特許第6185942号(P6185942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185942
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/77 20160101AFI20170814BHJP
   B60J 10/25 20160101ALI20170814BHJP
【FI】
   B60J10/77
   B60J10/25
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-18822(P2015-18822)
(22)【出願日】2015年2月2日
(65)【公開番号】特開2016-141273(P2016-141273A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利文
(72)【発明者】
【氏名】末定 怜
(72)【発明者】
【氏名】祖田 正貴
(72)【発明者】
【氏名】石川 武史
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−230469(JP,A)
【文献】 実開平02−071048(JP,U)
【文献】 特開2012−131396(JP,A)
【文献】 特開平07−205662(JP,A)
【文献】 独国特許発明第898560(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/77
B60J 10/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントピラーに沿って取付けられる取付基部と、該取付基部に設けられ、ドア閉時にドアガラス又はガセットの先端部に弾接する中空シール部と、該中空シール部から下方に延設された側壁部と、該側壁部の車外側から車外側斜め上方に向けて延設されその先端部が前記ドアガラス又はガセットの車内側側面に弾接するシールリップ部を備えるウェザーストリップであって、
前記フロントピラーの下側では、前記ウェザーストリップの長手方向において、前記シールリップ部は下向きに傾斜してその端部は、前記シールリップ部より大きな角度で湾曲下降する前記中空シール部に一体化され、
前記シールリップ部が一体化された接続部よりも手前上面に、前記シールリップ部の車外側端部から車内側に向けて受け面が形成された堰部を突設するとともに、
前記接続部の位置に前記中空シール部内に連通する排水孔を形成し、
前記堰部の車内側から前記シールリップ部の付け根部側に向けてビード部を延設して、前記堰部で受け止めた水を前記排水孔に導くようにしたことを特徴とするウェザーストリップ。
【請求項2】
前記ビード部は、前記堰部の車内側から前記排水孔に向けて下降するように延設されていることを特徴とする請求項1に記載のウェザーストリップ。
【請求項3】
前記シールリップ部の先端部の断面形状は、上側から、下側に位置する前記堰部に近接するにしたがって丸断面から鋭角断面に徐々に変化し前記堰部で最も鋭角な断面になるように設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載のウェザーストリップ。
【請求項4】
前記堰部では、前記シールリップ部の先端部上面と前記ドアガラス又はガセットの面とのなす角を鈍角にするように前記シールリップ部を前記ドアガラス又はガセットに弾接させることを特徴とする請求項3に記載のウェザーストリップ。
【請求項5】
前記シールリップ部が下降するように延びる長手方向に、前記堰部を複数本設けたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載のウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバーチブル車などの格納式ルーフ車や非開閉式ルーフのハードトップ車などのサッシュレスドアの車種のフロントピラーに沿って取付けられ、中空シール部及びシールリップ部がドアガラス又はガセットの先端部及び車内側側面に直接弾接して車内外をシールするウェザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、開閉自在のルーフを折り畳むことによって開放されるタイプの格納式ルーフ車の外観を示している。ルーフは幌1からなり、折り畳まれた幌1は車体後方側下部のトランク2内に格納されるようになっている。なお、幌1にかえて、ルーフをルーフパネルとその後方に位置するバックウインドパネルから構成し、折り畳まれたルーフパネルがバックウインドパネルに重ねられた状態でトランク2内に格納されるものもある。このようなタイプの車両は、一般的に、リトラクタブルハードトップ、クーペカブリオレ、クーペコンバーチブルと称されている。
【0003】
こうした格納式ルーフ車両において、ドア3の開口縁部となるフロントピラー4の側縁には、ドア3の閉時に昇降するドアガラス(サイドガラス)5に弾接して車内外をシールするためのウェザーストリップ10がテープ(図示しない)を介して取付けられている(あるいはリテーナ等のホルダーに嵌め込むようにしてもよい)。
ウェザーストリップ10は、フロントピラー4の下側では、図10乃至図12に示すように、押出成形部101の下側に型成形部102が接続されたものであり、ドア3の閉時には、ドアミラー8が取付けられたガセット9の部分が型成形部102に弾接し、ドアガラス5の部分は押出成形部101及び押出成形部101と型成形部102の境界部に弾接するようになっている。なお、ガセット9の部分がなくドアガラス5の部分が型成形部102に弾接するタイプのものもある。
【0004】
ウェザーストリップ10は、テープが貼着された取付基部11と、その取付基部11に一体成形され、ドア3の閉時にドアガラス5の先端部5a及びガセット9の先端部9aに弾接する中空シール部12と、中空シール部12から下方に延設された側壁部14と、側壁部14の車外側から車外側斜め上方に向けて延設されその先端部13aが同じくドアガラス5の車内側側面(図12(a))及びガセット9の車内側側面(図12(b))に弾接するシールリップ部13を備えている。シールリップ部13の先端部13aは、ドアガラス5の車内側側面に上向きに湾曲するように弾接していて、付け根部側に向かって樋状の水受け部16が形成されている。
また、側壁部14の車内側にはガーニッシュなどの内装材(図示しない)に当接するリップ部15が設けられている。
【0005】
このように、昇降するドアガラスの先端部と車内側側面に対して、中空シール部とシールリップ部をそれぞれ上下から弾接させて二重にシールするウェザーストリップは開示されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−205662号公報
【特許文献2】特開2012−131396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、シールリップ部13の先端部13aの断面形状は、ドアガラス5及びガセット9に弾接した際にそれらの面とのシール圧を十分確保するため、図12に示したように、丸断面にしてあり、これにより圧力を集中させている。このように丸断面にするのは、当接と離間が繰り返されるシールリップ部13においては、例えばシールリップ部13の角度が当接する度に変化することがあったとしても、丸断面によって当接状態を一定にすることができ、従ってシール圧を確保できることにある。
そのため、ドア3の閉時にシールリップ部13がドアガラス5及びガセット9に弾接すると、ドアガラス5及びガセット9との間に三角隙Sが発生する。
【0008】
このため、ドア3の開閉時やドアガラス5の昇降時に、ドアガラス5及びガセット9を越えて車内側(室内側)に入り込んだ水Wは、ドアガラス5及びガセット9の側面を伝い落ちてシールリップ部13の先端部13aに到達して三角隙Sに溜まり、溜まった水Wは下向きに傾斜したシールリップ部13に沿って流れる。
そして、フロントピラー4の下側に取付けられたウェザーストリップ10の型成形部102では、図11に示すように、ガセット9の車内側に弾接するシールリップ部13の端部(前端部)は切れているので、シールリップ部13に沿って流れてきた水Wはその端部の切れ目から車内側に浸入するといった問題がある。
【0009】
そこで、図13及び図14に示すように、シールリップ部13の端部(前端部)を中空シール部12に接続することで一体化させて(接続部J)中空シール部12とシールリップ部13の間に隙間が生じないようにすることも考えられるが、この場合でも、三角隙Sに溜まった水Wは、シールリップ部13に沿って流れるが、シールリップ部13の端部(前端部)では逃げ場を失ってしまうので、図14に示すように、車内側に水Wが浸入してしまう。
【0010】
なお、特許文献1に記載の発明は、フロントピラー4とヘッダ7が交わるコーナー部付近のシール構造に関するものであり、特許文献2に記載の発明は、ドアガラス5の先端部5aが中空シール部12に弾接する位置にビード部を形成したものであるので、シールリップ部13の先端部13aが弾接するドアガラス5及びガセット9の車内側側面との間に発生する三角隙Sに溜まった水Wを排水する構造に関するものではない。
【0011】
そこで、本発明の目的とするところは、フロントピラーの下側においてドアガラス及びガセットの車内側側面に弾接するシールリップ部の先端部に沿って流れる水を確実に排水して車内側に浸入することを防止するウェザーストリップを提供することにある。
ここで、本文中にある方向を示す前後、上下などは車両の前後、上下に相当している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明のウェザーストリップは、自動車のフロントピラー(4)に沿って取付けられる取付基部(11)と、該取付基部(11)に設けられ、ドア(3)閉時にドアガラス(5)又はガセット(9)の先端部(5a,9a)に弾接する中空シール部(12)と、該中空シール部(12)から下方に延設された側壁部(14)と、該側壁部(14)の車外側から車外側斜め上方に向けて延設されその先端部(13a)が前記ドアガラス(5)又はガセット(9)の車内側側面に弾接するシールリップ部(13)を備えるウェザーストリップ(10)であって、
前記フロントピラー(4)の下側では、前記ウェザーストリップ(10)の長手方向において、前記シールリップ部(13)は下向きに傾斜してその端部は、前記シールリップ部(13)より大きな角度で湾曲下降する前記中空シール部(12)に一体化され、
前記シールリップ部(13)が一体化された接続部(J)よりも手前上面に、前記シールリップ部(13)の車外側端部(13h)から車内側に向けて受け面(21)が形成された堰部(20)を突設するとともに、
前記接続部(J)の位置に前記中空シール部(12)内に連通する排水孔(40)を形成し、
前記堰部(20)の車内側から前記シールリップ部(13)の付け根部側に向けてビード部(30)を延設して、前記堰部(20)で受け止めた水(W)を前記排水孔(40)に導くようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記ビード部(30)は、前記堰部(20)の車内側から前記排水孔(40)に向けて下降するように延設されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記シールリップ部(13)の先端部(13a)の断面形状は、上側から、下側に位置する前記堰部(20)に近接するにしたがって丸断面から鋭角断面に徐々に変化し前記堰部(20)で最も鋭角な断面になるように設定したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記堰部では、前記シールリップ部(13)の先端部(13a)上面(13u)と前記ドアガラス(5)又はガセット(9)の面とのなす角(θ1,θ2)を鈍角にするように前記シールリップ部(13)を前記ドアガラス(5)又はガセット(9)に弾接させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記シールリップ部(13)が下降するように延びる長手方向に、前記堰部(20)を複数本設けたことを特徴とする。
【0017】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フロントピラーの下側では、ウェザーストリップのシールリップ部は下向きに傾斜してその端部は、従来例(図11)で示したように、途切れるのではなく、シールリップ部より大きな角度で湾曲下降する中空シール部まで延びているので、ドア閉時にガセット(ガセットが設けられていない場合はドアガラス)に対する中空シール部とシールリップ部による十分な二重シール構造が得られるとともに、ガセット(ドアガラスの場合もある)とシールリップ部の先端部の間に溜まった水がシールリップ部の端部の切れ目から車内側(室内側)に浸入することもない。
そして、シールリップ部が一体化される位置には中空シール部内に連通する排水孔が設けられ、その手前には堰部が突設されるとともに、堰部からはシールリップ部の付け根部側に向けてビード部が延設されているので、ガセット(ドアガラスの場合もある)とシールリップ部の先端部の間に溜まった水は、従来例(図14)で示したように、逃げ場を失い溢れ出ることはない。つまり、ガセット(ドアガラスの場合もある)とシールリップ部の先端部の間に溜まった水は、シールリップ部に沿って流れ落ちるが、堰部で受け止められビード部を介してシールリップ部の付け根部側に導かれると、下向きに傾斜したシールリップ部に沿って排水孔まで確実に導かれる。そして、排水孔に導かれた水は、中空シール部内を通って外部に排出されるようになっている。
これにより、ガセット(ドアガラスの場合もある)とシールリップ部の先端部の間に溜まった水が車内側に浸入することが防止される。
【0019】
また、本発明によれば、ビード部は、堰部の車内側からシールリップ部の付け根部側に向けて設けられることに加えて、さらに、排水孔に向けて下降するように延設されているので、より円滑に水を排出することができる。
【0020】
また、本発明によれば、シールリップ部の先端部の断面形状はシール時の面圧を確保するために丸断面であるが、下側に位置する堰部に近接するにしたがって丸断面から鋭角断面に徐々に変化し堰部で最も鋭角な断面になるようにしたので、ガセット(ドアガラスの場合もある)とシールリップ部の先端部の間に溜まった水は掃き出され、水が溜まった状態になることは防止される。
【0021】
また、本発明によれば、堰部の位置では、シールリップ部の先端部上面とガセット(ドアガラスの場合もある)の面とのなす角を鈍角にするようにして弾接させるので、水が溜まるような三角隙は発生することなく、堰部で受け止められた水は自然とシールリップ部の付け根側に導かれる。
【0022】
また、本発明によれば、シールリップ部が下降するように延びる長手方向に、堰部を複数本設けたので、ドアガラス又はガセットの車内側側面に弾接するシールリップ部の面圧をあげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るウェザーストリップがフロントピラーに取付けられた状態を示す拡大側面図である。
図2図1に示したウェザーストリップの型成形部を示す拡大斜視図である。
図3図2に示したウェザーストリップの堰部周りの構造を示す拡大斜視図である。
図4図3に示したウェザーストリップの堰部を示す拡大側面図である。
図5図3に示したウェザーストリップの堰部の別態様を示す拡大側面図であり、(a)は厚みを厚くしたもので、(b)は3本設けたものである。
図6図2に示したウェザーストリップのシールリップ部がガセットに弾接した状態を示すもので、(a)はA−A線拡大断面図,(b)はB−B線拡大断面図,(c)はC−C線拡大断面図である。
図7】ドアガラスとガセットの境界部分におけるウェザーストリップの撓み状態を示す、図2のD−D線拡大断面図であり、(a)は弾接前の状態を示したもので、(b)は弾接した後の状態を示したものである。
図8】本発明の実施形態に係る別のウェザーストリップのシールリップ部がドアガラスに弾接した状態を示すもので、(a)は図2のA−A線拡大断面図に相当し,(b)は図2のB−B線拡大断面図に相当し,(c)は図2のC−C線拡大断面図に相当するものである。
図9】格納式ルーフ車を示す外観斜視図である。
図10】従来例に係るウェザーストリップがフロントピラーに取付けられた状態を示す拡大側面図である。
図11図10に示したウェザーストリップの型成形部を示す拡大斜視図である。
図12図10に示したウェザーストリップのシールリップ部が弾接した状態を示す断面図であり、(a)はドアガラスに弾接したもので、(b)はガセットに弾接したものである。
図13】従来例に係る別のウェザーストリップがフロントピラーに取付けられた状態を示す拡大側面図である。
図14図13に示したウェザーストリップの型成形部を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るウェザーストリップについて説明する。従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0025】
本発明の実施形態に係るウェザーストリップは、図9に示すように、開閉自在の幌1を折り畳みトランク2内に格納するタイプの車両のフロントピラー4に取付けられたものであり、図1乃至図4に示すように、特にウェザーストリップ10の型成形部102に堰部20とビード部30と排水孔40を設けたものである。
【0026】
ウェザーストリップ10は、ドア3の開口縁部となるフロントピラー4の側縁に沿ってテープ(図示しない)を介して取付けられ(あるいはリテーナ等のホルダーに嵌め込むようにしてもよい)、ドア3の閉時に昇降するドアガラス(サイドガラス)5及びガセット9に弾接して車内外をシールするものである。
ウェザーストリップ10は、フロントピラー4の下側では、図1及び図2に示すように、押出成形部101の下側に型成形部102が接続されたものであり、ドア3の閉時には、ドアミラー8が車外側の面に取付けられたガセット9の部分が型成形部102に弾接し、ドアガラス5の部分は押出成形部101及び押出成形部101と型成形部102の境界部に弾接するようになっている。なお、押出成形部101の上側に接続された型成形部は、フロントガラス6の上端を固定するヘッダ7に取付けられたヘッダウェザーストリップ(図示しない)の端部に接続されている。
【0027】
ウェザーストリップ10は、図1及び図2に示すように、ドア3の開口縁部に取付けられる取付基部11と、取付基部11に対して車外側下向きに設けられた中空シール部12と、中空シール部12から下方に延設された側壁部14と、側壁部14の下部車外側からさらに車外側斜め上方に向けて延設されたシールリップ部13と、側壁部14の下部車内側からさらに車内側斜め上方に向けて延設されたリップ部15を備えている。なお、リップ部15はガーニッシュなどの内装材(図示しない)に当接する。
【0028】
特に型成形部102においては、図2に示すように、型成形用の中芯(図示しない)が挿入されるので取付基部11は半割となっているが押出成形部101では連結されている。また、ドア3の閉時に、中空シール部12はガセット9の先端部9aに弾接するとともに、シールリップ部13の先端部13aもガセット9の車内側側面に弾接する二重シール構造になっている。なお、押出成形部101では、ドア3の閉時に、中空シール部12はドアガラス5の先端部5aに弾接するとともに、シールリップ部13の先端部13aもドアガラス5の車内側側面に弾接するようになっている。
シールリップ部13の先端部13aは、ドアガラス5の車内側側面及びガセット9の車内側側面に対して上向きに湾曲するように弾接していて、付け根部側に向かって樋状の水受け部16が形成されている。
【0029】
ドアガラス5の前側はガセット9内に挿入されるようになっていて、ドアガラス5とガセット9の境目では段差が生じている。よって、その境目に対して中空シール部12及びシールリップ部13が弾接する位置(図2のD−D線拡大断面)では、図7(a)に示すように、側壁部14を車外側に向けて湾曲させて凸部17を形成するとともに、シールリップ部13の先端部13aの上面側にも突起部18を形成し、ドア3の閉時には、図7(b)に示すように、シールリップ部13の先端部13aに形成された突起部18を側壁部14に形成された凸部17に衝突させるようにしている。
これによればドアガラス5とガセット9の境目以外の他の部分と比較して局所的に高いシール圧を発生させることができるので、その圧力によってドアガラス5とガセット9の境目に生じる隙間を埋めてその隙間から水Wが車内側に浸入することを防止することができる。なお、ドアガラス5とガセット9の境目に生じる隙間にパッド(PAD)を挿入した後、固定するようにすれば、側壁部14及びシールリップ部13に凸部17及び突起部18を形成する必要はなくなるが、パッドを挿入・固定する作業が必要となり煩雑であることに加えて、パッドの固定位置がずれる恐れもある。
【0030】
また、フロントピラー4の下側では、ウェザーストリップ10の延びる長手方向(断面形状に直交してウェザーストリップが長く延びる方向(図1の紙面では左上から斜め右下の方向))において、中空シール部12及びシールリップ部13はフロントピラー4に沿って下向きに傾斜しているが、中空シール部12は途中からシールリップ部13より大きな角度で湾曲下降している。これに対してシールリップ部13はフロントピラー4に略平行に真っ直ぐ延びているため、シールリップ部13の前側の端部は中空シール部12に当接しそこで中空シール部12に接続することで一体化されている。すなわち、シールリップ部13の端部は中空シール部12に一体化されることで消失している。
そして、シールリップ部13が一体化される接続部Jの位置には、中空シール部12内に連通する排水孔40が形成されている。排水孔40は、図3に示すように、シールリップ部13の上面が中空シール部12に当接する位置に形成され、シールリップ部13の先端部13aから側壁部14にかかる範囲までの横幅で形成され、シールリップ部13の水受け部16に流れた水Wは、シールリップ部13が下向きに傾斜していることにより排水孔40に確実に導かれる。
【0031】
また、シールリップ部13が一体化された接続部Jの手前上面には、シールリップ部13の車外側端部13hから車内側に向けて受け面21が形成された堰部20が突出するように設けられている。受け面21は、シールリップ部13の先端部13aの上面13uに形成され、図4に示すように、上流側(図4では紙面の左側)に向けて、すなわちシールリップ部13の先端部13aを伝わって流れ落ちてくる水Wに対して凹面状に反っていて堰部20で水Wを確実に受け止め堰部20を乗り越えることを防止している。
また、受け面21は、シールリップ部13の先端部13aから付け根部側に、すなわち、シールリップ部13が下降する長手方向に直交する方向に形成するようにしてもよいが、ここでは、シールリップ部13の車外側端部13hよりも車内側を少し下降させるように傾斜した状態で形成して受け面21で受けた水Wが受け面21の位置で留まる時間を少なくして早くシールリップ部13の車内側の水受け部16に導かれるようにしている。
【0032】
また、受け面21の形状については、図3で示したように、シールリップ部13の先端部13aの上面に対応して扇状にしたが、特に限定されるわけではない。また、堰部20の全体についても高さや厚み(幅)など様々な形状にすることができる。例えば、図5(a)に示すように、厚み(L)を高さ(T)の半分程度にしたり、あるいは、図5(b)に示すように、シールリップ部13が下降するように延びる長手方向に間隔をあけて、堰部20を複数本、ここでは3本設けるようにしてもよい。
【0033】
また、堰部20の車内側にはビード部30が設けられている。ビード部30は堰部20の車内側からシールリップ部13の付け根部側に向けて延びていて、堰部20で受け止めた水Wを排水孔40に導くようにしている。さらに、ビード部30は、堰部20の車内側から排水孔40に向けて下降するように延設されていて、より円滑に水Wを排出するようにしている。
堰部20及びビード部30は、ゴム様弾性体からなりウェザーストリップ10と同時に型成形するようにしているが、別体の堰部20及びビード部30を用意してウェザーストリップ10の成形後に貼着するようにしてもよい。この場合、堰部20及びビード部30はゴム様弾性体でなくてもよい。
【0034】
なお、シールリップ部13の先端部13aの断面形状については、弾接時の面圧を確保するために、図6(a)に示すように、上側から下側まで丸断面で一定にしても、ガセット9との間に生じた三角隙Sに溜まった水Wは堰部20で受け止められ、ビード部30を伝わり水受け部16から排水孔40に導かれるが、本実施形態では、上側から、下側に位置する堰部20に近接するにしたがって丸断面から、図6(b)に示すように、鋭角断面に徐々に変化し、図6(c)に示すように、堰部20で最も鋭角な断面になるように設定している。
これによれば、ガセット9とシールリップ部13の先端部13aの間に溜まった水Wは、シールリップ部13の先端部13aの断面形状が丸断面から鋭角断面に変化するにしたがって掃き出されるので、水Wがガセット9との間に生じた三角隙Sに溜まった状態になることが防止される。
【0035】
または、シールリップ部13の先端部13aの断面形状は変化せずに同じ丸断面が連続しており、この丸断面の先端部13aの車外側側面に先端が堰部20に近接するにしたがって鋭角になるヒレ断面13atが車外側へ張り出すように追加されていると言ってもよい。このヒレ断面13atは、堰部20よりも少し上側から追加されており、本実施形態例では堰部20を越えた下側にも延長され再び丸断面の先端部13aへと滑らかに連続している。
また、図3ではシールリップ部13の先端部13aの車外側の縁が堰部20の位置にて最も車外側へ張り出すように湾曲しているが、このように湾曲することなく直線状であってもよい。
【0036】
また、堰部20では、シールリップ部13の先端部13a上面13uとガセット9の面とのなす角θ1を、図6(c)に示すように、鈍角にするようにシールリップ部13をガセット9に弾接させて、堰部20で受け止められた水Wが自然とシールリップ部13の付け根側に導かれるようにしている。
【0037】
このように構成された本実施形態に係るウェザーストリップによれば、フロントピラー4の下側では、ウェザーストリップ10のシールリップ部13は下向きに傾斜してその端部は途切れるのではなく、シールリップ部13より大きな角度で湾曲下降する中空シール部12まで延びているので、ドア3の閉時にガセット9に対する中空シール部12とシールリップ部13による十分な二重シール構造が得られるとともに、ガセット9とシールリップ部13の先端部13aの間に溜まった水Wがシールリップ部13の端部の切れ目から車内側に浸入することもない。
【0038】
そして、シールリップ部13が一体化される位置には中空シール部12内に連通する排水孔40が設けられ、その手前には堰部20が突設されるとともに堰部20からシールリップ部13の付け根部13a側に向けてビード部30が延設されているので、ガセット9とシールリップ部13の先端部13aの間に溜まった水Wは、堰部20で受け止められビード部30を介してシールリップ部13の付け根部側の水受け部16に導かれ、そこから下向きに傾斜したシールリップ部13に沿って排水孔40まで確実に導かれ、その後、中空シール部12内を通って外部に排出されるようになっている。
これにより、ガセット9とシールリップ部13の先端部13aの間に溜まった水Wが車内側に浸入することが防止される。
【0039】
なお、本実施形態では、ドア3の前側にはガセット9が取付けられたタイプの車両で、ドア3の閉時に、フロントピラー4の下側ではウェザーストリップ10の型成形部102における中空シール部12及びシールリップ部13がガセット9に弾接するものを例にして説明したが、ドア3の前側にガセット9が取付けられていないタイプの車両であって、ドア3の閉時に、ウェザーストリップ10の型成形部102における中空シール部12及びシールリップ部13がドアガラス5に弾接するものであっても適用することができる。
この場合、シールリップ部13の先端部13aがドアガラス5に弾接した状態は、図8で示したようになり、シールリップ部13の先端部13aの断面形状は、図6で説明したものと同様に、下側に位置する堰部20に近接するにしたがって丸断面(図8(a))から、鋭角断面に徐々に変化し(図8(b))、堰部20で最も鋭角な断面になるように設定している(図8(c))。そして、堰部20では、シールリップ部13の先端部13a上面13uとドアガラス5の面とのなす角θ2を、図8(c)に示すように、鈍角にするようにシールリップ部13をドアガラス5に弾接させている。
また、ガセット9が取付けられているものではドアガラス5とガセット9の間に段差が生じるのでこれを補うため、図2及び図7で示したように、シールリップ部13の先端部13aに形成した突起部18を側壁部14に形成した凸部17に衝突させるようにしたが、ガセット9が取付けられていないものでは凸部17及び突起部18は不要である。
【0040】
また、本実施形態では、幌式の格納式ルーフ車に適用したものについて説明したが、ルーフをルーフパネルとその後方に位置するバックウインドパネルから構成し、折り畳まれたルーフパネルがバックウインドパネルに重ねられた状態でトランク2内に格納されるものや脱着式のルーフの例えばタルガトップと呼ばれるものであっても適用可能である。
さらに、ルーフが開閉式の車種に限らず、ルーフは非開閉式のハードトップ車でドアガラスが車体側に取付けられたウェザーストリップに直接弾接するサッシュレスドアの車種にも適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 幌(ルーフ)
2 トランク
3 ドア
4 フロントピラー
5 ドアガラス
5a 先端部
6 フロントガラス
7 ヘッダ
8 ドアミラー
9 ガセット
9a 先端部
10 ウェザーストリップ
11 取付基部
12 中空シール部
13 シールリップ部
13a 先端部
13at ヒレ断面
13h 車外側端部
13u 先端部上面
14 側壁部
15 リップ部
16 水受け部
17 凸部
18 突起部
20 堰部
21 受け面
30 ビード部
40 排水孔
101 押出成形部
102 型成形部
J 接続部
L 厚み
S 三角隙
T 高さ
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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