(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
誘電泳動、交流(AC)電熱効果およびAC電気浸透の現象は、総称的に交流(AC)動電(ACEK)と呼ばれ、粒子を細胞規模で操作し、分離するために目下使用されている。誘電泳動(DEP)は、不均一な電場中の誘電体粒子の懸濁を伴う。本明細書においてさらに考察されるように、静電容量およびインピーダンスの変化は、例えば、試験中の物質について分子プローブ(例えば細菌抗原など)で被覆された2つ(またはそれ以上)の電極アレイから認識され得る。分極した粒子がそのようなフィールドに懸濁されれば、誘起双極子が粒子全体にわたって生じるとともにフィールドと同調して回転または移動する。さらに、本明細書において記述および考察されるように、AC電熱およびAC電気浸透現象もしくは効果は、ミクロスケールの流れを電極の周囲に誘起し、対流によって粒子/コロイド/高分子を検出用電極に向けて移動させる。
【0004】
櫛歯状の微小電極または2枚の微小間隔で配置された平行板は既知であり、例えば、Capacitive Microsystems for Biological Sensing, V. Tsouti et al., Biosensors and Biolelectronics, 27, (2011), pp. 1-11に記載されている。簡易形態では、静電容量型センサの電極は、特定の間隔および厚さを有する2枚の微小間隔で配置された平行板を含む。2つの電極を有するコンデンサを並列接続したものが形成されてよい。並列のコンデンサの個々の合計が、並列平行なコンデンサの静電容量を構成することは周知である。コンデンサとして説明されるが、インピーダンスを作り出す抵抗成分および誘導成分を含まない完全な静電容量(キャパシタンス)を示すコンデンサはない。さらに、そのような静電容量のマイクロシステムの抵抗成分および誘導成分は、静電容量の成分と比較して表面結合を誘導しにくい。そのようなバイオセンサが特に開発され、例えば、大腸菌およびサルモネラ菌の検出に利用されている。別の電極アレイは、前立腺癌のための前立腺特異的抗原(PSA)検査で知られている。さらに別のプロトタイプテスト集積回路は、ある種のタンパク質検出のために開発されている。
【0005】
ヨーネ病は、マイオバクテリウム・アビウム亜種パラツベルクロシスとして既知の細菌に起因する。ヨーネ病は野生生物および家畜に発症する。畜牛および乳牛などの家畜において、この疾患は、臨床上罹患した動物のミルクの生産量低下(乳牛)、体重減少および早期選別を引き起こす。米国だけで、ヨーネ病は乳牛群の68%に見られ、米国の酪農業界だけで2億2000万ドルの推定年間損失を引き起こす。ヨーネ病は現在、診断検査施設で免疫測定法または酵素結合免疫吸着検定法(ELlSA)または病原体検出法(細菌培養またはPCRが感染または汚染を示す)を用いて診断されている。
【0006】
マイコバクテリウム・ボビスは、動物とヒトの両方でウシ結核を引き起こす。ウシ結核の米国の家畜からの根絶に向けた進展にもかかわらず、ミシガンおよびミネソタなどの州は、同州の野生生物および畜牛事業においてウシ結核と苦闘し続けている。畜牛の強制検査は、ミネソタ州だけで1年に325万ドルの費用がかかる。米国において、ウシ結核の発生により、2008〜2009年に検査および処置のために4000万ドル以上の費用がかかった。野生動物のウシ結核は、現在、肉眼的病変、細菌培養、および皮膚検査の死後検査によって検査されている。
【0007】
マイコバクテリウム・ツベルクロシスによって起こるヒト結核は、世界中で1000万人以上に起こり、毎年200万人の死亡の原因であると推定される。世界中で毎年10億ドル以上がヒト結核の診断および評価に費やされていると推定される。ヒト結核は、現在、X線撮像(従来の胸部X線)、スメア顕微鏡、細菌培養、またはツベルクリン皮膚検査により診断される。
【0008】
乳腺炎は、主に細菌感染によって起こる乳腺の炎症をもたらす疾患である。この疾患は、成体乳牛において最も一般的な死因である。実際に、すべての牛の38%が乳腺炎に罹患していると推定される。乳腺炎は、米国の酪農業に対して推定17〜20億USDの年間経済損失を引き起こす。世界中で、それは酪農業に影響を及ぼす最も費用のかかる疾患であり、500億ドル/年(約310億ポンド/年)と推定される経済損失を招く。大腸菌およびストレプトコッカス・ウベリスは、ウシ乳腺炎の一般的な原因物質であり、それぞれ、その疾患の約18%および5%の原因である。乳腺炎牛の乳の中の細菌数は、10
7細菌/mlに達することがある。泌乳動物の乳腺炎のさらなる徴候は、感染した牛の乳を試薬と混合することにより判定できる体細胞の白血球数であり、形成されたゲルの量が体細胞の数を示し、乳腺炎の徴候も示す。新鮮乳中の細菌の検出および同定は、酪農場における疾患の治療および管理に決定的に重要である。
【0009】
ユニバーシティ・オブ・テネシー・リサーチ・ファウンデーションに譲渡された米国特許第7,517,955号および同第7,812,147号から、「ストレプトコッカス・ウベリス接着分子」すなわちSUAMと名付けられたポリペプチドが、Stephen P. Oliverらからなるチームにより開発された。SUAMは、診断的かつ治療的に使用することができる。これら特許は、「農場側」での診断用に使用できる免疫蛍光乳カード検査および凝集/沈殿検査ならびに結果のために検査室で数時間を要しうる既知のELISA検査をさらに記載する。
【0010】
家庭およびオンサイトにおいて、他の疾患のために開発されたような集積回路(チップ)上のラボラトリや関連する方法論を、数ある診断の中でも、結核、ヨーネ病、乳腺炎および心発作の実例を含む細菌性疾患などの疾患および生理的状態について、野生生物、家畜およびヒトの迅速な検査に利用できるのであれば有益であろう。
【0011】
Dダイマーは、血餅の分解のインジケータであり、そのため、肺塞栓、深部静脈血栓症などの予測因子またはインジケータである。血餅(例えば静脈で生じ心臓に戻る可能性のある血餅)は、致死的である場合が多い。Dダイマーの検出のためのラボ・オン・チップ検査があることが望ましい。
【0012】
高/低糖含有量(例えば、血液および他の体液のグルコース)は、糖関連疾患の他の予測因子の中でも高血糖症または低血糖症のインジケータである。糖含有量についてのラボ・オン・チップ検査は、患者および医師がそのような糖関連の安静を直ちに判定し、既存の方法論との競合の手助けとなりうる。さらに、可能性のある工業用途または商業用途は、例えば、ビール中の糖含有量を検査するためのものである。
【0013】
小分子の検出は、一般に、状態の疾患の予測因子でありうる任意の小分子に関する。具体的には、例えば、妊娠などの状態の一例としてプロゲステロンについて検査することが望ましいであろう。
【0014】
酵素は、例えば、ヒトの器官または骨格構造の生細胞において産生される複合体である。結果として、ELISA検査が利用可能であるが、臓器疾患マーカーであり得る酵素レベルについて、ELISAでは結果を得るために正式な検査室と数日を必要とするであろうものを数分で達成する単純なラボ・オン・チップ検査が必要とされている。
【0015】
別のラボ・オン・チップ用途の可能性は、当技術分野で既知の検査用の他の遅い検査室手段の培養を待つことなく、井戸水の水中の大腸菌群または大腸菌細菌の検査をすることにある。適用および検査を必要とする別の細菌は、連鎖球菌であり、これは例えば連鎖球菌性咽頭炎のインジケータである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の特徴および利点は、以下に記載する詳細な説明を図面と併せることにより一層明らかになり、図面において同じ参照番号は、同一または機能的に類似する要素を示す。
【0029】
【
図1A】一部分において、電極アレイの実施形態として使用され、被覆されてヨーネ病および結核の検出を提供する関連づけられ交錯した電極部分を有する従来のSAW共振子チップの写真を示す図であり、例示的な電極アレイ部分の拡大図をさらに示す図である。
【
図1B】従来のSAWチップの電極の構造を斜視図で見ることのできる3μmのスケールを示す顕微鏡写真を示す図である。
【0030】
【
図2A】本発明の検出方法の例示的なフローチャート図である。
【
図2B】生理的状態、ならびに細菌性疾患、ヨーネ病および結核などの感染症をフィールド検出するための、信号発生器、コントローラーおよびディスプレイと組み合わせた多重電極アレイの例示的な回路ブロック図である。
【
図2C】携帯用疾患診断キットのプロトタイプ、試料を滴下するためのピペット、インテリジェント通信装置へのインターコネクタ、および複数の電極アレイ用のプラグインコネクタ(8本が示される)を示す図である。
【
図2D】オンサイトで検出/診断を取得して送信し、場合によってはインテリジェンス機器/パーソナルコンピュータを介して疾病管理センター/検査室などに結果を送信するか、またはプラグインメモリに局所的に結果を保存するための、例示的なオンサイトプロセスを示す図である。
【0031】
【
図3A】1つの分子に対して縮小された電極アレイの上の電場に捕らえられた分子に適用される誘電泳動(DEP)の現象を示す図である。
【
図3B】
図1の電極アレイの例示的な従来の電極アレイによって引き起こされるような、過剰な回転および方向性のある力を示す例示的な電極アレイの拡大図を示す図である。
【0032】
【
図4】
図1の例示的な電極アレイを用いた、疾患に対して10が検査陰性であり10が検査陽性である20の血清試料に関するヨーネ病についての盲検結果を示す図である。
【0033】
【
図5A】ヨーネ病の診断のための陽性血清、陰性血清、対照試料(1:10抗原および1:20血清)としての緩衝溶液Bの、正規化された静電容量変化のグラフを示す図である。
【
図5B】血清濃度と、ヨーネ病1:80抗原についての静電容量の変化率のグラフを示す図である。
【
図5C】ヨーネ病について、1:80抗原および1:20〜1:80の濃度域から異なる線形結果を示す希釈抗体についての数秒間の時間にわたる正規化された静電容量のグラフを示す図である。
【
図5D】陰性の検査結果と陽性の検査検出、ヨーネ病血清に対する容量変化率(%/分)とそのヨーネ病検出結果を示す10の陰性および陽性の結果とを示す直線状の棒グラフを示す図である。
【0034】
【
図6】インピーダンスの変化のための本発明の方法と、ヒト結核の検出のための広く使用されるELISA検査室の方法との間の比較を示し、陰性および陽性検査について同様の結果を示す図である。
【0035】
【
図7A】100kHzで100mV rms、持続時間2分間における、対照と様々な濃度のμm/mlについての変化率(%/分)の検出限界グラフ結果を示す図である。
【
図7B】印加信号の周波数と経時的な静電容量の変化とによってアナグマの結核検出を示すグラフである。
【0036】
【
図8】
図8は、
図1の回路に対する印加信号の周波数範囲の調査結果をグラフで表す図である。
図8Aおよび
図8Bは、
図1の回路を用いてヨーネ病診断をするための周波数に対する経時的な静電容量の変化を表す図である。
【
図8C】印加信号の周波数に対する経時的なインピーダンスの変化を表す
図8Bと同様のグラフである。
【
図8D】それぞれ、
図1の回路の周波数に対する静電容量およびインピーダンスの経時的な変化を示すグラフである。
【
図8E】それぞれ、
図1の回路の周波数に対する静電容量およびインピーダンスの経時的な変化を示すグラフである。
【0037】
【
図9A】
図1の従来の電極アレイよりも改善された結果をもたらす、基板に構築された電極アレイの顕微鏡写真図を示す図である。
【
図9B】
図9Aに示される電極アレイにおいて繰り返される、分散した25、5、5、25μmのパターンを示す顕微鏡写真を示す図である。
【0038】
【
図10】長いレンジのAC電熱流による対流を利用して、抗原コーティング層とブロッキング層との間に電極アレイがいかに改善された結合結果をもたらすかを示す、
図3Bに類似する図である。
【0039】
【
図11】10の陰性試料および10の陽性試料について静電容量変化率(%/分)間の改善された陰性/陽性の差別化をグラフによって示す例を示す図である。
【0040】
【
図12】濃度(μm/ml)に対する静電容量変化率(%/分)のグラフを示す図である。
【0041】
【
図13】濃度(ng/ml)に対する静電容量変化(%/分)のグラフを示す図である。
【0042】
【
図14】印加信号の周波数に対する経時的な静電容量変化を示す、
図9のウエハアレイについての検出検査限界のグラフを示す図である。
【0043】
【
図15】2つの対照群および1つの実験群を含む病原体検出のための表を示す図であり、実験群には、ストレプトコッカス・ウベリス(乳腺炎の原因物質)細菌が含まれ、試験のために100ミリボルトで短時間に印加された信号の周波数範囲を分析するプロセスが記載される。
【0044】
【
図16A】それぞれ、細菌を除外した陰性対照群(「細菌なし」と標識される)、血清を除去した陰性対照群(「血清なし」と標識される)、および血清と細菌を含む実験群(「結合」と標識される)のグラフを示す図である。それぞれのグラフの各バーは、5kHz〜1MHzの間の印加信号の周波数に対する経時的な静電容量の変化率を表し、
図16Dが示す、50kHz〜400kHz、特に300kHzで印加された周波数は、ストレプトコッカス・ウベリス細菌の検出での使用に適切であると思われるという結論に達する。
【
図16B】それぞれ、細菌を除外した陰性対照群(「細菌なし」と標識される)、血清を除去した陰性対照群(「血清なし」と標識される)、および血清と細菌を含む実験群(「結合」と標識される)のグラフを示す図である。それぞれのグラフの各バーは、5kHz〜1MHzの間の印加信号の周波数に対する経時的な静電容量の変化率を表し、
図16Dが示す、50kHz〜400kHz、特に300kHzで印加された周波数は、ストレプトコッカス・ウベリス細菌の検出での使用に適切であると思われるという結論に達する。
【
図16C】それぞれ、細菌を除外した陰性対照群(「細菌なし」と標識される)、血清を除去した陰性対照群(「血清なし」と標識される)、および血清と細菌を含む実験群(「結合」と標識される)のグラフを示す図である。それぞれのグラフの各バーは、5kHz〜1MHzの間の印加信号の周波数に対する経時的な静電容量の変化率を表し、
図16Dが示す、50kHz〜400kHz、特に300kHzで印加された周波数は、ストレプトコッカス・ウベリス細菌の検出での使用に適切であると思われるという結論に達する。
【
図16D】それぞれ、細菌を除外した陰性対照群(「細菌なし」と標識される)、血清を除去した陰性対照群(「血清なし」と標識される)、および血清と細菌を含む実験群(「結合」と標識される)のグラフを示す図である。それぞれのグラフの各バーは、5kHz〜1MHzの間の印加信号の周波数に対する経時的な静電容量の変化率を表し、
図16Dが示す、50kHz〜400kHz、特に300kHzで印加された周波数は、ストレプトコッカス・ウベリス細菌の検出での使用に適切であると思われるという結論に達する。
【
図16E】各測定周波数、静電容量の変化率ならびに細菌なし、血清なし、および結合の各々の標準偏差のデータ表を示す図である。
【0045】
【
図17】40Hz〜6MHzの間の周波数プロットに対する経時的な静電容量の変化率のグラフを示す図である。それにより、40Hz〜1kHzが、静電容量の変化を読み取るための感度のよい周波数であるという結論に達しうる(dC/Coパーセント変化値が重複しない)。
【0046】
【
図18A】50kHz、150kHzおよび300kHzの各々の集計グラフを示す図である。好ましい300kHz印加信号では、インピーダンス/静電容量測定に対するより明白な差別化のための300kHz印加信号における感度のよい周波数は、ストレプトコッカス・ウベリス細菌の検出(乳腺炎)について
図17に示唆されるように、40Hz〜1kHzの間であることを示す。
【
図18B】50kHz、150kHzおよび300kHzの各々の集計グラフを示す図である。好ましい300kHz印加信号では、インピーダンス/静電容量測定に対するより明白な差別化のための300kHz印加信号における感度のよい周波数は、ストレプトコッカス・ウベリス細菌の検出(乳腺炎)について
図17に示唆されるように、40Hz〜1kHzの間であることを示す。
【
図18C】50kHz、150kHzおよび300kHzの各々の集計グラフを示す図である。好ましい300kHz印加信号では、インピーダンス/静電容量測定に対するより明白な差別化のための300kHz印加信号における感度のよい周波数は、ストレプトコッカス・ウベリス細菌の検出(乳腺炎)について
図17に示唆されるように、40Hz〜1kHzの間であることを示す。
【0047】
【
図19A】白血球計数のための(例えば、畜牛における乳腺炎の検出のための)、基板と、異なる大きさの開口部を有する重ね合わせた電極メッシュの図であり、上部および底部の電極メッシュの間隔を示す図と、どのように試料を重ね合わせた電極メッシュに滴下するかとメッシュに印加される特定の交流信号を示す図と、基板を覆っているメッシュ電極の写真の白黒の線画をそれぞれ示す図である。
【
図19B】白血球計数のための(例えば、畜牛における乳腺炎の検出のための)、基板と、異なる大きさの開口部を有する重ね合わせた電極メッシュの図であり、上部および底部の電極メッシュの間隔を示す図と、どのように試料を重ね合わせた電極メッシュに滴下するかとメッシュに印加される特定の交流信号を示す図と、基板を覆っているメッシュ電極の写真の白黒の線画をそれぞれ示す図である。
【
図19C】白血球計数のための(例えば、畜牛における乳腺炎の検出のための)、基板と、異なる大きさの開口部を有する重ね合わせた電極メッシュの図であり、上部および底部の電極メッシュの間隔を示す図と、どのように試料を重ね合わせた電極メッシュに滴下するかとメッシュに印加される特定の交流信号を示す図と、基板を覆っているメッシュ電極の写真の白黒の線画をそれぞれ示す図である。
【
図19D】白血球計数のための(例えば、畜牛における乳腺炎の検出のための)、基板と、異なる大きさの開口部を有する重ね合わせた電極メッシュの図であり、上部および底部の電極メッシュの間隔を示す図と、どのように試料を重ね合わせた電極メッシュに滴下するかとメッシュに印加される特定の交流信号を示す図と、基板を覆っているメッシュ電極の写真の白黒の線画をそれぞれ示す図である。
【0048】
【
図20A】それぞれ、結果として得られる正規化された経時的な静電容量(1分検査)のグラフを示す図である。特異性の実証が、
図20Aにおける細胞固定、試料番号3853および試料番号4118の曲線に示される。
図20Bは、試料4118の濃度のレベルを体細胞なしと比較して検討し、100倍希釈試料4118が細胞なしと比較して乳腺炎を検出できることを示す。
図20Cは、実験結果の正確さを示すために、時間の変化に対する静電容量の変化と5分の検査時間における体細胞の数(体細胞数またはSCC)とを示す。
【
図20B】それぞれ、結果として得られる正規化された経時的な静電容量(1分検査)のグラフを示す図である。特異性の実証が、
図20Aにおける細胞固定、試料番号3853および試料番号4118の曲線に示される。
図20Bは、試料4118の濃度のレベルを体細胞なしと比較して検討し、100倍希釈試料4118が細胞なしと比較して乳腺炎を検出できることを示す。
図20Cは、実験結果の正確さを示すために、時間の変化に対する静電容量の変化と5分の検査時間における体細胞の数(体細胞数またはSCC)とを示す。
【
図20C】それぞれ、結果として得られる正規化された経時的な静電容量(1分検査)のグラフを示す図である。特異性の実証が、
図20Aにおける細胞固定、試料番号3853および試料番号4118の曲線に示される。
図20Bは、試料4118の濃度のレベルを体細胞なしと比較して検討し、100倍希釈試料4118が細胞なしと比較して乳腺炎を検出できることを示す。
図20Cは、実験結果の正確さを示すために、時間の変化に対する静電容量の変化と5分の検査時間における体細胞の数(体細胞数またはSCC)とを示す。
【0049】
【
図21】妊娠の検出にα−PAG(抗PAG抗体)のコーティングを利用する妊娠検査のための、
図1のSAW電極アレイを作製するプロセスのステップを説明する図である。
【0050】
【
図22A】ぞれぞれ、印加信号の周波数に対する経時的な静電容量の変化のグラフをそれぞれ示す図である。ここで、50kHz以上の範囲の信号を用いて妊娠を検出できると結論づけることができ、陽性と陰性または緩衝溶液とを対比した5回の妊娠検査の概要は、妊娠を検出できることを示す。
【
図22B】ぞれぞれ、印加信号の周波数に対する経時的な静電容量の変化のグラフをそれぞれ示す図である。ここで、50kHz以上の範囲の信号を用いて妊娠を検出できると結論づけることができ、陽性と陰性または緩衝溶液とを対比した5回の妊娠検査の概要は、妊娠を検出できることを示す。
【0051】
【
図23A】それぞれ、最初に複数の間隔の広い電極を設け、次に各広い電極に対して複数の間隔が非常に狭い電極を設けることによって構築され、そのような構築された電極アレイの検出限界を調べるための櫛歯状の電極アレイを示す図と、間隔の広い電極に引きつけられ、その後非常に狭い間隔の電極に結合する動電現象の影響下における模擬引力および粒子の流れを示す図と、例えば1ng/ml、2ng/mlおよび5ng/mlのバイオマーカー濃度の改善された検出を示す図とを示す。
【
図23B】それぞれ、最初に複数の間隔の広い電極を設け、次に各広い電極に対して複数の間隔が非常に狭い電極を設けることによって構築され、そのような構築された電極アレイの検出限界を調べるための櫛歯状の電極アレイを示す図と、間隔の広い電極に引きつけられ、その後非常に狭い間隔の電極に結合する動電現象の影響下における模擬引力および粒子の流れを示す図と、例えば1ng/ml、2ng/mlおよび5ng/mlのバイオマーカー濃度の改善された検出を示す図とを示す。
【
図23C】それぞれ、最初に複数の間隔の広い電極を設け、次に各広い電極に対して複数の間隔が非常に狭い電極を設けることによって構築され、そのような構築された電極アレイの検出限界を調べるための櫛歯状の電極アレイを示す図と、間隔の広い電極に引きつけられ、その後非常に狭い間隔の電極に結合する動電現象の影響下における模擬引力および粒子の流れを示す図と、例えば1ng/ml、2ng/mlおよび5ng/mlのバイオマーカー濃度の改善された検出を示す図とを示す。
【0052】
【
図24A】抵抗またはインピーダンスの実数部に対するインピーダンスの虚数部からなるナイキストプロットによって、本発明の使用による試験結果を示す図である。試験した周波数範囲は1kHz〜110MHzである。
【
図24B】抵抗またはインピーダンスの実数部に対するインピーダンスの虚数部からなるナイキストプロットによって、本発明の使用による試験結果を示す図である。試験した周波数範囲は1kHz〜110MHzである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、井戸水中の細菌の検査、グルコースの検出、酵素レベルの検出、Dダイマーの検出およびプロゲステロン検出などの小分子検出を含むがそれらに限定されない、病原体、疾患および生理的状態、特に他の状態の中でも妊娠、結核、ヨーネ病および乳腺炎の検出のための、例示的な電極アレイ、およびそれらアレイに関連する方法を提供するシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品に関する。電極アレイに好ましいトポロジーの一例は、
図9A、9Bに記載されるが、
図1A、1Bのように市販のアレイを用いてもよい。いずれの場合も、方法は
図2Aによって開示され、他の細菌性疾患の中でも結核、ヨーネ病および乳腺炎の発生率を
図1および9の電極アレイを利用して識別できる。
【0054】
検出検査を最初に考察する。その検査は、市販のSAW共振子集積回路、すなわち、AVX Corporationより入手可能なPARS433.92SAW共振子からの電極アレイを用いて実施された検査であり、その電極アレイを
図2のプロセスに従って被覆および処理して、信号発生器、マイクロコントローラーおよび静電容量/インピーダンスディスプレイ読み出しを含む検出キットを形成したものである。検査はヨーネ病血清試料を用いて実施され、また、畜牛、ヒトおよび野生生物(アナグマ)の結核血清試料を用いる試験も実施された。また、2つの種類、すなわち病原体検出と異常な白血球検出の試験を実施して、乳腺炎を引き起こす病原体(ストレプトコッカス・ウベリス)を検出した。検出限界は、抗体の濃度を変化させることによって試験した。さらに、反芻動物において妊娠のバイオマーカー(PAG)を検出する試験を実施した。その全内容が本明細書に援用される、Li, S.ら(発明者Jie (Jayne) Wuを含む)による、Biosensors and Bioelectronics (2012), "Dielectrophoretic responses of DNA and fluorophore in physiological solution of impedimetric characterization"に報告されるように、この同じSAW共振子チップは、DNAを差別化させるためにうまく使用された。さらに、この検出検査の順調な再現性が考察される。
【0055】
市販の電極アレイを利用した後、第1および第2の好ましい微細加工の電極アレイを設計し、構築し、同様に試験して改善された結果を得た。改良された電極アレイ(
図9および23)および改善された結果の考察につづいて、市販のSAW共振子からの電極アレイの使用の考察をする。コンデンサとして構成された重ね合わされた第1および第2の電極メッシュ/格子状網目もまた、
図19を参照して考察される。
【0056】
ここで
図1Aを参照すると、
図2Aに従って使用される電極アレイ部分130を示すためのに上面図で露出させた、従来の市販のPARS433.92表面弾性波(SAW)共振子集積回路が示される。引き伸ばした形態では、電極アレイは、第1および第2の平行な電極導体からの、均一な間隔を設けられた複数のフィンガーを含む電極アレイ120として現れる。電極アレイの構造は、
図1Bの顕微鏡写真によりよく示され、(アルミニウム製の)各導体が水晶/ガラス基板の上に存在する。本明細書においてさらに考察されるように、当技術分野で既知の他の導電性金属および基板を用いて適した電極アレイを構築してもよい。各フィンガーは、0.5〜100μmの間で同じ幅、(例えば、1〜3μm)、(特に1.7μm)を有し、間隔については、0.5〜100μmの範囲、また、好ましくは1.0〜3μmの間、または約1.6μmの同一間隔または相互分離を有することが分かる。所定の電圧が、例えば約5mVrms〜10Vrmsの範囲(好ましくは10mVrms〜1Vrmsの間)または例えば100〜500mVrmsの間の電圧が、例えば範囲内の所定の周波数で、例えば、20Hz程度の低さ(好ましくは、1kHz)〜5MHzの間、そして特に1kHz〜200kHzで、約1〜10分、例えば、2〜3分間、AC動電効果を誘導するために印加される。
【0057】
完全なシステムを組み立てるために、電極アレイを備えた基板レベルの信号発生器(例えば、血清試料を入れると100mv、100kHzの信号を生成する)、インピーダンスまたは静電容量読み出し装置、インピーダンス/静電容量読み出しへのインテリジェントインターフェースとしてのマイクロコントローラー、およびディスプレイ読み出しを組み込むことができる。下に記載される検査から判断されるように、印加信号の所定の値は、5mVrms〜10Vrms(好ましくは10mVrms〜1Vrms)の範囲で、20Hz(好ましくは1kHz)〜5MHzの間の周波数でありうる。
【0058】
検出検査キットの構築およびそれに対する血清の適用は、
図2Aのフローチャートに記載される。最初のステップ210では、例示的な電極アレイまたは集積回路のアレイ部分の表面を細菌抗原(例えば、ヨーネ病にはマイオバクテリウム・アビウム亜種パラツベルクロシスの抽出物、ヒト結核にはM・ツベルクロシス、妊娠にはPAGに対する抗体、または乳腺炎には病原体に対する抗体)で被覆する。ステップ220では、表面をブロッキング緩衝試薬でブロッキングする。使用できるそのようなブロッキング薬は、Tween20を0.05%と、イリノイ州ロックフォードのThermo Fisher Scientificより入手可能なSuperBlockブロッキング緩衝液を10%含有するリン酸緩衝生理食塩水(pH7.0)を含む。pHレベルは、例えば、2.0〜11.0の間であってよく、7.0が好ましい。当技術分野で既知の他のブロッキング薬も使用できる。被覆されていない表面は、リン酸緩衝生理食塩水Tween(PBST)や他の適した洗液などの洗液で洗浄してよい。電極アレイ装置は、例えば、
図10の断面に見られるような形態、すなわちシリコン(Si)基板またはウエハは、金/チタン、金/クロム、アルミニウム、銅、銀または他の導電材料に従来の蒸着/スパッタリングにより付着させた電極アレイと、その上面のブロッキング層と、その間の抗原コーティング層とを備える形態をとることもできる。電極アレイチップは、一実施形態において、試料の装填の前に信号発生器チップ、マイクロコントローラーおよびディスプレイ読み出しに接続される。顕著なDEP応答(すなわち、細胞のDEP応答などの選択された電気信号による電極への明白な引力または斥力)をもつ生体粒子には、電気信号の周波数および大きさを選ぶことにより、選択的トラッピング/検出と改善された選択性を実現できる。一部の例では、表面の機能化は必要なく、電極は洗浄などを行わずに再使用できる。
【0059】
次に、血清試料(バイオマーカー)をステップ230で装填する。例えば、下に考察されるように、所与のミリボルトレベルおよび周波数信号で動作する電極の被覆された表面の上にピペットで滴下することによって装填する。検査に際して、疾患陽性または疾患陰性の結果となる、盲検および他の検査を実施した。本明細書において考察されるように、血清中の抗体は所与の信号を用いた検査において抗原コーティング層と結合するので、ステップ240で静電容量の変化(またはインピーダンスの変化)が経時的に生じる。血清は、例えば、インピーダンス測定センサ(ラボ・オン・チップ)の用途に応じて、選択された体液、例えば、泌乳する雌動物からの乳、血液、唾液、汗および尿から形成されてよい。
【0060】
いったん電極アレイチップを使用すると、それを洗浄して同じ信号発生器、マイクロコントローラーおよびディスプレイとともに再使用できる。洗浄は、例えば、抗原/コーティングを落とすために、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液または塩酸カリウム/水酸化ナトリウム(KOH/NaOH)溶液または当技術分野で既知の他の洗浄液と併せて、アビジン(糖タンパク質)−ビオチン相互作用またはビオチン/ストレプトアビジン相互作用の使用を含んでもよく、したがって電極アレイを再使用できる。
【0061】
商業生産において、集積回路は、オンチップ信号発生器と、既に塗布された抗原コーティングに露出され、試薬でブロッキングされた電極アレイとを伴って分配されると考えられる。あるいは、抗原およびコーティングは、オンサイトで適用され、ブロッキングされ、ラボ・オン・チップを一回使用して、洗浄した後、その効果のなくなるまで再使用してもよい。一実施形態では、電極アレイは、容易に再使用でき、例えば、複数回の使用および洗浄後にその効力が衰える場合に交換できる個別のチップを含むことができる。本明細書において
図2Bを参照してさらに考察されるように、システムは、マイクロコントローラー、複数の試料アレイ、マルチプレクサー、信号発生器、および、結果を遠隔の検査室または疾患センターまたは他の遠隔施設に通信するためのパーソナルコンピュータまたは通信機器へのコネクターを含んでもよい。この例では、集積回路は、同時に検査することのできる複数の試料を装填する準備ができている。例えば、20の試料を、同一基板上におかれた同様の数の電極アレイによって同時に検査することができる。システム全体は携帯用として構築され、(検査室でなく)フィールドで、例えば酪農場または畜牛の牧場などで、あるいは家でさえも使用可能である。結果は、検査室でのELISA(酵素結合免疫吸着検定法)検査のような数時間ではなく、数分で得られる。また、これまで実施した検査から、本明細書においてさらに考察されるように、所与の濃度で約2μlの血清試料しか必要とせず、満足のいく検出を提供する。結果として、多くの試料を同一のラボ・オン・チップ上で同時に検査できる。そのような量の血清は、遠心機を使用する必要なく、ヒトまたは動物の体液(乳、血液、尿、唾液など)の試料から容易に得ることができる。
【0062】
図2Bは、生理的状態ならびに細菌性疾患であるヨーネ病および結核などの感染症のフィールド検出のための、信号発生器、コントローラー(コンピュータプロセッサまたはメモリ)およびディスプレイと組み合わせた多重電極アレイの例示的な回路ブロック図である。特に、
図2Bの装置は、多試料ホルダー565を備える。多試料ホルダーは、
図1Aの複数の電極アレイまたは
図9のようなラボ・オン・チップを含んでもよく、そこでは検査のための複数の生体試料を同時に受け取るための複数の電極アレイ(図中は3つ)がある。信号発生器570は、制御装置(好ましくはオンボードのデータメモリ(図示せず)を含む当技術分野で既知のマイクロコントローラー554)を多試料ホルダー565に接続するように示される。コントローラー554から信号発生器570へのラインは、所定の信号または電圧レベルおよび所定の周波数を示す制御信号ラインを表し、それにより信号発生器570はそれに応じてユーザーの信号選択に従って信号を出力する。ユーザーの選択した電圧および周波数の信号値は、パーソナルコンピュータ(キーボードを含む)あるいは他のインテリジェント装置、例えばパッドコンピュータまたはインテリジェント電話などから入力され、図示されていないマイクロコントローラーメモリまたは外部メモリに保存される。マイクロコントローラー554はまた、マルチプレクサー562にも接続され、マルチプレクサーはバッファー回路558を介してインピーダンス読み出し回路556と多試料ホルダー565との間に接続されている。
【0063】
図2Bの左側には、パーソナルコンピュータ(例えばUSBポートへの接続、または記憶用メモリーカード)への接続が示される。パーソナルコンピュータは、マイクロコントローラー554からデータを受け取り、通信ポートおよびネットワークを介して疾病管理機関、外部の検査室またはユーザーがデータの送信を望むどんな場所へもデータを再送信するために使用できる。例えば、いったん生体試料が多試料ホルダー565に装填されると、スタートボタンを使用して、検査または検査の複数の同時サンプリングを開始する。検出/診断は3段階で実施してもよい。段階1:スタートが押されたときに、制御信号をコントローラー554に送ってマルチプレクサー562およびインピーダンス読み出しチップ556を起動し、試料ホルダー565からインピーダンスチップ556へインピーダンス読み出しラインを介して多重読み出しを取得する。インピーダンスチップ556は、静電容量/インピーダンス値を、各試料に対して1つずつの1つまたは複数の信号としてコントローラー554に伝え、1または複数の電極アレイに対して初期静電容量/インピーダンス値を設定する。段階2:コントローラー554が信号発生器570を起動して選択された大きさおよび周波数の信号を試料ホルダー565に所定の時間(例えば、10分未満)印加する。これは、巨大分子/生体粒子の電極表面への付着を促進するACEK効果を誘導することを意味する。段階3:コントローラー554がマルチプレクサー562およびインピーダンス読み出しチップ556を再起動し、試料ホルダー565からインピーダンスチップ556へインピーダンス読み出しラインを介した多重読み出しを取得する。これは、所定の時間が経過した後に静電容量/インピーダンス値の終了状態を提供する。インピーダンスチップ556は、静電容量/インピーダンス値を、各試料に対して1つずつ、1つまたは複数の信号としてコントローラー554に伝える。LCDまたは他のディスプレイ552は、サンプルデータ、例えば、静電容量またはインピーダンス値で、ラボ・オン・チップの特定の適用に対する所定の期間にわたって、予め選択された時間間隔で読み出しを提供することができる。これらの周期的値は、マイクロコントローラー554のメモリ(図示せず)に対照とともに一時的に保存される。パーソナルコンピュータを用いて、本明細書において提供されるいくつかの図のように、対照または他の濃度などと比較した、経時的な静電容量またはインピーダンスの変化のグラフによる表示を得ることができる。
【0064】
ここで
図2Cを参照すると、例えば、血液/乳/唾液/尿または他の生体試料をアレイ530に滴下するためのピペット510を備えるラボ・オン・チップの実施形態の完全なキットが示され、そのアレイは、インターコネクタ525を介してキット515のスロットに取り付けることのできる、例えば、8つのアレイのうちの1つでありうる。キット515は、データの遠隔転送処理のために、標準的なコネクタケーブルを介してインテリジェント電話520のポートに接続することができる。
【0065】
図2Dによって、例示的な農場用途が示される。ここで、診断医は、
図2Cのキットを牛舎に持って行き、一部の血液/乳/唾液/尿または他の生体試料を
図1A、9のアレイの予め被覆した表面に滴下し、その後データを例示的なプラグインメモリにローカルに保存するか、あるいはデータ分析または検査室もしくは疾病管理センターもしくは他の遠隔地への遠隔伝送のために、インテリジェント装置520またはパーソナルコンピュータを使用してよい。
【0066】
図3Aを簡単に参照すると、選択電圧および選択周波数で印加された電気信号により生じる電場内で動作する分子の作用の例として、陰性および陽性の誘電泳動が示される。より大きいスケールでAC動電を示す
図3Bをここで参照すると、所与の幾何学的形状を有する被覆された電極アレイに関して、表面速度場(m/秒)で分子が示され、矢印および流線が現象からの速度場を示す。
【0068】
ここで
図4を参照すると、10個の陰性および10個の陽性の20個の試料を含む、ヨーネ病の盲検結果が示され、1分当たりの静電容量の変化率が示される。陰性の最小の結果の値は−8.4539であり、最大の結果は8.2321の%/分の静電容量変化率であった。陽性の検査結果は、最小が−15.0843であって最大負数が−65.0035の%/分の静電容量変化率であり、顕著な違いを示す。陽性と陰性検査との間には約−11%で明らかな境界がある。また、平均も−36.14971と比較して陰性が−1.28953と示され、この場合も陽性検出と陰性検査との間の明らかな境界線を示す。ヨーネ病の盲検は異なる学生が20試料の試験を実施することでも行われ、同様の結果、すなわち陰性が−5〜+5%/分に対し、陽性検出は−20〜−30%/分であった。
【0069】
ここで
図5Aを参照すると、ヨーネ病の診断のための陽性血清、陰性血清と、対照試料として緩衝溶液(1:10抗原および1:20抗体の血清濃度)の静電容量変化の正規化したグラフが示される。データは500mVrmの選択電圧および100kHzの選択周波数で電極アレイに印加された電気信号によって得られた。検査の持続時間は、200秒、または3分以上の実行として示される。対照と比較した検査結果(陰性/陽性)は、検査室の検査と比べて約1分以下で見ることができる。
図5Cは類似している。
図5Cに示されるのは、血清濃度が、対照レベルに達するグラフの形態で表示されるように、経時的に測定された静電容量/インピーダンスがなくても1:1〜1:80で変動することである。1:120〜1:200の濃度は、対照と区別するには弱すぎる。
図5Bは、1:80のヨーネ病に関する静電容量の変化率%と血清濃度のグラフで、
図1のラボ・オン・チップで所定の検査期間、この適用では約120秒すなわち2分間、100kHzの周波数で100mVの信号を印加したものである。本明細書において考察されるように
図8のラボ・オン・チップから改善された結果が得られる。
図5Dは、陽性検査検出と比較した陰性検査結果を示す直線状の棒グラフを提供し、ヨーネ病血清の容量の変化率(変化%/分)に対する10の陰性と陽性の結果は、明白な閾値分析を伴うヨーネ病検出結果を示す。
【0070】
チップ間の再現性は、同じ検査試料を5つの異なる被覆電極で用いることにより試験した。5つすべての被覆チップ試料を、同じ血清試料に対して同様の容量性の変化率、−20%/分〜−28%/分の間で検査した。血清間の再現性もヨーネ病の異なる血清試料を用いて試験した。10の陽性試料を10のチップで検査し、結果の範囲は−20〜−28%/分の静電容量変化であった。
【0072】
11のヒト結核試料を、
図2の方法によって検査した(陽性6および陰性5)。各試料は2回検査した。試料1は、1回目の検査で経時的に39.0679%の静電容量の変化を示し、同じ試料の2回目の検査では、26.7147%の平均値に対して14.3615%を示し、疾患に対する陽性検査という結論になった。25の値を適切な閾値であると決定した。他の平均の陽性結果には、42.89935、45.7834、71.02315および92.9081が含まれた。これらは21.95305、21.12935、11.1021、9.37895および8.49295で、25の閾値よりも小さい陰性の平均結果に匹敵する。
【0073】
図6を参照すると、ヒト結核の検査結果がELISAを用いる結果と比較される。陰性および陽性の結果が示され、それによって現在の検査プロセスおよびELISAが同様の結果をもたらすことが分かる。また、ヒト結核検査結果を比較し、経時的なインピーダンスZ変化率の読み出しを、等しい結果をもつ経時的な静電容量Cの読み出しに対して取り出した。言い換えれば、経時的インピーダンスは、静電容量に対して経時的に等しく測定することができる。
【0074】
図7Aを参照すると、100mVrmsの信号を100kHzで所定の持続時間、この結核用途では2分間印加した、数μm/mlの様々な濃度と対照についての変化率(%/分)の検出限界グラフ結果が示される。この目的は血清濃度の限度を決定することである。このように、1〜10μg/mlの範囲の濃度の抗体は、対照と比較して明白な差異が生じる。0.1μg/mlの濃度は、場合により容認できるかもしれない。
【0075】
ここで、10の陰性および10の陽性(合計20)のアナグマ結核試料を検査し、静電容量変化率を経時的に測定した、ウシ結核検査の結果を考察する。
【0076】
結果を示す表を下に記載する。
【表1】
【0077】
上記の表から、ELISAの結果と比較して合計20の試料のうち陰性となるはずであった3つの試料が、検査で陽性となったことが分かる。しかし、アナグマ試料に対するウシ結核検査は85%の精度を示した。
図9の電極アレイの改良が結果の改善をもたらすと思われる。
【0078】
ここで
図7Bを参照すると、1:10濃度の抗原および1:20濃度の血清とを用いた
図1のSAW共振子電極アレイでのアナグマ結核診断についてのグラフで、1.1μm当たり100mVの電圧低下信号を120秒間印加し、1キロヘルツ〜5メガヘルツの間を変動する周波数におけるグラフが示される。グラフの分析から、静電容量の経時的データの変化を読み取るには、10キロヘルツ〜30キロヘルツが好ましい周波数範囲であると結論づけられる。同様の試験をヨーネ病の検出について実施した。それをこれから
図8を参照して考察する。
【0079】
まず
図8Aを参照すると、1:10濃度のパラ結核菌(M.paratuberculosis)(MAP)抗原および1:20濃度の血清を用いた
図1のSAW共振子電極アレイでのヨーネ病診断のグラフで、1.1μm当たり100mVの電圧を所定の持続時間、この適用では120秒すなわち2分にわたって印加したグラフが示される。グラフの分析から、静電容量の経時的データの変化を読み取るには、約10キロヘルツ〜100キロヘルツが感度のよい周波数範囲であると結論づけられる。
図8Bおよび8Cでは、印加信号および濃度は変化しないが、
図8Bおよび8Cは、印加信号周波数に対する5つのバイオマーカー試料とおよびそれらの平均の経時的静電容量データの変化のグラフを表し、
図8Cでは、周波数に対する経時的なインピーダンスデータの変化について同様の結果がもたらされる。試験は、
図8Bおよび8Cにおいて約40ヘルツから6メガヘルツまで実施された。
図8Bから、静電容量を読み取るには、1キロヘルツ〜10キロヘルツが感度のよい周波数範囲であると結論づけられ、一方、
図8Cから、インピーダンス変化データを経時的に読み取るには、1キロヘルツ〜50キロヘルツが感度のよい周波数範囲であると結論づけられる。結果として、
図8Bおよび8Cから、静電容量かまたはインピーダンスデータを読み取るには、印加信号が1キロヘルツ〜50キロヘルツの範囲内であるべきであると結論づけられる。
【0080】
図8Dおよび8Eも、
図1の回路ならびに同じ抗原および血清濃度を用いる、ヨーネ病の検出のための、印加信号の周波数に対する経時的な静電容量の変化と経時的なインピーダンスデータの変化のグラフを表す。試験した周波数範囲は、この場合も約40ヘルツ〜6メガヘルツである。
図8Dの分析は、10〜100キロヘルツが、静電容量データを読み取るための印加信号の感度のよい周波数範囲であることを示し、
図8Eは、それよりも低い周波数範囲である1キロヘルツ〜10キロヘルツが、インピーダンスデータを読み取るための印加信号の感度のよい周波数範囲であることを示す。
【0081】
ウシ結核とヨーネ病についての、またウシ結核についての上記の考察結果は、発明者S. EdaおよびC. A. Speer(テネシー大学)に2008年9月9日発行の米国特許第7,422,869号および2010年5月11日発行の同第7,713,715号に記載される方法を用いて、マイコバクテリウム・ボビスおよびM・パラツベルクロシスのエタノール抽出物を用いた。
【0082】
改善された性能を有する代替電極アレイ
【0083】
図9Aは、基板上に構築された電極アレイの顕微鏡写真図を提供する。これは
図1の従来の電極アレイよりも改善された結果をもたらす。基板は、直径10cm程の大きさであり、生物学的検査試料を受け取るための20の電極アレイを備える。上述するように、
図9Aの電極アレイは、シリコンの基板を提供し、フィンガーとフィンガー間の空間が繰り返されるパターンと、1または2mlの試料の付着(濃度レベルによってはマイクロリットルの付着も)を考慮して、できるだけ多くの試料受け取り場所を提供するために周知のフォトリソグラフィー処理を用いて構築される。
図9Bは、
図8Aに示される電極アレイにおいて繰り返されている分散された5、5、25、25μmのパターンを示す顕微鏡写真を提供する。第1の電極は、25.1876μmの幅を有することが示される。次に、幅5.140960μmの空間が置かれる。次の導体の幅は5.497225μmである。パターンが繰り返される前の最後の分離は25.09273μmである。
図9Aから、複数の試料を同時に受取り検査するために複数の電極アレイを同一のチップの表面に配置できることに留意されたい。他の電極構成には、ピンラインコプラナー電極および対応パターン電極が含まれうる。不均一な電場を生成する微小電極設計をラボ・オン・チップとして実装してもよい。コンデンサとして形成される電極メッシュは、
図19を参照して考察され、さらなる電極アレイが
図23を参照して考察される。
【0084】
図10は、電極アレイがどのように抗体コーティング層に対する抗原/病原体の間の結合結果の改善をもたらし、長いレンジのAC動電性マイクロ流を引き起こすのかを示す、
図3Bに類似した図を提供する。電極アレイは、シリコンSiの基板905を含む。5、5、25、25、5、5、25、25のフィンガー/空間パターンは、基板に全体にわたって繰り返され、それにより+Vcosωt、−Vcosωt、+Vcosωtおよび−Vcosωtが所与の電圧および周波数の印加信号により生成される。抗体コーティング層920に対する抗原/病原体が上に示され、抗体に対する抗原/病原体は、AC動電により分子を結合させるか、または結合させない、Y型の受容体として現れる。抗体コーティング層に対する抗原/病原体の分子は、5μmのフィンガーと25μmのフィンガーとの間の5μmの空間に向かって移動し、25μmの空間から離れた後、再び戻ることが示される。
図9の設計と
図1の設計との比較から、1μmとおそらく100μmとの間のフィンガー値の範囲が細菌性疾患の検査に成功しうると結論づけることができる。同様に、成功した検査結果をもつフィンガー間の空間の範囲は、1μmとおそらく100μmとの間の範囲でありうる。金/クロムを電極の組成に使用したが、金/チタン、金、銀、アルミニウムおよび銅などの他の導電性金属を利用してもよい。また、コーティングのない電極と比較したコーティングの適用の有効性も本明細書において後で考察される。
【0085】
実際には、20回のヨーネ病検査を、以前のように10の陰性および10の陽性を用いる
図1の電極アレイを用いて実施し、以下の結果を得た。陰性の検査について、この範囲は−2.6356〜+0.7537%の間の変化であった。陰性の検査について、範囲は−52.3152〜−83.8032%の間の変化であった。これらの範囲は、ヨーネ病のための、微細加工の5−5−25−25チップと市販の電極アレイとの間における容量性の変化率の間の差別化が大いに改善されたことを示す。これらの検査での印加信号は、500mVで100kHzであった。
【0086】
図11は、ヨーネ病の10の陰性試料および10の陽性試料についての静電容量変化率(%/分)間の陰性/陽性の差別化が改善されたグラフの例を提供し、結果の間において著しい差異を示す。
【0087】
図12は、濃度(μm/ml)に対する静電容量変化率(%/分)のグラフを提供し、
図9のチップを用いた検出限界を示す。グラフを見て分かるように、0.01μg/ml程度の低い濃度が500mVの信号および100kHzの信号周波数で許容される結果を示した。
【0088】
図13は、濃度(nm/ml)に対する静電容量変化率(%/分)のグラフを提供する。信号の強度は、1Vrmsまで上昇し、許容できる検出レベルは、グラフから0.5ng/mlの濃度で見られる。
【0089】
図14は、100ng/mlの濃度および5μmの電極フィンガー当たり500mVでの印加信号に対する、
図9のウエハでの検出検査のさらなる限界を提供する。ここで、経時的な静電容量変化が10キロヘルツ〜10メガヘルツの印加信号周波数に対してグラフ化される。これらの検査は、約40ヘルツから約6メガヘルツの周波数範囲で300秒(5分)にわたって実施した。
図14のグラフの分析から、10〜100キロヘルツの周波数範囲が、
図9のウエハに関して経時的な静電容量変化データを読むうえで感度のよい周波数範囲であると結論づけられる。これは
図1のSAW電極アレイの感度のよい周波数範囲と比較して遜色がない。
【0091】
ここで
図15〜19を参照して、乳腺炎の病原体検出を考察する。ここでは、乳試料が泌乳動物から採取される。ストレプトコッカス・ウベリスは、連鎖球菌の一つの種である。タンパク質Gは、タンパク質Aによく似ているが異なる特異性をもつCおよびG群の連鎖球菌細菌で表される免疫グロブリン結合タンパクである。それは、そのFc領域との結合を通じて抗体を精製することに用途が見出されている65−kDa(G148タンパク質G)および58kDa(C40タンパク質G)の細胞表面タンパク質である。タンパク質Gは、
図15に示されるラボ・オン・チップおよび細菌のブロッキングで用いられる実験群および対照群の検体の各々の調製に使用される。
【0092】
図15を参照すると、2つの陰性対照群および1つの実験群が病原体検出に関与した。
図15のように、タンパク質Gを、上記のように電極アレイを被覆する際に用いる加湿装置で10μm/mlの濃度および2mlの量で一晩インキュベートする。「ブロッキング」と識別される区域では、対照(血清なし)、「緩衝液B」は、0.1倍の濃度、2マイクロリットルの量、1時間で示される。実験のブロッキング溶液は、「緩衝液B」に1:10希釈された血清を含んでよい。アレイは、0.1倍の濃度のPBSTを2マイクロリットル用いて、2回洗浄した。
図15の「細菌」部分は、1×10
7の細胞数(乳細菌数で達する、同じ細胞密度/細菌ml)のS.ウベリス細菌を含み、実験群として0.1倍のPBS溶液中2マイクロリットルを用いる。細菌を含まない対照は、0.1倍の濃度および2マイクロリットルのPBSであってよい。
【0093】
3回の周波数掃引を
図15について病原体検出のために実施した。掃引1は、5mVの信号強度で40Hz〜6MHz、1秒間であった。掃引2は、100ミリボルトの信号強度であり、201の測定ポイントをとる掃引周波数は、5kHz、10kHz、20kHz、50kHz、100kHz、300kHz、500kHz、800kHzおよび1MHzであった。3回目の周波数掃引(掃引3)は、40ヘルツ〜6MHz、1秒間(「掃引1」に類似)、5ミリボルトrmsであった。掃引2は、適切な周波数を調べて経時的な静電容量の変化を維持するための実験的な掃引で、異なる周波数で病原体検出コーティングの細菌溶液結合を対照群と比較することにより、対照の静電容量の変化に対する細菌性疾患(乳腺炎)の診断を示す。これらの結果は
図16に示される。
【0094】
ここで
図16Aを参照すると、細菌を含まない0.1倍濃度のPBS中の対照群血清についての経時的な静電容量の変化率で、掃引2の結果のみのグラフが示される。細菌を含まない陰性対照群は、信号が400kHzである場合の経時的な静電容量の最大変化率を示す。800kHzおよび300kHzで、経時的な静電容量の変化率は、わずかに低下する。50kHzでは、経時的な静電容量の変化率は、さらにより低下する。
【0095】
ここで
図16Bを参照すると、特異的血清抗体を含まない、陰性対照群溶液についての経時的な静電容量の変化率で、掃引2の結果のみのグラフが示される。陰性対照群は、信号が800kHzである場合に経時的な静電容量の最大変化率を示す。掃引のすべての他の周波数で、静電容量の変化率は著しく低かった(良好であった)。
【0096】
ここで
図16Cを参照すると、掃引2の結果のみの、抗体血清との細菌溶液(S.ウベリス/乳腺炎)の結合についての経時的な静電容量の変化率のグラフが示される。細菌溶液群は、信号が300kHzおよび再び50kHzである場合に、経時的な静電容量が最大変化率を示す。100および200kHzでの、静電容量の変化率はそれよりも低い。
【0097】
これらの結果は、
図16A、BおよびCの結果を互いに重ね合わせた結合グラフである
図16Dに要約される。図中、グレースケールは、各周波数に対して、経時的な静電容量の変化率が、左から右へ、血清なし、細菌なし、結合の順序で示されることを示す。
図16D中のすべての周波数ポイントで、800kHzの周波数結果を除いて、結合が血清および細菌対照を上回る。グラフから、50kHz〜4000kHzの間で、100mVで60秒間(掃引2信号変パラメータ)信号を印加すると、S.ウベリス結合と陰性対照とを適切に区別すると結論づけることができる。
図16Eは、取得したすべてのデータおよびすべてのポイントについて計算した標準偏差の図を提供する。
【0098】
ここで
図17を参照すると、60秒ごとの掃引3〜掃引1により計算されたグラフを示し、経時的な静電容量の変化率の曲線が9つの異なる周波数で反応から平均された変化を示す。グラフから、40Hz〜1kHzの間が、その範囲における陰性対照群(血清なしまたは細菌なし)に対する実験群(結合)の差別化により、経時的な静電容量の変化率を読み取るための感度のよい周波数範囲であると結論づけられる。
【0099】
図18A、18Bおよび18Cでは、60秒ごとの掃引3〜掃引1により計算された経時的な静電容量の変化率のそれぞれのグラフを示し、経時的な静電容量の変化率曲線は、
図16Dから計算された好ましい信号周波数である50kHz、150kHzおよび300kHzの信号で調査された。このグラフから、静電容量またはインピーダンスの変化率を40Hz〜2kHzの間などの低い周波数で取得する場合に、より顕著な差異があると結論づけることができる。これらの周波数の間で、実験群(結合)の300kHzに関して最も低い曲線(
図18C)が、300kHzの細菌なしまたは血清なしの陰性対照群よりも著しく大きい静電容量の変化率をもたらすことに留意されたい。10kHzより上で、細菌なしおよび血清なしの実験群(結合)は、より近づき合うので、結合は容易に区別することができない。また、これらの周波数の間で、50kHzの印加周波数で2番目に低い曲線である結合は、100Hz〜1KHzの周波数の範囲の真上で細菌曲線と区別され、差異はそれほど顕著ではないが、その後、例えば10kHzで再び離れることに留意されたい。
図18Bの150kHzの組み合わせは、周波数スペクトル全体にわたって明白な結合の検出を示すと思われる。要約すると、このグラフから、乳腺炎/S.ウベリスの差別化は、150kHzまたは300kHzの信号周波数および40Hz〜10kHzの間のが好ましいと思われる。記載されるように、細菌は被覆された電極アレイでの100mVの印加信号で60秒すなわち1分の検査によって区別できる。
【0101】
図19Aは、白血球計数のための、例えば、畜牛における乳腺炎の検出のための、基板と、異なる大きさの開口部を有する重なり合った電極メッシュとの図を提供する。体細胞計数は、乳試料中の体細胞(好中球などの免疫細胞免疫細胞)の数を測定する。
図19Aによれば、例えば100μmの開口部をもつ上部電極メッシュを含む電極アレイ、例えばそれよりも小さい50μmの開口部をもつ底部電極メッシュに重ね合わされ、間隔をおいて配置されている。目的は、
図19Aの実施形態が上記のように静電容量の変化による体細胞計数によって乳腺炎を検出する機会を促進するように、本当のバイオマーカー試料が上部および底部電極メッシュを通過し、例えば試料リザーバまたは開口部(図示せず)に達し、試料が収集され、かつ/またはアレイからきれいに除去されることである。実際には、検査下の泌乳動物、畜牛、ヤギ、ヒツジなどに応じて、上部電極は10〜500μmの間の開口部(好ましくは50〜150μmの間の開口部)を、底部電極は5〜150μmの間の間隔(好ましくは20〜80μmの間の間隔)を有してよい。
図19Bは、上部と底部の電極メッシュ(2枚のコンデンサ板)の間の間隔を示し、2枚のメッシュまたは格子状網目はコンデンサを形成する。本明細書および特許請求の範囲において使用されるように、第1の「メッシュ」は、網状パターンを有する、例えば、開口部の有無にかからわず第1の電極アレイを含む長方形の網状電極を含む。下側のメッシュは、同様に開口部を含んでいてもいなくてもよい。言い換えれば、メッシュはソリッド状であってもよい。第2のメッシュは、第1のメッシュの下に示され、コンデンサを形成するためにメッシュ間に間隔を備えている。
図19Aの実施形態では、試料が通過してリザーバに達する。別の実施形態では、パターン化された網状メッシュは、開口部のないソリッド状の体表であってよく、試料は、コンデンサを形成する2枚のメッシュの上部に載せられるか、またはソリッド状の底部のメッシュまで上部のメッシュを通過するかもしれない。
図19Cは、どのように試料を覆っている電極メッシュに滴下するか、およびメッシュに印加される特定の交流信号を示す図を提供する。
図19Dは、基板の上に重なるメッシュ電極の写真の白黒の線画、および一実施形態の重ねた電極メッシュを示す拡大図を提供する。
【0102】
試料3853は、例えば、1.92×10
6粒子/mlの粒子密度を含み、試料4118は、3.5×10
6粒子/mlの粒子密度を含みうる。これらの試料は、泌乳動物から採取した体細胞(乳)試料を含む。
図20Aは、結果として得られる正規化した経時的な静電容量(1分検査)のグラフを提供し、
図20Aには、細胞固定(細胞なし)、試料番号3853および試料番号4118の曲線が示される。実験方法は、上記の装置について使用されたものと全く同じである。四角の中に示される細胞固定(細胞なし)溶液および試料3853のの静電容量は、
図19の重ねた電極メッシュアレイへの100kHzの印加周波数および500mVの電圧の印加信号による1分(60秒)の検査で5.469%および1.13065%増加した。
図20Bは、100倍希釈試料4118が細胞なしと比較して乳腺炎を検出することを示すために、体細胞なしに対する試料4118の濃度のレベルを検討する。同じ500mVの走査電圧および100kHzの周波数を印加した。純粋な4118は、
図20Aにおいて−0.9%で示されるように−1.54%の静電容量の負の変化を示した。一方、100倍希釈4118は、2.15%の静電容量の正の変化を示し、10倍希釈4118は、1.27%の静電容量の正の変化を示した。
図20Cは、時間の変化に対する静電容量の変化に対する、5分検査の体細胞数のグラフを示す。静電容量変化率と乳中の体細胞数との間に強い相関が見られ、この方法が乳腺炎の診断に有用であることを示す。グラフにおいて、y=−1.874ln(x)+14.517であり、R
2=0.8763である。200K体細胞/mlの良好なカットオフ値で、検査の感受性および特異性は、それぞれ94.7%および100%であると計算される。結果は5分で得られた。これはインラインシステムで使用するのには十分短く、高い精度を実現する。同様の結果が2つの他の別々の実験で得られた。検査パラメータを変更することによるか、またはある程度の精度を諦めることにより、より短い持続時間の検査が可能である。ヨーロッパでは、乳が販売できるかどうかを決定するのに400kの体細胞数が使用される;米国では、販売できる乳を決定するための体細胞数値は750kである。これらの数字は、体細胞数のカットオフのためのそれぞれの場所で利用されてよく、同様の感受性および特異性を実現することができる。
【0104】
図21は、IDEXXより入手可能な妊娠検出用のα−PAG(抗PAG抗体)のコーティングを利用する、妊娠検査のための
図1のSAW電極アレイを作製する工程のステップを説明する。第1のステップは、SAWアレイを、1倍のPBS中10μg/mlのタンパク質Gによって室温の加湿装置内で一晩処理することである。次に、アレイを0.1倍のPBSTで1回洗浄する。次に、IDEXXより入手可能なα−PAGを装填し、約1時間室温で保持する。再び、装填したアレイを0.1倍のPBSTで洗浄した後、0.1倍のBで約30分〜1時間、室温でブロッキングする。
【0105】
検査は、陽性もしくは陰性の実験群として希釈を最適化するように血清を1:5〜1:20で装填することを含み得る。また、0.1倍の緩衝液Bも対照群として装填されてよい。
【0106】
掃引およびデータ収集の工程は、周波数にわたって静電容量の値を初期化するために、約5mVを40Hz〜6MHzの間で1秒間印加することを含みうる。次に、印加信号は、対照および実際の試料について経時的に静電容量を記録する約1分の検査のために、100kHzで100mVとなり得る。次にプロセッサが、経時的な静電容量の変化を初期静電容量掃引の関数として計算する。
【0107】
図22Aおよび22Bは、それぞれ、印加信号の周波数に対する経時的な静電容量の変化のそれぞれのグラフを提供する。ここで、50kHz以上の範囲の信号を用いて妊娠を検出することができ、妊娠の陽性対陰性または緩衝溶液に対する5つの検査の概要は、妊娠を検出できることを示し、また概略的に示されると結論づけることができる。
【0109】
図23Aは、最初に複数の広く間隔の開いた電極を設け、次に各広い電極に対して複数の非常に密な間隔の電極を設けることによって構築した櫛歯状の電極アレイの図を提供し、そのように構築された電極アレイの検出限界を調べる。この設計および検査の目的は、バイオマーカーを狭い複数の平行な対称性の電極に引きつけるために、間隔の広い非対称の電極および幅広の電極を含むアレイ構造の検出限界を調査することである。非対称性の電極の広い間隔の具体的な寸法は、上から下にむかって:D1、第1の非対称性の電極の幅は22.89946μm(約20μm);D2、櫛歯状の幅広な非対称の電極間の第1の間隔は、9.159782μm(約10μm);D3、非対称で櫛歯状の電極間の広い間隔は、29.31130(約30μm)、そしてD4、最も幅広の非対称な電極の幅は59.53359μm(約60μm)と読める。続いて、狭い間隔で配置された幅の狭い複数の対称性の電極が、
図23Aの底部の拡大図に特に詳細に示される。拡大図は、以下の対称な電極の間隔と幅を示す:D3、複数の対称な電極の全幅は、約30μmであり;D4は、対称な電極間の約1.5μmの間隔であり、そしてD2は、1つの対称性の電極の幅、すなわち約2μmである。新しい電極での検出限界検査は、対称および非対称の櫛歯状電極の組合せとして電極パターンを形成することを含む。それにより、非対称の電極は、より多くの粒子が対称の電極に引きつけられて結合するように、流れを生成するのに役立ちうる。非対称のパターンは、概略で10/20/30/60であり、対称のパターンは、概略で1.5/1.5/1.5/1.5(または2/2/2/2または交錯した1.5/2のパターン)である。
【0110】
図23Bは、間隔の広い電極に引きつけられ、その後間隔の非常に密な電極に結合する動電現象の影響下における模擬的な引力と粒子の流れを示す図である。矢印は、流れを表し、線は間隔の広い電極によって決定される指定領域の方向への粒子の対流を示し、そこには間隔の狭い電極が位置する。
図23Cは、例えば、1ng/ml、2ng/mlおよび5ng/mlのバイオマーカー粒子の濃度の改善された検出を示す図である。静電容量の変化は、1ng/mlの濃度から2ng/mlの濃度へと2倍になり、その後5ng/mlの濃度で再び2倍になることが見られる。ここで検査は、57.5kHzの信号周波数を印加して実施した。対照1および2も、静電容量の正の変化を呈するとして(低濃度の0.5ng/mlが示すように)示される。この場合も、検出限界の実験は、対称の電極に粒子を引きつけて結合させるには、幅の狭い電極と幅の広い電極を組み合わせた櫛歯状の電極が好ましいことを示すようである。
【0111】
上記の結果が示すように、記載されるように被覆され、所与の大きさ、周波数および短い時間(例えば10分未満)で信号を受信するために作成されたラボ・オン・チップのいくつかの実施形態は、迅速な、フィールドでのまたは臨床での(抗原、病原体、異常な白血球数による)いくつかの感染症の診断、および、例えば、妊娠などの身体的状態のためのタンパク質検出に使用される可能性が非常に高い。
【0113】
一例であるがプロゲステロンの小分子検出のためには、ラボ・オン・チップの構築および検査の手順は上記のものに非常に類似している。プロゲステロンレベルは妊娠の検査手段となりうる。ウエハ上の5/5/25/25μm電極を利用した。しかし、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン(APTES)による処理の影響を分析して、そのような処理が経時的な静電容量の変化率に何らかの影響を及ぼしたかどうかを判断した。
【0114】
特に、小分子検出のために、例えば、プロゲステロン、抗プロゲステロンポリクローナル抗体を、電極表面の0.1倍のPBSに添加し、例えば、一晩加湿装置で(例えば、4〜8、好ましくは6時間)インキュベートした。インキュベートすると、電極を、例えばPBS−Tで、例えば3回洗浄してよい。次に、0.1倍の緩衝液Bを用いて、ブロッキングが確実にうまくいくように、例えば30分間を越えてブロッキングを実施する。次に、抗プロゲステロンポリクローナル抗体でブロッキングした電極をPBS−Tで、例えば3回洗浄する。
【0115】
検査は、そのままの0.1倍の緩衝液Bを対照として、0.1倍の緩衝液B中、1ng/mlから出発し、プロゲステロンの濃度が10,000ng/ml程度の高さまでの漸増する様々な濃度のプロゲステロンを添加することにより実施した。当該検査では、3つのチップを検査した。濃度レベルは、10ng/mlプロゲステロンについて、経時的な静電容量の変化のない対照から、約4.2dC/dT(%/分)まで、その後、約10.1dC/dT(%/分)までの増加をもたらした。10ng/mlに関して、CVは1.7%であった。その後、より高い濃度レベルのプロゲステロン、例えば、100ng/mlまたは1000ng/mlを検査すると、検査のdC/dT %/分はなお示されたが、このレベルは約2.5dC/dTに低下し、より高いレベルのプロゲステロンに対する飽和が示唆される。
【0116】
上述のように、APTES処理も試みたところ、結果は興味深いものであった。具体的には、エタノールアルコール中、約2v/v%のAPTESを添加し、63℃で約4時間インキュベートした後、二重蒸留水で3回洗浄し、乾燥させた。エアガンを用いて乾燥を速めてもよい。APTESで処理した表面は、エアガンで非常に速く乾燥し、顕微鏡で調べるとクラスターは生じなかった。
【0117】
次に、2.5%グルタルアルデヒド溶液を添加し、約2時間室温でインキュベートした。次に電極を二重蒸留水で3回洗浄した。電極はプロゲステロン抗体を添加する前に、上記のように乾燥されなかった。最後に、100mMエタノールアミン溶液を添加し、室温で1時間インキュベートした。プロゲステロンの装填のための準備の残りは同じで、すなわち0.1倍の緩衝液Bで30分超のブロッキングとPBS−Tによる洗浄であった。
【0118】
プロゲステロンを0.1倍緩衝液B中1ml当たり0(対照)と1ng、0.5ng、1ng、5ng、10ngおよび100ngの濃度のレベルで、APTES処理チップに添加した。測定値を下の表にまとめる。ここで、dC/dT(%/分)は、100kHzの周波数で実施し、電圧レベルは500mVであった。
【表2】
【0119】
APTES処理の有無を比較した検査結果は、経時的な静電容量の変化が、APTES有りでは無しと比較して上昇することを示す傾向がある。例えば、1ng/mlと、5または10ng/mlとを比較すると、APTES無しと比較して例えば9から6、そして5まで飽和が小さくなることを示し、10ng/mlの1.2909の結果は、1.2019の対照とほとんど区別がつかない。そのため、上記のようにAPTES処理が小分子の検出に役立つと結論づけることができよう。
【0120】
(例5−凝固のインジケータとしてのDダイマー)
【0121】
緊急な状態は、手術後または活動的な生活の間に起こりうる。Dダイマーは凝固のインジケータである。次の一連の検査において、PPyで被覆した電極を、被覆していない電極と比較した。被覆したチップを作製するには、いくつかのステップが含まれる。チップは、0.1M二塩基性硫酸ナトリウムで3回清浄した。次に、70μlのピロールを930μlの硫酸ナトリウムに添加して、0.1Mピロール/0.1M硫酸ナトリウムを作製することによりポリマーコーティング溶液を調製した。次に、0.1mピロール/0.1M硫酸ナトリウムを5/5/25/25μmウエハに装填することにより、ポリマーを電気化学的に付着させた。約1.5ボルトを約5秒間室温で印加して、コーティングを付着させ、ウエハをPBSで2回洗浄した。ポリピロールで被覆したチップ表面に抗原を装填するかまたは機能させるために、抗Dダイマー抗体を0.1倍PBS中10μg/mlとして装填し、室温の加湿装置で30分間キュアした(加湿装置は任意または必要な場合)。次に、チップをPBSTで3回洗浄した。
【0122】
検査結果は、0.1倍の緩衝液B中の異なる濃度のDダイマー溶液を、Dダイマーを含まない対照とともに装填することにより生じた。0.1倍のPBSを試験液として使用した。検査した周波数範囲は、40Hz〜6MHzの間であった。
【0123】
下の表は、検査条件が500mv(電圧)、100kHz(周波数)および1分の持続時間であった、3つの検査に対する濃度(/ml)についての詳細な結果を示す。結果を表す単位はdC/dT(%/分)である:
【表3】
【0124】
Dダイマー検出において、飽和は約100pgで到達するようである。好結果の試験範囲は10pg〜100pgの間であると思われ、1000pgは飽和に達した後も対象と比較して満足のいく結果をもたらす。
【0125】
表面の機能化およびブロッキングを行わずにPPyで被覆した電極に試料を直接滴下した対照検査結果を下に示す。変化率は非常に小さいことが分かった。これは大量の非特異的結合の機会を除外する傾向がある:
【表4】
【0126】
図24AおよびBは、抵抗に対するインピーダンスのナイキストプロットの検査結果を示し、試験した周波数範囲は1kHz〜110MHzである。これらの曲線は、例えば、10pgの濃度/mlについてよく相関する。これは、今のところ、10〜100pgが本発明者らの検出限界であり、100pgを上回る結果は飽和を示すことを示唆する本発明者らの検査結果によっても実証される。
【0128】
5/5/25/25の電極の実施形態を、糖、特にグルコースの検査にも使用した。糖検査のために、チップの装填およびブロッキングに関して同様の処理を続いて行った。グルコースについて、本発明者らは、グルコースオキシダーゼという酵素を、チップに装填しブロッキングする分子プローブとして使用した。以下の表は、検査周波数の最適化を示すために使用される。下の表から分かるように、50〜100kHzの間の周波数が好ましかった。
【表5】
【0129】
下にもまた表を示す。これから、電圧レベルが検査の重要な要因でなかったことが分かるだろう。検査は、1.0mv〜500mvの間の電圧値で実施したが、結果への大きな影響を与える電圧レベルはなかった。
【表6】
【0130】
以下の表は、グルコース検出の検査結果を提供する。ここで使用した周波数は100kHz、電圧は500mVであり、Agilentの機器を用いて、選択した検査周波数で電圧を印加した。
【表7】
【0131】
飽和は、1000μgで達したと思われ、結果はdR/dt(%/分)として示され、Rは抵抗である。示されるように、グルコースは、同様に検査されうる糖の一例にすぎない。示唆される糖検出、例えばスクロースの一つの用途は、医学的用途(例えば、グルコース)に加えて、ビール中の糖の検出にある。
【0132】
本発明のラボ・オン・チップは、ELISAまたは他の検査室の方法よりも速い方法で酵素レベルを検出するためにも使用することができる。上で、酵素であるグルコースオキシダーゼを糖尿病の診断に関して考察した。特定の組織細胞(例えば臓器組織細胞など)は特徴的な酵素を含有し、それら酵素はそれらが閉じ込められている細胞が損傷するかまたは破壊される時にだけ血液に入る。動物血液において検査されうる酵素の一例はアルドラーゼであり、これは、血液中の高い血清レベルでの骨格筋損傷と、進行性筋ジストロフィーを示しうる。また、アルドラーゼレベルは、初期のウイルス性肝炎および進行前立腺癌(男性)においてわずかに上昇することがある。クレアチンホスホキナーゼ(CPK)は、ラボ・オン・チップにより血液試料から測定することができ、心発作に関連するか、または骨格筋損傷を示す診断情報を区別するために役立ちうるもう一つの酵素である。GGTは、胆道癌および肝癌の閉そく性の疾患を示す酵素である。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)は、5つの成分、すなわちアイソエンザイムLDH−1、アイソエンザイムLDH−2、アイソエンザイムLDH−3、アイソエンザイムLDH−4、およびアイソエンザイムLDH−5にさらに分離できる。これらのアイソエンザイムの特異なレベルが、肝臓または筋肉の疾患を示しうる。LDH−2よりも高いLDH−1レベルは、最近の心発作または心疾患を示す可能性がある。全LDHレベルは心発作後24〜48時間以内に上昇するので、LDHレベルの検査は心発作を遅れて診断する際の有用なツールである。ラボ・オン・チップによって検査することのできるその他の酵素レベルには、膵炎のリパーゼ、狭心症または肝障害(硬変を含む)および胆管閉塞症のためのGOTが含まれる。
【0133】
井戸水の検査は、一般に細菌含有量、特に、大腸菌群および大腸菌の試験に関する。ラボ・オン・チップの本発明は、細菌についての井戸水検査に商業用途がありうる。
【0134】
同様に診断できる感染症のリストには、HIV、B型およびC型肝炎、SARS、ヘリコバクター・ピロリ感染、ハンセン病、ライム病、トキソプラズマ症、ニューカッスル病、口蹄疫、ブタパルボウイルス、仮性狂犬病、トリインフルエンザ、ブタおよび呼吸症候群、ブルセラ症、および、クローン病も含まれる。MAPもヒトにおけるクローン病の原因生物であるという注目に値する証拠があり、Ira Shafran et al., September, 2002, Digestive Diseases and Sciences, pp. 2079-2081に報告されるように、一部のMAP抗原、特にp35およびp36が、大多数(95%)のクローン病患者の血液試料において反応性であることが分かった。また、サッカロミセス・セレビシエに対する抗体(ASCA/好中球細胞質(ANCA))がクローン病のインジケータであることが知られており、OrgentecおよびThe Doctors Doctorより入手可能な市販のイムノアッセイキットで使用されている。ASCA/ANCAイムノアッセイは、同様の症状をもつ潰瘍性大腸炎およびクローン病の鑑別診断に使用される。従って、本発明のラボ・オン・チップの実施形態は、ヒトのクローン病の診断に用途がありうる。
【0135】
本発明の様々な態様が上述されたが、それらは例示であって限定するものでないことは理解されるべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を行うことができることは当該分野の当業者には明白である。従って、本発明は、上記の例示的な局面のいずれによっても制限されるべきでなく、以下の特許請求の範囲およびその均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【0136】
さらに、本発明の構造、方法論、機能性およびの利点を強調する、付属物の図は、例示目的のためだけに提示されることは当然理解される。本発明は十分に柔軟で構成可能であるため、付随する図に示されるもの以外の方法で実施することもできる。本明細書において参照されるいかなる特許出願、特許または文献も、本明細書に記載される実施形態および方法の理解に必要と思われるあらゆる材料に関して、参照により本明細書に組み込まれると考えられる。
【0137】
さらに、前述の要約の目的は、米国特許商標庁、通常は一般の人々、および特に、特許または法律の用語または表現に慣れていない、当該分野の科学者、技術者および開業医が、わずかな時間での検査からこの技術的な開示の性質および本質をすぐに判断できるようにすることである。要約は、決して本発明の範囲を制限することを意図しない。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
平行なフィンガーと、基板の上に置かれた前記フィンガー間の空間とを有する電極アレイを有するシステムであって、
前記電極アレイの複数の電極を被覆するための分子プローブであって、前記電極アレイの前記複数の電極が平行であるとともに組み合わされており、前記平行な電極間に100μm未満の間隔があり、前記複数の電極の組み合わされた平行なフィンガーが100μm未満の厚さを有する分子プローブと、
10分未満の所定期間の持続時間の間に、約10MHz未満の周波数で印加された約10Vrms未満の信号を受けるように適合された前記電極アレイと、
前記印加信号の存在下で交流の動電現象を示すための前記電極アレイの前記被覆された電極、
を特徴とするシステム。
(項目2)
前記分子プローブはインピーダンスバイオセンサを有し、該インピーダンスバイオセンサが、細菌抗原、抗体、核酸および酵素のうちの1つを含み、前記受信信号が2Vrms未満で印加され、前記周波数が200KHz未満であり、
前記電極アレイの前記被覆された電極の静電容量およびインピーダンスのうちの1つの変化を経時的に検出するための検出器をさらなる特徴とする項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記バイオセンサは細菌抗原を含み、前記細菌抗原がヨーネ病の原因物質であるマイオバクテリウム・アビウム亜種パラツベルクロシスの抗原を含むことをさらなる特徴とする項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記ヨーネ病の細菌抗原が約1:80未満の濃度域を有し、前記検出器によって経時的に測定される前記抗原に対する抗体結合に起因する静電容量の変化率(パーセント/分)がもたらされることをさらなる特徴とする項目3に記載のシステム。
(項目5)
前記バイオセンサは抗体を含み、前記抗体がS.ウベリス細菌に対する抗体を含むことをさらなる特徴とする項目2に記載のシステム。
(項目6)
前記S.ウベリス細菌は、乳腺炎を示すことをさらなる特徴とする項目5に記載システム。
(項目7)
前記バイオセンサはバイオマーカーを含み、前記バイオマーカーが妊娠を示すタンパク質を含むことをさらなる特徴とする項目2に記載のシステム。
(項目8)
前記印加信号の信号源、インピーダンス解析回路を含む前記検出器、および、マイクロコントローラーをさらなる特徴とする項目2に記載のシステム。
(項目9)
前記電極アレイが、洗浄可能であり再使用可能であることをさらなる特徴とする項目2に記載のシステム。
(項目10)
前記電極アレイが、交換可能であることをさらなる特徴とする項目2に記載のシステム。
(項目11)
単一の集積回路に設けられた複数の電極アレイをさらなる特徴とする項目2に記載のシステム。
(項目12)
前記インピーダンス解析回路に接続されたバッファー、前記バッファーと前記マイクロコントローラーに連結されたマルチプレクサ、前記電極アレイが多試料電極アレイを含むこと、前記マルチプレクサが前記多試料電極アレイの多試料電極アレイホルダーと接続するためのものであること、前記多試料電極アレイが、静電容量とインピーダンスの読み取り信号のうちの1つを前記インピーダンス解析回路に提供することをさらなる特徴とする項目8に記載のシステム。
(項目13)
前記電極フィンガー幅と、前記電極アレイの電極間の空間が、それぞれ約25μm未満であることをさらなる特徴とする項目1に記載のシステム。
(項目14)
前記電極アレイのAPTESによる処理をさらなる特徴とする項目1に記載のシステム。
(項目15)
前記電極アレイが均一な導電性ポリマーコーティングで被覆されていることをさらなる特徴とする項目1に記載のシステム。
(項目16)
前記均一な導電性ポリマーコーティングがポリピロールを含むことをさらなる特徴とする項目15に記載のシステム。
(項目17)
前記電極アレイが、酸化亜鉛、ナノチューブおよびグラフェンのうちの1つを含むナノ構造材料で被覆されていることをさらなる特徴とする項目1に記載のシステム。
(項目18)
前記電極アレイが、小分子に対する抗体で被覆されており、前記小分子とともに装填されることをさらなる特徴とする項目13に記載のシステム。
(項目19)
前記小分子が、プロゲステロンを含むことをさらなる特徴とする項目18に記載のシステム。
(項目20)
前記電極アレイが、酵素で被覆されており、糖検出のために糖とともに装填されることをさらなる特徴とする項目13に記載のシステム。
(項目21)
検出のための前記糖が、グルコースを含むことをさらなる特徴とする項目20に記載のシステム。
(項目22)
開口部を有するメッシュを有する電極を特徴とする項目1に記載のシステム。
(項目23)
前記電極メッシュが、開口部を有する第2のメッシュを覆っているとともに開口部を有する第1のメッシュを含み、電気的にコンデンサを形成することをさらなる特徴とする項目22に記載のシステム。
(項目24)
前記電極メッシュが、体細胞の検出のためのものであることをさらなる特徴とする項目22に記載のシステム。
(項目25)
前記第1のメッシュが、前記第2のメッシュの前記開口部のサイズよりも大きいサイズの開口部を有することをさらなる特徴とする項目23に記載のシステム。
(項目26)
前記第1のメッシュが、約50〜150μmの開口部を有し、前記第2のメッシュが、約20〜80μmの開口部を有することをさらなる特徴とする項目23に記載のシステム。
(項目27)
前記分子プローブが、抗Dダイマー抗体を含むことをさらなる特徴とする項目13に記載のシステム。
(項目28)
前記電極アレイが、均一な導電性ポリマーコーティングで被覆されていることをさらなる特徴とする項目27に記載のシステム。
(項目29)
前記均一な導電性ポリマーコーティングが、ポリピロールを含むことをさらなる特徴とする項目28に記載のシステム。
(項目30)
前記複数の電極の組み合わされた平行な前記フィンガーが、約25μm未満の厚さを有することをさらなる特徴とする項目1に記載のシステム。
(項目31)
前記複数の電極の組み合わされた平行な前記フィンガーが、約2μm未満の厚さを有することをさらなる特徴とする項目1に記載のシステム。
(項目32)
細菌性疾患、細菌性疾患の予測因子、およびヒトまたは動物の状態のうちの1つの発生を検査するためのラボラトリをチップ上に構築する方法であって、
電極アレイを基板上に構築する工程であって、前記電極アレイが組み合わされた平行なフィンガーと前記フィンガー間の空間とを有し、前記フィンガーが100μm未満の幅を有し、前記空間の幅が100μm未満である、工程と、
細菌抗原、病原体に対する抗体および酵素のうちの1つを含む分子プローブで前記電極アレイを被覆する工程と、
前記被覆された電極アレイをブロッキングする工程であって、前記被覆された電極アレイが、所定の周波数および電圧レベルの信号を経時的に受信するためのものであり、その被覆された表面が検査濃度を受け取るためのものである、工程と
を特徴とする方法。
(項目33)
対照と比較して静電容量およびインピーダンスのうちの1つの変化に関連する信号をインピーダンス解析回路で経時的に受信し、静電容量および抵抗のうちの1つの経時的な前記変化が、細菌性疾患と妊娠のうちの1つの生理的状態を示すことをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。
(項目34)
前記分子プローブがヨーネ病の細菌抗原を含み、前記信号が2Vrms未満で印加され、前記周波数が1KHz〜10MHzであることをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。
(項目35)
前記細菌抗原が、マイオバクテリウム・アビウム亜種パラツベルクロシスから調製されることをさらなる特徴とする項目32に記載方法。
(項目36)
経時的に測定される静電容量の変化率(パーセント/分)を達成するために、前記ヨーネ病抗原が、1:1〜1:80の濃度域で希釈され適用されることをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。
(項目37)
前記分子プローブが、結核の細菌抗原であることをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。
(項目38)
前記分子プローブが、S.ウベリス細菌の検出用病原体に対する抗体であることをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。
(項目39)
前記分子プローブが、酵素であることをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。
(項目40)
前記分子プローブが妊娠のバイオマーカーに対する抗体であり、前記バイオマーカーが妊娠を予測することをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。
(項目41)
前記分子プローブがDダイマーであり、前記ダイマーが凝固を予測することをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。
(項目42)
前記分子プローブがグルコースオキシダーゼであり、前記グルコースオキシダーゼが糖濃度を予測することをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。
(項目43)
前記分子プローブが小分子に対する抗体を含み、前記小分子が妊娠を予測するプロゲステロンであることをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。
(項目44)
前記分子プローブが病原体に特異的な核酸に対する核酸を含み、前記病原体が汚染を示すことをさらなる特徴とする項目32に記載の方法。