(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
印刷したパターンと接触している少なくとも1対のうち1個のフューザーロールが、その表面に除去可能な剥離層を含み、および/またはフッ素化材料で構成される表面を有する、請求項6に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書には、従来のプロセスによって印刷した同じ印刷した導電性インクと比較して、改良されたシート抵抗および導電性を有する印刷した導電性インクを達成する印刷プロセスを記載する。
【0012】
従来の印刷プロセスでは、一般的にスクリーン印刷によって導電性インクを印刷し、基材の上に導電性インクの望ましいパターンを作成する。導電性インクを印刷した後、印刷した部分に対し、乾燥プロセスまたは硬化プロセスを行い、インクから溶媒を除去し、基材の上でインクを固化させる。本発明のプロセスでは、上の硬化させたインクに対し、さらなる融合工程をさらに行う場合、シート抵抗は、従来の印刷したインクと比較して、驚くほど下がり、印刷したインクの導電性は、驚くほど高くなることがわかった。
【0013】
したがって、本発明のプロセスは、印刷プロセスによって、導電性インクを用いて基材の上にパターンを印刷することと、例えば、約120℃〜約250℃の温度で、導電性インクから実質的にすべての溶媒を除去するのに十分な時間インクの印刷したパターンを硬化させることと、導電性インクの熱可塑性バインダーのガラス転移温度(Tg)より約20℃〜約130℃高い温度、最低でも少なくとも120℃、約50psi〜約1500psiの圧力、融合システムを通る供給速度が約1m/分〜約100m/分で操作される融合システムを通り、表面に印刷したパターンを供給することによって、インクのパターンを融合させることとを含む。
【0014】
本明細書のプロセスで使用する導電性インクとして、任意の適切な導電性インクを使用してもよい。導電性インクは、望ましくは、少なくとも導電性材料と、熱可塑性バインダーと、溶媒とを含む。
【0015】
導電性材料として、粒状形態の任意の材料を使用してもよく、この粒子は、平均粒径が0.5〜15ミクロン、例えば、1〜10ミクロン、または2〜10ミクロンである。粒子は任意の形状であってもよいが、望ましくは、導電性材料は、例えば、棒状、円錐状および平板状を含むフレーク形状、または針状のような二次元形状を有しており、例えば、アスペクト比が少なくとも約3対1、例えば、少なくとも約5対1である。
【0016】
導電性材料は、任意の導電性金属または金属アロイ材料で構成されていてもよい。適切な導電性材料としては、例えば、金属、例えば、金、銀、ニッケル、インジウム、亜鉛、チタン、銅、クロム、タンタル、タングステン、白金、パラジウム、鉄、コバルト、およびこれらのアロイから選択される少なくとも1つの金属が挙げられる。上述の少なくとも1つを含む組み合わせを使用してもよい。また、導電性材料は、上述の1つ以上の金属またはアロイでコーティングまたはめっきされたベース材料であってもよい(例えば、銀でめっきされた銅フレーク)。費用、入手可能性および性能の理由で、望ましい導電性材料は、銀または銀めっきされた材料を含む。
【0017】
導電性材料は、導電性ペースト中に、例えば、インクの約50〜約95重量%、例えば、約60〜約90重量%または約70〜約90重量%の量で存在していてもよい。
【0018】
インクは、少なくとも1つの熱可塑性バインダーも含む。バインダーは、望ましくは、インクが印刷後のパターンを保持することができる適度に高い粘度を有する材料であり、熱可塑性材料が溶融または軟化するTgを有し、ずり薄化し、合理的な温度(この態様で望ましい低いTg)で、印刷したインクを高堅牢性にすることもできる(もっと高いTgを必要とする)。バインダーは、重量平均分子量(Mw)が、受け入れられる任意の方法論によって測定する場合、10,000〜600,000ダルトン(Da)、例えば、約25,000〜約250,000Daまたは約30,000〜約250,000Daであってもよい。バインダーのTgは、例えば、55℃〜約150℃、例えば、約60℃〜約100℃または約60℃〜約80℃である。
【0019】
少なくとも1つの熱可塑性バインダーは、任意の適切な材料であってもよい。熱可塑性バインダーポリマーの例としては、例えば、ポリエステル、例えば、テレフタレート、テルペン、スチレンブロックコポリマー、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンコポリマーおよびスチレン−エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸ターポリマー、エチレンアクリル酸ブチルコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルおよび他のポリ(アルキル)メタクリレート、ポリオレフィン、ポリブテン、ポリアミド、およびこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0020】
少なくとも1つの熱可塑性バインダーは、場合により、インクの溶媒中のバインダーの分散および/またはインク中の導電性材料の分散を補助してもよい官能基、例えば、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を含んでもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、バインダーは、以下の式
【化1】
を有するポリビニルブチラール(PVB)ターポリマーであり、式中、R
1は、化学結合(例えば、共有化学結合)、または約1〜約20個の炭素、約1〜約15個の炭素原子、約4〜約12個の炭素原子、約1〜約10個の炭素原子、約1〜約8個の炭素原子、または約1〜約4個の炭素原子を含む二価の炭化水素結合であり;R
2およびR
3は、独立して、約1〜約20個の炭素原子、約1〜約15個の炭素原子、約4〜約12個の炭素原子、約1〜約10個の炭素原子、約1〜約8個の炭素原子、または約1〜約4個の炭素原子を含む、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびヘプチル基、芳香族基または置換芳香族基であり;x、yおよびzは、それぞれ重量%としてあらわされる対応する繰り返し単位の比率をあらわし、それぞれの繰り返し単位は、ポリマー鎖にランダムに分布しており、x、yおよびzの合計は約100重量%であり、xは、独立して、約3重量%〜約50重量%、約5重量%〜約40重量%、約5重量%〜約25重量%、および約5重量%〜約15重量%であり;yは、独立して、約50重量%〜約95重量%、約60重量%〜約95重量%、約75重量%〜約95重量%、および約80重量%〜約85重量%であり;zは、独立して、約0.1重量%〜約15重量%、約0.1重量%〜約10重量%、約0.1重量%〜約5重量%、および約0.1重量%〜約3重量%である。
【0022】
ポリビニルブチラールターポリマーは、ビニルブチラール、ビニルアルコールおよび酢酸ビニルから誘導されてもよく、重量平均分子量(Mw)が、約10,000〜約600,000Da、例えば、約40,000〜約300,000Daまたは約40,000〜約250,000Daである。PVBターポリマーバインダーのTgは、例えば、約60℃〜約100℃、例えば、約60℃〜約85℃または約62℃〜約78℃である。ポリビニルブチラールターポリマーの代表的な組成物は、重量基準で、ポリビニルアルコールとして計算し、約10〜約25%のヒドロキシル基と、ポリ酢酸ビニルとして計算し、約0.1〜約2.5%のアセテート基とで構成され、残りはビニルブチラール基である。
【0023】
いくつかの実施形態では、PVBターポリマーは、R
1は結合であり、xは、ターポリマー中のビニルアルコール単位の量をあらわし、R
2は、3個の炭素原子を含むアルキル基であり、yは、ターポリマー中のビニルブチラール単位の量をあらわし、R
3は、1個の炭素原子を含むアルキル基であり、zは、コポリマー中の酢酸ビニル単位の量をあらわす。PVBターポリマーは、ランダムターポリマーである。
【0024】
ターポリマーを構成する異なる単位の含有量を調節することによって、PVBターポリマーの特性を調節してもよい。例えば、もっと多くの量の酢酸ビニル単位と、もっと少ない量のビニルブチラール単位を含むことによって(小さなyと大きなz)、もっと高い熱歪み温度を有するもっと疎水性のポリマーを得ることができ、もっと靱性が高く、良好な接着剤になる。また、もっと少ない量のビニルアルコール(ヒドロキシル)単位を含むと、溶解度特性が広がるだろう。
【0025】
ポリビニルブチラールターポリマーの例としては、例えば、商標名MOWITAL(Kuraray America)、S−LEC(Sekisui Chemical Company)、BUTVAR(Solutia)およびPIOLOFORM(Wacker Chemical Company)で製造されるポリマーが挙げられる。
【0026】
さらなる実施形態では、インクのバインダーは、上述のPVBターポリマーを含んでいてもよく、さらに、ポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーを含んでいてもよい。PVPは、重量平均分子量(Mw)が、例えば、約5,000〜約80,000、例えば、約40,000〜約70,000であってもよい。PVPの商業的な供給業者としては、AldrichおよびISP Corp.(K−30、MWが60,000)が挙げられる。PVPのガラス転移温度は、例えば、125℃〜180℃、例えば、約150℃〜約170℃であってもよい。
【0027】
PVPは、PVBとともに使用するとき、例えば、インク組成物の約0.1〜約3重量%、例えば、約0.1〜約1.5重量%、または約0.2〜約0.8重量%の量で加える。PVPとPVBの重量比は、例えば、約1:3〜約1:30、例えば、約1:3〜約1:25、または約1:5〜約1:20である。PVPとPVBの比率が1:3より多くのPVPを含む比率では、インクは、用途に適切なずり薄化プロフィールをもたない傾向があり、このプロフィールは、ずり薄化のときには粘度が低いが、ずり薄化力を取り除いた後に迅速に粘度が回復するプロフィールである。
【0028】
PVPを含むことで、導電性材料に対するポリマーバインダー全体の比率を小さくすることができ、インクの粘度プロフィールを変えることができ、ずり薄化挙動(塗布中に良好な流動性)と抵抗の低下の妥協点を与える。
【0029】
PVBターポリマーおよびPVDに関し、バインダー中で使用するそれぞれの材料および量は、基材にインクを塗布するために用いられる印刷手順によって変わる。スクリーン印刷の場合、基材に塗布した後に粘度の回復が必要であり、PVPとPVBの重量比が、例えば、約1:3〜約1:30だと、例えば、10,000〜70,000cpの範囲の粘度を有するインク(インク中に導電性材料を含む)とともに、この特性を有するインクが得られる。グラビア印刷の場合、粘度回復特性が必要ではなく、もっと粘度が低いインク(例えば、粘度が50〜2,000cp)を使用してもよいため、PVBをほとんど含まないか、まったく含まないインクが適切であろう。リソグラフィー印刷およびフレキソグラフィー印刷の場合、もっと高い粘度(例えば、50,000cp以上)が必要であり、したがって、インクには、ほとんどPVPが含まれないか、またはまったく含まれないのがよい。
【0030】
導電性インクのバインダーは、インクの約10重量%未満、例えば、インクの約0.1〜約8重量%、または約0.5〜約5重量%の量で存在していてもよい。
【0031】
インクに異なる粘度を付与するのに役立つように、異なるMwおよびTgを有するバインダーを製造してもよい。異なる液体堆積技術(例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア/フレキソグラフィー印刷など)は、上述のように、異なる粘度要求を有するインクの使用を必要とする。粘度を種々の方法によって測定してもよいが、本明細書では、Ares G2(TA Instruments)を用いて測定した場合を報告する。それに加え、インクにもっと多くのバインダーを使用し、および/またはもっと少ない溶媒を使用すると、インクの粘度を上げるように作用するだろう。
【0032】
インクは、少なくとも1つの溶媒も含む。インクのポリマーバインダーを溶解することができる任意の溶媒を使用してもよい。溶媒は、熱可塑性バインダーを溶解し、穏和な乾燥条件(例えば、約50℃〜約250℃)で乾燥しつつ印刷した後に蒸発してもよい単一の溶媒または溶媒混合物であってもよい。溶媒は、インクを塗布する基材の種類、インクを印刷するために用いられる印刷方法などに依存して、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、脂肪族溶媒、芳香族溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、水などであってもよい。溶媒の例としては、例えば、水、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびエチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール、ブチルグリコール、ジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびヘキシレングリコール、エーテルアルコール、例えば、ブトキシエタノール、プロポキシプロパノールおよびブチルジグリコール、エーテル、例えば、エチレングリコールジ−C1−C6−アルキルエーテル、プロピレングリコールジ−C1−C6−アルキルエーテル、ジエチレングリコールジ−C1−C6−アルキルエーテル、例えば、ブチルカルビトール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)およびジプロピレングリコールジ−C1−C6−アルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、2,4−ペンタンジオンおよびメトキシヘキサノン、エステルまたはエーテルエステル、例えば、エチルエトキシピロピオネート、メチルグリコールアセテート、エチルグリコールアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、メトキシブチルアセテート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチル、ブタン酸ブチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、フタル酸ジブチルおよびセバシン酸ジブチル、テルペン、例えば、α−またはβ−テルピネオール、ケロシンのような炭化水素、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0033】
溶媒を、インクの約5〜約50重量%、例えば、約5〜約35重量%、または約5〜約25重量%の量で使用してもよい。1種類以上の溶媒の種類および量を調節し、特定の印刷方法のためのインクを用いた印刷、装置速度などを最適化することができる。
【0034】
導電性インクは、必要な場合または所望な場合、任意要素の添加剤、例えば、可塑剤、潤滑剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、酸化防止剤およびキレート化剤を含んでいてもよい。
【0035】
導電性インクを任意の適切な方法によって製造してもよい。方法の1例は、まず、インクの溶媒にバインダーを溶解することであり、この溶解は、熱および/または攪拌の使用を伴って行われてもよい。次いで、塊を避けるために、望ましくは徐々に加える速度で導電性材料を加えてもよい。導電性材料を加えている間に、熱および/または攪拌を再び加えてもよい。
【0036】
導電性インクを使用し、印刷によって基材の上に導電性形体を作成する。任意の適切な印刷技術を用い、基材の上にインクを堆積させることによって印刷を行ってもよい。基材の上へのインクの印刷は、基材の上、または層状材料をすでに含む基材(例えば、半導体層および/または絶縁層)の上で行ってもよい。
【0037】
本明細書の印刷は、例えば、基材の上にインク組成物を堆積させることを指す。印刷は、基材の上に望ましいパターンのインクを作成することができる任意のコーティング技術も含むことができる。適切な技術の例としては、例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、浸漬コーティング、リソグラフィーまたはオフセット印刷、グラビア、フレキソグラフィー、スクリーン印刷、ステンシル印刷、スタンピング(例えば、ミクロ接触プリンティング)などが挙げられる。
【0038】
導電性インクが堆積する基材は、任意の適切な基材であってもよく、例えば、ケイ素、ガラス板、プラスチック膜、シート、布地または紙を含む。構造的に柔軟なデバイスとして、プラスチック基材、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドシートなどを使用してもよい。
【0039】
印刷後、堆積させてパターン作成したインクについて硬化工程を行う。硬化工程は、インクの実質的にすべての溶媒を除去し、インクを基材にしっかりと付着させる工程である。本発明の硬化は、バインダーの架橋または他の変換は必要ないが、架橋可能なバインダーをインクで使用する場合、所望な場合には硬化工程中に架橋してもよい。堆積させてパターン作成したインクを、約50℃〜約250℃、例えば、約80℃〜約220℃または約100℃〜約210℃の温度にすることによって硬化工程を行う。硬化工程が終了したとき、溶媒は、本質的に蒸発している。実質的にすべての溶媒の除去とは、溶媒の90%より多くが系から除去されることを意味する。残ったインク膜は、本質的に導電性材料およびバインダーのみである。印刷物は接触によって損傷せず、または、言い換えると、粘着性ではない。インク膜は、バインダーのTgより低い温度に維持するとき、異なる基材の上に接触によって裏移りまたは移動すべきではない。硬化時間の長さは、当業者が理解するように、インク中の溶媒の量、インクの粘度、印刷パターンを作成するために用いられる方法、硬化に使用する温度などによって変わるだろう。スクリーン印刷の場合、硬化を例えば約5〜約120分行ってもよい。オフセット印刷の場合、硬化を例えば20秒〜2分行ってもよい。グラビア印刷およびフレキソグラフィー印刷の場合、硬化を例えば20秒〜2分行ってもよい。必要な場合、もっと長い時間または短い時間を用いてもよい。
【0040】
硬化のための加熱を、空気中、不活性雰囲気中、例えば、窒素下またはアルゴン下、または還元雰囲気中、例えば、1〜約20容積%の水素を含む窒素下で行ってもよい。常圧で、または減圧状態で、例えば、約1000mbar〜約0.01mbarで加熱を行うこともできる。
【0041】
本明細書で使用する場合、「加熱」は、インクを硬化させるためにパターン形成したインクに十分なエネルギーを与えることができる任意の技術を包含する。加熱技術の例としては、熱による加熱、赤外線(「IR」)照射、レーザー線、フラッシュ光、マイクロ波、またはUV照射、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
融合工程では、硬化したパターン形成したインクを、インクのバインダーのTgよりも20℃〜130℃高い温度、例えば、バインダーのTgよりも20℃〜100℃または30℃〜80℃高い温度にする。融合は、パターン形成したインクを、少なくとも120℃、例えば、少なくとも約130℃または少なくとも約140℃の温度にすべきである。融合温度は、上述のような加熱によって達成される。したがって、インクは、特に、市販の導電性インクと比較したときに、堅牢性が高い。インク、融合デバイスおよびプロセスは、高温であっても、導電性ペーストが裏移り(フューザーロールのような融合装置への転写)しないようなものである。
【0043】
この温度に加え、融合は、硬化したパターン形成したインクに圧力も加える。圧力は、約50psi〜約1500psi、例えば、約50psi〜約1200psiまたは約100psi〜約1000psiであってもよい。温度および圧力は、望ましくは、必要な温度または望ましい温度に維持した1セット以上のフューザーロールと、爪の加圧条件によって、硬化したパターン形成したインクを含む基材を供給することによって加えられる。1セット以上のフューザーロールによる供給速度は、例えば、約1m/分〜約100m/分、例えば、約5m/分〜約75m/分、または約5m/分〜約60m/分である。
【0044】
フューザーロールとして、任意のフューザーロール材料を使用してもよい。例えば、トップロールは、非常に硬い材料(例えば、場合により裏移りを防ぐのに役立つ剥離剤でコーティングされた鋼鉄)であってもよく、ボトムロールは、柔らかいロール(例えば、ゴムでコーティングされたロール)などであってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、印刷したインクに接触するフューザーロール対の片方が、印刷したパターンの裏移りを防ぐのに役立つように、ロール表面に除去可能な剥離層(例えば、油またはワックス)を含むように製造されてもよい。適切な油は、シリコーン油および官能化シリコーン油から選択される。適切なシリコーン油の具体例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられる。適切な官能化油は、例えば、アミノ官能化PDMS油およびメルカプト官能化PDMS油から選択される。
【0046】
また、印刷した膜と接触するフューザーロール対の片方が、良好な剥離特性を有する材料で構成される表面を、例えば、層またはコーティングとして有するように製造してもよい。適切な表面は、ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロプロピルビニルエーテル)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのターポリマー、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのテトラポリマー、およびこれらの組み合わせから作られてもよい。
【0047】
本出願の一例のプロセスを
図1に示す。
図1において、基材10は、印刷工程20で望ましいパターンになるように基材の上に印刷した導電性ペーストインクを含む。次いで、印刷したペーストインクを硬化工程30で硬化させ、印刷し硬化させたパターン15が基材10の上に得られる。次いで、基材の上にある印刷し硬化させたパターンを融合工程40に供給する。この工程で、加熱したフューザーロール45の対が、表面に印刷し硬化させたパターンを含む基材に熱および圧力を加える。最終製品は、基材の上にパターン形成して融合させたインク18を含む基材10を含む。
【0048】
硬化工程および融合工程を別個に記載するが、これらの工程を同時に行ってもよく、例えば、融合工程と組み合わせて行ってもよい。言い換えると、融合工程中に加える熱は、印刷したインクを硬化させるように作用してもよく、それによって、プロセス効率が得られる。このような実施形態では、硬化装置は、融合装置の中にあり、装置が1つであり、同じ装置であると考えるべきである。
【0049】
基材の上でパターン形成したインクを作成し、パターン形成したインクを硬化させ、融合するプロセスは、ライン内の連続的な様式で行われてもよく、または不連続の工程で行われてもよい。スクリーン印刷によってインクを堆積させたとき、このプロセスは、典型的には、時間がかかり過ぎてライン内の連続プロセスで行うことができない。スクリーン印刷および他の不連続プロセスでは、基材の上でパターン形成し硬化させたインクを、硬化工程と融合工程の間にある程度の時間保存してもよい。すなわち、硬化させてから任意の特定の時間経過後に、融合を行うことは必須ではない。堆積方法を利用するプロセス(例えば、オフセット印刷およびグラビア/フレキソグラフィー印刷)は、ライン内の連続プロセスを用いた使用につながる。
【0050】
ライン内の連続プロセスでは、連続プロセスによって簡単な連続供給のために基材材料をロール状または積み重ねた形態で保存してもよく、まず、この基材材料を印刷装置に供給し、印刷装置で、基材の上に、所定の望ましいパターンになるようにインクを印刷する。次いで、印刷した基材を、印刷装置から硬化ステーションに連続して進め、硬化ステーションで硬化させるために熱を加える。次いで、この物品を融合システムに連続的に供給し、融合システムで、圧力および熱を加え、インクを融合させる。上述のように、硬化と融合を場合により1工程で行ってもよい。融合システムからの出口の後で最終生成物を集め、必要な場合、または所望な場合、さらに処理してもよい。例えば、最終製品を集め、適切な場合、ロールに巻き取ってもよく、これを切断し、集めるなどしてもよい。このプロセスを通る材料の供給速度は、印刷および硬化のための必要な速度に設定されてもよく、融合供給速度のために上に記載したのと同じ供給速度であってもよい。
【0051】
ライン内連続プロセスの一例を
図2に示す。
図2において、まず、印刷工程50で印刷を行う。説明を簡単にするために、
図2は、連続印刷の2つの選択肢を示すが、両方の選択肢は、同じ装置に存在していない。印刷選択肢Aでは、オフセット印刷52によって印刷が行われる。印刷選択肢Bでは、フレキソグラフィー/グラビア印刷54によって印刷が行われる。両方の印刷選択肢において、基材の上に印刷されたパターン形成されたインクを含んで得られた基材が、硬化工程60に進み、次いで、融合工程70に進む。
【0052】
本明細書に記載するプロセスは、パターン形成されたインクに、改良された特性、例えば、改良されたシート抵抗および導電性および改良された表面粗さを付与すると考えられる融合工程を利用する。確信をもって知られているわけではないが、さらなる融合工程によって、従来の作成された印刷したパターンと比較して、いくつかの観点で、印刷したパターンの特徴を改良し得ると考えられる。例えば、印刷し融合したパターンは、導電性インクを大きく変えることなく、改良された導電性を示し、低下したシート抵抗を示す。このことは、例えば、導電性材料を、印刷したパターンにもっと密に封入することによって、および/または印刷したパターンからエアポケットを除去することによって、インクの導電性材料の中で良好な接触性を作り出す融合に起因するだろう。改良された導電性は、印刷に必要なインクの量が少なくなるため、費用削減に換算される。他の可能な利点としては、(1)表面粗さの低下および(2)基材に対し、印刷したパターンの良好な付着が挙げられるだろう。プリンテッドエレクトロニクス、特に、多層集積にとって、表面粗さが小さいことが好ましい。
【0053】
本明細書の印刷しパターン形成し、融合したインクは、融合手順を行わなかった同じインクと比較して、顕著に改良されたシート抵抗および導電性を示す。例えば、DuPont 5025は、シート抵抗が12〜15mΩ/sq./milであると報告されているが、本発明のプロセスは、シート抵抗が非常に小さい(例えば、10mΩ/sq./mil以下、例えば、9mΩ/sq./mil以下)印刷したインクを達成することができる。シート抵抗も顕著に改良され、例えば、融合手順を行わなかった同じインクに対し、20%以上低下する。
【0054】
得られた要素を、電子機器(例えば、薄膜トランジスタ、有機発光ダイオード、RFID(無線自動識別)タグ、光電池、ディスプレイ、印刷したアンテナおよび導電性要素または構成要素を必要とする他の電子機器)の電極、導電性パッド、インターコネクト、導電性ライン、導電性トラックなどとして使用してもよい。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
この実施例では、2〜5ミクロンの銀フレーク、バインダーおよび溶媒を用い、2種類のサンプルインクを調製した。この2種類のサンプルインクは、表1の以下の組成を有していた。
【表1】
【0056】
インクを以下のように調製した。250mLビーカーにステンレスアンカー混合ブレードを取り付け、これにバインダーのブチルカルビトール15重量%溶液(各インクについて表1に明記した量)を加えた。混合物をホットプレートで55℃まで加熱し、500RPMで撹拌した。次に、塊を避けるために、混合物に、何段階かにわけて銀フレークを徐々に加えた。混合物を1時間ブレンドし、次いで、3ロールミル(Erweka AR 400型)に3回通した。最終的なインクを単離し、褐色ガラス瓶に移した。
【0057】
サンプルインク1および2および市販の導電性インク(DuPont 5025)で、2milのギャップを用いるドクターブレード手順によってMylar基材をコーティングした。オーブン中、120℃で20〜30分加熱することによってサンプルを硬化させた。
【0058】
堆積したインクの導電性を測定するために、2点プローブ測定を以下のように行った。長さ約100mm、幅約2mmのラインを切断して膜にし、試験した。マルチメーターを用いて抵抗を測定した。ライン上のいくつかの場所でラインコーティングの厚みを測定し、平均厚みを計算した。シート抵抗は、以下の式によって与えられる。
【数1】
ここで、
【数2】
【0059】
シート抵抗は、インクに特有である。シート抵抗値が低いほど、導電性が良好である。目標は、シート抵抗をできるだけ小さくすることである。
【0060】
堆積したインクのサンプルに対し、融合を行った。融合は、加熱した1セットのローラーを通し、コーティングされた銀インクサンプルをプレス加工することを含んでいた。この実験のためにローラーを130℃に加熱した。爪の圧力を約1000psiに設定した。トップロールは鋼鉄から作られており、一方、他のロールは、ゴムでコーティングされていた。この実験では、融合速度を1メートル/分に設定した。
【0061】
融合前に各サンプルの導電性を測定し、「融合していない」値を表2に報告する。融合後にも、各サンプルの導電性を測定し、シート抵抗値を、表2の「融合した」列に報告している。
【表2】
【0062】
市販のインクを含め、試験したすべてのインクでは、プレスして融合させたサンプルは、120℃を超える温度で融合後にシート抵抗の顕著な低下を示した。このことは、改良された導電性に換算される。初期シート抵抗から33%の低下がサンプルインク1で測定された。これらの変化は顕著であり、試験したサンプルで一貫している。このプロセスによって、シート抵抗が非常に低い(例えば、10mΩ/sq./mil以下)銀コーティングを製造することができる。
【0063】
サンプルインク2および市販のインクも、融合前および融合後に顕微鏡評価を行った。サンプルをダイヤモンドナイフで薄く切断し、SEM顕微鏡法で断面を観察した。この評価は、融合前と融合後とで、どのサンプルの厚みも顕著に測定可能なほど変化しなかったことを示していた。市販のインクで、融合前と融合後とでフレークの充填度の検出可能なほどの変化は観察されなかった。サンプルインク2では、その断面図は、融合前よりも融合後の方が、銀フレークが密に充填されており、融合によってもっと大きなフレークが得られたことを示していた。