(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒状外周部を有する永久磁石と、前記円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有し、前記永久磁石と同軸上で互いに対して相対的に回転可能に設けられたヒステリシス材とを備え、
前記永久磁石の外径は3.5〜39mmの範囲内であり、前記ヒステリシス材の外径は5〜40mmであるトルクリミッタを複数個製造する方法において、
前記永久磁石を複数用意する工程と、
前記ヒステリシス材となるべき平板状の半硬質磁性体を複数用意する工程と、
前記複数の平板状半硬質磁性体を積層して配列し、長手方向を磁場配向方向にして磁場処理機内に配置させ、磁場処理を行うことで複数の前記ヒステリシス材を得る工程と、
前記各ヒステリシス材を平板状から円筒状に曲げ加工を行う工程と、
前記各ヒステリシス材と前記各永久磁石とを組み立てる工程とを有することを特徴とする、複数個のトルクリミッタの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0018】
まず、トルクリミッタの概要を説明した後、トルクリミッタを用いた給紙装置について説明する。
【0019】
(トルクリミッタの概要)
図1を参照して、トルクリミッタ1は、円筒状外周部を有する第1回転体10と、第1回転体10の円筒状外周部に対向する円筒状内周部を有する第2回転体20とを含む。第1回転体10は、ロータ軸11と、ロータ軸11の外周部に設けられた円筒状の永久磁石12とを含む。第2回転体20は、ハウジング21と蓋22とを含み、ハウジング21の内周であって永久磁石12に対向する部分にはヒステリシス材23が設けられている。ヒステリシス材23は、永久磁石12と同軸上で互いに対して相対的に回転可能に設けられている。永久磁石の外径は、3.5〜39mmの範囲内であり、ヒステリシス材の外径は、5〜40mmである。
【0020】
(給紙装置の概要)
上述のトルクリミッタ1を用いた給紙装置は、たとえば、複写機、プリンター、ファクシミリ等に使用される。給紙装置は、第1のローラーと第2のローラーとを備える。第1のローラーは、トルクリミッタ1と一体となって回転し、第2のローラーは、第1のローラーに接するように配置され、第1のローラーと協働して用紙を給送する。
【0021】
次に、トルクリミッタ1に用いられるヒステリシス材の製造方法について説明する。なお、この製造方法は、ヒステリシス材を大量に製造する方法であり、磁場処理機30は、いずれも同じ容量である。
【0022】
(複数のヒステリシス材)
1.ヒステリシス材の製造方法
トルクリミッタ1に用いられるヒステリシス材の製造方法として、円筒状の半硬質磁性体を磁場処理する方法と、板状の半硬質磁性体を磁場処理する方法とがある。以下、それぞれの製造方法について詳細に説明する。
【0023】
(1)円筒状の半硬質磁性体を磁場処理する製造方法
まず、
図2を参照して、円筒状のヒステリシス材230を磁場処理する製造方法について説明する。まず、Fe−Cr−Co系半硬質磁性体を熱間圧延、冷間圧延した後、帯状にして、円筒状(ドーナツ形状)に曲げ加工を行い研磨処理する。その後、
図2(a)に示すように、円筒状の半硬質磁性体(ヒステリシス材)230を、たとえば500個、磁場処理機30内に積層させ、配列させる。
図2(b)に示すように、磁場配向方向を径方向(矢印方向)にして磁場処理を行った後、時効処理を施す。
【0024】
このような製造方法により、
図2(c)に示すように、径方向に異方化された円筒状のヒステリシス材230が得られる。このような製造方法により製造されたヒステリシス材230を「径方向異方性のヒステリシス材」という。
【0025】
(2)板状の半硬質磁性体を磁場処理する製造方法
次に、
図3を参照して、板状のヒステリシス材231を磁場処理する製造方法について説明する。Fe−Cr−Co系半硬質磁性体を熱間圧延、冷間圧延した後、切断して板状(矩形形状)にする。その後、
図3(a)に示すように、平板状の半硬質磁性体(ヒステリシス材)231を、たとえば5000個、磁場処理機30内に積層させ、配列させる。さらに、
図3(b)に示すように、磁場配向方向を長手方向(矢印方向)にして磁場処理を行う。その後、ヒステリシス材231を板状から円筒状に曲げ加工を行い、研磨加工を行った後、時効処理を施す。
【0026】
このような製造方法により、
図3(c)に示すように、周方向に異方化された円筒状のヒステリシス材231が得られる。このとき、半硬質磁性体231は板状であるため、磁場配向方向に沿った規則正しい異方性が得られる。このような製造方法により製造されたヒステリシス材を「周方向異方性のヒステリシス材」という。
【0027】
磁場処理機30の容量は、円筒状の半硬質磁性体を磁場処理する場合と同じであるにもかかわらず、板状の半硬質磁性体を磁場処理することで、ヒステリシス材の生産数を増やすことができる。具体的には、円筒状の半硬質磁性体を磁場処理する製造方法に比べて、ヒステリシス材の生産数を10倍以上にすることができる。
【0028】
2.ヒステリシス材の特性
次に、このような製造方法で得られた複数のヒステリシス材の特性について、
図4を用いて説明する。
【0029】
(1)径方向異方性のヒステリシス材の特性
図4(a)は、径方向異方性のヒステリシス材を複数製造した場合において、個々のトルクリミッタの初期トルク値の正規分布を示すグラフである。横軸は初期トルク値(gfcm)、縦軸は発生頻度を表している。
図4(a)は、個々のトルクリミッタの初期トルク値が様々な値であり、分散されていることが分かる。
【0030】
以上から、径方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタは、一度に製造したトルクリミッタ全数に対し、個々のトルクリミッタの初期トルク値がばらついていることが分かる。したがって、このような製造方法で大量生産しても、ロット当たりの初期トルク値がばらついているため、生産性が劣る。
【0031】
そこで、発明者は、複数のトルクリミッタを生産する場合、個々のトルクリミッタの初期トルク値のばらつきを解消するために、周方向異方性のヒステリシス材を用いて、以下の検討を行った。
【0032】
(2)周方向異方性のヒステリシス材の特性
図4(b)は、周方向異方性のヒステリシス材を複数製造した場合において、個々のトルクリミッタの初期トルク値の正規分布を示すグラフである。横軸は初期トルク値(gfcm)、縦軸は発生頻度を表している。
図4(b)から明らかなように、個々のトルクリミッタの初期トルク値は、中央に集中していることがわかる。
【0033】
以上から、周方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタは、一度に製造したトルクリミッタ全数に対し、個々のトルクリミッタの初期トルク値のばらつきが小さいことが分かる。つまり、板状の半硬質磁性体を磁場処理する方法によりヒステリシス材を複数製造する場合、ロット当たりのトルクリミッタの初期トルクのばらつきは、円筒状の半硬質磁性体を磁場処理する方法と比較して、かなり小さい。
【0034】
したがって、周方向異方性のヒステリシス材をトルクリミッタに用いることは、大量生産できるという観点だけでなく、ロット当たりのトルクリミッタの初期トルク値のばらつきを抑えるという観点からも、より好ましい製造方法である。
【0035】
発明者は、実際に、それぞれの製造方法でヒステリシス材を製造し、実験を行った。トルクリミッタの最大トルク値を測定し、ヒステリシス材を複数生産する場合の全数に対してのトルク値のばらつきを比較した。
【0036】
3.実験
以下、実験データを用いて具体的に説明する。表1,2は、発明者が行った実験データである。
【0037】
表1を参照して、この実験では、円筒状の半硬質磁性体を磁場処理する方法により、実験例1〜15の径方向異方性のヒステリシス材を製造した。ここでのヒステリシス材の外径、内径および厚みは、すべてのサンプルにおいて同一である。さらに、永久磁石の外径、内径、厚み、着磁極数および着磁ピッチは、すべての実験例において同一である。
【0039】
この実験結果について説明する。実験例1〜15のトルクリミッタの最大トルク値を見ると、最小値は278gfcm(実験例14)、最大値は314gfcm(実験例8)である。したがって、径方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタの最大トルク値のばらつきは、36gfcmであることが分かる。
【0040】
表2を参照して、この実験は、板状の半硬質磁性体を磁場処理する方法により、実験例16〜30の周方向異方性のヒステリシス材を製造した。ここでのヒステリシス材と永久磁石の寸法は、表1に表れているものと同一である。
【0042】
この実験結果について説明する。実験例16〜30の最大トルク値を見ると、最小値は312gfcm(実験例18)、最大値は326gfcm(実験例16)の範囲である。したがって、周方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタの最大トルク値のばらつきは、14gfcmであることが分かる。
【0043】
以上から、表1と表2とを比較すると、表2の最大トルク値のばらつきは、表1の最大トルク値のばらつきよりも小さいことが分かる。つまり、板状の半硬質磁性体を磁場処理する製造方法の方が、円筒状の半硬質磁性体を磁場処理する製造方法よりも、トルクリミッタの最大トルク値のばらつきが小さいことが分かる。これは、板状の半硬質磁性体を磁場処理する製造方法は、周方向に異方化されるため規則正しく異方化されるからである。これにより、板状の半硬質磁性体を磁場処理する方法の方が、生産性がよいことが分かる。
【0044】
次に、トルクリミッタ1に用いられる個々のヒステリシス材の特性について説明する。
【0045】
(個々のトルクリミッタ)
1.トルク値と温度との関係
(1)径方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタ
図5は、径方向異方性のトルクリミッタのトルク値と温度との関係を示すグラフである。
図5において、縦軸はトルク値(gfcm)を示し、横軸は温度(℃)を示す。
図5を参照して、径方向異方性のトルクリミッタは、温度が高くなるにつれ、トルク値が低下することが分かる。つまり、一般的なトルクリミッタのトルク値は、温度に影響し、温度が高くなるにつれ、トルクが低下することが分かる。
【0046】
図6(a)は、径方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタの特性を示す模式的な図である。
図6(a)において、縦軸はトルクを示し、矢印方向はトルクが高く、その反対方向はトルクが低いことを示す。横軸はトルクのセンター値を示す。A
0は、常温時のロット当たりの初期トルクの分布であり、B
0は、10℃でのトルクの変動、C
0は、32℃でのトルクの変動、D
0は、100℃付近でのトルクの変動を示す。
【0047】
図6(a)を参照して、A
0に示されるように、径方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタは、複数のトルクリミッタの初期トルク値にバラつきがあることが分かる。さらに、C
0やD
0に示されるように、温度が上昇すると、温度に影響してトルク値が低下することが分かる。このように、径方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタは、複数のトルクリミッタを製造した場合において、ロット当たりの初期トルクにばらつきがあるという問題があった。さらに、温度が上昇すると個々のトルクリミッタのトルク値も低下するという問題があった。
【0048】
(2)周方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタ
そこで、発明者は、これらの問題を解決するために、ヒステリシス材の製造方法を、上述した、板状の半硬質磁性体を磁場処理する製造方法に変更した。これにより、
図6(b)に示すように、Aで示すロット当たりの初期トルク値のばらつきを、より小さな範囲に抑えることができる。板状の半硬質磁性体を磁場処理するため、ヒステリシス材は、規則正しい異方性を得られるからである。
【0049】
2.トルク値と時間との関係
(1)径方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタ
図7(a)は、トルクリミッタの継続使用時の時間とトルク値との関係を示すグラフである。縦軸にはトルク値(gfcm)、横軸には時間(min)が示されている。
図7(a)を参照して、サンプルaは、径方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタである。このトルクリミッタは、初期トルク値が420gfcm付近で、5分間継続使用するとトルク値が激減し、トルク値が395gfcm付近で安定している。つまり、このトルクリミッタは、初期トルク値から使用によりトルク値が低下することが分かる。これは、上述したように、トルクは温度に影響するからであり、使用によりトルクリミッタは高温になるため、トルク値が低下すると考えられる。使用によりトルク値が低下すると、重送などの問題が生じる。
【0050】
(2)周方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタ
図7(a)のサンプルbは、周方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタである。
図7(a)を参照して、このトルクリミッタは、初期トルク値が445gfcm付近と高く、5分間継続使用するとトルク値が激減し、トルク値が420gfcm付近で安定している。つまり、このトルクリミッタも、初期トルク値から使用によりトルク値が低下することが分かる。
【0051】
ここでのトルクリミッタは、ヒステリシス材の製造方法が相異するだけで、ヒステリシス材の外径、内径及び厚みは同一である。さらに、永久磁石の外径、内径、厚み、着磁極数及び着磁ピッチにおいても同一である。
【0052】
サンプルaとサンプルbとを対比すると、サンプルbは、サンプルaよりも初期トルクが30gfcm程高い。さらに、サンプルbも、サンプルaと同様、継続使用によりトルク値は低下するものの、その低下の割合は、サンプルaと同じであるため、安定したトルク値もサンプルaよりも25gfcm程高い。
【0053】
以上のことから、周方向異方性のヒステリシス材を用いたトルクリミッタであれば、初期トルク値が大きいため、トルクリミッタの設計範囲が拡大し、広範囲なトルク調整が可能になる。
【0054】
しかし、依然として、ヒステリシス材の製造方法を変えるだけでは、継続使用により初期トルクが低下するという問題があった。そこで、発明者は、この問題を解決するために、トルクリミッタを継続使用した場合であっても、初期トルクが低下することがない、
図7(b)に示すような、特性を有するトルクリミッタの設計を試みた。
【0055】
2.磁極面積とトルクとの関係
図8(a)は、一般的なトルクリミッタの磁極面積とトルクとの関係を示すグラフである。横軸に磁極面積(mT・°)、縦軸にトルク値(gfcm)が表されている。横軸の磁極面積は、300〜900(mT・°)の間である。つまり、一般的なトルクリミッタでは、磁極面積が大きいと、トルクは大きくなっている。すなわち、磁極面積とトルクの大きさは比例することが分かる。
【0056】
図8(b),
図8(c)は、本実施の形態に係るトルクリミッタの磁極面積とトルクとの関係を示すグラフである。横軸に磁極面積(mT・°)、縦軸にトルク値(gfcm)が表されている。
図8(b)の磁極面積は、500〜800(mT・°)であり、
図8(c)の磁極面積は、800〜950(mT・°)である。
【0057】
サンプルaは、ヒステリシス材の外径が20.17mm、内径が19.17mm、厚みが0.5mm、ヒステリシス材と永久磁石の隙間が0.295mmである。サンプルbは、ヒステリシス材の外径が20.17mm、内径が19.37mm、厚みが0.4mm、ヒステリシス材と永久磁石の隙間が0.395mmである。サンプルcは、ヒステリシス材の外径が19.87mm、内径が19.07mm、厚みが0.4mm、ヒステリシス材と永久磁石の隙間が0.245mmである。永久磁石はすべて同じものを用いている。
【0058】
図8(b)に示すように、サンプルa〜cは、トルク値が磁極面積に比例して大きくなる。
図8(c)に示すように、サンプルa,bは、トルク値が磁極面積に比例して大きくなる。これに対し、
図8(c)のサンプルcは、トルク値と磁極面積は比例していない。サンプルcには、磁極面積が大きくなっても、トルク値が頭打ちになる(変化しない)領域が存在する。すなわち、サンプルcは、磁極面積が大きくなっても、トルク値が飽和する飽和曲線を描くことが分かる。
【0059】
通常は、サンプルa,bのように、磁極面積が大きくなると、トルクリミッタのトルク値も大きくなる。しかし、サンプルcのように、磁極面積が大きくなってもトルク値が飽和状態になるものがある。ここで、磁極面積は、磁力に影響し、磁極面積を大きくすれば、磁力は大きくなる。また、磁力は、温度にも影響する。一般的には、磁力を大きくすれば、トルク値が大きくなる。しかし、サンプルcのように、磁極面積を大きくしてもトルク値が飽和状態のトルクリミッタは、磁力を大きくしてもトルク値は大きくならず、トルク値は飽和状態になると考えられる。逆にいえば、飽和状態の領域では、温度の上昇によって、磁力が弱くなったとしても、トルク値は飽和状態となり、トルク値は一定であると考えられる。
【0060】
以上より、発明者は、サンプルcの飽和曲線を得られるような設計を行えば、温度の上昇によってトルク値が低下しないトルクリミッタを提供できると考えた。具体的には、トルクリミッタのトルク値を、飽和状態でのトルク値よりも飽和曲線上でより高いトルク値で設定すれば、温度を高くしてもトルク値が低下しないトルクリミッタを製造できる。
【0061】
飽和曲線を描かないサンプルa,bと、飽和曲線を描くサンプルcとの違いを考察する。サンプルcは、サンプルa,bに比べてヒステリシス材の外径、内径が小さい。さらに、サンプルcは、ヒステリシス材と永久磁石の隙間がサンプルa,bに比べて小さい。このことから、飽和曲線を描くかどうかは、ヒステリシス材と永久磁石との寸法などが関与していると考えられる。
【0062】
そこで、発明者は、トルク値が飽和状態になるための条件、たとえば、ヒステリシス材や永久磁石の寸法を見出すために、以下、様々な条件を変更して実験を行った。
【0063】
4.実験
表3,4は、発明者が行った実験データを示す。表3,4を参照して、この実験では実験例31〜67の37種類のトルクリミッタを用いて実験した。表3の実験例31〜60については、ヒステリシス材の処理方法が、円筒状の半硬質磁性体を径方向異方性に磁場処理したものを用いている。表4の実験例61〜63については、板状の半硬質磁性体を径方向異方性に磁場処理したものを用いている。
【0064】
図1において、ヒステリシス材外径はa1で示す寸法であり、ヒステリシス材内径はa2で示す寸法であり、ヒステリシス材厚さはa3で示す値であり、ヒステリシス材の幅はa4で示す寸法である。永久磁石外径はb1で示す寸法であり、永久磁石内径はb2で示す寸法であり、永久磁石厚さはb3で示す寸法であり、永久磁石幅はb4で示す寸法である。有効長とは永久磁石とヒステリシス材とが対向している幅である。ヒステリシス材の内径と永久磁石の外径との隙間(ギャップ)はc1で示す寸法である。なお、すべての実験例において、隙間c1は、0.22〜0.425mmの範囲内である。隙間c1だけを変更した実験を行ったが、顕著な相関関係は見つからなかった。
【0065】
着磁極数は、
図9において、NSの対の数で表される。着磁ピッチは、
図9において、距離dで表される寸法であり、具体的には、永久磁石の外径に円周率を掛け、その値を極数で割った値である。「飽和曲線発現の有無」とは、たとえば、
図8(c)のサンプルcのような飽和曲線をいい、「○」は飽和曲線が発現した実験例、「×」は飽和曲線が発現しなかった実験例であることを意味する。
【0067】
実験例31及び32に着目すると、永久磁石の条件はすべて同じであり、ヒステリシス材の条件が異なる。実験例32は、飽和曲線が表れている。実験例31のヒステリシス材の厚みは0.5mmであるのに対し、実験例32のヒステリシス材の厚みは0.4mmである。以上より、ヒステリシス材の厚み、外径および内径が、飽和曲線の発現に関係しそうであることが分かった。
【0068】
実験例33〜40に着目すると、ヒステリシス材の条件は、有効長さおよび体積を除き、すべて同じである。さらに、ヒステリシス材の厚みは0.4mmですべて同じである。永久磁石の条件が異なり、飽和曲線が表れている実験例33,34,37,40は、着磁極数はすべて14であり、着磁ピッチは3.20mm以上である。以上より、永久磁石の着磁極数は14で、と永久磁石の着磁ピッチが3.20mmは必要であることが分かった。
【0069】
実験例41〜44に着目すると、永久磁石の条件はすべて同じであり、ヒステリシス材の条件が異なる。具体的には、ヒステリシス材の外径と厚みが異なる。ヒステリシス材の外径はそれぞれ異なるものの、ヒステリシス材の厚みに注目すると、実験例41は、ヒステリシス材の厚みが0.5mmで、飽和曲線が表れなかった。これに対し、実験例42〜44は、ヒステリシス材の厚みが0.3〜0.4mmで、飽和曲線が表れている。以上より、ヒステリシス材の厚みが、飽和曲線の発現に関係しそうであることが分かった。
【0070】
実験例45〜48に着目すると、永久磁石の条件はすべて同じであり、ヒステリシス材の条件が異なる。実験例48は、ヒステリシス材の厚みが0.5mmで、飽和曲線が出現していない。これに対し、実験例45〜47は、ヒステリシス材の厚みが0.3〜0.4mmで、飽和曲線が表れている。以上より、ヒステリシス材の厚みは、0.4mm以下が好ましそうであることが分かった。
【0071】
実験例49〜52に着目すると、永久磁石の条件はすべて同じであり、ヒステリシス材の条件が異なる。ここで、ヒステリシス材の条件は、実験例45〜48と同一である。ヒステリシス材の外径(ヒステリシス材の厚み)を大きくしていった、実験例49〜52すべてにおいて飽和曲線が表れなかった。以上より、永久磁石の着磁ピッチが、飽和曲線の出現の有無に関係しそうであることが分かった。具体的には、着磁ピッチは2.9mmを超えないと、飽和曲線が発現しないことが分かった。
【0072】
実験例53〜55に着目すると、永久磁石の条件はすべて同じであり、ヒステリシス材の条件が異なるが、すべてで飽和曲線が表れている。このとき、ヒステリシス材の厚みが0.3〜0.4mm、永久磁石の着磁ピッチが3.38mmである。以上より、ヒステリシス材の厚みが0.4mm以下で、永久磁石の着磁ピッチが3.38mmは必要であることが分かった。
【0073】
実験例56〜60に着目する。実験例56は、ヒステリシス材の厚みが0.5mmであり、飽和曲線が表れていない。これに対し、実験例57〜59は、ヒステリシス材の厚みが0.4mmであり、飽和曲線が表れている。また、実験例60は、ヒステリシス材の厚みが0.4mmであるにもかかわらず、着磁ピッチが2.90mmであるため、飽和曲線が表れていない。以上より、ヒステリシス材の厚みが0.4mmであり、かつ、着磁ピッチが2.90mmを超えると、飽和曲線が発現していることが分かった。
【0075】
実験例61〜63に着目すると、ヒステリシス材の条件はすべて同じであり、永久磁石の条件が異なる。具体的には、永久磁石の着磁極数および着磁ピッチが異なる。実験例61は、永久磁石の着磁極数は12、着磁ピッチ3.76mmであり、飽和曲線が表れている。実験例62は、永久磁石の着磁極数は14、着磁ピッチ3.22mmであり、飽和曲線が表れている。これに対し、実験例63は、着磁極数は16、着磁ピッチ2.28mmで飽和曲線が表れていない。これにより、永久磁石の着磁極数は14以下が好ましいことが分かった。
【0076】
以上の実験結果を総合して、飽和曲線を描くトルクリミッタの条件は、ヒステリシス材の厚みが0.4mm以下であり、永久磁石の着磁ピッチが2.9mmを超えていることが分かった。さらに、ヒステリシス材の厚みが0.3mmを超えており、永久磁石の着磁極数が14以下という条件を加えると、より飽和曲線が発現することが分かった。
【0077】
ヒステリシス材と永久磁石を上述した寸法とすることで、トルク値の飽和曲線が発現することが分かった。これにより、使用時のトルク値を飽和状態でのトルク値よりも飽和曲線上でより高いトルク値で設定することで、
図7(b)に示すように、トルクリミッタを継続使用しても、初期トルクの低下を抑えることができる。さらに、飽和曲線が発現したトルクリミッタを用いれば、温度に対する影響を受けにくい。
【0078】
さらに、板状の半硬質磁性体を磁場処理する製造方法により製造したヒステリシス材は、初期トルク値が大きい。このため、この製造方法により製造したヒステリシス材を用いたトルクリミッタを用いれば、飽和状態のトルク値を大きくすることが可能である。
【0079】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものでは
ないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく
て特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべて
の変更が含まれることが意図される。