(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記繊維質材料が、ガラス繊維及び/又は炭素繊維及び/又は玄武岩繊維及び/又はホウ素繊維の中から選択された無機材料を含む、請求項12に記載のタイヤ(100)。
前記繊維質材料が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、再生セルロースの糸、綿及びそれらの混成物又は混合物の中から選択された有機材料を含む、請求項12に記載のタイヤ(100)。
【発明の概要】
【0001】
説明
本発明は、二輪車用タイヤに関する。
【0002】
本発明のタイヤは、好ましくは、高性能二輪車、即ち、270km/hよりも更に高い速度に達することが可能な二輪車の車輪用タイヤである。このような二輪車は、一般に、ハイパースポーツ、スーパースポーツ、スポーツツーリング、及びより低いスピードインデックスのものでは、スクータ、ロードエンデューロ及びカスタムの部類として認められるカテゴリに属するものである。
【0003】
本明細書においては以下の定義を適用する。
【0004】
「二輪車用タイヤ」及び/又は「自動二輪車車輪用タイヤ」という用語は、自動二輪車のコーナリング時に高キャンバー角を達することが可能な高曲率比(一般に、0.200超)を有するタイヤを示すために使用される。
【0005】
「キャンバー角」は、自動二輪車車輪に装着されたタイヤの赤道面と、路面に直交する面との間の角度を示すために使用される。
【0006】
タイヤの「赤道面」は、タイヤの回転軸に垂直であり、且つタイヤを2つの対称に等しい部分に分割する面を示すために使用される。
【0007】
タイヤの「曲率比」は、その断面における、トレッドバンドの半径方向における最高点とタイヤ最大弦長(maximum tyre chord)との間に含まれる距離と、同タイヤ最大弦長との間の比を示すために使用される。曲率比は、また、タイヤのいわゆる「横断方向曲率」を特定する。
【0008】
「半径方向」及び「軸方向」という用語、並びに「半径方向内側/外側」及び「軸方向内側/外側」という表現は、タイヤの半径方向及び軸方向に関して使用される。「周方向の」及び「周方向に」という用語は、その一方で、タイヤの環状の展開(annular development)の方向に関して使用され、タイヤの赤道面に平行する面に配される方向に一致する。
【0009】
「エラストマ材料」という用語は、少なくとも1種のエラストマ高分子と少なくとも1種の補強フィラーを含む組成物を示すために使用される。好ましくは、そのような組成物は、更に、例えば、架橋剤及び/又は可塑剤などの添加剤を含む。架橋剤の存在ゆえに、そのような材料は加熱により架橋させることができる。
【0010】
「補強コード」という表現は、エラストマ材料のマトリックスに組み込まれる1つ又は複数の細長要素を含む要素を示すために使用される。場合によっては及び特定の用途によっては、上記細長要素はテキスタイル材料又は金属材料で作製される。
【0011】
補強コードの「破断点伸度」という表現は、BISFA E6の方法(The International Bureau For The Standardization Of Man-Made Fibres, Internationally Agreed Methods For Testing Steel Tyre Cords, 1995 edition)によって定められた、破断が生じる伸長の比率を示すために使用される。
【0012】
補強コードの「部分荷重伸度」という表現は、コードを50Nの引張強さにさらすことにより得た伸長の比率と、コードを2.5Nの引張強さにさらすことにより得た伸長の比率との間の差を示すために使用される。部分荷重伸度は、BISFA E6の方法(The International Bureau For The Standardization Of Man-Made Fibres, Internationally Agreed Methods For Testing Steel Tyre Cords, 1995 edition)によって定められている。
【0013】
「補強された帯状要素」という表現は、平坦な形状を有する断面形状を有し、且つ製品の長手方向の展開(longitudinal development)に平行して延在し、且つエラストマ材料の少なくとも1つの層に組み込まれた、又はエラストマ材料の少なくとも1つの層によって少なくとも部分的にコーティングされた1つ又は複数の補強コードを含む細長い複合材料を示すために使用される。そのような補強された帯状要素は、また、一般に、「ストリップ状要素」と呼ばれる。
【0014】
自動二輪車車輪用タイヤは、カーブを曲がるために自動二輪車が傾斜する際に路面との適切な接触面を提供するために高横断方向曲率を有する。
【0015】
あらゆる走行条件において自動二輪車重量(従って、運転者、全搭乗者及び全積荷の重量を含む)を支持することに加え、そのようなタイヤは、高走行距離及び規則的な摩耗のほかに、運転安定性、制御性、指向性、快適性、接地性を確保せねばならない。
【0016】
大型のピストン排気量(例えば1000cm
3以上)及び/又は高出力(例えば、170〜180HP以上)の二輪車に装着するのに適した高性能タイヤは、直線路を走行する際とカーブを出る際の加速時の両方において高駆動トルクを地面に効果的に放出するために、並びにカーブ上での横力への適切な応答及び効果的な制動力を確保するために道路への優れた密着性も提供しなければならない。
【0017】
特にカーブ上、及び特に高性能二輪車のタイヤの場合における、二輪車用タイヤの挙動はベルト構造の特定の種類及び形状に大きく依存する。事実、ベルト構造は、路面との接触によりタイヤにかかる側方及び長手方向の応力をカーカス構造に伝達するように構成されるため、構造的抵抗、性能(即ち、密着性、運転安定性、制御性、指向性、接地性)及び快適性という望ましい特徴をタイヤに付与することに寄与する。
【0018】
ベルト構造の特定の種類及び形状はタイヤの重量及び/又は製造コストに多大な影響を及ぼす。
【0019】
二輪車用タイヤにおいては、いわゆる「交差」型のベルト構造及びいわゆる「ゼロ度」型のベルト構造の使用が普及している。
【0020】
「交差」型のベルト構造は、通常、半径方向に順に重ねて配置された2つのベルト層を有する。各ベルト層は、互いに平行して配置され、且つテキスタイル材料又は金属材料、より一般には、二輪車用タイヤのテキスタイルで作製された複数の補強コードを含む。ベルト層は、第1ベルト層の補強コードがタイヤの赤道面に対して傾斜する一方で、第2の層の補強コードも傾斜するが、それらはタイヤの赤道面を基準に第1の層の補強コードに対して逆側に配向されるように相互に配置される。
【0021】
「ゼロ度」型のベルト構造は、通常、テキスタイル材料又は金属材料で作製された複数の補強コードを含む。そのような補強コードは、軸方向に互いに隣接して配置され、且つタイヤの赤道面に実質的に平行して、又は前記赤道面に対して非常に小さな角度だけ傾斜して配向されたコイルの状態でカーカス構造に巻かれている。
【0022】
欧州特許第0461646号は、複数の高伸度補強コード(「HEコード」とも呼ばれる)から始まり形成されるゼロ度型のベルト構造を含む二輪車用タイヤを記載する。各補強コードは、共に撚り合わせた複数の撚り線を含み、各撚り線は、更には、共に撚り合わせた複数の金属ワイヤを含む。
【0023】
米国特許出願公開第2003/0051788号は、高分子材料のコアと、互いに平行して配置され、且つ前記コアの周囲において撚り合わせられた4〜6本の金属ワイヤとを含む補強コードを記載する。
【0024】
米国特許第3,977,174号は、プラスチック材料のコアとコアの周りに配置された複数の鋼線とを含む補強コードを記載する。
【0025】
米国特許出願公開第2009/0294009号は、ゴムシースで完全に被覆された織物繊維で作製されたコアと、上記ゴムシースに螺旋状に巻回された複数の金属ワイヤとを含む補強コードを記載する。そのようなコードはタイヤのベルト構造を補強するために使用される。
【0026】
本出願人は、欧州特許第0461646号に記載されるようなゼロ度型のベルト構造、即ち、共に撚り合わせた複数の金属撚り線から始まり形成される複数の高伸度金属コード(HEコード)を含み、各撚り線が、更には、共に撚り合わせた複数の金属ワイヤを含むようなゼロ度型のベルト構造を備えた二輪車用タイヤを長きにわたり製造してきた。そのようなタイヤは、(高速度及び疲労の両方における)構造的抵抗、(密着性、運転安定性、制御性、指向性、接地性の点における)性能、順応性及び快適性の優れた特徴を有し、顧客に高く評価されている。
【0027】
しかしながら、本出願人は、一方で、上記の種類のベルト構造が上記の要求を満たすことを可能にすれば、その一方で、それはとりわけ、多数の金属ワイヤの使用を要する複雑且つ高額なコードの構造を意味するものであり、これがベルト構造、故に、タイヤの重量及びコストに影響することに気が付いた。
【0028】
その一方で、本出願人は、大重量を有するベルト構造の使用は走行中における望ましくない振動の伝達の原因となる可能性があり、これは、タイヤ内に大きな非懸架質量(non suspended mass)が存在によるものであることに気が付いた。本出願人は、また、大重量を有するベルト構造の使用は高速度での運転安定性の点において問題を発生させる可能性があることに気が付いた。これは、ベルト構造の質量によって生成されるタイヤの回転軸周囲における高慣性モーメントによるものであり、これによって、ジャイロスコープ効果により自動二輪車フレームに力が伝達される原因となり、安定性が損なわれる。
【0029】
本出願人は、従って、タイヤの構造的抵抗、性能(密着性、運転安定性、制御性、指向性、接地性の点において)、順応性及び快適性の所望の特徴を損なうことなく製造がより簡単かつ安価で、可能な限り少ない金属ワイヤの重量及び数を有するコードを使用する二輪車のタイヤのゼロ度型のベルト構造を製造するという課題を考慮した。
【0030】
本出願人は、ベルト構造においては、非金属材料、好ましくは、繊維質材料(例えば、有機材料、又はガラス繊維及び/又は炭素繊維及び/又は玄武岩繊維及び/又はホウ素繊維を含む無機材料)で作製されたコアと、実質的に互いに平行し、前記コアに所定の巻線ピッチで螺旋状に巻回された複数の金属ワイヤと、を含むゼロ度型のコードを使用することによりそのような課題を解決できることを見いだした。金属ワイヤは、好ましくは、コアを完全に取り囲まないような数及び/又は巻線ピッチで巻かれている。金属ワイヤは、コードの任意の断面において、それらがコアに外接する理想的円周のある角度部分だけに配されるようにコアの周りに配置されても良い。
【0031】
上記種類の補強コードは非金属材料を使用していることから上記の金属コードのものよりも軽い重量を有する。更なる重量低減は限られた数の金属ワイヤの使用にも起因する。例えば、ポリエステルなどの低コストの非金属材料を使用すると、本明細書中に記載される種類の補強コードは、また、HE金属コードのものと比較して低いコストを有する。
【0032】
驚くべきことに、本出願人は、上記コードを含むゼロ度型のベルト構造の使用は、(高速度及び疲労の両方における)構造的抵抗、性能及び快適性という所望の特徴の実現を可能にすることを見いだした。
【0033】
本出願人は、上記補強コード内に非金属材料で作製されたコアがあること、及び前記コア周りに金属ワイヤが不規則に分布していることにより、タイヤ構成要素がコードの非金属コアに露出する領域に低い構造的抵抗の領域、タイヤ構成要素がコードの金属ワイヤに露出する領域に高い構造的抵抗の領域が形成され得るであろうと考えた。本出願人によれば、これが原因で、高い構造的抵抗を有する領域における車輪と道路の接触力の影響により実質的に生じる応力の集中、及び疲労抵抗の点における問題の発生に至った可能性があるが、これらは更なる技術的な解決策によって解決される。
【0034】
本出願人は、更に、低い構造的抵抗を有する上記領域がタイヤ内にあることが走行中における側方及び長手方向の力の伝達能力の低下と、直線路及びカーブを走行する際の両方におけるタイヤ速度性能の結果的な低下に起因したであろうと考えた。
【0035】
本出願人は、驚くべきことに、上記の疲労抵抗及び性能の問題が実際には発生せず、加えて、タイヤの順応性及び快適性の点においても優れた結果が得られることに気が付いた。
【0036】
本出願人によれば、いずれの解釈理論にも縛られることなく、タイヤの疲労における予期せぬ良好な挙動は、コード内の非金属コアに金属ワイヤを巻くと、車輪と道路の接触から生じる応力にさらされた場合にその挙動が金属材料のものに実質的に匹敵する均質な複合体(homogeneous complex)のように見える複合材料を画定することに起因するものである可能性がある。
【0037】
本出願人は、更に、性能、順応性及び快適性の点におけるタイヤの予期せぬ良好な挙動は金属ワイヤを非金属材料のコア上に巻くことにより得られる金属ワイヤの特定配置に起因ものであっても良いと考える。この配置は、ゼロ度型のベルト構造内に交差する横糸を有する複数のマイクロセルを画定する。複数のマイクロセルは、交差型のベルト構造に典型的な所定の有利な特徴をゼロ度型のベルト構造に付与する。特に、各マイクロセルは一方の側においてはタイヤの赤道面に平行する方向に対して傾斜する複数の数本の金属ワイヤ(a plurality of pieces of metal wires)(そのような数本の金属ワイヤは、例えば、コードを上から見ることにより見えるものである)と、タイヤの赤道面に対して逆側に傾斜する複数の他の数本の同じ金属ワイヤ(a plurality of other pieces of the same metal wires)(そのような他の数本は、例えば、コードを下から見ることにより見えるものである)と、によって画定される。最終的に、本出願人によって認められたものによれば、ゼロ度型のベルト構造を有するタイヤに典型的な安定性、順応性及び快適性特徴、並びに交差型のベルト構造を有するタイヤに典型的な反応性及び迅速性特徴を有する挙動のベルト構造が得られる。
【0038】
本出願人は、最終的に、上述のようなベルト補強コードを使用すると、構造的抵抗、性能、快適性、順応性、重量及び製造コストの点において最適な特徴を有する二輪車用タイヤを得ることが可能になることを見いだした。
【0039】
その一態様において、本発明は、
− カーカス構造と、
− カーカス構造に対して半径方向外側位置に配置されたベルト構造と、
− ベルト構造に対して半径方向外側位置に配置されたトレッドバンドと、
を含み、
前記ベルト構造は実質的な周方向に沿って配向された隣接するコイルに従い前記カーカス構造に巻かれた少なくとも1つの補強コードを含み、
前記少なくとも1つの補強コードが、
− 非金属材料で作製されたコアと、
− 実質的に互いに平行し、前記コアに所定の巻線ピッチで螺旋状に巻回された複数の金属ワイヤと、
を含む、二輪車用タイヤに関する。
【0040】
好ましくは、前記金属ワイヤはコアを完全に取り囲まないような数である。
【0041】
好ましくは、前記金属ワイヤは、コードの任意の断面において、それらがコアに外接する理想的円周のある角度部分にだけ(at just an angular portion of an ideal circumference)配されるように前記コアの周りに配置されている。
【0042】
好ましくは、前記角度部分は、約270°未満、より好ましくは、約190°未満の角度によって画定される。
【0043】
好ましくは、前記角度部分は、約40°超、より好ましくは、約130°超の角度によって画定される。
【0044】
本発明の好適な実施形態においては、前記角度部分は、約40°〜約270°、より好ましくは、約130°〜約190°に含まれる角度によって画定される。
【0045】
例えば、前記角度は約150°に等しい。
【0046】
好ましくは、前記コアの直径、前記金属ワイヤの直径、及び前記金属ワイヤの巻線ピッチは、金属ワイヤが実質的な周方向に対して約10°超、より好ましくは、約15°超の角度だけ傾斜するように選択される。
【0047】
好ましくは、前記コアの直径、前記金属ワイヤの直径及び前記金属ワイヤの巻線ピッチは、金属ワイヤが実質的な周方向に対して約40°未満、より好ましくは、約30°未満の角度だけ傾斜するように選択される。
【0048】
本発明のタイヤの好適な実施形態においては、前記コアの直径、前記金属ワイヤの直径及び前記金属ワイヤの巻線ピッチは、金属ワイヤが実質的な周方向に対して約10°〜約40°、より好ましくは、約15°〜約30°に含まれる角度だけ傾斜するように選択される。
【0049】
好ましくは、前記金属ワイヤの数は2を超え、より好ましくは3を超える。
【0050】
好ましくは、前記金属ワイヤの数は8未満、より好ましくは、7未満である。
【0051】
本発明の好適な実施形態においては、前記金属ワイヤの数は2〜8、好ましくは3〜7に含まれる。
【0052】
例えば、前記金属ワイヤの数は5に等しい。
【0053】
好ましくは、前記金属ワイヤの直径は約0.12mm超、より好ましくは、約0.17mm超である。
【0054】
好ましくは、前記金属ワイヤの直径は約0.35mm未満、より好ましくは、約0.28mm未満である。
【0055】
本発明の好適な実施形態においては、前記金属ワイヤの直径は、約0.12mm〜約0.35mm、より好ましくは、約0.17mm〜約0.28mmに含まれる。
【0056】
例えば、第1実施形態においては、前記金属ワイヤの直径は約0.22mmに等しく、第2実施形態においては、約0.25mmに等しい。
【0057】
好ましくは、前記金属ワイヤは実質的に相接の状態にある。
【0058】
好ましくは、前記少なくとも1つの補強コードは約0.5mm超、より好ましくは、約0.8mm超の直径を有する。
【0059】
好ましくは、前記少なくとも1つのコードは約2.5mm未満、より好ましくは、約1.5mm未満の直径を有する。
【0060】
本発明の好適な実施形態においては、前記少なくとも1つの補強コードは、約0.5mm〜約2.5mm、より好ましくは、約0.8mm〜約1.5mmに含まれる直径を有する。
【0061】
例えば、第1実施形態においては、前記少なくとも1つの補強コードは、約0.95mmに等しい直径を有し、第2実施形態においては、約0.99mmに等しい直径を有する。
【0062】
好ましくは、前記巻線ピッチは約3mm超、より好ましくは、約5mm超である。
【0063】
好ましくは、前記巻線ピッチは約16mm未満、より好ましくは、約12.5mm未満である。
【0064】
本発明の好適な実施形態においては、上記巻線ピッチは約3mm〜約16mm、より好ましくは、約5mm〜約12.5mmに含まれる。
【0065】
例えば、補強コードの一実施形態においては、上記巻線ピッチは約6.3mmに等しく、補強コードの第2の実施形態においては、それは約10mmに等しい。
【0066】
本発明の好適な実施形態においては、前記少なくとも1つの補強コードは2.5%超の破断点伸度を有する。
【0067】
好ましくは、前記少なくとも1つの補強コードは、0.5%超、より好ましくは、0.9%超の部分荷重伸度を有する。
【0068】
本発明の一実施形態においては、コアは少なくとも1つの撚り合わせられた細長要素によって画定される。
【0069】
前記細長要素は、例えば、テキスタイルスレッド(textile thread)であっても良い。
【0070】
本発明の別の実施形態においては、コアは互いに撚り合わせられた2つの細長要素によって画定される。
【0071】
代替として、コアは、単一の撚り合わせられていない細長要素によって画定されても良い。
【0072】
好ましくは、前記非金属材料は繊維質材料を含んでもよい。そのような繊維質材料は有機材料であっても無機材料であっても良い。
【0073】
好ましくは、前記有機材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、綿、(レーヨン又はリヨセルなどの)再生セルロースの糸、及びそれらの混成物又は混合物の中から選択される。
【0074】
本発明の好適な実施形態においては、前記有機材料はポリエチレンテレフタレートを含む。
【0075】
好ましくは、前記無機材料は、ガラス、炭素、玄武岩、ホウ素及び/又はそれらの組み合わせの中から選択される。
【0076】
本発明のタイヤの更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照して行う本発明の好適な実施形態の以下の詳細な説明により一層明確に示される。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1では、本発明による二輪車用タイヤを全体的に示すために参照符号100を使用する。特に、タイヤ100は、好ましくは、大型のピストン排気量(例えば、1000cm
3以上)及び/又は高出力(例えば、170〜180HP以上)の自動二輪車の前輪又は後輪に使用されることを意図する。
【0079】
タイヤ100では、赤道面X−Xと赤道面X−Xに垂直な回転軸Zとが画定される。更に、回転軸Zに平行する軸(又は横断又は側方)方向と、赤道面X−Xに平行し、且つタイヤ100の回転方向に一致する周(又は長手)方向とが画定される。
【0080】
タイヤ100は、少なくとも1つのカーカスプライを含み、且つその軸方向断面において実質的にトロイダル形状を有するカーカス構造2を含む。
【0081】
カーカス構造2は、赤道面X−Xに対して対称に配置されたクラウン部2aと、リム部2aに対して軸方向両側に配置された対向側部部分2bとを含む。
【0082】
本明細書中に示されるカーカス構造2は、カーカス構造2の側部部分2bから対向側部部分2bまで軸方向に延在するカーカスプライ3を含む。
【0083】
カーカスプライ3は、好ましくは、半径方向内壁を、主として、膨張するとタイヤ100の密閉を確実にするようになっている気密エラストマ材料の層を含むシーリング層4又はいわゆる「ライナ」でコーティングされる。
【0084】
カーカスプライ3は、各々の軸方向対向側縁部3aにおいて、一般に、「ビードコア」と呼ばれる各々の環状補強構造5と係合する。
【0085】
カーカスプライ3の各側縁部3aは各々のビードコア5の周りにおいて折り返される。
【0086】
テーパ状のエラストマフィラー6がビードコア5の外周縁部に貼付される。フィラー6はカーカスプライ3と各々の折り返された側縁部3aとの間に画定された空間を占有する。
【0087】
不図示の別の実施形態においては、カーカスプライはその対向側縁部を有するが、対向側縁部はその上を折り返されることなく、2つの金属環状インサートが提供された特定の環状補強構造と組み付けられる。この場合、エラストマ材料のフィラーは第1の環状インサートに対して軸方向外側位置に配置されても良い。第2の環状インサートはカーカスプライ端部に対して軸方向外側位置に配置される。最後に、環状補強構造の製造を完了させる更なるフィラーを前記第2の環状インサートに対して軸方向外側位置に提供しても良く、更なるフィラーは第2の環状インサートと必ずしも接触していなくても良い。
【0088】
ビードコア5及びエラストマフィラー6を含むタイヤの領域はいわゆる「ビード」を形成し、これは
図1に参照符号15で全体的に示される。ビード15は、弾性的圧入(elastically forced fitting)によって不図示の対応する取付リムへのタイヤの固定を可能とするように構成される。
【0089】
以下により詳細に記載されるベルト構造10は、前記カーカス構造2に対して半径方向外側位置に、クラウン部2aの少なくとも1つの軸方向部分に提供される。
【0090】
トレッドバンド20はベルト構造10に対して半径方向外側位置に貼付される。タイヤ100はトレッドバンド20を介して路面に接する。
【0091】
トレッドバンド20は、通常、タイヤの異なる領域に様々に配置された複数のグルーブ21によって画定されるトレッドパターンを有する。説明を明確にするため、
図1には、タイヤ100のグルーブ21のいくつかのみが示され、及び/又は視認可能である。
【0092】
カーカス構造2の対向側部部分2bのそれぞれにおいて、タイヤ100は、トレッドバンド20からタイヤ100のビード15まで延びる各々のサイドウォール25を更に含んでも良い。
【0093】
本発明のタイヤ100は、高横断方向曲率(故に、高曲率比)、及び好ましくは、低いサイドウォールを特徴とする。
【0094】
図1を参照すると、タイヤ100の曲率比は、赤道面X−X上において測定した、トレッドバンド20の端部を通過する線b−bからトレッドバンド20のリッジまでの距離htと、トレッドバンド20の前記端部間の距離wtとの間の比の値によって画定される。例えば、
図1にOで示される例えばエッジなどの厳密な基準が無いことにより、トレッドバンドの端部を容易に特定することができない場合、タイヤ最大弦長の測定値を距離wtと想定しても勿論良い。
【0095】
好ましくは、曲率比は0.2以上、より好ましくは、0.25以上である。タイヤ100が前輪に装着されることを意図とする場合、曲率比は、また、0.30超であっても良い。そのような曲率比は、通常、0.8以下、より好ましくは、0.5以下である。
【0096】
本発明のタイヤ100は、好ましくは、特に低いサイドウォールを備えたタイヤである。
【0097】
図1を参照すると、低い又は低くされたサイドウォールを備えたタイヤとは、本明細書では、距離H−htと、赤道面X−X上において測定した、トレッドバンド20の半径方向最大点と、タイヤのビード15を通過する基準線Lによって実質的に同定される取付径との間の高さHとの間の比が、好ましくは、0.6未満、より好ましくは0.5未満であるタイヤを意味する。
【0098】
カーカス構造2のカーカスプライ3は、好ましくは、エラストマ材料で作製され、且つ実質的に互いに平行して配置された複数の補強要素30を含む。説明を明確にするため、
図1の参照符号30は記載される補強要素のいくつかのみに対応する。
【0099】
補強要素30は、好ましくは、タイヤカーカスの製造に通常採用されるもの、例えば、ナイロン、レーヨン、PET、PEN、リヨセル、アラミドの中から選択されるテキスタイルコードを含む。
【0100】
補強要素30は、好ましくは、即ち、赤道面X−Xに対して65°〜110°、より好ましくは、80°〜100°に含まれる(タイヤ100の上部において測定された)角度に従い実質的に半径方向で配置される。
【0101】
図1及び
図4を参照すると、本発明のタイヤ100のベルト構造10はゼロ度型のものである。それは、タイヤ100の周方向に従って(通常、赤道面X−Xに対して0°〜5°に含まれる角度で)実質的に配向される複数のコイル11aを形成するために、単一補強コード11又は軸方向に並列に配置された複数のコード11を含むゴムファブリックの補強された帯状要素をカーカス構造2のクラウン部2aに巻くことによって形成される。補強された帯状要素が使用される場合、それは、最大で5つのコード11、より好ましくは、2つ又は3つ又は4つのコード11を含んでもよい。
【0102】
説明を明確にするため、
図1の参照符号11aは示されるコイルのいくつかのみに対応し、参照符号11は、示される数本のコード11のみに対応する。
【0103】
好ましくは、コイル11aによって画定される巻線は、軸方向に一定であっても可変であっても良い巻線ピッチでクラウン部2a全体に軸方向に延在する。
【0104】
ベルト構造10は、また、コード11とカーカスプライ3の層と、コイル11aが巻かれた位置との間に介在するエラストマ材料(不図示)の1つ又は複数の支持層を含んでも良い。そのような1つ又は複数の層は、コイル11aが展開する表面に実質的に合致する軸方向伸張を有する表面に延在しても良い。
【0105】
本発明のタイヤ100の好適な実施形態においては、エラストマ材料内に分散させた、例えば、Kevlar(登録商標)で作製されたアラミド短繊維を含む支持層が使用される。
【0106】
不図示の更なる実施形態においては、タイヤ100に、上記支持層に加えて又は代替的に、(例えば、タイヤの赤道面X−Xに対して65°〜110°の角度で)実質的に半径方向に配向された(カーカス構造2に使用可能なコードと完全に類似する)テキスタイルコードで補強された少なくとも1つの層を使用しても良い。そのような層は、少なくともカーカス構造2のクラウン部2aに、又は更にはより広い部分に軸方向に延在するが、ビードコア5の周りにおいて折り返されることはない。
【0107】
本発明のタイヤ100の好適な実施形態においては、エラストマ材料の追加層(不図示)がベルト構造10とトレッドバンド20との間に配置されている。好ましくは、そのような追加層はカーカス構造2のクラウン部2aに軸方向に延在する。代替として、上記追加層はベルト構造10の軸方向展開面よりも小さな表面上に、例えば、ベルト構造10の軸方向対向側部部分上のみに軸方向に延在しても良い。
【0108】
図2及び
図3に示すように、本発明のタイヤ100のベルト構造10に使用されるコード11は、非金属材料で作製されたコア12と、コア12に所定の巻線ピッチで螺旋状に巻回された複数の平行する金属ワイヤ13とを含む。
【0109】
コア12は少なくとも1つの細長要素を含む。
【0110】
好ましくは、コア12は有機材料で作製される。しかしながら、コア12が無機材料、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ホウ素繊維を含む材料で作製された本発明のタイヤ100の代替的な実施形態は予想される。
【0111】
コア12を製造するために使用される特定種類の材料に関係なく、そのような材料は周囲の混合物に適切な接着性を提供するために表面的に接着剤でコーティングされることが好適である。通常、接着剤コーティングは、コード11のコア12を形成する細長要素の、接着剤を含む溶液中への液浸によって実施されても良い。
【0112】
好ましくは、コード11は約0.5mm〜約2.5mm、より好ましくは、約0.8mm〜約1.5mmに含まれる直径を有する。
【0113】
例えば、第1実施形態においては、コード11は0.95mmに等しい直径を有し、第2実施形態においては、それは0.99mmに等しい直径を有する。
【0114】
好ましくは、コード11は0.5%超、より好ましくは、0.9%超の部分荷重伸度を有する。
【0115】
コア12を作製しても良い有機材料の例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンナフタレート、ポリケトン、(レーヨン又はリヨセルなどの)再生セルロースの糸、綿、及びそれらの混成物又は混合物である。
【0116】
本発明の一実施形態においては、前記有機材料はポリエチレンテレフタレートを含む。
【0117】
本明細書中に示される例では、及び特に
図2及び
図3を参照すると、コア12は所定の撚りピッチで互いに撚り合わせられた2つの細長要素12a、12bによって画定される。代替として、コア12は、所定の撚りピッチで単独で撚られた単一の細長要素によって画定されても、同じ撚りピッチで互いに撚り合わせられた2つを超える細長要素によって画定されても、単一の撚り合わせられていない細長要素によって画定されても良い。
【0118】
細長要素12a、12bは、好ましくは、各々のテキスタイル製細長要素(又はワイヤ)によって画定される。
【0119】
本明細書中に示される実施形態においては、金属ワイヤ13はコア12に直接接触している。即ち、中間層がコア12と金属ワイヤ13との間に提供されない。特に、コア12のコーティング層は提供されない。
【0120】
図2及び
図3の例では、金属ワイヤ13は5本であり、それらは相接の状態にある。しかしながら、金属ワイヤ13の数が2〜8、より好ましくは3〜7に含まれる代替的な実施形態が予想される。上記金属ワイヤ13も、全てが相接しているわけではない。
【0121】
金属ワイヤ13の直径は、好ましくは、約0.12mm〜約0.35mm、より好ましくは、約0.17mm〜約0.28mmに含まれる。
【0122】
例えば、コード11の第1実施形態においては、金属ワイヤ13の直径は約0.22mmに等しく、コード11の第2実施形態においては、それは約25mmに等しい。
【0123】
いずれの場合においても、金属ワイヤ13はコア12を完全には取り囲まないように配置されている。特に、
図3に示すように、金属ワイヤ13は、コード11の任意の断面においては、それらがコア12に外接する理想的円周(
図3では文字Cと破線で示される)のある角度部分にだけ配されるようにコア12の周りに配置されている。そのような角度部分は、好ましくは、約40°〜約270°、より好ましくは、約130°〜約190°に含まれ、例えば、約150°に等しい角度αによって画定される。
【0124】
好ましくは、金属ワイヤ13の巻線ピッチは約3mm〜約16mm、より好ましくは、約5mm〜約12.5mmに含まれる。
【0125】
例えば、コード11の第1実施形態においては、上記巻線ピッチは約6.3mmに等しく、コード11の第2実施形態においては、それは約10mmに等しい。
【0126】
コード11は2.5%超の破断点伸度を有する。
【0127】
金属ワイヤ13は、好ましくは、全て同じ材料で作製される。
【0128】
本発明の好適な実施形態においては、そのような材料は鋼であり、より好ましくはNT(標準張力)、HT(高張力)、SHT(超高張力)又はUHT(超超高張力)鋼である。一般に、そのような鋼は約1%未満の炭素含有量を有する。好ましくは、炭素含有量は約0.7%以上である。一般に、鋼は約2600MPa超の引張強さを有する。一般に、そのような引張強さは約4500MPa未満である。
【0129】
特に
図4を参照すると、上記コード11における金属ワイヤ13の特定配置は、複数のマイクロセル10aを含む交差した緯糸構造が本発明のゼロ度型のタイヤ100のベルト構造10内に画定されることを可能にする。
【0130】
説明を明確にするため、
図4の参照符号10aは示されるマイクロセルのいくつかのみに対応する。
【0131】
そのようなマイクロセル10aのそれぞれは、一方の側においてタイヤ100の赤道面X−Xに平行する方向に対して傾斜し、且つコード11を上から見ると視認可能な各々の金属ワイヤ13の数本13’によって画定され、逆側においてタイヤ100の赤道面X−Xに対して傾斜し、且つコード11を下から見ると視認可能な同じ金属ワイヤ13の数本13’’によって画定される。
【0132】
本出願人によれば、走行中、特に、カーブを走行中に発生した側方応力に効果的に抗する各々のスラスト微小成分(thrust microcomponents)が、上記マイクロセル10aのそれぞれの金属ワイヤ13の前記数本13’、13’’において発生する。
【0133】
好ましくは、コア12の直径、金属ワイヤ13の直径及び金属ワイヤ13の巻線ピッチは、数本13’、13’’が実質的にタイヤ100の赤道面X−Xに平行する方向(上記の実質的に周方向に一致する)に対して10°〜40°、より好ましくは、15°〜30°に含まれる角度だけ傾斜するように選択される。
【0134】
本出願人は、本発明のゼロ度型のタイヤ100のベルト構造に使用可能なコード11の荷重伸度挙動を、同じ本出願人により長きにわたり製造及び販売されており、その、構造的抵抗、性能(密着性、運転安定性、制御性、指向性、接地性の点において)及び快適性の優れた特徴のために顧客に評価されているゼロ度型のタイヤのベルト構造に使用されているHEコードの荷重伸度挙動と比較した。
【0135】
図5の曲線A1及びA2は、上記のコード11の2つの異なる実施形態の荷重伸度図を示す。特に、それらは、それぞれがテキスタイル材料のコアに所定の巻線ピッチで螺旋状に巻かれた5本の金属ワイヤを含むコードである。特に、金属ワイヤはHT鋼で作製され、それぞれ0.22mmに等しい直径を有する。テキスタイルコアは、330撚り数/メートルで撚られ、更には、330撚り数/メートルで互いに撚り合わせられたポリエチレンテレフタレート(ポリエステル1670x2dtex)の2つの細長要素を含む。
【0136】
そのようなコードは、以下、表1及び表2に示される特徴を有する。
【0139】
その一方で、
図5の曲線Bは、比較HEコードの荷重伸度図を示す。特に、それは高炭素含有量のコードであり、以下、コードBと称される。このコードは0.95mmの直径を有し、3本の撚り線に分割される9本のHT鋼線を含む。3本の撚り線は共に撚り合わせられ、各撚り線は、更には、共に撚り合わせられた3本の金属ワイヤを含む。コードBは、以下、表3及び表4に示される特徴を有する。
【0142】
図5は、コードA1、A2及びBが、荷重が増加するにつれて増加する剛性を有することを示す(事実、1%未満の伸度の曲線の勾配は、例えば、約3%の伸度の曲線の勾配よりも少ないことに留意されたい)。本出願人によれば、そのような剛性の増加は、金属ワイヤによってテキスタイルコアに発揮される圧縮作用に対する、テキスタイルコアによって発揮される抵抗は、荷重が増加するにつれて増加するという事実に起因するものである。
【0143】
図5は、また、高荷重において、コードBは、コードA1、A2のモジュラスよりも高いモジュラスを有することを示す。本出願人によれば、これにより、2つの矛盾する結果を導く可能性がある。一方では、低いモジュラスは、コードA1、A2が走行中に発生した(長手方向及び側方)応力に対してより低い反応性及びより大きな遅れでの応答につながる可能性がある。しかしながら、その一方で、コードA1、A2の低いモジュラスはより良好なフットプリント形状につながる場合があり、安定性に有利となる。
【0144】
逆に、本出願人は驚くべきことに上記応力に対する本発明のタイヤ100の最適な応答を見いだした。
【0145】
性能(密着性、運転安定性、制御性、指向性、接地性)、順応性(衝撃時のエネルギ吸収)及び快適性の点における本発明のタイヤ100の挙動を評価するために、本出願人は、上記のコードA1、A2を含むゼロ度型のベルト構造を含むタイヤ(このようなタイヤは、故に、本発明のタイヤ100に相当する)と、上記のコードBを含むゼロ度型のベルト構造を含む既知のタイヤ(以下、タイヤB’又は「比較」)とを使用して、数回の比較舗装路試験を実施した。
【0146】
タイヤ100及びタイヤB’をHonda Hornet 600の後輪に装着した。逆に、コードBを含むゼロ度型のベルト構造を有するタイヤを前輪に装着した。
【0147】
リヤタイヤはサイズ180/55 R17を有し、故に、それらは、各々のベルト構造に使用されているコードの種類が異なるという点のみが異なるものであった。フロントタイヤはサイズ120/70 R17であり、且つ同じ構造を有するものであった。
【0148】
試験者は本発明のタイヤ100の挙動に関して非常に良好な全体評価を与えた。
【0149】
特に、試験者により実施された試験は、本発明のタイヤ100が選択した元来優れている比較タイヤの全体的挙動に匹敵する全体的挙動を有することを示した。
【0150】
更に具体的には、試験者は、制御(コールド及びホットスキッド(cold and hot skid))、順応性(バンプ吸収及びキックバック吸収)、快適性、フットプリント下剛率、並びに全般的操縦性の点において比較タイヤに対して与えた評価と実質的に同じ評価を与えた。
【0151】
試験者は、更には、加速におけるステアリング制御、高速度及びカーブにおける安定性、操作後の振動、並びに振動減衰の点において比較タイヤよりも良好な結果を認めた。これら結果は、本発明のタイヤが、比較タイヤのベルト構造に使用されているコードよりも低いモジュラスを有するコードを備えたベルト構造を使用しているという理由から意外であり予期せぬものである。従って、特に、カーブに接近する際及びカーブを出る際(高速での制動、カーブを出た後の加速応答)及び、概して、振動の制御において高速度での挙動に関連する特徴では低下が予想されていた。
【0152】
本出願人は、そのような予期せぬ結果は、上記の交差する緯糸を有する金属構造を画定するコード11のコア12の周りの特定の金属ワイヤ13の配置により、本発明のタイヤ100が、ゼロ度型のベルト構造を有するタイヤに典型的な挙動に加え、交差型のベルト構造を有するタイヤに典型的な挙動も有するという事実に起因するものであっても良いと考える。
【0153】
換言すると、ゼロ度型のベルト構造を有するタイヤに典型的な全般的操縦性、均一性、順応性及び快適性の点における有利な特徴に加え、本発明のタイヤ100は、交差型のベルト構造を有するタイヤに典型的な反応性、応答の迅速性及び振動制御の点における有利な特徴も有する。本出願人によれば、これは、本発明のゼロ度型のタイヤ100のベルト構造内に、(本質的に欠点とされてきたであろう)非金属材料のコアの応力に対する抵抗の低下を補填するだけでなく、更には、通常、交差型のベルト構造を有するタイヤによってより容易に達成されうる技術的特徴をゼロ度型のベルト構造に付与する、交差する横糸を有する上記の金属構造の存在に起因するものであっても良い。
【0154】
概して、ゼロ度タイプのベルト構造の使用は、それがタイヤに均一性の問題を発生させず、直線路におけるより良好な制動を可能にし、自動二輪車に対してより少ない振動並びに凹み及び窪みに対する反応の低下を生じさせ、結果として走行中における自動二輪車の安定性に資するゆえに有利である。
【0155】
その一方で、タイヤがより高いドリフト剛性及びより短い緩和長、即ち、車輪と道路の接触から生じる応力への応答のより少ない遅れを有することが所望される場合は、交差型のベルト構造の使用が有利であっても良い。そのような特徴は、また、十分に最適化されたゼロ度型のベルト構造を有するタイヤにおいて得られても良いが、それらは交差型のベルト構造を使用してより容易に達成しても良い。
【0156】
交差型のベルト構造の使用は、しかしながら、タイヤの不均一性の原因となりうる、及び/又は走行中により大きな横力がフレームに伝達される原因となりうることはもとより、凹み及び窪みへの感度が高くなる(故に、過度の反応性)原因となりうる、及び/又は不均一性又はタイヤが転がり面と相互作用することによって引き起こされるスキッド又は振動への感度が高くなる原因となりうる。
【0157】
本出願人によって実施される試験の結果により、使用されたベルト構造10の特定の形状及び構造のおかげで、本出願人が、同じ製品において、ゼロ度型のベルト構造を有するタイヤに典型的な操縦性の特徴、順応性及び快適性と、交差型のベルト構造を有するタイヤに典型的な反応性及び迅速性特徴とを、本発明のタイヤ100においていかに組み合わせるかを見いだしたことが立証された。
【0158】
有利には、この結果は、ベルトコードにおいて、通常、使用されるHEコードの数よりも少数の金属ワイヤと、軽量材料で作製されたコアとを使用する可能性により重量の大幅な削減も実現することで得られた。中でも、これは、自動二輪車フレームへの力の伝達を低減するためにタイヤのより小さな非懸架質量を提供し、故に、タイヤの回転軸の周りにより低い慣性モーメントを発生させるという利点を有し、更に安定性に有利となる。
【0159】
本発明をいくつかの好適な実施形態を参照して説明した。以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の保護の範囲から逸脱することなく上記の実施形態にいくつかの変更を施しても良い。