(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記再構成手段は、前記バックグラウンド信号測定を補完し、前記補完されたバックグラウンド信号の測定結果を使用して前記周波数固有のバックグラウンド信号を判別するように適合された、請求項6に記載の装置。
前記装置は、前記視野域の画像を再構成するための検出信号を受信する前に、および/または前記検出信号を受信した後に、前記バックグラウンド信号の測定動作を実行するように適合された、請求項4に記載の装置。
前記第1のサブゾーンと、前記第2のサブゾーンとが前記視野域内に形成されるように、磁場強度の空間内における分布パターンを有する磁気選択−収束場を生成し、検査領域内の前記視野域の空間内における前記位置を変化させるための前記選択手段を備える選択−収束手段であって、前記選択−収束手段は、少なくとも1組の選択−収束場コイル、および前記磁気選択−収束場の前記生成を制御するための前記少なくとも1つの組の選択−収束場コイルに与えられる選択−収束場電流を生成するための収束場生成器ユニットを備える選択−収束手段を備え、
前記少なくとも1組の選択−収束場コイルは、
内側コイル軸の周りの閉ループとして形成される、少なくとも1つの内側選択−収束場コイルと、第1の内側選択−収束場コイルと、少なくとも2つの外側選択−収束場コイルのグループとを備え、
前記少なくとも2つの外側選択−収束場コイルは、前記少なくとも1つの内側選択−収束場コイルよりも前記内側コイル軸から大きな距離で、異なる角度位置で配置され、それぞれが関連する外側コイル軸の周りに閉ループを形成する、請求項1に記載の装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、比較的大型の診断対象(人間、動物)、特に、大人の人間の検査を可能にし、バックグラウンド信号の除去を可能にする装置及び方法であって、視野域内の磁気粒子を検出する装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様では、視野域内の磁気粒子に影響を及ぼすおよび/または磁気粒子を検出する装置を開示する。本装置は、
磁気粒子の磁化が飽和状態とならない低い磁場強度を有する第1のサブゾーンおよび磁気粒子の磁化が飽和状態に達する磁場強度であるより高い磁場強度を有する第2のサブゾーンが視野域内に形成されるように、空間内での磁場強度の分布パターンを有する選択磁場を生成するための、選択場信号生成器ユニットおよび選択場要素を備える選択手段と、
磁気材料の磁化が局所的に変化するよう、磁気駆動場によって視野域内の前記2つのサブゾーンの空間内における位置を変化させるための、駆動場信号生成器ユニットおよび駆動場コイルを備える駆動手段と、
検出信号を取得するために、少なくとも1つの信号受信ユニットおよび少なくとも1つの受信コイルを備える受信手段であって、検出信号は視野域内の磁化状態に左右され、前記磁化状態は第1および第2のサブゾーンの空間内における位置の変化によって影響される、受信手段と、
検出信号からの視野域の画像を再構成する再構成手段であって、前記検出信号のスペクトルが複数の周波数成分を含み、前記周波数成分の1つまたは複数が、バックグラウンド信号の測定結果から取得された周波数成分の特定の信号品質ファクタを使用することで選択および/または重み付けされ、前記選択および/または重み付けされた周波数成分のみが、画像の再構成に使用される、再構成手段とを備える。
【0013】
本発明の別の態様では、視野域内の磁気粒子に影響を及ぼすおよび/または検出する装置を開示する。本装置は、
i)磁気粒子の磁化が飽和状態とならない低い磁場強度を有する第1のサブゾーンと、磁気粒子の磁化が飽和状態に達する磁場強度であるより高い磁場強度を有する第2のサブゾーンとが視野域内に形成されるように、磁場強度の空間内における分布パターンを有する磁気選択−収束場を生成し、検査領域内の視野域の空間内における位置を変更するための選択−収束手段であって、前記選択−収束手段は、少なくとも1組の選択−収束場コイル、および前記磁気選択−収束場の生成を制御するための前記少なくとも1組の選択−収束場コイルに設けられる選択−収束場電流を生成するための選択−収束場生成器ユニットを備える選択−収束手段を備え、
前記少なくとも1組の選択−収束場コイルは、
内側コイル軸の周りの閉ループとして形成される、少なくとも1つの内側選択−収束場コイルと、
前記少なくとも1つの内側選択−収束場コイルよりも前記内側コイル軸から大きな距離で、異なる角度位置で配置され、それぞれが関連する外側コイル軸の周りに閉ループを形成する少なくとも2つの外側選択−収束場コイルのグループとを備え、
本装置はさらに、
ii)磁気材料の磁化が局所的に変化するよう、駆動磁場によって視野域内における前記2つのサブゾーンの空間内における位置および/またはサイズを変化させるための、駆動場信号生成器ユニットおよび駆動場コイルを備える駆動手段と、
iii)検出信号を取得するための、少なくとも1つの信号受信ユニットおよび少なくとも1つの受信コイルを備える受信手段であって、前記検出信号は視野域内の磁化状態に左右され、前記磁化状態は第1および第2のサブゾーンの空間内における位置の変化によって影響される、受信手段と、
iv)検出信号からの視野域の画像を再構成する再構成手段であって、前記検出信号のスペクトルが複数の周波数成分を含み、前記周波数成分の1つまたは複数が、バックグラウンド信号の測定結果から取得された周波数成分の特定の信号品質ファクタを使用することで選択および/または重み付けされ、前記選択および/または重み付けされた周波数成分のみが、画像の再構成に使用される、再構成手段と
を備える。
【0014】
一実施形態において、コンピュータが本発明による装置を制御するためのプログラム・コード手段を備えるコンピュータ・プログラムが提示され、前記コンピュータ・プログラムがコンピュータで実行されると、本発明に従う上述した方法のステップが実行される。
【0015】
本発明の好適な実施形態が、従属請求項で定義される。請求項記載の方法および請求項記載のコンピュータ・プログラムは、請求項記載のコイル配置、および従属請求項での定義と同様および/または同一の好適な実装形態を有することが理解されよう。
【0016】
本発明は、バックグラウンド信号を決定し、および除去することを目的として、検出信号の選択された周波数成分、または検出信号の各周波数成分を、個別的に処理するための技術思想に基づく。一般に、検出信号は、視野域内の磁化状態に左右されるが、さらに、システムのバックグラウンド信号にも左右される。ゆっくり変化するバックグラウンド信号は、本明細書中において好適な実施形態により開示するように、バックグラウンド信号に関する本発明に特有の測定値によって判断することができ、このようなバックグラウンド信号の測定結果は、例えば、磁気追跡標識物が影響されやすい造影体積内に存在しない時点で得られたスキャン領域内に点在している。バックグラウンド測定値同士の間の時間間隔より迅速なバックグラウンド信号の時間変化は、この方法では除去することができない。しかしながら、バックグラウンド信号の迅速な時間変化から強く影響を受ける周波数は、画像の再構成を行う際に抑制または除去することができる。このことは、画像の再構成処理のために多数の周波数成分を使用すると共に、MPIおよびMRIと同様の他の医療画像診断法において、2つ以上の駆動場が互いに異なる周波数で適用された場合、同様の情報が異なる混合周波数で符号化されることにより可能となるが、多種多様な周波数成分が再構成処理において使用されない場合には、貴重な画像情報が失われてしまう可能性がある。
【0017】
本発明に係る好適な実施形態によれば、前記再構成手段は、信号品質の閾値を使用することにより、周波数成分を選択するのに適しており、それらの周波数成分のみが、前記信号品質の閾値を超える信号品質ファクタを有して選択される。このことは、(SNR、すなわち、シグナル−ノイズ比などの信号品質を下げる)迅速に時間変化するバックグラウンド信号が画像の再構成時に抑制され、使用されないように、周波数成分を取捨選択するための効果的な解決法を提供する。
【0018】
一般に、本発明においては、信号品質ファクタおよび信号品質閾値が使用される。本発明に係る一実施形態においては、SNRファクタおよびSNR閾値が使用され、その他の実施形態においては、その他の信号品質ファクタおよび信号品質の閾値が使用される。本発明に係る他の実施形態においては、例えば、バックグラウンド信号の測定結果に基づいて、スプリアス信号を識別するために、信号品質ファクタおよび信号品質閾値を使用してもよく、加えて、当該スプリアス信号は、適切な信号品質ファクタおよび信号品質の閾値を選択することによって抑制することができる。さらに他の実施形態においては、ノイズの抑制のために、ノイズ・ファクタおよびノイズ閾値を使用してもよい。さらに他の実施形態においては、画像の再構成のために最も重要なのは、信号品質ファクタおよび信号品質閾値であり、最適な空間周波数成分を選択しまたは重み付けするために使用されるが、それ以外の他の空間周波数成分は抑制されるか、または重み付けが軽くなる。
【0019】
本発明に係る他の実施形態によれば、前記再構成手段は、周波数成分の特定の信号品質ファクタに従って、全ての周波数成分または選択された一部の周波数成分を重み付けするのに適している。このようにして、迅速に時間変化するバックグラウンド信号の周波数成分が、迅速に時間変化するバックグラウンド信号とは関連しない周波数成分よりも軽い重み付けをされるため、画像の再構成処理の結果を改善することができる。
【0020】
ゆっくりと、および/または迅速に移動するバックグラウンド信号成分を表すバックグラウンド信号を取得するために、本発明に関して多種多様
な実施形態が存在する。一実施形態においては、前記装置は、
システム関数の測定に点在した
バックグラウンド信号の測定動作を実行し、および前記バックグラウンド信号の測定結果から前記信号品質ファクタを導出するのに適している。これにより、本実施形態は、バックグラウンド信号を取得するための、かなり迅速な方法を提供する。
【0021】
一般に、バックグラウンド信号が測定される時間間隔が、
システム関数データが測定される時間間隔よりも短い一方で、本発明に係る好適な実施形態によれば、前記装置は、
システム関数測定よりも長い時間間隔にわたって、バックグラウンド信号の測定を実行するのに適している。これにより、バックグラウンド信号の測定精度を高め、迅速に時間変化するバックグラウンド信号成分を、確実に除去することが可能とな
ることが保証される。
【0022】
本発明に係る他の実施形態において、前記再構成手段は、前記バックグラウンド信号の測定結果から得られた「周波数固有のバックグラウンド信号」を判別することによって、さらには、前記
システム関数測定結果の対応する周波数成分から得られた「周波数固有のバックグラウンド信号」を取り去ることによって、
システム関数測定結果から、ゆっくりと時間変化するバックグラウンド信号を除去するのに適している。
【0023】
バックグラウンド信号の除去性能をさらに向上させるために、本発明に係る好適な実施形態に従うならば、前記再構成手段は、前記バックグラウンド信号の測定結果を補完し、前記補完されたバックグラウンド信号の測定結果を使用して前記周波数に特有のバックグラウンド信号を判別するのに適している。
【0024】
バックグラウンド信号の除去性能をさらに一層向上させることは、以下のような実施形態によって実現される。すなわち、前記装置が、
システム関数の測定に点在した前記バックグラウンド信号の測定動作を繰り返し実行し、取得されたバックグラウンド信号の測定値を平均するのに適した実施形態によって実現される。ここで、前記再構成手段(152)は、前記平均されたバックグラウンド信号の測定値から得られた前記「周波数固有のバックグラウンド信号」を判別するのに適している。
【0025】
バックグラウンド信号の除去をさらに一層向上させることは、前記装置が、前記バックグラウンド信号の測定動作を、異なる時間スケールで繰り返し実行するのに適した実施形態によって実現される。
【0026】
前記装置は、視野域の画像を再構成するための検出信号を受信する前において、および/または当該検出信号を受信した後において、前記バックグラウンド信号の測定動作を実行するのに適合していることが好ましい。したがって、現在現れているバックグラウンド信号成分を除去することによって、画像の再構成結果を従来よりも高い精度で取得することができる。
【0027】
バックグラウンド信号成分を除去するためのその他の選択肢には、較正測定動作を実施することが含まれ、第1の較正測定動作は、磁気サンプルが視野域を通って移動する間に実行され、第2の較正測定動作は、視野域内に何らの磁気材料も存在しない時点において実行される。
【0028】
本発明において提案する複合型の選択−収束場コイルを用いるタイプのMPI装置は、好ましくは、公知のMPI装置内で別々のコイルとして一般に提供される収束場コイルと選択場コイルとを組み合わせて一組のコイルとすることにより、選択−収束場コイルに合成するという考え方に基づく。したがって、従来であれば、各収束場コイルおよび各選択場コイルに別々に電流が与えられる代わりに、単一の電流が、前記複合型の選択−収束場コイルのそれぞれに与えられる。したがって、単一の電流は、収束場の生成および選択場の生成のそれぞれのための2つの電流を重畳させた重畳電流とみなすことができる。さまざまなコイルへ流す電流を制御することによって、検査領域内の視野域の所望の位置および当該視野域の所望の移動状態を容易に変更することができる。しかしながら、全ての選択−収束場コイルに常に制御電流が与えられ
る必要はないが、幾つかのコイルのみには、視野域の何らかの移動のために電流制御を行うことが必要とされる。
【0029】
さらに、本発明に係る装置では、画像診断対象が置かれる検査領域に対し、コイルを配置する方法および場所をより自由に選ぶことが可能である。特に、この構成を用いて、患者によって、および介在中の外科医などの医者もしくは医療従事者によって、容易にアクセス可能であるオープン型の診断用スキャナ装置を構築することが可能である。
【0030】
そのような装置を用いると、傾斜磁場(すなわち、選択磁場)が、磁場強度の空間分布と共に生成され、視野域は、低い磁場強度(例えば、FFP)を有する第1のサブゾーンを備え、当該低い磁場強度は、第1のサブゾーンに配置された磁気粒子の磁化が飽和しないように適合され、当該視野域はさらに、高い磁場強度を有する第2のサブゾーンを備え、当該高い磁場強度は、第2のサブゾーン内に配置された磁気粒子の磁化が飽和するように適合される。磁気粒子の磁化特性曲線が非線形性であるため、磁化の状態および当該磁化の結果として磁気粒子によって生成された磁場を、例えば、検出コイルによって検出すると、より高い高調波成分を示す結果となる。評価された信号(より高い高調波成分の信号)は、磁気粒子の空間分布についての情報を含んでおり、例えば、医療画像診断に使用したり、磁気粒子の空間分布の視覚化に使用したり、および/または他の用途に使用したりすることができる。
【0031】
本発明によるMPI装置は、全く新しい物理的原理(すなわち、MPIと称される原理)に基づいており、この原理は、例えば、核磁気共鳴(NMR)などのような従来から知られた他の既知の医療画像技術の原理とは異なる。特に、この新しいMPI原理は、NMRとは対照的に、プロトンの磁気共鳴特性に物体が影響されることを利用しない反面、磁化特性曲線の非線形性を利用することによって、磁気材料の磁化状態を直接検出する。特に、MPI技術は、生成された磁気信号のより高い高調波成分を利用し、このような高調波成分は、磁化が非飽和状態から飽和状態に変化した領域における磁化特性曲線の非線形性からもたらされる。
【0032】
本発明に係る好適な実施形態によれば、外側選択−収束場コイルの前記閉ループは、リング・セグメントの形状で、外枠を有する。言い換えると、前記外側選択−収束場コイルのそれぞれの巻線が、前記少なくとも1つの内側選択−収束場コイルの周りの角度領域に沿って配置される閉ループとして巻かれ、当該角度領域は、リングが前記少なくとも1つの内側選択−収束場コイルを囲んでいるリング・セグメントをカバーする。
【0033】
前記少なくとも1組の選択−収束場コイルは、少なくとも4つの外側選択−収束場コイルのグループを備えることが好ましい。一般に、さらに多くの選択−収束場コイルを、好ましくは内側コイル軸から同じ距離であるが、前記内側コイル軸の周りに異なる角度位置で配置して提供してもよい。
【0034】
例えば、本発明に係る一実施形態において、前記少なくとも1組の選択−収束場コイルが、内側コイル軸から等距離だが、互いに対して90°だけ角度変位して配置された、4つの外側選択−収束場コイルのグループを備えるものとして提供される。外側選択−収束場コイルのさらに多くのグループのさらなる実施形態において、さまざまなグループのコイルは、内側コイル軸から異なる距離で配置される。
【0035】
他の実施形態において、選択−収束場コイルの前記少なくとも1組は、第1の内側選択−収束場コイルと、前記内側コイル軸の周りの閉ループとして形成され、前記第1の内側選択−収束場コイルより大きな直径を有する第2の内側選択−収束場コイルとを備える。上述した内側選択−収束場コイルとは異なる距離で内側コイル軸の周りの閉ループとして形成された、さらに多くの内側選択−収束場コイルを提供してもよい。これらの内側選択−収束場コイルは、一般に、選択磁場および収束磁場の生成のためにより有効であり、したがって、一般に、装置が動作中であるあらゆる時点において、制御電流を供給される。
【0036】
前記少なくとも1つの内側選択−収束場コイルおよび/または前記外側選択−収束場コイルは、少なくとも2つの、特に少なくとも4つのコイル・セグメントに分割され、コイルのコイル・セグメントは、関連するコイル軸の方向において、互いに隣接して配置され、隣接するコイル・セグメント同士は、電気的に接続されることが好ましい。このようにして、所望の電流密度を、ある領域で、特に、検査領域付近でより高くなるよう制御することができ、すなわち、前記コイル・セグメントは、関連するコイル軸の方向において、取得した電流密度が、検査領域からの距離が短くなるにつれて大きくなるように配置されることが好ましい。さらに、これにより、生成された磁場の効率が高まる。
【0037】
所望の電流密度を制御するために、複数のコイル・セグメントに関してそれぞれ異なる測定を行うことができる。特に、ある一つのコイルのうち、検査領域の近傍に配置された1つまたは複数のコイル・セグメントは、同じコイルのうち、検査領域から離れて配置され、異なる材料で作成され、より厚い巻線を有する1つまたは複数のコイル・セグメントと比較して、より小型であり、および/または関連するコイル軸の方向に沿ってより厚い厚さを有する。
【0038】
本発明に係る好適な実施形態において、前記選択−収束手段は、さらに、少なくとも1つの柱形状の摺動部を備え、当該少なくとも1つの柱状摺動部は、さまざまな選択−収束場コイルを搬送するために柱状摺動部に設けられる多数のセグメントと、前記柱状摺動部のセグメントと接続する形で柱状摺動部に設けられるヨーク部分とを有する。そのような柱形状の摺動部は、さまざまなコイルを移動させるための機械的な搬送手段としての役割を果たすだけでなく、磁束を伝えることによって、磁場の効率を高める。
【0039】
前記少なくとも1つの柱状摺動部は、前記少なくとも1つの内側選択−収束場コイルを搬送するために柱状摺動部に設けられる少なくとも1つの内側セグメントと、前記内側コイル軸からより大きな距離で配置され、それぞれが、前記少なくとも2つの外側選択−収束場コイルの1つを搬送するために柱状摺動部に設けられる少なくとも2つの外側セグメントとを備えることが好ましい。したがって、柱状摺動部の設計は、選択−収束場コイルの設計に適し、磁場生成の効率を最適にサポートする。
【0040】
前記少なくとも1つの柱状摺動部は、それぞれが外側選択−収束場コイルを搬送するために柱状摺動部に設けられる、少なくとも4つの外側セグメントを備えることが好ましい。したがって、各外側選択−収束場コイルに対し、関連する選択−収束コイルの磁場を誘導するために柱状摺動部において外側セグメントが設けられる。したがって、外側選択−収束場コイルの対応する設計のための実施形態において、前記少なくとも1つの柱状摺動部は、それぞれが外側選択−収束場コイルを搬送するために柱状摺動部に設けられる4つの外側セグメントを備え、前記柱状摺動部の外側セグメントは、内側コイル軸から同じ距離だが、互いに対して90°だけ角度変位して配置される。またさらに、柱状摺動部の外側セグメントの各々は、リング・セグメントの形状の断面を有することが好ましい。
【0041】
前記選択−収束コイルが第2の内側選択−収束コイルを備えるさらに他の実施形態において、前記少なくとも1つの柱状摺動部は、当該柱状摺動部に設けられる前記第1の内側セグメントの周囲に、閉リングの形状で第2の内側セグメントを備え、当該柱状摺動部に設けられる前記第2の内側セグメントは、前記第2の内側選択−収束場コイルを搬送する。
【0042】
本発明に係る好適な実施形態において、当該柱状摺動部に設けられる前記少なくとも1つの内側セグメントと、検査領域と対面する形で当該柱状摺動部に設けられる外側セグメントのヘッド部分とは、少なくとも、高飽和磁気誘導を有する軟質磁性材料、特に、FeCo、FeSi、Fe、FeNi、Dy、Gd、または、Fe
49V
1.9Co
49などのそれらの合金から作られる。好ましくは、完全な柱状摺動部を形成しようとするならば、磁束を最適に誘導することが可能な最適な軟質磁性材料から作られるべきである。しかしながら、コスト面の理由から、柱状摺動部の一部のみが、最適な飽和磁化特性を有するよう、上述した材料から作られる。検査領域から離れて対面するように柱状摺動部に設けられる外側セグメントのテール部分と、柱状摺動部のヨーク部分とは、当該柱状摺動部に設けられた内側セグメントの材料より低い飽和磁気誘導特性を有する軟質磁気材料、特に、FeSi、FeNi、Permalloy、またはFe
73.5Cu
1Nb
3Si
15.5B
7などのそれらの合金から作られる。
【0043】
さらに、一実施形態において、柱状摺動部は、磁気的導電性シートから作られ、柱状摺動部のうち、セグメント部分と、ヨーク部分の隣接ヘッド部分とを形成するシートは、内側コイル軸に並行な方向に向けて配置される。シートは、渦電流を抑制するために使用され、磁束を伝えるために配置される。
【0044】
柱状摺動部のヨーク部分においてテール部分を形成するシートは、内側コイル軸に垂直方向に配置されることが好ましい。これにより、渦電流が抑制される間、磁束の誘導が可能となる。
【0045】
一実施形態において、前記選択−収束手段は、さらに、前記柱状摺動部に機械的に接続するために柱状摺動部に設けられるベアリング部分を備え、柱状摺動部の前記ベアリング部分は、磁気的導電材料から作られる。柱状摺動部の前記ベアリング部分はまた、磁気的導電性シートから作られることが好ましく、当該磁気的導電性シートは、柱状摺動部の当該ベアリング部分が接続している柱状摺動部の一部分を形成するシートと同じ方向において互いに隣接して配置される。柱状摺動部の当該ベアリングは、機械的安定性および良好な磁束をもたらすべきである。
【0046】
技術的に優位な実施形態において、柱状摺動部に設けられた少なくとも1つの内側セグメントおよび前記少なくとも1つの内側選択−収束場コイルは、柱状摺動部の前記外側セグメントおよび前記外側選択−収束場コイルよりも検査領域から離れた距離で配置される。これにより、特に、選択−収束場コイルの互いに対向するように配置された2つの組と、互いに対向するように配置された2つの柱状摺動部とを備える装置の場合、駆動場コイルは、柱状摺動部の外側セグメントに隣接して配置されないようにすることが好ましいため、駆動場コイルを配置するためにより多くの空間が利用できるという利点をもたらす。
【0047】
前記検査領域と対面する形で柱状摺動部に設けられる前記第2の内側セグメントのヘッド部分を通る前記内側コイル軸に垂直な断面は、前記検査領域から離れて対面する形で柱状摺動部に設けられる前記第2の内側セグメントのテール部分を通る並行断面より小さな領域をカバーするようにすることが好ましい。これにより、所与の電流強度に対して取得可能な傾斜磁場強度が高まる。
【0048】
他の実施形態において、柱状摺動部の第2の内側セグメントの前記ヘッド部分の外径は、検査領域からの距離が短くなるにつれ、内側コイル軸の方向に減少する。これにより、検査領域と対面する表面上により高い磁束密度がもたらされるため、検査領域内に、より高い磁場の勾配をもたらすことを可能にする。
【0049】
さらに、一実施形態において、前記検査領域と対面する形で柱状摺動部に設けられる前記外側セグメントのヘッド部分を通る前記内側コイル軸に垂直な断面は、前記検査領域から離れて対面する形で柱状摺動部に設けられる前記外側セグメントのテール部分を通る並行断面より大きな領域をカバーする。このような測定態様はまた、検査領域と対面する表面上に、より高い磁束密度を実現することに寄与する。
【0050】
検査領域と対面する表面上に、より高い磁束密度を実現することに寄与する他の測定態様は、内側コイル軸から柱状摺動部に設けられた外側セグメントを構成する前記ヘッド部分の内径までの間の距離が、検査領域からの距離が減少するにつれて、内側コイル軸の方向に減少することである。
【0051】
1組の選択−収束場コイルのコイル配置は、かなり平坦であり、前記外側コイル軸および内側コイル軸は、互いに平行であることが好ましい。コイルのこのような構成により、省スペース化を実現でき、製造が比較的容易になり、実現可能な磁場の算出および/またはシミュレートをより容易にすることを可能にする。
【0052】
一実施形態において、前記選択−収束手段は、
i1)選択−収束場コイルから成る第1の組、
i2)選択−収束場コイルの少なくとも1つから成る第2の組、
i3)前記磁気選択−収束場の生成を制御するための選択−収束場コイルの前記第1および第2の組に与えられる選択−収束場電流を生成するための選択−収束場生成器、
を備える。好ましくは、検査領域が少なくとも1つの側からアクセス可能である場合には、選択−収束場コイルの前記第1の組よりも、検査領域の反対側に配置された選択−収束場コイルの第2の組の1つの方が、結果として装置内で使用されることとなる。これにより、例えば、搬送用ベッドから、検査領域内に配置された検査寝台に患者を単純に移すことによって、検査領域内での患者の位置決めを容易にすることが可能となる。これにより、検査領域周辺において、同軸上に多くのコイルを配置する必要も無くなり、その結果、検査領域は、トンネル型を有し、そのトンネル内で、患者は、従来のMRIスキャナ内で移動させられる際ように移動させられる。したがって、患者は、従来のMRIスキャナ内よりも、不快さを感じることが少なくなるだろう。
【0053】
他の実施形態において、選択−収束場コイルの3つ以上の組が、検査領域周辺の異なる角度位置に配置されて、提供される。例えば、3組のコイルが配置される場合、コイル同士は互いに対して120°の角度でずらして配置されることが好ましい。
【0054】
第1の組の選択−収束場コイルは、少なくとも1つの第2の組の選択−収束場コイルと同一であることが好ましい。さらに、2組のコイルが使用される場合、一方の組に含まれるさまざまなコイルが、他方の組に含まれる各コイルから見て正確に反対側に配置されることが好ましく、当該他方の組に含まれる各コイルは、実現可能な磁場の算出をより容易にすることをさらにサポートすることができる。
【0055】
一実施形態において、前記選択−収束場生成器ユニットは、選択−収束場コイルの前記少なくとも1つの組の各選択−収束場コイルに対し、個別に選択−収束場電流を生成するよう構成される。これにより、所望の磁場を生成するために最高の柔軟性を実現するが、必要な生成器ユニット/チャネルの個数も最も多くなる。
【0056】
生成器ユニット/チャネルの必要な個数を減らすために、本発明に係る好適な実施形態においては、前記選択−収束場生成器ユニットが、選択−収束場コイルの前記第1および第2の組に含まれる選択−収束場コイルの各ペアに対し、個別に選択−収束場電流を生成するよう構成されることが提案され、ここで、1つのペアは、互いに対向するように配置された2組の選択−収束場コイルを備える。
【0057】
生成器ユニット/チャネルの必要個数を減らすためのその他の提案は、前記選択−収束場生成器ユニットが、選択−収束場コイルの前記少なくとも1つの組に含まれる外側選択−収束場コイルの各ペアに対し、個別の選択−収束場電流を生成するよう構成される実施態様を提供し、ここで、1つのペアは、選択−収束場コイルの同じ組の中において、互いに対向するように配置された2つの外側選択−収束場コイルを備える。
【0058】
簡潔に前述したように、本装置は、前記検査領域の互いに異なる側にそれぞれ配置された少なくとも2つの柱形状の摺動部を備え、各柱状摺動部は、さまざまな選択−収束場コイルを搬送するために柱状摺動部に設けられる多数のセグメントと、柱状摺動部の前記セグメントに接続する柱状摺動部のヨーク部分とを有することが好ましい。
【0059】
選択−収束場コイルの少なくとも1つの組を、駆動場コイルが生成した磁場から遮蔽するために、前記検査領域と対面する選択−収束場コイルの前記少なくとも1つの組の内面が、遮蔽物によってカバーされる。この遮蔽物は、特に、駆動場が軟質磁性材料と相互作用する場合に発生する測定信号の乱れを防ぐ。
【0060】
前述のように、前記駆動場コイルは、選択−収束場コイルの2つの組に含まれる前記第1の内側選択−収束場コイル同士の間の領域に配置される。駆動場コイルは、選択−収束場コイルの2つの組の間に(固定して、または移動可能な態様で)配置されるよう設計してもよい。本発明に係る他の実施形態において、駆動場コイルは、ある程度柔軟に構成可能であり、患者を検査領域内部に配置する前に、患者の体の所望の部分に配置することができる。
【0061】
前記駆動場コイルは、互いに対向し合う外側選択−収束場コイル同士の間における前記方向に沿った距離よりも、内側コイル軸に垂直な方向に沿って、より小さい距離となることが好ましい。さらに、前記駆動場コイルは、前記内部コイル軸に垂直な中心対称軸の周りに配置されたサドル型コイルの2つのペアと、前記中心対称軸の周りに配置されたソレノイド型コイルとを備えることが好ましい。
【0062】
検査領域内の磁気粒子の分布を決定するために必要な検出信号を受信するために、したがって、例えば、患者の心臓領域の検査領域の画像を生成するために、本装置は、さらに、検出信号を取得するための、少なくとも1つの信号受信ユニットおよび少なくとも1つの受信コイルを備える受信手段を備え、検出信号は、視野域内の磁化状態に左右され、当該磁化状態は、第1および第2のサブゾーンの空間内における位置の変化によって影響される。
【0063】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかであり、以下に説明する実施形態を参照して明らかにする。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の詳細を説明する前に、磁気粒子画像法の基礎的事項を、
図1から
図4を参照して詳細に説明する。特に、医療診断用のMPIスキャナの4つの実施形態について説明する。データ取得に関する略式記述についても提供する。以下の説明においては、互いに異なる実施形態同士の間における類似性および相違点を指摘する。一般に、本発明は、MPI装置のこれらの異なる実施形態の全てにおいて使用することができる。
【0066】
図1に示すMPIスキャナの第1の実施形態10は、同軸並列円形コイルの3つのペア12、14、16を有し、これらのコイル・ペアは、
図1に示すように配置される。これらのコイル・ペア12、14、16は、選択場ならびに駆動場および収束場を生成するよう動作する。3つのコイル・ペア12、14、16の軸18、20、22は互いに直交し、単一点で交わり、その単一点はMPIスキャナ10のアイソセンタ(放射線の照射中心位置)24として表される。さらに、これらの軸18、20、22は、アイソセンタ24に接続する3D(3次元)デカルトxyz座標系の軸として働く。垂直軸20はy軸と名付けられ、したがって、x軸およびz軸は水平方向である。コイル・ペア12、14、16もその座標軸の名前にちなんで名付けられる。例えば、yコイル・ペア14はスキャナの上下にあるコイルによって形成される。さらに、正(負)のy座標を有するコイルはy
+コイル(y
−コイル)と呼ばれ、残りのコイルについても同様である。より簡潔な表記法を用いる場合、座標軸およびコイルは、x、y、およびzの代わりに、x
1、x
2、およびx
3と符号付ける。
【0067】
スキャナ10は、時間に依存して変化する所定の電流を、これらのコイル12、14、16のそれぞれに、いずれかの方向に流すよう設定することができる。電流が、コイルの軸に沿って見たときにコイルの周囲を時計回りに流れる場合、電流は正であるとし、逆の場合に負であるとする。静的な選択場を生成するために、一定の正の電流I
Sがz
+コイルを通じて流され、電流−I
Sがz
−コイルを通じて流される。その場合、zコイル・ペア16は反並列な円形コイル・ペアとして作用する。
【0068】
本明細書では、軸の配置および本実施形態における軸に与えられる呼び名は、単なる一例であり、他の実施形態では異なる可能性もあることに留意されたい。例えば、実際の実施形態では、垂直軸は、本実施形態でのy軸よりもむしろz軸と考えられる場合が多い。しかしながら、このことは、一般に、本発明のデバイス機能ならびに動作および効果を変更しない。
【0069】
一般に、傾斜磁場である選択磁場は、
図2において、力線50によって表されている。これは、選択場を生成するzコイル・ペア16の(例えば、水平方向の)z軸22の方向に実質的に一定の勾配を有し、軸22上のアイソセンタ24において値0に達する。この無磁場点(
図2では個別的に示さず)から出発して、選択磁場50の場の強さは、無磁場点からの距離が増すにつれて、3つの空間的方向の全てにおいて増大する。アイソセンタ24の周囲の破線で表される第1のサブゾーンすなわち領域52では、場の強度は、第一のサブゾーン52に存在する粒子の磁化が飽和しない程度に十分に小さい。一方、第2のサブゾーン54(領域52の外部)に存在する粒子の磁化は飽和状態にある。第2のサブゾーン54では(すなわち、スキャナの視野域28の、第1のサブゾーン52の外側にある残りの部分では)、選択場の磁場強度は、磁性粒子を飽和状態に保持可能な程度に十分に強い。
【0070】
視野域28内で(無磁場点を含む)2つのサブゾーン52、54の位置を変えることにより、視野域28内の(全体的な)磁化状態が変化する。視野域28内の磁化状態または磁化によって影響を受ける物理パラメータを決定することにより、視野域28内の磁気粒子の空間分布についての情報を得ることができる。視野域28内の(無磁場点を含む)2つのサブゾーン52、54の相対的な空間位置を変化させるために、さらなる磁場、すなわち、駆動磁場および該当する場合には収束磁場が、選択場50に重畳される。
【0071】
駆動場を生成するために、時間に依存して変化する電流I
D1がxコイル12の両方を通じて流され、時間に依存して変化する電流I
D2がyコイル14の両方を通じて流され、時間に依存して変化する電流I
D3がzコイル16の両方を通じて流される。このように、3つのコイル・ペアのそれぞれは、並列の円形コイル・ペアとして作用する。同様に、収束場を生成するために、時間に依存して変化する電流I
F1がxコイル12の両方を通じて流され、電流I
F2がyコイル14の両方を通じて流され、電流I
F3がzコイル16の両方を通じて流される。
【0072】
zコイル・ペア16が特別であることに留意されたい。これは、駆動場および収束場の共有を生成するのみならず、選択場をも生成する(当然、他の実施形態において、別々のコイルを提供してもよい)。z
±コイルを流れる電流はI
D3+I
F3±I
Sである。残りの2つのコイル・ペア12、14を流れる電流はI
Dk+I
Fk、k=1,2である。幾何学的構成および対称性により、3つのコイル・ペア12、14、16は良好に分離される。これは、望ましいことである。
【0073】
反並列な円形コイル・ペアによって生成される選択場は、z軸の周りに回転対称であり、そのz成分はz軸方向においてほぼ線形であり、アイソセンタ24の周囲の相当な体積領域内において、x軸方向およびy軸方向の寄与から独立している。特に、選択場は、アイソセンタにおいて単一の無磁場点(FFP)を有する。対照的に、並列な円形コイル・ペアによって生成される駆動場および収束場への寄与は、アイソセンタ24の周囲の相当な体積領域内において空間的にほぼ均一であり、それぞれのコイル・ペアの軸に平行である。3つ全ての並列な円形コイル・ペアによって統合して生成される駆動場および収束場は空間的にほぼ均一であり、任意の方向および何らかの最大強度までの任意の強さを与えられることが可能である。駆動場および収束場もまた時間に依存して変化する。収束場と駆動場との間の相違点は、収束場が時間的にゆっくりと変化し、振幅が大きい可能性がある反面、駆動場は急速に変化し、振幅が小さい可能性があるという点である。これらの場を別個に扱うこととしたのには、物理的および生物医学的な理由がある。大きな振幅をもつ急速に変化する場は生成するのが難しく、場合によっては、患者にとって危険である。
【0074】
実際の実施形態において、FFPは、数学的な点と考えることができ、その点では、磁場がゼロであると仮定する。磁場強度は、FFPからの距離が増加するにつれて増え、増加率は、(例えば、デバイスの特定のレイアウトにより)方向が異なる場合には異なる可能性がある。磁場強度が、磁気粒子を飽和状態にするのに必要な磁場強度未満である限り、当該磁気粒子は、デバイスによって測定される信号の信号生成に著しく寄与し、そうでなければ、当該磁気粒子は、飽和して、如何なる信号も生成しない。
【0075】
MPIスキャナの実施形態10は、並列円形コイルの少なくとも1つのさらに追加的なペア、好ましくは3つのさらに追加的なペアを有する。それらはやはりx、y、z軸に沿って配向される。これらのコイル・ペアは、
図1には示されていないが、受信コイルとして働く。駆動場および収束場のためのコイル・ペア12、14、16と同様に、これらの受信コイル・ペアの1つを通じて流れる一定の電流によって生成される磁場は、視野域内で空間的にほぼ均一であり、それぞれのコイル・ペアの軸に平行である。受信コイルは良好に分離されていると仮定される。受信コイルで誘導され時間に依存して変化する電圧は、このコイルに取り付けられた受信器によって増幅され、サンプリングされる。より正確には、この信号のダイナミック・レンジが膨大となってしまうことに対処するために、受信器は、受信信号と基準信号との間の差分量をサンプリングする。受信器の伝達関数は、0ヘルツ(「DC」)から、期待される信号レベルがノイズ・レベルを下回る周波数まで、非0値となる。あるいは、MPIスキャナは、専用の受信コイルを有さない。代わりに、駆動場送信コイルを、受信コイルとして使用する。
【0076】
図1に示されるMPIスキャナの実施形態10は、z軸22に沿った、すなわち選択場の軸に沿った円筒形のボア部26を有する。すべてのコイルはこのボア部26の外側に配置される。データ取得のために、撮像すべき患者(または対象)は、ボア部26内に配置され、その際、患者の体内における着目する体積領域(すなわち、撮像される必要のある患者(または対象)の体積領域)は、スキャナの視野域28によって囲まれるようにボア部26内に配置され、スキャナの視野域28は、スキャナがその内部を撮像することが可能なスキャナの体積領域に相当する。患者(または対象)は、例えば、検査寝台上に配置される。視野域28は幾何学的に単純であり、ボア部26の内部においてアイソ・セントリックな体積領域であり、立方体、球体、円柱、または任意の形状などである。立方体の視野域28が
図1に示されている。
【0077】
第1のサブゾーン52の大きさは、選択磁場の勾配の強さに依存し、さらに、飽和状態に達するために必要とされる磁場の強さに依存し、磁気粒子に依存する。磁場の強度が80A/mに達し、(所与の空間方向に沿った)選択磁場の場の強さの勾配値が50×10
3A/m
2に達する場合において、典型的な磁気粒子を十分に飽和させるために、粒子の磁化が飽和しない第1のサブゾーン52は(所与の空間方向に沿って)約1mmの寸法を有する。
【0078】
患者の体内における着目する体積領域は、磁気ナノ粒子を含むと仮定される。例えば、腫瘍の画像診断に先立って、磁気粒子が、例えば、磁気粒子を含む液体によって、当該着目する体積領域内に与えら
れる。これは、患者(対象)の体に注入されるか、または、例えば、経口的に患者に投与される。
【0079】
一般に、磁気粒子を視野域内に供給するために、さまざまな方法が存在する。特に、磁気粒子が体に導入される患者の場合、磁気粒子は、外科的方法ならびに非外科的方法で投与することができ、専門家(医師など)を必要とする方法と、例えば、素人、当業者、または患者自身が実行することができる、専門家を必要としない方法との両方が存在する。外科的方法では、(そのような注入が、外科的方法として少しでも考慮すべきであるなら)例えば、造影剤を血管に注入するなどの侵襲的ステップを含む、潜在的に危険性のない、および/または安全なルーチン介入が存在し、このような介入は、それを実行するための相当な専門的医学知識を必要とせず、深刻な健康リスクと関係のない介入である。さらに、飲み込みまたは吸入などの非外科的方法を適用することができる。
【0080】
一般に、磁気粒子は、データ取得の実際のステップが実行される前に、予め送達されるか、予め投与される。実施形態において、しかしながら、さらなる磁気粒子が視野域に送達/投与される可能性がある。
【0081】
磁気粒子の実施形態は、例えば、ガラス製の球状の基質などに、5nmなどの厚さを有し、例えば、鉄ニッケル合金(例えば、Permalloy)などからなる軟磁性層を設けたものである。この層は、例えば、化学的および/または物理的に攻撃的な環境、例えば酸に対して粒子を保護する被覆層によってカバーしてもよい。そのような粒子の磁化を飽和させるために必要とされる選択磁場50の磁場強度は、さまざまなパラメータ、例えば、粒子の直径、磁気層のために使用される磁気材料およびその他のパラメータに依存する。
【0082】
例えば、そのような磁気粒子の直径が10μmの場合、約800A/mの磁場強度(ほぼ1mTの磁束密度に対応)が必要とされる。一方、直径が100μmの場合、80A/mの磁場強度で十分である。飽和させるのに必要な磁化の程度がより低い材料の被覆が選ばれる場合、あるいは層の厚さを薄くする場合には、さらにより小さな値が得られる。
【0083】
実際には、市販されている磁化粒子が、商標Resovist(または、類似の磁気粒子)としてよく使用されており、磁気材料のコアを有するか、もしくは塊状の球として形成され、およびナノメートルの範囲の寸法、例えば、40nmから60nmを有する。
【0084】
一般的に使用できる磁気粒子および粒子組成のさらなる詳細については、欧州特許出願公開第1304542号明細書、国際公開第2004/091386号明細書、同第2004/091390号明細書、同第2004/091394号明細書、同第2004/091395号明細書、同第2004/091396号明細書、同第2004/091397号明細書、同第2004/091398号明細書、同第2004/091408号明細書の対応する箇所が、本明細書に参照により組み込まれる。これらの文書では、MPI法一般についてのさらなる詳細も見ることができる。
【0085】
データ取得の間、x、y、zコイル・ペア12、14、16は位置および時間に依存して変化する磁場、印加される場を生成する。これは、適切な電流を場生成コイルに流すことによって達成される。本質的には、駆動場および収束場は、FFPが予め選択されたFFP軌跡に沿って動くことによってスキャン体積領域、視野域のスーパーセットをなぞるように、選択場を押しやる。印加される場は、患者の体内で磁気ナノ粒子を配向させる。印加される場が変わるにつれて、結果として得られる磁化も変化する。ただし、印加される場に対して非線形な応答特性を示す。変化する「印加された場」と変化する磁化の和が、x
k軸に沿った受信コイル・ペアの端子間において時間に依存して変化する電圧V
kを誘導する。関連する受信器が、この電圧を信号S
kに変換し、さらに処理する。
【0086】
図1に示した第1の実施形態10のように、
図3に示したMPIスキャナの第2の実施形態30も、3つの円形の、互いに直交なコイル・ペア32、34、36を有するが、これらのコイル・ペア32、34、36は、選択場および収束場のみを生成する。この場合も、選択場を生成するzコイル36は強磁性材料37で充填される。この実施形態30のz軸42は、垂直方向に配向され、一方、x軸およびy軸38、40は水平方向に配向される。スキャナのボア部46はx軸38に対して平行であり、したがって、選択場の軸42に対して垂直である。駆動場はx軸38に沿ったソレノイド(図示せず)によって、および残りの2つの軸40、42に沿ったサドル型コイル(図示せず)のペアによって生成される。これらのコイルは、ボア部を形成する管の周囲に巻かれる。駆動場コイルは、受信コイルとしても働く。
【0087】
そのような実施形態の典型的なパラメータを若干挙げておくと、選択場のz軸方向の勾配GがG/μ
0=2.5T/mの強さをもつ。ここで、μ
0は真空の透磁率である。駆動場の時間的周波数スペクトル(temporal frequency spectrum)は、25kHz辺りの狭い帯域(約150kHzまで)に集中している。受信信号の有用な周波数スペクトルは50kHzから1MHzまで(最終的には約15MHzまで)の間にある。ボアは、直径120mmである。ボア部46に適合する最大の立方体28は、120mm/√2≒84mmの辺長を有する。
【0088】
場生成コイルの構造は、一般に、例えば、磁気共鳴映像法の分野において既に知られていることから、当該技術分野においても既知であるため、このことについては、本明細書では、さらに詳細に説明する必要はない。
【0089】
選択場を生成する場合の代替的実施形態において、永久磁石(図示せず)が使用できる。そのような(向かい合う)永久磁石(図示せず)の2つの極の間の空間において、
図2に示したもの、すなわち、相対する極が同じ極性の場合と同様の磁場が形成される。他の代替実施形態では、選択場は、少なくとも1つの永久磁石と少なくとも1つのコイルとの混合によって生成できる。
【0090】
図4は、MPI装置200、300の一般的な外側レイアウトの2つの実施形態を示す。
図4Aは、本発明に係るMPI装置200の実施形態を示し、装置200は、基本的に同一な2つのコイル・ユニットであり、それらの間に形成された検査領域230を挟んで対向するようにして配置された、2つの選択−収束場コイル・ユニット210、220を備える。さらに、駆動場コイル・ユニット240は、患者の体内における着目する領域(図示せず)の周りに配置された選択−収束場コイル・ユニット210、220の間に配置される。選択−収束場コイル・ユニット210、220は、幾つかの選択−収束場コイルを備え、上記した選択磁場および収束磁場を表す「合成された磁場」を生成する。特に、各選択−収束場コイル・ユニット210、220は、好ましくは、選択−収束場コイルから成る同一の組を備える。前記選択−収束場コイルの詳細は、以下において説明する。
【0091】
駆動場コイル
・ユニット240は、多くの駆動場コイルを備え、駆動磁場を生成する。これらの駆動場コイルは、駆動場コイルの幾つかのペアを備え、特に、駆動場コイルの1つのペアは、空間内の3方向それぞれに磁場を生成してもよい。一実施形態において、駆動場コイル・ユニット240は、空間内の2つの異なる方向に向いたサドル型コイルの2つのペアと、患者の長手方向に磁場を生成するための1つのソレノイド型コイルとを備える。
【0092】
一般に、選択−収束場コイル・ユニット210、220は、保持ユニット(図示せず)またはその場所の壁に取り付けられる。選択−収束場コイル・ユニット210、220が、各コイルを搬送するための柱形状の摺動部を備える場合、保持ユニットは、選択−収束場コイル・ユニット210、220を機械的に保持するだけでなく、2つの選択−収束場コイル・ユニット210、220それぞれを搬送する2つの柱状摺動部同士を電磁的に接続するために磁束が透過する経路をもたらすことが好ましい。
【0093】
図4aに示すように、2つの選択−収束場コイル・ユニット210、220は、それぞれ、遮蔽層211、221を備え、選択−収束場コイルを、駆動場コイル・ユニット240の駆動場コイルが生成した磁界から遮蔽する。
【0094】
図4Bに示すMPI装置201の実施形態では、ただ1つの選択−収束場コイル・ユニット220、ならびに駆動場コイル・ユニット240が提供される。一般に、単一の選択−収束場コイル・ユニットは、必要な合成された磁場の選択−収束場を生成するのに十分である。したがって、前記単一の選択−収束場コイル・ユニット220は、患者が検査のために配置される検査寝台(図示せず)に統合されてもよい。好ましくは、駆動場コイル・ユニット240の駆動場コイルは、例えば柔軟な配置が可能なコイル要素として、事前に患者の体の周りに配置してもよい。他の実装態様では、駆動場コイル・ユニット240は、例えば、軸方向に、
図4bで示す分割線243、244によって示すような2つのサブユニット241、242に分割可能にして、開いた構造とすることができ、その結果、患者を、その間に配置することができ、その場合、駆動場コイルのサブユニット241、242は、相互に結合することができる。
【0095】
MPI装置のさらなる実施形態では、さらに多くの選択−収束場コイル・ユニットを提供してもよく、検査領域230の周囲に均一に分散して配置されることが好ましい。しかしながら、より多くの選択−収束場コイル・ユニットを使用すると、その中に患者を配置するためのアクセス可能性や、医療従事者または医師による検査中に患者自身にアクセスするための検査領域のアクセス可能性が、より限定されてしまう。
【0096】
図5は、本発明によるMPI装置100の一般的なブロック図である。上記した磁気粒子画像法の一般的な原理は、そうではないと明記しない限り、有効であり、本実施形態にも適用可能である。
【0097】
図5に示す装置100の実施形態は、所望の磁場を生成するために、さまざまなコイルを備える。まず、コイルと、MPIにおけるその機能について説明する。
【0098】
合成された選択−収束磁場を生成するために、選択−収束手段110を提供する。選択−収束磁場は、磁気粒子の磁化が飽和状態に達しない低い磁場強度を有する第1のサブゾーン(
図2における52)および磁気粒子の磁化が飽和状態に達
する強度に相当するより高い磁場強度を有する第2のサブゾーン(
図4における54)が視野域28内に形成されるよう磁場強度の空間内でのパターンを有し、検査領域230内に含まれる小さな部分であり、従来においては、選択磁場を使用することによって達成されていた。さらに、従来技術において収束磁場を使用することによって行ってきたのと同様に、選択−収束磁場を使用することによって、検査領域230内の視野域28の空間内における位置を変化させることが可能である。
【0099】
選択−収束手段110は、少なくとも1組の選択−収束場コイル114および選択−収束場生成器ユニット112を備え、(
図4Aおよび
図4Bに示した選択−収束場コイル・ユニット210および220の1つを表す)前記少なくとも1組の選択−収束場コイル114に与えられる選択−収束場電流を生成し、前記選択−収束磁場の生成を制御する。別々の生成器サブユニットが、選択−収束場コイル114から成る少なくとも1組に含まれる各コイル要素(または、コイル要素の各ペア)に設けられるのが好ましい。前記選択−収束場生成器ユニット112は、界磁電流を各コイル要素に与え、選択−収束磁場に対して各コイルが寄与する勾配強度および場の強度を個別に設定するために、(一般に、増幅器を備える)制御可能な電流源およびフィルタ
・ユニットを備える。また、フィルタ・ユニット114は省略することができることに留意しなければならない。
【0100】
駆動磁場を生成するために、装置100はさらに、磁気材料の磁化状態が局所的に変化するよう、駆動磁場によって視野域内の2つのサブゾーンの空間内における位置および/またはサイズを変化させるために、駆動手段120を備え、駆動手段120は、駆動場信号生成器ユニット122および駆動場コイル124の組を備える(
図4Aおよび
図4Bで示した駆動コイル・ユニット240を表す)。前述のように、前記駆動場コイル124は、反対側に配置されたサドル型コイルの2つのペア125および126と、1つのソレノイド型コイル127とを備えることが好ましい。他の実装態様においては、例えば、コイル要素の3つのペアを使用することもまた可能である。
【0101】
駆動場信号生成器ユニット122は、駆動場コイル124から成る前記組に含まれる各コイル要素(または、コイル要素の少なくとも各組)のために、それぞれ別々の駆動場信号生成サブユニットを備えることが好ましい。前記駆動場信号生成器ユニット122は、時間に依存して変化する駆動場電流を各駆動場コイルに与えるため、(好ましくは、電流増幅器を備える)駆動場電流源と、(本発明では省略してもよい)フィルタ・ユニットとを備えることが好ましい。
【0102】
選択−収束場信号生成器ユニット112および駆動場信号生成器ユニット122は、制御ユニット150によって制御されることが好ましく、制御ユニット150は、好ましくは、選択−収束場信号生成器ユニット112を制御して、選択場のすべての空間点の場の強度の合計および勾配強度の合計を、所定のレベルに設定する。この目的のために、制御ユニット150はまた、MPI装置の所望の用途に従い、利用者による制御命令を備えることもできるが、本発明により、省略されることが好ましい。
【0103】
MPI装置100を使用して、検査領域内の磁気粒子の空間分布(または、検査領域内の着目する領域)を決定する場合、特に、前記着目する領域の画像を取得するために、信号検出受信手段148(特に、受信コイル)、および前記受信手段148によって検出された信号を受信する信号受信ユニット140が設けられる。好ましくは、3つの受信コイル148および(受信コイルごとに1つずつ設けられる)3つの受信ユニット140が実際には設けられるが、3個より多い受信コイルおよび受信ユニットを使用することもでき、その場合は、取得される検出信号が3次元ではなくK次元であり、Kは、受信コイルの個数である。
【0104】
前記信号受信ユニット140は、受信した検出信号をフィルタリングするためのフィルタ・ユニット142を備える。このフィルタリングの目的は、信号を妨害する2つの部分の領域(52、54)の位置が変わることによって、一方の部分において他方の部分から影響を受ける検査領域内の磁化に起因する測定値を分離することである。この目的を達成するために、フィルタ・ユニット142は、例えば、受信コイル148を動作させる時間周波数より小さな時間周波数、またはこれらの時間周波数の2倍より小さな時間周波数を有する信号が、フィルタ
・ユニット142を通過しないように設計してもよい。次いで、信号は、増幅器ユニット144を介して、アナログ/デジタル変換器146(ADC)に送信される。
【0105】
アナログ/デジタル変換器146によって生成されたデジタル化信号は、画像処理ユニット(再構成手段とも呼ばれる)152に送られ、これらの信号と、検査領域内の第1の磁場の第1の部分領域52が各信号の受信中に想定され、画像処理ユニット152が制御ユニット150から取得する各位置とから磁気粒子の空間分布を再構成する。磁気粒子の再構成された空間分布は、最終的に、制御手段150を介してコンピュータ154に送信され、モニタ156に表示される。したがって、検査領域の視野域における磁気粒子の分布を示す画像を表示することができる。
【0106】
MPI装置100の他の用途では、例えば、磁気粒子に影響を及ぼすために(例えば、温熱療法のために)、または(例えば、カテーテルを動かすためにカテーテルに取り付けられた、またはある位置に薬剤を移動するために薬剤に付着させた)磁気粒子を動かすために、受信手段はまた、省略してもよく、単に使用しなくてもよい。
【0107】
さらに、入力ユニット158(例えば、キーボード)を、任意選択的に設けてもよい。したがって、利用者は、解像度が最高となる所望の方向を設定することができ、それに対して、モニタ156上に表示するために作用領域の各画像を受け取る。最高の解像度を必要とする重要な方向が利用者によって最初に設定された方向から逸脱している場合、利用者はそれでも、撮像解像度が改善されたさらなる画像を生成するために、手動で方向を変えることができる。このような解像度を改善するための処理は、制御ユニット150およびコンピュータ154によって自動的に機能させることもできる。制御ユニット150は、この実施形態においては、傾斜磁場を、自動的に推定されるか、または利用者によって開始値として設定される第一の方向に設定する。次いで、傾斜磁場の方向は、それにより受け取られ、コンピュータ154によって比較される画像の解像度が最大になるか、それ以上改善されなくなるまで、段階的に変えられる。したがって、最も重要な方向は、可能な最高の解像度を受けるために自動的に適応されることが分かるであろう。
【0108】
一般に、選択場コイルおよび収束場コイルは、本発明により、別々の要素として実現されるが、本発明の好適な実施形態により、前記選択−収束場コイル114は、内側コイル軸115aの周囲の閉ループとして形成された少なくとも1つの内側選択−収束場コイル115と、少なくとも2つの外側選択−収束場コイル116、117のグループとを備え、当該少なくとも2つの外側選択−収束場コイル116、117は、
図6Aおよび
図6Bにおいて垂直断面図として示されるとおり、前記少なくとも1つの内側選択−収束場コイル115よりも前記内側コイル軸115aから大きく離れ、異なる角度位置で配置され、関連する外側コイル軸116a、117aの周囲の閉ループとしてそれぞれが形成されている。2つの追加の外側選択−収束場コイル118、119は、それぞれが、関連する外側コイル軸118a、119aの周囲の閉ループとして形成され、
図6Bでの点線によって示されるように設けられることが好ましい。
【0109】
本発明によれば、一般的には、
図6に示すように、選択−収束場手段のみが、さまざまなコイルを備えることが可能である。しかしながら、本発明によれば、選択−収束場手段は、柱状摺動部の形態をとる1つまたは複数の磁気材料部材、特に、軟質磁性材料と、電磁気コイルとの組み合わせであることが好ましい。少なくとも1つの柱状摺動部は、磁束を伝えるために、したがって、必要な磁場の生成を増やすために働く。
【0110】
柱状摺動部の構成を例示する一実施形態を、
図7および
図8に示す。ここで
図7Aおよび
図7Bは、柱状摺動部の構成300についての2つの垂直断面図を示し、
図8は、柱状摺動部の構成300についての透視図を示す。柱状摺動部の構成300を例示するこの実施形態において、2つの柱状摺動部310、320は、柱状摺動部に設けられたベアリング部分330を介して接続される形で設置され、ベアリング部分330は、2つの柱状摺動部310、320を機械的に搬送し、磁気的
に結合するためのものである。この実施形態では、これらの図に示した柱状摺動部310、320は、本明細書に示した幾何学的特性を有するが、柱状摺動部に設けられたベアリング部分330の特定の形状は、単なる例としてここに示しただけであり、実際の用途のための特定の形状は、必要とされる安定性などの構造パラメータによって決定される。
【0111】
図7および
図8に示すように、柱状摺動部310、320の各々は、柱状摺動部に設けられる少なくとも1つの(この実施形態では2つの)内側セグメント311、312および321、322をそれぞれ備え、さらに、柱状摺動部に設けられる少なくとも2つの(本実施形態では4つの)外側セグメント313から316および323から326をそれぞれ備える。さらに、柱状摺動部310、320の各々は、同じ柱状摺動部内に設けられたさまざまなセグメント部分と接続するヨーク部分317、327をそれぞれ備える。
【0112】
共通の柱状摺動部に設けられた全てのセグメント部分は、共通の内側コイル軸115aの周囲に同軸状に配置され、柱状摺動部に設けられた第2の内側セグメント312、322は、各内側セグメント311、321の周囲にリングとして配置される。柱状摺動部に設けられた外側セグメント313から316および323から326は、それぞれ、内側コイル軸115aの周囲に同じ距離で配置されたリング・セグメントの形式でそれぞれ設計されるが、
図7Bに示すように、異なる角度位置を有する。
【0113】
柱状摺動部のそのような配置は、選択−収束場コイルのさまざまなコイルが、以下で図示し、かつ以下で説明するように配置され、選択−収束場コイル(第1のサブゾーン52)の所望の移動を達成するために有利となる。柱状摺動部に設けられた外側セグメントのセグメント化態様は、ここでは2個から4個のセグメント(一般に、少なくとも2セグメントであるが、それより多くすることも可能である)を設ける態様であり、特に、x軸方向およびy軸方向に沿ってFFPを移動させるのに有利である。
【0114】
実際の実装態様では、柱状摺動部に設けられた内側セグメント311、321の間の(z軸方向の)距離d
iは、少なくとも、患者ならびに駆動場コイルをその間に配置することができる程度の大きさである。このことは、距離d
iを、少なくとも40cm、好ましくは、少なくとも45cmとすべきであることを意味する。柱状摺動部に設けられた外側セグメントb同士の間の距離d
oは、一般に、その間に駆動場コイルが配置されないため、わずかに小さくすることができる。したがって、距離d
oを、少なくとも25cm、好ましくは、少なくとも40cmとすべきである。
【0115】
柱状摺動部は、一般に、軟質磁性材料で作られる。柱状摺動部に設けられた2つの内側セグメント311、312ならびに321、322のそれぞれ、およびヘッド部分313hから314hならびに323hから324h(
図7A参照;柱状摺動部に設けられたその他の外側セグメントのヘッド位置は、この図では、明示しない)は、軟質磁性材料から作られ、飽和時において高い磁気誘導を有し、特に、FeCo、Fe、Dy、Gd、または(商標Vacoflux48として知られる材料などの)Fe
49V
1.9Co
49などの、それらの合金から作られることが好ましい。あるいは、FeNiを使用してもよいが、この材料は、飽和時における磁気誘導が低い。検査領域から離れて対面する形で柱状摺動部に設けられた外側セグメントのテール部分313t、314tおよび323t、324t(柱状摺動部に設けられた外側セグメント315または316、325、326のテール部分は明示しない)および柱状摺動部に設けられたヨーク部分は、同じ材料から作られることが好ましい。しかしながら、コスト面の理由から、それらは、柱状摺動部に設けられた内側セグメントのヘッド部分を形成する材料よりも飽和時において低い磁気誘導を有する軟質磁気材料、特に、FeSi、FeNi、Permalloy、または(Nanopermとして一般に知られる)Fe
73.5Cu
1Nb
3Si
15.5B
7などのそれらの合金から作ることが可能である。
【0116】
図9は、さまざまな選択−収束場コイルが、
図7および
図8に示すように、柱状摺動部の構成300に取り付けられた選択−収束場コイル構成400の実施形態に関して、2つの垂直断面図を示す。
【0117】
図10は、
図9のさらなる詳細を説明するために、本実施形態において使用する単一の選択−収束場コイル・サブユニット410の拡大図を示す。柱状摺動部に設けられた第1の内側セグメント311は、柱状摺動部に設けられた前記第1の内側セグメント311の周囲にリングとして形成される第1の内側選択−収束場コイル115を搬送する。第2の内側選択−収束場コイル113は、柱状摺動部に設けられた第2の内側セグメント312によって搬送される他のリング・コイルとして形成され、それ自体は、前記第1の内側選択−収束場コイル115の周囲のリングとして形成される。4つの外側選択−収束場コイル116、117(
図9および
図10には、2つの外側選択−収束場コイルのみが示されおり、他の2つの外側選択−収束場コイルは、
図9および
図10には示されない)が、柱状摺動部に設けられた外側セグメント313、314、315、および316によってそれぞれ搬送される。前記外側選択−収束場コイル116、117のそれぞれは、柱状摺動部に設けられた関連する外側セグメント313、314、315、および316の周囲にそれぞれ巻き付けられ、柱状摺動部に設けられた各外側セグメントの周囲に電流が流れる。柱状摺動部に設けられた各外側セグメント313、314、315、および316は、内側コイル軸115aの周囲の異なる角度位置で配置されたリング・セグメントの形式を有する。
【0118】
したがって、
図9Aに示した選択−収束場コイル構成400は、全部で12個の選択−収束場コイルのうち、上側に位置する選択−収束場コイル・サブユニット410内に6つのコイル(コイル113、115から119)を、下側に位置する選択−収束場コイル・サブユニット420内に6つのコイル(コイル133、135、136;残りの2つのコイルは、
図9Aでは視認できない)を備える。しかしながら、この個数は、単なる例示であることを理解すべきである。他の個数もまた可能である。一般に、少なくとも6つ、好ましくは、少なくとも8つの選択−収束場コイル・ユニットが存在することが望ましい。
【0119】
各選択−収束場コイルに対して、単一の選択−収束場生成器サブユニットが設けられ、選択−収束場コイルに個別に電流を与えることによって、各選択−収束場コイルを個々に制御することが可能になることが好ましい。しかしながら、選択−収束場コイル同士を結合し、共通の電流を与え、選択−収束場生成器サブユニットの個数を減らすことを可能にすることもできる。例えば、一実施形態において、2つの外側選択−収束場コイル116および117に、共通の電流が与えられる。同様に、その他の2つの外側選択−収束場コイルが、相互に結合される。このことは、そのような選択−収束場コイル構成に対して、全部で8つの選択−収束場生成器サブユニットが必要になることを意味する。
【0120】
他の実施形態において、2つの異なる選択−収束場コイル・サブユニット410、420に含まれる互いに対向するように配置された2つの選択−収束場コイルが、相互に結合され、共通の電流が流される。例えば、(
図9における)右側の2つの外側選択−収束場コイルを、相互に結合し、同一の電流を流してもよい。他の外側選択−収束場コイルに対しても、同じことが言える。
【0121】
一実施形態によれば、1つまたは複数の選択−収束場コイルは、少なくとも2つの(特に少なくとも4つの)コイル・セグメントに分割され、コイルを構成するコイル・セグメントは、関連するコイル軸の方向において(すなわち、全てのコイル軸が、図に示した実施形態において互いに並行である場合、内側コイル軸115aの方向において)、互いに隣接して配置され、隣接するコイル・セグメント同士は、電気的に接続されることが好ましい。
図9および
図10に示すように、すべての選択−収束場コイルは、
図9Aおよび
図10における複数のコイル・サンプル分割線によって示すように、いくつかのコイル・セグメントに分割されることが好ましい。
【0122】
例えば、第1の内側選択−収束場コイル115は、
図10において、符号A、B、C、およびDで示される4つのコイル・セグメントに分割される。同様に、第2の内側選択−収束場コイル113およびさまざまな外側選択−収束場コイル116、117は、符号A、B、およびCなどによって示した複数のコイル・セグメントに分割される。
【0123】
このように選択−収束場コイルを、幾つかのセグメントに分割することにより、各選択−収束場コイルに沿った異なる電流密度の実現を可能にする。以下の表は、例示的な実施形態として、各コイル・セグメントに対する最大電流密度を要約したものである。電流密度に関するこれらの例示的な値は、選択−収束場コイルの位置が異なると、それぞれの異なるコイルで大電流を必要とすることを想定するシミュレーション実行結果から取得されたものである。全てにわたって、総電力は、−100kWであった。第1の内側選択−収束場コイルの最大電力は、49kWであり、38kW以下が、第2の内側選択−収束場コイル内の電流で使用された。外側選択−収束場コイルのそれぞれでは、20kW以下が損失した。
【0125】
コイル・セグメントは、コイル軸の方向が、検査領域からの距離が短くなるにしたがって取得した電流密度が増加するような向きに配置されることが好ましい。上記説明において図と共に参照したさまざまな実施形態は、これを取得するためである。本発明に係る好適な実施形態は、検査領域の近傍に配置されたコイルを構成する1つまたは複数のコイル・セグメントが、検査領域から離れて配置され、互いに異なる材料で作成され、より厚い巻線を有する同じコイルを構成する1つまたは複数のコイル・セグメントと比較して、より小型であり、および/または関連するコイル軸の方向により厚い厚さを有することを含む。例えば、異なるコイル・セグメント同士の間の電流密度の比を使用して、各コイルについて、ワイヤ断面をどれだけ変えるべきかを決定する。実際には、しかしながら、理論値からの寸法誤差は、一般に、ワイヤの製造者が、限られた数の断面値のみを提供するため、必ず必要となる。
【0126】
さらに、この好適な実施形態において、検査領域と対面する形で柱状摺動部に設けられた第2の内側セグメント312のヘッド部分312hを通る内側コイル軸115aに対して垂直な断面、すなわち、
図10に示す線Xに沿った断面は、前記検査領域から離れて対面する形で柱状摺動部に設けられた前記第2の内側セグメント312のテール部分312tを通る並行断面(すなわち、
図10に示す線Yに沿った並行断面)より小さな領域をカバーすることを、
図9および
図10から見てとることができる。
【0127】
柱状摺動部に設けられた第2の内側セグメント312の前記ヘッド部分312hの外径は、検査領域230からの距離が短くなるにつれ、内側コイル軸315aの方向に減少することが好ましい。言い換えると、ヘッド部分312hの外縁部は、内側コイル軸315aの方向に傾斜する。
【0128】
またさらに、前記検査領域と対面する形で柱状摺動部に設けられた外側セグメント313、314のヘッド部分313h、314hを通る内側コイル軸315aに垂直な、すなわち、線Xに沿った断面は、検査領域から離れて対面する形で柱状摺動部に設けられた前記外側セグメント313、314(
図10には明示しない、その他の外側セグメントについても同じことが言える)のテール部分313t、314tを通る並行断面(すなわち、線Yに沿った断面)よりも大きい領域をカバーする。
【0129】
またさらに、内側コイル軸315aから、柱状摺動部に設けられた外側セグメント313、314(その他の、図示しない外側磁極片セグメントに対しても、同じことが言える)を構成する前記ヘッド部分313h、314hの内径までの間の距離は、検査領域330からの距離が短くなるに従って、内側コイル軸115aに沿った方向において短くなる。言い換えると、ヘッド部分313h、314hの内縁部は、内側コイル軸115aの方向に傾斜する。
【0130】
図に示すように、第2の内側選択−収束場コイル113および外側選択−収束場コイル116、117(その他の図示しない外側選択−収束場コイルにも同じことが言える)は、柱状摺動部の対応するセグメントと同じ外形で組み付けられた柱状摺動部の各セグメントの周囲を移動するが、必ずしも必要ではない。
【0131】
これらの測定値は、特に、磁場の高い勾配を取得するため、検査領域と対面する形で柱状摺動部に設けられた内側セグメント311、312および内側選択−収束場コイル113、115の表面上において最も高い磁束密度をもたらす。この効果をさらに高めるために、柱状摺動部に設けられた外側セグメントの外縁部を、内側コイル軸115aの方向に傾斜することが可能であることにも留意すべきである。
【0132】
検査領域を通る視野域28の移動のために、従来技術においては収束磁場を使用することで実現していたが、一般的には、この視野域28の移動のために全ての選択−収束場コイルに電流を流すことは必要ない。特に、上方向または下方向に、すなわち、内側コイル軸115aの内側方向に沿って視野域28を移動するために、主に、2つの内側選択−収束場コイル115、113を使用する。例えば、視野域28の移動の方向が、上側に位置する選択−収束場コイル・サブユニット410から見て、下側に位置する選択−収束場コイル・サブユニット420の方向を向いていることが望まれる場合、下側に位置する選択−収束場コイル・サブユニット420の第1の内側選択−収束場コイルにもたらされる電流、および上側に位置する選択−収束場コイル・サブユニット410の第2の内側選択−収束場コイルに与えられる電流が増加する。あるいは、またはさらに、上側に位置する選択−収束場コイル
・サブユニット410の第1の内側選択−収束場コイルにもたらされる電流および下側に位置する選択−収束場コイル・サブユニット420の第2の内側選択−収束場コイルにもたらされる電流は、減少する。外側選択−収束場コイルは、必ずしも、そのような移動のために使用する必要はない。
【0133】
視野域28の移動の方向が、内側コイル軸115aに対して垂直方向であることが望まれる場合、外側選択−収束場コイルには、さらなる電流がもたらされる。特に、前記外側選択−収束場コイルによって、所望の移動方向に沿った、内側コイル軸115aに垂直な方向において、さらなる磁場が生成される。例えば、
図9Aにおける、左から右への移動が望まれる場合、磁場は、左側にN極を、右側にS極を(またはその逆)有することとなるようにして、さらに生成される。次いで、外側選択−収束場コイルに与えられる電流の振幅によって、視野域28が、この方向にどれだけ移動すべきかを制御することができる。
【0134】
上記説明は、視野域の移動を一般にどのように実現することができるかについての、簡潔で一般的な考えを提供するだけである。実際には、当然、電流は正確に制御される必要があるが、全体的な構成の正確なレイアウトに強く依存する実装態様の場合のみである。
【0135】
柱状摺動部については、磁気的導電性シートから作られていることが好ましく、柱状摺動部に設けられた内側セグメント311、312および柱状摺動部310に設けられたヨーク部分317(その他の柱状摺動部320に設けられた内側セグメントおよびヨーク部分に対しても同じことが言える)の隣接ヘッド部分317hを形成するシートが、内側コイル軸315aに平行な方向に沿って配置されることに留意すべきである。柱状摺動部に設けられたヨーク部分317(柱状摺動部に設けられたその他のヨーク部分327に対しても同じことが言える)のテール部分317tを形成するシートは、内側コイル軸315aに実質的に垂直な方向に配置されることが好ましい。これにより、磁束の最適な結合をもたらす。
【0136】
柱状摺動部に設けられたベアリング部分330によって接続される2つ以上の柱状摺動部を使用する場合、
図8に示すように、柱状摺動部に設けられたベアリング部分330はさらに磁気的導電性シートから作られ、当該磁気的導電性シートは、当該ベアリングが接続する柱状摺動部の一部を形成するシートと同じ方向で、互いに隣接して配置されることが好ましい。例えば、柱状摺動部に設けられたベアリング部分が、柱状摺動部に設けられたヨークを構成するヘッド部分に接続する場合、柱状摺動部に設けられたベアリング部分を形成するシートは、内側コイル軸に垂直な方向に配置されることが好ましい。柱状摺動部に設けられたベアリングを形成するシートはまた、少なくとも、柱状摺動部に設けられたヨーク部分への接続部分において、内側コイル軸315aに垂直な方向に配置される。一般に、シートは、最適な磁束結合が実現されるように配置されるべきである。
【0137】
図11は、柱状摺動部の構成500を例示する実施形態の透視図を示す。
図8に示した柱状摺動部の構成300と比較すると、柱状摺動部に設けられた外側セグメントは、この実施形態では、リング型セグメントとして形成されないが、(第1の柱状摺動部510に設けられた)外側セグメント512から517および(第2の柱状摺動部520に設けられた)外側セグメント522から527が、棒状シリンダとして、好ましくは、柱状摺動部に設けられた内側セグメント511、521と同じ形で形成される。そのような構成の利点は、主に、製造に必要な柱状摺動部が1種類または2種類のみであるため、費用削減になることである。柱状摺動部に設けられた少なくとも第2のリング(
図11には図示せず)が中央の柱状摺動部の周囲に配置された場合、主な利点は実現される。他の実施形態においては、柱状摺動部に設けられたセグメントの、特に、柱状摺動部に設けられた外側セグメントのさらなる形成が利用可能である。
【0138】
図12は、選択−収束場コイル構成600の他の実施形態の透視図である。この実施形態において、
図11に示した柱状摺動部の構成500が使用され、柱状摺動部に設けられた各セグメントは、(上側に位置する選択−収束場コイル・サブユニット610に対しても同じことが言え;下側に位置する選択−収束場コイル
・サブユニット620に対しても同じことが言える)リング型コイル611から617の周囲に巻き付けられた個々の選択−収束場コイルを備える。
【0139】
選択−収束場コイル構成のさらなる実施形態が存在する。例えば、
図13に示した選択−収束場コイルの構成600’を例示するさらに他の実施形態では、大型シリンダ状の磁場コイル631、632が、各選択−収束場コイル・サブユニット610、620の外側およびその周囲に配置される。さらに、磁場をさらに強化するために、磁気ベアリング630の周囲に1つまたは複数の追加の磁場コイル640を配置することが可能である。
【0140】
さまざまな選択−収束場コイルに加えて、さらに、各選択−収束場コイル・サブユニット内の永久磁性材料が、選択−収束場コイルを生成するための選択磁場の生成をさらに強化するために与えられてもよいことに留意すべきである。この永久磁石は、軟質磁性材料の一部の代わりに検査領域の近傍に配置されることが好ましい。
【0141】
さらに、冷却手段が、コイルの一部またはすべてを冷却するために設けられることが好ましいことに留意すべきである。冷却手段は、水または油などの冷却流体を使用することが好ましい。コイルは、銅またはアルミニウムから作ることができるが、超伝導材から作ることもでき、ヘリウムなどの適切な冷却剤の使用により冷却する。高温の超伝導導体の場合、冷却は、ガス状ヘリウムを使用することで実現することができる。低温の超伝導導体の場合、冷却は、液体ヘリウムを使用することで実現することができる。
【0142】
上記した幾何学的構成を使用して、異なるシミュレーション実行を行った。これにより得られた結果を以下に要約する。
【0143】
FFPが幾何学配置の中央に配置された場合、2.5T/mの傾斜磁場強度が、30kWの電力で得られた。90kWの電力を使用した場合、傾斜磁場強度は、3.3T/mに増加した。
図14は、傾斜磁場強度が電力に伴いどのように増加するかを示す。これらのシミュレーションに関しては、内側選択−収束場コイルのみを使用する。外側選択−収束場コイルに電流は流れなかった。特に、第2の内側選択−収束場コイル内の電力は、第1の内側選択−収束場コイルの4倍の大きさだった。
【0144】
z軸方向への移動に関して、内側選択−収束場コイルを使用した場合、FFPは、原点から10cmの距離でz軸上に配置された。総電力消費が92kWの場合、得られた傾斜磁場強度は、2.5T/mであった。電力は、以下のようにコイルの間で分散される。FFPが移動した方向の柱状摺動部に関して、第1の内側選択−収束場コイルは、49kWを損失したが、電流は、第2の内側選択−収束場コイルに流れなかった。他の方向を向いた柱状摺動部に関しては、第1の内側選択−収束場コイルは、5kWを損失したが、38kWが、第2の内側選択−収束場コイルで必要だった。
【0145】
x方向および/またはy方向の移動に関しては、外側選択−収束場コイルを使用した場合、FFPは、x軸方向および/またはy軸方向に沿って移動することができる。例えば、シミュレーションの1つにおいては、FFPは、原点から10.1cmの距離で、x軸上に配置された。ここで、総電力100kWを使用した。40kWの電力が、外側選択−収束場コイルのうち4つにおいて損失したが、残りの60kWは、内側選択−収束場コイルにおいて消費された。取得された傾斜磁場強度は2.2T/mであった。それにもかかわらず、勾配は、かなり不均一であった。共通の計算方法を使用した場合、取得した値は、G
x=−0.69T/mおよびG
y=−1.51T/mである。
【0146】
ある種の用途(MR)に関しては、FFPを有さないが、非常に均一である磁場を生成することが望ましい。したがって、シミュレーションは、内側の柱状摺動部の1つの電流方向が反転して実行される。すべてのコイルと利用可能な電力(100kW)のさまざまな分布とを使用した場合、原点での最大観測場強度は、0.45Tであった。場の強度は、zに沿って増加し、x/yに沿って減少する。
【0147】
磁場に蓄積されたエネルギーを算出するために、積分
【0149】
が、体積Vにわたって評価される。本シミュレーションでは、磁場に蓄積され、観測されたエネルギーの最大値は、40kJ未満であった。最大値は、均一(MR)場を得ようとするシミュレーションで見られた。
【0150】
以下において、本発明により提案され、再構成ユニット152によって実行されるような再構成処理が、より詳細に説明される。上述のように、バックグラウンド信号の変化およびスプリアス信号は、どちらも、MPI較正スキャンおよび対象スキャンを行った際に、画質をひどく損なわせる可能性がある。バックグラウンド信号の異なる発生源は、異なるスペクトル挙動を示し、バックグラウンド信号の寄与は、測定された帯域幅にわたって均一に広がらないが、異なる周波数成分間の強度および時間的パターンが異なる。
【0151】
MPIでは、較正スキャンを使用して、
信号応答を信号生成トレーサの空間位置
に関係づけるシステム関数(SF)を決定する。較正スキャンは、画像体積のすべてのボクセル位置において所望の解像度以下である磁気サンプルを位置決めするロボットを使用して行うことができる。ロボットに基づくSF取得は、むしろゆっくりと実行されるものであり、バックグラウンド信号の測定が点在
し得る。例えば、Nx*Ny*Nzのボクセルの3D(3次元)ボックス型体積領域を測定する場合、ロボットは、これら全ての位置で、較正サンプルを位置決めしなければならない。バックグラウンド信号の決定の場合、サンプルは、ボクセルの線が測定された後に、造影体積領域の外側に動かすことができ、空のスキャナの基準スキャンを実行することができる。3D(3次元)のSFスキャンのためのタイミング・スキームの一部を、
図15に示す。
【0152】
図15は、バックグラウンド信号成分の測定700が、異なるロボット位置で、較正測定710の間に点在することを示す。ステップは、3つの空間軸に沿ったロボット位置を示す。14×14×10のボクセルの
システム関数取得の初期部分を示す。バックグラウンド信号成分の測定の場合、較正サンプルは、造影画像体積領域から除去される。バックグラウンド信号の測定の間において、z軸方向に沿った1つの線が測定される。
【0153】
バックグラウンド信号の測定データを補完することによって、例えば、ドリフトによる、ゆっくりとしたバックグラウンド信号の変化を、
図16に示すように、SFデータから除去することができる。上述した補完処理は、単に線形とすることもできるが、フーリエ補完などのさらに進歩した方法も、(
図16Dおよび
図16Eに示すように)データへの平滑フィルタの単純な適用を可能にする。
図17は、較正スキャンで得られた空間パターンでのバックグラウンド信号の補正処理の効果を示す。
【0154】
特に、
図16は、(サンプル上での任意の単位(a.u.)での、例えば、ボルトでの)バックグラウンド信号の補完処理、平滑化処理、および補正処理で得られる結果を示す。28×28×20=15680のボクセルの
システム関数取得の周波数成分の1つ(xチャネル、成分2*fx−fy+2*fz=1583)を一例として示す。スキャンの始めに、各20ボクセルを位置決めした後に、1+28×28=785通りのバックグラウンド信号測定に達するバックグラウンド信号測定動作を実行した。総数15680+785通りのロボット位置にわたって、バックグラウンド信号測定のみが示され、中間位置が補完処理される。
図16Aは、バックグラウンド信号の測定700およびフーリエ補完705を示す。
図16Dは、平滑化(低域通過フィルタ)を伴うフーリエ補完715を示す。
図16Bおよび
図16Eは、それぞれのデータの拡大図を示す。
図16Cおよび
図16Fは、2つの場合の補完および平滑化を伴う補完に関してのバックグラウンド信号の除去前(信号720)および除去後(725、730)の測定較正データを示す。
【0155】
図17は、較正スキャンで取得された体積のx−y2次元面でのスライスを示す。この場合も、周波数成分2*fx−fy+2*fz=1583のxチャネル信号が示される。
図17Aは、バックグラウンド信号の補正前の異なるz座標位置での3つのスライスを示し、
図17Bは、バックグラウンド信号の補正後の同じスライスを示す。較正画像の上縁部(矢印で示す)で、補正の効果を見ることができる。
【0156】
バックグラウンド信号の測定値を取得するための較正スキャンを実行する上記手法に対する代替的な手法は、コイルを使用して異なる空間位置のローカル場を生成することができるシステム較正ユニットの使用であり、サンプルの空間的な再度の位置決め動作が必要なくなる、すなわち、ロボットが必要なくなることに留意すべきである。システム較正ユニット(SCU)の考えは、ある固定された分光計などの
システム関数で使用される位置において磁気サンプルによって見られる場を再生成することである。SCUでは、均一な収束場を使用して、位置の変化をエミュレートする。一方、MPIスキャナでは、サンプルのサイズが、信号を空間的に符号化するために使用される傾斜磁場によって限定され、SCUには、そのような限定はない。さらに、高感度受信コイルを使用して、静止したサンプルからの信号を測定することができる。磁気粒子特性が、明確に説明される。したがって、SCUは、ロボットに基づく
システム関数とシミュレートされた
システム関数との両方の利点を組み合わせる。あるいは、専用のSCUではなく、収束場を有する任意のMPIスキャナを、SCUとして使用することができる。SCUを使用して、他のMPIスキャナのための
システム関数を推定する場合、MPIスキャナの全ての態様、すなわち、全ての磁場、受信チェーン特性などを説明する必要がある。
【0157】
上記した方法を用いると、ゆっくりと変化するバックグラウンド信号を、好ましくは除去することができるが、バックグラウンド信号測定の時間的間隔よりも速い変化は除去されない。しかしながら、これらの変化から影響を受ける周波数は、識別することができる。方法の1つは、フル
システム関数を2回、1回は、トレーサ・サンプルを用いて、1回は、サンプルを用いずに、測定することである。上記手法を使用した、ゆっくりと変化するバックグラウンド信号の除去の後、空の測定における各周波数での信号内容のスペクトル・プロットは、スプリアス信号のスペクトル位置を明らかにする(
図18A参照)。信号内容の測定は、異なる空間位置にわたる所与の周波数での信号の標準偏差である可能性がある。この情報を使用して、高いバックグラウンド信号レベルを有する成分の影響を低減することを目的に、再構成処理において周波数成分に重み付けすることができる。さらに、サンプルを用いた測定の空間信号成分と、サンプルを用いなかった測定の空間信号成分との比率は、SNRに関連した、粒子信号とバックグラウンド信号との間の比率を示す(
図18E参照)。SNRスペクトル、すなわち、周波数固有なSNRファクタは、閾値(SNR閾値とも呼ばれる)を提供することによって、再構成のための周波数成分を選択するために使用することができる。さらに、SNRは、周波数成分を重み付けするためのスケーリング・ファクタの役目を果たすことができる。一般に、しかしながら、その他の信号品質ファクタおよび信号品質閾値も、上記のように使用することができる。
【0158】
2つの
システム関数の測定は、かなり長くなるので、代替的な手法は、例えば、ボクセル測定よりも点在したバックグラウンド信号測定のため
により長いサンプリング枠を使用することによって、
システム関数スキャンにお
いてより迅速な変化の測定を盛り込むことである。
図15を参照すると、このことは、時間枠700が長くなることを意味する。その場合、信号変化の測定(例えば、標準偏差)は、これらの時間枠で決定することができ、閾値選定および重み付けのためのSNR測定値を発見する目的で、上記のように、同様の処理に対する入力とすることができる。この方法を使用して決定されたバックグラウンド信号成分は、
図18Bに示され、
図18Aに示すような時間のかかる空の測定からのバックグラウンド信号に非常に似ている。
【0159】
したがって、
図18は、複数の異なる位置における信号上での標準偏差から決定された複数の異なる周波数成分での信号内容を示す。本データは、3D(3次元)リサージュ励起中のx受信コイルで取得される。周波数成分の間隔は、46.42Hzであり、スペクトルの幅は、625kHzになる。
図18Dおよび
図18Eは、それぞれ、
図18Aおよび
図18Bで示した信号上で、
図18Cに示した信号の比率から生じたSNR測定を示す。
図18Aは、空のSF測定から生じた信号内容を示す。
図18Bは、SF取得に点在した空の測定値から生じた信号内容を示す。
図18Cは、較正サンプルを用いて測定した信号内容を示す。
図18Dは、
図18C/
図18AからのSNRを示す。
図18Cは、
図18C/
図18BからのSNRを示す。
【0160】
較正スキャンにおけるSNRを増やすために、体積取得シーケンスが、各ロボット位置で、数回(例えば、50回)繰り返される。上記の処理は、これらの測定値を平均化した後で、適用されることが好ましい。測定したバックグラウンド信号の変化の時間解像度をさらに向上させるために、上記の処理を、平均化されていないデータに適用することができる。原理的には、シーケンスの1回の繰返しの間の変化も利用することができる。
【0161】
したがって、バックグラウンド信号の変化は、異なる時間スケールで識別することができ、この情報は、再構成のための周波数成分の閾値選定および重み付けを最適化するよう適用することができる。
【0162】
本発明は、さらに、画像診断対象の(ビデオ)スキャンに対するバックグラウンド信号除去に適用してもよい。対象または患者がスキャナ内に配置される前、またはその後に、バックグラウンド信号データを取得することができる。2つの測定値の間の補完処理は、対象データに対するバックグラウンド信号の補正を可能にする。さらに、SFに対してのように、バックグラウンド信号測定間隔中の変動を有する周波数成分は、それに応じて、識別および扱うことができる。
【0163】
バックグラウンド信号の除去は、MPIにおける重要な特徴であり、受信システムによって取り出されるスキャナ欠陥およびスプリアス信号の点から、非常に優れた画質を保証する。本発明は、効果的なバックグラウンド信号の測定および除去のための解決法を提供する。
【0164】
本発明は、図面および上記説明で詳細に図示および説明してきたが、そのような図示および説明は、例証および例示のためであり、制限するためのものではなく、本発明は、開示した実施形態に限定されない。開示した実施形態に対する他の変形例も、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の研究から、請求項に係る発明を実施する際に当業者が理解および実行することが可能である。
【0165】
特許請求の範囲において、「備える」という言葉は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」(単数形)は、複数形を除外しない。単一要素、または他のユニットにより、特許請求の範囲に記載された、いくつかの項目の機能を満たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属クレームに記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0166】
特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、その範囲を限定するよう解釈されるべきではない。