【文献】
Chem. Pharm. Bull.,2009年,vol.57, no.4,pp.332-336
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アシネトバクター(Acinetobacter)感染及びクレブシエラ(Klebsiella)感染の治療において使用するための、請求項22に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
驚くべきことに、式(I)の化合物は、有用な抗細菌活性を保持したまま、親のポリミキシン化合物より低い毒性を有するように見受けられる。
【0014】
アシル鎖を欠損したポリミキシンナノペプチドは、減少した毒性を有するが、しかし有用な抗細菌活性を欠くことは知られている。然しながら、簡単なアシルポリミキシンBノナペプチド誘導体の鎖長の研究(K.Okimura et.al,Bull.Chem.Soc.Jpn,2007,80,543)は、概略8個の炭素原子の最適値で、抗細菌活性に対する鎖長の重要性を示唆し、そしてアセチル誘導体が、E.coli及びSalmonella typhimuriumに対して非常に不良な活性を有することを証明した。これは、ペンタノイル及びブタノイル類似体が、活性の顕著な減少を示したアシルデカペプチド系列からの結論(P.C de Visser et al,J.Peptide Res,2003,61,298)と一致した。
【0015】
本出願人等は、驚くべきことに、短いアシル鎖により置換されたアシルノナペプチド、特にアミノ置換基を保有するものを含む、本発明によるポリミキシンBノナペプチドにおける減少した毒性を伴う良好な抗細菌活性を見出している。
【0016】
ポリミキシン型化合物の毒性が、真核細胞の膜とのデタージェント様相互作用に起因することが疑われる。更に、ポリミキシン型化合物の腎毒性は、これらが腎細胞中に保持され、そして従って身体から排出されるより蓄積する事実に起因することができる。理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明の化合物が、そのアルキル成分の疎水性を破壊する置換基を含んでなるR
5基を有することが仮定される。本発明人等は、この破壊が、分子の疎水性及び親水性の特質の平衡を変化し、これは、これらが膜を形成する脂質二重層にそれら自体を整列するために十分に適していないことを意味すると信じる。次に、この膜中に整列する不能性は、より低いその中の保持時間をもたらし、そして従ってより低い毒性をもたらすことができる。
【0017】
ポリミキシンノナペプチドは、本明細書中で使用される場合、ポリミキシンB又はポリミキシンEのアミノ酸2−10を指すことを意図している。
【0018】
アミノ酸残基(例えばロイシン残基、等)は、本明細書中で使用される場合、水分子を失い、そしてそのカルボニル末端を経由してもう一つの成分(例えばもう一つのアミノ酸等)との結合を形成し、そして更にその窒素末端を経由してもう一つの成分(例えばもう一つのアミノ酸等)への結合を形成するアミノ酸を指すことを意図している。形成された結合は、例えばアミド結合であることができる。
【0019】
本明細書中で使用される場合、アルキルは、直鎖又は分枝鎖アルキル、例えば、制約されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、ブチル、n−ブチル及びtert−ブチルを指す。一つの態様において、アルキルは、直鎖アルキルを指す。
【0020】
リンカー分子(即ち、置換アルキル)の文脈におけるアルキルは、その分枝及び直鎖変種を含むアルキレン断片に明確に拡大適用される。分枝は、アルキルラジカル、例えば−CH
3で終結することができる。
【0021】
ヘテロシクリルは、本明細書中で使用される場合、少なくとも一つの環の窒素原子、例えば1又は2個の環の窒素原子、例えば1個のみの環の窒素原子を含んでなり、そして所望により酸素及び硫黄から選択される更なる環の異種原子を含有していてもよい飽和の炭素環式環である。C
4−6ヘテロシクリル基の例は、アゼチジン、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル及びモルホリニルを含む。一つの態様において、ヘテロシクリルは、分子の残部に窒素を経由して連結される。用語“C
4−6ヘテロシクリル”において、表現C
4−6は、炭素及び異種原子を含む環の原子の合計の数を表す。
【0022】
一つの態様において、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒のR
1は、フェニルアラニン残基、例えばD−フェニルアラニン又はロイシン残基、例えばD−ロイシン残基を表す。
【0023】
一つの態様において、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒のR
2は、ロイシン残基を表す。
【0024】
一つの態様において、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒のR
3は、トレオニン残基を表す。
【0025】
一つの態様において、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒のR
4は、α,γ−ジアミノ酪酸(Dab)又はセリン残基、例えばL−Dab又はD−Serを表す。
【0026】
一つの態様において、Xは、−C(=O)を表す。
【0027】
一つの態様において、R
5は、アゼチジン、ピロリジニル又はピペリジニルを表す。
【0028】
一つの態様において、R
5のC
2−12アルキル成分は、C
2アルキル、C
3アルキル、C
4アルキル、C
5アルキル、C
6アルキル、C
7アルキル、C
8アルキル、C
9アルキル、C
10アルキル、C
11アルキル又はC
12アルキルである。
【0029】
一つの態様において、R
5のC
2−12アルキル成分は、C
3−10アルキル、例えばC
4−8アルキルである。
【0030】
一つの態様において、R
5は、C
3−8シクロアルキル、例えば、C
5シクロアルキル又はC
6シクロアルキルである。
【0031】
一つの態様において、R
5は、一つの置換基を保有する。
【0032】
一つの態様において、R
5は、二つの置換基を保有する。
【0033】
一つの態様において、R
5は、三つの置換基を保有する。
【0034】
一つの態様において、R
5は、一つ、二つ又は三つのヒドロキシル基、例えば一つのヒドロキシル基を保有する。
【0035】
一つの態様において、R
5は、一つのアミン基、例えば一つのアミンを保有するC
2−12アルキル、例えば一つのアミンを保有するC
2−4アルキル、を保有する。
【0036】
一つの態様において、R
5は、一つ、二つ又は三つのヒドロキシル基、例えば一つのヒドロキシルを保有する。
【0037】
一つの態様において、R
5は、一つのアミン基及び一つのヒドロキシル基を保有する。
【0038】
一つの態様において、R
5は、一つのアミン基及び二つのヒドロキシル基を保有する。
【0039】
R
5が一つ又はそれより多いヒドロキシルを保有する一つの態様において、アルキル鎖は、C
5−12である。
【0040】
一つの態様において、R
5は、一つより多いアミン基を保有しない。
【0041】
R
5が一つより多い置換基を保有する一つの態様において、置換基は、同一炭素原子上に位置しない。
【0042】
一つの態様において、少なくとも一つのR
5置換基(例えば一つの置換基)は、C
2アルキル、C
3アルキル、C
4アルキル、C
5アルキル、C
6アルキル、C
7アルキル、C
8アルキル、C
9アルキル、C
10アルキル、C
11アルキル又はC
12アルキル上に位置する。
【0043】
一つの態様において、少なくとも一つのR
5置換基(例えば一つの置換基)は、直鎖アルキル又は分枝鎖アルキル、例えば直鎖アルキルの末端炭素上にある。
【0044】
置換基が直鎖アルキルの末端炭素(又は更に分枝の末端炭素)上にある場合、アルキル鎖の残部(又は更に分枝のアルキル連結部分)は、アルキレン連結を形成するものである。従って、用語アルキルは、本明細書中で使用される場合、実際に、アルキル分子の一部又は全てが、実際にアルキレン分子である状況を包含する包括的用語である。
【0045】
末端炭素は、本明細書中で使用される場合、これが置換基を保有しない場合、−CH
3であるものである炭素を指すことを意図している。
【0046】
一つの態様において、少なくとも一つ(例えば一つのみ)の置換基は、末端炭素上になく、即ち、−CH(置換基)−である。
【0047】
一つの態様において、R
6は、水素である。
【0048】
一つの態様において、R
6は、C
1−4アルキル、例えば、C
1アルキル、C
2アルキル、C
3アルキル又はC
4アルキル、例えばメチルである。
【0049】
一つの態様において、R
7は、水素である。
【0050】
一つの態様において、R
7は、C
1−4アルキル、例えば、C
1アルキル、C
2アルキル、C
3アルキル又はC
4アルキル、例えばメチルである。
【0051】
一つの態様において、R
6及びR
7は、メチルを表す。
【0052】
一つの態様において、R
6はHを表し、そしてR
7はメチルを表す。
【0053】
一つの態様において、R
5は、−CH(OH)(CH
2)
5CH
3、−CH
2NH
2、−CH
2CH
2NH
2、−CH
2CH
2CH
2NH
2、−(CH
2)
5NH
2、−(CH
2)
7NH
2、−CH
2CH
2NHCH
3、−CH
2CH
2N(CH
3)
2、及び−(CH
2)
7OHから選択される。
【0054】
一つの態様において、R
8は、メチルである。
【0055】
一つの態様において、R
8は、水素である。
【0056】
一つの態様において、化合物は、以下の式(Ia):
【0058】
のもの又は医薬的に受容可能なその塩である。
【0059】
R
1(随伴基と一緒に)が、フェニルアラニンを表し、R
2(随伴基と一緒に)が、ロイシンを表し、R
3(随伴基と一緒に)が、トレオニンを表し、R
4(随伴基と一緒に)が、α,γ−ジアミノ酪酸を表し;そしてR
8が、メチルを表す(そして随伴基と一緒にトレオニンを表す)場合、式(Ia)の化合物は、ポリミキシンBのアミノ酸2−10を有するポリミキシンノナペプチドである。
【0060】
R
1(随伴基と一緒に)が、ロイシンを表し、R
2(随伴基と一緒に)が、ロイシンを表し、R
3(随伴基と一緒に)が、トレオニンを表し、R
4(随伴基と一緒に)が、α,γ−ジアミノ酪酸を表し;そしてR
8が、メチルを表す(そして随伴基と一緒にトレオニンを表す)場合、式(Ia)の化合物は、ポリミキシンEのアミノ酸2−10を有するポリミキシンノナペプチドである。
【0061】
一つの態様において、式(I)の化合物は、三つの正の電荷を有する。
【0062】
一つの態様において、式(I)の化合物は、四つ又は五つ、例えば四つの正の電荷を有する。
【0063】
一つの態様において、式(I)の化合物は、五つの正の電荷を有する。
【0064】
一つの態様において、式(I)の化合物は、六つの正の電荷を有する。
【0065】
一つの態様において、化合物は:
2−ヒドロキシオクタノイルポリミキシンBノナペプチド;
2−アミノエタノイルポリミキシンBノナペプチド;
3−アミノプロパノイルポリミキシンBノナペプチド;
3−(N,N−ジメチルアミノ)−プロパノイルポリミキシンBノナペプチド;
4−アミノブタノイルポリミキシンBノナペプチド;
6−アミノヘキサノイルポリミキシンBノナペプチド;
8−ヒドロキシオクタノイルポリミキシンBノナペプチド;
8−アミノオクタノイルポリミキシンBノナペプチド;
3−(N−メチルアミノ)プロパノイルポリミキシンBノナペプチド;
2−アミノシクロペンタンカルボニルポリミキシンBノナペプチド;
3−アミノプロパノイルコリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチド;
3−ピロリジン−3−カルボニルポリミキシンBノナペプチド;
3−アミノ−3−シクロヘキサンプロパノイル]ポリミキシンBノナペプチド、又は
医薬的に受容可能なこれらの塩;
から選択される。
【0066】
更に又は別に、化合物は:
5−アミノペンタノイルポリミキシンBノナペプチド
ヒドロキシアセチルポリミキシンBノナペプチド
3−ヒドロキシオクタノイルポリミキシンBノナペプチド
4−(N,N−ジメチルアミノ)−ブタノイルポリミキシンBノナペプチド
7−アミノヘプタノイルポリミキシンBノナペプチド
4−モルホリニルブタノイルポリミキシンBノナペプチド
6−ヒドロキシヘキサノイルポリミキシンBノナペプチド
3−ヒドロキシブタノイルポリミキシンBノナペプチド
4−(N−メチルアミノ)−ブタノイルポリミキシンBノナペプチド、
trans−4−アミノシクロヘキサンカルボニルポリミキシンBノナペプチド、
4−アミノブタノイルポリミキシンEノナペプチド、
2−ヒドロキシオクタノイルポリミキシンEノナペプチド、
cis−4−アミノシクロヘキサンカルボニルポリミキシンBノナペプチド、
4−アミノ−4−メチルペンタノイルポリミキシンBノナペプチド
例えば4−(R)−アミノ−5−メチルヘキサノイルポリミキシンBノナペプチドを含む4−アミノ−5−メチルヘキサノイルポリミキシンBノナペプチド
例えば3−(S)−(1−ピロリジン−2−イル)−プロピオニルポリミキシンBノナペプチドを含む3−(1−ピロリジン−2−イル)−プロピオニルポリミキシンBノナペプチド
例えば4−(S)−アミノペンタノイルポリミキシンBノナペプチドを含む4−アミノペンタノイルポリミキシンBノナペプチド
trans−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボニルポリミキシンBノナペプチド、
3−ヒドロキシプロパノイルポリミキシンBノナペプチド
(2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシル)エタノイルポリミキシンBノナペプチド
2−アミノオクタノイルポリミキシンBノナペプチド、又は
医薬的に受容可能なこれらの塩
から選択される。
【0067】
式(I)の化合物の塩の例は、全ての医薬的に受容可能な塩、例えば、制約されるものではないが、無機強酸の酸付加塩、例えばHCl及びHBr塩、並びに有機強酸の付加塩、例えばメタンスルホン酸塩を含む。塩の更なる例は、硫酸塩及び酢酸塩、例えばトリフルオロ酢酸塩又はトリクロロ酢酸塩を含む。
【0068】
一つの態様において、本開示の化合物は、硫酸塩として提供される。
【0069】
本開示の化合物は、更にプロドラッグとして処方することができる。プロドラッグは、一つ又はそれより多いアミノ基が、in vivoで開裂して、生物学的に活性な化合物を放出することができる基で保護された本明細書中に記載される抗細菌性化合物を含むことができる。一つの態様において、プロドラッグは、“アミンプロドラッグ”である。アミンプロドラッグの例は、例えば、Bergen et al,Antimicrob.Agents and Chemotherapy,2006,50,1953中に記載されているようなスルホメチル、又は例えば、Schechter et al,J.Med Chem 2002,45(19)4264中に記載されているようなHSO
3−FMOC、及びこれらの塩を含む。アミンプロドラッグの更なる例は、Krise及びOliyaiによって、Biotechnology:Pharmaceutical Aspects,2007,5(2),101−131中に与えられている。
【0070】
一つの態様として、本発明の化合物は、プロドラッグとして提供される。
【0071】
本明細書中の開示は、式(I)の化合物の溶媒和物に拡大適用される。溶媒和物の例は、水和物を含む。
【0072】
本開示の化合物は、規定された原子が、天然に存在する又は天然に存在しない同位体によって置換されているものを含む。一つの態様において、同位体は、安定な同位体である。従って、本開示の化合物は、例えば重水素を含有する化合物等を含む。
【0073】
本発明は、ポリミキシンBのアミノ酸2−10を有する化合物、又は以下に記載されるようなその変種を提供し、ここにおいて、ポリミキシンBの残基2に対応するアミノ酸のN末端が、R
5−X−基で修飾されている。可変基R
5及びXは、上記で定義されたとおりである。本発明の化合物において、ポリミキシンBの残基1は非存在である。
【0074】
化合物の変種は、一つ又はそれより多い、例えば、1から5まで、例えば1、2、3又は4個のアミノ酸が、もう一つのアミノ酸で置換されている化合物である。アミノ酸は、2、3、6、7又は10位(ポリミキシンBで使用される残基の番号付けを指す)から選択される位置にある。置換は、もう一つのアミノ酸又は立体異性体のためであることができる。
【0075】
2位において、変種は、D−Ser置換を有することができる。
【0076】
3位において、変種は、Ser置換を有することができる。
【0077】
6位において、変種は、Leu又はVal置換を有することができる。
【0078】
7位において、変種は、Ile、Thr、Val又はNva(ノルバリン)置換を有することができる。
【0079】
10位において、変種は、Leu置換を有することができる。
【0080】
ポリミキシンE化合物は、6位においてLeu置換を有するポリミキシンB化合物とみなすことができる。
【0081】
便宜上、本発明の化合物は、2、3、6、7又は10位におけるアミノ酸が、それぞれR
8、R
4、R
1、R
2及びR
3基の特質によって決定される式(I)によって表される。先に記載した変種を含む本発明の化合物は、生物学的に活性である。
【0082】
式(I)の化合物は、当業者にとって既知の方法を使用して、慣用的なペプチド合成法によって調製することができる。適した方法は、例えばYamada et al,J.Peptide Res.64,2004,43−50によって記載されているような溶液相合成、又はde Visser et al,J.Peptide Res,61,2003,298−306、及びVaara et al,Antimicrob.Agents and Chemotherapy,52,2008.3229−3236によって記載されているような固相合成法によるものを含む。これらの方法は、適した保護戦略、及び環化工程のための方法を含む。あるいは、化合物は、容易に入手可能なポリミキシンから、例えばポリミキシンのN−末端アミノ酸(残基1)の除去によって調製することができる。このような方法は、ポリミキシンB及びEの残基2−10に基づく化合物の調製のために本明細書中に記載される。
【0085】
[式中:
R
1は、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒に、フェニルアラニン、ロイシン又はバリン残基を表し;
R
2は、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒に、ロイシン、イソ−ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン又はノル−バリン残基を表し;
R
3は、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒に、トレオニン又はロイシン残基を表し;
R
4は、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒に、α,γ−ジアミノ酪酸又はセリン残基を表す;]
の化合物又は保護されたその誘導体を、以下の式(III):
R
5X
1−(L)
m (III)
[式中、
R
5は、式(I)の化合物のために先に定義され;
X
1は、式(II)の化合物とカップリングした後、−NHC(O)−、−C(O)−、−OC(O)−、−CH
2−又は−SO
2に転換されるか、或いは転換されることができる基を表し;そして
Lは、脱離基を表し、
mは、0又は1を表す;]
の化合物又は保護されたその誘導体と反応させ、所望により、式(I)の化合物を得るための脱保護によって追従されることによる、ある種の式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なこれらの塩を調製する方法を提供する。
【0086】
一般的に、式(II)の化合物は、提唱された反応に関与することが好ましくない全ての三つの遊離のアミンが、適した保護基、例えばtert−ブチルオキシカルボニル(BOC)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)、又は他の適したアミン保護基、例えば“Protective groups in Organic Synthesis”by Theodora W.Green and Peter G.M.Wuts,Wiley,New York,1999中に記載されているものによって保護された形態で使用されるものである。
【0087】
必要な化学反応後、式(I)の化合物を得るための脱保護を、標準的な方法、例えば“Protective groups in Organic Synthesis”by Theodora W.Green and Peter G.M.Wuts,Wiley,New York,1999中に記載されているものを使用して行うことができる。
【0088】
Xが−NHC(=O)−である式(I)の化合物は、イソシアン酸に対応する式(III)の化合物、例えば:
R
5−N=C=O (式IIIa)
[式中、R
5は、上記で定義されている;]
を使用して合成することができる。
【0089】
反応は、適した溶媒、例えばジクロロメタン中で、所望により塩基、例えばトリエチルアミン又はN−エチルジイソプロピルアミン(DIPEA)の存在中で行うことができる。
【0090】
あるいは、Xが−NHC(=O)−である式(I)の化合物は、以下の式(IIIb):
【0092】
[式中、R
5は、先に定義されている;]
の化合物を使用して、Gallon et al,J.Org.Chem.,2005,70,6960中に記載されているように塩基の存在中で合成することができる。
【0093】
Xが、−C(=O)−、−OC(=O)−、又は−SO
2−である式Iの化合物は、R
5が本明細書中で先に定義したとおりであり、X
1が−C(=O)−、−OC(=O)−、又は−SO
2−であり、そしてLが脱離基、例えばCl又はBrを表す、式(III)の化合物を使用して合成することができる。
【0094】
反応は、適した溶媒、例えば極性の非プロトン性溶媒、例えばジクロロメタン中で行うことができる。
【0095】
Xが、−C(=O)である式(I)の化合物は、以下の式(IIIc):
R
5−COOH (IIIc)
[式中、R
5は、上記で定義される;]
の化合物を使用して、例えばカップリング剤、例えばHATU、(ヘキサフルオロリン酸O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム)、HBTU((ヘキサフルオロリン酸2−(1−H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、又はPYBOP(ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリ−ピロリドノ−ホスホニウム)の存在中で、極性溶媒中の塩基性条件下で調製することができる。
【0096】
Xが、−CH
2−である式(I)の化合物は、以下の式(IIId):
R
5−C(=O)H (IIId)
[式中、R
5は、本明細書中で先に記載したとおりである;]
のアルデヒドを使用して、例えば還元剤、例えばトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、又はポリマー支持シアノ水素化ホウ素の存在中で、溶媒、例えばメタノール、ジクロロメタン、DMF中で、March’s Advanced Organic Chemistry,Wiley,2001中に記載されているような条件を使用して調製することができる。
【0097】
一つの側面において、本発明は、例えばその治療的に有効な量の式(I)の化合物、及び医薬的に受容可能な賦形剤、希釈剤及び/又は担体(これらの組合せを含む)を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0098】
投与(供給)の経路は、制約されるものではないが:経口(例えば、乾燥粉末/自由流動粒子製剤、錠剤、カプセルとして、又は摂取可能な溶液又は懸濁液として)頬側、舌下の一つ又はそれより多くを含む。
【0099】
本開示の組成物は、非経口、頬側、直腸、局所、インプラント、眼、鼻腔、直腸又は尿生殖器使用のために特に処方された形態のものを含む。本発明の一つの側面において、薬剤は、経口的に供給され、従って、薬剤は、経口供給のために適した形態である。
【0100】
幾つかの場合、本開示の化合物を、局所、非経口(例えば注射用形態によって)又は粘膜(例えば鼻腔噴霧又は吸入のためのエアゾールとして)を含む経皮経路、鼻腔、消化管、脊髄内、腹腔内、筋肉内、静脈内、子宮内、眼内、皮内、頭蓋内、気管内、膣内、脳室内、脳内、皮下、眼(硝子体内又は前房内を含む)によって供給することが可能である。
【0101】
異なった供給系又は異なった投与の経路によって、異なった組成物/製剤の要求が存在することができる。例として、本開示の医薬組成物は、ミニポンプを使用して又は粘膜経路によって、例えば鼻腔噴霧又は吸入のためのエアゾール、又は摂取可能な溶液として、或いは組成物が、例えば静脈内、筋肉内又は皮下経路による供給のための注射用形態で処方される非経口的に供給するために処方することができる。あるいは、製剤は、両方の経路によって供給されるように設計することができる。適宜に、医薬組成物は、吸入によって、座薬又はペッサリーの形態で、ローション、溶液、クリーム、軟膏又は散布粉の形態で局所的に、皮膚貼布の使用によって、賦形剤、例えばデンプン又はラクトースを含有する錠剤、或いは単独で又は賦形剤との混合物のいずれかのカプセル又はオビュール(ovules)の形態で、或いは芳香剤又は着色剤を含有するエリキシル、溶液又は懸濁液の形態で経口的に投与することができるか、或いはこれらは、非経口的に、例えば静脈内、筋肉内又は皮下に注射することができる。
【0102】
非経口投与のために、組成物は、他の物質、例えば溶液を血液と等張にするために十分な塩又は糖類、特に単糖類を含有することができる滅菌水溶液の形態で最良に使用することができる。非経口投与の例は:静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内又は皮下的に薬剤を投与することの一つ又はそれより多く、及び/又は注入技術を使用することを含む。
【0103】
一つの態様において、本発明の化合物の製剤は、リポソーム製剤として提供される。リポソームは、小さいマイクロメーターの範囲から数十マイクロメートルのサイズで変化することができ、単層リポソームは、疾病の治療のための病理学的分野におけるその表面接続及び蓄積を可能にするその表面に接続した各種の標的リガンドを伴う、典型的には小さいサイズの範囲である。リポソームは、二層の脂質から製造される人工的に調製された小胞である。
【0104】
一つの態様において、製剤は、注入又はゆっくりした注射による供給のために適合される。
【0105】
一つの態様において、製剤は、ボーラス注射による供給のために適合される。
【0106】
頬側又は舌下投与にために、組成物は、錠剤又はロゼンジの形態で投与することができ、これは、慣用的な様式で処方することができる。
【0107】
本開示の化合物は、錠剤、カプセル、オビュール、エリキシル、溶液又は懸濁液の形態で投与(例えば経口又は局所的に)することができ、これは、即時、遅延、改変、継続、パルス又は制御放出の適用のために芳香又は着色剤を含有することができる。
【0108】
本開示の化合物は、更に経口又は頬側投与のために適した形態で、例えば溶液、ゲル、シロップ、口腔洗浄剤又は懸濁液、或いは使用の前の水又は他の適したベヒクルによる構成のための乾燥粉末の形態で、所望により芳香及び着色剤を伴って、ヒト又は動物の使用のために提供することができる。
【0109】
固体組成物、例えば錠剤、カプセル、ロゼンジ、パステル、ピル、粉末、ペースト、顆粒、ブレット(bullets)又はプレミックス製剤を更に使用することができる。経口使用のための固体又は液体組成物は、当技術において公知の方法によって調製することができる。このような組成物は、更に一つ又はそれより多い固体又は液体の形態であることができる医薬的に受容可能な担体及び賦形剤を含有することができる。
【0110】
錠剤は、賦形剤、例えば微結晶セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、並びにグリシン、マンニトール、アルファデンプン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、崩壊剤、例えばデンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及びある種の複合ケイ酸塩、並びに顆粒化結合剤、例えばポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン及びアラビアゴムを含有することができる。
【0111】
更に、潤滑剤、例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及びタルクを含むことができる。
【0112】
類似の種類の固体組成物は、更にゼラチン又はHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)カプセル中で投与することができる。これに関して適した賦形剤は、微結晶セルロース、ラクトース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム並びに、マンニトール、アルファデンプン、コーンスターチ、ジャガイモデンプン或いは高分子量ポリエチレングリコールを含む。
【0113】
水性懸濁液及び/又はエリキシルのために、薬剤は、各種の甘味又は芳香剤、着色物質又は染料と、乳化及び/又は懸濁剤を伴って、そして希釈剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール及びグリセリン、並びにこれらの組合せを伴って混合することができる。
【0114】
カプセルは、それぞれが一つ又はそれより多い本開示の塩及び所望により担体を含んでなる粉末(医薬単独又は選択された充填剤(類)とのブレンドとしての)で、又は別の方法として、液体で充填することができる。カプセルが粉末で充填される場合、本開示の塩及び/又は担体は、適当な粒子サイズを持つ物質を得るために粉砕又は微粒子化することができる。
【0115】
あるいは、錠剤又はカプセルは、適宜に、もう一つのカプセル(好ましくはHPMCカプセル、例えばCapsugel(登録商標))に充填して、カプセル中の錠剤又はカプセル中のカプセルのいずれかの構造を得ることができ、これは、患者に投与された場合、消化管内で制御された溶解をもたらし、これによって腸溶性被覆と類似の効果が得られる。
【0116】
従って、一つの側面において、本開示は、例えば製剤が腸溶性被覆を有するような、本開示の塩の固体の剤形を提供する。
【0117】
もう一つの側面において、本開示は、例えばカプセル中の錠剤又はカプセル中のカプセルとして、外部層としての保護カプセルを含んでなる固体の剤形を提供する。腸溶性被覆は、被覆されない製剤より改良された安定性を提供することができる。
【0118】
本開示の化合物は、更に液体水薬、例えば活性成分の溶液、懸濁液又は分散物の形態の動物用医薬中で、医薬的に受容可能な担体又は賦形剤と一緒に経口的に投与することができる。
【0119】
本発明の化合物は、更に例えば、例えばヒト又は動物の医薬中で使用するための慣用的な座薬基剤を含有する座薬として、或いは例えば慣用的なペッサリー基剤を含有するペッサリーとして処方することができる。
【0120】
一つの態様において、製剤は、吸入を含む局所投与のための製剤として提供される。
【0121】
適した吸入用製剤は、吸入用散剤、噴射用ガスを含有する計量されるエアゾール又は噴射用ガスを含まない吸入用溶液を含む。活性物質を含有する本開示による吸入用散剤は、上述の活性物質のみか、又は上述の活性物質の生理学的に受容可能な賦形剤との混合物からなることができる。
【0122】
これらの吸入用散剤は、単糖類(例えばグルコース又はアラビノース)、二糖類(例えばラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ−及び多糖類(例えばデキストラン)、ポリアルコール(例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)又はこれらのお互いの混合物を含むことができる。好ましくは、単糖又は二糖類が使用される、ラクトース又はグルコースの、特に排他的ではないが、これらの水和物の形態における使用。
【0123】
肺における体積のための粒子は、10ミクロンより小さい、例えば1−9ミクロン、適当には0.1から5μmまで、特に好ましくは1から5μmまでの粒子サイズを必要とする。
【0124】
吸入用エアゾールを調製するために使用することができる噴射用ガスは、従来に技術から知られている。適した噴射用ガスは、炭化水素、例えばn−プロパン、n−ブタン又はイソブタン及びハロ炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの塩化及び/又はフッ化誘導体の中から選択される。上述の噴射用ガスは、これら自体又はこれらの混合物で使用することができる。
【0125】
特に適した噴射用ガスは、TG11、TG12、TG134a及びTG227の中から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上述のハロゲン化炭化水素の中で、TG134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)並びにこれらの混合物が本発明の製剤中で使用するために適している。
【0126】
噴射用ガスを含有する吸入用エアゾールは、更に他の成分、例えば共溶媒、安定剤、表面活性剤(界面活性剤)、抗酸化剤、潤滑剤及びpHを調節するための手段を含有することができる。全てのこれらの成分は、当技術において既知である。
【0127】
本発明による噴射用ガスを含有する吸入用エアゾールは、5重量%までの活性物質を含有することができる。本開示によるエアゾールは、例えば0.002ないし5重量%、0.01ないし3重量%、0.015ないし2重量%、0.1ないし2重量%、0.5ないし2重量%又は0.5ないし1重量%の活性(物質)(active)を含有することができる。
【0128】
本開示の塩は、更に他の治療剤との組合せで使用することができる。従って、本開示は、更なる側面において、本開示の塩を、更なる治療剤と一緒に含んでなる組合せを提供する。組合せは、例えば式(I)の化合物の塩及び抗生物質、例えばバンコマイシン、ホスホマイシン、リファマイシン、ベータラクタム(例えばセファロスポリン又はカルバペネム)、アミノグルコシド、マクロライド、テトラサイクリン、リポペプチド、オキサゾリジノン、及び/又は抗炎症剤、例えばステロイドの組合せであることができる。組合せは、同時処方剤として又は別個の製剤として一緒に簡単に包装して、同時又は連続供給のために提供することができる。
【0129】
一つの態様において、更なる治療剤と組合せた本開示の塩が提供される。
【0130】
組合せの化合物/塩の全てが、同一経路によって投与される必要がないことは理解されることである。従って、治療が一つより多い活性成分を含んでなる場合、これらの成分は異なった経路によって投与することができる。
【0131】
このような組合せの個々の成分は、連続的に又は同時に、別個の又は組み合わせられた医薬製剤のいずれかを、いずれもの好都合な経路によって投与することができる。
【0132】
投与が連続的である場合、本開示の塩又は第2の治療剤のいずれかを最初に投与することができる。投与が同時である場合、組合せは、同一の又は異なった医薬組成物いずれかの中で投与することができる。
【0133】
上記で言及された組合せは、好都合には医薬製剤の形態の使用のために提供することができ、そして従って、上記で定義したような組合せを医薬的に受容可能な担体又は賦形剤と一緒に含んでなる医薬剤剤は、本開示の更なる側面を構成する。
【0134】
同一製剤中に組合された場合、二つの成分/塩が安定で、そして互いに、そして製剤の他の成分と適合性でなければならないことは認識されるものである。別個に処方された場合、これらは、いずれもの好都合な処方で、当技術においてこのような化合物に対して既知であるような様式で提供することができる。
【0135】
組成物は、0.01−99%の活性物質を含有することができる。例えば、局所投与のために、組成物は、一般的に0.01−10%、更に例えば0.01−1%の活性物質を含有するものである。
【0136】
本開示の塩が、同一疾病状態に対して活性な第2の治療剤との組合せで使用される場合、それぞれの化合物/塩の投与量は、化合物/塩が単独で使用される場合に使用されるものと同一であるか又は異なっていることができる。適当な投与量は、当業者によって容易に認識されるものである。治療において使用するために必要な本開示の塩の量が、治療される症状の特質、並びに患者の年齢及び症状で変化するものであり、そして最終的に担当医師又は獣医師の判断によるものであることも更に認識されるものである。
【0137】
典型的には、医師が個々の患者に対して最も適したものである実際の投与量を決定するものである。いずれもの特定の個体に対する具体的な投与量レベル及び投与の頻度は、変化することができ、そして使用される具体的な塩の活性、その塩の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食餌、投与のモード及び時間、排出の速度、薬物の組合せ、特定の症状の重篤度、及び個体が受けている治療を含む各種の因子に依存するものである。
【0138】
ヒトに対する経口及び非経口投与のために、薬剤の日量のレベルは、一回又は分割投与であることができる。全身性投与のために、成人のヒトの治療のために使用されるような日量は、2−100mg/Kg体重の範囲、例えば5−60mg/Kg体重であるものであり、これは、例えば、投与の経路及び患者の症状によるが、一日に1ないし4回投与で投与することができる。組成物が投与量単位を構成する場合、それぞれの単位は、好ましくは100mgないし1gの活性成分を含有するものである。治療の期間は、任意の日数ではなく反応の速度によって指示されるものである。
【0139】
一つの態様において、治療計画は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21日間又はそれより多く継続される。
【0140】
先に記載したように、本開示の塩は、ヒト及び/又は動物の治療又は予防において使用することができる。
【0141】
本発明によって更に医薬組成物を調製する方法が提供され、この方法は、本開示の塩又は医薬的に受容可能なその誘導体を、医薬的に受容可能な賦形剤、希釈剤及び/又は担体と一緒に混合することを含んでなる。
【0142】
もう一つの側面において、本発明は、治療において、そして特に感染症、例えば細菌性感染症、例えばグラム陰性細菌性感染症の治療において使用するための、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩、或いは同一物を含んでなる組成物を提供する。
【0143】
一つの態様において、本開示の化合物及び組成物は、肺炎、尿路感染症、創傷感染症、耳感染症、眼感染症、腹腔内感染症、細菌異常繁殖及び/又は敗血症の治療において有用である。
【0144】
一つの態様において、化合物は、多剤耐性である細菌による感染症の治療において有用である。
【0145】
グラム陰性細菌の例は、制約されるものではないが、Escherichia種、Klebsiella種、Enterobacter種、Salmonella種、Shigella種、Citrobacter種、Morganella morganii、Yersinia pseudotuberculosis及び他の腸内細菌科、Pseudomonas種、Acinetobacter種、Moraxella、Helicobacter、Stenotrophomonas、Bdellovibrio、酢酸菌、Legionella及びアルファ−プロテオバクテリア例えばWolbachia、並びに多くの他のものを含む。グラム陰性細菌の他の注目すべき群は、シアノバクテリア、スピロヘータ、緑色硫黄細菌及び緑色非硫黄細菌を含む。
【0146】
医学的に関連するグラム陰性球菌は、三つの生物体を含み、これらは、性行為感染症(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎(Neisseria meningitidis)、及び呼吸器症状(Moraxella catarrhalis)を起こす。
【0147】
医学的に関連するグラム陰性桿菌は、多数の種を含む。これらの幾つかは、主に呼吸器の問題(Hemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniae、Legionella pneumophila、Pseudomonas aeruginosa)、主に泌尿器の問題(Escherichia coli、Enterobacter cloacae)、及び主に消化器の問題(Helicobacter pylori、Salmonella enterica)を起こす。
【0148】
院内感染症に関係するグラム陰性細菌は、Acinetobacter baumanniiを含み、これは、菌血症、二次髄膜炎、及び病院施設の集中治療室の人工呼吸器関連肺炎を起こす。
【0149】
一つの態様において、本発明の化合物及び組成物は、次のグラム陰性細菌:E.coli、S.enterica、Klebsiella:K.pneumoniae、K.oxytoca;Enterobacter:E.cloacae、E.aerogenes、E.agglomerans、Acinetobacter:A.calcoaceticus、A.baumannii;Pseudomonas aeruginosa、Stenotrophomonas maltophila、Providencia stuartii、Proteus:、P.mirabilis、P.vulgarisの一つ又はそれより多くの感染症の治療において有用である。
【0150】
一つの態様において、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩、或いは同一物を含んでなる組成物は、P.aeruginosa感染症を含むPseudomonas感染症、例えば皮膚及び軟組織感染症、消化器感染症、尿路感染症、肺炎及び敗血症の治療のために有用である。
【0151】
一つの態様において、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩、或いは同一物を含んでなる組成物は、肺炎、尿路感染症及び敗血症に対するA.baumanii感染症を含むAcinetobacter感染症の治療のために有用である。
【0152】
一つの態様において、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩、或いは同一物を含んでなる組成物は、肺炎、尿路感染症、髄膜炎及び敗血症に対するK.pneumoniae感染症を含むKlebsiella感染症の治療のために有用である。
【0153】
一つの態様において、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩、或いは同一物を含んでなる組成物は、菌血症、胆嚢炎、胆管炎、尿路感染症、新生児髄膜炎及びニューモニエ(pneumoniae)に対するE. coli感染症を含むE. coli感染症の治療のために有用である。
【0154】
一つの態様において、式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩、或いは同一物を含んでなる組成物は、長期の治療のために有用であることができる。
【0155】
一つの側面において、式(I)の化合物又は同一物を含んでなる組成物が、上記で定義した指示の一つ又はそれより多くのための医薬の製造のために提供される。
【0156】
一つの側面において、治療的に有効な量の式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩、或いは同一物を含んでなる組成物を、例えば、本明細書中で記載したような感染症の治療のために、それを必要とする患者(ヒト又は動物)に投与する工程を含んでなる治療の方法が提供される。
【0157】
技術的に適当である場合、態様を組合せることができ、そして従って開示は、本明細書中で提供される態様の全ての並べ替え/組合せに拡大適用される。
【0158】
式(I)の化合物に与えられる優先度は、技術的に適当である場合、本明細書中で開示される本発明の他の化合物に対して同等に適用することができる。
【0159】
略語 意味
PMBN ポリミキシンBノナペプチド
Thr トレオニン
Ser セリン
DSer D−セリン
Leu ロイシン
Ile イソロイシン
Phe フェニルアラニン
DPhe D−フェニルアラニン
Val バリン
Dab α,γ−ジアミノ酪酸
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン。
本発明は、非限定的に以下の態様を含む。
[態様1] 以下の式(I):
【化2】
[式中:
Xは、−NHC(O)−、−C(O)−、−OC(O)−、−CH2−又は−SO2−を表し;そして
R1は、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒に、フェニルアラニン、ロイシン又はバリン残基を表し;
R2は、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒に、ロイシン、イソ−ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン又はノル−バリン残基を表し;
R3は、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒に、トレオニン又はロイシン残基を表し;
R4は、カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒に、α,γ−ジアミノ酪酸又はセリン残基を表し;
R5は、C0−12アルキル(C4−6ヘテロシクリル)、又は
C2−12アルキル又はC0−12アルキル(C3−8シクロアルキル)を表し、ここにおいて、アルキル又はシクロアルキルは:
i)一つ、二つ又は三つのヒドロキシル基、又は
ii)−NR6R7基、或いは
iii)一つの−NR6R7基及び一つ又は二つのヒドロキシル基、
を保有し;
R6は、水素又はC1−4アルキルを表し;そして
R7は、水素又はC1−4アルキルを表し、
R8は、水素又はメチルを表す;]
の化合物、又はこれらの医薬的に受容可能な塩。
[態様2] カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒のR1が、フェニルアラニン残基を表す、態様1に記載の式(I)の化合物。
[態様3] 前記フェニルアラニンが、D−フェニルアラニン残基である、態様2に記載の式(I)の化合物。
[態様4] カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒のR2が、ロイシン残基を表す、態様1に記載の式(I)の化合物。
[態様5] カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒のR3が、トレオニン残基を表す、態様1ないし4のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
[態様6] カルボニル基及びそれが接続している炭素に対してアルファの窒素と一緒のR4が、α,γ−ジアミノ酪酸残基を表す、態様1ないし5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
[態様7] R5が、−CH(OH)(CH2)5CH3、−CH2NH2、−CH2CH2NH2、−CH2CH2CH2NH2、−(CH2)5NH2、−(CH2)7NH2、−CH2CH2NHCH3、−CH2CH2N(CH3)2、及び−(CH2)7OHから選択される、態様1ないし6のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
[態様8] R6が、水素又はメチルである、態様1ないし7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
[態様9] R7が、水素又はメチルである、態様1ないし8のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
[態様10] Xが、−C(O)−である、態様1ないし9のいずれか1項に記載の化合物。
[態様11] 2−ヒドロキシオクタノイルポリミキシンBノナペプチド;
2−アミノエタノイルポリミキシンBノナペプチド;
3−アミノプロパノイルポリミキシンBノナペプチド;
3−(N,N−ジメチルアミノ)−プロパノイルポリミキシンBノナペプチド;
4−アミノブタノイルポリミキシンBノナペプチド;
6−アミノヘキサノイルポリミキシンBノナペプチド;
8−ヒドロキシオクタノイルポリミキシンBノナペプチド;
8−アミノオクタノイルポリミキシンBノナペプチド;
3−(N−メチルアミノ)プロパノイルポリミキシンBノナペプチド;
2−アミノシクロペンタンカルボニルポリミキシンBノナペプチド;
3−アミノプロパノイルコリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチド;
3−ピロリジン−3−カルボニルポリミキシンBノナペプチド;
3−アミノ−3−シクロヘキサンプロパノイルポリミキシンBノナペプチド、
5−アミノペンタノイルポリミキシンBノナペプチド
ヒドロキシアセチルポリミキシンBノナペプチド
3−ヒドロキシオクタノイルポリミキシンBノナペプチド
4−(N,N−ジメチルアミノ)−ブタノイルポリミキシンBノナペプチド
7−アミノヘプタノイルポリミキシンBノナペプチド
4−モルホリニルブタノイルポリミキシンBノナペプチド
6−ヒドロキシヘキサノイルポリミキシンBノナペプチド
3−ヒドロキシブタノイルポリミキシンBノナペプチド
4−(N−メチルアミノ)−ブタノイルポリミキシンBノナペプチド、
trans−4−アミノシクロヘキサンカルボニルポリミキシンBノナペプチド、
4−アミノブタノイルポリミキシンEノナペプチド、
2−ヒドロキシオクタノイルポリミキシンEノナペプチド、
cis−4−アミノシクロヘキサンカルボニルポリミキシンBノナペプチド、
4−アミノ−4−メチルペンタノイルポリミキシンBノナペプチド
4−アミノ−5−メチルヘキサノイルポリミキシンBノナペプチド
3−(1−ピロリジン−2−イル)−プロピオニルポリミキシンBノナペプチド
4−アミノペンタノイルポリミキシンBノナペプチド
trans−4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボニルポリミキシンBノナペプチド、
3−ヒドロキシプロパノイルポリミキシンBノナペプチド
(2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシル)エタノイルポリミキシンBノナペプチド
2−アミノオクタノイルポリミキシンBノナペプチド、又は
医薬的に受容可能なこれらの塩;
からなる群から選択される、態様1に記載の化合物。
[態様12] 態様1ないし11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩を、医薬的に受容可能な担体と一緒に含んでなる、医薬組成物。
[態様13] 治療において使用するための、態様1ないし11のいずれか1項に記載の式(I)の化合物又は医薬的に受容可能なその塩、或いは態様12に記載の組成物。
[態様14] 細菌性感染症の治療において使用するための、態様13に記載の化合物。
[態様15] 前記細菌が多剤耐性である、態様14に記載の化合物。
[態様16] 前記細菌が、グラム陰性である、態様14又は15のいずれか1項に記載の化合物。
【実施例】
【0160】
中間体1.ポリミキシンBノナペプチド
ポリミキシンB(20g)、固定化パパイン(185ELU/g)、リン酸カリウム緩衝液(25mM;pH7、1.25L)、塩化カリウム(30mM)、EDTA(10mM)及びシステイン(1mM)の混合物を、37℃で穏やかに撹拌しながら18時間インキュベートした。反応の進行を、LC−MSによって、表1に概略示した条件を使用してモニターした。固定化パパインを濾過によって除去し、そして濾液を真空中で濃縮して、固体の残渣を残し、これを、10%メタノール水溶液中に再懸濁し、そして室温で一晩放置した。上清をデカントし、そして真空中で濃縮した。ポリミキシンBノナペプチドを、残渣から、C18シリカのSPEによって、0−10%メタノール水溶液で溶出して精製した。適当な画分の蒸発により、生成物を白色の固体として得た。m/z 482、[M+2H]
2+。
【0161】
【表1】
【0162】
中間体2.テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド
【0163】
【化5】
【0164】
ポリミキシンBノナペプチドのDab残基上の遊離のγ−アミノ基の選択的BOC保護を、H.O’Dowd et al,Tetrahedron Lett.,2007,48,2003−2005の方法を使用して行った。ポリミキシンBノナペプチド(中間体1、7.5g、7.78mmol)を、水(65mL)中に超音波処理を伴って懸濁した。ジオキサン(65mL)及びトリエチルアミン(65mL)を加え、そして混合物を氷中で10分間冷却してから、1−(Boc−オキシイミノ)−2−フェニルアセトニトリル(Boc−ON)(7.67g;31.15mmol)を加えた。反応の進行をLC−MSによって追跡し、そして30分後完結に達し、この時点で混合物を20%のメタノール性アンモニア(50mL)の添加によってクエンチした。液相をデカントし、そして残留固体をシリカゲルのクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の0−20%メタノールの溶出剤)によって精製して、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチドを、白色の固体(2.5g、24%)として得た。TLC、R
f0.2(ジクロロメタン中の10%メタノール)。m/z 1362.8[MH]
+。
【0165】
中間体3.コリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチド
コリスチン(ポリミキシンE、5g)を、固定化パパイン(185ELU/g)、リン酸カリウム緩衝液(25mM;pH7、1.25L)、塩化カリウム(30mM)、EDTA(10mM)及びシステイン(1mM)と共に37℃で32時間、穏やかに撹拌しながら処理して、コリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチドを生成した。反応の進行を、LC−MSによって中間体1、表1に概略示した条件を使用してモニターした。固定化パパインを濾過によって除去し、そして濾液を真空中で濃縮して、固体の残渣を残し、これを10%のメタノール水溶液中に再懸濁し、そして室温で一晩放置した。上清をデカントし、そして真空中で濃縮した。コリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチドを、残渣から、C18シリカ(10g)のSPEによって、0−25%メタノール水溶液で溶出して精製した。適当な画分の蒸発により、生成物を、白色の固体として得た。m/z 465.32[M+2H]
2+。
【0166】
中間体4.テトラ−(Boc)コリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチド
【0167】
【化6】
【0168】
コリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチド(2.5g、2.69mmol)を、水(35mL)中に超音波処理を伴って懸濁した。ジオキサン(35mL)及びトリエチルアミン(35ml)を加え、そして混合物を氷中で10分間冷却してから、1−(Boc−オキシイミノ)−2−フェニルアセトニトリル(Boc−ON)(2.65g;10.76mmol)を加えた。反応の進行をLC−MSによって追跡し、そして10分後完結に達し、この時点で混合物を20%のメタノール性アンモニア(25mL)の添加によってクエンチした。液相をデカントし、そして残留固体を水中に再溶解し、そしてジクロロメタン及びイソ−ブタノールで連続して抽出した。LC−MS分析に基づき、デカントした液体、並びにジクロロメタン及びイソ−ブタノールの両方の抽出物を一緒にプールし、続いて真空中で濃縮して、黄色のゴム状物を得て、これをフラッシュクロマトグラフィー(Si60A−35−70)に付加した。カラムを、ジクロロメタン中の0−20%メタノール(2%アンモニアを含有)で溶出した。ジクロロメタン中の7−10%メタノール(2%のアンモニアを含有)で溶出したカラム画分から、テトラ−(Boc)コリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチドを、白色の固体(1.18g、33%)として得た。m/z 1329.7[M+H]
+。
【0169】
実施例1.[2(R,S)−2−ヒドロキシオクタノイル]ポリミキシンBノナペプチド、トリフルオロ酢酸塩。
【0170】
【化7】
【0171】
a)[2−(R,S)−2−ヒドロキシオクタノイル][テトラ−(Boc)]−ポリミキシンBノナペプチド
【0172】
【化8】
【0173】
2−ヒドロキシオクタン酸(1.16g、7.34mmol)を、ジクロロメタン(2mL)中に溶解した。次いでN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.19mL、7.34mmol)及びヘキサフルオロリン酸2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム(HATU)(2.79g、7.34mmol)を反応混合物に加えた。室温で30分間撹拌した後、中間体2の化合物(2.0g、1.47mmol)を加えた。16時間後、反応の完結をLC−MSによって確認し、そして反応混合物を乾燥状態まで蒸発し、そしてシルカゲルのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の0−10%メタノールの溶出剤)を使用して精製した。適当な画分を濃縮して、[2(R,S)−2−ヒドロキシオクタノイル][テトラ−(Boc)]−ポリミキシンBノナペプチドを無色の油状物(1.28g、58%)として残した。TCL、R
f0.6(ジクロロメタン中の10%メタノール)。m/z 1527.5、[M+Na]
+。
【0174】
b)表題化合物:[2−(R,S)−2−ヒドロキシオクタノイル]ポリミキシンBノナペプチド、トリフルオロ酢酸塩
2−ヒドロキシオクタノイル[テトラ−(Boc)]−ポリミキシンBノナペプチド 1.28g、0.85mmol)を、ジクロロメタン(2mL)中に溶解した。トリフルオロ酢酸(3.9mL、51.02mmol)を加え、そして混合物を室温で16時間撹拌し、その時間後、LC−MSにより反応の完結を確認した。反応混合物を真空中で濃縮して、[2(R,S)−2−ヒドロキシオクタノイル]ポリミキシンBノナペプチド、トリフルオロ酢酸塩を、無色の油状物(1.3g、93%)として残した。TCL、Rf基線(ジクロロメタン中の10%メタノール)。m/z 1104.8、[M+H]
+。
【0175】
実施例2.[2(R,S)−2−ヒドロキシオクタノイル]ポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩
【0176】
【化9】
【0177】
実施例1の化合物(1.3g)に、水(1mL)を加え、そして混合物を5分間超音波処理した。得られた懸濁液に、混合物がpH9に達するまで、1MのNaHCO
3(20mL)を加えた。次いで混合物を10gのC18SPEカラムを通過させ、0、40、50、60、70、80及び100%のメタノール水溶液で連続して溶出した。それぞれの画分のLC−MS分析は、所望の生成物が60、70及び80%のメタノール水溶液の画分中に溶出されたことを示した。これらの画分をプールし、そして蒸発して、白色の固体(0.5g)を残し、これにpH7が達成されるまで、0.1MのH
2SO
4(30mL)を加えた。tert−ブタノール(10mL)を加え、そして混合物を16時間室温で撹拌し、そしてその後、冷凍乾燥して、[2(R,S)−2−ヒドロキシオクタノイル]ポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩を、白色の固体(0.52g)として得た。表2に概略記載した条件によるHPLCによる分析は、5.93分の保持時間を与えた。m/z 1104.9[MH]
+。
【0178】
【表2】
【0179】
実施例3.2−アミノエタノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩
【0180】
【化10】
【0181】
2−アミノエタノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及び2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−エタン酸から、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)4.99分;m/z 1020.8[MH]
+。
【0182】
実施例4.3−アミノプロパノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩
【0183】
【化11】
【0184】
3−アミノプロパノイルポリミキシンBノナペプチド硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及び3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−プロパン酸から、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)4.97分;m/z 1034.42[MH]
+。
【0185】
実施例5.3−(N,N−ジメチルアミノ)−プロパノイルポリミキシンBノナペプチド硫酸塩
【0186】
【化12】
【0187】
3−(N,N−ジメチルアミノ)−プロパノイルポリミキシンBノナペプチド硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及び3−(N,N−ジメチルアミノ)プロパン酸から、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)5.01分;m/z 530.92[M+2H]
2+。
【0188】
実施例6.4−アミノブタノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩
【0189】
【化13】
【0190】
4−アミノブタノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及び4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸から、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)4.97分;m/z 524.91[M+2H]
2+。
【0191】
実施例7.6−アミノヘキサノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩
【0192】
【化14】
【0193】
6−アミノヘキサノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及び6−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキサン酸から、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)4.97分;m/z 1077.15、[MH]
+。
【0194】
実施例8.8−ヒドロキシオクタノイルポリミキシンBノナペプチド硫酸塩
【0195】
【化15】
【0196】
8−ヒドロキシオクタノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及び8−ヒドロキシオクタン酸から、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)5.29分;m/z 1104.87、[M]
+。
【0197】
実施例9.8−アミノオクタノイルポリミキシンBノナペプチド硫酸塩
【0198】
【化16】
【0199】
8−アミノオクタノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及び8−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)オクタン酸から、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)5.02分;m/z 1105.2、[MH]
+。
【0200】
実施例10.3−(N−メチルアミノ)プロパノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩
【0201】
【化17】
【0202】
3−(N−メチルアミノ)プロパノイルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及びN−[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]−N−メチルβ−アラニンから、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)5.0分;m/z 525.05、[M+2H]
2+。
【0203】
実施例11.(1R,S/2R,S)−2−アミノシクロペンタンカルボニルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩
【0204】
【化18】
【0205】
(1R,S/2R,S)−2−アミノシクロペンタンカルボニルポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及びcis−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)シクロペンタンカルボン酸から、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)5.07分;m/z 1074.87、[MH]
+。
【0206】
実施例12.3−アミノプロパノイルコリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチド、硫酸塩
【0207】
【化19】
【0208】
実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って、3−アミノプロパノイルコリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチド、硫酸塩を、テトラ−(Boc)コリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチド(中間体4)及びBoc−β−アラニンから調製した。保持時間(HPLC)4.98分;m/z 501、[M+2H]
2+。
【0209】
実施例13.[3−(R,S)−ピロリジン−3−カルボニル]ポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩
【0210】
【化20】
【0211】
[3−(R,S)−ピロリジン−3−カルボニル]ポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及び3−(N−tert−ブトキシカルボニル)−ピロリジンカルボン酸から、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)4.91分;m/z 1060.58、[MH]
+。
【0212】
実施例14.[3(R,S)−3−アミノ−3−シクロヘキサンプロパノイル]ポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩
【0213】
【化21】
【0214】
[3(R,S)−3−アミノ−3−シクロヘキサンプロパノイル]ポリミキシンBノナペプチド、硫酸塩を、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド及び3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−シクロヘキサンプロパン酸から、実施例1及び2のために記載した反応の順序に従って調製した。保持時間(HPLC)5.24分;m/z 1116.78、[MH]
+。
【0215】
更なる実施例15−35
実施例15−35の更なる化合物を、上記実施例1及び2のために記載した調製の方法を使用して調製した。従って、ポリミキシンBノナペプチドのN末端に置換基を有する化合物は、テトラ−(Boc)ポリミキシンBノナペプチド(中間体2)及び適当なカルボン酸から、カップリング剤(例えばHATU)及び塩基(例えばDIPEA)(実施例1aに記載したように)の存在中で調製され、酸(例えばTFA)(実施例1aに記載したように)による処理、及び適当な仕上げ(実施例2に記載したように)により追従された。同様に、ポリミキシンEノナペプチドのN末端に置換基を有する化合物は、テトラ−(Boc)コリスチン(ポリミキシンE)ノナペプチド(中間体4)及び適当なカルボン酸から、カップリング剤(例えばHATU)及び塩基(例えばDIPEA)(実施例1bに記載したように)の存在中で調製され、酸(例えばTFA)(実施例1bに記載したように)による処理、及び硫酸塩への転換(実施例2に記載したように)により追従された。
【0216】
実施例15−35の更なる化合物は、以下の表3に示される。
【0217】
表中に与えられた記録された保持時間及び質量は、表2中で先に記載されたLC−MS条件を使用して得られた。
【0218】
化合物は、示された化合物の硫酸塩の形態として単離された。
【0219】
【表3-1】
【0220】
【表3-2】
【0221】
【表3-3】
【0222】
【表3-4】
【0223】
【表3-5】
【0224】
【表3-6】
【0225】
【表3-7】
【0226】
【表3-8】
【0227】
【表3-9】
【0228】
【表3-10】
【0229】
【表3-11】
【0230】
抗細菌活性
化合物の力価及び薬効範囲を評価するために、四つのグラム陰性病原体、Escherichia coli、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniae及びAcinetobacter baumanniiのそれぞれ四つの株に対して感受性試験を行った。
【0231】
試験の前日、3ないし4個のコロニーを、新鮮なミューラ−ヒントン寒天(MHA)プレートから採取し、そして10mLのカチオン調整MHB(CaMHB)中に移した。培養物を、37℃で250rpmで18−20時間インキュベートしてから、新鮮なCaMHBで100倍に希釈した。継代培養物を、OD
600が、10
5−10
6CFU/mlに対応する0.2−0.3に達するまで更に増殖した。活発に増殖する培養物を、新鮮な培地で100倍に希釈し、そして接種のために使用した。
【0232】
MIC試験を、170μL(150μLの抗細菌剤を含有するブロス、20μLの接種物)の合計体積で、滅菌の96ウェルのマイクロタイタープレート中で、CaMHB中の2倍の抗細菌性の一連の希釈によって行った。アッセイを二重で行った。プレートを、18−20時間37℃で振盪せずに好気的にインキュベートし、MICは、目に見える増殖を防止する最低の薬物濃度として定義する。
【0233】
表4は、ポリミキシンB(PMB)と比較した実施例2ないし14のMIC(マイクログラム/mL)を示す。
【0234】
【表4】
【0235】
抗細菌活性の更なる研究
表4Aは、更なる実施例15ないし35並びに実施例2、6及び14の化合物に対して得られたMIC値を示す。データは、異なったバッチのカチオン調整ミューラ−ヒントンブロスを使用したことを除き、表4と同様な条件下で得られた。これらの化合物のMIC値を、ポリミキシンB、コリスチン硫酸塩、CB−182,804及びNAB739(TFA塩として)に対して得られた値と比較した。CB−182,804は、N−末端にアリール尿素置換基を持つポリミキシンデカペプチド誘導体であり、これは、ポリミキシンB(WO2010/075416中の化合物5、37ページ参照)より低い毒性を有すると主張されている。NAB739は、Vaara等によって先に記載されている。
【0236】
【表4A-1】
【0237】
【表4A-2】
【0238】
【表4A-3】
【0239】
実施例2及び6の化合物のin vitroの抗細菌活性を、500種のグラム陰性細菌分離菌のパネルに対して、コリスチンと同時に評価した。パネルは、A.baumannii、E.coli、K.pneumoniae及びP. aeruginosaのそれぞれの100種の臨床的分離菌からなっていた。パネルは、現時点の欧州及び米国の疫学を代表し、そして現時点で臨床的に使用される抗細菌剤に対する定義された耐性の表現型を持つ多くの関連する株を含んでいた。これらの耐性株は、20種のA.baumannii、22種のE.coli、25種のK.pneumoniae及び20種のP.aeruginosa株を含んでいた。
【0240】
研究の結果を表4Bに要約する。全ての化合物は、16μg/mLの最大濃度まで評価されたコリスチンを除き、64μg/mLの最大濃度まで試験された。
【0241】
【表4B】
【0242】
マウスにおけるE.coliの大腿部感染症に対するin vivoの効力
本発明の8種の化合物(実施例2、4、5、6、7、8、10、及び11)のin vivoの効力を、E.coliのマウスの大腿部感染症モデルで評価した。結果を表5に要約する。
【0243】
5匹の、体重22±2gのメスの特異的病原体を持たないCD−1マウスの群を使用した。マウスを、−4(150mg/kg)及び−1(100mg/kg)日目のシクロフォスファミドの腹腔内投与によって好中球減少性にした。0日目に、マウスに、10
5CFU/マウスのEscherichia coli分離菌ATCC25922を右大腿部に筋肉内的に接種した。1時間目に、5匹のマウスからCFU計数を決定し、そして残りのマウス(群当たり5匹)を、感染症後の+1及び6時間目の薬物の皮下注射で処置した。それぞれの研究において、試験化合物当たり、それぞれ一日二回投与の1.5及び5mg/kgの二つの投与群が存在した。実施例2、4、5、6、7、8、10、11、及びポリミキシンBを、通常の生理食塩水中で2mg/mLで調製し、そして溶液を、必要に応じて0.1MのH
2SO
4又は4.2%のNaHCO
3の添加によってpH6−7に調節した。感染の24時間後、マウスを人道的に安楽死させた。それぞれのマウスの右大腿部の筋肉を回収し、ホモジナイズし、連続的に希釈し、そしてCFU決定のために、ブレインハートインフュージョン寒天+0.5%木炭(重量/容量)プレート上に置いた。感染後24時間の対照の計数と比較した右大腿部の全CFUの減少を、それぞれの投与量群に対して決定した。10mg/kg/日における化合物2及び6は、ポリミキシンBのそれに匹敵する、細菌計数において3log
10を超える減少を伴う効力を示した。
【0244】
【表5】
【0245】
マウスにおけるE.coliの大腿部感染症に対するin vivo効力に対する更なる研究
実施例14の化合物のin vivoの効力を、上記の実施例に記載した方法を使用するE.coliのマウスの大腿部感染症モデルで評価した。結果をポリミキシンBと比較して表5Aに要約する。
【0246】
【表5A】
【0247】
10mg/kg/日における化合物14は、ポリミキシンBのそれに匹敵する、細菌計数において3log
10を超える減少を伴う効力を示した。
【0248】
マウスにおけるKlebsiella pneumoniaeの大腿部感染症に対するin vivoの効力に対する更なる研究
先に記載したものと同じ方法を使用して、本発明の三つの化合物(実施例2、6、及び14)のin vivoの効力を、Klebsiella pneumoniaeATCC10031のマウス大腿部感染症モデルで、比較物質としてコリスチン(ポリミキシンE)を使用して評価した。結果を表5Bに要約する。10mg/kg/日における化合物2、6及び14は、コリスチンのそれに匹敵する、細菌計数において概略2log
10の減少を伴う効力を示した。
【0249】
【表5B】
【0250】
薬物動態及び尿排出の研究
本発明の三つの化合物(実施例2、4及び6)及びポリミキシンBの薬物動態及び尿排出を、ラットで評価した。
【0251】
薬物溶液を、通常の生理食塩水中で4mg/mLで調製し、そしてpHを、適当な体積の0.1MのH
2SO
4又は4.2%のNaHCO
3を加えることによって、6−7に調節した。溶液をフィルターで滅菌し、そして使用前に−80℃で保存した。実験の当日、薬物溶液を、滅菌の通常の生理食塩水で1mg/mLに希釈した。
【0252】
3匹のオスのSprague Dawleyラットの群を、研究の前に最低4日間順化させた。ラットを、イソフルランを使用して麻酔し、そしてカニューレを頸静脈に挿入した。手術の一日後、ラットに、1mg/kgの溶液の静脈内ボーラス注射で、カニューレを通して投与し、通常の生理食塩水による洗浄によって追従した。血液を、化合物の投与の前に、そしてその後0.08、0.25、0.5、1、3、6、8及び24時間目に、カニューレを通して手作業で収集した。血液収集の直後に、遠心によって血漿を回収した。24時間の尿試料を、化合物の投与の前、並びに0−4時間、4−6時間、及び6−24時間の間隔でその後収集した。血漿及び尿の試料を−20℃で冷凍した。
【0253】
薬物の血漿及び尿濃度決定を、液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS/MS)によって行った。分析の前に、血漿及び尿試料を次のように調製した。血漿試料を分析の当日に解凍し、そして0.1%(容量/容量)のギ酸及び100ng/mLの内部標準を含有する3体積のアセトニトリルと混合した。遠心後、上清を96ウェルプレートに移し、そしてLC−MS/MSによる分析に対する準備として水で1:1に希釈した。尿試料を、OasisHLBカートリッジ(Waters,UK)の固相抽出(SPE)によって、100%メタノールで溶出して精製した。アリコートを、96ウェルプレートに移し、そして水で1:1に希釈してから、LC−MS/MSによる分析に対する準備として内部標準溶液を加えた。
【0254】
カラム: Kinetex 2.6μm、XB−C18 50×2.1mm
移動相A: 水+0.15%TFA又は0.1%ギ酸
移動相B: アセトニトリル+0.15%TFA又は0.1%ギ酸
流量: 0.5mL/分
勾配:
時間 0分 95%A 5%B
時間1.20分 5%A 95%B
時間1.50分 5%A 95%B
時間1.51分 95%A 5%B
時間3.00分 95%A 5%B
サイクル時間 4.5分
注入体積: 20μL。
【0255】
薬物動態のパラメーターは、WinNonLin v5.3を使用するノンコンパートメント解析によって決定した。尿の回収を、注射後の最初の24時間に対して尿中で回収されたインタクトな薬物のパーセントとして記録した。
【0256】
【表6】
【0257】
興味あることに、全ての化合物は、ポリミキシンBより高い尿回収を示す。従来の研究は、ポリミキシンE(コリスチン)が、大規模な腎尿細管再吸収を受けることを報告した(Li et al.,Antimicrob.Agents and Chemotherapy,2003,47(5);Yousef et al.,Antimicrob.Agents and Chemotherapy,2011,55(9))。理論によって束縛されることを望むものではないが、化合物の高い尿排出は、減少した腎尿細管再吸収を反映することができ、これは、次にその腎毒性の潜在性を減少することができる。
【0258】
In vitroの腎細胞毒性アッセイ
化合物の腎細胞毒性を、正常なヒトの腎臓から誘導される固定化された近位尿細管細胞系のHK−2細胞系を使用するin vitroアッセイで評価した。化合物の毒性を説明するための終点は、細胞の代謝活性と相関するレサズリンの減少であった。
【0259】
細胞を、150cm
2のフラスコ中の25mLの補充された(5ng/mLのEGF及び50μg/mLのBPEで)KSF中で培養した。細胞を70%密集で、最大25継代で維持した。
【0260】
1日目:培地を除去し、そして細胞を10mlのDPBSで洗浄した。次いで、6mlの0.25%トリプシンの溶液をEDTAと共にフラスコに加え、そして細胞をインキュベーターに戻した。1ないし3分のインキュベーション後、14mlの培地をフラスコに加えて、トリプシンを不活化した。細胞の懸濁液を遠心試験管に移し、そして細胞を1000rpmで6分間ペレット化した。次いで細胞のペレットを、EGF及びBPEで補充された新鮮な培地中に再懸濁した。細胞の数を数え、そして細胞を、EGF及びBPEで補充された新鮮な培地中で、46875細胞/mLに希釈した。7500個の細胞を、160μlの体積でそれぞれのウェルに分配し、そして37℃で24時間インキュベートした。
【0261】
2日目:試験化合物を培地に直接調製した。9点の濃度を、新鮮な培地中の2倍希釈で1000μg/mLから1.95μg/mLまで調製した。マイクロタイタープレートをインキュベーターから取出し、そして培地を、100μLの化合物溶液の希釈物で置換えた。全ての濃度の組を三重で行い、そして正及び負の対照を、それぞれのプレートに加えた。次いでプレートを、24時間37℃で5%CO
2の湿った雰囲気中でインキュベートした。
【0262】
3日目:レサズリン(CellTiter−Blue,Promega)を含有する試薬を、PBS中に希釈(1:4)し、そしてそれぞれのウェルに、20%(容積/容積)で加えた。次いでプレートを37℃で2時間インキュベートしてから、蛍光が減少した生成物を検出した。
【0263】
培地のみのバックグラウンド値を、GraphPad Prismを使用して、データを分析する前に差引いた。化合物の濃度値を、対数値としてプロットして、用量−反応曲線を当てはめ、そしてIC
50値を決定することを可能にした(表7)。
【0264】
【表7】
【0265】
In vitroの腎細胞毒性アッセイに対する更なる研究
更なる実施例化合物の腎細胞毒性を、上記の実施例中に記載したようなHK−2細胞を使用するin vitroアッセイで評価した。これらの化合物に対するIC
50値を以下の表7Aに示す。比較のために、コリスチン、並びにCB182,804(WO2010/075416の化合物5)及びNAB739の腎細胞毒性も更に評価した。
【0266】
【表7A】
【0267】
In vitroの腎細胞毒性アッセイに対する更なる研究
ポリミキシンの腎毒性のモデル(Yousef et al.,Antimicrob.Agents Chemother.,2011,55(9):4044−4049から適合)をラット中に確立した。実施例2、6、及び14の化合物をモデル中で試験し、そしてコリスチン(その硫酸塩の形態で)と比較した。1週間の順化後、オスのSprague−Dawleyラットを、頸静脈カニューレで外科的に準備し、そして必要に応じて、前もって指定された収容ケージ又は代謝ケージのいずれかに別個に収容した。コリスチン及び実施例の化合物を、生理食塩水中で調製した。化合物を、7時間間隔で一日2回、頸静脈カニューレを経由して導入した。それぞれの投与量を、3日間で最大投与量まで徐々に増加し、次いでこれを研究の終了まで投与した。24時間の尿収集(氷上)を、投与前、並びに4及び7日目に行った。投与計画を以下の表8に記載する。
【0268】
【表8】
【0269】
N−アセチル−ベータ−D−グルコサミニダーゼ(NAG)の尿中の活性を、Roche Applied ScienceからのNAGアッセイキットを使用して分光光度的に決定した。腎臓損傷のバイオマーカーを、Multi−Spot(登録商標)Assay System(メソスケールディスカバリー)からのKidney Injury Panel IIを使用して決定した。
【0270】
8mg/kgの計画を使用して投与された実施例2、6、及び14は、同じ投与計画のコリスチンと比較して、腎バイオマーカーNAG、アルブミン及びシステインCの有意に減少したレベルを示した(
図1ないし3を参照)。反応は、2mg/kgの最大濃度におけるコリスチンによって誘発されるものと同様であった。
【0271】
図1は、化合物2、6、及び14並びにコリスチンに対する0、4及び7日目におけるNAGの濃度(ng/24時間)を示す。左手のグラフは、左から右に、コリスチン(2mg/kgBID)、コリスチン(8mg/kgBID)、化合物2(8mg/kgBID)及び6(8mg/kgBID)を示す。右手のグラフは、コリスチン(2mg/kgBID)、コリスチン(8mg/kgBID)及び化合物14(8mg/kgBID)を示す。
【0272】
図2は、化合物2、6、及び14並びにコリスチンに対する0、4及び7日目におけるアルブミンの濃度(ng/24時間)を示す。左手のグラフは、左から右に、コリスチン(2mg/kgBID)、コリスチン(8mg/kgBID)、化合物2(8mg/kgBID)及び6(8mg/kgBID)を示す。右手のグラフは、コリスチン(2mg/kgBID)、コリスチン(8mg/kgBID)及び化合物14(8mg/kgBID)を示す。
【0273】
図3は、化合物2、6、及び14並びにコリスチンに対する0、4及び7日目におけるシスタチンCの濃度(ng/24時間)を示す。左手のグラフは、左から右に、コリスチン(2mg/kgBID)、コリスチン(8mg/kgBID)、化合物2(8mg/kgBID)及び6(8mg/kgBID)を示す。右手のグラフは、コリスチン(2mg/kgBID)、コリスチン(8mg/kgBID)及び化合物14(8mg/kgBID)を示す。