特許第6185908号(P6185908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185908ジアリールスルフィド骨格を含有する光解離性保護基
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185908
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ジアリールスルフィド骨格を含有する光解離性保護基
(51)【国際特許分類】
   C07C 323/19 20060101AFI20170814BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170814BHJP
   C07K 1/06 20060101ALI20170814BHJP
   C07D 207/16 20060101ALI20170814BHJP
   C07D 231/12 20060101ALI20170814BHJP
   C07H 19/073 20060101ALI20170814BHJP
   C07H 19/10 20060101ALI20170814BHJP
   C07H 19/173 20060101ALI20170814BHJP
   C07H 19/20 20060101ALI20170814BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20170814BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20170814BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20170814BHJP
   C07C 319/20 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C07C323/19CSP
   C12N15/00 AZNA
   C07K1/06
   C12N15/00 F
   C07D207/16
   C07D231/12 C
   C07H19/073
   C07H19/10
   C07H19/173
   C07H19/20
   C07H21/04 A
   G01N37/00 102
   G01N33/543 525W
   G01N33/543 525U
   C07C319/20
【請求項の数】19
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2014-503096(P2014-503096)
(86)(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公表番号】特表2014-516923(P2014-516923A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2012055918
(87)【国際公開番号】WO2012136604
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年3月16日
(31)【優先権主張番号】11161556.3
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100162455
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 典子
(72)【発明者】
【氏名】シュテンゲレ,クラウス−ペーター
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/092854(WO,A1)
【文献】 米国特許第04863507(US,A)
【文献】 特開昭64−025764(JP,A)
【文献】 特開2000−186076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式:
【化1】
の化合物であって、
Aは−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−CH(CH)−CH−からなる群から選択され、そして
R1は未置換または置換されたアリールまたはヘテロアリール基であり、R3はH、メチル基またはエチル基であり、そして
ここでR2は
【化2】
であり、またはここでR2は
【化3】
であり、ここでR4はH、または、ホスホラミダイト、H−ホスホネートもしくはホスフェートトリエステルを形成しており、そして
ここでR5はH、OH、ハロゲンもしくはXR6であり、ここでXはOもしくはSであり、R6はH、アルキル基、アリール基であり、もしくはOR6はホスホラミダイト、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、H−ホスホネートもしくはアセタールもしくはシリコーン部分を形成しており、そして
ここでBはアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、ヒポキサンチン−9−イル、5−メチルシトシニル−1−イル、5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸−1−イルもしくは5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸アミド−3−イルからなる群から選択され、ここでBがアデニン、シトシンもしくはグアニンである場合、第1級アミノ基は保護基を有していてもよく[Bがアデニン、シトシンまたはグアニンである場合、保護基はフェノキシアセチル−、4−tert−ブチル−フェノキシアセチル−、4−イソプロピル−フェノキシアセチル−またはジメチルホルムアミジノ残基であり、Bがアデニンである場合、保護基はベンゾイル−またはp−ニトロ−フェニル−エトキシ−カルボニル−(NPEOC)残基であり、Bがグアニンである場合、保護基はイソブチロイル−、p−ニトロフェニルエチル(p−NPE)またはNPEOC残基であり、Bがシトシンである場合、保護基はベンゾイル−、イソブチリル−、またはNPEOC残基である]、もしくはBがチミンもしくはウラシルである場合、O位において保護基[当該保護基は、2−ニトロベンジルオキシカルボニル−(NBOC)、2−ニトロフェニル−エチルオキシカルボニル(NPEOC)、2−(3,4−メチレンジオキシ−2−ニトロフェニル)−プロピルオキシ−カルボニル(MeNPPOC)、2−(3,4−メチレンジオキシ−2−ニトロフェニル)−オキシカルボニル(MeNPOC)、2−(2−ニトロフェニル)−プロピルオキシカルボニル(NPPOC)、ジメトキシ−ベンゾ−イニリル−オキシカルボニル(DMBOC)、2−(2−ニトロフェニル)−エチルスルホニル(NPES)、及び(2−ニトロフェニル)−プロピルスルホニル(NPPS)からなる群より選ばれる]があってもよく、または
ここでR2は
【化4】
であり、ここでR7は式Iaに対してウレタン結合を形成している天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸であり、もしくは
ここで式IVは式Iaに対してエステル結合を形成している天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸カルボキシ官能基を表
前記化合物。
【請求項2】
R1がフェニル基、tert−ブチル−フェニル基、1−もしくは2−ナフチル基、もしくは2−ピリジル基であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが−CH(CH)−CH−であることを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R3がHまたはエチル基であることを特徴とする、請求項1〜3の1項に記載の化合物。
【請求項5】
R4がHかつR5がHであることを特徴とする、請求項1〜4の1項に記載の化合物。
【請求項6】
Bがアデニン、シトシン、グアニン、チミンまたはウラシルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5の1項に記載の化合物。
【請求項7】
R7が天然アミノ酸であることを特徴とする、請求項1〜4の1項に記載の化合物。
【請求項8】
マスクレスフォトリソグラフィーを用いる光活性化保護基としての、請求項1〜7の1項に記載の化合物の使用。
【請求項9】
マスクレスフォトリソグラフィーに基づくDNAアレイ合成のための、3’−OH末端または5’−OH末端におけるヌクレオシド誘導体中の中間的または永久的OH保護基としての、請求項1〜6の1項に記載の化合物の使用。
【請求項10】
マスクレスフォトリソグラフィーに基づくペプチドアレイ合成のための、アミノ酸中のNH保護基としての、請求項7に記載の化合物の使用。
【請求項11】
マスクレスフォトリソグラフィーに基づくペプチドアレイ合成のための、アミノ酸中のCOOH保護基としての、請求項7に記載の化合物の使用。
【請求項12】
マスクレスフォトリソグラフィーに基づく炭水化物の合成のための、OH保護基としての、請求項7に記載の化合物の使用。
【請求項13】
直交保護基戦略のための、SH保護基としての、請求項7に記載の化合物の使用。
【請求項14】
374〜405nm波長を有する光がマスクレスフォトリソグラフィーのために用いられることを特徴とする、請求項〜12の1項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
390nmの波長を有する光がマスクレスフォトリソグラフィーのために用いられることを特徴とする、請求項8〜12および14の1項に記載の化合物の使用。
【請求項16】
以下の工程:
a)出発物質としてのp−ジエチルベンゼンの提供
b)フェニル環の臭素化
c)得られた化合物の硝酸および硫酸中での該臭素に対するパラ位におけるニトロ化
d)精製および結晶化
e)該化合物のベンジル位におけるヒドロキシメチル化
f)チオフェノールを用いる該芳香族臭素基のアリールスルフィドへの変換
g)精製
h)アルコールのクロロカーボネートへの変換
i)該クロロカーボネートのヌクレオシドとの反応および該ヌクレオシドのホスファイト化剤との反応、または
該クロロカーボネートのアミノ酸との反応
を含む、請求項1〜7の1項に記載のジアリールスルフィド骨格を含有する光解離性保護基を調製するための方法。
【請求項17】
R1がフェニル基、tert−ブチル−フェニル基、1−もしくは2−ナフチル基または2−ピリジル基であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
Aが−CH(CH)−CH−であることを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
R3がエチル基であることを特徴とする、請求項1618の1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアリールスルフィド発色団を含有する光活性化(photoactivable)保護基、その合成のための方法およびマスクレスフォトリソグラフィーに基づくアレイ合成を用いる光活性化保護基としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光解離性(Photolabile)保護基(PLPG)は生体分子、例えば核酸およびそれらの誘導体、タンパク質、ペプチドおよび炭水化物の合成のために用いられるヌクレオシド類、ヌクレオチド類、糖類およびアミノ酸類中に存在する官能基のブロッキングにおいて重要な役割を果たす。加えて、PLPGは保護された官能基の脱保護を光曝露により簡単に実施することができるという利点を有する。従って、PLPGはオリゴヌクレオチド類またはペプチド類の固体支持体上でのマスクレスフォトリソグラフィーに基づく空間的に分解された(resolved)合成のための基礎を提供する。この技法の主な利点は、高分解能マイクロアレイを製造することができることである。そのような高分解能マイクロアレイは、それらが単一のアレイ上での多数の試料の高スループットかつ対費用効果の高い分析を実施する可能性を提供するため、医学および医薬研究における生体分子の分析のために非常に重要である。
【0003】
マイクロアレイの合成のためのPLPGの使用は当技術で周知である。一般的に用いられるフォトリソグラフィーに基づくオリゴヌクレオチド合成のためのPLPGは、例えばα−メチル−6−ニトロピペロニル−オキシカルボニル(MeNPOC)(Pease, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 (1994) 5022-5026)、2−(2−ニトロフェニル)−プロポキシカルボニル(NPPOC)(Hasan, et al., Tetrahedron 53 (1997) 4247-4264)である。一般的に用いられるフォトリソグラフィーに基づくペプチド合成のためのPLPGは、例えばニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)(Fodor, et al., Science 251 (1991) 767-773)および2−ニトロベンジルオキシカルボニル(NBOC)(Patchornik, et al., J. Am. Chem. Soc. 92 (1970) 6333-6335)である。
【0004】
先行技術のPLPGの主な欠点は、その保護された官能基の脱保護のためにおおよそ365nm以下の波長の光を用いなければならないことである。そのような波長を生成するのに適した光源は、例えば水銀灯、エキシマーレーザー、UV−LED、および周波数逓倍(multiplied)固体レーザーである。そのような光源は、高い購入費用を特徴とし、限られた光量しか提供せず、短い寿命を有し、これらは高い全体の運転費用につながる。上記で言及した光源のいくつかは危険な物質、例えば水銀を含有するため、労働安全を確保するための適切な行動および適正な廃棄が必要であり、それがさらに費用を増大させる。
【0005】
オリゴヌクレオチドまたはペプチドのフォトリソグラフィーに基づく合成のために用いられる光学装置、例えばマイクロミラー装置(WO 03/065038)は、主におおよそ380〜780nmの可視波長範囲のために設計されており、すなわちそのような装置はそれぞれの可視波長範囲に関する透明性に関して最適化された反射防止または保護用傷防止(antiscratch)コーティングを有する。従って、現状技術で既知のPLPGで保護された官能基の脱保護に必要な365nmの近紫外波長は、近紫外波長に関して最適化されている光学装置を必要とする。光学装置のほとんどは可視光での使用に関して最適化されているため、そのような最適化はしばしばその光学装置から可視光での使用を意図したコーティングを除去することおよび/またはその光学装置を近紫外もしくは紫外光での使用を意図した物質でコーティングすることを含む。
【0006】
さらに、上記で言及した光源のいくつかは広いスペクトルの波長を生成し、例えば水銀灯は紫外から赤外までの範囲の光を放射し、その両方が生体分子の合成に関する不都合な作用を有する。紫外線は例えば合成されたDNAにより吸収されてリン酸主鎖の基の切断による鎖内でのランダムな破断、グアニン塩基の酸化およびそれに続く鎖の破断、または特にチミン塩基の光二量化をもたらし得る。さらに、紫外光は特定のアミノ酸の破壊、例えばラジカル酸化によるトリプトファンの破壊、または硫黄酸化によるシステインおよびメチオニンの破壊ももたらす。結果として、DNAまたはペプチドマイクロアレイは、合成されたDNA鎖およびペプチドそれぞれの定まらない長さのため、低品質である可能性がある。
【0007】
それに対し、赤外光は光学装置の昇温をもたらし、それは結果としてその光学装置の変形をもたらす。マイクロミラー装置を使用する場合、例えば、その装置の1℃の温度上昇は反射された光のおおよそ10μmのドリフト(drift)をもたらし、従ってそのマイクロアレイ上のそれぞれの特徴上の焦点の喪失をもたらす。固体支持体上のオリゴヌクレオチドまたはペプチドのフォトリソグラフィーに基づく合成における必要とされる正確さを考慮すると、そのような収差はそのアレイの質の低下をもたらすであろう。結果として、オリゴヌクレオチドまたはペプチドアレイの品質を確実にするため、365nmでの脱保護に必要な光源により生成された望まれない紫外および赤外波長を(例えばフィルターにより)除去するために追加の努力および費用が必要である。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記で言及した先行技術の欠点を示さないPLPGの提供である。従って、可視光を用いた官能基の脱保護に適したPLPGが本明細書において提供される。結果として、無害かつ対費用効果の高い光源ならびに規則正しい光学素子をフォトリソグラフィーに基づくオリゴヌクレオチドおよびペプチド合成のために用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 03/065038
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Pease, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 (1994) 5022-5026
【非特許文献2】Hasan, et al., Tetrahedron 53 (1997) 4247-4264
【非特許文献3】Fodor, et al., Science 251 (1991) 767-773
【非特許文献4】Patchornik, et al., J. Am. Chem. Soc. 92 (1970) 6333-6335
【発明の概要】
【0011】
第1観点において、本発明は次の一般式を有するジアリールスルフィド発色団を含有する光解離性保護基に向けられており:
【0012】
【化1】
【0013】
ここでYはSまたはOであり、そして
Aは−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−CH(CH)−CH−からなる群から選択され、R1は未置換または置換されたアリールまたはヘテロアリール基であり、R3はH、メチル基またはエチル基であり、ここでR2はHであり、ホスホラミダイト、H−ホスホネートもしくはホスフェートトリエステルを形成しており、またはここでR2は
【0014】
【化2】
【0015】
であり、またはここでR2は
【0016】
【化3】
【0017】
であり、ここでR4はHであり、もしくはOR4はホスホラミダイト、H−ホスホネートもしくはホスフェートトリエステルを形成しており、ここでR5はH、OH、ハロゲンもしくはXR6であり、ここでXはOもしくはSであり、R6はH、アルキル基、アリール基であり、もしくはOR6はホスホラミダイト、ホスホジエステル、ホスホトリエステルもしくはH−ホスホネートもしくはアセタールもしくはシリコン部分を形成しており、ここでBはアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、ヒポキサンチン−9−イル、5−メチルシトシニル−1−イル、5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸−1−イルもしくは5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸アミド−3−イルからなる群から選択され、ここでBがアデニン、シトシンもしくはグアニンである場合、その第1級アミノ基は場合により保護基を有し、もしくはBがチミンもしくはウラシルである場合、O4位において場合により保護基があり、
またはここでR2は
【0018】
【化4】
【0019】
であり、ここでR7は式Ibに対してウレタン結合を形成している天然アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはアミノ酸誘導体であり、もしくはここで式IVは式Ibに対してエステル結合を形成している天然アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはアミノ酸誘導体のカルボキシ官能基(function)を表す。
【0020】
R1は好ましくはフェニル基、tert−ブチル−フェニル基、1−もしくは2−ナフチル基、2−ピリジル基、アミノフェニル基、N−アルキルアミノフェニル基、N−アシルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、フェニルカルボン酸エステルもしくはアミドであり、および/またはAは好ましくは−CH(CH)−CH−であり、および/またはR2はホスホラミダイトもしくは−P(OCHCHCN)(N−iPr)であり、および/またはP4は好ましくはHであり、および/またはR5は好ましくはHであり、および/またはR7は好ましくは天然アミノ酸である。Bはアデニン、シトシン、グアニン、チミンまたはウラシルからなる群から選択され、より好ましくは、Bがアデニン、シトシンまたはグアニンである場合、その保護基はフェノキシアセチル−、4−tert−ブチル−フェノキシアセチル−、4−イソプロピル−フェノキシアセチル−またはジメチルホルムアミジノ残基であり、Bがアデニンである場合、その保護基はベンゾイル−またはp−ニトロ−フェニル−エトキシ−カルボニル−(NPEOC)残基であり、Bがグアニンである場合、その保護基はイソブチロイル−、p−ニトロフェニルエチル(p−NPE)またはPEOC残基であり、Bがシトシンである場合、その保護基はベンゾイル−、イソブチリル−、またはPEOC残基である。
【0021】
本発明の化合物は様々な異なる適用のために用いることができる。1観点において、本発明はその化合物のマスクレスフォトリソグラフィーを用いる光活性化保護基としての使用に向けられている。1態様において、その化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づくDNAアレイ合成のために、3’−OH末端または5’−OH末端におけるヌクレオシド誘導体中の中間的または永久的OH保護基として用いられる。さらに、その化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づくペプチドアレイ合成のために、アミノ酸中のNH保護基として用いられる。別の態様において、その化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づくペプチドアレイ合成のためにアミノ酸中のCOOH保護基として、および/またはマスクレスフォトリソグラフィーに基づく炭水化物の合成のためにOH保護基として、および/または直交保護基戦略のためにSH保護基として用いられる。別の態様において、その化合物は374〜405nmの、好ましくは390nmの波長を有するマスクレスフォトリソグラフィーのために用いられる。
【0022】
別の観点において、本発明は、以下の工程:
a)出発物質としてのp−ジエチルベンゼンの提供
b)フェニル環の臭素化
c)得られた化合物の硝酸および硫酸中でのその臭素に対するパラ位におけるニトロ化
d)精製および結晶化
e)その化合物のベンジル位におけるヒドロキシメチル化
f)チオフェノールを用いるその芳香族臭素基のアリールスルフィドへの変換
g)精製
h)アルコールのクロロカーボネートへの変換
i)そのクロロカーボネートのヌクレオシドとの反応およびそのヌクレオシドのホスファイト化剤との反応、または
そのクロロカーボネートのアミノ酸誘導体との反応;
を含む、上記で記述したようなジアリールスルフィド骨格を含有する光解離性保護基の合成のための方法に向けられている。
【0023】
1態様において、R1はフェニル基、tert−ブチル−フェニル基、1−または2−ナフチル基、2−ピリジル基であり、Aは−CH(CH)−CH−であり、かつR3はHまたはエチル基である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1:本発明に従うPLPGの390nmの波長における半減期を、用いた溶媒に応じて示す。光曝露はそれぞれ2、4、6秒間または2、4、6、8秒間または2、4、6、8、12秒間実施した。
図2図2:本発明に従うPLPGの404nmの波長における半減期を、用いた溶媒に応じて示す。光曝露はそれぞれ1、2、3、4分間または1、2、3、5分間実施した。
図3図3:PLPGの紫外吸収特性。
図4-1】図4:ジスルフィド−PLPG−アミノ酸の合成経路。
図4-2】図4:ジスルフィド−PLPG−アミノ酸の合成経路。
図4-3】図4:ジスルフィド−PLPG−アミノ酸の合成経路。
図4-4】図4:ジスルフィド−PLPG−アミノ酸の合成経路。
図4-5】図4:ジスルフィド−PLPG−アミノ酸の合成経路。
図4-6】図4:ジスルフィド−PLPG−アミノ酸の合成経路。
図5-1】図5:ジスルフィド−PLPG−ヌクレオチドの合成経路。
図5-2】図5:ジスルフィド−PLPG−ヌクレオチドの合成経路。
図5-3】図5:ジスルフィド−PLPG−ヌクレオチドの合成経路。
図6-1】図6:本発明に従うさらなるPLPGの合成経路。
図6-2】図6:本発明に従うさらなるPLPGの合成経路。
図7-1】図7:さらなるアルキル置換基なしのPLPGの代替合成経路。
図7-2】図7:さらなるアルキル置換基なしのPLPGの代替合成経路。
図7-3】図7:さらなるアルキル置換基なしのPLPGの代替合成経路。
図8図8:ジスルフィド−PLPG−アミノ酸を用いて本発明に従って合成された、抗V5抗体の標的配列を含有するペプチドアレイのマイクロアレイ走査。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の定義は、本明細書において本発明を記述するために用いられる様々な用語の意味および範囲を説明および定義するために述べられている。
用語“未置換の”は本明細書において当業者に既知であるように用いられており、完全に炭素および水素からなる炭化水素鎖を指す。
【0026】
用語“置換された”は本明細書において当業者に既知であるように用いられており、化学基または置換基(典型的にはHまたはOH)の官能基による置換を指し、特に意図されている官能基には、求電子基(例えばC(O)−OR、C(X)−OH等)、求核基(例えば−NH2、−OH、−SH、−NC等)、イオン性基(例えば−NH3−)、極性基(例えば−OH)、非極性基(例えばアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル等)、およびハロゲン(例えば−F、−Cl)およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0027】
用語“保護基”は本明細書において当業者に既知であるように用いられており、(例えば共有結合、イオン結合、または錯体により)潜在的に反応性である基に結合しておりその潜在的に反応性である基が特定の反応条件下で反応するのを妨げる置換基、官能基、リガンド等を指す。潜在的に反応性である基には、例えばアミン類、カルボン酸類、アルコール類、二重結合等が含まれる。本発明に従う保護基は光解離性保護基であり、それには2−ニトロベンジルオキシカルボニル−(NBOC)、2−ニトロフェニル−エチルオキシカルボニル(NPEOC)、2−(3,4−メチレンジオキシ−2−ニトロフェニル)−プロピルオキシ−カルボニル(MeNPPOC)、2−(3,4−メチレンジオキシ−2−ニトロフェニル)−オキシカルボニル(MeNPOC)、2−(2−ニトロフェニル)−プロピルオキシカルボニル(NPPOC)、ジメトキシ−ベンゾ−イニリル−オキシカルボニル(dimethoxy−benzo−inylyl−oxycarbonyl)(DMBOC)、2−(2−ニトロフェニル)−エチルスルホニル(NPES)、(2−ニトロフェニル)−プロピルスルホニル(NPPS)等が含まれるが、それらに限定されない。
【0028】
用語“アリール”は本明細書において当業者に既知であるように用いられており、水素および炭素原子のみからなる芳香族残基、例えばフェニル(C−)、ナフチル(C10−)、ピレニル−またはアントラセニル(C14−)残基を指す。そのアリールは、例えばアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、もしくはtert−ブチル、またはアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、もしくはイソプロポキシ、またはハロゲン原子、例えば臭素、塩素、もしくはフッ素で置換されていることができ、または未置換であることができる。
【0029】
用語“ヘテロアリール”は本明細書において当業者に既知であるように用いられており、5または6個の環原子を有し、少なくとも1個の環原子が酸素、硫黄、および窒素からなる群から選択され、残りの環原子が炭素である環状芳香族基を指す。そのヘテロ芳香族環は、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、プテリジンまたはアロキサジンのように、他のアリールまたはヘテロアリール環と一緒に縮合ヘテロ芳香族系を形成していてよい。
【0030】
用語“アルキル”は本明細書において当業者に既知であるように用いられており、炭素および水素原子のみからなる一価の残基を指す。アルキルは一般式C2n+1を有する同族列を形成する。アルキルは直鎖または分枝状アルキルであることができ、例えばそのアルキルは2個の炭素残基に連結された中央の炭素原子で分枝している第2級アルキルまたは3個の炭素残基に連結された中央の炭素原子で分枝している第3級アルキルであることができる。
【0031】
基−A−O−中の文字Aは、1から2個までの線状に共有結合的に連結された原子を含む“断片化(fragmentation)リンカー”、例えばメチレン−またはエチレン−を表す。用語“断片化リンカー”は本明細書において当業者に既知であるように用いられており、光化学において一次光過程を化学開裂反応に変換することによりそのPLPGの光に誘導される分裂を達成する部分として用いられる部分に関する。従って、第1観点において、その二価の基−A−は、官能基R2をニトロフェニル発色団と連結する連結基を指す。1態様において、その連結基Aの1〜2原子の鎖は、置換された、または未置換の、分枝状または線状の、飽和または不飽和の炭化水素鎖の形態で、完全に水素および炭素原子で構成されていることができる。
【0032】
その炭化水素鎖は分枝して1個以上のアルキル基を有することもでき、ここでそのアルキル基はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、またはtert−ブチルであることができる。
【0033】
そのような炭化水素鎖は、例えばハロゲン原子により置換されることもできる。従って、それぞれの炭化水素鎖の1個の水素原子から3個の水素原子までを例えばハロゲンにより置換することができる。
【0034】
連結基という用語の定義の文脈中の用語“分枝状”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、分子または部分の主鎖における側鎖の存在を指す。従って、分枝状連結基は、1個以上のアルキル基を側鎖として有する上記で定義されたような炭化水素鎖であることができ、ここでそのアルキル基はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、またはtert−ブチルであり、好ましくはメチルまたはエチル基である。Aにより表される分枝状炭化水素鎖において、1個から全部までの炭素原子は1個以上の上記で定義されたようなアルキル基を有することができる。
【0035】
連結基という用語の定義の文脈中の用語“飽和した”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、その基の全ての員がそれぞれの隣接する原子(単数または複数)に単結合により連結されている連結基に関する。従って、飽和した炭化水素鎖は式−(CH−により表され、nは1から2までの範囲の整数である。
【0036】
用語“官能基”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、化学分子の一部を形成し、それら自体が特徴的な反応を経て、そして多くの場合においてその分子の残りの部分の反応性に影響を及ぼす、数多くの原子の組み合わせのいずれかを指す。典型的な官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アルデヒド、カルボニル、アミノ、アジド、アルキニル、チオールおよびニトリルである。
【0037】
用語“固体支持体”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、好ましくは大きな表面積を有し、その表面に有機分子が結合形成により付着することができ、または電子的もしくは静的(static)相互作用により、例えば官能基による結合形成により吸収されることができる、あらゆる不溶性かつ剛性または半剛性の無機または有機性物質を指す。
【0038】
用語“生体分子”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、生きた生物により生成されるあらゆる有機分子を、またはそのような化合物のあらゆる人工的に生成された誘導体を指し、大きなポリマー性分子、例えばタンパク質、多糖類、炭水化物、脂質、核酸およびオリゴヌクレオチド類、ならびに小分子、例えば一次代謝産物、二次代謝産物、および天然産物が含まれる。
【0039】
用語“核酸”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、単量体ヌクレオチドの鎖からなる高分子を指し、ここでそれぞれのヌクレオチドは3つの構成要素からなる:窒素性複素環式塩基、それはプリンまたはピリミジンのどちらかである;ペントース糖;およびホスフェート基。
【0040】
用語“天然アミノ酸”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、タンパク質生合成のために用いられる20種類の標準的なアミノ酸ならびに翻訳の間にタンパク質中に組み込まれ得る全てのアミノ酸(ピロリシンおよびセレノシステインが含まれる)を指す。その20種類の標準的なアミノ酸には、ヒスチジン、アラニン、バリン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、グルタミン、アスパラギン、スレオニン、アルギニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニンおよびリシンが含まれる。
【0041】
用語“非天然アミノ酸”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、標準的な遺伝暗号によりコードされるアミノ酸の中になく、翻訳の間にタンパク質中に組み込まれることもない有機化合物を指す。さらに、用語“非天然アミノ酸”は、天然に存在しない有機化合物を指す。従って、非天然アミノ酸にはアミノ酸またはアミノ酸の類似体、アミノ酸のD−立体異性体(D−isostereomers)、シトルリン、ホモシトルリン、ホモアルギニン、ヒドロキシプロリン、ホモプロリン、オルニチン、4−アミノ−フェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、α−アミノイソ酪酸、N−メチル−アラニン、N−メチル−グリシン、ノルロイシン、N−メチル−グルタミン酸、tert−ブチルグリシン、α−アミノ酪酸、tert−ブチルアラニン、2−アミノイソ酪酸、α−アミノイソ酪酸、2−アミノインダン−2−カルボン酸、セレノメチオニン、ジヒドロアラニン、ランチオニン、γ−アミノ酪酸、およびそれらの誘導体が含まれるが、それらに限定されず、ここでそのアミン窒素はモノ−またはジ−アルキル化されている。
【0042】
用語“ペプチド”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、線状鎖中に配列され、隣接するアミノ酸残基のカルボキシルおよびアミノ基の間のペプチド結合により一緒に連結されたアミノ酸で作られた有機化合物を指す。
【0043】
用語“アミノ基”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、第1級(−NH)、第2級(−NHR)、または第3級(−N R)を指し、陽イオン形態では第4級(−N R)であってよい。アミノ基の例には、−NH、−NHCH、−NHC(CH、−N(CHおよび−N(CHCHが含まれるが、それらに限定されない。環状アミノ基の例には、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、およびチオモルホリノが含まれるが、それらに限定されない。
【0044】
用語“マスクレスフォトリソグラフィー”は、本明細書において当業者に既知であるように用いられており、写真マスク(photographic masks)を用いないDNAまたはペプチドマイクロアレイの合成のための技法を指す。マスクレスフォトリソグラフィーは、独立してアドレス指定でき(addressable)、ソフトウェア制御の下で操作可能である光スイッチング素子のアレイを用いる。そのような光スイッチング素子の例は、マイクロミラー装置である。好ましいマイクロミラー装置は、Texas Instruments, Inc.からのDigital Light Processor(DLP)である。
【0045】
本発明は、フォトリソグラフィーに基づくオリゴヌクレオチドおよびペプチド合成のために用いることができる、次の構造を有するジアリールスルフィド発色団を含有するPLPGに関し:
【0046】
【化5】
【0047】
ここでAは−CH2−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−CH(CH)−CH−、−CH2−CH(アルキル(Alky)、アリール)−および−CH(CH3)−CH(アルキル、アリール)−からなる群から選択され、
R1は未置換または置換されたアリールもしくはヘテロアリール基または縮合したアリールもしくはヘテロアリール基であり、R3はH、メチル基またはエチル基であり、そして
ここでR2は
【0048】
【化6】
【0049】
であり、またはここでR2は
【0050】
【化7】
【0051】
であり、ここでR4はH、アルキル基、アリール基であり、もしくはOR4はホスホラミダイト、H−ホスホネートもしくはホスフェートトリエステルを形成しており、そして
ここでR5はH、OH、ハロゲンもしくはXR6であり、ここでXはOもしくはSであり、R6はアルキル基、アリール基であり、もしくはOR6はホスホラミダイト基、ホスホジエステル、ホスホトリエステルもしくはH−ホスホネートもしくはアセタールもしくはシリコン部分を形成しており、そして
ここでBはアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、ヒポキサンチン−9−イル、5−メチルシトシニル−1−イル、5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸−1−イルもしくは5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸アミド−3−イルからなる群から選択され、ここでBがアデニン、シトシンもしくはグアニンである場合、その第1級アミノ基は場合により保護基を有し、もしくはBがチミンもしくはウラシルである場合、O4位において場合により保護基があり、
またはここでR2は
【0052】
【化8】
【0053】
であり、ここでR7は式Iaに対してウレタン結合を形成している天然アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはアミノ酸誘導体であり、それにはα−もしくはβ−アミノ酸が含まれるが、それらに限定されず、
もしくはここで式IVは式Iaに対してエステル結合を形成している天然アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはアミノ酸誘導体のカルボキシ官能基を表し、それにはα−もしくはβ−アミノ酸が含まれるが、それらに限定されない。
【0054】
別の態様において、R1がフェニル基、tert−ブチル−フェニル基、1−もしくは2−ナフチル基または2−もしくは4−ピリジル基であり、Aが−CH(CH)−CH−であり、R4がHかつR5がHであり、R4がHかつR5がOHまたはOSi(Alkyl3)であることを特徴とする、式Iaに従う化合物が用いられる。
【0055】
別の態様において、Bがアデニン、シトシン、グアニン、チミン、5−メチルシトシンまたはウラシルからなる群から選択されることを特徴とする、式Iaに従う化合物が用いられる。
【0056】
別の態様において、Bがアデニン、シトシンまたはグアニンである場合、その保護基はフェノキシアセチル−、4−tert−ブチル−フェノキシアセチル−、4−イソプロピル−フェノキシアセチル−またはジメチルホルムアミジノ残基であり、Bがアデニンである場合、その保護基はベンゾイル残基であり、Bがグアニンである場合、その保護基はイソブチロイル残基であり、そしてBがシトシンである場合、その保護基はベンゾイル−−またはイソブチロイル残基であることを特徴とする、式Iaに従う化合物が用いられる。
【0057】
別の態様において、R7が天然アミノ酸であることを特徴とする、式Iaに従う化合物が用いられる。
フォトリソグラフィーに基づくオリゴヌクレオチドおよびペプチド合成のために用いることができるジアリールスルフィド発色団を含有するPLPGは、好ましくは次の構造を有する:
【0058】
【化9】
【0059】
【化10】
【0060】
【化11】
【0061】
【化12】
【0062】
【化13】
【0063】

本発明はさらに、式Iaに従う化合物のマスクレスフォトリソグラフィーを用いる光活性化保護基としての使用に関する。本発明の1態様において、合成プロセスの間に曝露した領域中のヌクレオチドおよびアミノ酸をそれぞれ脱保護するために、マイクロミラー装置を用いてそのオリゴヌクレオチドおよびペプチドマイクロアレイの可視光への空間的選択的曝露を実施する。ヌクレオチドおよびアミノ酸それぞれの脱保護はそれぞれの次のヌクレオチドまたはアミノ酸のための次の連結部位の解放につながる。その特定の領域内の解放された連結部位に連結されるべき次のヌクレオチドまたはアミノ酸は、そのアレイ上に注がれる溶媒プラス活性化試薬中にそれを提供することにより簡単に付加される。この戦略を、望まれる長さおよび設計のオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドそれぞれが得られるまで繰り返す。この戦略を用いることにより、cmあたり少なくとも10000個、好ましくは100000〜500000個の特徴の高度に密集したマイクロアレイを製造することが可能である。
【0064】
本発明に従うPLPGは375nmから420nmまでの範囲の、好ましくは390nmから405nmまでの範囲の可視光を用いることにより除去することができる。脱保護に関してより好ましいのは、390nmおよび404nmそれぞれの波長である。両方の波長は、おおよそ365nmにおける近紫外範囲での脱保護を実施するのに必要な光源と比較してはるかに安上がりである光源を用いて生成することができる。好ましくは、375nmから420nmまでの範囲内の、好ましくは390nmおよび404nmの固体レーザーを、本発明に従うPLPGを除去するための光源として用いる。より好ましくは、375nmから420nmまでの範囲内の、好ましくは390nmおよび404nmの十分な放射を有するLED(発光ダイオード)を、本発明に従うPLPGを除去するための光源として用いる。特にLEDは、それらが例えばブルーレイプレーヤーにおける使用のために大量生産されているため、低費用な製品である。
【0065】
さらなる態様において、マイクロミラー装置が用いられ、それは375nm〜420nmの範囲の、好ましくは390nm〜410nmの範囲の、より好ましくは390nmおよび404nmそれぞれにおける可視光の使用に関して最適化されている。さらなる態様において、そのマイクロミラー装置のコーティングは可視光で用いられるためにその装置上に残っている。紫外または近紫外光に関して用いられる装置はその目的に関して最適化されていなければならず、すなわちそのマイクロミラー素子上のコーティングは研磨により除去されなければならない。
【0066】
別の態様において、LCDディスプレーまたはビームスプリッターを光源および合成領域の間の事実上のマスクとして用いることができる。
オリゴヌクレオチドおよびペプチドのフォトリソグラフィーでの合成はそれぞれ支持体、好ましくは固体支持体上で実施することができる。その支持体は、そのような目的のために用いられる当業者に既知のあらゆる物質で作られていることができ、好ましくはその支持体はプラスチック、シリコン、ダイヤモンド炭素またはガラスで作られている。より好ましくは、プラスチックまたはガラスが支持体として用いられ、材料としてさらにもっと好ましいのは光学グレードのポリオレフィンまたは光学グレードの顕微鏡スライドガラスである。その支持体は、あらゆる形態、例えばビーズ、ゲル、プレート、膜、スライドまたは好ましくはチップで提供され得る。その支持体は透明または不透明であることができ、好ましくはその支持体は375nm〜410nmの波長において少なくとも30%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも90%の光透過を示す。
【0067】
本発明に従うPLPGは、保護されたヌクレオシドまたはヌクレオチドが必要である、当業者に既知のオリゴヌクレオチド合成のためのあらゆるプロセスにおいて用いることができる。好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPG−ヌクレオチドは溶液中でのオリゴヌクレオチドの合成のために用いることができ、より好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPG−ヌクレオチドは固体支持体上でのオリゴヌクレオチドの合成のために用いることができる。その合成は、現状技術において既知のあらゆる標準的な方法により実施することができる。より好ましくは、その合成はフォトリソグラフィー技法、例えば上記で説明したようなマイクロアレイ上の空間的に選択された特徴に光を当てるためにマイクロミラー装置を用いるマスクレス技法を用いることにより実施することができる。
【0068】
当業者に既知の溶媒、例えばアセトニトリルをオリゴヌクレオチド合成の間に用いることができる。
オリゴヌクレオチド合成のためのヌクレオシドまたはヌクレオチドに結合したPLPGは、1mmol/L〜100mmol/Lの溶媒中の濃度で用いることができる。好ましくは、10mmol/L〜40mmol/Lの濃度で用いることができる。より好ましくは、そのPLPG−ヌクレオチドは25mmol/Lの濃度で用いることができる。
【0069】
そのヌクレオシドまたはヌクレオチドに結合したPLPGは、当業者に既知の増感剤と関連して用いることができ、それはその脱保護反応の有効性を増大させる。特に、ベンゾフェノン、キサントンおよびチオキサントン誘導体、例えばチオキサンテン−9−オン、アルキルチオキサンテン−9−オン、例えばイソプロピルチオキサンテン−9−オン、2−エチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロ−チオキサンテン−9−オン、1,4−ジメトキシチオキサンテン−9−オンを増感剤として用いることができる。
【0070】
オリゴヌクレオチドマイクロアレイは、配列捕捉、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、CHIP−チップ分析、DNAメチル化分析、遺伝子発現分析および比較ゲノム配列決定が含まれるがそれらに限定されない様々な目的のために用いることができる。
【0071】
別の態様において、式Iaに従う化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づくDNAアレイ合成において、炭素エステル(carbon ester)として、3’−OH末端または5’−OH末端におけるヌクレオシド誘導体中の中間的または永久的OH保護基として用いられ、ここでその合成は3’−5’方向で、または5’−3’方向で実施することができる。
【0072】
そのPLPGが5’末端に位置する場合、そのヌクレオチドはホスホラミダイト基をその3’末端上に有し、それは固体支持体上の遊離の−OH基と反応して安定な伸長されたオリゴヌクレオチドを形成することができる。全てのオリゴヌクレオチドが合成された後、全てのPLPGは除去され、その固体支持体上にまだ結合しているオリゴヌクレオチドは遊離の5’−OHを有する。
【0073】
しかし、そのPLPGが3’末端に位置する場合、そのヌクレオチドはホスホラミダイト基をその5’末端上に有し、それは固体支持体上のあらゆる遊離の−OH基と反応して安定な伸長されたオリゴヌクレオチドを形成することができる。全てのオリゴヌクレオチドが合成された後、全てのPLPGは除去され、その固体支持体上にまだ結合しているオリゴヌクレオチドは遊離の3’−OHを有する。
【0074】
両方のタイプの固定化がハイブリダイゼーションに基づくアッセイを可能にするが、遊離の3’−OHを提示するオリゴヌクレオチドのみを、検出、標識、キャップ形成またはライゲーションもしくは酵素的重合による伸長のための酵素反応のために用いることができる。
【0075】
本発明に従うPLPGは、さらに、保護されたアミノ酸が必要である当業者に既知のあらゆるペプチド合成のためのプロセスにおいて用いることができる。用いられるアミノ酸は非天然アミノ酸、アミノ酸誘導体および好ましくは天然アミノ酸であることができる。好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPGは溶液中でのオリゴペプチドの合成のために用いることができ、より好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPGは固体支持体上でのオリゴペプチドの合成のために用いることができる。その合成は、現状技術において既知のあらゆる標準的な方法により実施することができる。より好ましくは、その合成はフォトリソグラフィー技法、例えば上記で説明したようなマイクロアレイ上の空間的に選択された特徴に可視光を当てるためにマイクロミラー装置を用いる技法により実施することができる。
【0076】
その脱保護反応はそのペプチド合成プロセスの間に用いられる溶媒に依存することが示されている。当業者に既知の溶媒をペプチド合成の間に用いることができる。好ましくは、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリル(MeCN)またはイソプロパノールのような極性溶媒を用いることができる。前記の溶媒は、特定の添加剤、好ましくはイミダゾール、ヒドロキシルアミンおよび水を含有することができる。イミダゾールは0.1%〜3%(v/v)、好ましくは0.5%〜1.5%(v/v)の濃度で添加することができ、より好ましくはイミダゾールは1%(v/v)の濃度で添加することができる。ヒドロキシルアミンは0.1%〜3%(v/v)、好ましくは0.2%〜1%(v/v)の濃度で添加することができ、より好ましくはヒドロキシルアミンは1%(v/v)の濃度で添加することができる。水は0.1%〜20%(v/v)、好ましくは1%〜17%(v/v)の濃度で添加することができ、より好ましくは水は1%(v/v)の濃度で添加することができる。溶媒として最も好ましいのはDMSO、DMSO+1%イミダゾール、NMP+0.5%ヒドロキシルアミン、MeCN+1%HO、MeCN+1%HO+1%イミダゾール、イソプロパノール+1%イミダゾール、イソプロパノール+12%HO+1%イミダゾールである。
【0077】
ペプチド合成のためのアミノ酸に結合したPLPGは、0.1mmol/L〜0.5mmol/Lの溶媒中の濃度で用いることができる。好ましくは、0.2mmol/L〜0.4mmol/Lの濃度で用いることができる。より好ましくは、そのPLPGは0.3mmol/Lの濃度で用いることができる。
【0078】
そのアミノ酸に結合したPLPGは、当業者に既知の増感剤と関連して用いることができ、それはその脱保護反応の有効性を増大させる。
オリゴペプチドマイクロアレイは、抗体ライブラリーのスクリーニング、生物学的試料の定量または定性分析、バイオマーカーの発見、稀なタンパク質の濃縮(enrichment)、非常に豊富なタンパク質の枯渇、タンパク質間相互作用の分析、DNA−タンパク質相互作用またはRNA−タンパク質相互作用の分析が含まれるがそれらに限定されない様々な目的のために用いることができる。
【0079】
別の態様において、式Iaに従う化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づくペプチドアレイ合成のために、ウレタンとしてのアミノ酸中のNH保護基として用いられる。そのPLPGは、NHをブロッキングされた(NH−blocked)遊離酸、活性化されたエステル、酸ハロゲン化物、無水物(分子間またはN−カルボキシ−無水物(NCA)として分子内)として用いられる。
【0080】
別の態様において、式Iaに従う化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づくペプチドアレイ合成のために、逆方向の合成のためのエステルとしてのアミノ酸中のCOOH保護基として用いられる。
【0081】
本発明に従うPLPGは、さらに、保護された糖類が必要である当業者に既知のあらゆるプロセスにおいて用いることができる。用いられる糖類は、アルドヘキソースおよびアルドペントースのような化合物であることができる。好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPGは溶液中での炭水化物、糖タンパク質およびプロテオグリカン類の合成のために用いることができ、より好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPGは固体支持体上での炭水化物、糖タンパク質およびプロテオグリカン類の合成のために用いることができる。その合成は、現状技術において既知のあらゆる標準的な方法により実施することができる。より好ましくは、その合成はフォトリソグラフィー技法、例えば上記で説明したようなマイクロアレイ上の空間的に選択された特徴に可視光を当てるためにマイクロミラー装置を用いる技法により実施することができる。
【0082】
炭水化物マイクロアレイは、糖類−タンパク質相互作用の分析、タンパク質および細胞の高スループット分析、グリカン類およびそれらの分子相互作用の分析が含まれるがそれらに限定されない様々な目的のために用いることができる。
【0083】
別の態様において、式Iaに従う化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づく炭水化物、糖タンパク質、プロテオグリカン類等の合成のために、エーテルとしてのOH保護基として用いられる。
【0084】
別の態様において、式Iaに従う化合物は、エーテル、エステルまたはチオカーボネートとしての直交戦略のためのSH保護基として用いられる。
別の態様において、式Iaに従う化合物は、生物学的に活性な構造をポリメラーゼ反応またはATP依存性の生化学的変換の開始のために解放するための光活性化保護基として用いられる。
【0085】
本発明はさらに、マスクレスフォトリソグラフィーのために375nm〜405nmの、好ましくは390の波長を有する光が用いられることを特徴とする、式Iaに従う化合物の使用に関する。
【0086】
本発明はさらに、フォトリソグラフィーに基づくオリゴヌクレオチドおよびペプチド合成のために用いることができるジアリールスルフィド骨格を含有するPLPGを生成するための方法に関し、ここでその方法は以下の工程を含む:
a)出発物質としてp−ジエチルベンゼンを提供する。
【0087】
b)分子臭素の作用によるフェニル環の1つの位置における臭素化、および蒸留による精製。
c)得られた化合物の硝酸および硫酸中でのその臭素に対するパラ位におけるニトロ化、ならびにシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーおよび結晶化による単離および精製。
【0088】
d)DMSOおよびトリトンB中でのパラホルムアルデヒドの作用による、ベンジル位におけるその化合物のヒドロキシメチル化。
e)DMF中での適切なチオフェノール、チオナフトール等、炭酸カリウムおよび触媒量の銅(II)塩の作用による、その芳香族臭素基のアリールスルフィドへの変換、ならびにシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによる精製。
【0089】
f)THFおよびトリエチルアミン中でのトリホスゲン(triphosgen)の作用による、前のアルコールのクロロカーボネートへの変換。
g)そのクロロカーボネートの適切なヌクレオシドとの反応、そしてさらにそのヌクレオシドをホスファイト化剤と反応させて適切なホスホラミダイトにする、または
そのクロロカーボネートの適切なアミノ酸誘導体との反応。
【0090】
以下の実施例は本発明の理解を助けるために提供されており、その真の範囲は添付された特許請求の範囲において述べられている。述べられた手順において本発明の精神から逸脱することなく修正を行うことができることは理解されている。
【0091】
さらなる態様は、以下の項目に含まれる:
1.次の式の化合物:
【0092】
【化14】
【0093】
ここでAは−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−CH(CH)−CH−からなる群から選択され、そして
R1は未置換または置換されたアリールまたはヘテロアリール基であり、R3はH、メチル基またはエチル基であり、そして
ここでR2は
【0094】
【化15】
【0095】
であり、またはここでR2は
【0096】
【化16】
【0097】
であり、ここでR4はHであり、ホスホラミダイト、H−ホスホネートもしくはホスフェートトリエステルを形成しており、そして
ここでR5はH、OH、ハロゲンもしくはXR6であり、ここでXはOもしくはSであり、R6はH、アルキル基、アリール基であり、もしくはOR6はホスホラミダイト、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、H−ホスホネートもしくはアセタールもしくはシリコン部分を形成しており、そして
ここでBはアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、ヒポキサンチン−9−イル、5−メチルシトシニル−1−イル、5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸−1−イルもしくは5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸アミド−3−イルからなる群から選択され、ここでBがアデニン、シトシンもしくはグアニンである場合、その第1級アミノ基は場合により保護基を有し、もしくはBがチミンもしくはウラシルである場合、O位において場合により保護基があり、または
ここでR2は
【0098】
【化17】
【0099】
であり、ここでR7は式Iaに対してウレタン結合を形成している天然アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはアミノ酸誘導体であり、もしくは
ここで式IVは式Iaに対してエステル結合を形成している天然アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはアミノ酸誘導体のカルボキシ官能基を表す。
【0100】
2.R1がフェニル基、tert−ブチル−フェニル基、1−もしくは2−ナフチル基または2−ピリジル基であることを特徴とする、項目1に従う化合物。
3.Aが−CH(CH)−CH−であることを特徴とする、項目1または2に従う化合物。
【0101】
4.R3がHまたはエチル基であることを特徴とする、項目1〜3に従う化合物。
5.R4がHかつR5がHであることを特徴とする、項目1〜4に従う化合物。
6.Bがアデニン、シトシン、グアニン、チミンまたはウラシルからなる群から選択されることを特徴とする、項目1〜5に従う化合物。
【0102】
7.Bがアデニン、シトシンまたはグアニンである場合、その保護基はフェノキシアセチル−、4−tert−ブチル−フェノキシアセチル−、4−イソプロピル−フェノキシアセチル−またはジメチルホルムアミジノ残基であり、Bがアデニンである場合、その保護基はベンゾイル−またはp−ニトロ−フェニル−エトキシ−カルボニル−(NPEOC)残基であり、Bがグアニンである場合、その保護基はイソブチロイル−、p−ニトロフェニルエチル(p−NPE)またはPEOC残基であり、Bがシトシンである場合、その保護基はベンゾイル−、イソブチリル−、またはPEOC残基であることを特徴とする、項目1〜6に従う化合物。
【0103】
8.R7が天然アミノ酸であることを特徴とする、項目1〜4に従う化合物。
9.マスクレスフォトリソグラフィーを用いる光活性化保護基としての、項目1〜8に従う化合物の使用。
【0104】
10.マスクレスフォトリソグラフィーに基づくDNAアレイ合成のための、3’−OH末端または5’−OH末端におけるヌクレオシド誘導体中の中間的または永久的OH保護基としての、項目7に従う化合物の使用。
【0105】
11.マスクレスフォトリソグラフィーに基づくペプチドアレイ合成のための、アミノ酸中のNH保護基としての、項目8に従う化合物の使用。
12.マスクレスフォトリソグラフィーに基づくペプチドアレイ合成のための、アミノ酸中のCOOH保護基としての、項目8に従う化合物の使用。
【0106】
13.マスクレスフォトリソグラフィーに基づく炭水化物の合成のための、OH保護基としての、項目8に従う化合物の使用。
14.直交保護基戦略のための、SH保護基としての、項目8に従う化合物の使用。
【0107】
15.374〜405nmの、好ましくは390nmの波長を有する光がマスクレスフォトリソグラフィーのために用いられることを特徴とする、項目8〜13に従う化合物の使用。
【0108】
16.以下の工程:
a)出発物質としてのp−ジエチルベンゼンの提供
b)フェニル環の臭素化
c)得られた化合物の硝酸および硫酸中でのその臭素に対するパラ位におけるニトロ化
d)精製および結晶化
e)その化合物のベンジル位におけるヒドロキシメチル化
f)チオフェノールを用いるその芳香族臭素基のアリールスルフィドへの変換
g)精製
h)アルコールのクロロカーボネートへの変換
i)そのクロロカーボネートのヌクレオシドとの反応およびそのヌクレオシドのホスファイト化剤との反応、または
そのクロロカーボネートのアミノ酸誘導体との反応;
を含む、項目1〜8の1項に従うジアリールスルフィド骨格を含有する光解離性保護基を調製するための方法。
【0109】
17.R1がフェニル基、tert−ブチル−フェニル基、1−もしくは2−ナフチル基または2−ピリジル基であることを特徴とする、項目16に従う方法。
18.Aが−CH(CH)−CH−であることを特徴とする、項目16または17に従う方法。
【0110】
19.R3がHまたはエチル基であることを特徴とする、項目16〜18に従う方法。
本開示はさらに、フォトリソグラフィーに基づくオリゴヌクレオチドおよびペプチド合成のために用いることができる、次の構造を有するジアリールスルフィド発色団を含有するPLPGに関し:
【0111】
【化18】
【0112】
ここでYはSまたはOであり、そして
Aは−CH2−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−CH(CH)−CH−、−CH2−CH(アルキル(Alky)、アリール)−および−CH(CH3)−CH(アルキル、アリール)−からなる群から選択され、
R1は未置換または置換されたアリールもしくはヘテロアリール基または縮合したアリールもしくはヘテロアリール基であり、R3はH、メチル基またはエチル基であり、そして
ここでR2はHであり、ホスホラミダイト、H−ホスホネートもしくはホスフェートトリエステルを形成しており、または
ここでR2は
【0113】
【化19】
【0114】
であり、またはここでR2は
【0115】
【化20】
【0116】
であり、ここでR4はH、アルキル基、アリール基であり、もしくはOR4はホスホラミダイト、H−ホスホネートもしくはホスフェートトリエステルを形成しており、そして
ここでR5はH、OH、ハロゲンもしくはXR6であり、ここでXはOもしくはSであり、R6はアルキル基、アリール基であり、もしくはOR6はホスホラミダイト基、ホスホジエステル、ホスホトリエステルもしくはH−ホスホネートもしくはアセタールもしくはシリコン部分を形成しており、そして
ここでBはアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、ヒポキサンチン−9−イル、5−メチルシトシニル−1−イル、5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸−1−イルもしくは5−アミノ−4−イミダゾールカルボン酸アミド−3−イルからなる群から選択され、ここでBがアデニン、シトシンもしくはグアニンである場合、その第1級アミノ基は場合により保護基を有し、もしくはBがチミンもしくはウラシルである場合、O4位において場合により保護基があり、
またはここでR2は
【0117】
【化21】
【0118】
であり、ここでR7は式Ibに対してウレタン結合を形成している天然アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはアミノ酸誘導体であり、それにはα−もしくはβ−アミノ酸が含まれるがそれらに限定されず、
もしくはここで式IVは式Ibに対してエステル結合を形成している天然アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはアミノ酸誘導体のカルボキシ官能基を表し、それにはα−もしくはβ−アミノ酸が含まれるが、それらに限定されない。
【0119】
別の態様において、R1がフェニル基、tert−ブチル−フェニル基、1−もしくは2−ナフチル基、アミノフェニル基、N−アルキルアミノフェニル基、N−アシルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、フェニルカルボン酸エステル、アミドまたは2−もしくは4−ピリジル基であり、Aが−CH(CH)−CH−であり、R2がホスホラミダイトまたは−P(OCHCHCN)(N−iPr)であり、R3がHまたはエチル基であり、R4がHかつR5がHであり、R4がHかつR5がOHまたはOSi(Alkyl3)であることを特徴とする、式Ibに従う化合物が用いられる。
【0120】
別の態様において、Bがアデニン、シトシン、グアニン、チミン、5−メチルシトシンまたはウラシルからなる群から選択されることを特徴とする、式Ibに従う化合物が用いられる。
【0121】
別の態様において、Bがアデニン、シトシンまたはグアニンである場合、その保護基はフェノキシアセチル−、4−tert−ブチル−フェノキシアセチル−、4−イソプロピル−フェノキシアセチル−またはジメチルホルムアミジノ残基であり、Bがアデニンである場合、その保護基はベンゾイル残基であり、Bがグアニンである場合、その保護基はイソブチロイル残基であり、Bがシトシンである場合、その保護基はベンゾイル−−またはイソブチロイル残基であることを特徴とする、式Ibに従う化合物が用いられる。
【0122】
別の態様において、R7が天然アミノ酸であることを特徴とする、式Ibに従う化合物が用いられる。
本開示はさらに、式Ibに従う化合物のマスクレスフォトリソグラフィーを用いる光活性化保護基としての使用に関する。本開示の1態様において、合成プロセスの間に曝露した領域中のヌクレオチドおよびアミノ酸をそれぞれ脱保護するために、マイクロミラー装置を用いてそのオリゴヌクレオチドおよびペプチドマイクロアレイの可視光への空間的選択的曝露を実施する。ヌクレオチドおよびアミノ酸それぞれの脱保護はそれぞれの次のヌクレオチドまたはアミノ酸のための次の連結部位の解放につながる。その特定の領域内の解放された連結部位に連結されるべき次のヌクレオチドまたはアミノ酸は、そのアレイ上に注がれる溶媒プラス活性化試薬中にそれを提供することにより簡単に付加される。この戦略を、望まれる長さおよび設計のオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドそれぞれが得られるまで繰り返す。この戦略を用いることにより、cmあたり少なくとも10000個、好ましくは100000〜500000個の特徴の高度に密集したマイクロアレイを製造することが可能である。
【0123】
本開示に従うPLPGは375nmから420nmまでの範囲の、好ましくは390nmから405nmまでの範囲の可視光を用いることにより除去することができる。脱保護に関してより好ましいのは、390nmおよび404nmそれぞれの波長である。両方の波長は、おおよそ365nmにおける近紫外範囲での脱保護を実施するのに必要な光源と比較してはるかに安上がりである光源を用いて生成することができる。好ましくは、375nmから420nmまでの範囲内の、好ましくは390nmおよび404nmの固体レーザーを、本開示に従うPLPGを除去するための光源として用いる。より好ましくは、375nmから420nmまでの範囲内の、好ましくは390nmおよび404nmの十分な放射を有するLED(発光ダイオード)を、本開示に従うPLPGを除去するための光源として用いる。特にLEDは、それらが例えばブルーレイプレーヤーにおける使用のために大量生産されているため、低費用な製品である。
【0124】
さらなる態様において、マイクロミラー装置が用いられ、それは375nm〜420nmの範囲の、好ましくは390nm〜410nmの範囲の、より好ましくは390nmおよび404nmそれぞれにおける可視光の使用に関して最適化されている。さらなる態様において、そのマイクロミラー装置のコーティングは可視光で用いられるためにその装置上に残っている。紫外または近紫外光に関して用いられる装置はその目的に関して最適化されていなければならず、すなわちそのマイクロミラー素子上のコーティングは研磨により除去されなければならない。
【0125】
別の態様において、LCDディスプレーまたはビームスプリッターを光源および合成領域の間の事実上のマスクとして用いることができる。
オリゴヌクレオチドおよびペプチドのフォトリソグラフィーでの合成はそれぞれ支持体、好ましくは固体支持体上で実施することができる。その支持体は、そのような目的のために用いられる当業者に既知のあらゆる物質で作られていることができ、好ましくはその支持体はプラスチック、シリコン、ダイヤモンド炭素またはガラスで作られている。より好ましくは、プラスチックまたはガラスが支持体として用いられ、材料としてさらにもっと好ましいのは光学グレードのポリオレフィンまたは光学グレードの顕微鏡スライドガラスである。その支持体は、あらゆる形態、例えばビーズ、ゲル、プレート、膜、スライドまたは好ましくはチップで提供され得る。その支持体は透明または不透明であることができ、好ましくはその支持体は375nm〜410nmの波長において少なくとも30%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも90%の光透過を示す。
【0126】
本開示に従うPLPGは、保護されたヌクレオシドまたはヌクレオチドが必要である、当業者に既知のオリゴヌクレオチド合成のためのあらゆるプロセスにおいて用いることができる。好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPG−ヌクレオチドは溶液中でのオリゴヌクレオチドの合成のために用いることができ、より好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPG−ヌクレオチドは固体支持体上でのオリゴヌクレオチドの合成のために用いることができる。その合成は、現状技術において既知のあらゆる標準的な方法により実施することができる。より好ましくは、その合成はフォトリソグラフィー技法、例えば上記で説明したようなマイクロアレイ上の空間的に選択された特徴に光を当てるためにマイクロミラー装置を用いるマスクレス技法を用いることにより実施することができる。
【0127】
当業者に既知の溶媒、例えばアセトニトリルをオリゴヌクレオチド合成の間に用いることができる。
オリゴヌクレオチド合成のためのヌクレオシドまたはヌクレオチドに結合したPLPGは、1mmol/L〜100mmol/Lの溶媒中の濃度で用いることができる。好ましくは、10mmol/L〜40mmol/Lの濃度で用いることができる。より好ましくは、そのPLPG−ヌクレオチドは25mmol/Lの濃度で用いることができる。
【0128】
そのヌクレオシドまたはヌクレオチドに結合したPLPGは、当業者に既知の増感剤と関連して用いることができ、それはその脱保護反応の有効性を増大させる。特に、ベンゾフェノン、キサントンおよびチオキサントン誘導体、例えばチオキサンテン−9−オン、アルキルチオキサンテン−9−オン、例えばイソプロピルチオキサンテン−9−オン、2−エチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロ−チオキサンテン−9−オン、1,4−ジメトキシチオキサンテン−9−オンを増感剤として用いることができる。
【0129】
オリゴヌクレオチドマイクロアレイは、配列捕捉、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、CHIP−チップ分析、DNAメチル化分析、遺伝子発現分析および比較ゲノム配列決定が含まれるがそれらに限定されない様々な目的のために用いることができる。
【0130】
別の態様において、式Ibに従う化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づくDNAアレイ合成において、炭素エステル(carbon ester)として、3’−OH末端または5’−OH末端におけるヌクレオシド誘導体中の中間的または永久的OH保護基として用いられ、ここでその合成は3’−5’方向で、または5’−3’方向で実施することができる。
【0131】
そのPLPGが5’末端に位置する場合、そのヌクレオチドはホスホラミダイト基をその3’末端上に有し、それは固体支持体上の遊離の−OH基と反応して安定な伸長されたオリゴヌクレオチドを形成することができる。全てのオリゴヌクレオチドが合成された後、全てのPLPGは除去され、その固体支持体上にまだ結合しているオリゴヌクレオチドは遊離の5’−OHを有する。
【0132】
しかし、そのPLPGが3’末端に位置する場合、そのヌクレオチドはホスホラミダイト基をその5’末端上に有し、それは固体支持体上のあらゆる遊離の−OH基と反応して安定な伸長されたオリゴヌクレオチドを形成することができる。全てのオリゴヌクレオチドが合成された後、全てのPLPGは除去され、その固体支持体上にまだ結合しているオリゴヌクレオチドは遊離の3’−OHを有する。
【0133】
両方のタイプの固定化がハイブリダイゼーションに基づくアッセイを可能にするが、遊離の3’−OHを提示するオリゴヌクレオチドのみを、検出、標識、キャップ形成またはライゲーションもしくは酵素的重合による伸長のための酵素反応のために用いることができる。
【0134】
本開示に従うPLPGは、さらに、保護されたアミノ酸が必要である当業者に既知のあらゆるペプチド合成のためのプロセスにおいて用いることができる。用いられるアミノ酸は非天然アミノ酸、アミノ酸誘導体および好ましくは天然アミノ酸であることができる。好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPGは溶液中でのオリゴペプチドの合成のために用いることができ、より好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPGは固体支持体上でのオリゴペプチドの合成のために用いることができる。その合成は、現状技術において既知のあらゆる標準的な方法により実施することができる。より好ましくは、その合成はフォトリソグラフィー技法、例えば上記で説明したようなマイクロアレイ上の空間的に選択された特徴に可視光を当てるためにマイクロミラー装置を用いる技法により実施することができる。
【0135】
その脱保護反応はそのペプチド合成プロセスの間に用いられる溶媒に依存することが示されている。当業者に既知の溶媒をペプチド合成の間に用いることができる。好ましくは、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリル(MeCN)またはイソプロパノールのような極性溶媒を用いることができる。前記の溶媒は、特定の添加剤、好ましくはイミダゾール、ヒドロキシルアミンおよび水を含有することができる。イミダゾールは0.1%〜3%(v/v)、好ましくは0.5%〜1.5%(v/v)の濃度で添加することができ、より好ましくはイミダゾールは1%(v/v)の濃度で添加することができる。ヒドロキシルアミンは0.1%〜3%(v/v)、好ましくは0.2%〜1%(v/v)の濃度で添加することができ、より好ましくはヒドロキシルアミンは1%(v/v)の濃度で添加することができる。水は0.1%〜20%(v/v)、好ましくは1%〜17%(v/v)の濃度で添加することができ、より好ましくは水は1%(v/v)の濃度で添加することができる。溶媒として最も好ましいのはDMSO、DMSO+1%イミダゾール、NMP+0.5%ヒドロキシルアミン、MeCN+1%HO、MeCN+1%HO+1%イミダゾール、イソプロパノール+1%イミダゾール、イソプロパノール+12%HO+1%イミダゾールである。
【0136】
ペプチド合成のためのアミノ酸に結合したPLPGは、0.1mmol/L〜0.5mmol/Lの溶媒中の濃度で用いることができる。好ましくは、0.2mmol/L〜0.4mmol/Lの濃度で用いることができる。より好ましくは、そのPLPGは0.3mmol/Lの濃度で用いることができる。
【0137】
そのアミノ酸に結合したPLPGは、当業者に既知の増感剤と関連して用いることができ、それはその脱保護反応の有効性を増大させる。
オリゴペプチドマイクロアレイは、抗体ライブラリーのスクリーニング、生物学的試料の定量または定性分析、バイオマーカーの発見、稀なタンパク質の濃縮(enrichment)、非常に豊富なタンパク質の枯渇、タンパク質間相互作用の分析、DNA−タンパク質相互作用またはRNA−タンパク質相互作用の分析が含まれるがそれらに限定されない様々な目的のために用いることができる。
【0138】
別の態様において、式Ibに従う化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づくペプチドアレイ合成のために、ウレタンとしてのアミノ酸中のNH保護基として用いられる。そのPLPGは、NHをブロッキングされた(NH−blocked)遊離酸、活性化されたエステル、酸ハロゲン化物、無水物(分子間またはN−カルボキシ−無水物(NCA)として分子内)として用いられる。
【0139】
別の態様において、式Ibに従う化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づくペプチドアレイ合成のために、逆方向の合成のためのエステルとしてのアミノ酸中のCOOH保護基として用いられる。
【0140】
本開示に従うPLPGは、さらに、保護された糖類が必要である当業者に既知のあらゆるプロセスにおいて用いることができる。用いられる糖類は、アルドヘキソースおよびアルドペントースのような化合物であることができる。好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPGは溶液中での炭水化物、糖タンパク質およびプロテオグリカン類の合成のために用いることができ、より好ましくは、本明細書で記述されるようなPLPGは固体支持体上での炭水化物、糖タンパク質およびプロテオグリカン類の合成のために用いることができる。その合成は、現状技術において既知のあらゆる標準的な方法により実施することができる。より好ましくは、その合成はフォトリソグラフィー技法、例えば上記で説明したようなマイクロアレイ上の空間的に選択された特徴に可視光を当てるためにマイクロミラー装置を用いる技法により実施することができる。
【0141】
炭水化物マイクロアレイは、糖類−タンパク質相互作用の分析、タンパク質および細胞の高スループット分析、グリカン類およびそれらの分子相互作用の分析が含まれるがそれらに限定されない様々な目的のために用いることができる。
【0142】
別の態様において、式Ibに従う化合物は、マスクレスフォトリソグラフィーに基づく炭水化物、糖タンパク質、プロテオグリカン類等の合成のために、エーテルとしてのOH保護基として用いられる。
【0143】
別の態様において、式Ibに従う化合物は、エーテル、エステルまたはチオカーボネートとしての直交戦略のためのSH保護基として用いられる。
別の態様において、式Ibに従う化合物は、生物学的に活性な構造をポリメラーゼ反応またはATP依存性の生化学的変換の開始のために解放するための光活性化保護基として用いられる。
【0144】
本開示はさらに、マスクレスフォトリソグラフィーのために375nm〜405nmの、好ましくは390の波長を有する光が用いられることを特徴とする、式Ibに従う化合物の使用に関する。
【0145】
本開示はさらに、フォトリソグラフィーに基づくオリゴヌクレオチドおよびペプチド合成のために用いることができるジアリールスルフィド骨格を含有するPLPGを生成するための方法に関し、ここでその方法は以下の工程を含む:
a)出発物質としてp−ジエチルベンゼンを提供する。
【0146】
b)分子臭素の作用によるフェニル環の1つの位置における臭素化、および蒸留による精製。
c)得られた化合物の硝酸および硫酸中でのその臭素に対するパラ位におけるニトロ化、ならびにシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーおよび結晶化による単離および精製。
【0147】
d)DMSOおよびトリトンB中でのパラホルムアルデヒドの作用による、ベンジル位におけるその化合物のヒドロキシメチル化。
e)DMF中での適切なチオフェノール、チオナフトール等、炭酸カリウムおよび触媒量の銅(II)塩の作用による、その芳香族臭素基のアリールスルフィドへの変換、ならびにシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによる精製。
【0148】
f)THFおよびトリエチルアミン中でのトリホスゲン(triphosgen)の作用による、前のアルコールのクロロカーボネートへの変換。
g)そのクロロカーボネートの適切なヌクレオシドとの反応、そしてさらにそのヌクレオシドをホスファイト化剤と反応させて適切なホスホラミダイトにする、または
そのクロロカーボネートの適切なアミノ酸誘導体との反応。
【実施例】
【0149】
実施例1:
390nmおよび404nmの波長における、溶媒に依存する5PyS4EtNPPOC−チミジンの半減期の評価
PLPGの半減期を評価するため、5PyS4EtNPPOC−チミジンを図1および2において示した溶媒中でc=0.3mmol/Lの濃度で溶解させた。溶媒として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリル(MeCN)およびイソプロパノールを用いた。イミダゾール、ヒドロキシルアミンまたは水を、その表において示したようにその溶媒に添加した。390nmの照射波長の場合(図1)、光曝露をそれぞれ2、4、6秒間または2、4、6、8秒間または2、4、6、8、12秒間実施して、スレオニンの脱保護を誘導した。404nmの照射波長の場合(図2)、光曝露をそれぞれ1、2、3、4分間または1、2、3、5分間実施して、チミジンの脱保護を誘導した。続いて、保護されたチミジンの初期量の50%を脱保護するために必要な期間を評価するために、その溶液をHPLCにより分析した。次いでその半減期を、その曝露時間の結果もたらされる期間から外挿した。図1および2から理解することができるように、390nmの波長の場合、最も速い脱保護はDMSO(2.1秒)、NMP+0.5%ヒドロキシルアミン(1.8秒)、MeCN+1% HO(2.0秒)およびイソプロパノール+12% HO+1%イミダゾール(2.2秒)で達成された。404nmの波長の場合、最も速い脱保護はDMSO+1%イミダゾール(2.5分)、NMP+0.5%ヒドロキシルアミン(1.8分)、MeCN+1% HO+1%イミダゾール(2.6分)およびイソプロパノール+12% HO+1%イミダゾール(3.8分)で達成された。390nm(数秒)および404nm(数分)の間の著しい時間の差に関して、前者の場合ランプの電力出力が15Wであり、一方で後者の場合ランプの電力出力が0.08Wであったことを考慮しなければならない。
【0150】
実施例2:
PLPGの紫外吸収特性
一般的に用いられる波長における様々なPLPGに関する紫外吸収を図3において示す。本発明に従うPLPGを有するフェニルアラニンの適切な誘導体を、UVグレードのメタノール中で1mg/mLの濃度で溶解させた。紫外スペクトルを走査光度計で記録し、所与の波長において吸収値を得た。モル吸光係数を分子量からランベルト・ベールの法則を用いて計算した。あらゆるPLPGの脱保護速度は、おおよそ三重項(triplett)量子収率×モル吸光係数の積である。従って、PhS−フェニルアラニンは390nmの照射波長においてBTA−フェニルアラニンよりも15倍効率的に脱保護され、NPPOC−フェニルアラニンよりも約25倍効率的に脱保護されると概算することができる。
【0151】
実施例3:
ジスルフィド−PLPG−アミノ酸を用いた、抗V5抗体の標的配列を含有するペプチドアレイの合成
標的エピトープ:(H)G K P I P N P L L G L D S T−(OH)
アレイ上のペプチド特徴を、Roche Nimblegenマスクレスアレイ合成装置上で、図8における合成スキームに従って、次の光量(light dose)で、変動する密度のパターンで合成した:
アレイ1:190mW/平方cm[365nm]で2.5秒間の照射
アレイ2:190mW/平方cm[365nm]で3.5秒間の照射
アレイ3:190mW/平方cm[365nm]で4.5秒間の照射
曝露はNMP/ヒドロキシルアミン(1%)中で行われた。このランプ強度でのNPPOCアミノ酸に関する標準的な照射時間は50秒であったであろう。そのアレイの全ての特徴は、同じV−5抗原配列を含有していた。カップリングは標準的な条件下(ペプチドグレードのDMF中の30mMアミノ酸、30mM活性化剤(HBTUおよびHOBT)および60mMヒューニッヒ塩基)であり、順次Greiner 3D−アミノ官能基化スライドガラスとカップリングさせた。サイクル間ならびにカップリングおよび照射の間の洗浄は、NMPを用いた。そのアレイの最後の脱保護は、トリフルオロ酢酸、水、トリイソプロピルシラン 97.5:2:0.5中に1時間浸すことにより達成された。水で完全に洗浄した後、そのアレイを、製造業者が推奨する緩衝系中で1:10000希釈(0.1μg/mL)したSigmaから得た(Cy−3蛍光色素で標識された)抗V5抗体と共に、室温で一夜保温した。緩衝液での洗浄および乾燥の後、そのアレイを、Roche Nimblegen MS 200蛍光走査装置において、適切なフィルター設定で、2μmの分解能で走査した。画像をNimblescanおよびGenepix(Molecular Dynamics)ソフトウェアパッケージで分析した。
【0152】
その結果は、図8bにおいて示したように、その3通りの光量(doses)にわたって優秀なシグナル強度を示し、それは500mWs未満での完全な光脱保護を示し、一方でNPPOC−アミノ酸は同じ結果を達成するのに約10,000mWsを必要とするであろう。
【0153】
加えて、同じ実験を、Roche Nimblegenマスクレスアレイ合成装置上で、図8aにおける合成スキームに従って、次の光量で実施した:
領域1〜30:90mW/平方cm[390nm]で1〜30秒間の照射
保温、染色および洗浄は上記で言及した通りに行った。
【0154】
その結果は、図8cにおいて示したように、390nmでの約21秒間の照射において最大値を有する優秀なシグナル強度を示し、それは2,000mWs未満での完全な光脱保護を示し、一方でNPPOC−アミノ酸は390nmでは不十分に脱保護され、作製したペプチドに起因すると考えられるシグナルを与えない。
【0155】
実施例4:
ジスルフィド−PLPG−アミノ酸の合成
合成経路を下記で示すようにそれぞれの図において示す。
【0156】
フェニル−チオ−NPPOC−アミノ酸の一般式
【0157】
【化22】
【0158】
a)2−(2−ニトロ−4−エチル−5−チオフェニル−フェニル)プロパノール(“PhSNPPOH”)
1,4-ジエチルベンゼン 1902.6 g 14.18 mol 1等量
臭素 2288 g 14.32 mol 1.01等量
鉄(粉末) 26 g
対応する合成経路を図4aにおいて示す。数滴の臭素を1902.6gの1,4−ジエチルベンゼンおよび26gの鉄粉の混合物に添加する。その混合物を周囲温度でHBrの放出が開始するまで撹拌する。次いでその混合物を氷浴中で冷却し、さらに2288gの臭素を強い撹拌の下でおおよそ5時間の期間をかけて添加する。次いで氷浴を取り外し、その混合物を周囲温度で一夜撹拌する。その反応混合物を水、飽和NaHCO溶液で、そして再度水で洗浄する。その粗生成物をトルエンで希釈し、真空中で濃縮および蒸留する(おおよそ5mbar/82〜84℃)。
【0159】
2740gの2,5−ジエチル−ブロモベンゼン(無色の液体)が得られる(収率:理論値の90%)
1H-NMR (300MHz, DMSO):
7.37 ppm (d, 1H, Ar-H); 7.20 ppm (d, 1H, Ar-H); 7.12 ppm (dd, 1H, Ar-H); 2.65 ppm (q, 2H, Ar-CH2-CH3); 2.56 ppm (q, 2H, Ar-CH2-CH3), 1.20-1.15 ppm (m, 6H, 2x CH3)。
【0160】
b)2,5−ジエチル−4−ニトロ−ブロモベンゼン
2,5-ジエチル-ブロモベンゼン 426 g 2 mol
HNO3(65%) 202 ml
濃H2SO4 241 ml
対応する合成経路を図4bにおいて示す。氷冷下で241mLの濃HSOを202mLのHNO(65%)にゆっくりと添加する。氷冷および強い撹拌の下で、この混合物を426gの2,5−ジエチル−ブロモベンゼンの中にゆっくりと滴下する(添加時間:2時間)。その反応混合物を周囲温度で一夜撹拌する。次いでその混合物を氷上に注ぎ、ジクロロメタンで希釈し、水で2回洗浄し、最後に飽和NaHCO溶液で洗浄する。その有機相をトルエンで希釈し、真空中で濃縮し、速い濾過(シリカゲル、移動相イソヘキサン)により精製する。
【0161】
217gのわずかに黄色の油が得られる(収率:理論値の42%)。
1H-NMR (300MHz, DMSO):
7.74 ppm (s, 2H, Ar-H); 4.72 ppm (t, 1H, OH); 3.54-3.48 ppm (m, 2H, HO-CH2), 3.26-3.14 ppm (m, 1H, HO-CH2-CH); 2.74 ppm (q, 2H, Ar-CH2-CH3); 1.25-1.15 ppm (m, 6H, 2x CH3)。
【0162】
c)2−(2−ニトロ−4−エチル−5−ブロモフェニル)プロパン−1−オール(“BrEtNPPOH”)
2,5-ジエチル-4-ニトロ-ブロモベンゼン 1000 g 3.87 mol 1等量
パラホルムアルデヒド 418.8 g 4.65 mol 1.2等量
トリトンB (メタノール中40%) 1090 ml
DMSO 5.2 l
酢酸 400 ml
対応する合成経路を図4cにおいて示す。1000gの2,5−ジエチル−4−ニトロ−ブロモベンゼン、418.8gのパラホルムアルデヒド、1090mLのトリトンB(メタノール中40%)および5.2LのDMSOの混合物を、80〜90℃で2時間加熱する。加熱のスイッチを切り、その混合物をさらに4時間撹拌する。400mLの酢酸を添加する。その混合物を水でおおよそ15Lの量まで希釈し、2Lのトルエンで2回抽出する。そのトルエン抽出物を1Lの水で2回洗浄し、次いで真空中で濃縮する。その粗生成物をクロマトグラフィー(シリカゲル、勾配:イソヘキサン〜イソヘキサン/EtOAc 30%)により精製する。
【0163】
収量:521gの2−(2−ニトロ−4−エチル−5−ブロモフェニル)プロパン−1−オールが褐色の油として得られ(理論値の46%)、加えてより低い純度のものが77g得られた。
【0164】
1H-NMR (300MHz, DMSO):
7.74 ppm (s, 2H, Ar-H); 4.72 ppm (t, 1H, OH); 3.54-3.48 ppm (m, 2H, HO-CH2), 3.26-3.14 ppm (m, 1H, HO-CH2-CH); 2.74ppm (q, 2H, Ar-CH2-CH3); 1.25-1.15 ppm (m, 6H, 2x CH3)。
【0165】
d)2−(2−ニトロ−4−エチル−5−チオフェニルフェニル)プロパノール(PhSNPPOH)
BrEtNPPOH 450 g 1.56 mol 1等量
チオフェノール 172 g 156 mol 1等量
K2CO3 324 g 2.34 mol 1.5等量
DMF 2 L
対応する合成経路を図4dにおいて示す。反応物およびDMFの混合物を、140〜160℃で5時間撹拌した。110に冷却した後、溶媒を真空下での蒸留により除去した。残留物をおおよそ2.5Lの水で処理し、おおよそ1Lのジクロロメタンで抽出した。その有機相を希NaOHおよび水で洗浄し、次いで真空中で蒸発させて乾燥させ、さらに共沸性トルエン/エタノール混合物で蒸留し、シリカゲル上でのヘキサン類中5〜30%酢酸エチル中でのカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0166】
収量:352gの透明な黄色の油(71%)。
e)2−(2−ニトロ−4−エチル−5−チオフェニルフェニル)プロパノール クロロカーボネート(“PhSNPPOC−Cl”)
PhSNPPOH 352 g 1.11 mol 1等量
トリエチルアミン 112.2 g 1.11 mol 1等量
トリホスゲン 219.4 g 2.22 mol ホスゲン 2等量
THF 約1.7 L
対応する合成経路を図4eにおいて示す。219.4gのトリホスゲンを1Lの乾燥THF中で30分間の撹拌の下で溶解させた。氷冷下で、700mLの乾燥THF中の352gのPhSNPPOHおよび112.2gのNEtを3時間の期間をかけてゆっくりと添加した。一夜静置した後、氷浴を40℃の水浴と取り替え、過剰なホスゲンおよび約1LのTHFを真空中で除去した。その懸濁液を濾過し、残留物を少量のTHFで洗浄し、濾液を真空中で蒸発させて乾燥させた。
【0167】
収量:410.3gの黄色の結晶(97%)
その物質は精製しないでもさらなる使用に関して純粋である。
f)PhSNPPOC−グリシン−OH
グリシン 5.81 g 0.0774 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 29.4 g 0.0774 mol 1等量
Na2CO3 18.1 g 0.1703 mol 2.2等量
水 190 mL
THF 150 mL
対応する合成経路を図4fにおいて示す。5.81gのグリシンおよび18.1gのNaCOを190mLの水および60mLのTHF中で溶解させる。その溶液を氷浴中で撹拌し、29.4gのPhSNPPOC−Clの90mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させ、その溶液をpH11に調節する。その溶液をおおよそ500mLのヘキサン/酢酸エチル 1:1で2回抽出し、pHを希HClで2.5に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン中メタノール(0〜3%)を用いて精製する。
【0168】
収量:21gの淡黄色の非晶質の泡状物質(65%)。
g)PhSNPPOC−プロリン−OH
プロリン 8.6 g 0.075 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 28.5 g 0.075 mol 1等量
Na2CO3 17.5 g 0.165 mol 2.2等量
水 1000 ml
THF 1200 ml
対応する合成経路を図4gにおいて示す。8.6gのプロリンおよび17.5gのNaCOを1000mLの水および1000mLのTHF中で溶解させる。その溶液を氷浴中で撹拌し、28.5gのPhSNPPOC−Clの200mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させ、その溶液をpH11に調節する。その溶液をおおよそ500mLの酢酸エチルで2回抽出し、pHを希HClで2.5に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン中メタノール(0〜2%)を用いて精製する。
【0169】
収量:21.7gの淡黄色の非晶質の泡状物質(63%)。
h)PhSNPPOC−イソロイシン−OH
イソロイシン 9.97 g 0.076 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 28.9 g 0.076 mol 1等量
Na2CO3 26.8 g 0.25 mol 3.3等量
水 300 ml
THF 300 ml
対応する合成経路を図4hにおいて示す。9.97gのイソロイシンおよび26.8gのNaCOを300mLの水および200mLのTHF中で溶解させる。その溶液を氷浴中で撹拌し、28.9gのPhSNPPOC−Clの90mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させ、その溶液のpHを9.5に調節する。
【0170】
その溶液をおおよそ500mLのヘキサン/酢酸エチル 1:1で2回抽出し、pHを希HClで3.2に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン中メタノール(0〜2%)を用いて精製する。
【0171】
収量:15gの淡黄色の油(42%)。
i)PhSNPPOC−アスパラギン酸−OH
アスパルテート 10.5 g 0.0789 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 30.0 g 0.0789 mol 1等量
Na2CO3 23.0 g 0.22 mol 2.8等量
水 1000 ml
THF 1200 ml
対応する合成経路を図4iにおいて示す。10.5gのアスパルテートおよび23gのNaCOを1000mLの水および1000mLのTHF中で溶解させる。その溶液を氷浴中で撹拌し、30gのPhSNPPOC−Clの200mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させた。その溶液をおおよそ500mLのヘキサン/酢酸エチル 1:1で2回抽出し、pHを希HClで2に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン中メタノール(0〜2%)を用いて精製する。
【0172】
収量:28gの淡黄色の非晶質の泡状物質(74%)。
j)PhSNPPOC−アスパラギン−OH
アスパラギン 12.7 g 0.0848 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 32.2 g 0.0848 mol 1等量
Na2CO3 19.8 g 0.1866 mol 2.2等量
水 1000 ml
THF 1200 ml
対応する合成経路を図4jにおいて示す。12.7gのアスパラギンおよび19.8gのNaCOを1000mLの水および1000mLのTHF中で溶解させる。その溶液を氷浴中で撹拌し、32.2gのPhSNPPOC−Clの200mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させた。その溶液をおおよそ500mLのエーテルで2回抽出し、pHを希HClで2に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、酢酸エチルからの結晶化により精製する。
【0173】
収量:28gの淡黄色の結晶(73%)。
k)PhSNPPOC−ロイシン−OH
ロイシン 12.1 g 0.092 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 35.0 g 0.092 mol 1等量
Na2CO3 21.5 g 0.202 mol 2.2等量
水 250 ml
THF 250 ml
対応する合成経路を図4kにおいて示す。12.1gのロイシンおよび21.5gのNaCOを250mLの水および200mLのTHF中で溶解させる。その溶液を氷浴中で撹拌し、35gのPhSNPPOC−Clの50mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させた。その溶液をおおよそ300mLのヘキサン/酢酸エチル 1:1で2回抽出し、pHを希HClで3に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン中メタノール(0〜3%)を用いて精製する。
【0174】
収量:40gの黄色の油(91%)。
l)PhSNPPOC−C−スペーサー
6-アミノ-ヘキサン酸 3.45 g 0.0263 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 10.0 g 0.0263 mol 1等量
Na2CO3 6.1 g 0.0579 mol 2.2等量
水 300 ml
THF 200 ml
対応する合成経路を図4lにおいて示す。3.45gの6−アミノ−ヘキサン酸および6.1gのNaCOを、300mLの水および120mLのTHF中で溶解させる。その溶液を氷浴中で撹拌し、10gのPhSNPPOC−Clの80mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させた。pHを10.5に調節した。その溶液をおおよそ300mLのエーテルで2回抽出し、pHを希HClで2.3に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン中メタノール(0〜5%および酢酸0.5%)を用いて精製する。
【0175】
収量:10.4gの淡黄色の油(83%)。
m)PhSNPPOC−リシン(Boc)−OH
Fmoc-リシン(Boc)-OH 37.0 g 0.079 mol 1等量
ピペリジン 33.6 g 0.395 mol 5等量
THF 1400 ml
Na2CO3 18.4 g 0.174 mol 2.2等量
PhSNPPOC-Cl 30.0 g 0.079 mol 1等量
37.0gのFmoc−リシン(Boc)−OHを400mlのTHF中で溶解させ、33.6gのピペリジンで、機械式撹拌器のブレードによる撹拌の下で3時間処理する。その期間の後、TLCは完全なFMOCの除去を示した。水(おおよそ2L)を添加し、さらに30分間撹拌した。沈殿を吸引により濾過した。その透明な濾液に18.4gのNaCOを入れ、蒸発させて乾燥させた。繰り返し水を添加して蒸留することにより、全てのピペリジンが除去されるまで蒸発を継続した。その残留物をおおよそ1Lの水中で溶解させ、800mLのTHFで処理した。その溶液を氷浴中で撹拌し、30gのPhSNPPOC−Clの200mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させた。pHを希HClで2に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン中メタノール(0〜1%)を用いて精製する。
【0176】
収量:28.3gの淡橙色の非晶質の泡状物質(60%)。
n)PhSNPPOC−セリン(t−Bu)−OH
Fmoc-セリン(t-Bu)-OH 30.3 g 0.079 mol 1等量
ピペリジン 33.6 g 0.395 mol 5等量
THF 1600 ml
Na2CO3 18.4 g 0.174 mol 2.2等量
PhSNPPOC-Cl 30.0 g 0.079 mol 1等量
30.3gのFmoc−セリン(Boc)−OHを600mLのTHF中で溶解させ、33.6gのピペリジンで、機械式撹拌器のブレードによる撹拌の下で3時間処理する。その期間の後、TLCは完全なFMOCの除去を示した。水(おおよそ2L)を添加し、さらに60分間撹拌した。沈殿を吸引により濾過した。その透明な濾液に18.4gのNaCOを入れ、蒸発させて乾燥させた。繰り返し水を添加して蒸留することにより、全てのピペリジンが除去されるまで蒸発を継続した。その残留物をおおよそ600mLの水中で溶解させ、濾過し、800mLのTHFで処理した。その溶液を氷浴中で撹拌し、30gのPhSNPPOC−Clの200mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させた。pHを希HClで2に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン中メタノール(0〜1%)を用いて精製する。
【0177】
収量:30.9gの淡黄色の非晶質の泡状物質(77%)。
o)PhSNPPOC−スレオニン(t−Bu)−OH
Fmoc-Thr(t-Bu)-OH 31.4 g 0.079 mol 1等量
ピペリジン 33.6 g 0.395 mol 5等量
THF 1300 ml
Na2CO3 18.4 g 0.174 mol 2.2等量
PhSNPPOC-Cl 30.0 g 0.079 mol 1等量
31.4gのFmoc−Thr(t−Bu)−OHを600mLのTHF中で溶解させ、33.6gのピペリジンで、機械式撹拌器のブレードによる撹拌の下で4時間処理する。その期間の後、TLCは完全なFMOCの除去を示した。水(おおよそ3L)を添加し、さらに30分間撹拌した。沈殿を吸引により濾過した。その透明な濾液に18.4gのNaCOを入れ、蒸発させて乾燥させた。繰り返し水を添加して蒸留することにより、全てのピペリジンが除去されるまで蒸発を継続した。その残留物をおおよそ600mLの水中で溶解させ、濾過し、800mLのTHFで処理した。その溶液を氷浴中で撹拌し、30gのPhSNPPOC−Clの100mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させた。pHを希HClで2に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン中メタノール(0〜1%)を用いて精製する。
【0178】
収量:30.9gの淡黄色の非晶質の泡状物質(69%)。
p)PhSNPPOC−ヒスチジン(Trt)−OH
工程1:
Fmoc-His(Trt)-OH 100 g 0.161 mol 1等量
ピペリジン 140 g 1.614 mol 10等量
THF 2000 ml
100gのFmoc−His(Trt)−OHを2000mLのTHF中で溶解させ、140gのピペリジンで、機械式撹拌器のブレードによる撹拌の下で2時間処理する。その期間の後、TLCは完全なFMOCの除去を示した。
【0179】
水(おおよそ4L)を添加し、さらに30分間撹拌した。沈殿を吸引により濾過した。その透明な濾液を濃縮して全てのTHFを除去した。pHを希HClで2.5に調節し、その混合物を一夜撹拌した。
【0180】
濾過すると53gの無色の結晶が得られ(83%)、それを空気中で一夜乾燥させた。
工程2:
H-His(Trt)-OH 20.9 g 0.0526 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 20.0 g 0.0526 mol 1等量
Na2CO3 12.3 g 0.116 mol 2.2等量
THF 800 ml
上記からの結晶20gおよび12.3gのNaCOを、おおよそ800mLの水および700mLのTHF中で溶解させた。その溶液を氷浴中で撹拌し、20gのPhSNPPOC−Clの100mLのTHF中における溶液で1滴ずつ処理する。撹拌を20分間継続する。THFを蒸発させた。pHを希HClで1.5に調節し、おおよそ500mLの酢酸エチルで抽出する。有機相をおおよそ500mLの水で洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタンおよび酢酸(0.01%)中0〜1%メタノールを用いて精製する。
【0181】
収量:10gの淡い非晶質の泡状物質(26%)。
実施例5:
ジスルフィド−PLPG−ヌクレオチドの合成
5’−PhSNPPOC−dB−3’−PA’s
a)5’−PhSNPPOC−dT
チミジン 19.1 g 0.0789 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 30.0 g 0.0789 mol 1等量
ピリジン 300 ml
ジクロロメタン 50 ml
19.1gのチミジンの300mLの乾燥ピリジン中における溶液を、氷浴中で撹拌する。1滴ずつ、30.0gのPhSNPPOC−Clの50mLのジクロロメタン中における溶液を添加する。10分間撹拌を継続した後、その溶液を800mLの水で2回洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その残留物をトルエン/エタノールの混合物と同時蒸発させる。精製はシリカゲル上でのジクロロメタン中メタノール(0〜2.5%)中でのカラムクロマトグラフィーにより成し遂げられた。
【0182】
収量:28gの淡い黄色がかった非晶質の泡状物質(60%)。
b)5’−PhSNPPOC−dT−3’−PA
5’-PhSNPPOC-dT 27.1 g 0.0463 mol 1等量
DCI 2.7 g 0.0232 mol 0.5等量
P-試薬 13.5 g 0.0449 mol 0.97等量
ジクロロメタン 300 ml
強く乾燥させた防湿下での反応物の混合物を、室温で一夜撹拌した。ヘキサンをわずかに濁りが残るまで添加した。10分間撹拌した後、沈殿を吸引により濾過し、粗生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン中65%から80%酢酸エチルまでの勾配を用いて精製する。
【0183】
収量:29.7gの淡い黄色がかった非晶質の泡状物質(81%)
P-NMR: 144,4 (m) ppm , 純度94%。
c)5’−PhSNPPOC−dCAc
dCAc 28.3 g 0.105 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 40 g 0.105 mol 1等量
ピリジン 650 ml
ジクロロメタン 100 ml
28.3gのN−(アセチル)−2’−デオキシ−シチジンの溶液を200mLのピリジンと共に2回同時蒸発させ、250mLの乾燥ピリジン中で溶解させ、氷浴中で撹拌した。1滴ずつ、40.0gのPhSNPPOC−Clの100mLのジクロロメタン中における溶液を添加する。10分間撹拌を継続した後、その溶液を800mLの水で2回洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その残留物をトルエン/エタノールの混合物と同時蒸発させる。精製はシリカゲル上でのジクロロメタン中メタノール(0〜2.5%)中でのカラムクロマトグラフィーにより成し遂げられた。
【0184】
収量:31gの淡い黄色がかった非晶質の泡状物質(48%)。
d)5’−PhSNPPOC−dCAc−3’−PA
5’-PhSNPPOC-dCAc 29.0 g 0.0473 mol 1等量
DCI 2.8 g 0.0237 mol 0.5等量
P-試薬 13.8 g 0.0459 mol 0.97等量
ジクロロメタン 300 ml
強く乾燥させた防湿下での反応物の混合物を、室温で一夜撹拌した。ヘキサンをわずかに濁りが残るまで添加した。その粗生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン中65%から80%酢酸エチルまでの勾配を用いて精製する。
【0185】
収量:21.5gの淡い黄色がかった非晶質の泡状物質(56%)
P-NMR: 144,6 (m) ppm , 純度99%。
e)5’−PhSNPPOC−dAtac
dAtac 46.3 g 0.105 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 40 g 0.105 mol 1等量
ピリジン 650 ml
ジクロロメタン 100 ml
46.3gのN−(tert−ブチル−フェノキシアセチル)−2’−デオキシ−アデノシンの溶液を200mLのピリジンと共に2回同時蒸発させ、250mLの乾燥ピリジン中で溶解させ、氷浴中で撹拌した。1滴ずつ、40.0gのPhSNPPOC−Clの100mLのジクロロメタン中における溶液を添加する。10分間撹拌を継続した後、その溶液を800mLの炭酸水素ナトリウム溶液および水で2回洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その残留物をトルエン/エタノールの混合物と同時蒸発させる。精製はシリカゲル上でのジクロロメタン中メタノール(0〜1.5%)中でのカラムクロマトグラフィーにより成し遂げられた。
【0186】
収量:35gの淡い黄色がかった非晶質の泡状物質(42%)。
f)5’−PhSNPPOC−dAtac−3’−PA
5’-PhSNPPOC-dAtac 32.3 g 0.0412 mol 1等量
DCI 2.4 g 0.0206 mol 0.5等量
P-試薬 12.0 g 0.0399 mol 0.97等量
ジクロロメタン 300 ml
強く乾燥させた防湿下での反応物の混合物を、室温で一夜撹拌した。ヘキサンをわずかに濁りが残るまで添加した。10分間撹拌した後、その沈殿を吸引により濾過し、その粗生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン中50%から65%酢酸エチルまでの勾配を用いて精製する。
【0187】
収量:32gの淡い黄色がかった非晶質の泡状物質(79%)
P-NMR: 144,3 (m) ppm , 純度99%。
g)5’−PhSNPPOC−dGtac
dGtac 48.2 g 0.105 mol 1等量
PhSNPPOC-Cl 40 g 0.105 mol 1等量
ピリジン 800 ml
ジクロロメタン 60 ml
48.2gのN−(tert−ブチル−フェノキシアセチル)−2’−デオキシ−グアノシンの溶液を200mLのピリジンと共に2回同時蒸発させ、400mLの乾燥ピリジン中で溶解させ、氷浴中で撹拌した。1滴ずつ、40.0gのPhSNPPOC−Clの600mLのジクロロメタン中における溶液を添加する。10分間撹拌を継続した後、その溶液を800mLの水で2回洗浄し、蒸発させて乾燥させる。その残留物をトルエン/エタノールの混合物と同時蒸発させる。精製はシリカゲル上でのジクロロメタン中メタノール(0〜5%)中でのカラムクロマトグラフィーにより成し遂げられた。
【0188】
収量:35gの淡い黄色がかった非晶質の泡状物質(42%)。
h)5’−PhSNPPOC−dGtac−3’−PA
5’-PhSNPPOC-dGtac 34.0 g 0.0425 mol 1等量
DCI 2.5 g 0.0212 mol 0.5等量
P-試薬 12.4 g 0.0412 mol 0.97等量
ジクロロメタン 500 mL
強く乾燥させた防湿下での反応物の混合物を、室温で一夜撹拌した。ヘキサンをわずかに濁りが残るまで添加した。その粗生成物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン中50%から65%酢酸エチルまでの勾配を用いて精製する。
【0189】
収量:24.5gの淡い黄色がかった非晶質の泡状物質(58%)
P-NMR: 144,5 (m) ppm , 純度98%。
実施例6:
本発明に従うさらなるジアリールスルフィドPLPGの合成
a)5−(t−ブチルフェニル−チオ)−4−エチル−2−ニトロフェニル−2’−プロパン−1’−オール (t−ブチルチオ−NPPOH)
4-t-Bu-チオフェノール 25.0 g 0.150 mol 1.1等量
BrEt-NPPOH 39.0 g 0.135 mol 1等量
K2CO3 31.1 g 0.225 mol 1.7等量
DMF 200 mL
反応物の混合物を100℃で3時間撹拌した。DMFを真空中で蒸留して除いた。その残留物をジクロロメタン中で溶解させ、水で2回洗浄し、真空中で蒸発させて乾燥させた。得られた残留物をヘキサン類中で懸濁し、一夜撹拌し、吸引により濾別した。その結晶を乾燥させた。
【0190】
収量:43gの淡黄色粉末(85%)
1H-NMR (300MHz, DMSO):
7.72ppm (s, 1H, ニトロ-Ar-H); 7.50ppm (m, 2H, Ar-H t-Bu-Ph); 7.38ppm (m, 2H, Ar-H t-Bu-Ph); 6.88ppm (s, 1H, ニトロ-Ar-H); 4.67ppm (s, 1H, OH); 3.25- 3.21ppm (m, 3H, Ar-CH(Me)-CH2-OH); 2.73ppm (q, 2H, Ar-CH2-CH3); 1.29ppm (s, 9H, CH3t-Bu); 1.20ppm (t, 3H, Ar-CH2-CH3; 0.95ppm (d, 3H, Ar-CH(CH3)-CH2-OH)。
【0191】
b)ナフチル−チオ−NPPOH
BrEt-NPPOH 20.6 g 0.0715 mol 1等量
2-チオナフトール(2-Thionaphtol) 11.5 g 0.0715 mol 1等量
炭酸カリウム 14.8 g 0.107 mol 1.5等量
DMF 100 mL
反応物の混合物を1.5時間還流し、室温でさらに一夜撹拌した。その残留物を1.5Lの水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。その有機性抽出物を水で2回洗浄し、真空中で蒸発させて乾燥させ、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン中酢酸エチル(0〜30%)を用いて精製した。
【0192】
収量:9.0gの黄色の油(34%)
1H-NMR (300MHz, DMSO):
8.07ppm (m, 1H, ナフチル-H), 8.00 - 7.90ppm (m, 3H, ナフチル-H); 7.77ppm (s, 1H, ニトロ芳香族-H); 7.61-7.54ppm (m, 2H, ナフチル-H); 7.47-7.41ppm (m, 1H, ナフチル-H); 7.11ppm (s, 1H, ニトロ芳香族-H); 4.65ppm (t, 1H, OH); 3.30-3.15ppm (m, 3H, Ar-CH(CH3)-CH2-OH); 2.77ppm (q, 2H, Ar-CH2-CH3); 1.21ppm (t, 3H, Ar-CH2-CH3); 0.92ppm (d, Ar-CH(CH3)-CH2-OH)。
【0193】
c)ニトロベンズイミダゾール−S−NPPOH
BrEt-NPPOH 6.0 g 0.0208 mol 1等量
2-メルカプト-5-ニトロ-ベンズイミダゾール 4.06 g 0.0208 mol 1等量
炭酸カリウム 4.3 g 0.0312 mol 1.5等量
DMF 50 mL
反応物の混合物を3時間還流し、室温でさらに一夜撹拌した。その残留物を0.5Lの水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。その有機性抽出物を水で2回洗浄し、真空中で蒸発させて乾燥させ、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン中酢酸エチル(0〜30%)を用いて精製した。
【0194】
収量:5.8gの黄色の油(69%)
1H-NMR (300MHz, DMSO):
13.35ppm (s, 1H, NH); 8.35ppm (dd, 1H, ニトロベンズイミダゾール-H); 7.95ppm (s, 1H, ニトロ芳香族-H); 7,75ppm (s, 1H, ニトロ芳香族-H); 7.63ppm (1H, d, ニトロベンズイミダゾール-H); 4.71ppm (s, 1H, OH); 3.47ppm (d, 2H, HO-CH2); 3.19ppm (m, 1H, Ar-CH(CH3)-CH2-OH); 2.79ppm (q, 2H, Ar-CH2-CH3), 1.21-1.15ppm (m, 6H, 2 x CH3)。
【0195】
d)ピリジル−S−NPPOH
BrEt-NPPOH 133.5 g 0.463 mol 1等量
2-メルカプトピリジン 51.5 g 0.463 mol 1等量
炭酸カリウム 96.0 g 0.695 mol 1.5等量
DMF 600 mL
反応物の混合物を140℃で4時間撹拌した。DMFを真空中で蒸留して除いた。その残留物をジクロロメタン中で溶解させ、水で2回洗浄し、真空中で蒸発させると油になった。その残留物を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン中酢酸エチル(0〜30%)を用いて精製した。
【0196】
収量:87.9gの透明な黄色の油(60%)
1H-NMR (300MHz, DMSO):
8.43ppm (m,1H, Py-H); 7.82ppm (s, 1H, ニトロ芳香族-); 7.70ppm (m, 1H, Py-H); 7.65ppm (s, 1H, Py-H), 7.21ppm (m, 1H, Py-H); 4.75ppm (t, 1H, OH); 3.47ppm (t, 2H, HO-CH2); 3.20ppm (m, 1H, HO-CH2-CHCH3); 2.72ppm (q, 1H, CH2-ベンジル); 1.15 (m, 6H, 2 x CH3)。
【0197】
e)2,5−ジエチル−4−フェノキシ−ニトロベンゼン
フェノール 8.0 g 0.085 mol 1.1等量
NaH (パラフィン(Parafine)中60%) 3.4 g 0.085 mol 1.1等量
4-ブロモ-2,5-ジエチル-ニトロベンゼン(nitrobenze) 20.0 g 0.078 mol 1等量
DMF 60 ml
強い撹拌の下で、3.4gのNaH(パラフィン(parafine)中60%)を、8.0gのフェノールの60mlのDMF中における溶液に注意深く添加した。ガスの放出が終わった時に、20.0gの4−ブロモ−2,5−ジエチル−ニトロベンゼン(nitrobenze)をその混合物に添加した。その反応混合物を170℃で1.5時間撹拌した。次いでその反応混合物を周囲温度まで冷却し、600mlの水の中に注いだ。結果として得られたエマルジョンをヘキサンで抽出した。ヘキサンを蒸留して除き(distilled of)、その蒸留残留物を真空中で一夜乾燥させた。その蒸留残留物をヘキサン中で溶解させ、カラムクロマトグラフィー(シリカ/ヘキサン)により精製した。
【0198】
収量:2.2gのわずかに色のついた油
1H-NMR (DMSO):
7.96ppm (s, 1H, Ar-H); 7.48 - 7.40ppm (m, 2H, Ph-H); 7.25-7.18ppm (m, 1H, Ph-H); 7.09-7.03ppm (m, 2H, Ph-H); 6.78ppm (s, 1H, Ar-H); 2.72ppm (q, 2H, Ar-CH2-CH3); 2.68ppm (q, 2H, Ar-CH2-CH3); 1.18ppm (t, 3H, Ar-CH2-CH3); 1.07ppm (t, 3H, Ar-CH2-CH3)。
【0199】
実施例7:
R3=H[式I]であるジアリールスルフィド−PLPGの代替合成
a)3−アセトアミド−エチルベンゾール(3−Acetamido−ethylbenzol)
3-エチル-アニリン 550 g 4.54 mol
無水酢酸(Acetanhydride) 1100 mL
おおよそ4時間以内に、550gの3−エチル−アニリンを無水酢酸(acetanhydride)に添加した。その混合物を室温で一夜撹拌した(DC−対照 ヘキサン/EtOAc 1:1)。その反応混合物を真空中で蒸発させて乾燥させた。その蒸留残留物を、高真空中で蒸留した(温度:210℃、ヘッド温度(Head−Temp.):145℃)。
【0200】
収量:710gの黄色の油(96%)。
b)3−アセトアミド−6−ニトロ−エチルベンゾール
3-アセトアミド-エチルベンゾール 237.0 g 1.452 mol
濃H2SO4 622 mL
濃HNO3 91.0 g
237.0gの3−アセトアミド−エチルベンゾールを622mLの濃HSOに滴加し、ここでその混合物の温度は20℃を超えなかった。その混合物を−30℃に冷却した。続いて、91.0gの濃HNOを滴加し、ここでその混合物の内部温度は−20℃を超えなかった。その混合物を−10℃に戻し、1800gの氷の中に注いだ。その水相を分離し、2×200mLのエーテルで抽出した。3−アセトアミド−6−ニトロ−エチルベンゾールの沈殿をそのエーテル抽出物と組み合わせ、その中で溶解させた。そのエーテル溶液を100mLの水で洗浄し、蒸発させた。
【0201】
c)3−エチル−4−ニトロ−アニリニウムブロミド
3-アセトアミド-6-ニトロ-エチルベンゾール(粗生成物) おおよそ1.45 mol
臭化水素酸(48%) 400 mL
その粗生成物を400mLの臭化水素酸(48%)中で懸濁し、0.5時間加熱して沸騰させた(3−エチル−4−ニトロ−アニリニウムブロミドが結晶し始め、それは反応体積の著しい増大を伴う)。その混合物を撹拌下で室温まで冷却し、続いて氷上で5℃に冷却した。その懸濁液を吸引により除去し、200mLの冷えた臭化水素酸(48%)中で再懸濁し、再度濾過し、続いてヌッチェ(nutsch)フィルター上でおおよそ50mLの冷えた臭化水素酸(48%)を用いて洗浄した。
【0202】
収量:450gの湿った生成物。
d)3−ブロモ−6−ニトロ−エチルベンゾール
3-エチル-4-ニトロ-アニリニウムブロミド 約450 g 約1.45 mol
(粗生成物、湿っていた)
臭化水素酸(48%) 250 mL
水 400 mL
NaNO2 107.6 g
水 550 mL
前のアプローチの湿った生成物を、250mLの臭化水素酸(48%)の400mLの水中における溶液中で懸濁した。107.6gのNaNOの溶液を550mLの水に氷上で滴加し、ここでその混合物の温度は12℃を超えなかった。その混合物を0℃で30分間撹拌し、濾過した。
【0203】
ザンドマイヤー(Sandmayer)変換:
ジアゾニウム塩溶液 約1.45 mol
銅粉末 84.9 g
CuSO4x 5H2O 212.3 g
臭化水素酸(48%) 670 mL
そのジアゾニウム塩溶液を、84.9gの銅粉末、212.3gのCuSO x 5HOおよび670mLの臭化水素酸(48%)の混合物に氷上で滴加し、ここでその混合物の温度は15℃を超えなかった。その混合物を室温で一夜撹拌し、濾過し、有機相を分離した。水相をジクロロメタンで抽出した。有機相を合わせてシリカゲルの薄層の使用の下で濾過し、次いで真空中で蒸発させて乾燥させた。167.8gの粗生成物が得られた。その蒸留残留物を高真空中で蒸留した(温度:155℃、ヘッド温度(Head−Temp.):85℃)。収量:144.3g、黄色の油(4工程を経て43%)。
【0204】
e)2−(2−ニトロ−5−ブロモ−フェニル)プロパノール(2−(2−Nitro−5−brom−phenyl)propanol)
3-ブロモ-6-ニトロ-エチルベンゾール 309.6 g 1.346 mol 1等量
パラホルムアルデヒド 42.4 g 1.413 mol 1.05等量
カリウム-tert-ブチレート 37.8 g 0.337 mol 0.25等量
DMSO 900 mL
309.6gの3-ブロモ-6-ニトロ-エチルベンゾールおよび42.4gのパラホルムアルデヒドの300mLのDMSO中における溶液に、37.8gのカリウム-tert-ブチレートを少しずつ添加し、ここでその温度は40〜50℃まで上昇した。その混合物を室温で一夜撹拌した。900mLのトルオールをその混合物に添加し、3×450mLの水性NaOH(10%)で、続いて450mLの水で洗浄した。その有機相を真空中で蒸発させて乾燥させた。319gの粗生成物が得られ、次いでそれをクロマトグラフィーを用いて精製した:
カラム:700gシリカゲル、直径8.5cm、n−ヘキサンで平衡化した。その粗生成物を100mLのトルオール中で溶解させ、カラム上に装填した(loaded)。以下の勾配を用いて溶離を実施した:2.5L n−ヘキサン、
酢酸エチル/n−ヘキサン 1:100 1L
1:50 1.5L
1:20 1L
1:6 2L
1:5 1.5L
収量:236.06gの2−(2−ニトロ−5−ブロモ−フェニル)プロパノール(67%)。
【0205】
f)エチル基を有しないPhSNPPOH
Br-NPPOH 5.0 g 0.0192 mol 1等量
Ph-SH 2.3 g 0.0211 mol 1.1等量
K2CO3 4.5 g 0.0326 mol 1.7等量
DMF 50 mL
上記で列挙した構成要素の混合物を、120℃で3時間、次いで70℃で一夜混合した。その反応混合物を真空中で蒸発させて乾燥させた。ジクロロメタンをその蒸留残留物に添加し、水で、希釈した水酸化ナトリウムで、そして再度水で洗浄した。有機相を蒸発させ、クロマトグラフィーを用いて精製した(固定相:イソヘキサンで平衡化したシリカゲル;勾配:イソヘキサン/5%酢酸エチル〜イソヘキサン/20%酢酸エチル)。
【0206】
収量:2.7gの赤褐色の油(48%)。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図4-6】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図8-1】
図8-2】