問題にはならない。但し、空気に含まれている油剤成分が、予熱給気管36や予熱ボックス17の内面に徐々に堆積して塊状となり、これが内面から剥がれて糸Yに付着すると、糸品質を大きく損ねる原因となる。この理由から、フィルタ39によって、予熱ボックス17へ供給される空気から油剤成分を除去しておくことには意義がある。
【0045】
また、主排気管31と保温ボックス16との接続部分にも同様のフィルタ32が設けられているため、予熱給気管36を流れる空気に含まれる油剤成分や塵などの量は少なくなっている。しかし、本実施形態では、さらに、予熱給気管36にもフィルタ39が設けられることで、予熱ボックス17に供給される空気から、油剤成分等が確実に除去されている。尚、主排気管31のフィルタ32で除去し損ねた油剤成分等を、予熱給気管36のフィルタ39で確実に捕捉することができるように、予熱給気管36のフィルタ39には、主排気管31のフィルタ32よりも、目の細かいものを使用してもよい。
【0046】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0047】
1]制御装置21により、流量調整弁38による流量調整を制御させてもよい。例えば、温度センサ40の温度検出信号に基づいて、予熱ボックス17の予熱空間35内の温度が所定の温度に維持されるように、流量調整弁38の開度を制御して予熱ボックス17に供給される空気の流量を調整してもよい。
【0048】
また、糸の種類や太さ、あるいは、付与される油剤の種類等の種々の生産条件によって、糸を延伸するために糸に与えるべき熱エネルギーの量が異なる。例えば、太い糸を生産する場合は、糸の熱容量が大きいことから、細い糸を生産する場合と比較して、予熱ボックス17にて多くの熱を糸Yに与えることが好ましい。そこで、制御装置21は、前記の生産条件に応じて、流量調整弁38を制御して予熱ボックス17に供給される空気の流量を調整してもよい。
【0049】
2]前記実施形態では、予熱給気管36にフィルタ39が設けられていたが、糸Yの種類や油剤の種類等によっては、予熱ボックス17における糸Yへの油剤成分等の付着がそれほど問題にならない、あるいは、そもそも油剤が糸Yに付着しにくい場合もある。そのような場合には、フィルタ39を省略してもよい。
【0050】
3]前記実施形態では、第2収容空間24bの空気を排出する主排気管31に、予熱ボックス17への給気を行う予熱給気管36と、予熱ボックス17からの排気を行う予熱排気管37とが接続されている。これに対して、予熱ボックス17に対する給排気系統を、主排気管31と別に設けられてもよい。例えば、
図3に示すように、予熱給気管36が保温ボックス16の第2収容空間24bに直接接続され、また、予熱排気管37が主排気管31とは接続されていなくてもよい。
【0051】
4]前記実施形態では、予熱部としての予熱ボックス17が保温ボックス16とは別に設けられていたが、予熱部が保温ボックス16と一体化されてもよい。例えば、
図4に示すように、保温ボックス16が、第1保温部25aと第2保温部25bの側方に、予熱部50を一体的に備えていてもよい。予熱部50の予熱空間51は、第1収容空間24aと第2収容空間24bと、それぞれ開口16c,16dを介して連通している。これにより、第2収容空間24b内の高温の空気が、開口16dから予熱空間51に流れ込む。保温ボックス16に導入される複数の糸Yは、まず、糸導入口16aから予熱空間51に入り、さらに、開口16cを経て第1収容空間24aに入る。このとき、予熱空間51において、複数の糸Yが、第2収容空間24bから流れ込んだ高温の空気によって予熱される。
【0052】
5]ゴデットローラや保温ボックスの構成は、前記実施形態の構成には限られない。
【0053】
例えば、
図5に示す紡糸巻取装置3Aは、第1ゴデットローラ61と第2ゴデットローラ62を有する。第1ゴデットローラ61と第2ゴデットローラ62は、ともに、内部にヒータ63を有する加熱ローラである。第1ゴデットローラ61は、第1セパレートローラ64とともに、第1保温ボックス65(本発明の第1保温部)に収容されている。第2ゴデットローラ62は、第2セパレートローラ66とともに、第2保温ボックス67(本発明の第2保温部)に収容されている。
【0054】
紡糸装置2から紡出された複数の糸Yは、まず、油剤ガイド10で油剤が付与される。次に、複数の糸Yは、第1保温ボックス65(第1収容空間68)内において、第1温度に設定された第1ゴデットローラ61と、第1セパレートローラ64との間に、複数回巻き付けられて延伸可能な温度まで加熱される。第2ゴデットローラ62の回転速度(糸送り速度)は、第1ゴデットローラ61よりも速くなっており、2つのゴデットローラ61,62の間で複数の糸Yは延伸される。さらに、複数の糸Yは、第2保温ボックス67(第2収容空間69)内で、第1温度よりも高い第2温度に設定された第2ゴデットローラ62と、第2セパレートローラ66との間に、複数回巻き付けられて加熱される。
【0055】
ここで、第1ゴデットローラ61よりも糸走行方向上流側には、予熱ボックス70が設けられている。予熱ボックス70には、第2保温ボックス67の第2収容空間69内の高温の空気が供給されている。これにより、第1ゴデットローラ61に巻掛けられる前の複数の糸Yが、予熱ボックス70において予熱される。尚、この
図5の形態においても、先の
図2、
図3の形態と同様に、第2保温ボックス67と予熱ボックス70との間に、流量調整弁78が設けられていることが好ましい。この流量調整弁78によって、第2保温ボックス67から予熱ボックス70に供給する高温の空気の量を調整することができる。
【0056】
また、加熱温度の異なる3種類以上のゴデットローラを備え、複数回に分けて糸を延伸する、いわゆる、多段延伸が可能な紡糸延伸装置にも、本発明を適用することができる。この場合、高温のゴデットローラを収容する収容空間の空気を、それよりも低温のゴデットローラの入口側に設置された予熱部に供給することで、予熱部において、低温のゴデットローラに巻掛けられる前の糸が予熱される。