(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185955
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】実装装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20170814BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
H05K13/04 B
H01L21/60 311T
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-82536(P2015-82536)
(22)【出願日】2015年4月14日
(62)【分割の表示】特願2014-136701(P2014-136701)の分割
【原出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-15472(P2016-15472A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2015年11月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146722
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−221184(JP,A)
【文献】
国際公開第2001/041209(WO,A1)
【文献】
特開2007−221098(JP,A)
【文献】
特開2009−027105(JP,A)
【文献】
特開2001−332586(JP,A)
【文献】
特開2005−332836(JP,A)
【文献】
特開2002−093856(JP,A)
【文献】
特開2004−127981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30;13/00−13/08
H01L 21/447−21/449;21/60−21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を基板上に実装する実装装置であって、
規定の第一方向に移動可能な第一移動ベースと、
前記第一移動ベースに取り付けられ、前記第一方向と直交する第二方向に移動可能な第二移動ベースと、
前記第二移動ベースに取り付けられ、前記電子部品を吸着保持する実装ツールを具備した実装ヘッドと、
前記第一移動ベースに取り付けられ、前記実装ヘッドを昇降させるとともに前記実装ヘッドに前記第二方向の力を付加する加圧機構と、
前記第一移動ベースおよび第二移動ベースと独立して設けられ、前記実装ツールが前記基板に当接した際に生じる第二方向の反力を前記加圧機構から受ける受圧部材であって、前記加圧機構が前記第一方向に摺動可能に係合する受圧部材と、
前記第一方向に前記第一移動ベースを移動可能に延在する第一レールと、
を備え、
前記第一レールおよび受圧部材は、前記第一方向および前記第二方向に直交する第三方向に移動可能な第三ベースに取り付けられている、
ことを特徴とする実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の実装装置であって、
前記加圧機構は、前記実装ヘッドから反力を受けた際に、当該反力を逃がすように前記第二方向へ移動可能である、ことを特徴とする実装装置。
【請求項3】
請求項2に記載の実装装置であって、さらに、
前記加圧機構は、反力を受けて前記第二方向に撓む弾性体を介して前記第一移動ベースに取り付けられている、ことを特徴とする実装装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の実装装置であって、
前記受圧部材は、前記第二移動ベースの可動範囲全体をカバーするサイズである、ことを特徴とする実装装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の実装装置であって、
前記第二方向は、鉛直方向であり、
前記第一方向は、前記鉛直方向に直交するY方向であり、
前記第三方向は、前記鉛直方向およびY方向に直交するX方向である、
ことを特徴とする実装装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の実装装置であって、
前記加圧機構は、前記実装ヘッドを昇降させる際に、昇降しない、ことを特徴とする実装装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の実装装置であって、
前記加圧機構は、前記実装ヘッドが鉛直方向に移動するときに、鉛直方向に移動しない、ことを特徴とする実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等の電子部品を基板に実装する実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体チップ等の電子部品を、実装ツールで吸引保持して基板上に移送したうえで、当該電子部品を基板上に実装させる実装装置が広く知られている。
【0003】
こうした実装装置の中には、実装ツールを、基板の実装位置真上に位置させるために、基板側ではなく、実装ツールを備えた実装ヘッド側を移動させるものがある。例えば、特許文献1には、水平方向に延びる水平ガイドレールに水平移動体を取り付け、この水平移動体に、実装ヘッドを垂直方向にガイドするガイドレール、および、実装ヘッドに垂直方向の力を付加する加圧機構(例えばモータ等)を取り付けている。
【0004】
一般に、基板を保持する基板ステージは、基板全体を加熱する加熱機構等も有しており、実装ヘッドに比べて大型であることが多い。この基板ステージではなく、実装ヘッド側を移動させる構成とすることで、装置全体の小型化や、コスト低減等が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4644481号公報
【特許文献2】特許第4592637号公報
【特許文献3】特開2001−332586号公報
【特許文献4】特開2009−27105号公報
【特許文献5】特許第5252516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、加圧機構を水平移動体に取り付ける構成の場合、水平移動体、ひいては、当該水平移動体に取り付けられた実装ヘッドが水平軸に対して傾き、実装の精度不良を招く場合があった。
【0007】
すなわち、実装ツールで基板を押圧した際には、必ず、実装ツールは、垂直方向の反力を受ける。特許文献1の構成では、この反力は、水平移動体に取り付けられた加圧機構が受けることになる。しかし、加圧機構は、その配置の制約上、水平ガイドレールに対してオフセットして配置されており、片持ち状に保持されている。この加圧機構が、垂直方向の反力を受けると、モーメントが発生し、加圧機構、ひいては、当該加圧機構が取り付けられた垂直移動体や、実装ヘッドが、垂直軸に対して傾いてしまうおそれがあった。
【0008】
特許文献2〜5には、実装ヘッドを垂直方向に加圧する加圧機構を、実装ヘッドが取り付けられる構造体とは別の構造体に取り付ける分離加圧機構が開示されている。分離加圧機構によれば、実装ヘッドと加圧機構が分離しているため、加圧機構は、実装ヘッドの反力を受けるものの、加圧機構の傾き等実装ヘッドには伝わらないため、実装ヘッドの姿勢を正常に維持でき、ひいては、実装の精度を高く維持できる。
【0009】
しかしながら、特許文献2〜5の技術は、いずれも、加圧機構を、固定部材に取り付けており、加圧機構の位置はほぼ固定となっている。そのため、実装ツールで電子部品を基板に実装する際には、基板側を、加圧機構の真下に移動させなければならない。実装ヘッドよりも大きい基板ステージを移動させることは、実装装置全体の大型化やコスト増加という新たな問題を招く。
【0010】
そこで、本発明では、実装の精度を高く維持しつつも、装置全体の大型化を防止できる実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実装装置は、電子部品を基板上に実装する実装装置であって、規定の第一方向に移動可能な第一移動ベースと、前記第一移動ベースに取り付けられ、前記第一方向と直交する第二方向に移動可能な第二移動ベースと、前記第二移動ベースに取り付けられ、前記電子部品を吸着保持する実装ツールを具備した実装ヘッドと、前記第一移動ベースに取り付けられ、
前記実装ヘッドを昇降させるとともに前記実装ヘッドに前記第二方向の力を付加する加圧機構と、前記第一移動ベースおよび第二移動ベースと独立して設けられ、
前記実装ツールが前記基板に当接した際に生じる第二方向の反力を前記加圧機構から受ける受圧部材であって、前記加圧機構が
前記第一方向に摺動
可能に係合する受圧部材と、
前記第一方向に前記第一移動ベースを移動可能に延在する第一レールと、を備
え、前記第一レールおよび受圧部材は、前記第一方向および前記第二方向に直交する第三方向に移動可能な第三ベースに取り付けられている、ことを特徴とする。
【0012】
好適な態様では、前記加圧機構は、前記実装ヘッド
から反力を受けた際に、当該反力を逃がすように前記第二方向へ移動可能である。この場合、前記加圧機構は、反力を受けて前記第二方向に撓む弾性体を介して前記第一移動ベースに取り付けられている、ことが望ましい。
【0013】
他の好適な態様では、受圧部材は、第二移動ベースの可動範囲全体をカバーするサイズである。他の好適な態様では、前記第二方向は、鉛直方向であり、前記第一方向は、前記鉛直方向に直交するY方向であり、前記第三方向は、前記鉛直方向およびY方向に直交するX方向である。他の好適な態様では、前記加圧機構は、前記実装ヘッドを昇降させる際に
、昇降しない。他の好適な態様では、前記加圧機構は、前記実装ヘッド
が鉛直方向に移動
するときに、鉛直方向に移動しない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第一移動ベースおよび第二移動ベースと独立して設けられた受圧部材で反力を受けるため、反力に起因する実装ヘッドの傾きを防止でき、ひいては、実装精度の悪化を防止できる。また、本発明によれば、加圧機構を実装ヘッドとともに水平方向に移動可能としているため、基板側に移動機構を設ける必要がなくなり、装置全体の大型化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態である実装装置の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態である実装装置10の要部斜視図である。また、
図2は、実装ヘッド12周辺の概略側面図である。なお、
図1では、発明を分かりやすくするために、ウェーハが設置される材料供給部や、材料供給部から電子部品を中継ステージ14まで搬送する材料供給部の図示は省略している。
【0017】
実装装置10は、電子部品である半導体チップをフェースダウンの状態で基板100上に実装する装置で、例えば、フリップチップ実装装置である。実装装置10は、実装ツール16を具備した実装ヘッド12と、半導体チップを実装ツール16に供給するチップ供給手段(図示せず)と、基板100が載置されている基板ステージ18と、実装ヘッド12をXY方向(水平方向)に移動させるヘッド移動機構と、実装ヘッド12を垂直方向に加圧する加圧機構20と、実装ヘッド12からの反力を受ける受圧部材22と、を備えている。
【0018】
半導体チップは、チップ供給手段に設けられた中継アーム(図示せず)で、ウェーハから中継ステージ14に移送される。この中継ステージ14に載置された半導体チップは、実装ツール16でピックアップされた後、基板100の上に移送され、当該基板100上に実装される。実装ヘッド12には、半導体チップを吸着保持する実装ツール16の他に、実装ツール16の回転機構(図示せず)や、カメラ24等が設けられている。回転機構は、実装装置10の制御部(図示せず)からの指示に応じて、実装ツール16を垂直軸回りに回転させる。カメラ24は、必要に応じて、ピックアップ対象の半導体チップや、基板100表面を撮影する。実装装置10の制御部は、このカメラ24で撮影された画像に応じて、適宜、実装ツール16の位置や姿勢を調整する。
【0019】
実装ツール16の対向位置には、基板100を保持する基板ステージ18が設けられている。この基板ステージ18には、基板100を搬入・排出するために当該基板100をX方向に送る送り機構28や、基板100を加熱する加熱装置等が設けられている。
【0020】
実装ヘッド12は、ヘッド移動機構により、XY方向に移動可能となっている。ヘッド移動機構としては、種々の構成が考えられるが、本実施形態では、XYガントリー方式の移動機構を採用している。具体的には、本実施形態のヘッド移動機構は、固定部材にある基台表面、すなわち水平面に設置され、X方向に延びる一対のX軸ガイドレール30を備えている。このX軸ガイドレール30には、X軸モータ(図示せず)の駆動に応じて、当該X軸ガイドレール30に沿って移動するX軸移動ベース32が取り付けられている。X軸移動ベース32には、当該一対のX軸ガイドレール30間に差し渡されるY軸ガイドレール34と、受圧部材22と、が設置されている。Y軸ガイドレール34の前面には、さらに、Y軸モータ(図示せず)の駆動に応じて当該Y軸ガイドレール34に沿って移動するY軸移動ベース36が取り付けられている。Y軸移動ベース36は、略矩形の平板で、その前面には、Z軸ガイドレール38が取り付けられている。Z軸ガイドレール38は、Y軸移動ベース36の前面に取り付けられ、Z軸方向に延びるレールである。このZ軸ガイドレール38には、当該Z軸ガイドレール38に沿って昇降し、その前面に実装ヘッド12が固着されたZ軸移動ベース40が取り付けられている。
【0021】
Y軸移動ベース36の前面には、さらに、加圧機構20も取り付けられている。加圧機構20は、実装ヘッド12に、垂直方向の力を付加する機構で、Z軸モータ42や、当該Z軸モータ42に連結されたリードスクリュー44、Z軸モータ42を保持するモータホルダ46等から構成される。リードスクリュー44は、実装ヘッド12に設けられた移動ブロック26に螺合されており、移動ブロック26は、Z軸モータ42の駆動、ひいては、当該リードスクリュー44の回転に応じて昇降する。さらに、この昇降の力は、実装ツール16で保持した半導体チップを基板100上に押し付けるための加圧力としても利用される。つまり、加圧機構20は、実装ヘッド12を昇降させるZ軸移動機構として機能するとともに、実装ツール16に垂直方向の力を付加する加圧手段としても機能する。
【0022】
ここで、この加圧機構20を、金属等からなるブラケット等を介して、Y軸移動ベース36に固着しただけの場合、実装ヘッド12からの反力を受けて加圧機構20にモーメントが作用し、加圧機構20や、当該加圧機構20に連結されたY軸移動ベース36が傾き、実装の精度が悪化するという問題があった。
【0023】
すなわち、加圧機構20を、Y軸移動ベース36の前面に固着しただけの構成の場合、通常、加圧機構20は、片持ち状態で保持されることになる。一方、フリップチップ実装では、比較的大きな荷重、例えば、200〜300N(およそ20〜30kgf)といった高荷重で半導体チップを基板100に押し付ける。この場合、当然、実装ツール16には、当該荷重に応じた大きさの反力が作用し、この反力は、当該実装ツール16を押圧する加圧機構20に伝達される。加圧機構20を片持ち状態で保持しているだけの場合、この反力により加圧機構20にはモーメントが発生し、加圧機構20、ひいては、当該加圧機構20が取り付けられているY軸移動ベース36や、当該Y軸ベースに取り付けられている実装ヘッド12が、垂直軸に対して傾くことがあった。こうした実装ヘッド12の傾きは、実装精度悪化の原因となっていた。
【0024】
かかる問題を避けるために、加圧機構20をY軸移動ベース36に取り付けず、別の固定部材に固着することも考えられている。しかし、この場合、加圧機構20の位置が固定となり、実装ツール16の昇降位置が固定されることになる。この場合、実装ツール16と基板100との相対位置関係を変更するために、実装ヘッド側ではなく、基板側にXY移動機構を設ける必要が生じる。しかし、実装ヘッド12よりも大型であることが多い基板100を移動させる場合、移動機構の大型化や、コストアップ等の新たな問題が発生していた。
【0025】
そこで、本実施形態では、こうした問題を避けるために、加圧機構20をY軸移動ベース36に取り付けて移動可能にするとともに、実装ヘッド12からの反作用を受ける受圧部材22を設けている。
【0026】
受圧部材22は、X軸移動ベース32上に立脚する一対のコラム50と、当該一対のコラム50間に差し渡される受圧板52と、から構成される門型部材である。この受圧部材22は、X軸移動ベース32に取り付けられているため、実装ヘッド12や加圧部材とともに、X軸方向に移動できるようになっており、受圧部材22の受圧板52は、常に、加圧機構20の真上に位置できるようになっている。
【0027】
モータホルダ46の上面には、この受圧板52の底面に当接し、受圧板52に対して摺動可能な当接部材48が設けられている。当接部材48は、受圧板52(受圧部材22)に対して摺動可能であれば、その構成等は特に限定されないが、本実施形態では、円弧状の先端を有する板材を当接部材48として二つ設けている。この当接部材48は、円弧の一点でのみ受圧板52に当接するため、摺動抵抗を小さく保つことができる。
【0028】
実装ツール16で、半導体チップを基板100表面に押し当てた際に生じる反力は、実装ツール16、加圧機構20、当接部材48を介して、受圧板52に伝達される。受圧板52は、加圧機構20やY軸移動ベース36、実装ヘッド12とは独立して設けられた部材であるため、当該受圧板52が反力を受けて傾いたとしても、加圧機構20や実装ヘッド12が影響を受けることはない。したがって、この受圧板52を設けることで、加圧機構20や実装ヘッド12が反力を受けて傾くこと、ひいては、実装精度が悪化することを防止できる。
【0029】
また、本実施形態では、加圧機構20をY軸移動ベース36に取り付けており、加圧機構20を、実装ヘッド12とともに水平方向に移動できるようにしている。そのため、実装ヘッド12の水平方向の可動範囲内であれば、どこででも実装ツール16を昇降させることができる。その結果、実装ツール16と基板100との相対位置変更のために、基板100側に高精度な移動機構を設ける必要がなく、装置全体の小型化、コスト削減が可能となる。なお、どこで、実装ツール16を基板100の表面に押し付けたとしても確実に反力を受けることができるように、受圧部材22は、加圧機構20の水平方向の移動範囲全体をカバーできるサイズ、構成となっている。
【0030】
ところで、加圧機構20が、Y軸移動ベース36に強固に固着されていると、受圧部材22を設けていても、反力が受圧部材22に伝わらず、加圧機構20にモーメントが生じ、加圧機構20や実装ヘッド12が傾くおそれがある。そこで、本実施形態では、加圧機構20を、垂直方向への移動を許容した状態でY軸移動ベース36に取り付けている。具体的には、本実施形態では、加圧機構20を、弾性体54を介して、Y軸移動ベース36に取り付けている。弾性体54は、加圧機構20を重力に抗して保持する一方で、ある程度の大きさ(例えば重力以上)の力を受けた場合は、垂直方向に変位可能な程度のバネ硬さを有している。この弾性体54としては、種々の構成が考えられるが、本実施形態では、左右側板が略矩形にくりぬかれた中空箱型の弾性体54を用いている。かかる弾性体54は、略矩形のくりぬきの関係で、垂直方向に撓みやすくなっている一方で、くりぬきがない(または、あったとしてもくりぬきが小さい)底板および天板の影響で、水平方向には殆ど変形しないようになっている。かかる弾性体54を介してZ軸モータ42をY軸移動ベース36に取り付けることにより、加圧機構20は、重力に抗して保持される一方で、実装ツール16から反力を受けた場合には、当該反力を逃がすように、Z軸方向に動く。そして、この垂直方向の動きにより、当接部材48が、受圧板52に押し付けられ、反力が受圧板52に伝達される。
【0031】
以上のような構成とすることで、実装ツール16の傾きを防止でき、実装精度の悪化を防止できる。すなわち、本実施形態では、基板100上に半導体チップを実装する際には、中継ステージ14にセットされた半導体チップを実装ツール16でピックアップし、基板100上に移動させる。この移動は、X軸移動ベース32をX軸ガイドレール30に沿って移動させるとともに、Y軸移動ベース36をY軸ガイドレール34に沿って移動させることで行われる。そして、実装ツール16が、基板100の実装位置の真上に位置すれば、加圧機構20を駆動して、実装ツール16を、基板100側に降下させ、半導体チップを、基板100表面に押し付ける。このとき、実装ツール16は、押し付け荷重に応じた大きさの反力を受ける。ボンディンツールが受けた反力は、加圧機構20に伝わる。ただし、加圧機構20は、既述した通り、垂直方向に変位可能な状態で取り付けられているため、反力を受けて加圧機構20は、垂直上方に変位する。変位の結果、当接部材48が受圧板52に当接し、受圧板52が、反力を受けることになる。受圧板52は、実装ツール16や、加圧機構20とは独立して設けられた部材であるため、当該受圧板52が反力を受けたとしても、加圧機構20や実装ツール16には、モーメントは発生せず、これらの傾きが防止される。そして、結果として、実装精度の悪化を防止できる。
【0032】
また、本実施形態では、加圧機構20は、実装ツール16とともに水平移動し、加圧機構20の移動範囲全体に受圧部材22が位置している。したがって、実装ツール16の水平移動範囲であれば、どこでも、実装ツール16を基板100上に押し付けつつも、反力による実装ツール16の傾きを防止できる。結果として、基板100側に水平移動機構を設ける必要がなく、装置全体の小型化、低コスト化が図れる。
【0033】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、加圧機構20を実装ヘッド12とともに水平移動可能にするとともに、加圧機構20から反力を受けるべく加圧機構20に近接設置された受圧部材22を設けるのであれば、その他の構成は適宜変更されてもよい。例えば、本実施形態では、左右側板が略矩形にくりぬかれた箱型の弾性体54を介して加圧機構20をY軸移動ベース36に取り付けているが、加圧機構20が重力に抗して保持されるとともに、反力を受けて垂直移動できるのであれば、加圧機構20は、他の構成で保持されてもよい。例えば、
図3に示すように、Y軸移動ベース36に固着されたアングル56と、モータホルダ46の底部との間に、垂直方向に伸縮するコイルバネ58を配し、当該コイルバネ58で加圧機構20を支持するようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、先端が円弧状の当接部材48を受圧板52の底面に接触させ、摺動させる構成としているが、加圧機構20が受圧部材22に対して摺動できるのであれば、他の構成でもよい。例えば、
図3に示すように、受圧部材22として、底面にY軸方向に延びるレール60を設けるとともに、モータホルダ46の天面に、当該レール60に係合して摺動するスライドブロック62を設け、加圧機構20が受圧部材22に対してスライドできるようにしてもよい。また、別の形態として、
図4に示すように、モータホルダ46の天面に、ボールローラ64を配してもよい。
【0035】
さらに、本実施形態では、受圧部材22を、Y軸ガイドレール34とともにX軸移動ベース32に設置し、X軸方向に移動可能としているが、受圧部材22は、加圧機構20の可動範囲をカバーできるのであれば、水平方向に移動しなくてもよい。例えば、
図4に示すように、受圧部材22は、加圧機構のX軸方向可動範囲およびY軸方向可動範囲をカバーするサイズを有した、位置固定の平板66であってもよい。
【0036】
また、これまでの説明は、フリップチップ実装装置10を例に挙げて説明したが、本実施形態の技術は、電子部品を基板100表面に押し付けて実装する装置であれば、他の装置、例えば、ダイボンディング装置等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 実装装置、12 実装ヘッド、14 中継ステージ、16 実装ツール、18 基板ステージ、20 加圧機構、22 受圧部材、24 カメラ、26 移動ブロック、28 送り機構、30 X軸ガイドレール、32 X軸移動ベース、34 Y軸ガイドレール、36 Y軸移動ベース、38 Z軸ガイドレール、40 Z軸移動ベース、42 Z軸モータ、44 リードスクリュー、46 モータホルダ、48 当接部材、50 コラム、52 受圧板、54 弾性体、58 コイルバネ、60 レール、62 スライドブロック、64 ボールローラ、66 平板、100 基板。