(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
真空ポンプであって、主インレット(70)からガスの為のアウトレットへと延在するポンプチャネル(10)に沿ってガスをポンピングする為の少なくとも一つのポンプ機構(125,124’、124’’)を有するものにおいて、
ポンプ機構(124,124’、124’’)が、ポンプ機構(124,124’、124’’)の第二のポンプ作用を奏する部分(138)の流れ上流に設けられた、ポンプ機構(124,124’,124’’)の第一のポンプ作用を奏する部分(136)が、第二のポンプ作用を奏する部分(138)よりも高い圧縮能力を有するよう形成されており、及び/又は、
ポンプ機構(124,124’、124’’)が、第二のポンプ作用を奏する部分(138)が、第一のポンプ作用を奏する部分(126)よりも高い吸引能力を有するよう形成されており、
ガスの為の少なくとも一つの中間インレット(122)及び/又は少なくとも一つの余量開口(156)がポンプチャネル(10)内に開口しており、その際、第一のポンプ作用を奏する部分(136)が、余量開口156)及び/又は中間インレット(122)の開口部(134)の流れ上流に存在し、そしてその際、第二のポンプ作用を奏する部分(138)が余量開口(156)及び/又は中間インレット(122)の開口部(134)の流れ下流に存在し、
中間インレット(122)の開口部(134)及び/又は余量開口(156)の開口部が、直列に配置され、かつ互いに入り込むよう接続された、ホルベックポンプ機構の二つのホルベックポンプステージ(124’、124’’)の間で、ポンプチャネル(10)内に開口していることを特徴とする真空ポンプ。
第一のポンプ作用を奏する部分が、開口部(134)の流れ上流に位置するホルベックポンプステージ(124’)により形成され、かつ、第二のポンプ作用を奏する部分が、開口部の流れ下流に位置するホルベックポンプステージ(124’’)により形成されることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
第一のポンプ作用を奏する部分(136)が、第一のホルベックねじ山(140)を有し、第二のポンプ作用を奏する部分(138)が第二のホルベックねじ山(142)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の真空ポンプ。
第一のホルベックねじ山(140)と第二のホルベックねじ山(142)が、第一のホルベックねじ山(140)が第二のホルベックねじ山(142)に対してより高い圧縮能力を実現するよう形成されていることを特徴とする請求項3に記載の真空ポンプ。
第一のホルベックねじ山(140)と第二のホルベックねじ山(142)が、第二のホルベックねじ山(142)が第一のホルベックねじ山(140)に対してより高い吸引能力を実現するよう形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の真空ポンプ。
各ホルベックねじ山(140,142)が、ステーター要素(126,126’、126’’)の側面に、またはステーター要素(126,126’、126’’)と協働する、各ポンプ作用を奏する部分のローター要素(128)の側面に形成されており、かつ、ねじ線形状の、側面を推移する複数のウェブ(130,130’)と、これらの間に位置する複数の溝(132,132’)により形成されていることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
第一のホルベックねじ山(140)のより高い圧縮能力、及び/又は、第二のホルベックねじ山(142)のより高い吸引能力が、両方のホルベックねじ山(140,142)が、以下のパラメーター、つまり:
溝(132,132’)の数量、溝(132,132’)又はウェブ(130,130’)の勾配角度、ステーター要素(126,126’、126’’)とこれに付随するローター要素(128)の間のホルベック間隙の大きさ、溝(132,132’)の深さ、ウェブ(130,130’)の高さ、溝(132,132’)の幅、ウェブ(130,130’)の幅、
の少なくとも一つにおいて異なっていることにより達成されることを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明の課題は、ポンピング方向に反対のガスの流れが出来る限り低い、改善された真空ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の真空ポンプによって解決される。本発明の好ましい実施形および発展形は、従属請求項に記載される。
【0007】
課題は、特に、冒頭に記載した形成器の真空ポンプにおいて、ポンプ機構が、ポンプ機構の第二のポンプ作用を奏する部分に関し流れ上流に設けられているポンプ機構の第一のポンプ作用を奏する部分が、第二のポンプ作用を奏する部分よりも高い圧縮能力を有するよう形成されており、及び/又はポンプ機構が、第二のポンプ作用を奏する部分が第一のポンプ作用を奏する部分よりも高い吸引能力を有するよう形成されていることによって解決される。
【0008】
本発明の有利な形態に従い、少なくとも一つの中間インレット及び/又は少なくとも一つの余量開口がポンプチャネル内に開口しており、その際、第一のポンプ作用を奏する部分が、中間インレットの開口部及び/又は余量開口の流れ上流に存在しており、そしてその際、第二のポンプ作用を奏する部分が、中間インレットの開口部及び/又は余量開口の流れ下流に存在している。
【0009】
本発明の枠内で、主インレットからアウトレットへと向かうポンピング方向と反対の、中間インレット又は余量開口を通ってポンプチャネル内に入るガスの流れが、流れ込むガスが、中間インレット又は余量開口の流れ下流において、高い吸引能力を有するポンプ機構によって吸い離されることによって防止されることが可能であること、及び/又は、開口部に前配置されたポンプ作用を奏する第一の部分の高い圧縮能力によって、ポンピング方向と反対のガスの逆流が抑えられる、又は少なくとも防止されることが可能であることがわかった。
【0010】
その際、吸引能力とは、時間単位ごとにポンプチャネルの断面を通って搬送されることが可能である容積流と見られる。発明に係る真空ポンプにおいて、その際、第一のポンプ作用を奏する部分は、これが時間単位ごとに、第二のポンプ作用を奏する部分よりも低い容積流を、ポンプチャネルを通して搬送するよう形成されている。
【0011】
圧縮能力は、好ましくは、構造長さに関する。つまり、構造長さごとの圧縮能力に合わせられる。よって発明に係る真空ポンプにおいては、ポンプ機構は、好ましくは、第一のポンプ作用を奏する部分が、第二のポンプ作用を奏する部分よりも構造長さごとにより高い圧縮能力を有するよう形成されている。圧縮能力とは、ポンプ作用を奏する第一又は第二の各部分によって、その流れ下流に位置する各端部において達成されることが可能である圧縮比率であると見られる。よって、発明に係る真空ポンプにおいて、第一のポンプ作用を奏する部分は、第二のポンプ作用を奏する部分よりも高い圧縮比率を達成することができる。
【0012】
本発明の好ましい態様に従い、ポンプ機構はホルベックポンプ機構を有する。ホルベックポンプ機構は、ターボ分子ポンプにおいて使用され、かつ分子的な流れ領域において特に効率的である、良く知られているポンプ機構である。ホルベックポンプ機構は、一または複数のホルベックポンプステージを有する。これらは、互いに直列または並列に接続されており、かつターボ分子ポンプ内でターボ分子的ポンプステージに、通常、後接続されている。
【0013】
ホルベックポンプステージは、典型的には、シリンダー側面形状のステーター要素と、同様にシリンダー側面形状のローター要素を有する。その際、ステーター要素の側面と、ローター要素の側面は、ホルベックポンプステージのポンプ効果を発する表面を形成し、そして、互いに狭い間隙を形成しつつ向かい合っている。この間隙はホルベック間隙と称される。通常、ステーター要素の側面内には、ねじ線形状に推移する複数のウェブと、該ウェブの間に配置された、同様にねじ線形状に推移する溝が形成されている。これらは、ホルベックポンプステージの領域内にガスの為のポンプチャネルを形成する。ローター要素の互いに向き合った側面は、これと反対に滑らかに形成されている。
【0014】
原理的には、ウェブおよび溝はローター要素の側面にも設けられていることが可能であり、ステーター要素の側面が滑らかに形成されていることが可能である。これは、ただし実践ではほとんど見られない。
【0015】
ホルベックポンプステージのポンプ作用は、搬送すべきガス分子が、ローター要素の回転動作によって溝の内部で促進され、これによって軸方向に搬送されることに基づいている。その際、複数の溝の間に形成されるウェブが溝をシールし、そしてポンピング方向に反対のガス分子の逆流又は流出を防止し、または減少させる。ねじ線形状に推移するウェブと溝は、ホルベックねじ山を形成する。その際、ねじ線形状とは、ねじ線の部分回転のみを形成する形状もこれに相当すると理解される。
【0016】
ステーター要素は、原理的には外側または内側の側面にもホルベックねじ山を有することが可能である。ステーター要素は、両方の側面にそのようなポンプ効果を発する表面を有し得る。ポンプ効果を発するいずれの表面も、ステーター要素に対して回転する、同様に基本的にシリンダー形状のローター要素のポンプ効果を発する側面と共に、ホルベックポンプステージを形成することができる。
【0017】
好ましくは、ポンプチャネル内への余量開口の開口部、及び/又は、中間インレットの開口部は、ホルベックポンプ機構のホルベックポンプステージの内部に位置している。ホルベックポンプステージの内部には、中間インレットの開口部及び/又は余量開口の開口部の流れ上流又は流れ下流のホルベックねじ山の相応する形成によって、開口部の前で高い圧縮能力が、及び/又は、開口部に後置された高い吸引能力がホルベックポンプステージによって実現されることが達成されることが可能である。
【0018】
特に好ましくは、第一のポンプ作用を奏する部分が、ホルベックポンプステージの、開口部の流れ上流に位置する部分によって、そして第二のポンプ作用を奏する部分が、ホルベックポンプステージの、開口部の流れ下流に位置する部分によって形成される。ホルベックポンプステージ又はポンプステージのホルベックステーターは、これによって開口部の流れ上流の、高い圧縮能力を有する第一のポンプ作用を奏する部分と、開口部の流れ下流の堅い吸引能力を有する第二のポンプ作用を奏する部分に、二分割されることが可能である。これは構造的に簡単に実現されることが可能である。
【0019】
中間インレットの開口部、及び/又は余量開口の開口部が、直列に配置され、特に互いに入り込むよう接続された、ホルベックポンプ機構の二つのホルベックポンプステージの間で、ポンプチャネル内に位置しているとき、特に有利である。その際、第一のポンプ作用を奏する部分が開口部の流れ上流に位置するホルベックポンプステージによって、および第二のポンプ作用を奏する部分が開口部の流れ下流に位置するホルベックポンプステージによって形成されることが可能である。第一の流れ上流のポンプステージは、よって、これが、開口部に後接続される、流れ下流のホルベックポンプステージよりも高い圧縮能力を有するよう形成されていることが可能である。流れ下流のホルベックポンプステージは、その吸引能力が、開口部の前のホルベックポンプステージの吸引能力よりも高いよう形成されていることが可能である。
【0020】
第一のポンプ作用を奏する部分は、第一のホルベックねじ山を有し、そして第二のポンプ作用を奏する部分が第二のホルベックねじ山を有することが可能である。好ましくは、第一のホルベックねじ山は、これが第二のホルベックねじ山よりも高い圧縮能力を達成するよう形成されている。第一のホルベックねじ山と第二のホルベックねじ山は、第二のホルベックねじ山が、第一のホルベックねじ山に対してより高い吸引能力を達成するよう形成されていることが可能である。
【0021】
各ホルベックねじ山は、各ポンプ作用を奏する部分の、ステーター要素又はステーター要素と協働するローター要素の側面に形成されており、およびねじ線形状に側面を推移するウェブとこの間に位置する溝によって形成されていることが可能である。その際、第一のホルベックねじ山のより高い圧縮能力、及び/又は、第二のホルベックねじ山のより高い吸引能力は、両方のホルベックねじ山が、以下のパラメーター、つまり溝の数量、溝またはウェブの勾配角度、ステーター要素と付随するローター要素の間のホルベック間隙の大きさ、溝の深さ、ウェブの高さ、溝の幅、およびウェブの幅の少なくとも一つにおいて異なっていることによって達成されることができる。
【0022】
上述した幾何パラメーターの少なくとも一つの適当な調整によって、第一のホルベックねじ山を有する第一のポンプ作用を奏する部分、及び/又は、第二のホルベックねじ山を有する第二のポンプ作用を奏する部分が、中間インレットの開口部に対して、及び/又は余量開口の開口部に対して前配置されて、より高い圧縮能力を提供する、及び/又は開口部に後配置されてより高い吸引能力を提供するよう形成されることが可能である。
【0023】
本発明は真空装置、特に漏えい探査装置または質量分析計にも関する。これは真空装置内に統合されるか、または真空装置に配置された発明に係る真空ポンプを有している。
【0024】
本発明はまた、主インレットからガスの為のアウトレットへと延在するポンプチャネルに沿ってガスをポンピングするための少なくとも一つのポンプ機構を有する真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにも関する。その際、少なくとも一つの中間インレット及び/又はガスの為の余量開口がポンプチャネル内に開口しており、その際、ポンプ機構は、余量開口及び/又は中間インレットの開口部の流れ上流に位置するポンプ機構の第一のポンプ作用を奏する部分が、開口部の流れ下流に存在するポンプ機構の第二のポンプ作用を奏する部分よりも高い圧縮能力を有するよう形成されており、及び/又は、その際、ポンプ機構は、第二のポンプ作用を奏する部分が第一のポンプ作用を奏する部分よりも高い吸引能力を有するよう形成されている。ここで挙げられた発展形および態様は、上述した発明に係る真空ポンプのバリエーションに対しても相応して有効である。
【0025】
以下に本発明を例示的に、有利な実施形に基づいて添付の図面を参照しつつ説明する。図は以下を簡略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示された真空ポンプは、インレットフランジ68によって取り囲まれたポンプインレット70と、ポンプインレット70に及ぶガスをポンプチャネル10を通して
図1に表されていないポンプアウトレットに搬送するための複数のポンプステージを有する。真空ポンプは、静的なハウジング72を有するステーターと、該ハウジング72内に配置されたローターを有する。ローターは、回転軸14を中心として回転可能に支承されたローター軸12を有している。
【0028】
真空ポンプは、ターボ分子ポンプとして形成されており、そしてポンプ作用を奏する、互いに直列に接続された複数のターボ分子的ポンプステージから形成される一つのポンプ機構を有している。ターボ分子的ポンプステージは、ローター軸12と接続される複数のターボ分子的ローターディスク16と、軸方向でローターディスク16の間に配置され、そしてハウジング72内に固定された複数のターボ分子的ステーターディスク26を有している。ステーターディスク26は、スペーサーリング36によって互いに所望の軸方向間隔に保持されている。ローターディスク16とステーターディスク26は、吸い込み領域(独語:Schoepfbereich)50内に、矢印58の方向、つまりポンプ方向に向けられた軸方向のポンプ作用を奏する。ポンプチャネル10は、その際、ターボ分子的ポンプステージに通り、更に、ターボ分子的ポンプステージに後配置されたホルベックポンプ機構を通って延在している。
【0029】
ホルベックポンプ機構は、示された例においては、半径方向で互いに入り込んで配置され、そしてポンプ作用を奏するよう互いに直列に接続された三つのホルベックポンプステージを有し得いる。ホルベックポンプステージのローター側の部分は、ローター軸12と接続された一つのローターハブ72とローターハブ74に固定され、そしてこれによって担持されるシリンダー側面形状の二つのホルベックロータースリーブ76,78を有する。更に、シリンダー側面形状の二つのホルベックステータースリーブ80,82が設けられている。これらは、同様に回転軸14に対して同軸に向けられ、そして半径方向で互いに入り込むように接続されている。
【0030】
ホルベックポンプステージのポンプ効果を発する表面は、其々、半径方向の狭いホルベック間隙を形成しつつ互いに向かい合っている半径方向の側面によって、其々、ホルベックロータースリーブ76,78と、ホルベックステータースリーブ80,82に形成されている。その際、ポンプ効果を発する表面の各一つ(この場合ホルベックロータースリーブのそれ)は、滑らかに形成されており、ホルベックステータースリーブ80,82のポンプ効果を発する向かい合った側の面は、回転軸14を中心として軸方向に推移する複数の溝を有するホルベックねじ山を有している。このねじ山内で、ロータースリーブ76,78の各回転によってガスが促進され、これによってポンピングが行われる。
【0031】
各ホルベックポンプステージの領域では、基本的に溝が、ポンピングを行うべきガスのためのポンプチャネルを形成する。ホルベックポンプステージは、その際、特にホルベックねじ山に基づいてポンプ作用を提供し、ポンプチャネルに沿ってターボ分子的ポンプステージによって搬送されるガスを更にホルベックポンプステージを通してアウトレットへと搬送する。
【0032】
ローター軸12の回転可能な支承は、ポンプアウトレットの領域のローラー支承部84とポンプインレット70の領域の永久磁石支承部86によって行われる。
【0033】
永久磁石支承部86は、ローター側の支承半部88とステーター側の支承半部90を有している。これらは、軸方向に互いに積層された永久磁石のリング92,94から成る各一つのリング積層部を有している。マグネットリング92,94は、その際、半径方向の支承間隙96を形成しつつ互いに向かい合っている。
【0034】
磁石支承部86内には、緊急用または安全用支承部98が設けられている。これは、潤滑されていないローラー支承部として形成されている。真空ポンプの通常の運転中には、安全用支承部98は空転運転を行う。これは、ローターがステーターに対して半径方向の過剰にそれた際に初めて係合し、ローターの為の半径方向のストッパーを形成する。このストッパーは、ローター側の構造がステーター側の構造と衝突するのを防止する。
【0035】
ローラー支承部84の領域内には、ローター軸22に、円すい形の一つのスプラッシュナット100が設けられている。これは、ローラー支承部84の方に向かって増加する外直径を有している。スプラッシュナット100は、作動媒体貯蔵部内のスキマー(独語:Abstreifer)と接触している。作動媒体貯蔵部は、例えば潤滑媒体のような作動媒体を含まされた吸収性の複数のディスク102を有している。運転中には作動媒体は毛細管作用によって作動媒体貯蔵部からスキマーを介して回転するスプラッシュナット100へと伝達される。そして遠心力の結果、スプラッシュナット100に沿って大きくなる外直径の方向へローラー支承部84に向かって搬送され、そこで例えば潤滑機能を発揮する。
【0036】
しかしまた、他の形式のローラー軸12の支承部も可能である。ローター軸12の為の、例えば五軸のアクティブ式磁石支承部が設けられていることが可能である。
【0037】
真空ポンプは、ローターの回転駆動の為に、一つの駆動モーター104を有している。その回転子はローター軸12によって形成されている。制御ユニット106が該モーター104を駆動する。
【0038】
図2に示されたステーター要素は、
図1の真空ポンプにおいてホルベックステータースリーブ82として使用されることが可能である。ステーター要素は、基本的にシリンダー側面形状の基本京王を有し、そして三つの独立したステーター部材を有する。これら部材は、ステーター要素を三つの角度部分に細分する。個々のステーター部材108,108’、108’’の区分面は、
図2において符号110,112および114で表されており、そしてステーター要素の長手方向軸116に基本的に平行に推移しているので、各ステーター部材108,108’、108’’は、その平坦面から見て基本的に直角な輪郭形状を有する一つのシリンダー側面要素を形成している。ステーター要素は、しかしまた一部品式に形成されていることも可能である。
【0039】
各ステーター部材108,108’、108’’は、その外側面にもその内側面にも其々複数のウェブ部分118,118’、118’’を有している。これらは、共にねじ線形状の長手軸116の方向へと推移する複数のウェブを形成している。これらウェブは、ステーター要素の内側および外側の側面に形成されており、かつこれらの間には其々、ねじ線形状の軸方向116に推移する複数の溝120が形成されている。ウェブおよび溝120は、その際それぞれ一つのホルベックねじ山を、ステーター要素の内側および外側の側面に形成している。これは、各側面に対して回転する、ホルベックシリンダーとして形成されるローター要素(
図1のホルベックロータースリーブ76,78参照)と共に、ホルベックポンプステージを形成するのに適している。その際、各ローター要素は、特に、なめらかなポンプ効果を発する一つの面を有している。
【0040】
ステーター要素のセグメント化によって、その製造は明らかに簡易化される。というのは個々のステーター部材108,108’、108’’がアンダーカット無しで(独語:hinterschneidungsfrei)製造され、そして簡単に成型(変形)可能だからである。ステーター要素は、しかしまた一部品式に製造されていることが可能である。これは例えば、真空適合性のある金属またはプラスチックから成る中実シリンダーまたは中空シリンダーから削り出すためである。
【0041】
ホルベックポンプステージによってポンピングされるガスの好ましい流れ経路148は、複数の溝120に沿って推移し、そして
図2に表されている。
【0042】
発明に係る真空ポンプにおいて、ポンプインレット70に形成される主インレットに加えて、一つの中間インレット122が設けられていることが可能である。この中間インレットとはポンプチャネル10内に開口している(
図3,4Aおよび5参照)。
【0043】
真空ポンプにおいては、中間インレット122の開口部の流れ上流に位置する、ポンプ機構の第一のポンプ作用を奏する部分が、開口部の流れ下流に位置する第二のポンプ作用を奏する部分よりも高い圧縮能力を有する、及び/又は、第二のポンプ作用を奏する部分が、第一のポンプ作用を奏する部分よりも高い吸引能力を有するよう、少なくとも一つのポンプ機構が形成されている。これによって、ポンピング方向に反対の、ポンプチャネル10内に至るガスの中間インレット122を介しての流れが防止されるか、または減少されることが可能である。これによって、真空ポンプの性能が全体として改善されることが可能である。
【0044】
流れ上流または流れ下流に位置する、第一または第二のポンプ作用を奏する部分は、その際特に、ポンプ機構の、開口部の直接前後に位置する部分または領域を意味する。
【0045】
図3Aおよび4Aのバリエーションにおいては、中間インレット122のポンプチャネル10内への開口部は、外側に位置するステーター126と、該ステーター126と協働する内側に位置するローター128を有するホルベックポンプステージ124の内部に位置している。
【0046】
ステーター126は、
図2を参照して説明されるステーター要素のように形成されていることが可能であり、そしてこれによってシリンダー側面形状の基本形状を有していることが可能である。
図3に示すように、中間インレット122は、円形状の断面を有するチャネルの形式で、ステーター126を通過して長手軸116方向に対して横断する方向に推移しており、そしてその際、ホルベックポンプステージを通って推移するポンプチャネル10内に開口している。中間インレット122を形成するチャネルは、代替として楕円形又は角型の断面を有することが可能である。
【0047】
ホルベックポンプステージ126においては、ポンプチャネル10に関して開口部134の流れ上流に位置する、ステーター要素126の部分が、第一のポンプ作用を奏する部分136を形成し、そして開口部134の流れ下流に位置するステーター126の部分が、第二のポンプ作用を奏する部分138を形成する。これによってステーター126は、第二のポンプ作用を奏する部分138よりも高い圧縮能力を発揮する、第一のポンプ作用を奏する部分136と、より高い吸引能力を有する第二のポンプ作用を奏する部分138に二分されている。
【0048】
より高い圧縮能力またはより高い吸引能力を達成するために、ポンプ作用を奏する各部分136,138に形成されるホルベックねじ山140,142は互いに異なっている。第一のポンプ作用を奏する部分136の内側側面の第一のホルベックねじ山140は、ねじ線形状に推移する複数のウェブ130とこれらの間に位置する複数の溝132により形成される。第二のポンプ作用を奏する部分138の内側側面に設けられる第二のホルベックねじ山142は、ねじ線形状に推移する複数のウェブ130’とこれらの間に位置する複数の溝132’により形成される。
【0049】
第一のホルベックねじ山140は、開かれ、粗くかつ急こう配の構造を有する第二のホルベックねじ山142よりも狭くかつ平らな構造を有する。
図3に示されるように、第一または第二のホルベックねじ山140,142の各構造が、複数の溝132が、複数の溝132’よりも狭く、複数のウェブ130または複数の溝132の勾配が、複数のウェブ130’または複数の溝132’の勾配よりも低く、複数のウェブ130が、複数のウェブ130’よりも高く、複数の溝132が複数の溝132’よりも深く、及び/又は、第一のホルベックねじ山140におけるホルベック間隙が、第二のホルベックねじ山142のホルベック間隙よりも小さいことによって達成される。
【0050】
その際、勾配とは、従来のねじ山勾配と類似の大きさが意図されている。更に、ホルベック間隙とは、ホルベックロータースリーブ144の外側の側面に対する、複数の溝132,132’の半径方向内側の方を向いた正面の間の各間隔が意図されている。
【0051】
両方のホルベックねじ山140,142の異なる構造によって、第一のポンプ作用を奏する部分136は、開口部134の領域のポンプチャネル10内で高い圧縮能力を達成しぱ、そして第二のポンプ作用を奏する部分138はポンプチャネル10の開口部134の領域で高い吸引能力を達成する。これによって簡単かつ効率的な方法で、中間インレットを介して流れ込むガスの、ポンピング方向に反対の望まれない流れが防止され、または少なくとも減少されることが可能である。というのは、ガスがある意味、第二のポンプ作用を奏する部分138によって「吸い離される」または、第一のポンプ作用を奏する部分136によって引き起こされる高い圧縮能力が、ポンピング方向に反対のガスの流れ込みを防止するからである。
【0052】
図3および4Aと関連して説明されるバリエーションにおいては、よって、高い圧縮能力を有する第一のポンプ作用を奏する部分136が、ホルベックポンプステージ124の、開口部134の流れ上流に位置する部分によって形成され、他方で高い吸引能力を有する第二のポンプ作用を奏する部分138が、ホルベックポンプステージ124の、開口部134の流れ下流に位置する部分から形成される。
【0053】
ホルベックロータリースリーブ144を有し、内側に位置し、長手方向軸又は回転軸116を中心として回転可能なローター128と、外側に位置するステーター126とを有するホルベックポンプステージ124は、その際、ホルベックポンプステージとして
図1の真空ポンプで使用されることが可能であり、これは特に、ポンプチャネル10に関し、一または複数のターボ分子的ポンプステージに後配置され、そして別のホルベックポンプステージに直列に行われる。
【0054】
真空ポンプは、また、中間インレット無しで形成されていることも可能である。
図4Bのバリエーション参照。このバリエーションにおいては、
図4Aのバリエーションと比較して中間インレット122が設けられていない。
図4Bのバリエーションでは、少なくとも一つのポンプ機構と、特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプステージが、ポンプ機構の第二のポンプ作用を奏する部分の流れ上流に位置するポンプ機構の第一のポンプ作用を奏する部分が、第二のポンプ作用を奏する部分よりも高い圧縮能力を有し、及び/又は、第二のポンプ作用を奏する部分が、第一のポンプ作用を奏する部分よりも高い吸引能力を有するよう形成されている。これによって、ポンプ作動の間のポンピング方向と反対のガスの逆流が防止される、または少なくとも減少されることが可能である。真空ポンプの性能が、これによって全体として改善されることが可能である。
【0055】
図5のバリエーションにおいては、ポンプチャネル10内への中間インレット122の開口部134は、第一のホルベックポンプステージ124’と第二のホルベックポンプステージ124’’の間に位置する。両方のポンプステージ124’、124’’は、直列に配置され、そして互いに入り込むよう接続されている。ポンプチャネル10は、よって其々、
図5に示唆させるように、中間インレット122の開口部134の領域内で、第一のホルベックポンプステージ124’から第二のホルベックポンプステージ124’’内、そしてポンピング方向146でみて第二のホルベックポンプステージ124’’への後通路(独語:Nachgang)中に一つの180度転向部を有している。
【0056】
第一のホルベックポンプステージ124’は、シリンダー側面形状のステーター126’を有している。その内側側面は、ローター128のホルベックロータースリーブ144と共に、ポンプステージ124’のポンプ効果を発する本来の表面を形成する。その際、
図5に示されるように、第一のホルベックねじ山140がステーター126’の内側の側面に設けられている。第二のホルベックポンプステージ124’’は、一つのシリンダー側面形状のステーター126’’を有する。その外側側面は、ホルベックロータースリーブ144の内側側面と共に、第二のホルベックポンプステージ124’’の本来のポンプ効果を発する表面を形成し、その際、第二のホルベックねじ山142は、ステーター126’’の外側の側面に設けられる。
【0057】
図5のバリエーションにおいては、第一のポンプ作用を奏する部分は、第一のホルベックポンプステージ124’により、そして第二のポンプ作用を奏する部分は、第二のホルベックポンプステージ124’’により形成される。第一のポンプ作用を奏する部分または第一のホルベックポンプステージ124’は、その吸引能力がより高い第二のポンプ作用を奏する部分または第二のホルベックポンプステージ124’’よりも高い圧縮能力を有する。より高い圧縮能力またはより高い吸引能力は、その際、特に、ここでもまた第一または第二のホルベックねじ山140,142の構造上の相違により達成されることが可能である。
【0058】
第一のホルベックねじ山140は、開かれ、粗く、そして急な構造を有する第二のホルベックねじ山142よりも狭くそして平坦な構造を有する。
【0059】
第一または第二のホルベックねじ山140,142の構造は、その際、溝132が、溝132’よりも狭い、ウェブ130または溝132の勾配がウェブ130’または溝132’の勾配よりも低い、ウェブ130がウェブ130’よりも高い、溝132が、溝132’よりも深い、及び/又は、第一のホルベックねじ山140におけるホルベック間隙が、第二のホルベックねじ山142におけるホルベック間隙よりも小さいことにより実現されることが可能である。
【0060】
両方のホルベックねじ山140,142の異なる構造によって、第一のポンプ作用を奏する部分が、開口部134の領域のポンプチャネル10内で高い圧縮能力を達成し、そして第二のポンプ作用を奏する部分が、ポンプチャネル10内の開口部134の領域中において高い吸引能力を有する。これによって、簡単かつ効率的な方法で、ポンピング方向と反対の、中間インレット122を逆流するガスの望まれない逆流が防止される、または少なくとも減少される。というのは、第二のポンプ作用を奏する部分が、ガスをポンピング方向にいわば吸入し、他方で第一のポンプ作用を奏する部分が、ポンピング方向と反対のガスの流れ込みを大幅に防止するからである。
【0061】
両方の互いに入り込んで接続されたホルベックポンプステージ124’、124’’は、
図1の真空ポンプにおいて使用されることが可能である。これは、特にポンプチャネル10に関して、ターボ分子的ポンプステージに対して後配置されて使用可能である。
【0062】
図6の真空ポンプは、
図1の真空ポンプのように構成されている。
図1の真空ポンプと異なり、
図6の真空ポンプでは、半径方向外側に位置するホルベックステータースリーブ80がその外側面150に、周回する余量チャネル(独語:Flutkanal)152を有する。この余量チャネルは、ポンプハウジング72に設けられた余量チャネルインレット154を二つの余量開口156へと接続する。余量開口156は、少なくとも基本的に半径方向にホルベックステータースリーブ80を通って走っており、そしてホルベックステータースリーブ80とホルベックロータースリーブ76の間のホルベック間隙内へと開口する。
【0063】
中間インレット122が通常、真空ポンプによってレシーバーから引っ張られるプロセスガスの為のインレットとして使用される一方で、余量チャネルインレット154は、ポンプ作動の間、通常は閉じられている。余量チャネルインレット154は、通常、真空ポンプの遮断の後に初めて開かれ、ポンプを換気する。ポンプの換気によって、ローター軸12とこれに配置される部材は、迅速に静止状態へともたらされることが可能である。
【0064】
ホルベックステータースリーブ80およびホルベックロータースリーブ76によって形成される、半径方向と外側に位置するホルベックポンプステージは、第一のポンプ作用を奏する部分(この部分は、ホルベック間隙を通してポンピングするガスの流れ方向に関して、余量開口156の開口部の流れ上流に位置する)と、第二のポンプ作用を奏する部分を有する(この部分は開口部の流れ下流に位置する)。その際、第一のポンプ作用を奏する部分は、第二のポンプ作用を奏する部分よりも高い圧縮能力と低い吸引能力を有する。これによって真空ポンプの換気の間、余量開口156からホルベック間隙内へと流れるガスがより良好な方法で意図された流れ方向へとポンプアウトされることが可能である。余量開口156から前配置されたターボ分子的ポンプステージへのガス流は、これによって、特にローター軸12が未だ高い回転数で回転している時点に対して減少される。高回転で流れ込むガスによるターボ分子的ポンプステージの羽根の損傷は、これによって防止されることが可能である。低い回転数では、流れ込むガスは逆にターボ分子的ポンプステージに対し害が無い。減少する回転数と共に、第一および第二のポンプ作用を奏する部分に働くポンプ効果は弱まるので、減少する回転数と共に、より多くの、余量開口156を通って進入するガスがターボ分子的ポンプステージを流れる。
【0065】
真空ポンプの現されていないバリエーションは、少なくとも一つの余量開口156も中間インレット120も、ホルベックポンプステージのホルベック間隙中に有している。その際、ホルベックポンプステージの第一のポンプ作用を奏する部分と第二のポンプ作用を奏する部分の間の移行部は、中間インレットの開口部の領域中、または余量開口の開口部の領域中にある。
【0066】
記載したバリエーションにおいては、其々の第一のポンプ作用を奏する部分は、その吸引能力がより高い第二のポンプ作用を奏する部分より高い圧縮能力を有する。しかしまた、第一のポンプ作用を奏する部分の圧縮能力のみが、第二のポンプ作用を奏する部分のそれよりも高い、または第二のポンプ作用を奏する部分の吸引能力のみが、第一のポンプ作用を奏する部分のそれよりも高いというバリエーションも考えられる。