特許第6185928号(P6185928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185928
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】LED用の水ガラス中の蛍光体
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20170814BHJP
   C01B 33/32 20060101ALI20170814BHJP
   F21V 5/00 20150101ALI20170814BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20170814BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20170814BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20170814BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170814BHJP
【FI】
   H01L33/50
   C01B33/32
   F21V5/00 510
   F21V5/00 630
   F21V5/00 600
   C09K11/80CPM
   C09K11/59CQD
   C09K11/02 Z
   F21Y115:10
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-546688(P2014-546688)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公表番号】特表2015-510252(P2015-510252A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】IB2012056997
(87)【国際公開番号】WO2013088309
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】61/576,413
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】カイパー ステイン
(72)【発明者】
【氏名】ベイスン グリゴリー
【審査官】 百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−060099(JP,A)
【文献】 特開2010−003785(JP,A)
【文献】 特開2008−037945(JP,A)
【文献】 特開平10−163535(JP,A)
【文献】 特開2008−283155(JP,A)
【文献】 特開2010−003777(JP,A)
【文献】 特開2011−187798(JP,A)
【文献】 特開2007−311743(JP,A)
【文献】 特開2007−302858(JP,A)
【文献】 特開2005−108922(JP,A)
【文献】 特表2010−509735(JP,A)
【文献】 実開平6−12631(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
C01B 33/20−39/54
C09K 11/00−11/89
F21V 5/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光変換層とを備える照明ユニットであって、
前記光源が、光源光を提供し、発光ダイオード(LED)を備え、前記光変換層が、粒子状ルミネセンス材料を含有するケイ酸アルカリマトリックスを備え、前記光変換層が、前記光源光の少なくとも一部をルミネセンス材料光に変換し、
前記光変換層が、前記光源から離れて構成され、
前記光変換層が、透過性の支持体の上流に構成され、且つ
前記支持体が、強化繊維の布地を有する表面を持つ、
照明ユニット。
【請求項2】
前記ケイ酸アルカリマトリックスが、SiO*MOを含み、Mが、Li、Na、及びKからなる群から選択される種を含み、SiOとMOとのモル比が、2:1〜4:1の範囲内である請求項1に記載の照明ユニット。
【請求項3】
前記ケイ酸アルカリマトリックスが、MSiOを含み、Mが、Li、Na、及びKからなる群から選択される種を含む請求項1又は2に記載の照明ユニット。
【請求項4】
前記Mが、少なくともNaを含む請求項2又は3に記載の照明ユニット。
【請求項5】
前記光源が、青色光源光を発生し、前記光源と、前記光変換層とが、白色照明ユニット光を提供する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の照明ユニット。
【請求項6】
前記粒子状ルミネセンス材料が、3価セリウムを含有するガーネット、2価ユーロピウムを含有する窒化物、3価セリウムを含有する酸窒化物、及び2価ユーロピウムを含有する酸窒化物からなる群から選択される1つ又は複数のルミネセンス材料を含む請求項1乃至5のいずれか一項に記載の照明ユニット。
【請求項7】
前記光変換層が、少なくとも10wt%のケイ酸アルカリを含み、前記光変換層内の前記ケイ酸アルカリと前記ルミネセンス材料との重量比が、20:1〜1:20の範囲内である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の照明ユニット。
【請求項8】
前記光変換層が、ガラス繊維を更に含む請求項1乃至7のいずれか一項に記載の照明ユニット。
【請求項9】
基板に光変換層を提供するための方法であって、前記光変換層が、粒子を備えるルミネセンス材料を含有するケイ酸アルカリマトリックスを備え、前記方法が、粒子状ルミネセンス材料と、ケイ酸アルカリマトリックス前駆体液体と、任意選択的に1つ又は複数の他の成分とを混合するステップと、任意選択的に1つ又は複数の更なるプロセス段階の後に、そのようにして得られた混合物を前記基板の表面に塗布するステップと、そのようにして形成された層を乾燥させて、前記基板の前記表面に前記光変換層を提供するステップとを含み、前記基板が、透過性の支持体を備え、前記支持体が、強化繊維の布地を有する表面を持つ、方法。
【請求項10】
二酸化ケイ素と酸化アルカリとのモル重量比が、2:1〜4:1の範囲内である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ケイ酸アルカリマトリックス前駆体液体が、液体水ガラスを含む請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)ベースの光源と、光変換層とを備える照明ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
変換層を備えるLEDベースの光源が、当技術分野で知られている。例えば、国際公開第2007/073496号は、少なくとも1つの固体発光素子と、発光素子から離隔された少なくとも1つのルミネセンス素子とを備える照明デバイスであって、ルミネセンス素子の表面が、発光素子の照明表面の大きさの少なくとも2倍である照明デバイスを記載している。また、この文献には、少なくとも1つの固体発光素子と、発光素子から離隔された少なくとも1つのルミネセンス素子とを備える照明デバイスであって、ルミネセンス素子の投影の表面積が、発光素子の投影の表面積の少なくとも2倍である照明デバイスも記載されている。
【0003】
国際公開第2010/027672号は、光源、及び光源を製造するための方法を記載している。この光源は、ダイと、光変換構成要素と、散乱リングとを含む。ダイは、ダイの上面、及びダイの1つ又は複数の側面を通して第1の波長の光を放出し、取付基板に結合される。光変換構成要素は、第1の波長の光を第2の波長の光に変換し、また、光変換構成要素は、ダイの上面に結合された底面を有する。光変換構成要素は、ダイの周りにスペースが存在するような横方向寸法を有し、スペースは、基板と光変換構成要素とによって境界を画される。散乱リングは、ダイの側面から放出される光の一部が光変換構成要素内に散乱されるようにスペース内に位置決めされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蛍光体変換LEDは、イルミネーション、LCD背面照明、及び自動車を含めた多くの用途で使用される。青色光を白色光に変換するために、様々なルミネセンス材料系が使用される。通常、ルミネセンス材料粒子は、有機系又はハイブリッド有機/無機系を用いてLED表面に結合される。有機系の典型的な例は、エポキシである。有機/無機系の典型的な例は、シリコーンである。
【0005】
エポキシは、高強度青色光の存在下で劣化(酸化)するので、高出力LEDパッケージでは使用されないことがある。シリコーンは、青色光に対してはるかに安定であるが、強い青色光と高温との組合せに関してやはり劣化することがある。ルミネセンス材料変換LEDにおいて、ストークスシフトにより、ルミネセンス材料粒子の表面で熱が発生される。熱は、ルミネセンス材料粒子を取り囲むポリマーマトリックスに影響を及ぼし、ルミネセンス材料との接触領域でポリマーの酸化を引き起こす。ポリマーは、断熱材料であり、したがって、GaNの下のヒートシンクに向かう熱拡散を制限する。これは、ルミネセンス材料粒の領域内部に熱を保つ。したがって、ルミネセンス材料粒の表面での温度は極端に高くなり、その結果、ポリマーを焼損させる。ルミネセンス材料粒の表面でのポリマー劣化は、望ましくない色ずれ、及び光出力の損失を引き起こすことがある。更に、ルミネセンス材料の温度が高ければ高いほど、変換効率が低くなる。
【0006】
したがって、本発明の一態様は、好ましくは更に上記の欠点の1つ又は複数を少なくとも一部なくす代替のマトリックスを提供することである。特に、代替のマトリックスは、シリコーンマトリックスよりも熱伝導性が高く、及び/又は熱的に安定である。更に、代替のマトリックスは、可視光に対して透明である。更に、好ましくは、代替のマトリックスは、(マトリックスの上に塗布されることがある)シリコーンの屈折率と実質的に同じ屈折率を有する。更に、好ましくはマトリックス、又はより正確には、ルミネセンス材料を有するマトリックスを備える光変換層は、基板に対して比較的容易に塗布可能である。
【0007】
意外にも、水ガラスが、上に示される特性の1つ又は複数を実現することがあり、したがってマトリックスとして使用され得るように見える。したがって、本発明は、ルミネセンス材料用のマトリックスとしての水ガラスの使用を提供する。そのようなマトリックスは、LEDダイ上の層として(層内に)、LEDダイ上の基板上に、又はLEDダイから離して適用されることがある。
【0008】
水ガラスは、非常に高い温度に対して耐性があり、シリコーンよりも約10倍良く熱を伝導する。更に、可視光に対して透明である。また、屈折率は、少なくとも幾つかのシリコーンの屈折率と同等であるように見える。その無機性質により、水ガラスは、LED環境内での熱的劣化を(実質的に)受けない。更に、その比較的高い熱伝導率が、ルミネセンス材料の温度を低く保つ。また、水ガラスコーティングは、機械的強度を提供し、したがって、積層されたガラスウェハの代わりとなり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、第1の態様では、本発明は、光源と、光変換層とを備える照明ユニットであって、光源が、光源光を提供するように構成され、発光ダイオード(LED)を備え、光変換層が、粒子状ルミネセンス材料を含有するケイ酸アルカリマトリックス(「マトリックス」)、特に(固体)水ガラスを備え、光変換層が、光源光の少なくとも一部をルミネセンス材料光に変換するように構成される照明ユニットを提供する。用語「マトリックス」は、ケイ酸アルカリマトリックスの量が少ないことがあるにせよ、ルミネセンス材料粒子がマトリックスによって取り囲まれる、即ち粒子がマトリックス内に埋め込まれることを表すことがある。また、用語「マトリックス」は、マトリックスが実質的に連続な相であり得ることを表すこともある。
【0010】
上記のように、そのような照明ユニットは、光変換層が安定であることがあり、熱エネルギーがより良く伝導されて除去されることがあり、したがって光変換がより効率的であり得ることから、利益を得ることができる。更に、層の塗布は、比較的単純であることがある。
【0011】
用語「光源」は、原則的には、当技術分野で知られている任意の光源に関することがある。好ましくは、光源は、動作中に、少なくとも200〜490nmの範囲から選択される波長での光を放出する光源であり、特に、動作中に、少なくとも400〜490nmの範囲から選択される波長での光を放出する光源である。この光は、一部は、ルミネセンス材料によって変換されることがある(下記参照)。特定の実施形態では、光源は、固体LED光源(LED又はレーザダイオードなど)を備える。また、用語「光源」は、2〜20個の(固体)LED光源など、複数の光源に関することもある。したがって、特定の実施形態では、光源は、発光ダイオードを備える。特に、光源は、(動作中に)青色光を発生するように構成される。したがって、青色光の少なくとも一部は、光変換層によって、例えば、黄色、黄色と赤色、又は緑色と赤色などに変換されることがある。
【0012】
光変換層は、光源光の少なくとも一部をルミネセンス材料光に変換するように構成される。光変換層は、透過構成で構成され得て、光源光が光変換層の一方の面に衝突し、ルミネセンス材料光及び任意選択的に光源光が光変換層の反対の面から逃げる(これは、光変換層の上記一方の面からも逃げるルミネセンス材料、及び/又は光変換層の上記一方の面で(一方の面から)反射/散乱される光源光を除外しない)。また、光変換層は、反射構成でも構成され得て、光源光が光変換層の一方の面に衝突し、ルミネセンス材料光のみが、層の同じ面から逃げることができる(これは、光変換層の上記一方の面で(一方の面から)反射/散乱される光源光も除外しない)。前者の構成は、例えば、光変換層がLEDダイ上又は出射窓上に塗布されるときに使用され得る。後者の構成は、例えば、例えば反射層の代わりに、又は反射層の上で、光キャビティの壁又は他の部分の上に適用され得る。((同じ)照明ユニットに)両方の構成が適用されることもあることに留意されたい。
【0013】
一実施形態では、光変換層は多層でよく、例えば、第1の層が、赤色光を発生するように構成されたルミネセンス材料を備え、第2の層が、緑色及び/又は黄色光を発生するように構成されたルミネセンス材料を備える。代替として又は追加として、光変換層は、(保護)コーティングを備えることがあり(下記も参照のこと)、コーティングは、一実施形態では、ケイ酸アルカリ(固体水ガラスなど)を含むこともあるが、ルミネセンス材料を有さず、また、任意選択的に異なる組成物を有する。
【0014】
上記のように、光変換層は、LEDのダイの上に塗布されることがあるが、例えば出射窓の上に塗布されることもある。したがって、一実施形態では、光変換層は、光源から離して、例えばそのような出射窓の上に構成されることがある。
【0015】
上記のことから明らかになり得るように、照明ユニットは、様々な方法で構成されることがある。例えば、光変換層は、ダイ上でよく、及び/又は離れていてもよく、及び/又は(透過性)ドーム内に拡散されていてよく、ドーム上でもよい;光変換層は、透過様式又は反射様式で使用されることがある(両方の構成が同じ照明ユニット内で適用されることもある);光変換層は、コーティングされてもよい。したがって、照明ユニットは、更に、光変換層の下流に構成された透過性光学素子を備えることがあり、透過性光学素子は、(例えば)ドーム、コーティング、及び支持体からなる群から選択されることがある。
【0016】
エポキシドームなどのドームが当技術分野でよく知られており、LEDダイからの光抽出を支援するために使用され得る。一実施形態では、ドームは光変換層であり、即ち、ルミネセンス材料がドーム内に分散される。更に別の実施形態では、ルミネセンス材料は、本明細書で述べられるように、光変換層としてLEDダイの上に提供され、ドームは、光変換層を有するダイの上に配置される。光変換層上でコーティングを使用するとき、コーティングは、例えば、酸化ケイ素及び窒化ケイ素の1つ又は複数を含むことがある。代替として又は追加として、コーティングは、シリコーンコーティングを含むことがあるが、他の(光学)コーティングが適用されることもある。
【0017】
用語「上流」及び「下流」は、光発生手段(本明細書では特に第1の光源)からの光の伝播に対する要素又は機能の配置に関し、ここで、光発生手段からの光のビーム内の第1の位置に対して、光発生手段により近い光のビーム内の第2の位置が「上流」であり、光発生手段からより遠い光のビーム内の第3の位置が「下流」である。
【0018】
特に、ケイ酸アルカリは、SiO*MO(「水ガラス」)を含むことがあり、Mが、Li、Na、及びKからなる群から選択される種、特に少なくともNaを含み、SiOとMOとのモル比が、一実施形態では、2:1〜4:1の範囲内である(下記も参照のこと)。
【0019】
様々なタイプの水ガラスケイ酸アルカリは、それらのSiO:MO比によって特徴付けられ、これは特に、2:1〜4:1(即ち1モルのMOに対して2〜4モルのSiO)の間、特に2:1〜3.75:1の間で変わることがある。したがって、一実施形態では、二酸化ケイ素と酸化アルカリとのモル比によって定義されるシリコンとアルカリ金属とのモル重量比は、2〜4の範囲内、特に2:1〜3.75の間、特に2.5〜3.75の間、特に2.7〜3.5の間、例えば特に2.8〜3.22の間である。約3(±0.2)の比が、良好なコーティング結果を提供するように思われる(下記も更に参照のこと)。
【0020】
特定の実施形態では、ケイ酸アルカリマトリックスが、MSiOを含み、Mが、Li、Na、及びKからなる群から選択される種を含む。一実施形態では、同じマトリックス内に、2つ以上のアルカリイオン、例えば、(Li,Na)SiOが存在する。例えば、Mの70モル%がナトリウムであり、Mの30モル%がリチウムである。MSiOに加えて、ケイ酸アルカリマトリックスは、MO及びSiOの1つ又は複数を含むこともある。特に、Mは、少なくともNa(ナトリウム)を含む。特定の実施形態では、ケイ酸アルカリマトリックスは、NaSiOを含む。NaSiOは、しばしば、ナトリウム水ガラスとして示される。炭酸ナトリウムと二酸化ケイ素は、溶融時に反応して、ケイ酸ナトリウムと二酸化炭素を発生する。即ち、NaCO+SiO→NaSiO+CO。無水ケイ酸ナトリウムは、頂点共有{SiO}四面体から構成される鎖状ポリマーアニオンを含有する。これはまた、カリウム及びリチウム変形形態にも当て嵌まることがある。(MSiO)水ガラスのカリウム及びリチウム変形形態は、それぞれカリウム水ガラス及びリチウム水ガラスとして示される。
【0021】
ケイ酸アルカリマトリックスは、ルミネセンス材料に加えて、任意選択的に他の材料も含み、例えば、反射材料、有機材料、例えばグリセロール(例えば、層形成を改良するため)、強化繊維(特にガラス繊維)などの1つ又は複数を含む。強化繊維(例えばガラス繊維)など他の材料を添加するとき、(そのような添加される材料)の屈折率は、好ましくは、ケイ酸アルカリマトリックス又は水ガラスの屈折率に近い。特に、そのような添加物の屈折率は、ケイ酸アルカリマトリックスの屈折率の±0.20の範囲内、例えば±0.10の範囲内、特に±0.05の範囲内でよい。更に、ケイ酸アルカリマトリックスは、(結晶)水を含有することがある。一般に、水の重量パーセントは、光変換層の総重量に対して約15wt%未満、特に約10wt%未満、特に約5wt%未満である。
【0022】
光変換層は、粒子状ルミネセンス材料を含む。ルミネセンス材料の粒子は、ケイ酸アルカリマトリックス内に(少なくとも一部)埋め込まれる。したがって、マトリックスは、連続相とみなされ得る。相対量に応じて、ケイ酸アルカリは、滑らかで光沢のある外観を有する実質的に平坦な一体層、又は粗いことがある層を形成することがある。特に、光変換層は、光変換層の総重量に対して少なくとも2wt%、特に少なくとも10wt%、特に少なくとも20wt%のケイ酸アルカリ(又は水ガラス)を含む。一実施形態では、光変換層内のケイ酸アルカリとルミネセンス材料との重量比は、50:1〜1:50、例えば20:1〜1:20、特に10:1〜1:10、例えば5:1〜1:5、例えば1:1〜1:3の範囲内である。用語「ルミネセンス材料」は、複数の異なるルミネセンス材料を表すこともあることに留意されたい(下記も参照のこと)。ケイ酸アルカリとルミネセンス材料との総量(即ち合計の量)は、一般に、光変換層の総重量に対して少なくとも50wt%、特に少なくとも60wt%、特に少なくとも70wt%である。特に、ケイ酸アルカリとルミネセンス材料との総量は、光変換層の総重量に対して少なくとも80wt%、特に少なくとも90wt%、例えば少なくとも95wt%でよい。
【0023】
ルミネセンス材料は、基本的には、光源光の少なくとも一部を吸収するのに適しており、吸収された光源光の少なくとも一部を(特に可視域での)ルミネセンスに変換することができる任意のルミネセンス材料でよい。特に、ルミネセンス材料は、(光源光が青色光成分を含むと仮定して)光源光の青色部分の少なくとも一部を吸収するように構成される。
【0024】
一実施形態では、粒子状ルミネセンス材料が、3価セリウムを含有するガーネット、2価ユーロピウムを含有する窒化物、3価セリウムを含有する酸窒化物、及び2価ユーロピウムを含有する酸窒化物からなる群から選択される1つ又は複数のルミネセンス材料を含む。特に、それらのルミネセンス材料は、青色で励起可能であることがある。このようにして、望まれる場合には、青色光源光と、そのようなルミネセンス材料の1つ又は複数とに基づいて、任意選択的に1つ又は複数の更なるルミネセンス材料と組み合わせて、白色光が発生されることがある。したがって、一実施形態では、光源は、青色光源光を発生するように構成され、光源と、光変換層とが、白色照明ユニット光を提供するように構成される。したがって、一実施形態では、光源光は青色であり、ルミネセンス材料光は、黄色、黄色と赤色、又は緑色と赤色など1つ又は複数の補色を含む。
【0025】
(そのような)(無機)ルミネセンス材料の例は、例えば、2.1又は3.3のYAG:Ceのモル比でのセリウム(Ce)ドープイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)、又は(例えば同様のモル比での)セリウムドープルテチウムアルミニウムガーネット(LuAG)を含む。適切な無機ルミネセンス材料の特定の例は、例えば、YAl12:Ce3+、YLuAl12:Ce3+、YGdTbAl12:Ce3+、Y2.5Lu0.5Al12:Ce3+、LuAl12:Ce3+、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu2+、(Sr,Ca,Ba)SiN2:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)Ga:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu2+などである。他の青色光励起可能ルミネセンス材料が適用されることもある。
【0026】
特定の実施形態では、ルミネセンス材料は、ルミネセンス量子ドットを含む。そのようなルミネセンス材料は、(当技術分野で知られているように、粒径に応じた)発光帯の同調可能性という利点を有することがある。更に、そのような系は、ルミネセンス飽和色を与えることがある。可視範囲内での発光を伴う最も良く知られている量子ドットは、硫化カドミウム(CdS)などのシェル及び(又は)硫化亜鉛(ZnS)シェルを有するセレン化カドミウム(CdSe)に基づく。カドミウムを含まない量子ドット、例えば、リン化インジウム(InP)、及び/又は硫化銅インジウム(CuInS)、及び/又は硫化銀インジウム(AgInS)も使用され得る。そのようなルミネセンス材料は、透明材料、例えば上記又は下記の透明材料の1つ又は複数の中に埋め込まれることがある。
【0027】
上記のように、用語「ルミネセンス材料」は、複数の異なるルミネセンス材料に関することもある。したがって、一実施形態では、ルミネセンス材料は、複数のルミネセンス材料を含む。ルミネセンス材料は、同じ励起波長での発光のスペクトル分布が異なるときに、異なる材料とみなされ得る。
【0028】
粒子状ルミネセンス材料は、例えば、0.5〜10μmの範囲内の粒径を有するルミネセンス材料粒子を含むことがあり、特に、(粒子状ルミネセンス材料の粒子の)50wt%以上、例えば少なくとも85wt%が、0.5〜10μmの範囲内の寸法を有する。当然、量子ドットは、より小さいことがある。
【0029】
本明細書における用語「白色光」は、当業者に知られている。白色光は、特に、約2000〜20000Kの間、特に2700〜20000Kの間の相関色温度(CCT:correlated color temperature)を有する光に関し、一般的な照明に関しては、特に約2700K〜6500Kの範囲内であり、背面照明目的では、特に約7000K〜20000Kの範囲内であり、特に、BBL(黒体軌跡:black body locus)から約15SDCM(等色標準偏差:standard deviation of color matching)内、特にBBLから約10SDCM内、特にBBLから約5SDCM内である。
【0030】
用語「紫色光」又は「紫色発光」は、特に、約380〜440nmの範囲内の波長を有する光に関する。用語「青色光」又は「青色発光」は、特に、約440〜490nmの範囲内の波長を有する光(幾らかの紫色相及びシアン色相を含む)に関する。用語「緑色光」又は「緑色発光」は、特に、約490〜540nmの範囲内の波長を有する光に関する。用語「黄色光」又は「黄色発光」は、特に、約540〜570nmの範囲内の波長を有する光に関する。用語「橙色光」又は「橙色発光」は、特に、約570〜600nmの範囲内の波長を有する光に関する。用語「赤色光」又は「赤色発光」は、特に、約600〜750nmの範囲内の波長を有する光に関する。用語「可視」、「可視光」、又は「可視発光」は、約380〜750nmの範囲内の波長を有する光を表す。
【0031】
更なる態様では、本発明は、基板に光変換層を提供するための方法であって、光変換層が、粒子を備えるルミネセンス材料(即ち、粒子状ルミネセンス材料)を含有するケイ酸アルカリマトリックスを備え、方法が、粒子状ルミネセンス材料と、ケイ酸アルカリマトリックス前駆体液体と、任意選択的に1つ又は複数の他の成分とを混合するステップと、任意選択的に1つ又は複数の更なるプロセス段階の後に、そのようにして得られた混合物を基板の表面に塗布するステップと、そのようにして形成された層を乾燥させて、光変換層を提供するステップとを含む方法を提供する。
【0032】
これは、比較的単純なプロセスであることがあり、一般に、上述のような光変換層を形成し得る、光変換層を提供するための現況技術のほとんどのプロセスよりも容易である。基板は、例えば、LED(特にLEDダイ)、透過性支持体(例えば、出射窓として意図される)、又はウェハ(特に、複数のLEDダイを備える)を備えることがある。ウェハは、後で、例えばレーザダイシングによってダイシングされることがある。ダイシング中に光変換層が実質的に無傷のままにされることがあるので、これもまた特有の利点である。任意選択的に、支持体は、例えばガラス繊維ベースのものなど強化繊維の布地を備えることがある。代替として、コーティング前に水ガラス/蛍光体懸濁液中に短繊維が懸濁されることがある。
【0033】
ケイ酸アルカリマトリックス前駆体液体は、例えば、液体水ガラス又は液化された固体水ガラスでよい。水ガラス粉末は、水などの液体と混合されることがあり、そのようにして得られる液体(又は溶液)が、粒子状ルミネセンス材料及び任意選択的な他の成分と組み合わされる。ルミネセンス材料は、液体中の粒子状ルミネセンス材料の懸濁液を生じることがある。
【0034】
用語「マトリックス前駆体」は、基板上への塗布後及び乾燥後に粒子状ルミネセンス材料を(少なくとも一部)取り囲むマトリックスをもたらす構成材料を液体が提供するときに使用される。このようにして、固体ケイ酸アルカリマトリックスが形成される。
【0035】
特に、液体は、水ベースである。存在することがある他の成分は、例えば、エタノールやアセトンなどの有機低温沸騰溶媒であることがあるが、特に比が1を超えるとき、例えば2以上であるときには、他の粒子状材料、例えば反射器粒子や、ガラス繊維などの強化粒子であることもある。
【0036】
用語「任意選択的な1つ又は複数の更なるプロセス段階」は、例えば、加熱プロセス、(激しい)混合プロセス、及び1つ又は複数の更なる成分の混合などを含むことがある。
【0037】
上記のように、粒子状ルミネセンス材料は、一実施形態では、複数の異なるルミネセンス材料を含むことがある。これは、2つ(以上)のタイプの粒子を示唆することがあり、及び/又はそれぞれの粒子中に2つ(以上)のタイプのルミネセンス材料を含む粒子を示唆することもある。
【0038】
光変換層の特性は、更に、形成されるときに光変換層を取り巻く液体中又は雰囲気中の酸性成分の存在によって影響を及ぼされることがある。したがって、一実施形態では、プロセスは、更に、(i)酸性成分を混合物に添加するステップと、(ii)そのようにして形成された光変換層の上に酸性ガス又は酸性スプレーを案内するステップとの1つ又は複数を含む。これは、層の強度を改良し、耐湿性を高めることがある。
【0039】
層は、(液体)コーティングを提供するために、当技術分野で知られている方法によって表面に塗布されることがある。光変換層を提供するために、そのようにして形成された層を乾燥させるとき、プロセスは、加熱段階を含むことがある。特に、乾燥は、そのようにして形成された層を、照明ユニットが全出力で適用されるときに到達され得る温度まで加熱することを含む。一実施形態では、(LEDダイ又は透過性支持体などの基板への塗布後の)層は、200〜300℃の範囲内の温度まで加熱される。
【0040】
一実施形態では(上記も参照のこと)、粒子状ルミネセンス材料は、ルミネセンス材料粒子を含み、その50wt%以上が、0.5〜10μmの範囲内の寸法を有する。更に、一実施形態では、プロセスは、5〜200μm、例えば10〜100μm、例えば30〜70μmの範囲内の厚さを有する光変換層を提供するステップを含む。
【0041】
上記のように、照明ユニットでの光変換層としての粒子状ルミネセンス材料用のマトリックスとして、固体水ガラスが使用されることがある。
【0042】
「実質的に全ての発光」又は「実質的に〜からなる」などでの、本明細書における用語「実質的に」は、当業者によって理解されよう。用語「実質的に」は、「完全に」、「完璧に」、「全て」などを有する実施形態を含むこともある。したがって、幾つかの実施形態では、副詞「実質的に」は省かれることもある。適用可能である場合には、用語「実質的に」は、90%以上、例えば95%以上、特に99%以上、特に99.5%以上(100%も含む)に関することもある。用語「備える」は、用語「備える」が「からなる」を意味する実施形態も含む。
【0043】
更に、本明細書及び特許請求の範囲における用語「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも順序又は時系列を表すためには使用されない。そのように使用される用語は、適切な状況下では交換可能であり、本明細書で述べられる本発明の実施形態は、本明細書で説明又は例示される以外の順序での操作も可能であることが理解されるべきである。
【0044】
本明細書におけるデバイスは、とりわけ、動作中のものとして述べられる。当業者には明らかなように、本発明は、動作方法又は動作中のデバイスに限定されない。
【0045】
上述の実施形態は、本発明を限定せずに例示し、当業者が、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計することが可能であることに留意されるべきである。特許請求の範囲において、小括弧で括られた任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとは解釈されないものとする。動詞「備える」及びその活用形の使用は、特許請求の範囲に記載されるもの以外の要素又はステップの存在を除外しない。要素の前の数量詞「1つの」は、複数のそのような要素の存在を除外しない。本発明は、幾つかの異なる要素を備えるハードウェアによって、及び適切にプログラムされたコンピュータによって実装されることがある。幾つかの手段を列挙する装置クレームにおいて、これらの手段の幾つかは、ハードウェアの同一の要素によって具現化されることがある。特定の手段が互いに異なる従属クレームに記載されていることだけでは、これらの手段の組合せを有利に使用することができないことを示さない。
【0046】
本発明は、更に、本説明で述べられる、及び/又は添付図面に示される特徴的な特徴の1つ又は複数を備えるデバイスに当て嵌まる。本発明は、更に、本説明で述べられる、及び/又は添付図面に示される特徴的な特徴の1つ又は複数を備える方法又はプロセスに関する。
【0047】
本特許に述べられる様々な態様は、追加の利点を提供するために組み合わされ得る。更に、特徴の幾つかは、1つ又は複数の分割出願のための基礎となり得る。
【0048】
次に、本発明の実施形態が、単に例として、添付の概略図面を参照して述べられる。対応する参照符号は、対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1a】照明ユニットの一実施形態を示す概略図である。
図1b】照明ユニットの一実施形態を示す概略図である。
図1c】照明ユニットの一実施形態を示す概略図である。
図1d】照明ユニットの一実施形態を示す概略図である。
図2a】本発明の更なる一態様を示す概略図である。
図2b】本発明の更なる一態様を示す概略図である。
図2c】本発明の更なる一態様を示す概略図である。
図2d】本発明の更なる一態様を示す概略図である。
【0050】
図面は、必ずしも正確な縮尺ではない。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1aは、参照番号100で示される本発明の照明ユニットの一実施形態を概略的に示す。照明ユニットは、光源10を備え、光源10は、この概略図ではLED(発光ダイオード)である。この実施形態では、光源10の上、ここでは表面15上、したがって光源10の下流に、光変換層20が提供される。この光変換層20は、ケイ酸アルカリ又は水ガラスマトリックス40を備え、マトリックス40内部にルミネセンス材料粒子55(下記参照)を含む。例として、照明ユニット100は、例えば光抽出特性のために、(透過性)ドーム61を更に備える。これは、透過性光学素子60の一実施形態であり、透過性光学素子60は、この実施形態では、光源10の下流、しかも光変換層20の下流に配置される。光源10は、光源光11(この図には示さない。図1cも参照のこと)を提供し、光源光11は、少なくとも一部、光変換層20によってルミネセンス材料光51に変換される。照明ユニットから発する光は、参照番号101で示されており、少なくともこのルミネセンス材料光51を含むが、任意選択的に、光変換層(内のルミネセンス材料50)の吸収特性によっては光源光11も含む。
【0052】
図1bは、ドームを備えず、任意選択的なコーティング62を備える別の実施形態を概略的に示す。このコーティング62は、透過性光学素子60の更なる例である。コーティング62は、一実施形態では、ルミネセンス材料を有さないケイ酸アルカリ層でよいが、別の実施形態では、ポリマー層、シリコーン層、又はエポキシ層でよいことに留意されたい。代替として又は追加として、層は、無機コーティング、例えば酸化ケイ素又は窒化ケイ素層からなることがあり、特に、水などの環境的影響からケイ酸アルカリ層を保護するための機能を有する。
【0053】
図1a〜図1bの概略的に示される実施形態どちらにおいても、光変換層20は、光源10、又は少なくともその光出射面、例えばLEDのダイ(光出射面15)と物理的に接触する。しかし、図1cでは、光変換層20は、光源10から離して配置される。この実施形態では、光変換層20は、出射窓など透過性(即ち透光性)支持体30(やはり光学素子60の一例とみなされる)の上流に構成される。光変換層20が塗布される支持体30の表面は、参照番号65で示される。任意選択的に、この表面65はテクスチャを付けられることがある。特定の実施形態では、この表面は、強化繊維の布地を備える。光変換層20が支持体30の下流に配置されることもあり、又は光変換層20が支持体の両側に塗布されることもあることに留意されたい。光変換層20と光源との距離は、参照符号dで示され、例えば0.1mm〜10cmの範囲内でよい。図1cの構成では、基本的には、複数の光源10が適用されることもあることに留意されたい。
【0054】
図1dは、光源10と、光変換層20とを、幾分より詳細に概略的に示し、光変換層20は、ルミネセンス材料粒子55を含むマトリックス40を備え、これらの粒子は、ルミネセンス材料50を構成する。参照符号d1で示される光変換層の高さは、例えば5〜200μm、特に30〜70μm、例えば40〜60μmの範囲内でよい。例として、この概略図面は、光源光11が、一部は光変換層20を透過され、一部はルミネセンス材料50によって変換されてルミネセンス材料光51を提供することを示す。ルミネセンス材料光51と残りの光源光11とが合わさって、照明ユニット光101を提供する。
【0055】
図2aは、基板表面75を有する基板70を非常に概略的に示し、基板表面75に光変換層が塗布されることがある。この基板は、例えば図1a〜図1bに概略的に示されるようなLEDのダイでよいが、図1cの透過性光学素子でもよい。次いで、図2bを参照すると、ケイ酸アルカリマトリックス前駆体液体とルミネセンス材料粒子とを含む液体を基板表面75にコーティングすることによって、光変換層20が塗布される。一実施形態では、基板70は、ウェハ76を備える。層を塗布(及び乾燥)した後、任意選択的に、コーティング等の光学素子60が塗布されることがある。
【0056】
図2dは、光変換層20が滑らかでない表面25を備える一実施形態を概略的に示す。例えば、高い重量百分率のルミネセンス材料で、そのような粗い表面が得られることがある。任意選択的に、更なるコーティングが塗布されることがある(上記も参照のこと)。
【実施例】
【0057】
白色光LEDにおけるルミネセンス材料粒子のための担体として、シリコーンの代替としての水ガラスが研究された。
【0058】
水ガラス(ケイ酸ナトリウム)は、砂(SiO)とソーダ灰(NaCO)の様々な部分を融解することによって生成され、ここで、COは除去される。これらの部分の比が、最終生成物の特性を決定する。この生成物は、SiO/NaOの比として、及び水中での濃度として特定される。また、異なる特性を得るために、ナトリウムがカリウム又はリチウムによって置き換えられることもある。薄膜として水ガラスを塗布した後、水が蒸発し、固体コーティングを後に残す。低いSiO/NaO比は、水をより良く保持し、したがってよりゆっくりと蒸発させる傾向がある。コーティング用途に関しては、高い比(約2.8〜3.22)の溶液が特に推奨される。コーティングは、完全に脱水される場合に最も耐久性がある(水及びCOの取込みに対する耐性がある)。完全な脱水は、乾燥プロセス中に熱を必要とすることがある。ケイ酸塩層を250℃の温度で硬化することが推奨され、この温度は、ルミネセンス材料が耐えることができる温度よりも十分低い(窒化物ベースのルミネセンス材料は、350℃までの温度に耐えることができ、YAGベースのルミネセンス材料は、更に高い温度まで耐えることができる)。
【0059】
コーティングを耐久性のあるものにするための別の方法は、化学的硬化を利用することである。ケイ酸塩は、様々な酸性又は可溶性金属化合物と反応され得る。酸性材料を用いたケイ酸アルカリの中和が、シリカを重合させて、ゲルを生成する。このように使用され得る化学的硬化剤は、鉱酸及び有機酸、COガス、並びに炭酸水素ナトリウムなどの酸塩を含む。
【0060】
ケイ酸塩被膜は、完全に脱水されるとき、優れた耐高温性を提供する。ほとんどのケイ酸塩は、約850℃の流動点を有する。LEDでは、そのような温度は、決して到達されない。
【0061】
水ガラスは、可視光に対して透明であり、透過率は、400nm未満で急速に低下し、325nmで約40%の値を示す。青色光を白色光に変換するLEDに関して、この範囲は十分なものである。
【0062】
ケイ酸塩コーティングは脆いことがある。より高い柔軟性が必要とされる場合、典型的には5wt%のグリセリンが添加され得る。グリセリンは、青色光に対して非常に高い透明性を有する。しかし、エチレングリコール、プロピレングリコール、アルコールなど他の材料が添加されることもある。代替として又は追加として、強化布地が塗布されることがあり、又は強化繊維が添加されることがある(上記も参照のこと)。
【0063】
コーティング手順
ケイ酸塩溶液とルミネセンス材料粒子が、均一な分散液が得られるまで混合される。次いで、その分散液が、LEDを覆うガラスプレートの上に塗布され得る(離隔塗布)。また、分散液は、LEDの表面上(即ちダイ上)に直接塗布され得て、それにより、ガラスプレートの必要をなくす。コーティングは、例えばスピンコーティング又はスプレーコーティングによって行われ得る。しかし、ルミネセンス材料は高価であるので、損失の少ないコーティングが好ましい。スクリーン印刷又は浸漬コーティングが、小さい損失をもたらす。また、所望の変換特性を得るために、堆積プロセス中、コーティングの質が監視されることが好ましい。
【0064】
コーティングが塗布された後、基板は、室温で乾燥される。水のほとんどが蒸発した後、コーティングを脱水するために、基板は、オーブン内で、SiOとNaOの比に応じて100〜300℃にゆっくりと加熱される。水蒸発ステップの前に、化学的硬化を得るために、例えばCO又はHClのガス又はスプレーを用いた後処理が適用されることがある。
【0065】
ケイ酸塩とルミネセンス材料との比は、調整されることがある。多量のケイ酸塩は、ケイ酸塩内に完全に埋め込まれたルミネセンス材料粒子をもたらすことがあり、コーティングは、滑らかで光沢のある外観を有する。(ドームが使用されない場合に関して)より良い光アウトカップリングを得られるように、粗い表面を得るために、ケイ酸塩含有量を減少させることが望まれることがある(図2dも参照のこと)。ケイ酸塩含有量の更なる減少は、有孔構造をもたらす。有孔構造は、水がより容易に蒸発するという利点を有する。
【0066】
水ガラスは、10.6%NaO及び26.5%SiOの水溶液としてMerckから得られた。YAG:Ce3+ルミネセンス材料粒子は、1:1の質量比での水ガラス中のルミネセンス材料の懸濁液を生成するために使用された。3”ウェハレベル成形パッケージングウェハ(シリコン成形化合物、SMC)が、懸濁液中への手動の浸漬コーティングによって半分だけコーティングされた。他方の半分は、澄明な水ガラス溶液中に浸漬コーティングされた。比較のために、両半分の間で、幾つかのLEDダイは、コーティングされないままであった。ウェハは、1日間、空気乾燥され、次いで、オーブン内で50℃で4時間乾燥された。検査は、ルミネセンス材料充填コーティングが有孔性であったことを示した(連接した開孔)。そのため、半ウェハの半分が、澄明な水ガラスで再びコーティングされた。この澄明な水ガラスは、孔を満たし、高密度のルミネセンス材料充填コーティングを残した。したがって、ウェハは、以下の3つの異なるダイを含有した。即ち、コーティングされていないダイ、水ガラス中の高密度ルミネセンス材料でコーティングされたダイ、及び水ガラス中の有孔性ルミネセンス材料でコーティングされたダイ。ウェハは、再び、室温、及び50℃で乾燥された。その後、1日間90℃で乾燥され、次いで4時間の120℃乾燥ステップを施された。最後に、ウェハは、150℃で4時間乾燥された。
【0067】
乾燥後、ウェハは、20mm/sのダイシング速度で、2Wの266nmUVレーザ(JPSA)でダイシングされた。水ガラス層及びSMC層は、1ステップでレーザ切断された。水ガラス材料が、切口付近に再堆積することが観察された。この水ガラス材料は、カミソリの刃を用いて排除することによって、ダイを損傷することなく容易に除去され得た。
【0068】
再堆積された水ガラスの除去後、及びダイの分離後、コーティングの厚さが測定され得た。澄明な水ガラスは、約30μmの薄さであり、高密度ルミネセンス材料装填水ガラスは、約60μmであった。
【0069】
水ガラスの表面は、非常に硬く、引掻き傷を付けられることがほとんどない。これは、水ガラスが、ダイ取扱い中に機械的な支持/保護として働くことができることを意味する。これは、積層されたガラスウェハの使用の代わりとなり得る。
【0070】
ダイ分離後、試料は、リフロー炉内で基板上にはんだ付けされた。
【0071】
屈折率
ダイの光出力を測定する前に、水ガラスの屈折率が測定された。水ガラスの液滴をポリエチレン箔上で拡散させることによって、澄明な水ガラスコーティングが調製された。室温乾燥後、箔は除去され、水ガラスシートが、オーブン内で50℃、90℃、及び120℃の温度で更に乾燥された。アッベ屈折計を使用して、様々な波長に関して屈折率が測定された。水ガラスの屈折率は、軟質ドームシリコーン材料の屈折率とほぼ一致するようであった。これは、水ガラスとドームとの界面が光をほとんどダイに反射し返さないことを意味するので、好ましい結果である。
【0072】
光出力
基板にダイをはんだ付けし、シリコーンドームを成形した後、光出力が測定された。これらの結果は、澄明な水ガラスが、参照試料に比べて光出力を大幅には変えないことを示した。これは、ドームと水ガラスとの同様の屈折率により、尤もらしく思われる。有孔ルミネセンス材料を有するダイは、ルミネセンス材料を有さないダイの約56%の光を生成する。
【0073】
これらの実験において、約4200Kの色温度が得られた。当然、ルミネセンス材料の量及びタイプ、並びに光源の波長(分布)に応じて、他の色点が得られることもある。
【0074】
したがって、ルミネセンス材料充填水ガラスは、ルミネセンス材料充填シリコーンに勝る幾つかの利点、例えば、より低いコスト、より高い熱伝導率、並びに光及び温度に起因する劣化に対するより良い耐性を有する。水ガラスは、1ステップで、シリコーン及び積層されたガラスウェハの代わりとなり得る。水ガラスコーティングは、ルミネセンス材料粒子を含むことができ、剛性と耐引掻き性を同時に有する。水ガラスの屈折率は、シリコーンドームの屈折率とほぼ等しい。澄明な水ガラスを有するダイの光出力は、水ガラスを有さないダイの出力とほぼ等しい。有孔性のYAG充填水ガラスでコーティングされたダイは、良好な光出力を与える。水ガラスコーティングは、深紫外レーザを用いてダイシングされ得る。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D