特許第6185953号(P6185953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185953
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】有用微生物を含む水質浄化体
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/00 20060101AFI20170814BHJP
   C02F 3/10 20060101ALI20170814BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20170814BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20170814BHJP
   C04B 28/30 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C02F3/00 G
   C02F3/10 A
   C02F3/34 Z
   C12N1/20 D
   C04B28/30 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-72845(P2015-72845)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-190219(P2016-190219A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年8月15日
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-02009
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-02010
(73)【特許権者】
【識別番号】592015802
【氏名又は名称】赤穂化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514312402
【氏名又は名称】株式会社ビッグバイオ
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 千明
(72)【発明者】
【氏名】小野 敬義
(72)【発明者】
【氏名】岩下 智明
(72)【発明者】
【氏名】阪本 忠幸
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−335969(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/108680(WO,A1)
【文献】 特開2008−253979(JP,A)
【文献】 特開平10−043782(JP,A)
【文献】 特開2014−024728(JP,A)
【文献】 特開2004−261677(JP,A)
【文献】 特開2005−144371(JP,A)
【文献】 特開昭56−125256(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0029187(US,A1)
【文献】 特開2009−254975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00 − 3/34
C04B 28/30
C12N 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有用微生物を含むマグネシアセメント硬化体からなり、
前記マグネシアセメント硬化体が、塩類として塩化マグネシウムのみを含むことを特徴とする水質浄化体。
【請求項2】
有用微生物を含むマグネシアセメント硬化体からなり、
前記マグネシアセメント硬化体が、塩類として塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムの両方を含み、
前記塩化マグネシウムと前記硫酸マグネシウムとの無水塩換算重量比が、1:0.05〜1:1.4であることを特徴とする水質浄化体。
【請求項3】
前記有用微生物としてバチルス属(Bacillus)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の水質浄化体。
【請求項4】
前記有用微生物としてBacillus firmus BA1株(受託番号:NITE P−02009)、またはBacillus pumilus BK1株(受託番号:NITE P−02010)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水質浄化体。
【請求項5】
建築構造物、または土木資材であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の
水質浄化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用微生物を含む水質浄化体に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用排水の活性汚泥処理、河川や湖沼の水質浄化、家庭の排水口や排水配管等の防汚や防臭に、有用微生物が利用されている。有用微生物群は、その目的により最適な菌種を選別し培養することで産業利用されている。培養された有用微生物は、濃縮培養液、あるいは無機物や有機物の粉体に担持されて供与されることが多い。有用微生物の生物活性を長期に亘って持続させ、また、一般的な商品として流通させるためには、その形状は液状や粉状ではなく、成形体であることが好ましい。特許文献1には、水質浄化作用を有する微生物を、土材、セメント系固化剤、多孔質粉状体、団粒化材とともに固化させた水質浄化体が提案されている。
【0003】
有用微生物を含む水質浄化体を成形する際には、強度、耐久性、コスト等の点から、酸化カルシウムを主原料とするポルトランドセメントの硬化体が用いられる。ポルトランドセメントは水が加えられて硬化されるが、この際、酸化カルシウムは水と反応して強アルカリ性の水酸化カルシウムとなる。ポルトランドセメント硬化体は強アルカリ性の水酸化カルシウムを含むため、pH11〜13を示す。
【0004】
ポルトランドセメント硬化体に有用微生物を担持させると、ポルトランドセメント硬化体の強アルカリ性により、有用微生物が減少または死滅してしまう。そのため、微生物を担持するポルトランドセメント硬化体は、pH調整剤が配合されて弱アルカリ性に調整されているが、硬化体には未反応の酸化カルシウムが残存している。pHを調整した硬化体に微生物を担持すると、残存する酸化カルシウムから新たに強アルカリ性の水酸化カルシウムが発生するため、有用微生物が経時で減少してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−254975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い水質浄化能を長期に亘って維持することのできる水質浄化体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.有用微生物を含むマグネシアセメント硬化体からなることを特徴とする水質浄化体。
2.前記有用微生物としてバチルス属(Bacillus)を含むことを特徴とする1.に記載の水質浄化体。
3.前記有用微生物としてBacillus firmus BA1株(受託番号:NITE P−02009)、またはBacillus pumilus BK1株(受託番号:NITE P−02010)を含むことを特徴とする1.または2.に記載の水質浄化体。
4.前記マグネシアセメント硬化体が、塩類として塩化マグネシウムのみを含むことを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の水質浄化体。
5.前記マグネシアセメント硬化体が、塩類として塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムの両方を含むことを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の水質浄化体。
6.建築構造物、または土木資材であることを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載の水質浄化体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水質浄化体は、弱アルカリ性のマグネシアセメント硬化体を用いることを特徴とする。本発明において用いるマグネシアセメント硬化体のpHは9〜10と弱アルカリ性であるから、水質浄化体の製造時に加える有用微生物の減少または死滅を防ぎ、有用微生物を多く含むことができる。本発明の水質浄化体は、有用微生物を多く含むことで、高い水質浄化能を示す。また、弱アルカリ性のマグネシアセメント硬化体内部で有用微生物は減少または死滅しないから、経時で有用微生物が減少せず、水質浄化能を長期間に亘って持続することができる。
【0009】
有用微生物としてバチルス属を含ませると、水質浄化能をさらに長期間に亘って持続することができる。これは、バチルス属が芽胞となって休眠するためである。芽胞となったバチルス属は適切な環境が整うと活動を再開することができるため、店頭や倉庫で長期間保管しても水質浄化能が低下することはない。また、芽胞となったバチルス属は、水質浄化体内部でも数十年休眠して生息し続けることができる。水質浄化体が徐々に崩壊して内部に水が侵入するとバチルス属は芽胞から発芽して活動を再開するため、水質浄化体が形を留めている限り、新たにバチルス属が供給され、バチルス属が死滅することはない。
【0010】
副塩として塩化マグネシウムのみを含む硬化体は、耐水性に劣り水中で崩壊しやすいため、その内部に存在する有用微生物を素早く水質浄化に利用することができ、即効性に優れている。副塩として塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムの両方を含む硬化体は、硬化後の安定性に優れ、長期に亘って水質浄化能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の水質浄化体は、有用微生物を含むマグネシアセメント硬化体からなることを特徴とする。
【0012】
「有用微生物」
本発明の水質浄化体に用いる有用微生物の種類は好気性であれば特に制限されず、その用途に応じて選択することができる。例えば、バチルス属(Bacillus)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、シュウドモナス属(Pseudomonas)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)菌、ニトロバクター属(Nitorobacter)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、アシネトバクター属(Acinetobacter)等を挙げることができる。これらの細菌は、自然環境中に生存しており、廃水中の有機物を栄養源として増殖するため、水質浄化に好適に用いることができる。
【0013】
有用微生物としてバチルス属を用いることが好ましい。バチルス属の微生物としては、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)、バチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルスフィルムス(Bacillus firmus)、バチルスアミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルスプミルス(Bacillus pumilus)の1種以上を用いることができる。これらの中で、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis) バチルスフィルムス(Bacillus firmus)バチルスプミルス(Bacillus pumilus)が好ましく、それぞれ受託番号NITE P−02009、NITE P−02010として、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(郵便番号292−0818))に、2015年2月26日付けで寄託されているBacillus firmus BA1株とBacillus pumilus BK1株がさらに好ましい。
【0014】
バチルス属は環境が悪化すると芽胞を形成する。芽胞はきわめて耐久性の高い細胞構造であり、芽胞となったバチルス属は代謝が低下あるいは停止して、芽胞状態のまま数十年間休眠することができる。そして、温度、水分、栄養源等が揃った適切な環境下に置かれると、芽胞は発芽してバチルス属は活動を再開する。
【0015】
製造された水質浄化体は、すぐに水中に投入されるとは限らず、製造後しばらく店頭や倉庫に保管されることが想定される。この保管時に、有用微生物に供給される水分、栄養分はほとんどない。有用微生物としてバチルス属を用いると、長期間保管された水質浄化体に含まれるバチルス属は芽胞状態となり休眠することができる。この水質浄化体を水中に設置すると、バチルス属は芽胞から発芽して活動を再開するため、長期間放置しても水質浄化能が低下しない。さらに、バチルス属は、有機物を分解する能力が高く、低温から高温まで活動することができるという、水質浄化体に用いる有用微生物として好ましい性質を有している。
【0016】
「マグネシアセメント」
マグネシアセメントとは、酸化マグネシウムと、塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムのいずれか、または両方との混合物であり、水を加えると水和硬化してマグネシアコンクリート(以下、「マグネシアセメント硬化体」、または単に「硬化体」という。)となる。マグネシアセメントは一般的なポルトランドセメントに比べて硬化速度が速く、成形体強度が高いという好ましい特性を有するが、保存性、硬化後の安定性に問題があるため広く利用されるに至っていない。
【0017】
「酸化マグネシウム」
酸化マグネシウムは、鉱石のマグネサイトや、海水にアルカリを反応させて得られる水酸化マグネシウム等を原料とし、焼成等により炭酸根又は水分子等を取り除くことで得られる。おおむね1800℃以下の温度で焼成された酸化マグネシウムは、水と接触すると等モルの水分子と結合して水酸化マグネシウムとなる水和反応を起こす。
十分な水存在下で酸化マグネシウムが水和反応を起こす際、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウム等の塩類が存在すると、その塩類の種類や濃度によりマグネシウムオキシクロライドやマグネシウムオキシサルフェート等のいわゆる副塩を形成する。
【0018】
酸化マグネシウムの水和反応、ならびに副塩形成反応における、添加水量を適度に調整することにより、良好な硬化物であるマグネシアセメント硬化体を得ることができる。酸化マグネシウムとしては、77Kの窒素ガスを吸着させた時の吸着等温線から算出できる比表面積が、5m/g以上500m/g以下である粉末状の酸化マグネシウムを用いることが好ましい。比表面積が5m/g未満では硬化反応が起こりにくく、500m/gより大きいと、硬化後のマグネシアセメント硬化体がひび割れやすくなる。比表面積は、10m/g以上200m/g以下であることがより好ましい。
【0019】
「塩化マグネシウム」
塩化マグネシウムには、無水塩(0水塩)、1水塩、2水塩、4水塩、6水塩、8水塩、12水塩が存在する。「水塩」とは結晶として単離できる化合物を意味する。また、一般的に塩化マグネシウムと称される物は6水塩である。本発明では、上記した塩化マグネシウムの1種、または2種以上の混合物を特に制限することなく使用することができる。なお、塩化マグネシウムは空気中の水分を取り込んで水溶液となる潮解性を有する。
【0020】
「硫酸マグネシウム」
硫酸マグネシウムには、無水塩(0水塩)、1水塩、2水塩、4水塩、5水塩、6水塩、7水塩、12水塩が存在する。「水塩」とは結晶として単離できる化合物を意味する。また、一般的に硫酸マグネシウムと称される物は7水塩である。本発明では、上記した硫酸マグネシウムの1種、または2種以上の混合物を特に制限することなく使用することができる。なお、硫酸マグネシウム7水塩は、乾燥空気中に放置すると結晶水を失う特性、すなわち、風解性を有する。
【0021】
「マグネシアセメント硬化体」
本発明のマグネシアセメントにおいて、塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムとは一方のみを用いてもよく、両方を用いてもよい。マグネシアセメント硬化体の組成は、塩化マグネシウムの代表的な副塩として、5MgO・MgCl・12HO、5MgO・MgCl・14HO、9MgO・MgCl・24HO、8MgO・MgCl・15HO、4MgO・Mg(OH)Cl・16HO等が挙げられる。また、硫酸マグネシウムの代表的な副塩として、5MgO・MgSO・8HO、MgO・MgSO・6HO、3MgO・MgSO・11HO、5MgO・MgSO・8HO等が挙げられる。塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムの両方を用いた際は、これらの混合物になっていると推測される。
【0022】
酸化マグネシウムと、塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムとの和(塩総量)の無水塩換算重量比は20:80〜95:5であることが好ましい。酸化マグネシウムと塩総量の無水塩換算重量比は、50:50〜85:15であることがより好ましく、70:30〜80:20であることがさらに好ましい。
【0023】
塩総量中の塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムとの配合比は、任意に調整する事ができる。ここで、塩類として塩化マグネシウムのみを含む硬化体は、硫酸マグネシウムのみを含む硬化体と比較して耐水性に劣る。そのため、塩類として塩化マグネシウムのみを含むマグネシアセメント硬化体からなる水質浄化体は、塩類として硫酸マグネシウムのみを含むマグネシアセメント硬化体からなる水質浄化体や、塩類として塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムの両方を含むマグネシアセメント硬化体からなる水質浄化体と比較すると、水中で崩壊しやすい。そのため、塩化マグネシウムのみを含む硬化体は、その内部に存在する有用微生物が比較的短期間で外部に放出されるため、即効性に優れている。
【0024】
また、塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムの両方を用いると、硬化後のマグネシアコンクリートにおいて、塩化マグネシウム由来の潮解性と硫酸マグネシウム由来の風解性がバランスを取り合い、風解による白化や、潮解による吸湿変色を抑制できるため好ましい。塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムとの無水塩換算重量比は、1:0.05〜1:5としたものが好ましく、1:0.15〜1:2.5であることがより好ましく、1:0.3〜1:2であることがより好ましく、1:0.4〜1:1.4であることがさらに好ましい。塩類として塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムの両方を含むマグネシアセメント硬化体は、安定性に優れているため、長期に亘って水質浄化能を発揮することができる。
【0025】
本発明のマグネシアセメントには、必要に応じて繊維補強材、界面活性剤、減水剤、流動化剤、発泡剤、防水材、ポリマー混和剤、軽量化骨材、骨材等の添加剤を配合することができる。例えば、機械的強度を増すために、ガラス繊維、植物性繊維、動物性繊維、化学繊維等の繊維補強材を、軽量化のために軽石、シラス、バーミキュライトなどの無機軽量化骨剤や発泡ウレタンなどの有機軽量化骨材を、発熱および収縮の抑制と低コスト化のために砂や砂利等の骨材を配合することができる。
【0026】
本発明のマグネシアセメント100重量部に対し、20〜85重量部の範囲で、適量の水を徐々に加えて全体が均一なスラリー状になるまで撹拌混合した物を、型などに流し入れ、静置することにより、マグネシアセメント硬化体を得ることができる。加える水の量は、塩総量(塩化マグネシウムと硫酸マグネシウムの総和)中の結晶水量に応じて適宜定めることができ、結晶水量が多いと混合する水量は少なくてよい。常温で24時間以上静置することにより、十分な強度を持つマグネシアセメント硬化体を得ることができる。硬化反応は24時間経過後も継続して促進され、約200時間経過すると最強強度に達する。
【0027】
「水質浄化体」
マグネシアセメントを硬化させる際の水に、有用微生物を含む菌液を含ませることで、本発明の有用微生物を含むマグネシアセメント硬化体からなる水質浄化体を得ることができる。また、マグネシアセメント硬化体を多孔質として、菌液に浸漬することで本発明の水質浄化体を得ることもできる。菌液は、培養液をそのまま、または希釈して用いることができる。本発明のマグネシアセメント硬化体は、pH9〜10の弱アルカリ性であるため、硬化体と有用微生物とが直接接触しても、有用微生物のアルカリによる減少を防ぐことができる。
【0028】
本発明の水質浄化体の製造時に用いるマグネシアセメントを硬化させる水として、上記したバチルス属の菌液を用いることにより、水質浄化体の表面のみならず内部にまでバチルス属を存在させることができる。水質浄化体の内部には栄養分は存在しないが、バチルス属は芽胞を形成して休眠する。そして、マグネシアセメント硬化体からなる水質浄化体がヒビ割れ等して内部に水が侵入すると、水質浄化体の内部で芽胞状態となっていたバチルス属が活動を再開する。そのため、水質浄化体が形を留めている限り、新たなバチルス属を供給し続けることができ、バチルス属が死滅することはない。なお、本発明のマグネシアセメント硬化体は、その大きさにもよるが、通常の自然環境下では5、6年以上原型を留めている。
【0029】
マグネシアセメント硬化体を多孔質とすると、水質浄化体の表面積が広くなるため、水質浄化の効率を高めることができる。多孔質とする方法は有用微生物への悪影響がないものであれば特に制限されないが、軽石、シラス、バーミキュライト等の多孔質体を配合する方法が、簡便、低コストであり好ましい。多孔質体の配合量は特に限定されないが、多孔質体の配合量が多いほど強度が低下しまう。そのため、通常は、マグネシアセメントと多孔質体との重量比は、30:70〜99:1の範囲内である。
【0030】
本発明の水質浄化体は、そのまま水中に投下するだけで利用することができる。また、マグネシアセメントの硬化時に適切な形状とすることで、本発明の水質浄化体を用いて魚の養殖、飼育のためのコンクリート池や水槽、下水処理場や排水処理場の曝気槽等を作製することもできる。さらに、本発明の水質浄化体に用いられるマグネシアコンクリートの強度は一般的なポルトランドセメントよりなるコンクリートよりも優れているため、建築構造物、土木資材として利用することができる。例えば、ダム、橋梁、橋脚、防波堤、防潮堤、桟橋、噴水、岸壁、護岸等の建築構造物、ブロック、貯水升、下水溝、波消しブロック等の土木資材等に好適に利用することができる。
【0031】
次に、本発明を実施例に基づいて、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
「有用微生物」
表1に示す2種のバチルス菌の菌液を用いた。また、菌液を段階希釈した10000倍希釈液を、標準寒天培地に0.1ml塗布し、培養槽(アズワン株式会社製定温乾燥機、装置名:ON−450S)で30℃、24時間培養した後のコロニーの数を示す。なお、菌液中でバチルス菌は芽胞を形成している。
【0033】
【表1】
【0034】
「マグネシアセメント」
マグネシアセメントとして、下記表2に示す重量比で配合した3種のマグネシアセメントを用いた。また、比較例として、市販のポルトランドセメント(株式会社コメリ製 商品名:コメリ ポルトランドセメント)を用いた。また、粉体である各セメント1.00gを100mlの水に入れて撹拌し、上澄のpHをpHメータ(堀場製作所株式会社製、装置名:D−51)を用いて測定した。測定結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
「培地の調整」
水1000mLに対して、酵母エキス2.5g、トリプトン5.0g、グルコース1.0g、寒天粉末15.0gを加えて混合し、高圧蒸気殺菌した。この混合物20mlを、50度に保温した滅菌シャーレに加えて室温で放置し、寒天を凝固させて標準寒天培地とした。
【0037】
「実施例1」
215ml容量のプラスチック容器に、100gのマグネシアセメント1と、純水50mlを加え撹拌した。撹拌しながら、BA1株の菌液を1ml添加し、さらに3分撹拌した。撹拌後、22℃で2日間静置して硬化させた。なお、静置時には内部に気泡が形成されないようにした。
プラスチック容器から取り出した硬化体をハンマーで細かく砕き、この破砕物0.1gを滅菌済みの1.5ml用蓋付マイクロチューブに量り取り、0.9mlの生理食塩水に懸濁した。標準寒天培地に懸濁液0.1ml塗布し、培養槽(アズワン株式会社製定温乾燥機、装置名:ON−450S)で30℃、24時間培養した後、コロニーの数を計測した。
また、室内で45日放置した後の硬化体をハンマーで砕き、上記と同様にしてコロニーの数を計測した。
【0038】
「実施例2〜6」
有用微生物とマグネシアセメントとを、下記表3に示すように組み合わせて、上記実施例1と同様にして、硬化体を作製し、コロニー数を計測した。試験結果を表3に示す。
【0039】
「比較例1、2」
市販のポルトランドセメントを用い、硬化時に加える水を40mlとした以外は、上記実施例1と同様にして、硬化体を作製し、コロニー数を計測した。試験結果を表4に示す。
【0040】
「比較例3〜5」
マグネシアセメント1〜3を用い、バチルス菌の菌液を加えなかった以外は、上記実施例1と同様にして、硬化体を作製し、コロニー数を計測した。試験結果を表4に示す。なお、比較例3〜5では、45日放置後のコロニー数の計測は行っていない。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
「まとめ」
マグネシアセメント硬化体のpHは9.22〜9.44であった。ポルトランドセメント硬化体のpHは11.76であり、マグネシアセメント硬化体のアルカリ性は、ポルトランドセメント硬化体の100分の1以下であった。
【0044】
BA1株を用いた実施例1〜3、およびBK1株を用いた実施例4〜6は、硬化体の内部で有用微生物が生存していることが確かめられた。また、45日放置した後も硬化体の内部で有用微生物は生存しており、その菌数はほとんど変わらなかった。これは、マグネシアセメントは弱アルカリ性であるため、製造時、保管時に有用微生物が減少しないためである。すなわち、弱アルカリ性のマグネシアセメントを用いることで、有用微生物を多く含み、長期間保管しても有用微生物が減少しない水質浄化体が得られることが確認できた。
【0045】
ポルトランドセメントを用いた比較例1、比較例2では、BA1株は検出限界以下、BK1株の生存は確認できたが、マグネシアセメントを用いた実施例4〜6と比べて1/5〜1/10と菌数は僅かであった。また、45日後には、菌の生存は確認できなかった。これは、ポルトランドセメントのpHは11.76と強アルカリ性であったため、経時で菌が減少してしまったためである。
【0046】
比較例3〜5より、製造時に菌を加えない限りは、マグネシアセメント内部に菌は存在しないことが確認できた。なお、比較例4ではコロニーが確認できたが、これはバチルス属のコロニーではなく、製造時に混入した他の菌に由来するものと推測される。