(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185888
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】デジタル印刷の仕上げ装置のための時間調整用シート・バッファリング・システム
(51)【国際特許分類】
B65H 31/32 20060101AFI20170814BHJP
B65H 9/00 20060101ALI20170814BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
B65H31/32
B65H9/00 B
B65H5/06 F
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-134685(P2014-134685)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2015-20912(P2015-20912A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2017年6月23日
(31)【優先権主張番号】13/943,897
(32)【優先日】2013年7月17日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・エム・フェラーラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ジェイ・フェラーラ
【審査官】
大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−284824(JP,A)
【文献】
特開2002−211829(JP,A)
【文献】
特開2009−102130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00−31/40
B65H 5/06
B65H 9/00
B65H 37/00−37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル印刷システムの仕上げ装置、およびそれぞれがシート1、2、3〜Nを含む用紙セット内に配列された複数の媒体シートと連動させて用いるための時間調整用シート・バッファリング・システムであって、
前記シートを入力速度で入力するためのシート経路入口と、前記シートを出力するためのシート経路出口と、前記シート経路入口と前記シート経路出口の間に配置されてバッファリングのための空間を提供するための経路ループとを有するシート経路と、
前記経路ループと前記シート経路出口の間に配置されたコンパイラ領域と、
前記コンパイラ領域内でシートセットをコンパイリング速度で集めるためのコンパイラと、
前記シート経路上に配置され、シート1〜Nを前記入力速度から位置を合わせるための位置合わせ速度に減速させるため、かつ選択シートを加速させるための位置合わせニップと、
前記シート経路上の前記位置合わせニップの下流に配置され、位置合わせ終了後の前記用紙セットのシート1およびシート2を所定の速度で維持するため、かつ前記用紙セットのシート1およびシート2を加速させるための第1の時間調整ニップと、
前記シート経路上の前記第1の時間調整ニップの下流、および前記コンパイラ領域の上流に配置され、前記用紙セットのシート1およびシート2をコンパイリング速度に加速させる第2の時間調整ニップと、
前記シート経路上に配列され、前記シートの位置と速度を検知するための複数のセンサと、を含み、
仕上げの時間を確保するために、前記用紙セットのシート1およびシート2が、それ以外のシートよりも長い時間、前記所定の速度に維持される、時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項2】
前記第1の時間調整ニップが、アイドリングローラおよび内側駆動ローラを有する内側ニップと、アイドリングローラおよび外側駆動ローラを有する外側ニップと、前記内側駆動ローラと前記外側駆動ローラを接続する第1の駆動軸と、前記第1の駆動軸に操作可能に接続する第1のステッピングモータと、をさらに含み、
前記第2の時間調整ニップが、アイドリングローラおよび内側駆動ローラを有する内側ニップと、アイドリングローラおよび外側駆動ローラを有する外側ニップと、前記内側駆動ローラと前記外側駆動ローラを接続する第2の駆動軸と、前記第2の駆動軸に操作可能に接続する第2のステッピングモータと、をさらに含み
前記位置合わせニップが、アイドリングローラおよび内側駆動ローラを有する内側ニップと、アイドリングローラおよび外側駆動ローラを有する外側ニップと、前記内側駆動ローラに操作可能に接続する内側ステッピングモータと、前記外側駆動ローラに操作可能に接続する外側ステッピングモータと、をさらに含み、前記内側駆動ローラおよび外側駆動ローラは一直線上に配置され、前記内側駆動ローラと前記外側駆動ローラは接続していない、請求項1に記載の時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項3】
前記位置合わせニップが、位置合わせ終了後に、前記用紙セットのシート3〜Nをコンパイリング速度に加速させ、
前記第1の時間調整ニップおよび前記第2の時間調整ニップが、位置合わせ終了後に、
前記用紙セットのシート1およびシート2をコンパイリング速度に加速させ、
仕上げの時間を確保するために、前記用紙セットのシート1およびシート2が、前記用紙セットのシート3〜Nよりも長い時間、位置合わせ速度で維持される、請求項1に記載の時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項4】
前記位置合わせニップが、位置合わせ終了後の前記用紙セットのシート4〜Nをコンパイリング速度に加速させ、
前記第1の時間調整ニップが、前記用紙セットのシート1、2、および3を位置合わせ速度で維持し、前記用紙セットのシート1、2、および3を加速させ、
前記第2の時間調整ニップが、前記用紙セットのシート1、2、および3をコンパイリング速度に加速させ、
仕上げの時間を確保するために、前記用紙セットのシート1、2、および3が、前記用紙セットのシート4〜Nよりも長い時間位置合わせ速度で維持される、請求項1に記載の時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項5】
前記入力速度は約1090mm/sであり、
前記位置合わせ速度は約650mm/sであり、
前記コンパイリング速度は約1380mm/sであり、
前記所定の速度は、前記位置合わせ速度と前記コンパイリング速度の間の速度である、
請求項1に記載の時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項6】
前記コンパイラ領域に隣接する真空グリッパ搬送部と、
前記コンパイラ領域と前記シート経路出口の間に配置され、集められたシートのセットをホチキス止めするホチキスと、
をさらに含む、請求項1に記載の時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項7】
デジタル印刷システムの仕上げ装置、およびそれぞれがシート1、2、3〜Nを含む用紙セット内に配列された複数の媒体シートと連動させて用いるための時間調整用シート・バッファリング・システムであって、
前記シートを入力速度で入力するためのシート経路入口と、前記シートを出力するためのシート経路出口と、前記シート経路入口と前記シート経路出口の間に配置されてバッファリングのための空間を提供するための経路ループとを有するシート経路と、
前記経路ループと前記シート経路出口の間に配置されたコンパイラ領域と、
前記コンパイラ領域内でシートセットをコンパイリング速度で集めるためのコンパイラと、
前記コンパイラ領域に隣接する搬送装置と、
前記コンパイラ領域と前記シート経路出口の間に配置され、集められたシートのセットをホチキス止めするホチキスと、
前記経路ループに沿って配置される複数の搬送ニップと、
前記シート経路上に配置され、シート1〜Nを前記入力速度から位置を合わせるための位置合わせ速度に減速させるため、かつ選択シートを加速させるための位置合わせニップと、
前記シート経路上の前記位置合わせニップの下流に配置され、位置合わせ終了後の前記用紙セットのシート1およびシート2を所定の速度で維持するため、かつ前記用紙セットのシート1およびシート2を加速させるための第1の時間調整ニップと、
前記シート経路上の前記第1の時間調整ニップの下流、および前記コンパイラ領域の上流に配置され、前記用紙セットのシート1およびシート2をコンパイリング速度に加速させる第2の時間調整ニップと、
前記シート経路上に配列され、前記シートの位置と速度を検知するための複数のセンサと、を含み、
仕上げの時間を確保するために、前記用紙セットのシート1およびシート2が、それ以外のシートよりも長い時間、前記所定の速度に維持される、時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項8】
前記第1の時間調整ニップが、アイドリングローラおよび内側駆動ローラを有する内側ニップと、アイドリングローラおよび外側駆動ローラを有する外側ニップと、前記内側駆動ローラと前記外側駆動ローラを接続する第1の駆動軸と、前記第1の駆動軸に操作可能に接続する第1のステッピングモータと、をさらに含み、
前記第2の時間調整ニップが、アイドリングローラおよび内側駆動ローラを有する内側ニップと、アイドリングローラおよび外側駆動ローラを有する外側ニップと、前記内側駆動ローラと前記外側駆動ローラを接続する第2の駆動軸と、前記第2の駆動軸に操作可能に接続する第2のステッピングモータと、をさらに含み
前記位置合わせニップが、アイドリングローラおよび内側駆動ローラを有する内側ニップと、アイドリングローラおよび外側駆動ローラを有する外側ニップと、前記内側駆動ローラに操作可能に接続する内側ステッピングモータと、前記外側駆動ローラに操作可能に接続する外側ステッピングモータと、をさらに含み、前記内側駆動ローラおよび外側駆動ローラは一直線上に配置され、前記内側駆動ローラと前記外側駆動ローラは接続していない、請求項7に記載の時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項9】
前記位置合わせニップが、位置合わせ終了後に、前記用紙セットのシート3〜Nをコンパイリング速度に加速させ、
前記第1の時間調整ニップおよび前記第2の時間調整ニップが、位置合わせ終了後に、
前記用紙セットのシート1およびシート2をコンパイリング速度に加速させ、
仕上げの時間を確保するために、前記用紙セットのシート1およびシート2が、前記用紙セットのシート3〜Nよりも長い時間、位置合わせ速度で維持される、請求項7に記載の時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項10】
前記位置合わせニップが、位置合わせ終了後の前記用紙セットのシート4〜Nをコンパイリング速度に加速させ、
前記第1の時間調整ニップが、前記用紙セットのシート1、2、および3を位置合わせ速度で維持し、前記用紙セットのシート1、2、および3を加速させ、
前記第2の時間調整ニップが、前記用紙セットのシート1、2、および3をコンパイリング速度に加速させ、
仕上げの時間を確保するために、前記用紙セットのシート1、2、および3が、シート4〜Nよりも長い時間位置合わせ速度で維持される、請求項7に記載の時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項11】
前記入力速度は約1090mm/sであり、
前記位置合わせ速度は約650mm/sであり、
前記コンパイリング速度は約1380mm/sであり、
前記所定の速度は、前記位置合わせ速度と前記コンパイリング速度の間の速度である、
請求項7に記載の時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項12】
前記搬送装置は、真空グリッパ搬送部をさらに含む、請求項7に記載の時間調整用シート・バッファリング・システム。
【請求項13】
デジタル印刷システムの仕上げ装置、およびそれぞれがシート1、2、3〜Nを含む用紙セット内に配列された複数の媒体シートと連動させて用いるための時間調整のシートバッファリングを行う方法であって、
前記シートを入力速度でシート経路の入口に入力するステップと、
前記シート経路の入口と出口の間の経路ループを用いてバッファリングを行うための空間を提供するステップと、
複数の搬送ニップを有する前記経路ループに沿って前記シートを搬送するステップと、
前記シート経路に配置された複数のセンサを用いて前記シートの位置と速度を検知するステップと、
前記シート経路上の位置合わせニップを用いてシート1〜Nを前記入力速度から位置合わせ速度に減速させるステップと、
前記位置合わせニップを用いて前記シート1〜Nの位置合わせを行うステップと、
前記位置合わせニップを用いて選択シートをコンパイリング速度に加速させるステップと、
前記位置合わせニップ、および前記シート経路の前記位置合わせニップの下流に配置された第1の時間調整ニップを用いて、各用紙セットのシート1およびシート2を所定の速度で維持するステップと、
前記第1の時間調整ニップを用いて各用紙セットシート1およびシート2を加速させるステップと、
前記シート経路上の前記第1の時間調整ニップの下流に配置された第2の時間調整ニップを用いて、各用紙セットのシート1およびシート2をコンパイリング速度に加速させるステップと、
仕上げの時間を確保するために、各用紙セットのシート1およびシート2をそれ以外のシートよりも長い時間、位置合わせ速度で維持するステップと、
コンパイリング速度で各用紙セットのシートを集めるステップと、
前記用紙セットを排出させるステップと、を含む方法。
【請求項14】
位置合わせ終了後、前記位置合わせニップを用いて前記用紙セットのシート3〜Nをコンパイリング速度に加速させるステップと、
位置合わせ終了後、前記第1の時間調整ニップと第2の時間調整ニップを用いて、前記用紙セットのシート1およびシート2をコンパイリング速度に加速させるステップと、
仕上げの時間を確保するために、各用紙セットのシート1およびシート2をシート3〜Nよりも長い時間、位置合わせ速度で維持するステップと、をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
位置合わせ終了後に、前記位置合わせニップを用いて前記用紙セットのシート4〜Nをコンパイリング速度に加速させるステップと、
前記第1の時間調整ニップを用いて前記用紙セットのシート1、2、および3を位置合わせ速度で維持し、
前記第2の時間調整ニップを用いて前記用紙セットのシート1、2、および3をコンパイリング速度に加速させるステップと、
仕上げの時間を確保するために、前記用紙セットのシート1、2、および3を、シート4〜Nよりも長い時間、位置合わせ速度で維持するステップと、をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の時間調整ニップの内側駆動ローラと外側駆動ローラを共有の第1の駆動軸で共に接続するステップと、
第1のステッピングモータを用いて前記第1の駆動軸を操作可能に駆動させるステップと、
前記第2の時間調整ニップの内側駆動ローラと外側駆動ローラを共有の第2の駆動軸で共に接続するステップと、
第2のステッピングモータを用いて前記第2の駆動軸を操作可能に駆動させるステップと、
内側ステッピングモータを用いて前記位置合わせニップの内側駆動ローラを操作可能に駆動させるステップと、
外側ステッピングモータを用いて前記位置合わせニップの外側駆動ローラを操作可能に駆動させるステップと、
前記内側駆動ローラと前記外側駆動ローラを同一線上に配列させるステップであって、前記内側駆動ローラと前記外側駆動ローラとは接続していない、ステップと、をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項17】
コンパイリングする前に真空グリッパ搬送部で前記シートを搬送するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
コンパイリングした後にホチキスで前記用紙セットをホチキス止めするステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
デジタル印刷システムの仕上げ装置、およびそれぞれがシート1、2、3〜Nを含む用紙セット内に配列された複数の媒体シートと連動させて用いるための時間調整のシートバッファリングを行う方法であって、
前記シートを入力速度でシート経路の入口に入力するステップと、
前記シート経路の入口と出口の間の経路ループを用いてバッファリングを行うための空間を提供するステップと、
複数の搬送ニップを有する前記経路ループに沿って前記シートを搬送するステップと、
前記シート経路に配置された複数のセンサを用いて前記シートの位置と速度を検知するステップと、
前記シート経路上の位置合わせニップを用いてシート1〜Nを前記入力速度から位置合わせ速度に減速させるステップと、
内側ステッピングモータを用いて前記位置合わせニップの内側駆動ローラを操作可能に駆動させるステップと、
外側ステッピングモータを用いて前記位置合わせニップの外側駆動ローラを操作可能に駆動させるステップと、
前記内側駆動ローラと前記外側駆動ローラを同一線上に配列させるステップであって、前記内側駆動ローラと前記外側駆動ローラとは接続していない、ステップと、
前記位置合わせニップを用いて前記シート1〜Nの位置合わせを行うステップと、
位置合わせ終了後、前記位置合わせニップを用いて前記用紙セットのシート3〜Nをコンパイリング速度に加速させるステップと、
前記位置合わせニップ、および前記シート経路の前記位置合わせニップの下流に配置された第1の時間調整ニップを用いて、各用紙セットのシート1およびシート2を所定の位置合わせ速度で維持するステップと、
前記第1の時間調整ニップの内側駆動ローラと外側駆動ローラを共有の第1の駆動軸で共に接続するステップと、
第1のステッピングモータを用いて前記第1の駆動軸を操作可能に駆動させるステップと、
仕上げの時間を確保するために、前記用紙セットのシート1およびシート2を、前記用紙セットのシート3〜Nよりも長い時間、前記位置合わせ速度で維持するステップと、
前記第1の時間調整ニップを用いて各用紙セットのシート1およびシート2を加速させるステップと、
前記シート経路上の前記第1の時間調整ニップの下流に配置された第2の時間調整ニップを用いて、各用紙セットのシート1およびシート2をコンパイリング速度に加速させるステップと、
前記第2の時間調整ニップの内側駆動ローラと外側駆動ローラを共有の第2の駆動軸で共に接続するステップと、
第2のステッピングモータを用いて前記第2の駆動軸を操作可能に駆動させるステップと、
コンパイリング速度で各用紙セットのシートを集めるステップと、
前記用紙セットを排出させるステップと、を含む方法。
【請求項20】
コンパイリングする前に真空グリッパ搬送部で前記シートを搬送するステップと、
コンパイリングした後にホチキスで前記用紙セットをホチキス止めするステップと、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル印刷機においてシートをバッファリングすることに関し、より具体的には、仕上げ装置内の選択シートの時間間隔を変更することで、デジタル印刷機における生産性の向上を可能にする装置、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なデジタル印刷システムの主な出力製品は、特定な形式の印刷情報を載せた紙のシートなどの印刷されたコピー基材である。顧客の要求により、ルーズ印刷シートを集めて重ねることから、ホチキス止めして簡単なレポートにするまで、または、まとめて綴じてブックレットするまでの範囲の様々な特定な順序にこの出力製品をそろえなければならないことが頻繁にある。媒体のシート(通常は紙)は、仕上げ装置と呼ばれる領域での作業の最終ステージで、集められ、ホチキスで止められ、排出される。
【0003】
デジタル印刷機との接続に関しては様々な外部出力装置が設計されてきている。印刷システムから紙が排出され、その紙が外部仕上げ装置に送られる。このように紙を印刷システムから外部仕上げ装置へ送るための重要なパラメータは、印刷装置の機能を妨げないですむ処理速度で動作する能力である。
【0004】
分類、丁合い、ホチキスで止め、排出などの仕上げ手順において、機械的な構成要素の動作が必要である。最先端のデジタル印刷機では、通常、作業の流れの中で様々な種類の仕上げ動作を必要とする多くの用紙セットが存在する。複数の用紙セットに対応するために、先行する用紙セットの仕上げ動作が完了するまで、各用紙セットは流れの中で、止められたり、遅らされたりすることが一般的である。さらに、印刷装置の出力速度を落として、外部装置(すなわち、仕上げ装置)が、出力文書を受け取り処理して最終の出力製品を作ることができる速度を超えないようにしなければならないこともよくある。このように仕上げ工程が遅くなることにより、印刷システム全体の生産性が損なわれてしまう。
【0005】
シートのバッファリングとは、用紙セットを揃え、ホチキスで止め、排出するといった機能が完了する間、仕上げ装置の用紙経路内の紙のシートを保持しておくことと定義することができる。仕上げ装置の一つのタイプでは、これらの機能が完了する時間を早めるために、各用紙セット間のシートをスキップさせる。この方法の問題は、生産性が低下してしまうことである。別の仕上げ装置では、バッファリングする時間に3つの用紙セットを集めるシステムを用いる。シートが仕上げ装置に入るとき、3つのトレイのセットを有するコンパイリングユニットにシートが溜まる。高価なクランピングシステムにより用紙セットはホチキス止めされ、このクランピングシステムにより排出される。このシステムの問題は、余分なハードウェアが必要であり、それに関連するコストがかかってしまうことである。さらに別の仕上げ装置では、バッファリングアームを用いて一時的にシートを保持し、それらのシートをコンパイラに落とす。この装置もコストがかかり、さらに位置合わせやタイミングの制限といった問題が発生し、これにより、このシステムに使用も制限される。またさらに別の仕上げ装置では、待機ステーションを用いて、シートのバッファリングを行う。しかし、より高速な仕上げ装置では、この種類のバッファリングは機能しない。例えば、高速の仕上げ装置として、157ppmの生産速度で処理する大量仕上げ装置が新しく導入されてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、仕上げ装置において選択シートの時間間隔を変更して、用紙セットの仕上げを行うことが可能なシート・バッファリング・システムを提供することが必要である。
【0007】
さらに、プリンタの生産速度を落とさない上記のタイプのシート・バッファリング・システムを提供することが必要である。
【0008】
さらに、かつ機械的に簡素で堅牢であり、それによりコストを最小に抑え従来技術に関連する問題を回避する上記のタイプのシート・バッファリング・システムを提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一様態では、デジタル印刷システムの仕上げ装置、およびセット内で配列された複数の媒体シートと連動して時間調整用シート・バッファリング・システムが用いられる。各用紙セットには、シート1、2、3〜Nが含まれる。この時間調整用シートバッファーには、シート経路が含まれ、このシート経路には、一定の入力速度でシートを入力させるシート経路の入口が含まれる。シート経路の出口からシートは出力される。シート経路の入口とシート経路の出口の間には経路ループが配置され、これによりバッファリングのための空間が提供される。経路ループとシート経路の出口の間はコンパイラ領域となっている。このコンパイラ領域内のコンパイラが一定のコンパイリング速度でシートのセットが集められる。
【0010】
このコンパイラ領域の隣には搬送装置が配置されている。コンパイラ領域とシート経路の出口の間には、集められたシートのセットをホチキス止めするためのホチキスが配置されている。経路ループに沿って複数の搬送ニップが配置されている。
【0011】
シート1〜Nを入力速度から位置合わせ速度に減速させるために、シート経路には位置合わせニップが配置されている。この位置合わせニップでは、選択シートの位置合わせ、および選択シートの加速も行われる。
【0012】
シート経路上の位置合わせニップの下流には、第1の時間調整ニップが配置されている。この第1の時間調整ニップは、用紙セットのシート1とシート2を所定の速度で維持し、用紙セットのシート1とシート2を加速させる。
【0013】
このシート経路上の第1の時間調整ニップの下流、かつコンパイラ領域の上流には、第2の時間調整ニップが配置されている。この第2の時間調整ニップは、用紙セットのシート1とシート2をコンパイリング速度に加速させる。
【0014】
シート経路には、シートの位置と速度を検知する複数のセンサが配置されており、用紙セットのシート1およびシート2は、仕上げの時間を得るために、それ以外のシートよりも長い時間位置合わせ速度で維持される。
【0015】
別の様態では、デジタル印刷システムに関する仕上げ装置、およびセット内で配列された複数の媒体シートと連動させて時間調整用シート・バッファリング・システムを用いる方法が開示される。各用紙セットには、シート1、2、3〜Nが含まれる。この方法には、シート経路上のシート経路の入口にシートを一定の入力速度で入力させるステップが含まれる。シート経路の入口とシート経路の出口の間に経路ループを加えることにより、バッファリングのための空間が提供される。複数の搬送ニップにより経路ループに沿ってシートが搬送される。シート経路に配列された複数のセンサによりシートの位置と速度が検知される。
【0016】
シート経路上の位置合わせニップにより、シート1〜Nは入力速度から位置合わせ速度に減速される。位置合わせニップの内側駆動ローラは、内側ステッピングモータにより操作可能に駆動される。位置合わせニップの外側駆動ローラは、外側ステッピングモータにより操作可能に駆動される。内側駆動ローラは、外側駆動ローラと同一線上に配列されている。内側駆動ローラと外側駆動ローラとは接続していない。シート1〜Nは位置合わせニップにより位置を合わされる。位置合わせ完了後、用紙セットのシート3〜Nは位置合わせニップによりコンパイリング速度に加速される。
【0017】
各用紙セットのシート1およびシート2は、位置合わせニップおよび第1の時間調整ニップにより位置合わせ速度で維持される。第1の時間調整ニップは、シート経路上の位置合わせニップの下流に配置されている。第1の時間調整ニップの内側駆動ローラおよび外側駆動ローラは共有の第1の駆動軸に共に接続している。この第1の駆動軸は、第1のステッピングモータにより操作可能に駆動される。仕上げの時間を確保するために、各用紙セットのシート1およびシート2は、用紙セットのシート3〜Nよりも長い時間、位置合わせ速度で維持される。各用紙セットのシート1およびシート2は、第1の時間調整ニップにより加速される。
【0018】
シート経路上の第1の時間調整ニップの下流に配置された第2の時間調整ニップにより、各用紙セットのシート1およびシート2は、コンパイリング速度に加速される。第2の時間調整ニップの内側駆動ローラおよび外側駆動ローラは、共有の第2の駆動軸に共に接続されている。第2の駆動軸は、第2のステッピングモータにより操作可能に駆動される。各用紙セットのシートはコンパイリング速度で集められる。次いで、これらの用紙セットは排出される。
【0019】
開示された技術の上記の様態およびその他の様態、目的、特徴、利点は、下記の添付図面を参照して、以下の図示される実施形態を詳細に説明することにより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明に従って構成された時間調整用シート・バッファリング・システムを示す、例示的な大量生産用仕上げ装置の側面の概略立面断面図である。
【
図2】
図2は、一連のニップを示す、
図1の時間調整用シート・バッファリング・システムの側面の概略立面断面拡大図である。
【
図3】
図3は、
図2の線3−3に沿って切り取られた、
図1の時間調整用シート・バッファリング・システムの側面の概略立面断面拡大図である。
【
図4】
図4は、
図1の時間調整用シート・バッファリング・システムの中を移動する媒体シートの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用される「媒体基材」または「媒体シート」とは、情報をその上に再生可能な、(好ましくは、シートまたはウェブの形態の)、例えば、紙、透明シート、羊皮紙、フィルム、布地、プラスチック、現像焼付け用紙、またはその他の被覆または非被覆の基材のことを指す。本明細書ではシートまたは紙に対して特定な言及がなされているが、シートの量の形態をとる全ての媒体基材が、これらの適切な均等物であることは言うまでもない。また、媒体基材「先行する端」または「先端」(LE)とは、処理方向に最も下流のシートの端のことを指す。
【0022】
本明細書で使用される用語「処理」および「処理方向」とは、基材媒体シートを移動させる、搬送する、および/または操作する手順のことを指す。処理方向は、処理中にシートが移動する流れ経路である。
【0023】
図1、
図2、
図3を参照すると、大量生産用仕上げ装置10では、本明細書で時間調整と名付けたバッファリング・システムおよび方法を用いる。時間調整用シート・バッファリング・システム11は、デジタル印刷システム用の仕上げ装置と連動して使用される。このシステムは、セット内に配列された複数の媒体シート12を使用し、各用紙セット14には、シート1、2、3〜Nが含まれる。この仕上げ装置10は、一般に媒体シート経路の入口16、およびシート経路18を有し、このシート経路18に沿ってシート12が移動する。コンパイラ領域20では、コンパイラがシートの仕分けを行う。ホチキス22が用紙セット14のシート12のホチキス止めを行い、その用紙セット14がシート経路の出口24から排出される。本明細書に記載される実施形態は、仕上げを完了した媒体シートのセットを受け取るための、コンパイラに隣接する真空グリッパ搬送部26(すなわち、VGT)、およびコンパイラシェルフ28も含む。このVGTは、全ての従来の真空グリッパ搬送部でよい。コンパイラ領域20には、微量の位置合わせを行うシステムも含まれ得、この微量の位置合わせはホチキス止め処理の前に行われる。
【0024】
処理経路(すなわち、シート経路)18は、入力速度のシート12をシート経路の入口16から入力する。このシート経路18は、シート経路の入口16とシート経路の出口24の間にバッファリングの空間を提供する経路ループ30を有する。図示されている実施形態では、この経路ループ30は、シート経路の入口16からコンパイラ領域20に延在する。媒体シート12は、公称の速度である約1090mm/sで、仕上げ装置のシート経路の入口16に入る。経路ループ30は、経路ループ30内で約1090mm/sのシート速度を維持させるために複数のニップ32およびセンサ34を有する。
【0025】
経路ループ30内のいくつかのポイントには、シート1〜Nを入力速度から位置合わせ速度に減速させるための位置合わせニップ36がシート経路30上に配置されている。位置合わせニップ36では、スキュー補正と、クロス処理方向の位置合わせと、速度制御とが行われる。シートの傾斜を判定するために、シートの先端(LE)は、2つのセンサにより検知される。シートの端を検知するために、センサを用いることもできる(米国特許第7,422,210号明細書を参照のこと)。シートの傾斜が補正され取り除かれるように、位置合わせニップ36は若干異なる速度で駆動される。次いで、位置合わせニップ36は、選択シートをコンパイリング速度に加速する。選択シートとは、最初の2枚または3枚のシートが時間調整された後に残っているシートのことである。例えば、用紙セットのシート1〜Nで開始して、シート1およびシート2が時間調整された場合、シート3〜Nが選択シートとなる。また、シート1、2、および3が時間調整された場合、シート4〜Nが選択シートとなる。
【0026】
位置合わせニップ36は、アイドリングローラ40および駆動ローラ42を有する内側ニップ38と、アイドリングローラ46および駆動ローラ48を有する外側ニップ44とを含む。内側ニップの駆動ローラ42および外側ニップの駆動ローラ48は同一線上の回転軸上に配置されるが、別々に駆動される。内側駆動ローラ42と外側駆動ローラ48とは接続していない。内側ステッピングモータ50は、内側駆動ローラ42に操作可能に接続する。外側ステッピングモータ52は、外側駆動ローラ48に操作可能に接続する。
【0027】
位置合わせニップ36の上流には、ソレノイド(矢印54)を含む数個の搬送ニップ32が配置され、このソレノイドにより、ニップの各アイドリングローラが、それぞれのニップの駆動ローラから持ち上げられるため、妨害されることなく位置合わせを行うことができる。
【0028】
シート経路18上の位置合わせニップ36の下流には、第1の時間調整ニップ56が配置されている。この第1の時間調整ニップ56は、位置合わせ終了後に用紙セットのシート1およびシート2を所定の速度に維持し、用紙セットのシート1およびシート2を加速させる。所定の速度とは、位置合わせ速度とコンパイリング速度の間の任意の速度である。つまり、所定の速度は、位置合わせ速度以上の速度、かつコンパイリング速度以下の速度である。本明細書に記載される実施形態では、この所定の速度は、通常、位置合わせ速度である。第1の時間調整ニップ56は、アイドリングローラ60および駆動ローラ62を有する内側ニップ58と、アイドリングローラ66および駆動ローラ68を有する外側ニップ64とを含む。第1の駆動軸70は、内側駆動ローラ62および外側駆動ローラ68に接続する。第1のステッピングモータ72は、第1の駆動軸70に操作可能に接続する。
【0029】
シート経路18上の第1の時間調整ニップ56の下流で、コンパイラ領域20の上流には、第2の時間調整ニップ74が配置されている。この第2の時間調整ニップ74は、用紙セットのシート1およびシート2をコンパイリング速度に加速させる。第2の時間調整ニップ74は、アイドリングローラ78および駆動ローラ80を有する内側ニップ76と、アイドリングローラ84および駆動ローラ86を有する外側ニップ82とを含む。第2の駆動軸88は、内側駆動ローラ80および外側86駆動ローラに接続する。第2のステッピングモータ90が、第2の駆動軸88に操作可能に接続する。
【0030】
したがって、用紙セットのシート1およびシート2は、残っているシート(すなわち、シート3〜N)よりも長い時間、所定の速度で維持され、これにより、セット内の最後のシートとのセット内の最初のシートの間に空間が開き仕上げの時間が確保される。
【0031】
図2に示す通り、位置合わせニップ36の下流には第1の時間調整ニップ56が配置され、そのさらに下流には第2の時間調整ニップ74が配置される。これらの3つのニップは、特に、制御装置(図示せず)により制御されて、時間調整されるシートを同時に加速、駆動、そして減速させることが可能である。第2の時間調整ニップ74の下流では、シート経路18はVGT26ならびにコンパイラおよびホチキス22に繋がる。位置合わせでは、全てのシートが約650mm/sに減速されてオフセットを可能にし、位置合わせが行われる。バッファリング必要でない場合、全てのシートは、位置合わせニップ36を離れる前に約1380mm/sのコンパイリング速度に加速される。
【0032】
シートは約1380mm/sの速度で、時間調整ニップ56および74の両方を通過し、その速度でVGT26に入る。VGT26は勾配付の真空ベルトを用いて、シートのLEを確保して、そのLEをコンパイラ領域20および最終の微調整位置合わせのためにホチキス22の開口まで直接誘導する。特に1380mm/sの速度では、VGTの勾配システムを適切に機能させるために、シートのLEとVGTの勾配システムを慎重に同期させなければならない。この速度は、分速157枚の印刷速度(PPM)の生産速度でシートを扱うために必要となる。シートのセットはホチキス止めされ、積み重ねられる。あるいは積み重ねられるだけのときもある。次いで、この用紙セットは排出され、処理経路を出る。
【0033】
シートを集め、ホチキスで止め、排出する時間を確保するためのバッファリングが必要な場合には、時間調整用シート・バッファリング・システムを用いることができる。シートのピッチタイムは、直線上で1枚のシートのLEが通過してから次のシートのLEが通過するまでに経過した時間と定義される。
図4に示すように、157ppmの速度では、シートのピッチタイムは0.381秒(381ms)である。公称では、シートを集める時間は約0.260秒(260ms)必要とする。これではシート間で0.121秒足りなくなる、すなわち、ホチキス止めを行い、排出を行うには不十分である。ホチキス止めには約0.180秒必要であり、排出まで行うためにはさらに約0.150秒必要となる。したがって、ホチキス止めと排出には約0.330秒必要となる。次のシート(次のセットの第1のシート)がコンパイラに入ってくるまでにこれらの機能を完了させなければならない。セット内の最初の数枚のシート(通常は、2枚のシート、随意的には、3枚のシート)が低速(約650mm/s)で維持されるよう、これらのシートを位置合わせ部に通し、かつ部分的に時間調整用搬送部に通し時間調整(バッファリング)を行う。あるポイントで時間調整ニップ56および74により、シートは加速され、VGTでは約1380mm/sコンパイリング速度になる。これらのシートを用紙経路でバッファリングを行って(すなわち、遅らせて)、先行する用紙セットのホチキス止めおよび排出の機能を完了させるよう、時間を自由に操作する。バッファリングにより、時間調整搬送部で約0.110秒の時間をシートごとに確保する。この限度は、シートの後端と次のシート先端の間の許容可能な最短距離に基づいて決まる。さらにこの限度は、VGT速度およびベルトのピッチ長により決定される。時間調整搬送部で2枚のシートをバッファリングすることで、0.220秒を確保する。この0.220秒を0.121秒に加えることで、シートを集めた後に0.341秒の時間を産み出すことができる。ホチキス止めと排出には、0.330秒かかる。したがって、次のシートがコンパイラに入る直前に、これらの機能を完了させることが可能である。
【0034】
図4には、時間調整システムが示されている。最初の列には、シート経路18内を一定の速度で移動する4枚のシート12が表されている。これらのシートを、コンパイラの位置合わせ端に到達したシートとする。
図4の最初の列で示す通り、これらのシートは0.381秒(すなわち、381ms)のピッチタイムの間隔で進んでいる。用紙セットの最後のシート(シートN)が経路内を通過するとき、その次のシート(セット2のシート1)は他のシートとは異なって処理される。具体的には、このシートは位置合わせニップ36にて減速され、その低速で維持される。その次のシート(セット2のシート2)も位置合わせニップ36で減速され、その低速を維持される。VGTの限度のため、ピッチタイムが0.271秒(271ms)に圧縮される。2枚のシートを時間調整(バッファリング)することにより、ホチキス止め、および排出の時間が0.220秒(220ms)確保される。このことは、
図4の第2の列で図示よって表されている。次いで、シート1およびシート2は、VGTに入る直前にコンパイリング速度まで加速される。尚、
図4では、1.143秒(1143ms)の用紙セット間のトータルのピッチタイムは変化していない。したがって、この時間調整用シート・バッファリング・システムにより、ホチキス止め、および排出のために必要な付加的な時間が確保されるが、一方で157ppmの速い生産速度は維持されている。