(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルカリ金属炭酸塩が、炭酸ナトリウム無水物、炭酸ナトリウム一水和物及び炭酸カリウム無水物からなる群より選ばれる1種以上の炭酸塩を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体。
前記固体過酸化物100質量部に対し、前記過酸化物分解触媒を0.1〜100質量部、かつ、前記アルカリ金属炭酸塩を0.1〜500質量部、含有する、請求項1〜4の何れか1項に記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体。
前記乾燥剤が、酸化カルシウム、塩化カルシウム無水物、酸化マグネシウム、ゼオライト及びシリカゲルからなる群より選ばれる1種以上の乾燥剤を含む、請求項6記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が上記従来の包装体について詳細に研究したところ、従来の包装体は、未使用の状態での保存安定性に更に改善の余地があることを見出した。すなわち、上記包装体は、調製直後のものを使用する場合は活魚を鮮度良く生きたまま保持する効果が発揮できるが、常温で長時間保管しておくと固体過酸化物が分解し、酸素の発生能力が経時的に低下してしまうために、長期間保管後に使用する場合は、活魚を鮮度良く生きたまま保持する効果に更に改善の余地があることが分かった。
【0006】
本発明者は、そのような酸素の発生能力の急激な低下の原因が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物にあることを突き止めた。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物は固体過酸化物の分解触媒として働くため、それらが混合されていると酸素を発生して分解する。酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物を共存させることで固体過酸化物の分解速度を遅くすることはできるが、分解を止める効果は小さく、その保存安定性には更に改善の余地があることが分かった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、保存安定性に優れた酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物、及び、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体、並びに、その包装体を用いた活魚介類の輸送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体の保存安定性を向上させるために鋭意研究した結果、炭酸ガス吸収剤としてアルカリ金属の炭酸塩を用いることが非常に効果があることを見出して本発明を完成させた。
【0009】
アルカリ金属の炭酸塩は、炭酸ガスの吸収効果があり、かつアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物に比べ固体過酸化物の分解を抑制できることが判明したことから、本発明の炭酸ガス吸収材として採用することができた。
【0010】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]固体過酸化物と、過酸化物分解触媒と、アルカリ金属炭酸塩と、を含有する、酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物
と、前記酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物を包装する、少なくとも一部が透湿性防水材料からなる包装材料と、を含有する、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体であって、前記固体過酸化物と、前記過酸化物分解触媒と、前記アルカリ金属炭酸塩とは、同一の包装体内に共存した状態である、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体。
[2]前記固体過酸化物が過炭酸ナトリウムを含む、[1]記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤
包装体。
[3]前記過酸化物分解触媒が、活性炭、カタラーゼ酵素及び二酸化マンガンからなる群より選ばれる1種以上の触媒を含む、[1]又は[2]に記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤
包装体。
[4]前記アルカリ金属炭酸塩が、炭酸ナトリウム無水物、炭酸ナトリウム一水和物及び炭酸カリウム無水物からなる群より選ばれる1種以上の炭酸塩を含む、[1]〜[3]の何れか1つに記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤
包装体。
[5]前記固体過酸化物100質量部に対し、前記過酸化物分解触媒を0.1〜100質量部、かつ、前記アルカリ金属炭酸塩を0.1〜500質量部、含有する、[1]〜[4]の何れか1つに記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤
包装体。
[6]前記固体過酸化物100質量部に対し、乾燥剤を0.1〜100質量部含有する、[1]〜[5]の何れか1つに記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤
包装体。
[7]前記乾燥剤が、酸化カルシウム、塩化カルシウム無水物、酸化マグネシウム、ゼオライト及びシリカゲルからなる群より選ばれる1種以上の乾燥剤を含む、[6]記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤
包装体。
[8]前記透湿性防水材料が、微細孔を有する樹脂製のシートからなる微多孔膜、及び/又は、微細孔を有する樹脂製のシートからなる不織布を含む、
[1]〜[7]の何れか1つに記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体。
[
9]前記透湿性防水材料は、20g/m
2/24時間以上のカップ法透湿度(40℃、90%RH)を有し、0.1〜3000秒/空気100mLのガーレー式透気度を有し、かつ常圧で液体の水を通さない透湿性防水材料である、
[1]〜[8]の何れか1つに記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体。
[
10]活魚介類を、
[1]〜[9]のいずれか1つに記載の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体と共に、容器内に封入して輸送する、活魚介類の輸送方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、保存安定性に優れた酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物、及び、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体、並びに、その包装体を用いた活魚介類の輸送方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、固体過酸化物と、過酸化物分解触媒と、アルカリ金属炭酸塩とを含有するものである。
【0014】
本実施形態に係る固体過酸化物は、常温・常圧で固体である過酸化物であれば特に限定されない。固体過酸化物としては、例えば、炭酸ナトリウムと過酸化水素とが2:3のモル比で付加してなる過炭酸ナトリウム(炭酸ナトリウム過酸化水素付加物)、過ホウ酸ナトリウム四水和物、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、過硫酸カリウム、過硫酸水素カリウム等の無機過酸化物、及び、有機過酸化物が挙げられる。固体過酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。それらの中でも、保存安定性がより良好であり、使用しやすい観点から、無機過酸化物が好ましく、過炭酸ナトリウムがより好ましい。
【0015】
過炭酸ナトリウムの市販品には、各種の塩等を添加又はコーティングして安定性を変化させた数々のグレードが存在するが、それらのいずれもが、本実施形態に係る固体過酸化物として使用可能である。また、使用するグレードによって酸素発生量又は酸素発生速度が変化するので、目標とする酸素発生量及び持続時間等に応じて、適切な過炭酸ナトリウムの市販品を選択し、使い分けることができる。
【0016】
固体過酸化物の形状は、特に限定されず、例えば、粉末(粒子)状、板状が挙げられ、各種形状の成形物であってもよい。これらの中では、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、粉末(粒子)状が好ましい。
【0017】
固体過酸化物の分解を促進させる過酸化物分解触媒としては、特に限定されないが、例えば、活性炭、カタラーゼ酵素、及び二酸化マンガンが挙げられる。それらの中では、固体過酸化物の分解を促進するというその触媒の機能をより有効かつ確実に発揮する観点から、活性炭が好ましい。酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物に含まれる固体過酸化物と上記触媒との質量比は、酸素発生量や持続時間により異なるが、固体過酸化物100質量部に対し、上記触媒が0.1〜100質量部含まれることが好ましく、1〜60質量部含まれることがより好ましい。上記触媒の質量比が0.1質量部以上であることで、固体過酸化物の分解を促進するというその触媒の機能をより有効かつ確実に発揮することができ、100質量部以下であることにより、固体過酸化物の反応速度を制御することができる。過酸化物分解触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0018】
過酸化物分解触媒の形状は、特に限定されず、例えば、固体粉末(粒子)状、板状、塊状が挙げられるが、これらの中では、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、固体粉末(粒子)状が好ましい。
【0019】
本実施形態において、炭酸ガス吸収剤として用いられるアルカリ金属炭酸塩としては、特に限定されず、例えば、炭酸ナトリウム無水物、炭酸ナトリウム一水和物、炭酸カリウム無水物、炭酸カリウム1.5水和物、炭酸リチウム無水物が挙げられる。それら中でも、炭酸ガスの吸収性が一層良好であり、しかも、固体過酸化物の分解活性がより低い観点から、炭酸ナトリウム無水物、炭酸ナトリウム一水和物、炭酸カリウム無水物がより好ましく、炭酸ナトリウム無水物が更に好ましい。アルカリ金属炭酸塩は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0020】
本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物に含まれる固体過酸化物とアルカリ金属炭酸塩との質量比は、目的とする酸素発生・炭酸ガス吸収量比、持続時間により異なるが、固体過酸化物100質量部に対し、アルカリ金属炭酸塩が0.1〜500質量部含まれることが好ましく、1〜100質量部含まれることがより好ましい。アルカリ金属炭酸塩の質量比が0.1質量部以上であることで、炭酸ガスを吸収するというアルカリ金属炭酸塩の機能をより有効かつ確実に発揮することができ、500質量部以下であることにより、炭酸ガス吸収量を制御することができる。
【0021】
アルカリ金属炭酸塩の形状は、特に限定されず、例えば、固体粉末(粒子)状、板状が挙げられ、各種形状の成形物であってもよい。これらの中では、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、固体粉末(粒子)状が好ましい。
【0022】
なお、本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物においては、保存安定性を損なわない程度であれば炭酸ガス吸収剤として、アルカリ金属炭酸塩に加え、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を含有させることができる。酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物におけるアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の含有割合は、所望する性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、固体過酸化物100質量部に対し、0〜5質量部が好ましく、より好ましくは0〜3質量部、さらに好ましくは0〜1質量部、特に好ましくは0質量部、すなわち、酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物がアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を含まないことである。
【0023】
本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物においては、水が酸素発生反応を促進する。この酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物を未使用の状態で保存している間に、水分との接触を抑制することで、酸素発生反応の進行を防止することができる。このような観点から、その組成物に乾燥剤を含有させることで、未使用の状態での酸素発生反応をより有効に抑制することができる。乾燥剤としては、水分を吸着又は吸収するものであれば特に限定されず、例えば、酸化カルシウム、塩化カルシウム無水物、酸化マグネシウム、ゼオライト及びシリカゲルが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物が乾燥剤を含有する場合、その組成物に含まれる固体過酸化物と乾燥剤との質量比は、固体過酸化物100質量部に対し、乾燥剤を0.1〜100質量部含有するのが好ましく、1〜60質量部含有することがより好ましい。乾燥剤の質量比が0.1質量部以上であることにより、乾燥剤の機能をより有効かつ確実に発揮することができ、100質量部以下であることにより、未使用の状態での酸素発生反応を抑制することができると共に、使用時の酸素発生の阻害を防ぐができる。
【0025】
乾燥剤の形状は、特に限定されず、例えば、固体粉末(粒子)状、板状が挙げられ、各種形状の成形物であってもよい。これらの中では、乾燥剤による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、固体粉末(粒子)状が好ましい。
【0026】
活魚介類からは、呼吸作用により炭酸ガス(二酸化炭素)が発生するが、更に排泄物としてアンモニア等の含窒素化合物が排出される。特にアンモニアは活魚介類の鮮度を低下させるために、活魚介類の種類や輸送条件によっては、アンモニア等の含窒素化合物を、活魚介類が存在する系から除去することが好ましい。その観点から、本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物に吸着材を含有させることができる。吸着材としては、含窒素化合物を吸着する公知の物質を用いることができ、例えば、ゼオライトが挙げられる。すなわち、ゼオライトは、乾燥剤としてだけでなく、吸着材としても機能し得るものである。吸着材の形状は、上記各材料と同様に固体粉末(粒子)状であることが好ましい。
【0027】
本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物は、上記各材料に加えて、本発明による目的達成を阻害しない範囲において、従来知られている酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物に含まれ得る各種の添加剤を含有してもよい。
【0028】
本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体(以下、単に「包装体」ともいう。)は、上述の本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物と、その組成物を包装(収容)する、少なくとも一部が透湿性防水材料からなる包装材料とを含有するものである。本実施形態に係る包装体において、酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物中の各材料は、同一の包装体内に共存した状態である、いわゆる1剤型であればよい。また、包装体における包装材料の形状・形態は特に限定されず、例えば、柔軟性のある袋状のものであってもよく、柔軟性のない又は柔軟性の低い箱形状のものであってもよい。したがって、例えば、カップ形状を有し、その開口部に透湿性防水材料からなるフィルムを貼り合わせて被覆した包装材料であってもよい。
【0029】
本実施形態に係る透湿性防水材料としては、カップ法透湿度(40℃・90%RH:JIS−Z0208:1976)が20g/m
2/24時間以上、好ましくは20〜100000g/m
2/24時間であり、ガーレー式透気度(JIS−P8117:2009)が0.1〜3000秒/空気100mL、好ましくは1〜1000秒/空気100mLであり、かつ、常圧で液体の水を通さない透湿性防水材料が好ましく例示される。このような透湿性防水材料は、液状の水の通過をより有効かつ確実に防止できるとともに、空気や水蒸気といった気体をより有効かつ確実に透過させることができるので好ましい。なお、「常圧で液体の水を通さない」か否かは、透湿性防水材料で小袋を作製し、その中に少量の液体の水を注入して小袋内の気相が常圧になるよう密封後、1時間、室温で静置した場合に、小袋の外側表面に水滴が生じないか否かによって確認することができる。
【0030】
本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体を使用する際は、包装体外部の水分が包装材料を透過して、その内部に収容される本実施形態の組成物と接触することで酸素発生反応が進行する。用いる包装材料の透湿度により酸素発生速度が変化するため、適切な包装材料の選択により酸素発生速度を調整することができる。包装材料を構成する透湿性防水材料以外の材料としては、従来知られている包装材料を採用することもでき、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はナイロンフィルムと、ポリエチレンフィルム又はポリプレンフィルムとをそれぞれ組み合わせてラミネートして得た樹脂製の多層フィルム、成形容器等に代表される非透湿性耐水材料を用いることができる。
【0031】
透湿性防水材料の具体的な例としては、微細孔を有する樹脂製のシートからなる微多孔膜、微細孔を有する樹脂製のシートからなる不織布が挙げられるが、これらに限定されず、公知のものも用いることができる。
【0032】
微多孔膜としては、特に限定されず、公知のものであってもよい。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化エチレン樹脂などで例示される合成樹脂製のフィルムの冷間延伸;異物を有するフィルムの延伸;若しくは、異物を有するフィルムから異物を抽出した後のフィルムの延伸などの方法、または、フィルムへの電子線照射若しくはレーザー光照射などの方法により、微多孔膜を製造することができる。また、微多孔膜の市販品としては、例えば、ジュラガード(米国:セラニーズ社製商品名)、NFシート(株式会社トクヤマ製商品名)、セルポアNW(積水フィルム株式会社製商品名)、KTF(三菱樹脂株式会社製商品名)が挙げられる。
【0033】
不織布としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化エチレン、ポリエステル又はナイロン等で例示される樹脂の繊維を、熱、圧力、接着剤等で接合させた各種のものを用いることができる、これらの中でも、熱及び/又は圧力によって長繊維同士を接合させた不織布が好ましい。不織布の市販品としては、例えば、タイベック(米国:デュポン社製商品名)、スパンボンド・エルタス(旭化成株式会社製商品名)が挙げられる。
【0034】
本実施形態に係る微多孔膜及び不織布は単層であってもよいが、熱シール性の向上や強度の補強等を目的として、多層であってもよく、それに加えて若しくはそれに代えて、その他の材料と積層されていてもよい。その他の材料はシート状であると好ましい。また、熱シール性向上のためのその他の材料としては、微多孔膜及び不織布を構成する樹脂の軟化点よりも低い軟化点を有する樹脂で構成され、かつ開孔を有するフィルム(以下、「有孔シート」と表記する。)が好ましい。有孔シートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレンアイオノマーが挙げられる。その他の材料(例えば有孔シート)を予め微多孔膜又は不織布に熱融着させておいてもよいし、その他の材料と微多孔膜又は不織布とをそれぞれ別個に用意して、それらを積層した上で周辺部を熱シールするだけでもよい。また、微多孔膜に不織布を熱融着したものももちろん使用できる。
【0035】
補強材としては、ポリエチレンからなる合成繊維の帯状物を編んでなるものが好ましく、例えば、幅が10mm以下の帯を格子状に編み、縦帯と横帯とを熱融着したものが用いられる。具体的には、例えば、ワリフ(JX日鉱日石ANCI製商品名)が好適に用いられる。補強材は、微多孔膜又は不織布と有孔シートとの間で熱融着されていることが好ましい。
【0036】
本実施形態の包装体の形態・形状や製造方法に特に制限はない。例えば、本実施形態の組成物を、2枚のシート状の包装材料で挟み込み、包装材料の四辺を熱シールすることにより包装体を製造することができる。この方法の場合、包装材料の少なくとも一部を構成する透湿性防水材料同士で熱シールするか、あるいは、透湿性防水材料と非通気性耐水材料とを熱シールすることが好ましい。
【0037】
本実施形態の活魚介類の輸送方法は、活魚介類を、上記酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体と共に、容器内に封入して輸送するものである。また、本実施形態の活魚介類の保管方法は、活魚介類を、上記酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体と共に、容器内に封入して保管するものである。本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体を活魚介類の輸送や保管に用いる場合、使用する系を密封系又は密封系に近い系にした方が、発生した酸素ガスが水中に溶解しやすくなるので好ましい。例えば、活魚介類、水(又は海水)、本実施形態の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体及び必要に応じて酸素ガスを、ポリエチレン等の袋容器の中に入れて輪ゴム等でその袋容器の開口を縛って封入するといった方法を採ることができる。また、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体は、容器内に単に収容するだけでもよいが、酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物を、より長時間有効に用いる観点から、容器内のヘッドスペース部に接着剤等で固定して使用することが好ましい。なお、容器は、上記袋容器に限定されず、例えばプラスチック製のコンテナなどであってもよく、容器の大きさ、封入する活魚介類の数、水量などに関しては特に限定されない。
【0038】
本実施形態の組成物又は包装体を保存する場合、性能をより長期間維持するために、本実施形態の組成物又は包装体を、不透湿性あるいはガスバリア性の耐水材料からなる容器内に密封保存するか、乾燥剤との共存下で保存することが好ましく、本実施形態の組成物又は包装体を乾燥剤と共に不透湿性あるいはガスバリア性の耐水材料からなる容器内に密封保存することがより好ましい。更に、その容器内を脱気して保存することが好ましい。
【0039】
不透湿性あるいはガスバリア性の耐水材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔をラミネートした樹脂製フィルム、アルミニウムやシリカを蒸着した樹脂フィルムをラミネートした樹脂製フィルムが好ましい。より詳しくは、例えば、ナイロンフィルム又はポリエステルフィルム/アルミニウム箔/ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムを順に積層した積層シート、アルミニウムやシリカを蒸着したポリエステルフィルム/ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムを順に積層した積層シートが挙げられる。
【0040】
本実施形態の組成物又は包装体を保存する時に用いる上記乾燥剤としては、特に限定されず、例えば、酸化カルシウム、塩化カルシウム無水物、酸化マグネシウム、ゼオライト、シリカゲルが挙げられる、これらの中では、高い取り扱い安全性及び吸湿効果の観点から、シリカゲルが好ましい。
【0041】
本実施形態によると、酸素を発生し、かつ炭酸ガスを吸収するという酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物の本来的な機能を保持しつつ、保存安定性に優れた酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物を提供することが可能となる。本実施形態では、活魚介類を鮮度よく生きたままで輸送するために、従来2種類(いわゆる2剤型)の鮮度保持剤を用いていた活魚介類の輸送を、いわゆる1剤型の酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体に代えても可能となり、より簡便に活魚介類を輸送することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
(酸素発生量・二酸化炭素吸収量の測定方法)
酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体1袋、水20mLを含浸させた含水綿、空気(酸素濃度20.9体積%)3000mL、二酸化炭素2000mLを、ガスバリア性袋(バリヤナイロン/ポリエチレン製:大きさ350mm×400mm)の中に入れ、密封した。そのガスバリア性袋を25℃〜30℃の温度にて大気雰囲気下で48時間保管後、ガスバリア性袋内の酸素濃度X(体積%)と二酸化炭素濃度Y(体積%)とを測定して、酸素発生量α(mL)及び二酸化炭素吸収量β(mL)を下記の式により求めた。
酸素発生量α=−(0.125−X/100×(100−(12.5+40.0))/(100−(X+Y)))×5000
炭酸ガス吸収量β=(0.40−Y/100×(100−(12.5+40.0))/(100−(X+Y)))×5000
【0044】
(酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体の作製)
(作製例1)
過炭酸ナトリウム(PC−A:日本パーオキサイド株式会社製商品名)5g、活性炭(粒状白鷺:日本エンバイロケミカルズ株式会社製商品名)0.1g、及び無水炭酸ナトリウム(試薬)4gを混合し、酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物Aを得た。この組成物Aを厚さ180μmのポリオレフィン製微多孔膜からなる包装材料(セルポア:積水フィルム株式会社製商品名)からなる袋(寸法:120mm×80mm)に収容し、袋の開口部を熱シールして組成物Aを封入し、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体Aを得た。
【0045】
(作製例2)
無水炭酸ナトリウム4gの代わりに無水炭酸カリウム(試薬)4gを用いた以外は作製例1と同様にして、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体Bを得た。
【0046】
(作製例3)
無水炭酸ナトリウム4gの代わりに、水酸化カルシウム(菱光石灰工業株式会社製)4gを用いた以外は作製例1と同様にして、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体Cを得た。
【0047】
(作製例4)
酸素発生・炭酸ガス吸収剤組成物Aに、乾燥剤として酸化カルシウム(粒状、有限会社坂本石灰工業所製)1gを更に添加した以外は作製例1と同様にして、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体Dを得た。
【0048】
(作製例5)
無水炭酸ナトリウム4gの代わりに水酸化カルシウム(菱光石灰工業株式会社製)4gを用いた以外は作製例4と同様にして、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体Eを得た。
【0049】
作製した酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体A〜Eの組成を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(実施例1)
酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体Aをポリエステル/アルミ箔/ポリエチレンをこの順に積層してなるガスバリア性袋(寸法:150mm×220mm)内に脱気包装して、そのガスバリア性袋を10日間、常温の室内(大気雰囲気下)に保管した。10日間保管後の酸素発生量を測定し、作製直後の酸素発生量と比較した。結果を表2に示す。
【0052】
(実施例2、比較例1)
表2に示す包装体を用いた以外は実施例1と同様にして酸素発生量の測定を行った。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例1、2では、10日間保管後もガスバリア性袋の膨張はなく、酸素発生量の変化も殆どなかった。それに対し、比較例1では、保管中にガスバリア性袋が膨張し、10日間保管後の酸素発生量は著しく低下していた。
【0055】
(実施例3)
保管期間を2カ月、4カ月及び5カ月とした以外は実施例1と同様にして酸素発生量の測定を行った。また、二酸化炭素吸収量の測定も同時に行った。結果を表3に示す。
【0056】
(実施例4、比較例2)
表3に示す包装体を用いた以外は実施例3と同様にして、酸素発生量及び二酸化炭素吸収量の測定を行った。結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
乾燥剤を添加していない実施例3では、長期間の保管により徐々に酸素発生量が低下したが、乾燥剤を添加した実施例4(包装体D)では、5カ月間殆ど酸素発生量の変化は認められなかった。アルカリ金属炭酸塩の代わりにアルカリ土類金属水酸化物を用いた比較例2では、乾燥剤を添加しても保管中にガスバリア性袋が膨張しており、5カ月後の酸素発生量は著しく低下していた。また、二酸化炭素吸収量については、実施例3は2ヶ月間、実施例4においては5カ月間、保管前と同等かそれ以上の値を示した。
【0059】
(実施例5)
厚さ180μmのポリオレフィン製微多孔膜からなる包装材料(セルポア:積水フィルム株式会社製商品名)からなる袋(寸法:160mm×135mm)の中に過炭酸ナトリウム(PC−A:日本パーオキサイド製)50g、活性炭(粒状白鷺:日本エンバイロケミカルズ製)1gと無水炭酸ナトリウム(試薬)50gとの混合物を収容し、開口部を熱シールして封入し、酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体Fを得た。
【0060】
厚さ60μmのポリエチレン製の袋を二重にして、和金魚70匹(約600g)、水5L及び酸素発生・炭酸ガス吸収剤包装体F1個を収容し、酸素ガス約5Lをその袋内に吹き込んだ後に、袋の開口部を輪ゴムで縛って封入し、22℃〜28℃の室内(大気雰囲気下)に放置した。72時間放置後もヘッドスペースガスの酸素濃度は70%以上、炭酸ガス濃度は10%以下を維持することができ、和金魚も全数が元気に泳ぎ回り生存していた。
【0061】
(比較例3)
包装体Fを収容しないこと以外は実施例5と同様にして実験を行った。72時間放置後のヘッドスペースガスの酸素濃度は20%、炭酸ガス濃度は30%であり、和金魚は元気に泳ぎ回るものはなく、半数が死亡していた。
【0062】
本出願は、2012年5月31日出願の日本特許出願(特願2012−124941)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。