(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0023]本発明の様々な態様についての以下の詳細な説明は本来典型的な例にすぎず、本発明の主題を限定するか、あるいは本発明の主題の用途と利用法を限定することを意図するものではない。さらに、前述した発明の背景または以下の詳細な説明で提示されるいかなる理論によっても拘束されないことが意図されている。
【0015】
[0024]以下で詳細に検討される態様は、発光性のホウ酸塩、発光性ホウ酸塩を製造するための方法、発光性ホウ酸塩を含む物品、および物品の認証という主旨において発光性ホウ酸塩を確認するための方法を含む。以下で説明する発光性ホウ酸塩およびそれらを検出するための方法と装置の態様は、認証のために用いられる利用可能な物質の多様性を増大させる。ここで説明される発光性ホウ酸塩の態様からの放射を特徴づけるスペクトル特性と減衰時間定数は、認証の目的のための測定可能な量として用いられるだろう。
【0016】
[0025]
図1は、様々な実施態様に係る、発光性のホウ酸塩100において可能性のある成分を示す。発光性のホウ酸塩100はホスト(寄主)のホウ酸塩110を含み、これはホストの結晶格子物質としての役割をもつ。発光性のホウ酸塩100はまた、1つの態様においてネオジム120(Nd)および/またはイッテルビウム130(Yb)も含んでいる。さらなる態様において、発光性のホウ酸塩100はクロム140(Cr)も含んでいる。
【0017】
[0026]後にさらに詳しく説明するが、ネオジム120とイッテルビウム130は発光性ホウ酸塩100において放出性イオンとして機能する。放出性イオンとして、ネオジム120とイッテルビウム130は適当な励起エネルギーを受けると検出可能な輻射線を生成する。後にさらに詳しく説明するが、ネオジム120とイッテルビウム130は、多重の機構によって後続する放射のためのエネルギーを受け取るだろう。例えば、ネオジム120は励起輻射線を直接吸収することができ、そしてその後にネオジム120はその吸収したエネルギーの少なくとも幾分かを(典型的には、励起輻射線とは異なっていて、もっと長い波長において)放射するかもしれない。イッテルビウム130も直接励起されるかもしれないが、イッテルビウムの吸収帯は放射帯(emission bands)(発光帯)に極めて近い(例えば、吸収帯は約910nmにおいて開始する)。ホストのホウ酸塩110は、このホストのホウ酸塩110の格子イオンに代わって置換するクロム140も含んでもよいが、この場合、クロム140は増感性イオンとして機能する。増感性イオンとして、クロム140はクロムの吸収帯の中で励起輻射線を吸収し、そしてそのエネルギーの少なくとも幾分かをネオジム120とイッテルビウム130に移すだろう。次に、ネオジム120とイッテルビウム130は、クロム140からエネルギーを受け取った結果として検出可能な放射を生成するだろう。さらに、ネオジム120も増感性イオンとして機能するかもしれず、そしてエネルギー(例えば、ネオジム120が直接吸収したエネルギー、またはネオジム120がクロム140から受け取ったエネルギー)をイッテルビウム130に移し、そしてイッテルビウム130はネオジム120からエネルギーを受け取った結果として検出可能な放射を生成するだろう。イッテルビウム130も、クロム140からエネルギーを受け取った結果として検出可能な放射を生成するかもしれない。
【0018】
[0027]ホストのホウ酸塩110は、その中にネオジム120、イッテルビウム130および/またはクロム140が組み込まれる(すなわち、ホウ酸塩110の置換可能な1種以上の元素として置換される)物質で構成される。特に、ホストのホウ酸塩110は結晶格子であり、その格子の中の様々な位置において様々な化学成分が置換しうる。ある態様によれば、ホストのホウ酸塩110は単斜晶のハンタイト状構造、三方晶のハンタイト状構造および混合したハンタイト状構造からなる群から選択される結晶構造を有し、ここで「ハンタイト状」とは、ホストのホウ酸塩110が鉱物のハンタイトと同形であることを意味する。特に、ある態様において、ホストのホウ酸塩110はR32の空間群の三方晶構造を有していてもよい。ホストのホウ酸塩110は正規組成のホウ酸塩であってもよく、これは、1種以上の放出性イオン(例えば、ネオジムおよび/またはイッテルビウム)が別の格子イオン(例えば、イットリウム)に代わってホストの格子の中に100パーセント置換されていて、そして最終的な物質が有用な発光特性をなおも保持していることを意味する。ホストのホウ酸塩110の中に置換される各々のイオン(または原子)の量は、ここでは原子パーセントに関して説明される。
【0019】
[0028]ある態様において、ホストのホウ酸塩110はMeX
3B
4O
12の式を有するホウ酸塩であり、ここでMeは第一の置換可能な元素であり、Xは第二の置換可能な元素であり、Bはホウ素であり、そしてOは酸素である。ここで用いる「置換可能な元素」という用語は、結晶構造の中の特定の位置を占めるホストのホウ酸塩110の元素を指し、このとき、発光性のホウ酸塩100を形成する間に前記の位置に別の元素(例えば、ネオジム120、イッテルビウム130および/またはクロム140)が置換しうる。例えば、ホストのホウ酸塩110がMeX
3B
4O
12の式を有するとき、Meは第一の置換可能な元素であり、そして様々な態様は、Meの位置に置換されたネオジム120とイッテルビウム130のいずれか一方または両方を含む。さらに、Xは第二の置換可能な元素であり、様々な態様は、Xの位置に置換されたクロム140を含む。
【0020】
[0029]様々な態様において、Meはイットリウム(Y)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、ルテチウム(Lu)、およびこれらの混合物からなる群から選択される元素であり、そしてXはアルミニウム(Al)、スカンジウム(Sc)、ガリウム(Ga)、およびこれらの混合物からなる群から選択される元素である。例えば、ホストのホウ酸塩110は、様々な態様において、ホウ酸イットリウムアルミニウム(YAl
3B
4O
12、ここでは「YAB」という)、ホウ酸ランタンアルミニウム(LaAl
3B
4O
12)、ホウ酸ガドリニウムアルミニウム(GdAl
3B
4O
12)またはホウ酸ルテチウムアルミニウム(LuAl
3B
4O
12)であってよい。他の態様において、ホストのホウ酸塩110は、ホウ酸イットリウムスカンジウム(YSc
3B
4O
12)、ホウ酸ランタンスカンジウム(LaSc
3B
4O
12)、ホウ酸ガドリニウムスカンジウム(GdSc
3B
4O
12)またはホウ酸ルテチウムスカンジウム(LuSc
3B
4O
12)であってよい。さらに他の態様において、ホストのホウ酸塩110は、ホウ酸イットリウムガリウム(YGa
3B
4O
12)、ホウ酸ランタンガリウム(LaGa
3B
4O
12)、ホウ酸ガドリニウムガリウム(GdGa
3B
4O
12)またはホウ酸ルテチウムガリウム(LuGa
3B
4O
12)であってよい。以下の説明では、様々な態様とともに用いるのに適したホストのホウ酸塩110の例として、主としてYABを用いる。(上に挙げた代替例のような)YAB以外のホストのホウ酸塩も用いることができ、そのような代替の態様は本発明の主題の範囲内であると考えられる、と理解すべきである。
【0021】
[0030]発光性のホウ酸塩100の第一の態様は、第一の置換可能な元素(例えば、ホストのホウ酸塩110がMeX
3B
4O
12の式を有するときはMe)の代わりに少なくとも20パーセントの第一の置換パーセントで用いられるネオジム120および/または第一の置換可能な元素の代わりに第二の置換パーセントで用いられるイッテルビウム130を伴うホストのホウ酸塩110を含むものである。第二の置換パーセントは第一の置換パーセントと同じか、または異なっていてもよい。例えば、ある態様において、ネオジム120は第一の置換可能な元素の代わりに約50〜約95パーセントの範囲の置換パーセントで用いられ、そしてイッテルビウム130は第一の置換可能な元素の代わりに約5〜約50パーセントの範囲の置換パーセントで用いられる。別の実施態様において、ネオジム120は第一の置換可能な元素の代わりに約80〜約90パーセントの範囲の置換パーセントで用いられ、そしてイッテルビウム130は第一の置換可能な元素の代わりに約10〜約20パーセントの範囲の置換パーセントで用いられる。
【0022】
[0031]ある態様によれば、ネオジム120および/またはイッテルビウム130によって置き換えることのできるホストのホウ酸塩110のMe原子の数は100パーセントに等しい。言い換えると、第一の置換可能な元素Meに代わるネオジム120とイッテルビウム130の合計の(合わせた)置換パーセントは100パーセントまでであってよいが、それは100パーセント未満とすることもできる。ネオジム120、イッテルビウム130およびクロム140の原子との置換を可能にするホストのホウ酸塩110のMe原子とX原子のそれぞれは、置換されるイオンと近似する大きさ、近似する添加量および近似する配位選択性を有する。発光性のホウ酸塩100を形成する間、ホストのホウ酸塩110の中の各々の位置における原子は100原子パーセントを占めるだろう。多くの放出性イオンは100パーセントの置換レベルよりも十分に低く濃度が抑制されるが、特定の態様においては、ネオジム120を、濃度の広範な抑制を行うことなく100パーセントまでの置換パーセントでホストのホウ酸塩110の中に置換してもよいことが見いだされた。ホストのホウ酸塩110の様々な態様のうちの幾つかのものにおいて、ネオジム120の高い置換レベルが可能であると考えられ、というのは、ホストのホウ酸塩110における放出性イオンの物理的な間隔は十分に離れていて、従って、相互作用の条件はかなり低下しているからである。
【0023】
[0032]発光性のホウ酸塩100の第二の態様は、第一の置換可能な元素(例えば、ホストのホウ酸塩110がMeX
3B
4O
12の式を有するときはMe)の代わりに用いられるネオジム120とイッテルビウム130のいずれか一方または両方および第二の置換可能な元素(例えば、ホストのホウ酸塩110がMeX
3B
4O
12の式を有するときはX)の代わりに用いられるクロム140を伴うホストのホウ酸塩110を含むものである。例えば、ある態様において、発光性のホウ酸塩100は、第一の置換可能な元素の代わりに用いられるネオジム120と第二の置換可能な元素の代わりに用いられるクロム140を含んでいてよい。別の態様において、発光性のホウ酸塩100は、第一の置換可能な元素の代わりに用いられるイッテルビウム130と第二の置換可能な元素の代わりに用いられるクロム140を含んでいてよい。さらに別の態様において、発光性のホウ酸塩100は、第一の置換可能な元素の代わりに用いられるネオジム120とイッテルビウム130の両方および第二の置換可能な元素の代わりに用いられるクロム140を含んでいてよい。
【0024】
[0033]クロム140を含む上述した態様のいずれかにおいて、クロム140は100パーセントまでの置換パーセントで用いられていてもよい。例えば、クロム140は約10〜約20パーセントの範囲の置換パーセントで用いられてもよい。クロム140はネオジム120にエネルギーを極めて効率よく移動させることが見いだされた。従って、クロム140を含む態様において、ネオジム120の置換パーセントは、クロム140を含まない態様と比較してかなり低くてもよく、それでもなお検出可能な放射を効率よく生成することができる。例えば、クロム140を含む態様において、ネオジム120は約5パーセント程度に低い置換パーセントで第一の置換可能な元素の代わりに用いられてもよい(例えば、約5〜約95パーセントの範囲や約10〜約20パーセントの範囲など)。クロム140とイッテルビウム130を含む(ネオジム120は含まれているか、または含まれていない)態様において、イッテルビウム130は約5パーセント程度に低い置換パーセントで第一の置換可能な元素の代わりに用いられてもよい(例えば、約5〜約50パーセントの範囲や約10〜約50パーセントの範囲など)。
【0025】
[0034]ホストのホウ酸塩110、ネオジム120およびイッテルビウム130を含む(しかし、クロム140は含まない)態様を、ここでは「Nd:Yb:ホウ酸塩」と称する。ホストのホウ酸塩110、ネオジム120およびクロム140を含む(しかし、イッテルビウム130は含まない)態様を、ここでは「Cr:Nd:ホウ酸塩」と称する。ホストのホウ酸塩110、イッテルビウム130およびクロム140を含む(しかし、ネオジム120は含まない)態様を、ここでは「Cr:Yb:ホウ酸塩」と称する。最後に、ホストのホウ酸塩110、ネオジム120、イッテルビウム130およびクロム140を含む態様を、ここでは「Cr:Nd:Yb:ホウ酸塩」と称する。
【0026】
[0035]ここで用いるとき、「適切な励起エネルギー」とは、発光性のホウ酸塩100の吸収性イオンの吸収帯と一致する波長の範囲を有する励起エネルギーを指す。上で挙げた態様のいずれかの発光性のホウ酸塩100に向けて適切な励起エネルギーを加えると、発光性のホウ酸塩100の中の吸収性イオンによって励起エネルギーが吸収され、そして発光性のホウ酸塩100の中の放出性イオン(すなわち、吸収性イオンと同じか、または異なるであろうイオン)が検出可能な放射を生成するだろう。例えば、ネオジム120を含む態様(例えば、Nd:Yb:ホウ酸塩、Cr:Nd:ホウ酸塩、およびCr:Nd:Yb:ホウ酸塩)において、ネオジム120は吸収性イオンとして機能し、これが適切な励起エネルギー(例えば、ネオジムの吸収帯における励起エネルギー)を直接吸収するだろう。イッテルビウムも含む態様(例えば、Nd:Yb:ホウ酸塩、およびCr:Nd:Yb:ホウ酸塩)において、ネオジム120はエネルギーをイッテルビウム130に効率よく移動させ、そしてイッテルビウム130は1つ以上のイッテルビウムの放射帯において検出可能な放射を生成することが見いだされた。従って、ネオジム120は吸収性イオンとして機能し、そしてイッテルビウム130は放出性イオンとして機能する。ネオジム120は放出性イオンとしても機能するかもしれず、それは1つ以上のネオジムの放射帯において検出可能な放射を生成する。ここで用いるとき、「放射帯」とは、電磁スペクトルの連続した範囲の波長であって、その範囲内で発光性の物質の1つ以上の放出性イオンから集中した無視できない(例えば、検出可能な)放射が生じることを意味することとして、ここでは定義される。任意の特定の放出性イオンについて、「放射帯」は、それよりも下ではそのイオンについての放射が無視できる低い方の波長と、それよりも上ではそのイオンについての放射が無視できる高い方の波長によって境界が限定される。
【0027】
[0036]加えて、クロム140を含む態様(例えば、Cr:Nd:ホウ酸塩、Cr:Yb:ホウ酸塩、およびCr:Nd:Yb:ホウ酸塩)において、クロム140は吸収性イオンとして機能する場合があり、これが適切な励起エネルギー(例えば、クロムの吸収帯における励起エネルギー)を直接吸収するだろう。ネオジム120とクロム140を含む態様(例えば、Cr:Nd:ホウ酸塩、およびCr:Nd:Yb:ホウ酸塩)において、クロム140によって直接吸収されたエネルギーの少なくとも幾分かはネオジム120に移動される場合があり、そしてクロム140からネオジム120へのエネルギー移動はかなり効率的であることが見いだされた。従って、ネオジムの吸収帯においてエネルギーを直接吸収することに加えて、ネオジム120はまた、クロム140の吸収とネオジム120への移動を介して、クロムの吸収帯と一致する励起エネルギーを間接的に吸収するだろう。そのような態様においては、クロム140は一次吸収剤として機能し、そしてネオジム120は二次吸収剤として機能するだろう。さらに加えて、イッテルビウムも含む態様(例えば、Cr:Nd:Yb:ホウ酸塩)において、ネオジム120はイッテルビウム130にエネルギーを効率的に移動し、そしてイッテルビウム130は1つ以上のイッテルビウムの放射帯において検出可能な放射を生成するかもしれない。さらに、ネオジム120も放出性イオンとして機能するかもしれず、それは1つ以上のネオジムの放射帯において検出可能な放射を生成する。クロム140とイッテルビウム130だけを含む態様(例えば、Cr:Yb:ホウ酸塩)において、十分な量のクロム140が存在する限りは(例えば、5%以上置換した場合)、クロム140によって直接吸収されたエネルギーの少なくとも幾分かはイッテルビウム130に移動される場合があり、そしてイッテルビウム130は1つ以上のイッテルビウムの放射帯において検出可能な放射を生成するだろう。従って、イッテルビウムの吸収帯においてエネルギーを直接吸収することに加えて、イッテルビウム130はまた、クロム140の吸収とイッテルビウム130への移動を介して、クロムの吸収帯と一致する励起エネルギーを間接的に吸収するだろう。
【0028】
[0037]後にさらに詳しく説明するが、発光性のホウ酸塩100の様々な態様において、イッテルビウム130は約985ナノメートル(nm)と約1050nmを中心とする比較的強い放射を生成し、このとき985nmの放射帯における放射は典型的により高い強度のものになる。加えて、幾つかの態様において、ネオジム120は約880nmと1065nmを中心とする比較的強い放射を生成し、このとき1065nmの放射帯における放射は典型的により高い強度のものになる。ネオジム120は適切な励起エネルギー(例えば、ネオジムの吸収帯における励起エネルギー)を直接吸収するかもしれないが、クロム140をも含む態様により、(クロム140がクロムの吸収帯において励起エネルギーを吸収した後に)クロム140からのエネルギー移動によってネオジム120も(あるいはネオジム120が代わって)励起されうるものとなる。クロム140についての吸収帯と比較すると、ネオジム120についての直接の吸収帯は比較的狭い。従って、クロム140を含有することは、発光性のホウ酸塩100がクロムの広い吸収帯における励起エネルギーに曝露される場合に、ネオジム120がかなりの量のエネルギーを受け取ることを可能にするのに有利である。
【0029】
[0038]
図2と
図3はそれぞれ、様々な実施態様に係る、ネオジムとイッテルビウムの放射への吸収性の寄与(
図2)およびクロムの吸収を介してのネオジムとイッテルビウムの放射への吸収性の寄与(
図3)を(nmでの)励起波長の関数として(任意単位(AU)で)示すグラフ200、300である。具体的には、
図2に示すように、イットリウムに代えてネオジムを80パーセント置換し、そしてイットリウムに代えてイッテルビウムを20パーセント置換したYABを含む態様において、およそ750nmと810nmの波長を有する励起エネルギーのネオジムによる直接の吸収の結果として、1065nmの放射帯におけるネオジムの放射への顕著な寄与が生じるようである。
【0030】
[0039]それに対して、クロムについての吸収帯は比較的広い。例えば、
図3に示すように、アルミニウムに代えてクロムを20パーセント置換し、イットリウムに代えてネオジムを20パーセント置換し、そしてイットリウムに代えてイッテルビウムを10パーセント置換したYABを含む態様において、およそ550nmからおよそ680nmまでの範囲の波長を有する励起エネルギーのクロムによる直接の吸収、その吸収されたエネルギーのクロムからネオジムとイッテルビウムへの移動、および(クロムから)ネオジムによって受容されたエネルギーのイッテルビウムへの追加の移動の結果として、985nmの放射帯におけるイッテルビウムの放射への顕著な寄与が生じるようである。前に説明したように、望ましい放射に寄与するネオジムの吸収帯はクロムの吸収帯よりも狭く、そしてそのネオジムの吸収帯は近赤外線(NIR)に近い。
【0031】
[0040]再び
図1を参照すると、クロム140を含まない場合、ネオジムの吸収帯における励起エネルギーの十分な吸収を達成するためには、発光性のホウ酸塩100の態様は比較的高い割合のネオジム120を含むべきである。しかし、クロム140はエネルギーをネオジム120にかなり効率よく移動させるので、クロム140とネオジム120の両方を含む発光性のホウ酸塩100の態様は、比較的広いクロムの吸収帯を利用し、そしてかなり低い割合のネオジム120を含んでいてもよく、それでもなおネオジム120への励起エネルギーの十分な吸収(および/または移動)を達成するだろう。
【0032】
[0041]言い換えると、ネオジム120とクロム140の両方を含む態様(例えば、Cr:Nd:ホウ酸塩、およびCr:Nd:Yb:ホウ酸塩)においては、広いクロムの吸収帯において適切な励起エネルギーが与えられるかもしれず、その吸収帯はもっと狭いネオジムの吸収帯を包含する。そのような態様においては、クロムの吸収帯において励起エネルギーが与えられると、ネオジム120は幾分かのエネルギーを直接吸収するであろうが、しかしそれはまた、クロム140からかなりの量の追加のエネルギーを受け取る。励起エネルギーの多くがクロム140によって吸収されてネオジム120に移されるであろうから、ネオジム120の置換パーセントは、クロム140を含まない態様における置換パーセントよりもかなり低いだろう(例えば、ネオジム120の置換パーセントは約5パーセント以上)。逆に、クロム140を伴わずにネオジム120を含む態様(例えば、Nd:Yb:ホウ酸塩)においては、比較的高い吸収断面積を与えるためには、比較的高いネオジム120の置換パーセントを有するのが望ましく(例えば、約50〜約95パーセントの範囲)、それによって、十分な励起エネルギーがネオジム120によって直接吸収され、そして放出性イオン(例えば、イッテルビウム130)に移されることが保証される。
【0033】
[0042]発光性のホウ酸塩100の態様は、発光性のホウ酸塩100が化学物質による損傷と物理的な接触を受ける可能性のある環境において用いるのに特に適するような物質特性を有する。従って、発光性のホウ酸塩100の態様は、物品のセキュリティー上または認証上の特徴部(例えば、物品の真正性を判定するために分析される、物品の特徴部)との関連において用いるのに特に適している(ただし、それらは他の目的のために用いてもよい)。例えば、発光性のホウ酸塩100の態様は、モース硬度スケールで約7.5の結晶硬度と約3.701グラム/立方センチメートル(g/cc)の密度を有する。従って、発光性のホウ酸塩100は、物理的な摩擦、衝撃およびその他の外傷を受けるときに急激な物理的劣化に耐えられるほどに十分に硬いだろう。さらに、発光性のホウ酸塩100の態様は極めて薄い実体色を有することが観察されていて、そのことによって発光性のホウ酸塩100は隠れた認証上の用途において用いるのに特に適したものとなる。例えば、発光性のホウ酸塩100の態様は透明なインクまたはその他の基材の中に組み込んでもよく、またホウ酸塩を含有するインクまたは基材が肉眼で用意に感知できないやり方で物品の上に印刷してもよい。加えて、発光性のホウ酸塩100の態様は、およそw=1.775およびおよそe=1.715の2つの異なる屈折率を有する負の一軸性のものであり、そのことによって発光性のホウ酸塩100は他の用途に適したものとなる。
【0034】
[0043]
図4は、実施態様に係る、発光性ホウ酸塩(例えば、発光性のホウ酸塩100、
図1)、そのホウ酸塩を含む基材、およびホウ酸塩を含む基材を含む物品(例えば、物品500、
図5)を製造するための方法の流れ図である。この方法は、ブロック402において、MeX
3B
4O
12の式を有する予備的な発光性ホウ酸塩(例えば、発光性のホウ酸塩100、
図1)を調製することによって始まる。一般に、発光性の物質は当業者に知られた多くの慣用の方法のいずれかを用いて製作することができる。例えば、様々な態様の予備的な発光性ホウ酸塩の形成は、後に説明するように、固体化学を用いて行うことができる。具体的には、ある態様によれば、予備的な発光性ホウ酸塩は、ホウ酸塩の元素の全てを(典型的には酸化物の形で)含む成分を用いてホウ酸塩の結晶を成長させることによって調製される。
【0035】
[0044]例えば、MeX
3B
4O
12の式を有する発光性ホウ酸塩は固体化学を用いて調製することができる。特に、予備的な発光性ホウ酸塩にホウ素を組み込むために、ホウ酸(H
3BO
3)が予備的な発光性ホウ酸塩を成長させるために用いられる成分のうちの1つである。前に検討したように、ホストのホウ酸塩における元素Meは、様々な態様において、イットリウム、ランタン、ガドリニウムおよび/またはルテチウムとすることができる。従って、予備的な発光性ホウ酸塩を成長させるために用いられる成分のうちの別のものは、発光性ホウ酸塩においていずれの元素Meが用いられるかに応じて、それぞれ酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化ガドリニウム(Gd
2O
3)または酸化ルテチウム(Lu
2O
3)(以下では「Me酸化物」という)のいずれかである。加えて、発光性ホウ酸塩における元素Xは、様々な態様において、アルミニウム、スカンジウムまたはガリウムであってよい。従って、予備的な発光性ホウ酸塩を成長させるために用いられる成分のうちの別のものは、発光性ホウ酸塩においていずれの元素Xが用いられるかに応じて、それぞれ酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化スカンジウム(Sc
2O
3)または酸化ガリウム(Ga
2O
3)(以下では「X酸化物」という)のいずれかである。
【0036】
[0045]結晶格子におけるX元素とMe元素の原子対原子の置換は、予備的な発光性ホウ酸塩を成長させるために用いられる追加の成分として酸化ネオジム(Nd
2O
3)、酸化イッテルビウム(Yb
2O
3)および/または酸化クロム(Cr
2O
3)を用いることによって達成することができる。ある態様によれば、酸化ネオジムと酸化イッテルビウムにおけるネオジムとイッテルビウムは+3の原子価を有する。予備的な発光性ホウ酸塩のMeの位置にネオジムおよび/またはイッテルビウムを置き換えるために、Me酸化物の幾分かまたは全てが所望の量の酸化ネオジムまたは酸化ネオジムと酸化イッテルビウムの組み合わせで置換され、このとき、置換量は原子数(すなわち、ネオジム原子および/またはイッテルビウム原子と置き換えられるMe原子のパーセントを示す原子数)の点から確定される。例えば、予備的な発光性ホウ酸塩のMeの位置においてネオジムを60パーセント置換し、そしてイッテルビウムを10パーセント置換することを欲する場合は、Me酸化物の60パーセントが酸化ネオジムで置き換えられ、そしてMe酸化物の10パーセントが酸化イッテルビウムで置き換えられるであろう。同様に、予備的な発光性ホウ酸塩のXの位置にクロムを置き換えるために、X酸化物の幾分かが所望の量の酸化クロムで置換される。例えば、予備的な発光性ホウ酸塩のXの位置においてクロムを20パーセント置換することを欲する場合は、X酸化物の20パーセントが酸化クロムで置き換えられるであろう。
【0037】
[0046](例えば、石英ボートおよび/またはアルミナるつぼの中で)適当な量で一緒にしたならば、ブロック404において、組み合わせた成分を複数回(例えば、4回またはその他の回数)、所定の温度で(例えば、およそ500〜1200℃の範囲または別の範囲の温度で)所定の時間(例えば、およそ30〜60分の範囲または別の範囲の時間)にわたって焼成することによって発光性ホウ酸塩を活性化し、そして各々の焼成工程の後に粉末化の加工を行う。このようにして得られた粉末化された結晶が、予備的な発光性ホウ酸塩を形成する。
【0038】
[0047]予備的な発光性ホウ酸塩を作製するために、上で説明したように固体化学を用いることができるが、他の場合においては、溶液化学の技術を用いてもよい。溶液化学を用いることによって、様々な物質を溶解し、次いで沈殿させ、それに続いて焼成する。発光性ホウ酸塩を作製するために用いられる特定のプロセスに応じて、予備的な発光性ホウ酸塩を形成するのに他の物質を含めてもよい。例えば、様々な融剤およびその他の先駆物質を予備的な発光性ホウ酸塩の中に含めてもよい。
【0039】
[0048]ブロック406において、所望の大きさの結晶粒子を製造するために、予備的な発光性ホウ酸塩をさらに粉砕および/または選別してもよい。例えば、ここで説明している発光性ホウ酸塩の様々な態様のものの効率は、発光性ホウ酸塩の粉末が約10ミクロン未満の粒度を有する粒子、そしてある場合においては約1ミクロン程度に小さなサイズを有する粒子を含む場合であっても、比較的高いままであることが見いだされた。ここで用いるとき、「粒度」という用語は、粒子の平均直径として定義される(例えば、レーザー光回折型の測定装置(例えば、Microtrac Inc.(ペンシルバニア州、モンゴメリービル)によって製造される装置)によって測定して、質量容積が50パーセントの点(D50)での粒子の大きさの平均直径)。
【0040】
[0049]ブロック408において、発光性ホウ酸塩の粒子を基材に組み込む。例えば、これらに限定する意図はないが、基材は物品の支持体に相当するか、あるいは基材は物品の支持体の表面に付加される(例えば、表面に印刷、塗布、噴霧されるか、あるいはその他の方法で接着または接合される)物質に相当するか、あるいは支持体の中に埋め込まれる特徴部(例えば、埋め込まれた特徴部、セキュリティースレッドなど)に相当するだろう。前者の場合、発光性ホウ酸塩の粒子は支持体物質に組み込まれ、これは例えば、発光性ホウ酸塩の粒子を支持体のための基材(例えば、紙、紙パルプ、ポリマー、プラスチック、プラスチックのベース樹脂、ガラス、金属、布、繊維、セラミック、木、スラリーなど)と組み合わせることによって行われるか、そして/または、支持体に発光性ホウ酸塩の粒子のコロイド分散液を含浸させることによって行われるだろう。含浸は、例えば印刷、滴下、塗布または噴霧のプロセスによって行うことができる。
【0041】
[0050]発光性ホウ酸塩の粒子が支持体の表面に付加される物質に組み込まれる態様において、発光性ホウ酸塩の粒子は組成物(例えば、インク、インクの添加剤またはその他のキャリヤー)と混合される。発光性ホウ酸塩の粒子が支持体の中に埋め込まれる特徴部に組み込まれる態様において、発光性ホウ酸塩の粒子をその特徴部に組み込むことは、上で検討したように、発光性ホウ酸塩を支持体に組み込むのと同様のやり方で行われるだろう。特に、発光性ホウ酸塩の粒子を、埋め込まれる特徴部を形成するための基材と混合してもよい。さらに他の態様において、発光性ホウ酸塩の粒子を他の基材(例えば、接着剤、様々な液体、ゲルなど)に組み込むか、あるいはそのような基材と組み合わせてもよい。
【0042】
[0051]ブロック410において、発光性ホウ酸塩を含む物品が製造される。例えば、これは発光性ホウ酸塩を含む基材または特徴部を物品の中または上に組み込むことによって行うことができる(例えば、物品500、
図5)。発光性ホウ酸塩を含む基材が支持体のための基材である態様においては、この工程を省いてもよい。逆に、発光性ホウ酸塩を含む物質を支持体の表面に適用できる態様においては、発光性ホウ酸塩を含む物質を支持体の1つ以上の表面上の予め決められた位置に印刷してもよい。逆に、発光性ホウ酸塩を含む物質が埋め込まれる特徴部に相当する場合は、支持体の物質が柔軟な形態にあるときに(例えば、その物質がスラリーの形態、溶融した形態または非硬化形態にあるときに)、その埋め込まれる特徴部を支持体の物質と合体させる。上述した方法のうちのいずれにおいても、発光性ホウ酸塩の態様を物品に組み込むことができる。
【0043】
[0052]
図5は、実施態様に係る、発光性ホウ酸塩を含む物品500の断面図を示す。例えば、物品500の態様は、表面に適用された認証特徴部510および/または埋め込まれた認証特徴部520を含んでいてもよく、これらの特徴部は発光性ホウ酸塩の粒子(図示せず)を含み、そして/または、物品500は、物品500の1つ以上の構成要素の中に(例えば、物品の支持体502の中に、および/または、物品の1つ以上の層またはその他の構成要素の中に)均一または不均一に分散された発光性ホウ酸塩の粒子530を含んでいてもよい。
図5において、認証特徴部510、520および粒子530の様々な相対的な寸法は、一定の縮尺では描かれていないかもしれない。物品500は表面に適用された認証特徴部510および/または埋め込まれた認証特徴部520と粒子530の両方を含むように示されているが、別の物品は、埋め込まれた認証特徴部、表面に適用された認証特徴部、および分散された発光性ホウ酸塩の粒子のうちの1つまたはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。最後に、
図5においては1つの表面に適用された認証特徴部510と1つの埋め込まれた認証特徴部520だけが示されているが、物品は認証特徴部510、520のいずれかのタイプのものを1つよりも多く含んでいてもよい。
【0044】
[0053]様々な態様において、物品500は、(これらに限定はされないが)身分証明書、運転免許証、旅券、身元証明書、紙幣、小切手、証書、文書、株券、梱包要素、クレジットカード、バンクカード、ラベル、印章、代用貨幣(例えば、ギャンブルおよび/またはゲーム機または自動販売機において用いるためのもの)、郵便切手、液体、人体、動物、および生物学的サンプルを含む群から選択されるいずれかのタイプの物品であってもよい。支持体502は任意の様々なタイプの支持体であってよく、それは、(これらに限定はされないが)紙、ポリマー、ガラス、金属、布および繊維を含む群から選択される1つ以上の材料を含む。
【0045】
[0054]様々な態様において、支持体502は剛性のものでも可撓性のものでもよいが、1つ以上の層または構成要素から形成することができる。様々な態様の発光性ホウ酸塩を極めて多様な様々なタイプの物品との関係において用いることができるので、支持体502の様々な形状は列挙するには多すぎる。従って、
図5においては単純な単一の支持体502が例示されているが、支持体502は任意の様々な異なる形状を有することができると理解すべきである。例えば、支持体は同じ物質または異なる物質からなる複数の層または部分を含む「複合の」支持体であってもよい。例えば、(これらに限定はされないが)支持体は1つ以上の紙の層または部分および1つ以上のプラスチックの層または部分を含んでいて、それらを積層するか、あるいは他の方法で共に結合させて複合の支持体を形成していてもよい(例えば、紙の層/プラスチックの層/紙の層またはプラスチックの層/紙の層/プラスチックの層の複合支持体)。加えて、ここでは無生物で固体の物品について述べているが、「物品」は人体、動物、生物学的サンプル、液体サンプル、および実質的に全てのその他の物体または物質を含んでいてもよく、それらの中または上に、ある態様の発光性物質が含まれていてもよい。
【0046】
[0055]表面に適用された認証特徴部510は、例えば、(これらに限定はされないが)印刷された認証特徴部であるか、あるいは、ある態様の発光性ホウ酸塩が中または上に含まれる1つ以上の剛性または可撓性の物質を含む認証特徴部であってもよい。例えば、(これらに限定はされないが)表面に適用された認証特徴部510は、ある態様の発光性ホウ酸塩の粒子を含むインク、顔料、被覆または塗料で構成されていてもよい。あるいは、表面に適用された認証特徴部510は、1つ以上の剛性または可撓性の物質で構成されていて、その中または上にある態様の発光性ホウ酸塩の粒子が含まれているものであってもよく、この場合、物品の支持体502の表面に支持体が接着されるか、あるいはその他の方法で付着される。様々な態様によれば、表面に適用された認証特徴部510は約1ミクロン以上の厚さ512を有していてもよく、そして表面に適用された認証特徴部510は支持体502の幅と長さと同等以下の幅と長さを有していてもよい。
【0047】
[0056]埋め込まれた認証特徴部520は、ある態様の発光性ホウ酸塩が中または上に含まれる1つ以上の剛性または可撓性の物質で構成されている。例えば、(これらに限定はされないが)埋め込まれた認証特徴部520は、分離した剛性または可撓性の支持体、セキュリティースレッドまたはその他のタイプの構造体の形状で構成されていてもよい。様々な態様によれば、埋め込まれた認証特徴部520は約1ミクロンから支持体502の厚さ504までの範囲の厚さ522を有していてもよく、そして埋め込まれた認証特徴部520は支持体502の幅と長さと同等以下の幅と長さを有していてもよい。
【0048】
[0057]上述したように、他の態様において、発光性ホウ酸塩の粒子530は、
図5に示すように、支持体502の中に、または物品500の1つ以上の他の構成要素の中に(例えば、物品の1つ以上の層またはその他の構成要素の中に)均一または不均一に分散されていてもよい。発光性ホウ酸塩の粒子530は、例えば、(これらに限定はされないが)粒子530を支持体502のための基材またはその他の構成要素の中に混合することによって、そして/または、前に説明したように、支持体502またはその他の構成要素に粒子530のコロイド分散液を含浸することによって、支持体502またはその他の構成要素の中に分散させることができる。
【0049】
[0058]ここで検討している発光性ホウ酸塩の態様(例えば、発光性ホウ酸塩100、
図1)の吸収特性と放射特性は、セキュリティー特徴部および認証特徴部と関連のあるそれらの用途と一致する。例えば、比較的に一般的な認証装置を用いるとき、発光性ホウ酸塩の態様は容易に励起されるだろう。クロムを伴わずにネオジムを含む態様(例えば、Nd:Yb:ホウ酸塩)において、発光性ホウ酸塩はネオジムの吸収帯における励起エネルギーで励起されるだろう。クロムを含む態様(例えば、Cr:Nd:ホウ酸塩、Cr:Yb:ホウ酸塩、およびCr:Nd:Yb:ホウ酸塩)において、発光性ホウ酸塩はネオジムの吸収帯とクロムの吸収帯の両方における励起エネルギーで励起されるだろう。前に検討したように、ネオジムとイッテルビウムの両方を含む態様(例えば、Nd:Yb:ホウ酸塩、およびCr:Nd:Yb:ホウ酸塩)において、ネオジムは吸収したエネルギー(例えば、ネオジムの吸収帯において励起エネルギーとして直接吸収したエネルギーとクロムから受け取ったエネルギーのいずれか)をイッテルビウムに容易に移動させるだろう。そのような態様において、ネオジムはネオジムの放射帯において検出可能な放射を生成し、そしてイッテルビウムはイッテルビウムの放射帯において検出可能な放射を生成するだろう。
【0050】
[0059]ある態様によれば、ネオジムの放射とイッテルビウムの放射のいずれか一方または両方を検出し、そしてそれらの放射の強度が検出パラメーターのスペースに入るか否かを判定するように、検出装置を構成することができる。加えて、ネオジムの放射とイッテルビウムの放射の間のピークの比率はネオジムとイッテルビウムの置換パーセントと強い相関関係にあり、またそれは、ホストのホウ酸塩におけるMe(例えば、イットリウム、ランタン、ガドリニウムおよび/またはルテチウム)に代えて用いられる元素の選択とも強い相関関係にあることが見いだされた。従って、検出装置の態様は、ネオジムの放射帯(例えば、約880nmを中心とする放射帯)およびイッテルビウムの放射帯(例えば、約985nmを中心とする放射帯)における放射の強度を測定し、それらの強度の比率を計算し、そしてその比率が適当なホストのホウ酸塩を含む認証物質および既知のネオジムとイッテルビウムの置換パーセントと一致するか否かを判定するだろう。
【0051】
[0060]
図6は、実施態様に係る、物品650を(例えば、高速度の物品速度で)認証するための装置600である。装置600は、ある態様によれば、処理装置602、1つ以上の励起エネルギー発生器604、光フィルター(フィルター)610、612と結合した1つ以上の放射光検出器(「検出器」)606、608、信号分配/分散要素614、データ記憶装置616、およびユーザーインターフェース618を含む。処理装置602は1つ以上のプロセッサーおよび関連する回路を含んでいてもよく、この処理装置は物品(例えば、物品650)を認証することに関連するプロセスを(例えば、実行可能なソフトウェアアルゴリズムの形で)制御および分析することを実行するように構成されている。
【0052】
[0061]物品650は支持体652を含み、そして場合により、(前述したように)表面に適用されるかまたは埋め込まれた認証特徴部654を含む。ある態様において、物品650は認証装置600を通して処理方向626へ移送され、このとき物品650の投入端658が最初に装置600に提供され、そして物品650の後端660が最後に装置600に提供される。例えば、最初の時点(T1)において、物品650は装置600の励起窓624の下を通過し、そして第二に、後続の時点(T2)において、物品650は装置600の検出窓632の下を通過する。代替の態様において、物品650を認証装置600の中の静止位置に移動させ、そして励起窓624と検出窓632を静止している物品650の上に移動させてもよい。さらに別の代替の態様において、物品650と励起/検出窓624、632の両方を、励起と認証のプロセス全体を通して静止させてもよい(すなわち、物品650と認証装置600のいずれも動かない)。
【0053】
[0062]いずれのやり方においても、ある態様によれば、処理装置602は、励起エネルギー発生器604に制御信号を与え、これにより励起エネルギー発生器604が励起窓624の幅とほぼ一致する幅を有する所定の励起軌道に沿って物品650の方へ励起エネルギー620を指向させるように構成される。物品650は励起窓624の下を移動すると(あるいは励起窓624が物品650の上を移動すると)、支持体652または認証特徴部654の中に組み込まれた発光性ホウ酸塩の中のイオンを放出し、(1つ以上のエネルギー吸収および/またはエネルギー移動の機構を用いて)後続する放射のためのエネルギーを受け取る。代替の態様においては、処理装置602が励起エネルギー発生器604を制御し、それにより、物品650の方へ強度が調節された励起エネルギー620を指向させる。従って、発光性ホウ酸塩を励起するのに十分な時間にわたって励起エネルギー620が出て、次に、エネルギーが止まって、放射の衰退を(例えば、放射検出器606、608によって)観察し、そしてそれを定量する。このような態様においては、励起窓624と検出窓632を合同させてもよい。
【0054】
[0063]制御信号において、処理装置602は、励起エネルギーを与えるタイミング(例えば、開始時間、停止時間および/または持続時間)および/または発生させる特定の励起エネルギーと関連するその他のパラメーター(例えば、強度および/またはその他のパラメーター)を指定することができる。典型的に、励起エネルギーの帯域幅は、励起エネルギー発生器604の一部として含まれる励起源に基づいて予め決定される(例えば、選択される発光ダイオードまたはレーザーダイオードによって発生される励起エネルギーの帯域幅)。前述したように、ある態様の発光性ホウ酸塩についての適切な励起エネルギーはネオジムおよび/またはクロムの吸収帯にあるかもしれない。様々なタイミングおよび/または放射を発生させるパラメーターは、例えば、データ記憶装置616から引き出すことができる。励起エネルギー発生器604は、例えば、1つ以上のレーザー、レーザーダイオード、発光ダイオード(LED)、白熱フィラメント、ランプ、またはその他の励起源を含んでいてもよい。
【0055】
[0064]励起エネルギー発生器604を制御することに加えて、処理装置602は放射検出器606、608に制御入力を与えるように構成され、それにより、放射検出器606、608は励起エネルギー620の少なくとも幾分かを(直接的または間接的に)吸収した様々な放出性イオンに応じて物品650から発出される放射628を検出することができる。例えば、物品650はネオジムおよび/またはイッテルビウムの放射に対応する放射を生成することができる。
【0056】
[0065]ある態様によれば、物品650が検出窓632に近接している場合、放射628が信号分配/分散要素614に当り、要素614は放射628をビーム634、636に分離する。一つのビーム634は第一の帯域(例えば、ネオジムの放射帯域)の範囲内の光を含み、そして第二のビーム636は第一の帯域(例えば、イッテルビウムの放射帯域)と重ならず、かつ第一の帯域とは分離された第二の帯域の範囲内の光を含む。信号分配/分散要素614は第一のビーム634を一方の検出器606の方へ指向させ、そして第二のビーム636を他方の検出器608の方へ指向させる。ある態様によれば、信号分配/分散要素614は第一のビーム634を通過させ、そして第二のビーム636を反射するように構成される。例えば、信号分配/分散要素614はポリクロメーター、プリズム、回折格子、薄膜フィルター、干渉フィルター、ダイクロイックフィルター、ダイクロイックミラーおよびダイクロイックリフレクターからなる群から選択される要素とすることができる。このような信号分配/分散要素614の利点は、検出器606、608の両方が物品650の同じ領域から発出される放射の成分を同時に受け止め、従って、得られる強度の測定値の相関性を最大限度にすることを可能にすることである。
【0057】
[0066]各々の放射検出器606、608としては、例えば、スペクトルフィルター610、612、1つ以上の電気光学センサー、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード、フォトダイオード、電荷結合素子、電荷注入デバイス、写真フィルム、またはその他の検出素子がある。特定の態様において、各々の放射検出器606、608は、信号分配/分散要素614と光検出器の間に配置されたスペクトルフィルター610、612を含む。スペクトルフィルター610、612は、ビーム634、636が検出器606、608に供給される前にそれらのビームを選別するように構成され、それにより、ある放射帯域(すなわち、スペクトル全体のうちの一部分)の範囲内の放射だけが実際に各々の検出器606、608の有効領域に当たる。スペクトルフィルター610、612は、例えば、注目するスペクトル帯の範囲内の光だけを通し、そして他の全ての光を受けつけないように構成されたロングパスフィルター、バンドパスフィルター、またはその他のタイプのフィルターを含んでいてもよい。
【0058】
[0067]各々の検出器606、608は、注目するスペクトル帯の範囲内で感度を有し、従って、そのスペクトル帯の範囲内のスペクトルフィルター610、612を通過する光を検出するだろう。ある態様によれば、検出器606は注目する第一の帯域(ネオジムの放射帯)に相当するチャンネル内の放射を検出するように構成され、そして検出器608は注目する第二の帯域(イッテルビウムの放射帯)に相当するチャンネル内の放射を検出するように構成される。検出器606、608は同一の、または異なる型式または種類のものであってよい。特定の態様によれば、発光性ホウ酸塩の放射特性を測定するために異なる型式または種類の検出器606、608が用いられ、そのような測定は、ネオジムとイッテルビウムの放射帯の検出波長が十分に離れているために実行可能である。例えば、検出器606、608のうちの一方はシリコン検出器を含んでいてもよく、そして検出器606、608のうちの他方はヒ素化インジウムガリウム(InGaAs)検出器を含んでいてもよい(例えば、テレコムタイプの、または拡大されたInGaAs)。他の態様においては、注目する帯域内の放射を検出することのできる他のタイプの検出器を用いてもよい(例えば、硫化鉛、セレン化鉛、ゲルマニウム、アンチモン化インジウム、ヒ素化インジウム、ケイ化白金、アンチモン化インジウムなど)。代替の態様においては、注目する全ての帯域における放射を検出することのできる単一の検出器を用いてもよい。そのような態様においては、装置600から信号分配/分散要素614を除外してもよい。
【0059】
[0068]各々の検出器606、608は、検出器606、608の有効領域に当たる捕集された輻射線の強度に比例する電気信号を生成する。特に、各々の検出器606、608は、物品の長さ(例えば、物品の投入端と後端の間の長さ)の実質的に全てまたは一部に沿って検出器606、608が受ける放射の総和された強度を表す信号(例えば、1つ以上のデジタル化された強度の値)を生成する。好ましくは、装置において(例えば、
図6の装置600において)複数の検出器606、608が用いられる場合、総和された強度の値は各々の検出器606、608によって同時に電子的に捕捉される(ただし、これは必須のことではない)。
【0060】
[0069]各々の放射検出器606、608は、1つ以上の予め設定した時間間隔で強度の値をデジタル化することができる(例えば、t=0で開始し、次いで、幾つかの間隔について0.01ミリ秒毎に)。加えて、各々の放射検出器606、608は、処理装置602に対して情報(例えば、デジタル化した強度の値)を与え、それにより放射628の時間的特性、スペクトル特性および位置的特性を特徴づけすることが可能になる。例えば、放射検出器606は、ネオジムの放射帯において放出された輻射線の強度に相当する一連の値を生成する。検出器606からの各々の値または値の集合には標識が付けられ、あるいは、検出された放射の位置(例えば、物品の投入端からの直線距離)および放射が検出されたときの時間(例えば、対応する励起エネルギーの供給を停止したときからの時間)を示す情報との関連づけが別の方法で行われる。同様に、放射検出器608は、イッテルビウムの放射帯において放出された輻射線の強度に相当する一連の値を生成する。放射検出器606によって生成される値と同様に、検出器608からの各々の値または値の集合には標識が付けられ、あるいは、検出された放射の位置および放射が検出されたときの時間を示す情報との関連づけが別の方法で行われる。
【0061】
[0070]処理装置602は、いずれかの検出された輻射線の時間的特性、スペクトル特性および位置的特性が真正な物品の時間的特性、スペクトル特性および位置的特性と一致するか否かを判定するために、前記の情報を受け取るとそれを分析するように構成される。
図7と関係づけてもっと詳しく説明するであろうが、装置600のための認証パラメーターには次のものからなる群から選択されるパラメーターが含まれる:ネオジムの放射帯における放射の強度(または総和された強度);イッテルビウムの放射帯における放射の強度(または総和された強度);ネオジムの放射帯における放射の衰退時間の定数;イッテルビウムの放射帯における放射の衰退時間の定数;ネオジムの放射帯における放射の立ち上がりの時間の定数;イッテルビウムの放射帯における放射の立ち上がりの時間の定数;およびネオジムの放射帯における放射とイッテルビウムの放射帯における放射との間の放射の強度(または総和された強度)の比率。さらなる認証パラメーターを確認することもできる。
【0062】
[0071]真正な物品に相当する認証パラメーターの範囲が、装置600の検出パラメーターのスペースであると定められる。ある態様において、処理装置602は、認証パラメーターについて検出器606、608によって生成された値が検出パラメーターのスペースに入るか否かを判定する。言い換えると、処理装置602はそれらの値を検出パラメーターのスペースを規定している範囲と比較し、それにより、それらの値がその範囲に入るか否かを判定する。例えば、ネオジムおよび/またはイッテルビウムの放射帯における放射の強度に相当する認証パラメーターに関して、強度の値の範囲の目録を規定することができ、そしてそれがデータ記憶装置616に記憶される。特定の強度の値(例えば、検出器606または608からの強度の値)を解析するために、処理装置602は予め規定された強度の範囲を目録から引き出すことができ、そして強度の値をその範囲と比較し、それによりその値がその範囲に入るか否かを判定する。このような解析は、物品の長さにわたっての複数の位置における強度の値について行うことができる。別の例として、ネオジムとイッテルビウムの放射の強度の比率に相当する認証パラメーターに関して、許容される比率の範囲が規定され、それがデータ記憶装置616に記憶される。処理装置602は(例えば、検出器606、608からの強度の値に基づいて)ネオジムとイッテルビウムの放射の強度の比率を計算し、予め規定された許容される比率の範囲をデータ記憶装置616から引き出すことができ、そして比率をその範囲と比較し、それによりその比率がその範囲に入るか否かを判定する。ネオジムとイッテルビウムについての放射強度の間の比率はこれらのイオンの置換パーセントと強い相関性を有することが見いだされた。従って、ネオジムの放射とイッテルビウムの放射の両方が検出された場合であっても、その比率が予想した値と一致しない場合は、物品は非真正であると考えることができる。その他の認証パラメーターに対応する値も同様に分析することができる。
【0063】
[0072]認証パラメーターに対応する値が許容できる程度の精度の範囲で検出パラメーターのスペースの範囲に入ることが分析によって示された場合、処理装置602は物品650が真正であるとみなすであろう。逆に、認証パラメーターに対応する値が許容できる程度の精度の範囲で検出パラメーターのスペースの範囲に入らないことが分析によって示された場合、処理装置602は物品650が非真正であるとみなすように構成されている。
【0064】
[0073]検出された輻射線の時間的特性および/またはスペクトル特性が真正な物品と一致する場合、処理装置602は、物品650が真正な物品であることを確認することと関連する何らかの作動をするだろう。例えば、処理装置602は、真正性と関連する電気信号を装置の別の構成要素へ送るか、あるいはその信号を外部の装置へ送るかもしれない。さらに、処理装置602は、ユーザーインターフェース618に信号を送ることができ、それによりユーザーインターフェース618は真正性についてユーザーが認識できる表示(例えば、ディスプレー化した兆候、光、音など)を生成する。処理装置602はまた、装置600のルーティング構成要素(図示せず)に対して、真正な物品に割り当てられた経路または置き場へ向けて物品650の最適経路を定めるようにさせるかもしれない。あるいは、検出された輻射線の時間的特性および/またはスペクトル特性が真正な物品と一致しない場合、処理装置602は、物品650が非真正な物品であることを確認することと関連する何らかの作動をするだろう。例えば、処理装置602は、非真正性と関連する電気信号を装置の別の構成要素へ送るか、あるいはその信号を外部の装置へ送るかもしれない。さらに、処理装置602は、ユーザーインターフェース618に信号を送ることができ、それによりユーザーインターフェース618は非真正性についてユーザーが認識できる表示(例えば、ディスプレー化した兆候、光、音など)を生成する。処理装置602はまた、装置600のルーティング構成要素(図示せず)に対して、非真正な物品に割り当てられた経路または置き場へ向けて物品650の最適経路を定めるようにさせるかもしれない。
【0065】
[0074]装置600に対して入力を与えるために、ユーザーインターフェース618はユーザーによって操作されうる何らかの幾つかの構成要素(例えば、キーボード、ボタン、タッチスクリーンなど)を含んでいてもよく、あるいは、ユーザーが認識できる兆候(例えば、ディスプレースクリーン、光、スピーカーなど)を生成するために、ユーザーインターフェース618は処理装置602によって制御されるかもしれない。上述のプロセスは、例えば、ユーザーインターフェース618とのユーザーの相互作用によって与えられるユーザー入力に応答して開始させることができる。あるいは、上述のプロセスは装置600によって自動的に開始させることができ、例えば、励起の工程と検出の工程を実行することのできる位置に物品650が配置されたときに自動的に開始させることができる。
【0066】
[0075]
図7は、実施態様に係る、物品(例えば、物品500(
図5)または物品650(
図6))の認証を行うための方法の流れ図である。例えば、
図7に示す方法の態様は認証装置(例えば、認証装置600(
図6))によって実行することができる。この方法は、ブロック702において、認証すべき物品(例えば、物品650、
図6)が認証装置によって受け入れられたときに開始することができる。例えば、物品は、その物品が認証装置の中に最初に入る投入端に対する公知または非公知の方向付けによって、認証装置の中に(例えば、えり分け装置またはコンベヤー装置によって)送られる。別の例として、認証装置の適当な容器の中に物品を置くことができる。
【0067】
[0076]ブロック704において、物品は発光性ホウ酸塩における吸収性イオンおよび/または増感性イオンに対して適当な励起エネルギーに曝露される。前述したように、ネオジムを含むがしかしクロムを含まない発光性ホウ酸塩を物品が含む態様において、励起エネルギーはネオジムの吸収帯にあるだろう。逆に、ネオジムとクロムの両方を含む発光性ホウ酸塩を物品が含む態様において、励起エネルギーはクロムの吸収帯にあるだろう。その励起を与えるために、物品は励起領域(例えば、励起窓624の下の領域、
図6)に送られるか、あるいはその領域を通過し、そして処理装置(例えば、処理装置602、
図6)が励起エネルギー発生器(例えば、励起エネルギー発生器604、
図6)に制御信号を送り、その信号によって励起エネルギー発生器が物品の方へ励起エネルギー(例えば、励起エネルギー620、
図6)を指向させるだろう。あるいは、励起エネルギー発生器は励起エネルギーを連続的に供給してもよく、あるいは励起エネルギーは調節することができる。
【0068】
[0077]ブロック706において、物品への励起エネルギーの供給が停止され、そして認証装置は物品からの1つ以上の帯域内での放射を(例えば、放射検出器606、608(
図6)によって)検出する。励起エネルギーの停止は、(例えば、物品が中で静止したままに置かれ、そして励起エネルギーがパルス化される装置の中で)励起エネルギー発生器を止めるか、あるいは励起エネルギーが向けられる領域から物品を取り出して検出領域(例えば、検出窓632の下の領域、
図6)まで物品を送ることのいずれかによって、行うことができる。代替の態様において、励起エネルギーの供給を継続してもよく、その間に装置は以下で説明する検出プロセスを実行する。
【0069】
[0078]放射の検出を1つ以上の検出間隔で行ってもよく、それらの間隔は物品へ向けての励起エネルギーの指向を停止した時から測定される。ある態様によれば、装置はイッテルビウムおよび/またはネオジムの帯域における放射を検出するように構成されるが、しかし他の帯域における放射を検出するように装置を構成してもよい。
【0070】
[0079]イッテルビウムおよび/またはネオジムの帯域内で検出された放射の強度を量子化する情報が(例えば、処理装置602(
図6)によって)分析される。ある態様によれば、その情報は、(例えば、各々の検出器606、608(
図6)からの)デジタル化された1つ以上の連続した強度の値を含み、それらの強度の値はイッテルビウムおよび/またはネオジムの放射帯において放出された輻射線の強度に相当する。前述したように、個々の値または値の集合には標識が付けられ、あるいは、放射が検出されたときの時間を示す情報との関連づけが別の方法で行われる。デジタル化された強度の値は、イッテルビウムおよび/またはネオジムの放射帯で検出された放射の時間的特性とスペクトル特性を表す。
【0071】
[0080]ブロック708において、放射の時間的特性および/またはスペクトル特性が適当な認証パラメーターの範囲(例えば、イッテルビウムおよび/またはネオジムについての放射強度の範囲、イッテルビウム/ネオジムの放射比率の範囲、および/または衰退時間の定数の範囲)に入るか否かの判定が行われる。例えば、前述したように、認証装置によって、適当な認証パラメーターの範囲が、検出パラメーターのスペースを規定する1つ以上の目録または値の中に維持されるだろう。
【0072】
[0081]スペクトルの分析と関連して、デジタル化された強度の値がその値と関連する時間(すなわち、その強度の値が生成したときに励起エネルギーを停止したときからの時間)について適当な放射強度の範囲に入るとき、イッテルビウムおよび/またはネオジムの放射の特性を有する放射が検出されたという判定がなされるだろう。あるいは、デジタル化された強度の値がその値と関連する時間について適当な放射強度の範囲に入らないとき、イッテルビウムおよび/またはネオジムの放射の特性を有する放射が検出されなかったという判定がなされるだろう。ある態様によれば、複数のデジタル化された強度の値を分析することができ、1つ以上の強度の値が適当な放射強度の範囲に入らないということが判定において認められるかもしれず、それでもなお肯定的な結果が与えられる。言い換えると、許容できる程度の的確さの範囲内で判定がなされるかもしれない。イッテルビウムおよび/またはネオジムの放射の特性を有する放射が検出されなかったという判定がなされるとき(すなわち、強度の値は許容できる程度の的確さの範囲において検出パラメーターのスペースの範囲に入らないということが分析によって示されるとき)、物品は非真正のものであることを、装置は見分けるだろう。
【0073】
[0082]時間的な分析と関連して、装置はイッテルビウムおよび/またはネオジムの帯域内での放射の衰退時間を判定するだろう。従って、適当な認証パラメーターの範囲は衰退時間の定数の範囲を含んでいてもよい。ある態様において、衰退時間は、複数の時間(例えば、t=0、t=0.01ミリ秒など)における放射の検出された強度に基づいて決定されるだろう。励起エネルギーを取り除くと、放射の強度は次第に衰退し、そして放出性イオンについての衰退の速度は衰退時間の定数によって特徴づけることができる。例えば、放射強度の単純な指数的な衰退について、衰退時間の定数は次の式における定数τによって表すことができる:
【0075】
ここで、tは時間を示し、I(t) は時間tにおける放射強度を示し、そしてI
0 はt=0における放射強度を示す(例えば、t=0は励起エネルギーの供給を停止した時点に相当するかもしれない)。幾つかの発光性ホウ酸塩についての放射強度は上の単純な指数式に従って衰退するかもしれないが、他の発光性ホウ酸塩についての放射強度は複数の指数的な衰退によって影響されるかもしれない(例えば、衰退に影響する複数の機構が存在するとき)。ある場合において(特にエネルギー移動が機構の一部分であるとき)、発光性ホウ酸塩は単純な単一の指数的な衰退を示さないかもしれない。ある態様によれば、イッテルビウムおよび/またはネオジムの放射の衰退時間が適当な衰退時間の定数の範囲に入るか否かを、装置が判定する。
【0076】
[0083]ブロック708における判定が肯定的な結果になったとき(すなわち、十分な強度および範囲内の衰退時間を有するイッテルビウムおよび/またはネオジムの放射が適切に検出されたとき)、次にブロック710において、物品が真正なものであると装置が確認し、それに対応する処置をとるだろう。例えば、装置は真正性についてユーザーが認識できる表示を生成し、そして/または、装置のルーティング構成要素に対して、真正な物品に割り当てられた経路または置き場へ向けて物品の最適経路を定めるようにさせるかもしれない。あるいは、ブロック708における判定が否定的な結果になったとき(すなわち、十分な強度および範囲内の衰退時間を有するイッテルビウムおよび/またはネオジムの放射が検出されなかったとき)、ブロック712において、物品が非真正なものであると装置が確認し、それに対応する処置をとるだろう。例えば、装置は非真正性についてユーザーが認識できる表示を生成し、そして/または、装置のルーティング構成要素に対して、非真正な物品に割り当てられた経路または置き場へ向けて物品の最適経路を定めるようにさせるかもしれない。
【0077】
[0084]
図8〜10は、物品に組み込まれた発光性ホウ酸塩の様々な態様のものの放射強度を示すグラフを含んでいる。例えば、
図8は、幾つかの実施態様に係る、様々な割合の置換されたネオジムとイッテルビウムを伴う複数のホウ酸イットリウムアルミニウム(YAB)のサンプルの放射強度を示すグラフである。
図8に示す結果を得るために、手すき紙の物品支持体の上に印刷されたインクの中に様々なYABのサンプルの粒子を含ませた。特に、幾つかの態様によれば、インクの基剤と様々なYABのサンプルを含むインクが作られた。
【0078】
[0085]例えば、トレース801を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Nd:YAB(YABのホスト格子物質の中にNdを100パーセントで含むもの)で構成される第1のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。トレース802を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Nd:Yb:YAB(YABのホスト格子物質の中にNdを50パーセントとイッテルビウムを50パーセントで含むもの)で構成される第2のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。トレース803を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Nd:Yb:YAB(YABのホスト格子物質の中にNdを90パーセントとイッテルビウムを10パーセントで含むもの)で構成される第3のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。最後に、トレース804を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Nd:Yb:YAB(YABのホスト格子物質の中にNdを75パーセントとイッテルビウムを25パーセントで含むもの)で構成される第4のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。
【0079】
[0086]上のサンプルのそれぞれについて、印刷された特徴部をネオジムの吸収帯の中で(すなわち、750nmにおいて)励起させるためにLEDを用い、そして生じた放射強度を認証装置によって検出した。特に、検出された放射はネオジムの放射帯810(約880nmを中心とする)とネオジムの放射帯812(約1065nmを中心とする)における放射を含んでいた。イッテルビウムを含むサンプルにおいては、検出された放射はイッテルビウムの放射帯814(約985nmを中心とする)とイッテルビウムの放射帯816(約1050nmを中心とする)における放射も含んでいた。
【0080】
[0087]
図8に示すように、イッテルビウムの放射帯814におけるイッテルビウムの放射の強度は、ホストのホウ酸塩の中に含まれるネオジムの割合が増大するのに伴って増大した。具体的には、Nd:Yb:YAB(Ndを90パーセントとイッテルビウムを10パーセントで含むもの)で構成される第3のインク材料は、最も高い強度を有するイッテルビウムの放射(トレース803)を生じた。この結果は、ネオジムがネオジムの吸収帯の中で励起されるとき、ネオジムからイッテルビウムへのエネルギー移動が効率的であることを示す。ネオジムの濃度が高いほどサンプルの吸収は増大し、このことはさらに全体的な放射信号における結果となりうる。イッテルビウムの濃度の増大は、エネルギー移動のプロセスによって、ネオジムの放射信号を低下させることとイッテルビウムの放射信号を増大させることに、より効果的なものとなりうる。
【0081】
[0088]認証装置(例えば、認証装置600、
図6)がネオジムの放射帯810、812のいずれか一方および/またはイッテルビウムの放射帯814、816のいずれか一方における放射を検出することを試みてもよいが、ある態様においては特に、ネオジムの放射帯810(約880nmを中心とする)および/またはイッテルビウムの放射帯814(約985nmを中心とする)における放射を検出するように構成されたフィルター(例えば、フィルター610、612、
図6)と検出器(例えば、検出器606、608)を含む。ネオジムの放射に対するフィルターと検出器に関して、帯域810における放射に対して増感されたフィルターと検出器を選択するのが好ましいかもしれず、というのは、帯域812における放射はシリコン検出器の曲線の急速に衰退する応答部分にあるからである。イッテルビウムの放射に対するフィルターと検出器に関して、帯域814における放射に対して増感されたフィルターと検出器を選択するのが好ましいかもしれず、というのは、帯域814における放射の強度は帯域816における放射の強度よりもかなり大きいようだからである。従って、帯域814における放射を測定するとき、比較的安価で高品質のシリコン検出器要素を用いることができ、そしてエネルギーの大部分は帯域814にあるので、検出はより効率的になるであろう。
【0082】
[0089]
図9は、幾つかの実施態様に係る、様々な割合の置換されたネオジム、イッテルビウムおよびクロムを伴う複数のYABのサンプルの放射強度を示すグラフである。
図9に示す結果を得るために、手すき紙の物品支持体の上に印刷されたインクの中に様々なYABのサンプルの粒子を含ませた。特に、幾つかの態様によれば、インクの基剤と様々なYABのサンプルを含むインクが作られた。
【0083】
[0090]例えば、トレース901を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Cr:Nd:Yb:YAB(YABのホスト格子物質の中にCrを20パーセント、Ndを20パーセント、そしてYbを10パーセントで含むもの)で構成される第1のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。トレース902を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Cr:Nd:Yb:YAB(YABのホスト格子物質の中にCrを20パーセント、Ndを35パーセント、そしてYbを20パーセントで含むもの)で構成される第2のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。トレース903を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Cr:Nd:Yb:YAB(YABのホスト格子物質の中にCrを20パーセント、Ndを35パーセント、そしてYbを30パーセントで含むもの)で構成される第3のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。最後に、トレース904を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Cr:Nd:Yb:YAB(YABのホスト格子物質の中にCrを20パーセント、Ndを35パーセント、そしてYbを40パーセントで含むもの)で構成される第4のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。
【0084】
[0091]上のサンプルのそれぞれについて、印刷された特徴部をクロムの吸収帯の中で(すなわち、626nmにおいて)励起させるためにLEDを用い、そして生じた放射強度を認証装置によって検出した。特に、検出された放射はネオジムの放射帯910(約880nmを中心とする)、ネオジムの放射帯912(約1065nmを中心とする)、イッテルビウムの放射帯914(約985nmを中心とする)およびイッテルビウムの放射帯916(約1050nmを中心とする)における放射を含んでいた。
図9は、イッテルビウムの量が増大するとネオジムの放射帯910においてネオジムの信号の量が減少することを示している。このことは、より可変的な比率の認証信号を可能にする。
【0085】
[0092]
図10は、幾つかの実施態様に係る、様々な割合の置換されたネオジム、イッテルビウムおよびクロムを伴う複数のホウ酸アルミニウムのサンプルの放射強度を示すグラフである。
図10に示す結果を得るために、手すき紙の物品支持体の上に印刷されたインクの中に様々なホウ酸アルミニウムのサンプルの粒子を含ませた。特に、幾つかの態様によれば、インクの基剤と様々なホウ酸アルミニウムのサンプルを含むインクが作られた。
【0086】
[0093]例えば、トレース1001を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Cr:Nd:Yb:YAB(YABのホスト格子物質の中にCrを20パーセント、Ndを10パーセント、そしてYbを10パーセントで含むもの)で構成される第1のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。トレース1002を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Cr:Nd:Yb:YAB(YABのホスト格子物質の中にCrを20パーセント、Ndを10パーセント、そしてYbを20パーセントで含むもの)で構成される第2のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。トレース1003を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Cr:Nd:Yb:GaAB(ホウ酸ガドリニウムアルミニウムのホスト格子物質の中にCrを20パーセント、Ndを10パーセント、そしてYbを20パーセントで含むもの)で構成される第3のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。トレース1004を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Cr:Nd:Yb:YAB(YABのホスト格子物質の中にCrを20パーセント、Ndを10パーセント、そしてYbを15パーセントで含むもの)で構成される第4のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。最後に、トレース1005を生じさせるために用いられたサンプルを製造するために、Cr:Nd:Yb:LaAB(ホウ酸ランタンアルミニウムのホスト格子物質の中にCrを20パーセント、Ndを10パーセント、そしてYbを20パーセントで含むもの)で構成される第5のインク材料を、手すき紙の物品支持体の表面に印刷した。
【0087】
[0094]上のサンプルのそれぞれについて、印刷された特徴部をクロムの吸収帯の中で(すなわち、626nmにおいて)励起させるためにLEDを用い、そして生じた放射強度を認証装置によって検出した。特に、検出された放射はネオジムの放射帯1010(約880nmを中心とする)、ネオジムの放射帯1012(約1065nmを中心とする)、イッテルビウムの放射帯1014(約985nmを中心とする)およびイッテルビウムの放射帯1016(約1050nmを中心とする)における放射を含んでいた。
【0088】
[0095]
図10に示すように、ホウ酸ランタンアルミニウム(トレース1005)およびホウ酸ガドリニウムアルミニウム(トレース1003)についてのイッテルビウムの放射帯1014におけるイッテルビウムの放射の強度は、同じパーセントの置換されたネオジムとイッテルビウムを有するYABのサンプルと比較して、極めて高かった。このことは、ここで検討された発光性ホウ酸塩の様々な態様の認証およびその他の用途への適合性を示す。ランタンまたはガドリニウムの置換はホウ酸塩物質の融点を変化させることがあり、おそらく異なる結晶相が生じるのである、ということが見いだされた。そのような態様においては、結晶相はおそらくほぼ完全に単斜晶であり、それに対して、YAB物質については三方晶の相と単斜晶の相の混合であろう。単結晶物質は典型的に、ずっと短い衰退時間の定数ともっと高い放射強度を示す。様々な態様において、リン光体の製造温度を高くすることによって、YAB物質の放射をランタンまたはガドリニウムを主成分とする物質の放射とほぼ調和するようにすることができる。
【0089】
[0096]以上の詳細な説明において少なくとも一つの典型的な態様が提示されたが、非常に多くの変形例が存在することが認識されるべきである。また、そのような(一つの、または複数の)典型的な態様は例としてのものに過ぎず、本発明の範囲、適応性または形態をいかようにも限定することは意図されていないことが認識されるべきである。むしろ、以上の詳細な説明は、本発明の典型的な態様を実施するための好都合なロードマップ(計画表)を当業者に提供するものであり、添付する特許請求の範囲に示される本発明およびそれらの法的な同等物の範囲から逸脱することなく、典型的な態様において記述された構成要素の機能と配置の様々な変更がなされうることが理解されよう。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]
結晶構造を有し、そして置換可能な元素を含むホウ酸塩;
少なくとも約20パーセントの第一の置換パーセントで置換可能な元素の代わりに用いられるネオジム;および
第二の置換パーセントで置換可能な元素の代わりに用いられるイッテルビウム;
を含む発光性物質。
[2]
ホウ酸塩はMeX3B4O12の式を有し、
ここで、Meはイットリウム、ランタン、ガドリニウム、ルテチウム、およびこれらの混合物からなる群から選択される置換可能な元素であり、
Xはアルミニウム、スカンジウムおよびガリウムからなる群から選択される元素であり、場合によりXはクロムで置換され、
Bはホウ素であり、そして
Oは酸素である、
[1]に記載の発光性物質。
[3]
ホウ酸塩はYAl3B4O12の式を有し、ここでYは置換可能な元素のイットリウムであり、Alはアルミニウムであり、Bはホウ素であり、そしてOは酸素である、[1]に記載の発光性物質。
[4]
ホウ酸塩はLaAl3B4O12の式を有し、ここでLaは置換可能な元素のランタンであり、Alはアルミニウムであり、Bはホウ素であり、そしてOは酸素である、[1]に記載の発光性物質。
[5]
ホウ酸塩はGdAl3B4O12の式を有し、ここでGdは置換可能な元素のガドリニウムであり、Alはアルミニウムであり、Bはホウ素であり、そしてOは酸素である、[1]に記載の発光性物質。
[6]
第一の置換パーセントは約50〜約95パーセントの範囲にあり、そして第二の置換パーセントは約5〜約50パーセントの範囲にある、[1]に記載の発光性物質。
[7]
発光性物質は粉末の形態になっていて、そしてこの発光性物質は10ミクロン未満の粒度を有する粒子を含む、[1]に記載の発光性物質。
[8]
セキュリティー特徴部を含む物品であって、
前記セキュリティー特徴部は、基材、および前記基材の中に分散させた発光性のホウ酸塩の粒子を含み、
前記発光性のホウ酸塩は結晶構造を有するホウ酸塩を含み、前記ホウ酸塩は置換可能な元素、この置換可能な元素の代わりに少なくとも約20パーセントの第一の置換パーセントで用いられるネオジム、および置換可能な元素の代わりに第二の置換パーセントで用いられるイッテルビウムを含む、
前記物品。
[9]
物品は、身分証明書、運転免許証、旅券、身元証明書、紙幣、小切手、証書、文書、株券、梱包要素、クレジットカード、バンクカード、ラベル、印章、郵便切手、代用貨幣、液体、人体、動物、および生物学的サンプルからなる群から選択される物品である、[8]に記載の物品。
[10]
物品の一部をクロムの吸収帯において励起輻射線に曝露する工程、および
曝露工程が終了した後にその励起輻射線の結果としてその一部によって生成して検出される放射がイッテルビウムの放射を示すかどうかを判定する工程、
を含む物品に組み入れた発光性の物質を確認するための方法。