特許第6185951号(P6185951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185951
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】電源車
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20170814BHJP
   H02K 5/24 20060101ALI20170814BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20170814BHJP
   H02K 9/04 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B60P3/00 U
   H02K5/24 AZHV
   H02K7/18 B
   H02K9/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-62231(P2015-62231)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-179778(P2016-179778A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2016年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109819
【氏名又は名称】デンヨー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池野 裕
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−215262(JP,A)
【文献】 実開平07−008068(JP,U)
【文献】 実開昭63−150020(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/00
H02K 5/24
H02K 7/18
H02K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシ上の防音室の内部に、発電機と、前記発電機を駆動するエンジンと、前記エンジンに接続され冷却用ファンを有するラジエータと、外気を前記防音室の内部に導入する吸気口と、導入した外気を前記防音室の外部に排出する排気口と、マフラと、前記発電機による発電の出力を供給する出力端子と、前記発電機、前記エンジンを操作するための制御箱と、を備える電源車において、
前記防音室は、
前記発電機、前記エンジン、前記ラジエータが設置される発電機室と、
前記吸気口、および、前記発電機室への吸気通過口を有する吸気室と、
前記マフラが設置され、前記発電機室からの排気通過口、および、前記排気口を有するマフラ室と、
前記出力端子、前記制御箱が設置される操作室と、
第一遮音室と、
第二遮音室と、に区画されており、
前記吸気室と、前記発電機室と、前記マフラ室と、前記第二遮音室とは、前記電源車の走行方向にこの順で配置され、
前記操作室と、前記発電機室と、前記第一遮音室とは、前記電源車の幅方向にこの順で配置され、
上面視で、前記発電機室は、前記吸気室と、前記第一遮音室と、前記マフラ室と、前記操作室と、によって囲まれている
ことを特徴とする電源車。
【請求項2】
前記吸気口は、前記吸気室の底に設けられ、
前記吸気通過口は、前記吸気室と前記発電機室の間の壁の上部に設けられ、
前記排気通過口は、前記発電機室と前記マフラ室の間の壁に設けられ、
前記排気口は、前記マフラ室の天井に設けられ、
前記吸気口から取り入れられた外気は、前記吸気通過口を通過し、前記発電機室に入り、前記発電機と、前記エンジンと、前記ラジエータと、を冷却した後、前記排気通過口を通過し、前記排気口から外部に排出される
ことを特徴とする請求項1に記載の電源車。
【請求項3】
前記操作室は、前記吸気室と、前記発電機室と、前記マフラ室と、気密に隔離されており、
前記出力端子と前記制御箱は、前記操作室の内部において前記発電機室との隔壁に沿って設置されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電源車。
【請求項4】
前記操作室と前記発電機室との隔壁には、前記発電機室に設置されている前記発電機から出ている発電機口出線を前記操作室に設置されている前記出力端子に遮断器を介して接続するための配線接続部が設置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電源車。
【請求項5】
前記第一遮音室は、前記吸気室と、前記発電機室と、前記マフラ室と、気密に隔離されており、
前記第二遮音室は、前記マフラ室と気密に隔離されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電源車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源車の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電源車とは、一般に、他者に電力を供給するための発電機を搭載した自動車や鉄道車両を指すが、本明細書では特に当該自動車を指すものとする。電源車は、災害時や、テレビ、映画等の屋外撮影現場などで、種々の装置に電力を供給する。
【0003】
電源車は、発電機、エンジン(発電機用エンジン。以下同様)、冷却用の吸気(取り込んだ外気)などから大きな音が発生するため、周囲への騒音対策が必要となる。例えば、特許文献1では、トラックのシャーシ上に外壁と内壁からなる二重壁構造の防音室を設け、防音室の下方の吸気口から取り込んだ外気を、外壁と内壁の間を上方に通過させて導入口から防音室内部に導入する、という構造によって防音効果を高くした電源車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−215262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、次のような問題があった。まず、各外側扉部と内側扉部との間が外気(吸気)の通路になっているので、防音室内で発生する発電機音、エンジン音、吸気音などが外側扉部から周囲に騒音として漏れることがあった。また、防音室内に取り込んだ外気(吸気)の通過経路の構造が複雑なので、吸気の流れが悪く、装置(発電機、エンジン、ラジエータなど)の冷却効果が落ちてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、防音効果と装置の冷却効果を高めた電源車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、シャーシ上の防音室の内部に、発電機と、前記発電機を駆動するエンジンと、前記エンジンに接続され冷却用ファンを有するラジエータと、外気を前記防音室の内部に導入する吸気口と、導入した外気を前記防音室の外部に排出する排気口と、マフラと、前記発電機による発電の出力を供給する出力端子と、前記発電機、前記エンジンを操作するための制御箱と、を備える電源車において、前記防音室は、前記発電機、前記エンジン、前記ラジエータが設置される発電機室と、前記吸気口、および、前記発電機室への吸気通過口を有する吸気室と、前記マフラが設置され、前記発電機室からの排気通過口、および、前記排気口を有するマフラ室と、前記出力端子、前記制御箱が設置される操作室と、第一遮音室と、第二遮音室と、に区画されており、前記吸気室と、前記発電機室と、前記マフラ室と、前記第二遮音室とは、前記電源車の走行方向にこの順で配置され、前記操作室と、前記発電機室と、前記第一遮音室とは、前記電源車の幅方向にこの順で配置され、上面視で、前記発電機室は、前記吸気室と、前記第一遮音室と、前記マフラ室と、前記操作室と、によって囲まれていることを特徴とする電源車である。その他の手段については後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防音効果と装置の冷却効果を高めた電源車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の電源車の全体構造図である。
図2】防音室の構造図である。
図3】操作室などの構造図である。
図4】配線接続部の構造図である。
図5】操作室での作業の様子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電源車の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図1図5に示した「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」の各方向は、次の通りである。「前」は電源車1の前方を指し、「後」はその逆方向を指す。「左」は電源車1から「前」を見た場合の左方を指し、「右」はその逆方向を指す。「上」は鉛直上方を指し、「下」はその逆方向を指す。
【0011】
図1に示すように、電源車1は、前方にキャブ2(運転台)、後方に防音室3、シャーシ4、および、電源車1内の各装置に燃料を供給する燃料タンク5を備える。防音室3は、シャーシ4上に設定され、扉6〜15、天井パネル100、スライドカバー101を備える(図1(a))。
【0012】
図2(特に図2(a))も合わせて参照すると、防音室3内は、吸気室31、発電機室32、第一遮音室33、操作室34、マフラ室35、および、第二遮音室36に区画されている。吸気室31と、発電機室32と、マフラ室35と、第二遮音室36とは、電源車1の走行方向(前後方向)の前から後に向かってこの順で配置されている。
【0013】
また、操作室34と、発電機室32と、第一遮音室33とは、電源車1の幅方向にこの順で配置されている。そして、上面視で、発電機室32は、吸気室31と、第一遮音室33と、マフラ室35と、操作室34と、によって囲まれている。各室31〜35をこのように仕切る隔壁W1〜W5は、図2(a)に示すように配置されている。
【0014】
吸気室31は、外気を防音室3の内部に導入するために底全体が開いていることで形成されている吸気口31a(図1(b))、および、発電機室32との隔壁W1の上部において吸気通過口44(図2(c))を有する。
【0015】
発電機室32には、発電機16、発電機16を駆動するエンジン17、エンジン17に接続され前から後の方向に送風する冷却用ファンを有するラジエータ18が設置される。
マフラ室35は、マフラ19が設置されるとともに、導入した外気を防音室3の外部に排出する排気口(スライドカバー101がスライドしてできる開口部)を有する。なお、この排気口からは、導入した外気のほかに、マフラ19の排気ガスも排出する。
【0016】
操作室34には、発電機16による発電の出力を供給する出力端子21と、発電機16、エンジン17、スライドカバー101の動作制御のための操作を行うための制御箱20が設置される。
また、図2(d)に示すように、隔壁W4には、発電機室32からマフラ室35に吸気を排出させるための排気通過口45と、エンジン17からマフラ19まで延びるエキゾーストパイプを通すためのエキゾーストパイプ貫通穴46と、が設けられている。
【0017】
天井パネル100は、手動で取り外し可能で、発電機室32に対して発電機16などを出し入れする場合に取り外され、それによってあいた空間からクレーンなどを使って発電機16などを出し入れすることができる。
【0018】
スライドカバー101は、例えば、制御箱20の制御盤20a(図3(b))のトグルスイッチを用いた操作によりスライド可能で、マフラ室35から外部に排気を行う際に開放される。また、スライドカバー101の開閉状態は、制御盤20a(図3(b))の表示灯で表示する。また、スライドカバー101が完全に開いた状態以外では、エンジン17の始動ができない制御とする。
【0019】
このような構造の電源車1において、ラジエータ18の冷却用ファンの働きによって吸気室31の底部に設けられた吸気口31a(図1(b))から取り入れられた外気は、隔壁W1に設けられた吸気通過口44(図2(c))を通過し、発電機室32に入り、発電機16と、エンジン17と、ラジエータ18と、を冷却した後、隔壁W4に設けられた排気通過口45(図2(d))を通過し、マフラ19を冷却し、マフラ室35の排気口(スライドカバー101がスライドしてできる開口部)から外部に排出される。なお、図1(a)〜(c)では、便宜上、スライドカバー101がスライドしていない状態(未開放状態)を示しているが、外気を排出するときはスライドカバー101が例えば後方にスライドして排気口としての開口部が露出する。
【0020】
なお、操作室34は、吸気が通過する吸気室31と発電機室32とマフラ室35と気密に隔離されている。したがって、吸気音や、発電機室32内の発電機16やエンジン17から発生する音などは、操作室34内に入ってきたとしても小さく、さらに、操作室34内の空気層の存在によって、操作室34の外壁から外部に出ていく音は一層小さくなっているので、周囲への騒音を小さく抑えることができる。
【0021】
また、第一遮音室33は、吸気が通過する吸気室31と発電機室32とマフラ室35と気密に隔離されている。したがって、吸気音や、発電機室32内の発電機16やエンジン17から発生する音などは、第一遮音室33内に入ってきたとしても小さく、さらに、第一遮音室33内の空気層の存在によって、第一遮音室33の外壁から外部に出ていく音は一層小さくなっているので、周囲への騒音を小さく抑えることができる。
【0022】
また、第二遮音室36は、マフラ室35と気密に隔離されている。したがって、吸気音や、発電機室32内の発電機16やエンジン17から発生する音などは、第二遮音室36内に入ってきたとしても小さく、さらに、第二遮音室36内の空気層の存在によって、第二遮音室36の外壁から外部に出ていく音は一層小さくなっているので、周囲への騒音を小さく抑えることができる。
【0023】
次に、図3図4を参照して、発電機16と出力端子21の接続状況について説明する。主に図3(a)に示すように、操作室34と発電機室32との隔壁W2には、発電機室32に設置されている発電機16から出ている発電機口出線51を、操作室34に設置されている出力端子21に出力ケーブル53および遮断器54を介して接続するための配線接続部52が設置されている。
【0024】
この配線接続部52は、隔壁W2の配線接続部取付口42(図2(b))の位置に、発電機室32と操作室34の間の気密性を保つために取付金具52a(図4(a))を用いて絶縁物52bを介して隔壁W2における隙間がないように取り付けられている。なお、出力端子21は出力端子取付台56に取り付けられる。また、配線接続部52などを覆うように配線接続部カバー57が取り付けられる。また、隔壁W2における出力ケーブル53に対応する位置には、出力ケーブルメンテナンス口43(図2(b))が設けられているが、出力ケーブル53などのメンテナンス時以外は気密性を保つためにカバー(不図示)で塞がれている。
【0025】
また、図3(b)に示すように、出力端子21と制御箱20は、操作室34の内部において発電機室32との隔壁W2に沿って設置されている。操作者は、制御箱20の制御盤20aを用いた操作により、発電機16の動作、エンジン17の動作、スライドカバー101の開閉動作などを制御することができる。
【0026】
このように、本実施形態に係る電源車1によれば、防音効果と装置の冷却効果を高めることができる。前記した以外の作用効果は、次の通りである。
吸気室31と、発電機室32と、マフラ室35とが、一直線上に配置されていることで、発電機16、エンジン17、ラジエータ18、マフラ19の冷却用に取り込む外気の流れを一方向にすることができ、外気が流れやすくなるので冷却効果が上がる。
【0027】
また、吸気室31の底全体に吸気口31aを設けることで、吸気通過口44よりも吸気口31aを開口面積比較で大きくすることが容易にでき、吸気口31aで取り入れる外気の流速を下げることができるので、外気にともなって雨水が発電機室32内に入る可能性を低減することができる。また、吸気通過口44(図2(c))の位置が高いことにより、外気にともなって雨水が発電機室32内に入る可能性をさらに低減することができる。
【0028】
また、マフラ室35の後方に第二遮音室36を配置することで、マフラ室35からの騒音が第二遮音室36内に伝わったとしても、第二遮音室36内の空気層の存在によって、第二遮音室36の外壁から外部に出ていく音は小さくなっているので、周囲への騒音を小さく抑えることができる。
また、気密性のある配線接続部52を設けることで、発電機室32から操作室34に伝わる騒音の大きさを大幅に減少させることができる。
【0029】
なお、発電機室32内で発生する音は、吸気室31の吸気口31aから外部に漏れる可能性もあるが、発電機室32から吸気口31aまでの距離が長いことや、隔壁W1があること、音は水平方向ではなく鉛直下方に出ることなどにより、電源車1の周囲にいる人に聞こえる音の量は小さく済む。
【0030】
また、発電機室32内で発生する音は、マフラ室35の天井の排気口(スライドカバー101がスライドしてできる開口部)から外部に漏れる可能性もあるが、発電機室32からその排気口までの距離が長いことや、本実施形態ではその排気口は地上からの高さが3.2メートルの高い位置にあること、音は水平方向ではなく鉛直上方に出ることなどにより、電源車1の周囲にいる人に聞こえる音の量は小さく済む。
【0031】
また、操作室34において長手方向の同じ面に出力端子21と制御箱20を設けることで(図3(b))、作業者は一面の広いスペースで出力端子21と制御箱20のメンテナンスができる。例えば、図5(a)のような状況で、遮断器54などを取り外す、取り付ける等の作業をしたり(図5(b))、配線接続部カバー57を取り外す、取り付ける等の作業をしたり(図5(c))する場合に、広いスペースなので作業しやすい。
【0032】
なお、第一遮音室33および第二遮音室36は、荷物の収納スペースとして利用してもよい。例えば、第一遮音室33は前後方向に長いので、長い荷物を収納することができる。
【0033】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
例えば、第一遮音室33と操作室34の場所を入れ替えた構成としてもよい。
また、第一遮音室33と発電機室32は完全に気密に隔離されていなくてもよく、発電機室32内の発電機16の吸気温度を下げるために、第一遮音室33と発電機室32の間の隔壁W3における発電機16の付近に、発電機16が低温の空気を取り入れやすく、かつ、騒音が漏れにくい位置および大きさの空気取入れ口(例えば、床面に近い位置における40cm四方の正方形の網目状の開口部)を設けてもよい。気密のための他の隔壁についても同様である。
その他、具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 電源車
2 キャブ
3 防音室
4 シャーシ
5 燃料タンク
6〜15 扉
16 発電機
17 エンジン
18 ラジエータ
19 マフラ
20 制御箱
20a 制御盤
21 出力端子
31 吸気室
31a 吸気口
32 発電機室
33 第一遮音室
34 操作室
35 マフラ室
36 第二遮音室
42 配線接続部取付口
43 出力ケーブルメンテナンス口
44 吸気通過口
45 排気通過口
46 エキゾーストパイプ貫通穴
51 発電機口出線
52 配線接続部
52a 取付金具
52b 絶縁物
53 出力ケーブル
54 遮断器
56 出力端子取付台
57 配線接続部カバー
100 天井パネル
101 スライドカバー
W1〜W5 隔壁
図1
図2
図3
図4
図5