特許第6185936号(P6185936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185936
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】閉鎖型サイクル急冷を伴う部分酸化反応
(51)【国際特許分類】
   F02C 3/30 20060101AFI20170814BHJP
   C10J 3/84 20060101ALI20170814BHJP
   C10K 3/04 20060101ALI20170814BHJP
   C10K 1/02 20060101ALI20170814BHJP
   F02C 3/22 20060101ALI20170814BHJP
   F02C 3/28 20060101ALI20170814BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   F02C3/30 D
   C10J3/84
   C10K3/04
   C10K1/02
   F02C3/22
   F02C3/28
   F23R3/00 B
【請求項の数】54
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-556778(P2014-556778)
(86)(22)【出願日】2013年2月11日
(65)【公表番号】特表2015-513028(P2015-513028A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】US2013025563
(87)【国際公開番号】WO2013120070
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】61/597,719
(32)【優先日】2012年2月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514115098
【氏名又は名称】パルマー ラボ,エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】312000387
【氏名又は名称】8 リバーズ キャピタル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アラム,ロドニー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】フェットベット,ジェレミー,エロン
(72)【発明者】
【氏名】パルマー,マイルズ,アール.
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−71272(JP,A)
【文献】 特表2008−542481(JP,A)
【文献】 特開2011−1549(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009015767(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 3/30
C10J 3/84
C10K 1/02
C10K 3/04
F02C 3/22 − 3/28
F23R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分酸化(POX)系および出力発生系(PPS)を備えるシステムの組合せを用いる出力発生方法であって、以下の:
燃料を部分的に酸化して、燃料ガスを含むPOX流を生成するのに十分な条件下で、POX反応器中で固体または液体燃料および酸素を併合すること;
00℃以下の温度で急冷POX流を生成し、POX流中に存在する任意の溶融固体の少なくとも一部分を固化するのに十分な条件下で急冷流体との組合せによりPOX流を急冷すること;
そこに存在する任意の固体の少なくとも一部分を除去するために、急冷POX流を処理すること;
急冷POX流をPOX熱交換器に送り、冷却流に対して急冷POX流を100℃以下の温度に冷却することにより急冷POX流からある量の熱を引き出して、POX燃料ガス流を生成すること;
POX燃料ガスを分離容器に通して、POX燃料ガス流中に存在する任意の水の少なくとも一部分を分離すること;
POX燃料ガス流を12MPa以上の圧力に圧縮すること;
少なくとも10MPaの圧力で、少なくとも800℃の温度で、PPS燃焼器中でPOX燃料ガスを燃焼して、燃焼生成物流を形成すること;
PPSタービンを横断して燃焼生成物流を拡張して、粉末を生成し、拡張PPS燃焼生成物流を形成すること
を包含する方法。
【請求項2】
前記固体または液体燃料が炭素系燃料である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記POX反応器中で併合される燃料が、粉末化固体燃料の伴出流である請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記炭素系燃料が石炭である請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記石炭が水またはCOでスラリー化される請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記急冷POX流が、灰分、スラグまたはその組合せを含み、そして前記急冷POX流を処理して少なくとも一部の固体を除去することが急冷POX流を水スクラバーユニットに通すことを包含する請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記急冷POX流を処理して少なくとも一部の固体を除去することは、急冷POX流中の燃料ガスのダスト負荷を、1平方メートル当たり4mg以下に低減するよう、急冷POX流を濾過することを包含する請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記POX反応器がPOX温度で操作され、POX温度対急冷POX流の温度の比が3.25以上である請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記POX温度が1300℃〜1600℃である請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記POX反応器が2MPa以上の圧力で操作される請求項1記載の方法。
【請求項11】
急冷することが、前記POX流を以下の:熱交換器を出る冷却POX燃料ガス流の再循環部分;冷却POX燃料ガス流から分離される水の一部分;PPSからのCO再循環流の一部分;またはその組合せと混合することを包含する請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記熱交換器中の冷却流がPPSから引き出され、そして戻される高圧再循環流体流を含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記高圧再循環流体流が再循環CO流体流である請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記再循環CO流体流がPPS燃焼器中のPOX燃料ガスの燃焼で生成されるCOを含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記POX反応器が内部熱伝達構成成分を含む請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記内部熱伝達構成成分が、250℃以上の温度でPPSの一構成成分から得られる高圧再循環流の一部分に輻射熱を伝達するために適応される請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記内部熱伝達構成成分が、PPSの構成成分に高圧再循環流を戻すために適応される請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記タービンが10MPa以上の入口圧力を有する請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記タービンが、タービン入口対タービン出口の比と定義される出口圧を有し、前記比が12以下である請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記POX反応器中で用いられる酸素が90モル%以上の純度を有する請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記POX反応器中で用いられる酸素が95モル%以上の純度を有する請求項20記載の方法。
【請求項22】
以下の:
前記拡張PPS燃焼生成物流をPPSレキュペレータ熱交換器に通して、それによりPPS燃焼生成物流から熱を引き出して、冷却PPS燃焼生成物流を形成すること;
任意に、前記冷却PPS燃焼生成物流を冷水器に通すこと;
前記PPS燃焼生成物流をPPS洗浄器中で処理して、少なくともHSO、HNOまたはHgを分離して、再循環CO流を形成すること;そして
前記再循環CO流をPPS圧縮器中で加圧して、圧縮再循環CO流を形成すること
をさらに包含する請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記拡張PPS燃焼生成物流をPPSレキュペレータ熱交換器に通すことが、PPS燃焼生成物流を水の露点より低い温度に冷却する請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記PPS燃焼器に進入する前記POX燃料ガス流中の燃料ガスが、H、COおよびCHから選択される少なくとも1つの燃料ガス構成成分を含む請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記PPS燃焼に進入する前記POX燃料ガス流が、前記燃料ガスから分離され、前記固体または液体燃焼、その部分酸化および酸素に由来する1つ以上の不純物を含む請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上の不純物が、イオウ化合物、NHおよびHCNのうちの少なくとも1つを含む請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記不純物の実質的にすべてが、前記POX燃料ガス流中に依然として存在し、前記PPS燃焼器中で燃焼される請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記POX燃料ガス流中に存在するすべての酸化可能不純物が、前記PPS燃焼器中での燃焼により酸化される請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記PPS燃焼器からの前記燃焼生成物流が、燃焼生成物および圧縮再循環CO流の少なくとも一部分の混合物を含む請求項22記載の方法。
【請求項30】
前記PPS燃焼生成物流から引き出された熱が、前記圧縮再循環CO流の少なくとも一部分を加熱する請求項22記載の方法。
【請求項31】
前記POX流が水で急冷されて水急冷POX流を形成する請求項22記載の方法。
【請求項32】
前記水急冷POX流が、少なくともH、CO、CO、HSおよびHOを含む請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記POX熱交換器中の冷却流が、第一圧縮再循環CO流及び第二圧縮再循環COを含む請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記POX熱交換器に進入する前記第一圧縮再循環COの入口温度が、前記PPS圧縮器から放出される前記圧縮再循環CO流の温度と実質的に同一である請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記POX熱交換器に進入する前記第二圧縮再循環CO流の入口温度が、前記拡張PPS燃焼生成物水の露点の20℃以内である請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記水急冷POX流が、過剰液体水を含むよう水蒸気で飽和される請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記第一圧縮再循環CO及び前記第二圧縮再循環COが、前記POX熱交換器中で併合されて単一圧縮再循環CO流を形成する請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記POX熱交換器を出る前記単一圧縮再循環CO流が、前記POX燃料ガスの露点温度の20℃以内である温度である請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記水急冷POX流が、露点温度を有し、前記水急冷POX流の前記温度が前記露点温度を上回り、且つ400℃より低い請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記第一圧縮再循環CO及び第二圧縮再循環COが加熱され、そして前記2つの圧縮再循環CO流が併合されて単一流を形成する点が、前記第二圧縮再循環CO流の入口温度に実質的に対応する温度である請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記単一流が、以下の:
前記POX流露点温度の20℃以内である温度で前記POX熱交換器を出る第一流出加熱および圧縮再循環CO流;ならびに
80℃〜399℃の温度で前記POX熱交換器を出る第二流出加熱および圧縮再循環CO
に分割される請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記POX流がCOおよび任意に前記燃料ガスの一部分で急冷されてCO急冷POX流を形成する請求項22記載の方法。
【請求項43】
前記CO急冷POX流が、少なくともH、CO、CO、HSおよびHOを含む請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記POX熱交換器中の冷却流が前記圧縮再循環COの1つの流れを含む請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記POX熱交換器に進入する前記圧縮再循環COの入口温度が、前記PPS圧縮器から放出される前記圧縮再循環CO流の温度と実質的に同一であり、前記POX熱交換器を出る前記圧縮再循環COの1つの流れが、前記POX燃料ガス露点温度の20℃以内である温度である請求項44記載の方法。
【請求項46】
記POX燃料ガスの少なくとも一部分が、COおよびHOの混合物をHおよびCOの混合物を含むシフト反応器出口ガスに変換するよう適応される触媒シフト反応器に進入する請求項22記載の方法。
【請求項47】
前記シフト反応器出口ガスが、PPSから得られ、PPSに戻される高圧再循環COガスに対してPOX熱交換器中で冷却される請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記シフト反応器出口ガスが前記POX熱交換器中で冷却され、そして熱交換器中で冷却された前記急冷POX流の一部分と混合され、さらに加工処理されて、水、CO、イオウ化合物、窒素化合物およびHgを分離して、したがって、HおよびCOを0.8:1〜2.5:1の比で含む混合物を形成する請求項47記載の方法。
【請求項49】
およびCOを0.8:1〜2.5:1の比で含む前記混合物がさらに加工処理されて、純H流を99モル%より以上の純度で形成する請求項48記載の方法。
【請求項50】
記触媒シフト反応器が、多床型圧力変動吸着(PSA)系を備えるシステムである請求項48記載の方法。
【請求項51】
前記多床型圧力変動吸着(PSAを備えるシステムからの吸着生成物を含む前記多床型圧力変動吸着(PSAを備えるシステムからの低圧廃棄ガスがPPS燃焼器圧に圧縮され、PPS燃焼器に進入する総燃料ガス流中に混合される請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記POX反応器中で用いられる酸素が、前記POX熱交換器中で350℃までの温度に加熱される請求項22記載の方法。
【請求項53】
前記PPS燃焼器中で用いられる酸素が、前記POX熱交換器中で350℃の温度に加熱される請求項22記載の方法。
【請求項54】
以下の:
酸素の存在下で液体または固体燃料を部分的に酸化して、燃料ガスを含むPOX流を形成するよう適応されるPOX反応器;
燃料ガスを含む前記POX流を急冷流体と接触させて燃料ガスを含む急冷POX流を形成するよう適応される1つ以上の構成要素;
料ガスを含有する前記急冷POX流中に存在する任意の固体を分離するよう適応される任意のPOX洗浄器;
燃料ガスを含有する単一相急冷POXからの固化灰分粒子を分離するよう適応される任意の濾過装置;
圧縮再循環CO流の一部分に対して燃料ガスを含有する前記急冷POXから熱を引き出し、冷却POX燃料ガスを出すよう適応されるPOX熱交換器;
前記冷却POX燃料ガスから任意の液体水を分離するよう適応される任意の分離器;
前記冷却POX燃料ガスを10MPa以上の圧力に圧縮するよう適応される圧縮器;
酸素および前記圧縮再循環CO流の一部分の存在下で前記POX燃料ガスを燃焼して、10MPa以上の圧力でPPS燃焼生成物流を形成するよう適応されるPPS燃焼器;
前記PPS燃焼生成物を拡張して拡張PPS燃焼生成物流を形成し、連結発生器中で出力を発生するよう適応されるPPSタービン;
前記拡張PPS燃焼生成物流から熱を引き出し、前記圧縮再循環CO流に熱を付加するよう適応されるPPSレキュペレータ熱交換器;
拡張PPS燃焼生成物流からのHSO、HNOおよび水溶解Hg塩のうちの1つ以上を分離し、再循環CO流を出すよう適応されるPPS洗浄塔;
前記再循環COを10MPa以上の圧力に圧縮して、圧縮再循環CO流を形成するよう適応されるPPS圧縮器;
前記圧縮再循環CO流の一部分を前記POX熱交換器に向けるよう適応される流動構成要素;
前記圧縮再循環CO流の一部分を前記PPSレキュペレータ熱変換器に向けるよう適応される流動構成要素;ならびに
前記POX熱交換器からの前記圧縮再循環CO流を前記PPSレキュペレータ熱変換器に向けるよう適応される流動構成要素
を含む複合部分酸化(POX)系および出力発生系(PPS)を備えるシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料の高効率燃焼を達成するために部分酸化反応器を利用する出力、例えば電力の発生方法に関する。特に、当該系および方法は、固体燃料として石炭を用い得る。
【背景技術】
【0002】
燃料の燃焼からの出力発生の慣用的手段は、典型的には、高効率出力発生ならびに炭素回収および隔離(CCS)をともに同時に達成する能力を欠く。この制限は、燃焼反応において固体燃料を用いる場合、拡大されるが、それは、燃焼生成物流中に残存する固体および不活性窒素ガス内容物のためである。したがって、CO放出の低減および/または生成されたものの隔離の容易性改良を生じさせる高効率出力発生のための系および方法に関する必要性が、当該技術分野においては依然として増大している。
【0003】
CCSを伴う高効率出力発生の分野における一出版物である米国特許出願公開番号2011/0179799(Allam等)は、燃焼由来不純物、例えばHS、CS、COS、HCNおよびNHと一緒に、燃焼構成成分として主に一酸化炭素および水素を含む気体燃料への固体燃料の実質的に完全な変換を可能にするのに十分高い圧力および温度で操作する部分酸化反応器中の酸素および任意に流体との反応により、固体燃料、例えば石炭、褐炭、石油コークスまたはバイオマスがガス化される一解決策を提供する。部分酸化正味生成物ガスは冷却され、灰分は分離されて、それは任意に圧縮されて、それを燃料として出力発生系の燃焼小室中に導入させられる。部分酸化系および出力発生系の操作圧は、燃料ガスの圧縮が必要とされないようなものであり得る。出力発生系燃焼器は、燃焼後に存在する過剰量のOを伴って操作し、これが、燃料および燃焼由来不純物が還元形態から、主にSOおよびNOを含む酸化形態に変換される、ということを保証する。部分酸化反応器は、約800℃の温度レベルでの灰分除去前に、部分酸化生成物ガスを冷却する高圧再循環CO流を伴って、発散冷却壁を有して提供される。すべての微細灰分粒子が、固化揮発性無機構成成分と一緒に凝縮され、濾過されて、固体沈澱、腐食および下流設備の遮断を防止する、ということを保証するために、約400℃への部分酸化ガスのさらなる冷却が必要とされる。800℃から400℃への部分酸化ガスの冷却は、ブードワ炭素生成反応のためのメタルダスティング腐食に耐性である高圧部分酸化ガス、ならびに部分酸化ガスにおける高CO分圧のための管を有する熱交換器中で行われなければならない。これは、式(1)で以下に示される。

CO+CO=C+CO (1)

当該管は、石炭および褐炭のような固体燃料中に存在する揮発性無機構成成分の凝縮に由来する固体析出物が、定期的水洗浄により除去されるよう設計されなければならない。
【0004】
上記の出版物の事前通知にもかかわらず、そこに記載された系および方法は、出力発生燃焼燃料として固体燃料を用いる場合に生じる問題の最も有益な解決をいまだに提供していない。したがって、CCSを伴う固体燃料の高効率燃焼のためのさらなる系および方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の開示は、固体燃料を利用し、同時炭素回収を達成する高効率出力発生のための系および方法を提供する。特に、開示される系および方法は、固体燃料が燃焼されて、部分酸化生成物を含むPOX流を生じる部分酸化(POX)反応器を利用し得る。POX流は、燃焼器に向けられ得るが、ここで、部分酸化生成物のうちの少なくともいくつかは実質的に完全に酸化されて、燃焼生成物流を生じる。ある実施形態では、POX反応器は、燃焼器中の圧力より低い圧力で操作され得る。
【0006】
具体的実施形態では、POX反応器は、急冷流体を利用するよう適応され得る。例えば、急冷冷却流体は、POX反応温度から急冷POX流温度にPOX流を冷却するために導入され得る。例示的実施形態では、POX反応温度対急冷POX流温度の比は、約3.25以上(例えば、約3.5:1または約4:1)であり得る。非限定例として、POX反応温度は、約1300℃以上(例えば、約1300℃〜約1600℃)であり、そして急冷POX流温度は約200℃〜約400℃の温度であり得る。急冷冷却は、POX反応器または別個の容器中でPOX流と直接混合することにより実行され得る。
【0007】
他の実施形態では、一次POX燃料の部分酸化中に生成される固体(例えば、固体灰分粒子)は、気体燃料ガス+蒸発急冷流体からの分離により除去され得る。代替的には、急冷流体は、付加的液相として、ならびに気相中に存在し得るし、灰分粒子の大部分を除去するための洗浄流体として作用し得る。固体点素がCO分子の反応から生成されるブードワ反応を遅くすることによりメタルダスティングを防止するためには、約400℃以下の急冷温度が有用であり得る。さらに、伴出灰分粒子を伴う単一相気体POX生成物がサイクロンおよびフィルター系に通されて、灰分粒子を除去し得るよう、急冷系を操作することが好ましい。
【0008】
さらなる実施形態では、POX流および急冷流体蒸気の混合物は、例えば約100℃以下の温度に付加的に冷却されて、冷却POX流を提供する。POX流の急冷および/または冷却は、好ましくは、POX反応温度で急冷POX流ガス中に存在する有用な熱の大多数が回収されるというようなやり方で実行される。回収熱は、例えば、出力発生系に移されて、出力発生系の効率を最大にし得る低温加熱を提供し得るが、これは、本明細書中でさらに記載される。いくつかの実施形態では、急冷流体の一部または全部が、冷却POX流から分離され得る。回収急冷流体は、POX反応器に再循環され得る。
【0009】
開示される系および方法は、市販のPOX反応器を、出力発生系との効率的統合に適応させ得る。さらに、開示される系および方法は、気体生成物の分離に適応され得る。例えば、実質的に純粋なH、COまたはその混合物は、冷却POX流から分離され得る。開示される系および方法は、さらに、POX流中に存在する燃料およびPOX由来不純物の一部または全部が、出力発生系の燃焼器中で酸化され得る、という点で有益である。その後、このような不純物は、例えば凝縮水流を用いて(例えば、酸および塩として)除去され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、POX反応器中での酸素との併合による炭素系または炭化水素燃料の部分酸化を包含する工程に関する。燃料は、少なくともイオウ化合物を含み得る。POX反応は、少なくともH、COおよびHSを含む燃料ガス混合物を生じ得る。POX反応は、さらに、少なくともH、CO、HS、NHおよびHCNを含む燃料ガス混合物を生じ得る。POX系は、出力発生系(PPS)と連結され得るが、ここでは、燃料ガスは酸素で燃焼され得るし、燃焼により生成される熱エネルギーは、出力に変換され得る。統合POX系およびPPSを利用する方法は、種々の実施形態により明示され得る。例示的実施形態を以下に提示する。
・ 急冷、固体灰分除去およびPPSからの再循環高圧COを伴う熱交換による冷却後のPOX系からのPOX燃料ガス中に存在する炭素系または炭化水素燃料、POX工程、および酸素プラント(例えば空気分離ユニット)から得られる酸素に由来するすべての不純物が、PPS中で燃焼される。例示的不純物は、過剰量のH、CO、CH、CO、HO、NおよびAr中に存在する不純物であり得る。
・ POX燃料ガス中に存在するすべての酸化可能不純物は、PPS燃焼により酸化され得る。
・ POX燃料ガス中に存在するイオウ化合物、例えばHS、COSおよびCSは、SO、SO、HOおよびCOに酸化され得る。POX燃料ガス中に存在する任意のNHおよびHCNは、NO、NO、HOおよびCOに酸化され得る。
・ POX工程は、好ましくは、約2MPa以上の圧力で操作する。
・ PPSは、約10MPa以上の入口圧を有するタービンを利用する出力の発生により明示され得る。
・ PPSは、約12以下の圧力比(入口対出口)を有するタービンを利用する出力の発生により明示される。
・ POX反応は、約1300℃〜約1600℃の断熱火炎温度で実行され得る。
・ POX反応器への供給物は、水、COまたはその組合せ中の粉末化固体燃料でスラリー化され得る。
・ POX反応器への供給物は、粉末化固体燃料の伴出流を含むと定義され得る。
・ POX反応器への供給物は、ビチューメンの加熱流のような液体を含むと定義され得る。
・ POX反応器は、約250℃以上の温度でPPSから獲得され、そしてPPSレキュペレータ熱交換器を出る高圧再循環流の出口温度より低い温度でPPSに戻される高圧再循環流の一部分に輻射熱を伝達する内部伝熱セクションを包含するよう適応され得る。
・ POX反応の直接生成物は、急冷POX燃料ガスの再循環部分と、急冷POX燃料ガスから凝縮される液体水の一部分と、PPSから再循環されるCOと、あるいはこれら3つの組合せと直接混合することにより急冷され得る。
・ POX工程に用いられる燃料から生じる灰分は、POX生成物の急冷後、そしてPOX燃料ガスのさらなる冷却前に、除去され得る。
・ POX流の急冷において達成される温度は、炭素沈着またはメタルダスティング腐食がPOX系またはPPSにおける任意の下流設備で起きないよう、約400℃またはそれより低い温度、あるいはブードワ反応の速度が十分に低い温度であり得る。
・ 急冷および灰分除去後のPOX生成物は、PPSから獲得され、そして戻される高圧再循環流体流を加熱することを用いることにより、約100℃以下の温度に冷却され得る。
・ PPSは、PPS燃焼器中の燃焼生成物を加圧再循環流と混合し、そして全体流を出力発生のために適応される少なくとも1つのPPSタービンに通すことにより、明確にされ得る。
・ PPSは、約0.1MPa以上、他の実施形態では、約1MPa以上の最終放出圧での単数または複数のタービンの操作により明確にされ得る。
・ PPSは、少なくとも全タービン排気流(単数または複数)に対して予め圧縮された高圧再循環流を加熱する1つ以上のレキュペレータ熱交換器の使用により明確にされ得る。
・ PPSは、O、液体HO、NOおよびNOとの反応により、SOおよびSOをHSOに変換することにより明確にされ得る。
・ PPSは、NO、NOおよび液体HOをHNOに変換することにより明確にされ得る。
・ PPS酸変換は、レキュペレータ熱交換器の冷却終了時に水および酸が冷却タービン排気ガスから分離される温度より低い、水が凝縮する点に対応する操作温度で実行され得る。
・ 酸+酸との反応により生成され、任意にPPS燃焼器からの凝縮水で希釈される可溶性無機構成成分は、さらなる処理のために除去され得る。
・ 高圧CO再循環流体流(単数または複数)は、灰分除去後に急冷POX生成物ガスを冷却するために用いられ得る。
・ 高圧CO再循環流体流は、任意に、1つより多い温度レベルで、PPSから獲得される1つより多い流体流を含み得る。
・ 1つより多い高圧CO再循環流体流は、1つより多い温度レベルでPPSに戻され得る。
・ 一流体流は、PPSから獲得され、1つより多い温度レベルで、1つより多い流れとしてPPSに戻され得る。
・ 1つより多い流体流は、PPSから獲得され、単一加熱流としてPPSに戻され得る。
・ 冷却正味POX燃料ガス生成物は、POX急冷再循環流体の冷却および分離後、それがPOX系を出る圧力からPPS燃焼器の入口圧と実質的に同一の圧力に圧縮され得る。
・ 急冷POX生成物ガスを冷却するのに用いるためのPPSから獲得される流体流は、PPSからの加圧再循環流の一部であり得る。
・ POX系に用いられる酸素は、90モル%より高い、好ましくは95モル%より高い純度を有し得る。
・ 部分酸化ガスは水で急冷されて、少なくともH、CO、CO、1つ以上のイオウ化合物(例えばHS)およびHOを含有するガス混合物を生じる。
・ 急冷POX燃料ガスの冷却は、PPSからの加圧再循環ガスの2つの流れを伴って実行され得る;POX熱変換器に進入する第一再循環流の入口温度は、PPS再循環CO圧縮器の放出温度であり得る;そしてPOX熱交換器に進入する第二再循環CO流の入口温度は、PPSタービン排出流における水露点の20℃以内であり得る。
・ 燃料ガスを含むPOX流は、水で急冷されて、存在する過剰な液体水を有する水蒸気で飽和されたPOXガスを生成し;そしてPPSからの加圧再循環ガス2つの入口流は、POXガス露点温度の20℃以内の温度で単一流としてPOX熱変換器を退出し得る。
・ POX流は、水で急冷されて、その露点温度を上回り、そして400℃より低い急冷POX流を生じ得る;POX熱交換器に進入する2つの入口流は、加熱され、第二入口流温度に対応する温度点で併合され得る;第一出口加熱流体流は、POX流露点温度の20℃以内の温度で除去され、そして残りの流れはさらに加熱され、約380℃〜399℃の温度でPOX熱交換器を出る。
・ 急冷後のPOX燃料ガスの一部分は、除去され、触媒シフト反応器に通されて、COおよびHOをHおよびCOに変換し得る。
・ シフト反応器からの出口ガスは、PPSから獲得され、そしてPPSに戻される再循環ガスに対して急冷POX熱交換器中で冷却され得る。
・ シフト化ガスは、非シフト化ガスの一部分と混合され、さらに加工処理されて、水、CO、イオウ化合物、水銀およびその他の揮発性無機構成成分を分離して、HおよびCOを0.8:1〜2.5:1の割合であとに残す。
・ シフト化ガス単独は、さらに加工処理されて、99モル%より高い純度のH流を生じ得る。
・ HまたはHおよびCO流中のイオウ化合物、NH、HCNおよび水の含量は、各々、1ppmモル未満であり得る。
・ 分離装置は、多床型圧力変動吸着(PSA)系として明示され得る。
・ PSA系からの吸着生成物を含む前記PSAからの低圧廃棄ガスは、PPS燃焼器により必要とされる圧力に圧縮され、PPS燃焼器への総POX燃料ガス流中に混合され得る。
・ 第一燃料のPOXのために用いられる酸素は、POX熱変換器中で350℃までの温度に加熱され得る。
・ PPS燃焼器中で用いられる酸素は、POX熱変換器中で350℃までの温度に加熱され得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明の開示は、POX系およびPPSの組合せを用いる出力の発生のための方法であって、以下のステップ:
燃料を部分的に酸化して、燃料ガスを含むPOX流を生成するのに十分な条件下で、POX反応器中で固体または液体燃料および酸素を併合すること;
約400℃以下の温度で急冷POX流を生成し、POX流中に存在する任意の溶融固体の少なくとも一部分を固化するのに十分な条件下で、急冷流体との組合せによりPOX流を急冷すること;
そこに存在する任意の固体の少なくとも一部分を除去するために、急冷POX流を処理すること;
急冷POX流をPOX熱交換器に送り、冷却流に対して急冷POX流を約100℃以下の温度に冷却することにより急冷POX流からある量の熱を引き出して、POX燃料ガス流を生成すること;
POX燃料ガスを分離容器に通して、POX燃料ガス流中に存在する任意の水の少なくとも一部分を分離すること;
POX燃料ガス流を約12MPa以上の圧力に圧縮すること;
少なくとも約10MPaの圧力で、少なくとも約800℃の温度で、PPS燃焼器中で(任意に過剰量酸素の一部分を伴って)POX燃料ガスを燃焼して、燃焼生成物流を形成すること;
PPSタービンを横断して燃焼生成物流を拡張して、粉末を生成し、拡張PPS燃焼生成物流を形成すること
を包含する方法に関する。
【0012】
具体的実施形態では、出力発生方法は、上記のような方法に独立して適用され得る種々の特質によりさらに明示され得る。例えば、固体または液体燃料は、炭素系燃料であり得る。POX反応器中で併合される燃料は、粉末化固体燃料の伴出流であり得る。炭素系燃料は、石炭であり得る。石炭は、水またはCOでスラリー化され得る。急冷POX流は、灰分、スラグまたはその組合せを含み得るし、そして固体を除去するステップは、急冷POX流を水スクラバーユニットに通すことを包含し得る。固体を除去するステップは、急冷POX流中の燃料ガスのダスト負荷を、1平方メートル当たり約4mg以下に低減するよう、急冷POX流を濾過することを包含し得る。POX反応器はPOX温度で操作され、POX温度対急冷POX流の温度の比は約2:1以上であり得る。POX温度は、約1300℃〜約1600℃であり得る。POX反応器は、約2MPa以上の圧力で操作され得る。急冷することは、POX流を以下の:熱交換器を出る冷却POX燃料ガス流の再循環部分;冷却POX燃料ガス流から分離される水の一部分;PPSから再循環されるCO、水またはその組合せと混合することを包含し得る。熱交換器中の冷却流は、PPSから引き出され、そして戻される高圧再循環流体流を含み得る。高圧再循環流体流は、再循環CO流体流であり得る。再循環CO流体流は、PPS燃焼器中のPOX燃料ガスの燃焼で生成されるCOを含み得る。POX反応器は、内部熱伝達構成要素を含み得る。内部熱変換構成要素は、約250℃以上の温度でPPSの一構成要素から得られる高圧再循環流の一部分に輻射熱を伝達するために適応され得る。内部熱伝達構成要素は、PPSの構成要素に高圧再循環流を戻すために適応され得る。PPSタービンは、約10MPa以上の入口圧力を有し得る。PPSタービンは、タービン入口対タービン出口の比として定義される出口圧を有し得る。例示的一実施形態では、比は約10以下であり得る。
【0013】
さらなる実施形態では、POX系およびPPSの組合せを用いる出力発生方法は、さらにまた、以下の:
拡張PPS燃焼生成物流をPPSレキュペレータ熱交換器に通して、それによりPPS燃焼生成物流から熱を引き出して、冷却PPS燃焼生成物流を形成すること;
任意に、冷却PPS燃焼生成物流を冷水器に通すこと;
PPS燃焼生成物流をPPS洗浄器中で処理して、HSO、HNOまたは水溶解化Hg塩のうちの少なくとも1つを分離して、再循環CO流を形成すること;そして
再循環CO流をPPS圧縮器中で加圧して、圧縮再循環CO流を形成すること
を包含し得る。
【0014】
具体的実施形態では、分離ステップは、SO、SO、NO、NO、HOおよびOに+凝縮水および溶解化Hg塩の反応により形成される変換生成物HSOおよびHNOを分離することを包含し得る。拡張PPS燃焼生成物流をPPSレキュペレータ熱交換器に通すことは、PPS燃焼生成物流を水の露点より低い温度に冷却し得る。PPS燃焼器に進入するPOX燃料ガス流中の燃料ガスは、H、COおよびCHから選択される少なくとも1つの燃料ガス構成成分を含み得る。PPS燃焼室に進入するPOX燃料ガス流は、燃料ガスから分離され、固体または液体燃焼、その部分酸化および酸素に由来する1つ以上の不純物を含み得る。1つ以上の不純物は、イオウ化合物、NHおよびHCNのうちの少なくとも1つを含み得る。不純物の実質的にすべてが、POX燃料ガス流中に依然として存在し、PPS燃焼器中で燃焼され得る。POX燃料ガス流中に存在する酸化可能不純物はすべて、PPS燃焼器中での燃焼により酸化され得る。PPS燃焼器からの燃焼生成物流は、燃焼生成物および圧縮再循環CO流の少なくとも一部分の混合物を含み得る。PPS燃焼生成物流から引き出される熱は、圧縮再循環CO流の少なくとも一部分を加熱し得る。POX流は、水で急冷され得る。水急冷POX流は、少なくともH、CO、CO、HSおよびHOを含み得る。POX熱交換器中の冷却流は、圧縮再循環COの2つの流れを含み得る。POX熱交換器に進入する第一圧縮再循環COの入口温度は、PPS圧縮器から放出される圧縮再循環CO流の温度と実質的に同一であり得る。POX熱交換器に進入する第二圧縮再循環CO流の入口温度は、拡張PPS燃焼工程流における水の露点の20℃以内であり得る。水急冷POX流は、過剰液体水を含むよう水蒸気で飽和され得る。2つの圧縮再循環CO流は、POX熱交換器中で併合されて単一流を形成し得る。POX熱交換器を出る単一圧縮再循環CO流は、POX燃料ガス露点温度の約20℃以内である温度であり得る。水急冷POX流は、その露点温度を上回り、約400℃より低い温度を有し得る。2つの圧縮再循環CO流は加熱され、そして2つの圧縮再循環CO流が併合されて単一流を形成する点は、第二圧縮再循環CO流の入口温度に実質的に対応する温度であり得る。単一流は、以下の:POX流露点温度の約20℃以内である温度でPOX熱交換器を出る第一流出加熱および圧縮再循環CO流;ならびに約380℃〜約399℃の温度でPOX熱交換器を出る第二流出加熱および圧縮再循環CO流に分割され得る。
【0015】
付加的実施形態では、急冷POX燃料ガスの一部分は、POX触媒シフト反応器を通して向けられ得る。POX触媒シフト反応器は、COおよびHOの混合物をHおよびCOの混合物を含むシフト反応器出口ガスに変換するよう適応され得る。シフト反応器出口ガスは、PPSから得られ、PPSに戻される再循環ガスに対してPOX熱交換器中で冷却され得る。シフト反応器出口ガスは、急冷POX流の一部分と混合され、さらに加工処理されて、水、CO、イオウ化合物、Hgおよび揮発性無機化合物を分離して、したがって、HおよびCOを約0.8:1〜約2.5:1の比で含む混合物を形成し得る。シフト反応器出口ガスはさらに加工処理されて、純H流を99モル%より以上の純度で形成し得る。POX触媒プロセッサーは、多床型圧力変動吸着(PSA)系であり得る。PSA系からの吸着生成物を含むPSA系からの低圧廃棄ガスはPPS燃焼器圧に圧縮され、PPS燃焼器に進入する総燃料ガス流中に混合され得る。POX反応器中で用いられる酸素は、POX熱変換器中で約350℃までの温度に加熱され得る。PPS燃焼器中で用いられる酸素は、POX熱変換器中で約350℃の温度に加熱され得る。
【0016】
他の実施形態では、本開示は、複合POX系およびPPSを提供し得るし、複合系は、非気体である出発燃料から、電力のような出力を発生するために有用であり得る。いくつかの実施形態では、POX系およびPPSは、以下の要素:
酸素の存在下で液体または固体燃料を部分的に酸化して、燃料ガスを含むPOX流を形成するよう適応されるPOX反応器;
POX流を急冷流体と接触するよう適応される1つ以上の構成要素;
POX燃料ガスからの急冷POX流中に存在する任意の固体を分離するよう適応される任意のPOX洗浄器;
圧縮再循環CO流の一部分に対してPOX燃料ガスから熱を引き出し、冷却POX燃料ガスを出すよう適応されるPOX熱交換器;
POX燃料ガスから任意の液体水を分離するよう適応される任意の分離器;
冷却POX燃料ガスを約12MPa以上の圧力に圧縮するよう適応される圧縮器;
酸素および圧縮再循環CO流の一部分の存在下でPOX燃料ガスを燃焼して、約12MPa以上の圧力でPPS燃焼生成物流を形成するよう適応されるPPS燃焼器;
PPS燃焼生成物を拡張し、連結発生器中で出力を発生するよう適応されるタービン;
拡張PPS燃焼生成物流から熱を引き出し、圧縮再循環CO流に熱を付加するよう適応されるレキュペレータ熱交換器;
拡張PPS燃焼生成物流からの任意の酸化不純物を分離し、再循環CO流を出すよう適応されるPPS洗浄塔;
再循環CO流を約12MPa以上の圧力に圧縮して、圧縮再循環CO流を形成するよう適応されるPPS圧縮器;
圧縮再循環CO流の一部分をPOX熱変換器に向けるよう適応される流動構成要素;
圧縮再循環CO流の一部分をPPSレキュペレータ熱変換器に向けるよう適応される流動構成要素;ならびに
POX熱交換器からの圧縮再循環CO流をPPSレキュペレータ熱変換器に向けるよう適応される流動構成要素
を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
このように本発明を一般的に説明してきたが、ここで添付の図面を参照する。図面は、必ずしも同一単位で測定されるわけではない。
図1】本発明の開示による複合POX系およびPPSの例示的一実施形態を示すシートであって、この場合、PPSは、POX系における液体または固体の炭化水素または炭素系燃料の部分酸化から得られる燃料ガスを用いて出力を発生する。
図2図1からの複合系の一部分を示すフローシートであって、この場合、例示部分は、特に、輸出HまたはH+CO混合物の生成のために有用な複合系の要素を示す。
図3】急冷POX燃料ガスが水露点温度であるよう、過剰量の水を用いて操作する水急冷POX反応を伴いCO石炭スラリーを用いる本発明の開示の例示的一実施形態による系のための燃料ガス熱交換器における温度対伝達される熱のプロットである。
図4】400℃の急冷温度で操作する水急冷POX反応を伴いCO石炭スラリーを用いる本発明の開示の例示的一実施形態による系のためのPOX熱交換器における温度対伝達される熱のプロットである。
図5】本発明の開示の例示的一実施形態によるPOX系およびPPSを組み合わせる出力系のASPENシミュレーションからの質量および熱平衡を示し、この場合、シミュレーションは、POX反応器における石炭/COスラリーの使用、ならびに急冷流体としての水の利用を包含した。
図6】本発明の開示の例示的一実施形態によるPOX系およびPPSを組み合わせる出力系のASPENシミュレーションからの質量および熱平衡を示し、この場合、シミュレーションは、POX反応器における石炭/COスラリーの使用、ならびに急冷流体としての水の利用を包含した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、種々の実施形態を参照することにより、本明細書中で以後、本発明をさらに詳細に記載する。これらの実施形態は、この開示が十分且つ完全であり、そして、本発明の範囲を当業者に詳細に伝えるよう、提供される。実際、本発明は、多数の異なる形態で具体化され、本明細書中に記述される実施形態に限定されるよう意図されるべきでない;むしろ、これらの実施形態は、この開示が適用可能な法的要件を満たすよう提供される。明細書中で、ならびに添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」という単数形は、そうでないと明らかに示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0019】
本発明の開示の系および方法は、炭素系燃料、特に固体燃料および/または液体燃料の部分酸化(POX)を達成するために適応される。本発明の開示により用いられ得る燃料の非限定例としては、石炭、褐炭、石油コークス、ビチューメン、バイオマス、藻類、木材、等級別可燃性固体廃棄物、アスファルト、使用済みタイヤ、原油、その他の灰分含有液体燃料等が挙げられる。
【0020】
種々の実施形態では、本発明の開示の系および方法は、燃料ガスとして有用である流れを生成するために、酸素、好ましくは実質的に純粋なOを用いて燃料を部分的に酸化するよう適応される。部分酸化は、POX反応器中で実行され得る。特定の実施形態では、空気分離ユニットまたは他の酸素プラントが、本発明の開示の系および方法に利用され得る。プラントからの酸素は、POX反応器に向けられ得る。いくつかの実施形態では、酸素は、先ず、熱交換器に通されて、POX反応器に進入する酸素の温度を増大し得る。空気分離プラントからの窒素も、当該系および方法に組み入れられ得る。例えば、ドライNは、固体燃料を粒状化する破砕機に通されて、したがって粒子状燃料を部分的に乾燥し得る。粒子状燃料は、第二粉砕機中で、好ましくは約500ミクロン以下、約250ミクロン以下または約100ミクロン以下の粒子サイズにさらに粉砕され得る。小粒子燃料は、スラリー媒質でスラリーに形成されるべくミキサーに向けられる。スラリー媒質はCOを含み、これは、好ましくは約3.5MPa以上、約5MPa以上、または約8.5MPa以上の圧力を有する。COスラリー媒質中のCOは、好ましくは、約5℃〜約40℃、約10℃〜約30℃または約12℃〜約25℃の温度であり得る。COスラリー媒質中のCOは、約500kg/m〜約1000kg/m、約600kg/m〜約900kg/mまたは約700kg/m〜約800kg/mの密度を有し得る。スラリー媒質は、代替的には、水またはCOと水の組合せを含み得る。POX反応器中に用いられる固体燃料スラリーは、約25重量%〜約75重量%、約30重量%〜約70重量%または約40重量%〜約60重量%の固体燃料を含み得る。粒子状燃料スラリーは、次に、POX反応器中で酸素と組み合わされ、これは、好ましくは約90モル%以上、約95モル%以上または約97モル%以上の酸素を含む。POX反応器は、好ましくは、約4.5〜約8.5MPaの圧力で、約1450℃の温度で操作する;しかしながら、温度および圧力は、POX反応器を出るPOX流の性質に関連して、本明細書中で別の状況で開示されるような温度および圧力範囲の任意の組合せであり得る。
【0021】
POX反応器中の炭素系燃料の部分酸化はPOX流を形成し、これは、その構成成分に関して明示され得る。特に、POX流は、燃料ガスおよび1つ以上の不純物(酸化可能不純物および非酸化可能)を含み得る。燃料ガスは、水素、一酸化炭素またはその組合せを含み得る。元のPOX燃料(固体または液体炭化水素または炭素系材料)または部分酸化反応から得られる例示的不純物としては、例えばHS、COS、CS、HCN、NHおよびHgが挙げられる。流れはPOX反応器から生じ、この場合、そこから生成されるPOX流は、冷却流体で急冷され得る。これは、冷却流体の部分気化を生じて、燃料ガスと混合される気化冷却流体を含む燃料ガスを生成し得る。過剰量の急冷流体を用いて、POX反応器からの生成物として、液体冷却流体および蒸気燃料ガス+気化冷却流体の混合物を提供し得る。冷却POX流は分離を施され、したがって、固体(例えば固体灰分粒子)が除去され得る。固体は、特に、燃料ガス混合物から分離される液体冷却流体との混合物中で除去され得る。任意の残りの微細灰分粒子は、顆粒冷却流体洗浄カラムにより、その後、キャンドルフィルター等により、除去され得る。代替的には、急冷は、サイクロンおよびフィルターの組合せで除去される伴出灰分粒子を有する気相を生じ得る。冷却POX流は、その後、熱交換器中で冷却されて、急冷前にPOX流中に存在した有用な熱の少なくとも一部分を回収し得る。特に、燃料ガスと混合される気化冷却流体の大部分は凝縮され、熱は主に高圧再循環流に伝達されて、出力発生系におけるレキュペレータ熱交換器の熱端での温度差を低減し得る。これは、単独での、またはPOX系と組合せた出力発生系の全体的効率を増大するのに特に有益であり得る。POX流(すなわち、燃料ガス流)は、出力発生のための燃焼器中での燃料ガスのさらなる燃焼に必要とされる圧力より低いかまたは等しい圧力で生成され得る。例えば、本発明の開示の系および方法と組み合わせられ得る燃焼器および関連出力発生サイクルは、米国特許出願公開番号2011/0179799(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。このような燃焼器および関連出力発生サイクルは、「NET出力系」として本明細書中で言及され得る。NET出力系の工程は、作業流体としてCOを主に用いて、出力発生を達成する。特に、当該工程は、高圧再循環CO流と燃料の燃焼から生じる燃焼生成物との混合物を拡張する高圧/低圧比タービンを用いる。純酸素は、燃焼工程における酸化剤として用いられ得る。熱タービン排気を用いて、高圧再循環CO流を部分的に予熱する。NET出力系の再循環CO流は、O発生プラントの空気供給物の圧縮エネルギーから得られる熱を用いても加熱される。燃料および燃焼由来不純物、例えばイオウ化合物、NO、NO、CO、HO、Hg等はすべて、大気中への放出を伴わない処分のために分離される。
【0022】
本発明の開示の系および方法は、具体的には、POX系および出力発生系(PPS)の組合せであるとして特性化され得る。NET出力系は、本発明の開示に従って用いられ得るPPSの一例である。特に、POX燃料ガス流は、燃焼器のための燃料流の一部または全部としてPPS燃焼器に導入され得る。高圧燃焼サイクルでは、POX流からの燃料ガスは、概して、出力発生系燃焼器において必要とされる高圧に圧縮されなければならない。例えば、POX燃料ガス流は、約10MPa以上、約15MPa以上、約20MPa以上または約25MPa以上の圧力に圧縮され得る。他の実施形態では、圧力は、約8MPa〜約50MPa、約15MPa〜約45MPaまたは約20MPa〜約40MPaであり得る。
【0023】
酸素と固体または液体燃料との反応から生じるPOX燃料ガスは、PPS燃焼器中へのPOX燃料ガス流の導入前に除去されなければならない種々の量の固体および溶融固体を含み得る。具体的には、POX燃料ガスは、急冷され、必要に応じて、灰分およびその他の固体材料が除去され得る温度に冷却され得る。これは、POX系およびPPSにおける設備の下流汚染を防止するために有益である。POX燃料ガス流の冷却中に放出される熱は、出力発生系に伝達されて、出力発生系の全体的効率を最大にし得る。特に、この熱は、燃焼生成物流の冷却後に、そして出力発生系の燃焼器中に再循環CO流体を戻し入れる前に、出力発生において循環する再循環CO流体の少なくとも一部分を部分的に加熱するために用いられ得る。特に、熱は、再循環CO流体の圧縮後に再循環CO流体に付加され得る。任意に、POX反応器および/または出力発生系燃焼器に必要とされる酸素も、同一または異なる熱変換器中で冷却POX流に対して加熱され得る。
【0024】
POX反応器は、約1200℃以上、約1300℃以上または約1400℃以上である温度を有する出口POX燃料ガス流を提供するよう適応され得る。さらに特定的には、温度は、約1000℃〜約2000℃、約1200℃〜約1800℃または約1300℃〜約1600℃であり得る。種々の実施形態では、1つ以上のステップを利用して、POX流(したがって、さらなる燃焼器への流入のための燃料ガス)を、好ましくはほぼ周囲温度に冷却し得る。
【0025】
一ステップにおいて、上記のような温度でPOX反応器を出た直後のPOX流は、より低い温度に急冷され得る。急冷は、温度を好ましくは400℃以下に低減するが、これは、炭素生成またはメタルダスティング腐食が起こらないほどブードワ反応の速度が遅い領域である。400℃以下の温度に急冷することは、その後の除去のために揮発性金属塩を凝縮するのに役立つ。急冷ステップは、POX反応温度に関連して比により明示され得るより低い温度にPOX流の温度を低減するよう適応され得る。特定の実施形態では、POX反応温度対急冷POX流の温度の比は、約3.25:1以上、約3.5:1以上または4:1以上であり得る。さらに特定的には、POX流対急冷POX流の温度比は、約3.25:1〜約6:1、約3.75:1〜約5.5:1または約4:1〜約5:1であり得る。特定の実施形態では、急冷POX流の温度は、約400℃以下、約350℃以下または約300℃以下であり得る。特定の実施形態では、当該温度は、約200℃〜約400℃、約225℃〜約375℃または約250℃〜約350℃であり得る。急冷は、POX流を1つ以上の急冷流体と混合することにより実行され得る。本発明の開示に従って用いられ得る急冷流体の非限定例としては、再循環POX生成物流(すなわち、急冷流体温度にすでに冷却されており、次いで、POXガス熱変換器中で冷却され、その後、液体水分離されるPOX生成物の少なくとも一部分)、急冷流体温度での水、液体CO、その混合物等が挙げられる。有用な急冷流体温度は、約150℃以下、約100℃以下、約75℃以下または約60℃以下であり得る。急冷流体温度は、特に、約10℃〜約150℃、約15℃〜約100℃または約20℃〜約75℃であり得る。代替的には、急冷流体は、冷却急冷POXガスに対して、あるいは他の手段により、典型的にはPOX急冷温度より約20℃低い温度に近い温度に予熱され得る。水急冷を用いる実施形態では、水の一部分は気化され、したがって燃料ガス、上記および液体水部分の混合物を生じ、これは、大半の灰分粒子を洗い落とす。液体および蒸気の全体の温度は、POX反応に用いられる圧力、ならびに急冷のために用いられる液体水の量により決定される。
【0026】
さらなるステップは、任意の液体水および大部分の任意の灰分粒子またはさらなる固体を急冷POX流蒸気から分離することを提供し得る。固体の除去は、任意の慣用的分離またはフィルター手段を用いて実行され得る。適切な固体除去構成要素の非限定例としては、サイクロンフィルター、沈澱槽、キャンドルフィルター、バグフィルター、液体洗浄塔等が挙げられる。いくつかの実施形態では、分離器は、POX反応器の下部に提供され得る。分離蒸気は、概して、逆流水洗浄カラムの基部に導入されて、粒状灰分のさらなる痕跡を除去し得る。次に、正常化POX燃料ガス+上記は、任意に、ガスフィルター、例えば間ドルフィルターに通されて、燃料ガスを冷却するために用いられる熱交換器中または下流PPS中に粒子の沈着が認められ得ないことを保証し得る。いくつかの実施形態では、液体CO流は、急冷流体として用いられ得る。この場合、急冷後の全体流は、伴出固体粒子を伴う単一気相で構成され得る。急冷に用いられる液体COの量は、急冷流の温度が約200℃〜約400℃であるような量であり得る。灰分は、上記のような一連のフィルターで除去され得る。他の実施形態では、水分離後の冷却分離燃料ガス流は、急冷流体の一部または全部として用いられ得る。種々の実施形態では、急冷の好ましい方法は、水を用い得る。当該系は、水およびCOの混合物も用い得るが、この場合、水の量は、急冷して灰分粒子の大部分を洗い落とした後に十分な液体水を生じるのに十分な量である。
【0027】
さらに別のステップでは、急冷POX流(好ましくは固体の濾過後)は、周囲温度近くに冷却され得る。したがって、開示される系および方法は、熱変換器のために適応される1つ以上の構成要素を包含し得る。特に、熱交換器は、急冷POX流からの熱を、出力発生系で利用される高圧CO再循環流の1つ以上の部分に伝達するよう適応され得る。例えば、熱は、CO再循環圧縮機排気から得られる高圧CO再循環流に、および/または出力発生サイクルに用いられるレキュペレータ熱交換器における1つ以上の適切な点に伝達され得る。PPSレキュペレータ熱交換器への熱の注入のための温度の選択、ならびに急冷燃料ガス冷却器において加熱されるべきPPSレキュペレータ熱交換器から得られる流れの数および入口温度は、熱回収が経済的熱交換器サイズと一致する最大温度レベルであることを保証するために、熱回収工程を変更することにより決定され得る。
【0028】
POX反応器中で用いられる固体燃料は、種々の形態で提供され得る。上記の実施形態では、固体燃料は、粒子状形態、好ましくは微細粉末状態で提供され、スラリー媒質でスラリー化され得る。好ましい実施形態では、スラリー媒質は、例えば、水、液体COおよびその組合せを含み得る。液体COは、少なくとも一部は、出力発生系からの再循環COから生成され得る。スラリー化流体としてのCOの使用は、異なるスラリー媒質、例えば水(例えば、出力発生系から凝縮され、分離される水)の使用と比較して、POX反応器範囲へのPOX燃料供給物の温度を上げるために必要とされる熱を低減するのに特に有用であり得る。COは好ましいスラリー化媒質であり得るが、しかし他の材料、例えば水は、所望により依然として用いられ得るし、本発明の開示のある実施形態下での効率の許容可能な損失をもたらし得る。POX反応器中で用いられる炭素系燃料は、加熱ビチューメンのような液体であり得るし、この場合、スラリー流体は必要とされ得ない。
【0029】
スラリー化媒質としてCOまたは水を用いる場合、POX反応器を出るPOX流の組成物は、高い一酸化炭素(CO)濃度および分圧を有し得る。このような実施形態では、POX流の急冷が、当該流を冷却し、したがって400℃未満の温度を有する急冷化POX流を形成するよう適応される、ということを保証することは特に望ましい。このような温度降下を提供することは、特に、炭素がPOX流熱交換器中に沈着され得ないよう、そして下流設備でメタルダスティング腐食が起こり得ないよう、ブードワ反応動力学を十分に低い状態に限定し得る。
【0030】
特定の実施形態に関して、本開示の系および方法は、POX燃料供給物およびPOX熱交換器の組合せに関して、少なくとも以下の4組の操作条件を包含し得る:CO急冷を伴うCO燃料スラリー;水急冷を伴うCO燃料スラリー;水急冷を伴う水燃料スラリー;およびCO急冷を伴う水燃料スラリー。しかしながら、さらなるスラリー化媒質および/またはさらなる急冷化流体の利用に基づいて他の組合せが生じ得る、と理解される。さらに、燃料スラリー媒質は、水およびCOの組合せであり得る。同様に、急冷化流体は、水および冷却POX流の組合せであり得る。
【0031】
灰分除去後に熱交換器中で急冷化POX流を冷却することにより放出される熱は、出力発生系から得られる高圧CO再循環流の1つ以上の部分に伝達され得る。急冷流体は、液体水分離後のPOX熱交換器の冷却端を出る再循環POX燃料ガスであり得るし、あるいはそれは、凝縮および分離水であり得る。それは、燃料ガスおよび水の組合せでもあり得る。さらに、それは、再循環COであり得るし、あるいは燃料ガスまたは水の、あるいはともにCOとの組合せであり得る。いくつかの実施形態では、急冷流体の供給源は特に関連があり得る。COスラリー化媒質を利用する実施形態は、固体燃料供給物(例えば、石炭)中に存在する水素および水に由来する水の正味産生を生じ得る。したがって、分離液体水は、水に溶解される可燃性構成成分を分離するよう処理され得る。これらの分離可燃性物質は、圧縮され、出力発生系燃焼器に戻され得る。清浄化水流は、次に、固体燃料スラリー化系またはPOX急冷系に再循環され得るし、任意の余分量の水は出力発生系に送られて、そこで、それを用いて、米国特許出願公開番号2011/0179799に記載されたように出力発生系において水分離段階で生成される任意のHSO/HNO酸を希釈し得る。固体燃料が水でスラリー化される実施形態では、高温POX流中に存在する水は、固体燃料中の炭素の部分酸化により生成されるCOと反応して、水素ガスおよび一酸化炭素を生じ得る。これらは、約1:1のHおよびCO(体積)の比で存在し得る。
【0032】
シフト反応における水のこの消費は水の欠乏を示し、出力発生系で生成される水は、次に、POX系に戻されて、固体燃料石炭スラリーを、したがってこの消費のための構成を生じ得る。正味の冷却POX流(すなわち、燃料ガス流)は、次に、出力発生燃焼器中での燃焼のための必要圧力に圧縮され得る。種々の実施形態において、本発明の開示の系および方法は、POX反応器を出る高温POX流を伴う使用のための内部急冷流体の生成のために適応され得る。これは、POX反応、固体除去、熱交換冷却および水分離の逐次的ステップから生じ得る。POX流からの燃料ガスの正味量は、圧縮され、相対的抗濃度の可燃性ガス(例えば、HおよびCO)を伴って、ならびに出力発生系燃焼器中の有用な燃焼条件を保証する熱量値で、出力発生系燃焼器に送達され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示によるPOX反応器は、出力発生系燃焼器における圧力より高い圧力で操作されるよう適応され得る。出力発生系燃焼器は、特に、系において連続的に再循環される作業流体としてCOを用い得る。好ましくは、POX流は、急冷媒質としての冷却POX流または水を用いて本明細書中に記載されるように熱交換により急冷され、冷却され、そして冷却POX流(すなわち、燃料ガス)は、さらなる圧縮の必要なく、出力発生系で用いられ得る。POX反応器は炭素系燃料の燃焼のために適応される任意の反応器を含み得るが、特にこの場合、燃料は部分的にのみ酸化され、そして特にこの場合、反応器は、本明細書中に記載されるような出力発生系燃焼器の操作圧力より大きい圧力で機能するよう適応される。例示的非限定的実施形態では、POX燃焼器は蒸散冷却を利用し得るが、この場合、冷却流体、例えばCOは、POX燃焼小室を取り囲む多孔性蒸散層に通され、これは、灰分衝突および凝集を防止するために特に有用であり得る。本発明の開示によりPOX反応器とともに用いられ得る蒸散冷却の例示的実施形態は、米国特許出願公開番号2010/0300063(Palmer等)、米国特許出願公開番号2011/0083435(Palmer等)および米国特許出願公開番号2012/0073261(Palmer等)(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
【0034】
さらなる実施形態では、本開示によるPOX反応器は、出力発生系燃焼器の圧力より低い圧力で操作するよう適応され得る。このような実施形態では、出力発生系燃焼器中で燃料として用いるためのPOX流は、出力発生系燃焼器に通される前に圧縮され得る。POX反応器は、任意の市販の系を含み得る。本発明の開示による有用な市販の系の非限定例としては、Shellドライ粉末化石炭供給物伴出流反応器、GE/Texaco急冷反応器、Siemens冷却スクリーン急冷反応器または類似の系が挙げられる。有用なPOX反応器は、POXバーナーからの輻射熱を吸収する内部伝熱セクションを含み得る。このような実施形態では、出力発生系からの高圧再循環CO流の一部分は、より高い温度で加熱され、PPS系に戻され得る。例えば、約400℃以上の温度での再循環COは、POX反応器内で約450℃〜約600℃の温度に加熱されて、出力発生系におけるレキュペレータ熱交換器に戻され、そこで、同様の温度で高圧再循環CO流のさらなる部分と再混合され得る。
【0035】
本発明の開示によるPOX反応器と出力発生系との組合せは、種々の有用な態様を提供し得る。一例として、組合せは、不純物(例えば、石炭または他の固体燃料から、ならびに燃料の部分酸化から)が、出力発生系燃焼器中に進入する冷却高圧POX流中に保持され得る、という点で限定され得る。このような不純物は、HS、COS、CS、HCN、NH、Hgを含み得る。これらのおよびその他の不純物は、出力発生系において酸化されて、例えばSO、CO、N、NOおよびHgを生成し、これは次に、出力発生系から除去され得る。例えば、出力発生系燃焼器出口流から凝縮される水流は、米国特許出願公開番号2011/0179799に記載されているように、酸性で、HNO、HSOおよび溶解無機塩のうちの1つ以上を含む。
【0036】
出力発生系に直接通すというよりむしろPOX反応器に通す固体燃料の加工処理は、考え得る付着反応生成物を除去する能力の点からみて特に有用であり得る。例えば、POX反応器を出るPOX流は、約400℃以下の温度、または石炭由来の灰分(あるいは石炭または他の固体燃料から生じるその他の溶融不純物)が除去され得る固体形態であることを保証するのに有用なさらなる温度に急冷され得る。好ましくは、固体不純物は、除去されて、熱交換器、タービン、圧縮機等のような出力発生系の構成要素の遮断および/または腐食を実質的に防止するために、非常に低い濃度に、そして十分に低い粒子サイズになされ得る。
【0037】
前記のほかに、POX反応器からのPOX流の急冷は、本明細書中に記載されるような温度より低い急冷POX流を提供するよう適応され、固体燃料中の任意の無機構成成分の気相濃度が、同様に、出力発生系の1つ以上の構成要素における沈着を実質的に防止するのに十分に低い、ということを保証するために十分に低い。例えば、石炭の部分酸化は、1つ以上のアルカリ金属塩、例えばNaCl、CaSOおよびKClを生成し、これらは本明細書中で記載されるように除去され得る。さらにまた、出力発生系における任意の熱交換器またはその他の構成要素における炭素沈着および/またはメタルダスティング腐食を実質的に防止するためにブードワ反応が十分に遅いということを保証するよう、急冷POX流の上限温度が適応され得る。
【0038】
本発明の開示の系および方法は、POX流の冷却中に放出される熱の実質的にすべての回収、好ましくはほぼ周囲温度への冷却中のそして出力発生系における再循環高圧CO流への熱の回収を提供するよう適応され得る。この付加的加熱は、特に、出力発生系のレキュペレータ熱交換器において低温レベルで提供され得る。このやり方での付加的熱の投入は、出力発生系の全体的効率に及ぼす有意の正の作用を提供し得る。この作用は、400℃〜800℃のより高い温度範囲と比較して、そして出力発生系のレキュペレータ熱交換器において冷却中であるタービン排気流のより低い比熱と比較した場合の、50℃〜400℃のより低い温度範囲での高圧再循環CO流のはるかに高い比熱のためである。この顕著な差異は、再循環CO流を加熱するために50℃〜400℃の温度範囲に亘ってレキュペレータ熱交換器において有意の付加的な余分の熱が必要とされる、ということを意味する。POX流熱交換器中の急冷POX流から得られる付加的熱は、燃料ガスそれ自体が燃焼される場合に放出される熱の量と実質的に等しい出力発生系燃焼器のための有効量の付加的熱を提供する。
【0039】
再循環水流を用いて飽和までPOX反応器が急冷される種々の実施形態では、ほぼ周囲温度に冷却する急冷POX流に関する温度‐熱放出曲線は、急冷水の気化に由来する水蒸気が凝縮し始めると、大きな初期熱放出を示す。単位温度低下当たりのこの熱放出は、POX流が冷えると、漸進的に低減する。当該作用は、冷却急冷POX流から熱を回収するために用いられるべき出力発生系高圧再循環流から得られる2つの別個の高圧再循環CO流を要する。いくつかの実施形態では、第一の高圧再循環CO流は、約45℃〜約70℃の温度でのCO再循環圧縮機放出物から得られる。第二の高圧再循環CO流は、タービン排気冷却流の露点への小温度接近が認められるレキュペレータ熱交換器における点で、高圧再循環流から獲得され得る。これら2つの流れは、一緒になって、その含水量が凝縮し始めると、冷却急冷POX流からの大きな初期熱放出を提供し得るが、これは、考え得る最高温度レベルで、高圧CO再循環流に効率的に移し戻され得る(図3参照)。POX流が初期に約400℃に急冷される実施形態では、約400℃と急冷POX流の水露点との間の冷却範囲が存在し、そして、POX流の水露点より低い温度範囲と比較した場合、急冷POX流から利用可能な熱のこの部分を効率的に除去するために、この範囲はより低い流量の再循環高圧COを必要とし得る。これは、急冷POX流の水露点温度に近いか、今それより低い点での加熱高圧再循環CO流の一部分を除去することにより成し遂げられ得るが、一方、残りの部分は、急冷温度に近いか、および/またはそれより低い温度(例えば、約400℃)で除去される(図4参照)。次に、加熱高圧再循環CO流は、レキュペレータ熱交換器中の高圧再循環COのバルク流に対応する温度点でレキュペレータ熱交換器に戻され得る。種々の実施形態では、POX冷却熱交換器中で単一戻り流と併合するための2つの流れに関する選択肢が提供され得る。いくつかの実施形態では、高圧再循環流体の2つより多い流れが用いられ得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、急冷および灰分除去後にPOX反応器から獲得される燃料ガスは、約250℃〜約400℃の温度で、H、CO、COおよびHOをおもに含み得る。この燃料ガス流の一部分は、種々のH対CO比で、純H、COまたはその組合せの生成のために獲得され得る。大規模H生成のための典型的用途は、例えば精製における水素化脱硫および水素化分解であり、潜在的には自動車燃料としてであり得る。HおよびCO混合物に関する典型的用途は、例えばフィッシャー・トロプシュ炭化水素液体生成(例えば、約2.2 H対CO比)およびメタノール生成(例えば、約2.0 H対CO比)であり得る。各々の場合、H対CO比は、POX燃料ガス流中で約1未満の比から増大されなければならず、この場合、比は、固体燃料のためのスラリー化媒質としてのCOまたは水の使用によって決まる。POX生成物ガス中により多くの水を有する水ベースのスラリーは、HおよびCOに変換されているCOを有意の割合で生じて、まさに1より低いH対CO比を得る。COベースのスラリーは、はるかに低いH対CO比を有する。分離急冷POX燃料ガス流の少なくとも一部を、触媒シフト反応器に通して、式(2)で以下に示されるように、流れとの反応によりCOをHに変換することは、有用であり得る:
CO+HO=H+CO (2)

灰分除去後に約250℃〜約400℃の温度で得られる燃料ガスの一部分を用いて、そしてイオウ耐容性COシフト触媒、例えばシフト反応器中のコバルトをベースにしたものを用いることにより、これは成し遂げられ得る。Hを濃化された燃料ガスの部分は、次に、POX熱交換器を別個に通過することにより冷却され得る。放熱シフト反応において放出される熱は、PPSに伝達され得る。次に、出口シフト化ガスが残りの冷却POX流の一部分と混合され、併合流は、単一非吸着構成成分として必要とされるH対CO比でHおよびCOを分離するよう意図された多床型圧力変動吸着器に通され、一方、吸着構成成分は、イオウ化合物、HCN、NH、Hg、CO、HOおよび大半のCHのすべてを含有し得る。この非吸着分画は、石炭(あるいは他の固体または液体燃料)に由来する多少のNおよびAr、ならびにPOX反応器中で用いられる酸素も含有し得る。これらの不活性構成成分は、好ましくは、総濃度の5%より低く、これは、フィッシャー・トロプシュおよびメタノール反応器の両方へのガス供給のために許容可能である。純H生成が必要とされる場合、シフト化冷却ガスのみがPSAに供給される。還元形態での石炭およびPOX由来不純物のすべてを伴うPSAからのほぼ大気圧の廃棄ガスは、圧縮され、PPS燃焼のために残留POX燃料ガスに戻される。
【0041】
固体燃料の部分酸化を伴う出力発生系の一実施形態を、図1を参照しながら記載するが、この場合、固体燃料は、POX反応器4中で部分酸化されるべき石炭供給流21の形態で提供される。石炭流21は、空気取り込み流62から酸素流32および60ならびに窒素流23を生じる空気分離ユニット6から得られる約82℃(180°F)の温度でNを含むドライ窒素流23を供給される大型粒子破砕機1中で破砕され、部分的に乾燥される。好ましくは、ドライ窒素流23は、PPSにおいてレキュペレータ熱交換器を出るCO濃化タービン排気の高温流に対して加熱され得る。石炭は、小型粒子破砕機2中で好ましくは約250ミクロン以下の粒子サイズにさらに破砕されて、粒状化石炭流25を提供し、これは、スラリーミキサー3に向けられる。スラリーミキサー3では、粒状化石炭はCOスラリー媒質流29と混合され、これは、好ましくは、約8.5MPa以上の圧力を有する。COスラリー媒質流29中のCOは、約865kg/mの密度を有する。粉末化石炭は、圧力を、ロックホッパー・システムで、または他の手段により、8.5MPaの圧力に増大された後、COと混合される。石炭/COスラリー流26はスラリーミキサー3を出て、好ましくは、約45重量%の石炭を含む。代替的には、スラリー媒質は、水流であり得る。粉末化加圧石炭は、窒素流中で伴出されて、POXバーナーに供給される。次に、スラリー流26はPOX反応器中にポンプ輸送されて、そこで酸素流56と併合され、これは、好ましくは、97モル%以上の酸素濃度を含む。POX反応器4は、好ましくは、約8.5MPaの圧力で、約1400℃の温度で操作する;しかしながら、温度および圧力は、POX反応器を出るPOX流の性質に関連して本明細書中に別様に開示されるような温度および圧力範囲の任意の組合せであり得る。石炭スラリーの調製のための条件は、それ相当に調整され得る。
【0042】
POX反応器4は、石炭を部分酸化して、POX流を形成するよう適応され、POX流は、POX反応器を出て、急冷小室に入り得る(図示されていない)、あるいは図1に示したようにPOX反応器内で急冷され得る。POX流は、1つ以上の燃焼可能な(すなわち、酸化可能な)材料、例えばH、CO、CH、HS、COS、CS、HCN、NH(これらに限定されない)を含み得る。さらに、POX流は、Hgおよび石炭(または他の固体燃料)に由来するその他の不純物、ならびに酸素流56に由来するような不活性材料(例えば、NおよびAr)+その他の微量構成成分を含み得る。POX流は、1つ以上の非燃焼可能材料、例えば灰分またはスラグも含み得るし、これらは、所望によりPOX流から濾過され得る。
【0043】
POX流(POX反応器に対して内側または別個の構成要素中)は、急冷流体(本発明の実施形態における液体水流57)と混合することにより急冷される。図示したように、液体水流57は、制限ノズルにおける基部近くのPOX反応器に進入する。急冷流の付加は、好ましくは約304℃(より高い温度も包含されるが)の水飽和温度より低い温度にPOX流構成成分を冷却する。急冷温度は、好ましくは、非燃焼可能物質、例えば灰分およびスラグが固体形態である温度でもあり得る。余分量の急冷水は、POX反応容器(または別個の急冷容器)の排水受けにスラグおよび大部分の微細灰分とともに集合して、そこで、さらなる処理のために除去される。急冷POX流58は、洗浄器ユニット5に進むが、これは、水洗浄塔とその後の微細カートリッジフィルターを含み、これは、ダスト負荷を約4mg/m以下の燃料ガス、約3mg/m以下の燃料ガス、または約2mg/m以下の燃料ガスに低減するよう適応される。洗浄器ユニット5は、スクラブ水を再循環するために、そして処分のために灰分流66を処理するためにも必要とされるすべての設備およびポンプも包含し得る。POX反応器灰分処理およびガス清浄化のために有用な系の例示的一実施形態は、石炭/水スラリーバーナーを有するGE/Texaco POX系であって、これは、代替的には、石炭/COスラリーを許容するよう修正され得る。
【0044】
清浄化燃料ガス+蒸気流55は、熱交換器7中で冷却される。出口流59は、熱交換器9中の冷却水に対してさらに冷却される。液体水46は、分離容器8中で入口流61から分離され、流れ38からPOX反応器急冷および多少の付加補給水にポンプ11で送り戻されて、急冷水流57を生じる。正味燃料ガス流47は、出力発生系燃焼器14への流れ48としての流入に適した圧力に、多段階遠心分離圧縮機10中で圧縮される。一例として、燃料ガス流47は、約30.5MPaの圧力に圧縮され得る。圧縮燃料ガス流48は、レキュペレータ熱交換器中で、出力発生系燃焼器14への投入に適した温度に加熱される。一例として、圧縮燃料ガス流48は、約746℃の温度に加熱され得る。加熱燃料ガス流64は、出力発生系燃焼器14中で燃焼されるが、そこで、酸素およびCOと併合される。図示実施例において、併合O/CO流51は、30%Oおよび70%CO(モルベースで)を含む。併合O/CO流51は、好ましくは、出力発生系燃焼器14への投入に適した温度に加熱される。一例として、併合O/CO流51は、レキュペレータ熱交換器12中で約746℃の温度に加熱される。熱再循環CO流52は、レキュペレータ熱交換器12から送られて、出力発生系燃焼器14への投入に適した温度である。一例として、再循環CO流52は、約746℃に加熱され得る。
【0045】
出力発生系燃焼器中では、燃料ガスの燃焼からの燃焼ガスは、再循環CO流52で冷却されて、図示実施形態において、約1150℃の温度および約30MPaの圧力で、併合燃焼生成物流50を生じる。これは、発電機65と連結されるタービン13において約3MPaの圧力に拡張されて、出力電力63を生じる。タービン出口流49は、レキュペレータ熱交換器12中で冷却されて、図示実施形態においては、約64℃の温度で冷却生成物流53として出る。当該流53は、水冷器16中で約17℃の温度に冷却される。さらに冷却されたタービン出口流54はスクラブ塔17に進入するが、これは、さらに冷却されたタービン流54を受容する塔の詰込区分の上のスクラブ塔液体入口41に、循環ポンプ18を介して大いに再循環される。流れ40の一部分は、さらなる処理のために流れ39として分割される。タービン排気ガスがレキュペレータ熱交換器12中で水露点より低い温度に冷却すると、以下の反応が起こる:

NO+1/2O=NO (3)
NO+SO=SO+NO (4)
SO+HO=HSO (5)
【0046】
上記の反応は、液体水、窒素酸化物、SO/SOおよび余分量の酸素の存在下で進行する。式(3)で示される限定反応は3MPaで迅速に進行し、式(4)および式(5)の反応は非常に速いため、SO/SO濃度は極低いレベルに低減される。イオウ酸化物のすべてが硫酸に転化されると、窒素酸化物は、約95%の転化率/1回通過で、以下の反応式で転化される:

2NO+HO=HNO+HNO (6)
3HNO=HNO+2NO+HO (7)
NO+1/2O=NO (8)
【0047】
図1において、正味液体酸生成物流39中に存在する消散は、存在する任意の水銀を水銀塩化物に転化する。スクラブ塔17は、好ましくは、効率的希釈酸除去装置として機能し得る付加的水洗浄および酸ミスト除去区分を装備されるが、それは事実上すべての蒸気反応がスクラ塔17の上流で起きたためである。混合酸は、ミキサー15中で石灰石スラリー流36(または他の適切な基剤)で処理されて、石膏および硝酸カルシウム流37を生じる。他の微量金属塩も分離され得る。硝酸カルシウムおよび溶解塩除去後の残留水流38は、冷却塔またはPOX急冷系への補給として、あるいはスクラブ塔17中のスクラブ水として用いられ得る。
【0048】
約2.9MPaの圧力でスクラブ塔17を出る主にCO流42は、多段階中間冷却圧縮器19で、その後、濃厚流体多段階ポンプで、出力発生系燃焼器への投入に適した圧力、例えば約30.5MPaに圧縮される。圧縮CO放出流35は、約54℃の温度でポンプ19の最終段階を出て、この流動の部分である流れ70は、レキュペレータ熱交換器12中で746℃の温度に加熱されて、CO流52として出る。
【0049】
この実施形態における空気分離プラント6は、約8.6MPAの圧力で99.5モル%の酸素純度生成物流を生じ、これは、2つの別個の流れに分かれる。酸素流60は、熱交換器7中で約294℃の温度に加熱されて、石炭の部分酸化のためにPOX反応器4中で用いるために流れ56として出ていく。残りの酸素流32は、約8.6MPAの圧力でCOと混合される。具体的には、COは、圧縮機19の中間段階から流れ30として獲得され、そして部分流31は酸素流32と混合して、約30%Oおよび70%COモルの組成物を生じる。この希釈O流33は、多段階中間冷却圧縮器20中で約30.5MPaの圧力に圧縮され、放出流34は、レキュペレータ熱交換器12中で約746℃の温度に加熱され、出力発生系燃焼器14中に流れ51として進入する。純O流32の希釈は、耐酸化性物質を必要とせずに、出力発生系燃焼器14中での燃焼のために必要とされる酸素を加熱させるのに有益である。これは、出力発生系の安全操作を保証する。30%O流は、出力発生系14中での断熱燃焼温度を約2400℃の値に加減するために有用である。CO流30の残りの部分はCO流29で、これは、粉末化石炭をスラリー化するためのCOを提供し、スラリーミキサー3に送られる。
【0050】
熱交換器7中での急冷POXガスの冷却は、最大量の熱を出力発生系に伝達して、全体的効率を最大にするのに有用である。出力発生系は、ほぼ周囲温度から約400℃までの温度範囲で外部供給源からの有意量の熱を必要とする。これは、空気分離プラント6中の断熱空気圧縮機を用いることにより、そして圧縮の熱を高圧再循環CO流の一部に伝達することにより提供され得る。本発明の実施形態では、必要とされる外部加熱負荷は、熱交換器7中で急冷POXガスを冷却し、そして2つの高圧再循環流を加熱することにより提供される。約54℃の温度での高圧再循環CO流28および約120℃の温度での高圧再循環CO流43(レキュペレータ熱交換器12における中間温度点から得られる)は、加熱されて、約294℃の温度で併合加熱出口流44を提供し、これは、レキュペレータ熱交換器12中の対応する温度点で主再循環CO流と混合するために戻される。任意に、出口流67も対応する温度点でレキュペレータ熱交換器に戻されて、同様に、主再循環CO流と混合し得る。
【0051】
図3は、図1のレキュペレータ熱交換器7における熱放出パーセンテージに対する温度のプロット(線図)であって、複合系の効率的操作を保証するための高圧再循環COの2つの別個の入口流の利益を示す。流れ43入口の120℃温度レベルは、レキュペレータ熱交換器12におけるタービン排気流の水露点に近い温度に対応する。急冷POX燃料ガスは、304℃の水飽和温度で熱交換器に進入し、総加熱高圧再循環流は、294℃の温度で出る。
【0052】
図4は、急冷水流がPOXガス温度を約400℃に低減する操作の代替的方法を示す。急冷POX燃料ガス温度が約300℃というその露点に低下する熱交換器の付加的区分が存在する。熱交換器7における温度差を最小にすることにより総出力発生系の効率を最大にするために、高圧加熱CO流が熱交換器から2つの別個の流れとして除去される。流れ44は約290℃の温度、そして流67は約390℃の温度である。これらの流れは、別々に、レキュペレータ熱交換器12に戻され、そこで、それらは、適切な対応する温度で主高圧再循環CO流と再結合する。
【0053】
例示的実施形態では、熱交換器7は、高圧蝋付けまたは拡散接合マルチチャネルユニットであり得る。構築の材料は、好ましくは、POXガス+液体水中に存在する不純物の存在下で耐食性である。レキュペレータ熱交換器12は、好ましくは、拡散接合マルチチャネルユニットである。このユニットは、好ましくは、約800℃までの温度での操作のために適応され、そして約200℃より低い温度で酸腐食に耐性である。適切な材料の一例は、特殊金属合金740である。いくつかの実施形態では、熱交換器12のホットエンドでの平均温度は750℃より低く低減され、このような場合、合金617が適切であり得る。任意に、200℃および540℃間の中間区分は、ステンレススチールから加工され得る。200℃より低い温度で潜在的酸腐食に付される区分は、間を置いての取り替えを可能にするよう構築され得る。
【0054】
さらなる実施形態では、POX流を加工処理するための要素の択一的配列が用いられ得る。例示的一実施形態において、図2は、出力発生系のための燃料ガスの産生のために、ならびにHおよびCOの分離および精製混合物の産生のために、POX生成物が用いられる任意の配列を示す。副次流66は、灰分除去後の急冷POXガス流55から得られ、そしてイオウ耐性コバルト系シフト触媒(または他の適切な材料)を有する触媒的シフトコンバータ67に通される。より高温の出口ガス流70は熱交換器7中で約60℃の温度に冷却されて、流れ73として出て、熱交換器74中で冷却水により流れ75として約20℃の温度にさらに冷却される。凝縮水は分離器77で分離され、冷却ガス流76は多床型圧力変動吸着ユニット79に進入する。分離器77で分離された水は、液体水流46に付加される。圧力変動吸着ユニット(PSA)79は、入口ガス流76を純Hまたは純HおよびCO流80(約8MPaの圧力でユニットを出る)、そして不純物(例えば、HS、COS、CS、HCN、NH、Hgおよびその他の微量構成成分)ならびにH、CO、CO、CHおよびHOのいくつかの組合せのすべてを含有する廃棄ガス流71に分離するよう意図される。不純物の分離は、HまたはHおよびCO生成物流80中のこれらの構成成分の濃度が1ppmより低いようなものである。この配列は、高濃度のCOを含有する冷却POXガスの流れ83を用いて、シフト化冷却ガス流76と配合して、流れ72を生成し、これは、PSAユニット79に通されると、8MPa生成物流80において必要とされる流量および必要とされるH対CO比を生じる。純Hが必要とされる場合には、流れ83はゼロである。0.12MPa圧力でのPSA79からの廃棄ガス流71は、多段階中間冷却圧縮器81中で約8MPaの圧力に圧縮され、放出流82が出力発生系燃料ガス流47に付加される。総燃料ガス流は、圧縮機10中で約30.5MPaの圧力に圧縮され、その結果生じる高圧燃料ガス流48は、レキュペレータ熱交換器12を介して出力発生系燃焼器14に送られる(図1参照)。この配列は、すべての石炭およびPOX由来不純物の出力発生系への移動を保証し、底で、それらは出力発生系燃焼器14中で酸化される。種々の実施形態において、シフト反応器中の付加的水の消費は式(9)に従って進行し、少量の付加的補給流量を必要とし得る:

O+CO=CO+H (9)
【0055】
本明細書中に記載される系および方法の要素を包含する種々の実施形態において、開示される系および方法の全体的効率は、50%より大きい(代表的タービンおよび圧縮器効率ならびに熱交換器温度差および圧力降下を伴うより低い加熱値(LHV)を基礎として)。さらに、CCSは、すべての他の燃料、POXおよび燃焼由来不純物の実質的に完全な除去と一緒に、同時的に提供される。燃料流21中の炭素由来の過剰量のCOは、30.5MPaで流れ71として、循環CO系から除去される。これは、当該系および方法が、約15MPa以上、約20MPa以上、約25MPa以上または約30MPa以上の圧力で燃料由来COの実質的にすべてを提供するよう適応され得る、という点で助長され得る。この高効率は、市販のPOX反応器系、ならびに米国特許出願公開番号2011/0179799(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されたような高圧CO作業流体出力サイクルを用いるといったような低コスト系を伴って有益に達成され得る。比較例として、現行の商業的石炭ガス化複合コンバインドサイクル(IGCC)発電系(CO回収およびパイプライン圧への圧縮を伴う)は、比較して34%〜39%に過ぎない効率を有し、はるかに高い資本コストを有することが示されている。
実験
【0056】
商業設備性能に関する実際的見積もりを用いて種々の条件下での広範なASPENシミュレーションにより、本発明に開示される方法および系の上記の利点を立証した。POX燃焼器に導入される固体燃料としてイリノイ#6石炭を用いて、2組のシミュレーションを実行した。各々の場合、データは、石炭スラリー媒質としてのCOの使用に基づいている。第一シミュレーション(図5参照)は急冷流体としての水の使用を基礎にしており、第二シミュレーション(図6参照)は急冷流体としてのCOの使用を基礎にしている、という点でシミュレーションは異なった。
【0057】
第一シミュレーションからの質量および熱平衡の詳細は、図5に示した表で提示されている。示された条件下で、典型的には0.41対1のH対CO比で、燃料ガスを生成した。より低い加熱値(LHV)を基礎にしたこの実施形態に関する算定効率は、51.44%であった。
【0058】
第二シミュレーションからの質量および熱平衡の詳細は、図6に示した表で提示されている。示された条件下で、典型的には0.17対1のH対CO比で、燃料ガスを生成した。LHVを基礎にしたこの実施形態に関する算定効率は、51.43%であった。
【0059】
前記の説明および関連する図面に提示される教示の利益を有することに関する本発明に開示される対象物の多数の修正およびその他の実施形態を当業者は思いつくであろう。したがって、本発明の開示は、本明細書中に記載される特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で修正およびその他の実施形態が含まれるよう意図される、と理解されるべきである。特殊な用語が本明細書中で用いられているが、それらは一般的な且つ説明的な意味でのみ用いられ、本発明を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6