(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の液圧シリンダの1つの最大推力をfとしたときの前記N基の液圧シリンダの総最大推力N×fは、仕様上の最大スライドクッション力の1.5倍以上である請求項5に記載のプレス機械のスライドクッション装置。
前記スライドクッション用液圧装置は、前記ロジック弁のパイロットポートに作用する圧力を、前記パイロット圧力と前記システム圧力とのいずれか一方に切り換える第1の電磁弁を含む請求項1又は2に記載のプレス機械のスライドクッション装置。
前記スライドクッション用液圧装置は、前記クッション圧力発生ラインと前記システム圧力作用ラインとの間に配設され、前記クッション圧力発生ラインと前記システム圧力作用ラインとの間を開閉する第2の電磁弁を含む請求項8に記載のプレス機械のスライドクッション装置。
前記第1の電磁弁及び前記第2の電磁弁を制御する制御器であって、前記スライドの下降期間に前記ロジック弁のパイロットポートに前記パイロット圧力が印加されるように前記第1の電磁弁を制御し、前記スライドの上昇期間に前記第2の電磁弁が開くように前記第2の電磁弁を制御する制御器を備えた請求項9に記載のプレス機械のスライドクッション装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、クッション手段に対して大きさの異なる金型が取付可能である記載があり、特許文献1の
図15及び
図16には、金型(即ち、金型本体に昇降可能に取り付けられたパッド本体)の大きさに応じて、パッド本体に取り付けられる押圧力伝達ロッドの本数が異なることが図示されている。これは、金型の大きさに応じて、パッド本体の投影面内に配置されているロッドレスシリンダの数が異なり、その結果、ロッドレスシリンダと一対一に対応して配置される押圧力伝達ロッドの本数も異なるからである。
【0010】
即ち、パッド本体に取り付けられる押圧力伝達ロッドは、パッド本体の投影面内に配置されているロッドレスシリンダと一対一に対応しており、特許文献1には、パッド本体に取り付ける押圧力伝達ロッドの本数及び配置を任意に調整する発想は開示されていない。
【0011】
また、特許文献1に記載のクッション手段は、ベース板に複数のロッドレスシリンダが嵌め込まれて構成されているため、部品点数が多くなり、その分ベース板の厚み寸法も増す。更にロッドレスシリンダは、ガス密閉形であるため、プレス成形中にクッションストロークに応じて増圧したり、成形後もクッション圧力が残存したりし、少なからず成形に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、プレス成形される材料の上金型の凹部内の領域を上側から押圧する際に、金型毎にクッションピンの本数及び配置を任意に調整可能であり、またクッション圧力の発生の応答性が早く、また増圧する事無くほぼ一定な圧力が制御可能であり、また成形後は脱圧することが可能であり、これらによって成形性が良く、かつ安価なプレス機械のスライドクッション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の一の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置は、プレス機械のスライドを構成する板材又は前記スライドの直下に配設された板材の内部に一体形成された複数の液圧シリンダと、前記スライドと共に上下動する上金型の凹部に上下動可能に配置され、前記上金型に対向する下金型の凸部との間で材料を押圧する加圧部材と、前記加圧部材に配設され、前記上金型を貫通して前記液圧シリンダのピストン部材に当接するクッションピンであって、前記上金型の凹部の投影面内に配置された複数の液圧シリンダの数よりも少ない数に調整された複数のクッションピンと、少なくとも前記クッションピンが当接する前記液圧シリンダの加圧室に供給する液圧を制御するスライドクッション用液圧装置と、を備える。
【0014】
本発明の一の態様によれば、プレス機械のスライドを構成する板材又は前記スライドの直下に配設された板材の内部に複数の液圧シリンダを一体形成するようにしたため、多くの液圧シリンダを配置することができ、かつ部品点数を少なくすること(装置を安価にすること)ができるとともに、スライドクッション装置の高さ方向の寸法を最小限にすることができる。
【0015】
また、加圧部材に配設され、上金型を貫通して液圧シリンダのピストン部材に当接するクッションピンは、上金型(加圧部材)に応じて本数及び配置を任意に調整可能であり、少なくとも上金型の凹部の投影面内に配置された複数の液圧シリンダの数よりも少ない数に調整される。逆に、板材の内部に一体形成される液圧シリンダは、クッションピンの数や配置を調整可能な程度に多く配置されている。
【0016】
更に、スライドクッション用液圧装置により、少なくともクッションピンが当接する液圧シリンダの加圧室に供給する液圧を制御するため、成形ストロークに応じて増圧すること無くほぼ一定のスライドクッション圧力を制御することができ、また、成形完了後、プレス機械のスライドが下死点に到達以降は、ダイクッション圧力を脱圧することができ、成形を助長する。
【0017】
前者は、成形終盤に材料の局所に作用する応力集中度合を緩和し材料の破断を防止し、後者は、プレス機械のスライド上昇中に、加圧部材が製品を介して上金型に作用し(纏わる)ことにより、不本意に製品を変形させる等、製品に悪影響を及ぼすことを防止する。
【0018】
本発明の他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記複数の液圧シリンダの数をNとすると、前記Nは10以上であることが好ましい。液圧シリンダの数が10未満の場合、クッションピンの数や配置の自由度が少なくなるからである。
【0019】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記複数の液圧シリンダの1つの最大推力をfとしたときの前記N基の液圧シリンダの総最大推力N×fは、仕様上の最大スライドクッション力の1.5倍以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記スライドクッション用液圧装置は、クッション圧力発生ラインと、所定のシステム圧力に作動液が保持されるシステム圧力作用ラインとを有し、前記複数の液圧シリンダの各加圧室は、前記複数の液圧シリンダと同数の複数の切換弁のうちのいずれか1つの切換弁を介して前記クッション圧力発生ライン又は前記システム圧力作用ラインに接続され、又は前記複数の液圧シリンダよりも少ない複数の切換弁のうちのいずれか1つの切換弁を介して前記クッション圧力発生ライン又は前記システム圧力作用ラインに接続されることが好ましい。
【0021】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記スライドクッション用液圧装置は、クッション圧力発生ラインと、所定のシステム圧力に作動液が保持されるシステム圧力作用ラインとを有し、前記複数の液圧シリンダの各加圧室は、前記クッション圧力発生ラインに直接接続されることが好ましい。これにより、複数の液圧シリンダの各加圧室には、クッション圧力発生ラインに発生するクッション圧力を事前に印加することができ、クッション圧力の発生の応答性を早くすることができる。
【0022】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記システム圧力作用ラインには、0.3Mpa〜10.0Mpaの範囲のシステム圧力に作動液を保持するアキュムレータが接続されることが好ましい。これにより、複数の液圧シリンダの各加圧室の圧力を所望のクッション圧力に昇圧させる際の昇圧応答時間の短縮化が可能になる。
【0023】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記スライドクッション用液圧装置は、前記クッション圧力発生ラインと前記システム圧力作用ラインとの間に配設され、スライドクッション圧力作用時にメインリリーフ弁として動作可能なパイロット駆動式のロジック弁と、前記クッション圧力発生ラインと前記システム圧力作用ラインとの間に配設され、前記ロジック弁を制御するパイロット圧力を発生させるパイロットリリーフ弁とを含んで構成されることが好ましい。これにより、前記スライドクッション用液圧装置は、スライドクッション圧力作用時に作動液を加圧する液圧ポンプ等の駆動源を必要とせず、前記複数の液圧シンリンダの各加圧室の圧力を所望のクッション圧力に昇圧保持することができ、安価な装置となる。
【0024】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記スライドクッション用液圧装置は、前記ロジック弁のパイロットポートに作用する圧力を、前記パイロット圧力と前記システム圧力とのいずれか一方に切り換える第1の電磁弁を含む。前記第1の電磁弁により前記ロジック弁のパイロットポートにパイロット圧力が作用するように切り換えると、パイロット圧力に対応したスライドクッション圧力をクッション圧力発生ラインに発生させることができる。また、前記第1の電磁弁により前記ロジック弁のパイロットポートにシステム圧力が作用するように切り換えると、クッション圧力発生ラインに発生したスライドクッション圧力をシステム圧力に脱圧することができる。更にその状態で加圧部材を下方から押す力が開放される(プレスが下死点から上昇に転じる)と、スライドクッション圧力を完全に(0に)脱圧(し、プレス下死点近傍でロッキングすることが)できる。
【0025】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記スライドクッション用液圧装置は、前記クッション圧力発生ラインと前記システム圧力作用ラインとの間に配設され、前記クッション圧力発生ラインと前記システム圧力作用ラインとの間を開閉する第2の電磁弁を含むことが好ましい。前記第2の電磁弁を制御することにより、スライドクッションパッドとして機能するピストン部材の下降動作(製品押し出し作用)が可能になる。また第2の電磁弁とそれに直列に接続される絞り弁との作用で、絞り弁の開度を調節することにより下降速度が調整可能になる。
【0026】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記第1の電磁弁及び前記第2の電磁弁を制御する制御器であって、前記スライドの下降期間に前記ロジック弁のパイロットポートに前記パイロット圧力が印加されるように前記第1の電磁弁を制御し、前記スライドの上昇期間に前記第2の電磁弁が開くように前記第2の電磁弁を制御する制御器を備えることが好ましい。この制御器は、第1、第2の電磁弁の簡単な制御のみを行うため(特別な制御装置が不要であるため)、プレス機械の制御器の一部(PLC:programmable logic controller)を流用したり、プレス機械においてプレス機械の周辺装置や金型に付随する装置を駆動する為にお客様に開放され、プレス機械のクランク角度(0〜360度間の角度)に応じて複数の接点信号を出力可能なカムスイッチ等を適用したりすることが可能であり、安価である。
【0027】
カムスイッチは、複数のリミットスイッチ等の機械接点を利用した機械式(旧式)のものや、プレス機械の制御器(PLC等)を用いて構成される。スライドクッション制御用に、直接プレス機械の制御器(PLC等)を流用する場合はプレスメーカが介在する必要を有すが、カムスイッチを用いればユーザによる制御で賄える等、より簡便性を増す。
【0028】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記クッション圧力発生ラインには、逆止弁を介して外部液圧装置から加圧された作動液の供給が可能なクッション圧力先行加圧ラインが接続され、前記システム圧力作用ラインには、リリーフ弁を介して先行加圧液量排出ラインが接続されることが好ましい。また、リリーフ弁の下流には電磁弁(第4の電磁弁)を装着するのが好ましい。
【0029】
外部液圧装置からクッション圧力先行加圧ラインを介して加圧された作動液を供給することができ、これによりスライドクッション圧力作用前にクッション圧力発生ラインの圧力(即ち、液圧シリンダの加圧室)を、システム圧力よりも高い圧力に昇圧することが可能になり、複数の液圧シリンダの各加圧室の圧力を所望のクッション圧力に昇圧させる際の昇圧応答時間をより短縮化することができる。尚、上記のようにして外部液圧装置からクッション圧力先行加圧ラインを介して作動液が供給されると、スライドクッション用液圧装置内の作動液の液量が増加(システム圧力が増加)するが、増加した作動液は、リリーフ弁を介して、先行加圧液量排出ラインから排出される。また、外部液圧装置としては、ダイクッション装置のダイクッション用液圧装置を適用することが好ましい。ダイクッション用液圧装置には、スライドクッション圧力作用前にダイクッション機能を発揮しない期間(剰余期間)があり、ダイクッション用液圧装置は、この剰余期間にクッション圧力先行加圧ラインを介して加圧された作動液を供給することができる。
【0030】
本発明の更に他の態様に係るプレス機械のスライドクッション装置において、前記スライドクッション用液圧装置には、作動液が加圧封入され、前記クッション圧力発生ラインと前記システム圧力作用ラインとの間には、前記作動液を加圧及び給液するための液圧ポンプが設けられていない。スライドクッション圧力作用時には、ロジック弁がメインリリーフ弁として動作し、パイロットリリーフ弁により発生されるパイロット圧力に応じたスライドクッション圧力を発生させることができ、また、製品押し出し作用を含むピストン部材の下降動作は、アキュムレータに蓄積されたシステム圧力の作動液により行うことができるため、液圧ポンプは不要である。このように液圧ポンプが不要であるため、動力費を節約することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、プレス成形される材料の上金型の凹部内の領域を上側から加圧部材により押圧する際に、金型毎に加圧部材に対するクッションピンの本数及び配置を任意に、調整の自由度を増して調整可能であり、またクッション圧力の発生の応答性が早く、またほぼ一定のクッション圧力が制御可能であり、また成形終了後はクッション圧力を脱圧可能であり、かつ安価な装置にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下添付図面に従って本発明に係るプレス機械のスライドクッション装置の好ましい実施形態について詳説する。
【0034】
[プレス機械全体の構成]
<プレス機械>
図1は本発明に係るスライドクッション装置を含むプレス機械全体の概略構成図である。
【0035】
図1において、プレス機械10は、ベッド11、コラム12及びクラウン(図示せず)でフレームが構成され、スライド14は、コラム12に設けられたガイド部15により鉛直方向に移動自在に案内されている。スライド14は、サーボモータ(図示せず)あるいは、フライホイール(図示せず)によって回転駆動力が伝達されるクランク軸を含むクランク機構によって
図1上で上下方向に移動させられる。
【0036】
プレス機械10のベッド11側には、スライド14の位置を検出するスライド位置検出器17が設けられるか、あるいはクランク機構のクランク軸には、クランク角度を検出するエンコーダが設けられていることが望ましい。
【0037】
スライド14の直下には、スライドクッション装置100を構成する板材102が配設されており、この板材102の下面に上金型20が装着され、ベッド11のボルスタ18上には、上金型20に対向する下金型22が装着されている。上金型20は、凹部を有するダイス型であり、下金型22は、上金型20の凹部に対応する凸部を有するパンチ型である。
【0038】
上金型20と下金型22の間には、ブランクホルダ(皺押え板)202が配置され、下側が複数のダイクッションピン204を介してダイクッションパッド210で支持され、上側には材料30がセットされる(接触する)。
【0039】
プレス機械10は、スライド14を下降させることにより、上金型20と下金型22との間で材料30をプレス成形する。
【0040】
後述するスライドクッション装置100は、プレス成形される材料30の上金型の凹部内の領域を上側から押圧し、ダイクッション装置200は、材料30の周縁を下側から押圧するものである。特に材料30がハイテン材の場合、スライドクッション装置100は、材料30の成形性の向上に寄与する。
【0041】
<スライドクッション装置>
スライドクッション装置100は、主としてスライド14の直下に配設された板材102の内部に一体形成された複数の液圧シリンダ(油圧シリンダ群)110と、上金型20の凹部に上下動可能に配置された加圧部材120と、加圧部材120に配設された複数のスライドクッションピン(クッションピン)122と、スライドクッション用油圧装置(スライドクッション用液圧装置)150とから構成されている。
【0042】
図2は
図1に示したスライドクッション装置の油圧シリンダ群を含む要部の拡大図であり、
図3は
図2に示した要部の平面図である。
【0043】
図2及び
図3に示すように、スライドの直下の板材(ブロック)102には、15基の油圧シリンダ110a〜110o(油圧シリンダ群110)のシリンダ部114が加工により一体形成され、シリンダ部114内にピストン部材112が収納されて、油圧シリンダ群110が構成されている。尚、シリンダ部114とピストン部材112の上面との間で、油圧シリンダの加圧室が形成される。
【0044】
また、板材102には、シリンダ部114に連通するクッションピン孔115が形成されている。このクッションピン孔115は、スライドクッションピン122が挿入される孔であり、クッションピン孔115の径は、シリンダ部114の径よりも小さくなるように形成されている。これにより、
図2に示すようにシリンダ部114の下端には、ピストン部材112の下降端を規制する当接面が形成される。
【0045】
上記のように板材102に油圧シリンダ群110を一体形成するようにしたため、完成品の油圧シリンダを板材に埋め込む場合に比べて端部の締結部材が減少し、板材102の高さ方向の寸法を小さくすることができ、また、部品点数を少なくすることができるため、装置を安価にすることができる。
【0046】
また、
図3に示すように油圧シリンダ群110の各加圧室は、切換弁として機能する複数の第3の電磁弁116a〜116f(電磁弁群116)を介してクッション圧力発生ライン152又はシステム圧力作用ライン154に接続されている。
【0047】
図3に示す例では、油圧シリンダ110a、110c、110eの各加圧室は、板材102内に形成された油路を通じて第3の電磁弁116aに接続され、油圧シリンダ110b、110dの各加圧室は、板材102内に形成された油路を通じて第3の電磁弁116bに接続されている。同様に、油圧シリンダ110f、110h、110jの各加圧室は、板材102内に形成された油路を通じて第3の電磁弁116fに接続され、油圧シリンダ110g、110iの各加圧室は、板材102内に形成された油路を通じて第3の電磁弁116dに接続され、油圧シリンダ110k、110m、110oの各加圧室は、板材102内に形成された油路を通じて第3の電磁弁116eに接続され、油圧シリンダ110l、110nの各加圧室は、板材102内に形成された油路を通じて第3の電磁弁116cに接続されている。
【0048】
電磁弁群116は、油圧シリンダ群110のうちのスライドクッション圧力作用時に使用する油圧シリンダに応じてON/OFFが制御され、例えば、油圧シリンダ110a、110c、110e、油圧シリンダ110f、110h、110j及び油圧シリンダ110k、110m、110oの9基の油圧シリンダを使用する場合には、第3の電磁弁116a、116f及び116eをONにし、これらの油圧シリンダの各加圧室をクッション圧力発生ライン152に接続するとともに、他の第3の電磁弁116b、116c及び116dをOFFにし、これらの第3の電磁弁に対応する油圧シリンダ110b、110d、油圧シリンダ110l、110n及び油圧シリンダ110g、110iの各加圧室をシステム圧力作用ライン154に接続する。
【0049】
図1に戻って、加圧部材120は、スライドクッション圧力作用時に下金型22の凸部との間で材料30を挟み、材料30を上方から押圧する部材であり、上金型20の凹部に上下動可能に配置されている。尚、加圧部材120は、図示しないストッパにより上金型20から脱落しないように配置されている。
【0050】
スライドクッションピン122は、油圧シリンダ群110から加圧部材120にスライドクッション力を伝達する部材であり、加圧部材120に配設され、上金型20を貫通し、板材102のクッションピン孔115(
図2)に挿入されて油圧シリンダのピストン部材112に当接する。
【0051】
ここで、スライドクッションピン122は、上金型20の凹部の投影面内に配置された油圧シリンダ群の数よりも少ない数に調整されている。
【0052】
本実施形態では、上金型20の凹部の投影面内に配置された油圧シリンダ群110の数は、15(=3×5)である(
図3参照)。これらの油圧シリンダ群110のうちのスライドクッション圧力作用に使用する油圧シリンダは、油圧シリンダ群110の数(15)よりも少なく、例えば、3×5の油圧シリンダ群110のうちの奇数列に配置された9(=3×3)基の油圧シリンダとすることができる。
【0053】
この場合、スライドクッションピン122は、油圧シリンダ群110のうちのスライドクッション圧力作用に使用する9基の油圧シリンダと一対一に対応する本数(9本)及び位置に調整されて配置される。
【0054】
このように、スライドクッションピン122は、板材102内に形成された油圧シリンダ群110の数及び配置の範囲内において、スライドクッションピンの本数及び配置を任意に調整可能であり、金型毎に最適な本数及び位置に配置される。
【0055】
したがって、油圧シリンダ群の数をNとすると、Nは10以上であることが好ましい。Nが10未満の場合、スライドクッションピンの本数及び配置の自由度が小さくなり、種々の金型に対応できなくなるからである。
【0056】
逆に、スライドクッションピンの本数は、油圧シリンダ群の数よりも少ないことが前提である。スライドクッションピンの本数と油圧シリンダ群の数とが同数の場合、スライドクッションピンの本数及び配置の自由度が無いからである。
【0057】
いま、油圧シリンダ群のうちの1つの最大推力をfとすると、N基の油圧シリンダ群の総最大推力は、N×fとなる。この総最大推力N×fは、総スライドクッション力(仕様上の最大スライドクッション力)の1.5倍以上である。
【0058】
即ち、N基の油圧シリンダ群の全てをスライドクッション圧力作用に使用しないため、スライドクッション力を仕様上の最大スライドクッション力以下にすることができる。また、1つの油圧シリンダを最大推力fで使用する場合、使用可能なスライドクッションピンの数は、油圧シリンダ群の数Nの3分の2以下になる。
【0059】
スライドクッション用油圧装置150は、油圧シリンダ群110のうちのスライドクッション圧力作用時に使用する油圧シリンダの加圧室に供給する液圧(油圧)を発生させる。これにより、プレス成形中にスライドクッション圧力作用時に使用する油圧シリンダ群及びスライドクッションピン122を介して加圧部材120に印加されるスライドクッション力が発生する。尚、スライドクッション用油圧装置150の詳細については、後述する。
【0060】
<ダイクッション装置>
ダイクッション装置200は、主としてブランクホルダ202と、ブランクホルダ202を複数のダイクッションピン204を介して支持するダイクッションパッド210と、ダイクッションパッド210を支持し、ダイクッションパッド210にダイクッション力を発生させる油圧シリンダ(液圧シリンダ)220と、ダイクッション用油圧装置250とから構成されている。
【0061】
ダイクッション装置200としては、特開2006−315074号公報に記載のものを適用することができるが、これに限らず、周知のダイクッション装置を適用することができる。
【0062】
また、ダイクッション用油圧装置250は、スライドクッション用油圧装置150に対する外部液圧装置として機能し得る。ダイクッション用油圧装置250には、スライドクッション圧力作用前にダイクッション機能を発揮しない期間(剰余期間)があるが、ダイクッション用油圧装置250は、この剰余期間にクッション圧力先行加圧ライン155を介して加圧された圧油を供給することができる。また、スライドクッション用油圧装置150内で増加した作動油は、先行加圧液量排出ライン(先行加圧油量排出ライン)157を介してダイクッション用油圧装置250内の低圧ラインに排出される。尚、クッション圧力先行加圧ライン155及び先行加圧油量排出ライン157の作用の詳細については後述する。
【0063】
図4は、主としてスライドクッション用油圧装置150と給油装置190とをホース130、134を介して接続した状態を示す図である。
【0064】
[スライドクッション用油圧装置]
図5は、
図4に示したスライドクッション用油圧装置150を拡大した構成図である。
【0065】
図5に示すようにスライドクッション用油圧装置150は、主としてスライドクッション圧力作用時に使用する油圧シリンダの加圧室に電磁弁群116を介して接続されたクッション圧力発生ライン152と、システム圧力の作動油(作動液)を蓄積するアキュムレータ156が接続されたシステム圧力作用ライン154と、クッション圧力発生ライン152とシステム圧力作用ライン154との間に配設され、スライドクッション圧力作用時にメインリリーフ弁として動作可能なパイロット駆動式のロジック弁158と、クッション圧力発生ライン152とシステム圧力作用ライン154との間に配設され、ロジック弁158を制御するパイロット圧力を発生させるパイロットリリーフ弁160と、から構成されている。このとき、パイロットリリーフ弁160は、漏れ(リーク)が僅かな(ノンリークの)直動式であることが好ましい。
【0066】
アキュムレータ156が接続されたシステム圧力作用ライン154のシステム圧力は、少なくともクッションパッドを兼ねるピストン部材112を下降させ、製品押し出し作用及びピストン部材112の待機位置(
図2)への移動を可能にする圧力以上にする必要があり、0.3Mpa〜10.0Mpaの範囲内の圧力に設定することが好ましい。
【0067】
また、スライドクッション用油圧装置150は、ロジック弁158のパイロットポートに作用する圧力を、パイロット圧力発生ライン162に発生するパイロット圧力と、システム圧力作用ライン154のシステム圧力とのいずれか一方に切り換える第1の電磁弁164を備えている。尚、パイロット圧力発生ライン162には、絞り弁(可変絞り弁)166、168が設けられており、ここで流量を制限(調整)している。本例では、絞り弁168は全開にしている。
【0068】
更に、クッション圧力発生ライン152とシステム圧力作用ライン154との間には、絞り弁170及び第2の電磁弁172と、絞り弁174及び第2の電磁弁176とが並列に配設されている。第2の電磁弁172、176は、それぞれON/OFF制御され、OFF(全閉)時にリークが僅かな(ノンリークの)ポペット式電磁弁であることが好ましい。
【0069】
アキュムレータ156には、冷却装置178が設けられており、冷却装置178によりアキュムレータ156(作動油)を冷却できるようになっている。尚、冷却装置178は、システム圧力作用ライン154を冷却するように設けるようにしてもよい。
【0070】
また、クッション圧力発生ライン152及びシステム圧力作用ライン154には、それぞれ給油及びシステム圧力封入用の絞り弁(ニードル弁)180、181及び逆止弁付きのジョイント183、184が装着されている。
【0071】
更に、クッション圧力発生ライン152には、逆止弁185を介してクッション圧力先行加圧ライン155が接続され、システム圧力作用ライン154には、リリーフ弁186及び第4の電磁弁189を介して先行加圧油量排出ライン157が接続されている。尚、第4の電磁弁189の作用及びON/OFFの動作タイミングの詳細については後述する。
【0072】
更にまた、クッション圧力発生ライン152には、スライドクッション圧力を検出するスライドクッション圧力検出器187が設けられている。これは、制御上用いるものではなく、スライドクッション圧力の作用を確認するためのもので、ブルドン管式(針で圧力が表示される一般的な)圧力計、デジタル表示式の圧力計、圧力を電流や電圧に変換する方式の圧力検出器を含む。
【0073】
また、クッション圧力発生ライン152とシステム圧力作用ライン154との間には、安全弁として機能するリリーフ弁188が配設されている。
【0074】
[給油装置]
図6は、
図4に示した給油装置190を拡大した構成図である。
【0075】
給油装置190は、給油及びシステム圧力封入時、又はシステム圧力脱圧時(段取り準備時)に使用するものであり、成形時等スライドクッション装置100のサイクル機能(通常機能)時には使用しない段取り用の装置である。
【0076】
従って、給油装置190は、スライドクッション装置100毎に付帯する必要はなく、管轄する複数台のスライドクッション装置100に対して1台の給液装置を用意しておけばよく、また、必ずしもユーザが所持する必要がなく、少なくともサービス拠点におけるサービス部門が所持していればよい。
【0077】
図6に示すように給油装置190は、主として作動油を貯留するタンク191と、インダクションモータ192により駆動される油圧ポンプ193と、安全弁として機能するリリーフ弁194と、逆止弁付きのジョイント195、196と、逆止弁197と、スイッチ198とから構成されている。
【0078】
給油装置190の2つのジョイント195、196は、それぞれスライドクッション用油圧装置150のクッション圧力発生ライン152及びシステム圧力作用ライン154にそれぞれ設けられたジョイント183、184に接続される。
【0079】
給油装置190のジョイント195、196を、ホース130,134を介してスライドクッション用油圧装置150のジョイント183、184に接続する。
【0080】
ホース130、134は、それぞれ両端に逆止弁付きのジョイント131、132、ジョイント135、136を備えており、給油装置側のジョイント195、196と、スライドクッション用油圧装置側のジョイント183、184との間を接続することができる。
【0081】
給油装置190のインダクションモータ192は、スイッチ198がONされると、交流電源199からの交流電流により駆動し、油圧ポンプ193を回転させる。これにより、タンク191内の作動油を逆止弁197、ジョイント195及びホース130を介してスライドクッション用油圧装置150に給油、蓄圧し、また、スライドクッション用油圧装置150からホース134及びジョイント196を介して作動油をタンク191に戻すことができる。
【0082】
≪準備・段取り(スライドクッション用油圧装置への作動油の加圧封入)≫
本例のスライドクッション装置100を使用する場合、スライドクッション用油圧装置150に対して作動油を加圧封入する準備・段取り作業を行う必要がある。
【0083】
図4を参照しながら、準備・段取り作業の具体例について説明する。
【0084】
スライドクッション用油圧装置を初めて使用する時、あるいは電磁弁等油圧機器を交換(し、油圧装置内に空気が混入)した時は、
図4に示したように、スライドクッション用油圧装置150と給油装置190とを接続する。続いて、スライドクッション用油圧装置150の絞り弁166、168、180、及び181を全開にし、第1の電磁弁164、第2の電磁弁172、176をONにし、パイロットリリーフ弁160、リリーフ弁188を最低圧に設定した状態で、給油装置190のスイッチ198をONにしてインダクションモータ192により油圧ポンプ193を駆動する。
【0085】
こうすることで、スライドクッション用油圧装置150内と給油装置190(タンク191)内の作動油が循環し、スライドクッション用油圧装置150内の空気やコンタミが徐々に除去される。更に、戻り側の絞り弁181を絞り、給油装置190のリリーフ弁194の圧力設定(ある圧力が作用するように)を調整し、スライドクッション用油圧装置150内部を蓄圧させてから、絞り弁181を開放して作動油を循環させることで、循環する作動油内に含有する空気の割合を増加させ、エア抜き効率を向上させる。
【0086】
最終的に、給油装置190のリリーフ弁194の圧力設定をシステム圧力に調整し、スライドクッション用油圧装置150内にシステム圧力が蓄圧された時点で、往き側の絞り弁180を締め、スイッチ198をOFFにして油圧ポンプ193を停止させる。
【0087】
その後、スライドクッション用油圧装置150内のパイロットリリーフ弁160、リリーフ弁188の設定、及び絞り弁166、168の設定を所定値に戻し、スライドクッション用油圧装置150内の給油、即ち作動油のシステム圧力の封入は完了する。給油(システム圧力の封入)後、ホース130、134のジョイント131、135を、スライドクッション用油圧装置150のジョイント183、184から分離する。
【0088】
ユーザが金型着脱時に、システム圧力を脱圧/蓄圧する場合は、上記準備・段取り作業において、両リリーフ弁160、188の設定や、絞り弁166、168の設定等、サイクル機能時に機能する油圧機器の設定は、変更する必要は無い。
【0089】
[金型の装着作業]
ユーザがプレス機械10に金型を装着する場合、ユーザ側でシステム圧を脱圧することが考えられるが、通常の金型装着時は、以下に示すようにシステム圧が作用したまま金型の装着作業が可能である。
【0090】
まず、システム圧が作用したまま、上型-加圧部材-ブランクホルダが組み合わされた状態の下金型をボルスタ18上に置き、下金型をボルスタ18に固定し、スライド14をゆっくり下降させ、スライド下面を上金型上面に密着させる。この時、予めスライドクッション用油圧装置150の第1の電磁弁164、第2の電磁弁172、176の少なくとも1つを段取り用に手動ON/OFFが可能な手動スイッチも併設しておき、手動スイッチにより少なくとも1つの電磁弁を開けて(ONさせて)おく。この(密着させる)過程で、使用する油圧シリンダには、スライドクッションピンを介してシステム圧力が作用し、それに相当する力がスライド14に反力として(上向き)に作用する。
【0091】
次に、上金型をスライド14に仮固定し、スライド14を何度か昇降させて上金型と下金型の芯調整を行った後、上金型をスライド14に固定する。
【0092】
上記の金型の装着作業中に、スライドクッションピンを介してシステム圧力に相当する力がスライド14に反力として作用することを嫌うユーザは、システム圧力を脱圧する必要があり、この場合、金型の装着後にシステム圧力を封入するためにユーザが給油装置190を所持する必要がある。
【0093】
[スライドクッション装置の圧力制御]
次に、ロジック弁158及びパイロットリリーフ弁160によるスライドクッション圧力制御について説明する。
【0094】
スライドクッション用油圧装置150に作動油が加圧封入されている状態において、プレス機械10が動作し、スライド14と共に下降する加圧部材120が、下金型22の凸部上の材料30にインパクト(衝突)すると、インパクト後のスライドクッションパッドとして機能する油圧シリンダ群110のピストン部材112(スライドクッションピン122が当接しているピストン部材112)は、スライド14の下降に応じて相対的にシリンダ部114内を上昇し、加圧室を圧縮させて加圧室(加圧室に接続されているクッション圧力発生ライン152)内の油圧を上昇させる。
【0095】
この油圧(スライドクッション圧力)は、ロジック弁158及びパイロットリリーフ弁160により制御される。
【0096】
図7は、
図4及び
図5に示したロジック弁158の拡大図である。
図7において、ロジック弁158のAポート及びBポートには、それぞれクッション圧力発生ライン152及びシステム圧力作用ライン154が接続され、クッション圧力発生ライン152に発生するクッション圧力及びシステム圧力が加えられ、パイロットポート(Xポート)には、第1の電磁弁164のON/OFFによりパイロット圧力又はシステム圧力が加えられるようになっている。
【0097】
いま、ロジック弁158の各ポートの面積、圧力、及びばね力を、下記の記号で表す。
【0098】
A
A:Aポート側受圧面積
A
B:Bポート側受圧面積
A
X:Xポート側受圧面積
P
A:Aポート圧力(クッション圧力)
P
B:Bポート圧力(システム圧力)
P
X:Xポート圧力(パイロット圧力)
F:ばね力
f
Q:流体力
ここで、以下に示す[数1]式を満たす場合、ロジック弁158のポペット158aには、Xポート側に押し下げられる力が働いて弁が開き、[数2]式を満たす場合、ロジック弁158のポペット158aには、Aポート側に押し下げられる力が働いて弁が閉じる。
【0099】
[数1]
A
A・P
A+A
B・P
B>A
X・P
X+F+f
Q
[数2]
A
A・P
A+A
B・P
B<A
X・P
X+F++f
Q
[数1]式、[数2]式において、A
A、A
B、A
X、P
B、Fは定数であるため、ロジック弁158では、スライドクッション圧力(Aポート圧力)P
Aとパイロット圧力(Xポート圧力)P
Xと、弁を流れる流量を妨げる方向に作用する流体力f
Qとのバランスに応じて弁の開閉動作が行われる。
【0100】
また、パイロット圧力P
Xは、パイロットリリーフ弁160での圧力設定により調整可能であるため、ロジック弁158は、パイロットリリーフ弁160に設定されるパイロット圧力(リリーフ圧力)に応じてスライドクッション圧力を調整することができる。
【0101】
[制御器]
図8はスライドクッション装置100に適用される制御器140の実施形態を示すブロック図である。
【0102】
図8に示す制御器140は、
図4等に示したスライドクッション用油圧装置150の第1の電磁弁164、第2の電磁弁172、176、及び板材102に配置した電磁弁群116(第3の電磁弁116a〜116f)、及び第4の電磁弁189をON/OFF制御するもので、スライド位置検出器17により検出されるスライド14の位置信号に応じて、リレー142、144、146、148a〜148fをON/OFF制御し、ON/OFF制御されるリレー142、144、146、148a〜148f、149を介して第1の電磁弁164、第2の電磁弁172、176、第3の電磁弁116a〜116f、及び第4の電磁弁189に駆動電流を出力し、第1の電磁弁164、第2の電磁弁172、176、第3の電磁弁116a〜116f及び第4の電磁弁189を個別にON/OFF制御する。
【0103】
本例の制御器140は、第1の電磁弁164、第2の電磁弁172、176及び第3の電磁弁116a〜116fを個別にON/OFF制御する簡単な制御であり、特別な制御装置が不要であるため、プレス機械10の制御器の一部(PLC:programmable logic controller)を流用したり、プレス機械の周辺装置や金型に付随する装置を駆動する為にお客様に開放されているプレス機械のカムスイッチ等を適用したりすることができ、スライドクッション装置100のコストアップにはならない。
【0104】
尚、第3の電磁弁116a〜116fのうちのスライドクッション圧力作用時に使用される油圧シリンダに対応する第3の電磁弁は、終始励磁(ON制御)され、スライドクッション圧力作用時に使用される油圧シリンダの加圧室をクッション圧力発生ライン152に接続し、他の第3の電磁弁は、終始消磁(OFF制御)され、スライドクッション圧力作用時に使用されない油圧シリンダの加圧室をシステム圧力作用ライン154に接続する。従って、第3の電磁弁116a〜116fの代わりに、手動式の切換弁を使用することができる。
【0105】
また、第3の電磁弁116a〜116fは、スライドクッション装置100において、必須の構成要件ではなく、油圧シリンダ群110の各圧力室をクッション圧力発生ライン152に直接接続するようにしてもよい。但し、第3の電磁弁116a〜116fを使用することにより、スライドクッション圧力作用時に使用しない油圧シリンダの加圧室をクッション圧力発生ライン152から切り離す(システム圧力作用ライン154に接続する)ことができ、これによりスライドクッション圧力作用時に加圧される作動油の容積を少なくし、クッション圧力の応答性を向上させることができる利点がある。
【0106】
制御器140は、主としてスライド14の下降期間にロジック弁158のパイロットポートにパイロット圧力が印加されるように第1の電磁弁164を制御(OFF制御)し、スライド14の上昇期間に第2の電磁弁172、176が開くように第2の電磁弁172、176を制御(ON制御)する。また、制御器140は、スライドクッション圧力作用開始前の所定の期間(スライドクッション用油圧装置150のシステム圧力が最小値となる所定の期間)、第4の電磁弁189をON制御し、リリーフ弁186及び第4の電磁弁189を介して、増加した圧油の先行加圧油量排出ライン157への排出を可能にする。
【0107】
尚、制御器140による第1の電磁弁164、第2の電磁弁172、176及び第4の電磁弁189の具体的なON/OFF制御のタイミングの詳細については後述する。また、制御器140は、クランク軸に設けたエンコーダにより検出されるクランク角度に応じて、第1の電磁弁164、第2の電磁弁172、176及び第4の電磁弁189をON/OFF制御するようにしてもよい。
【0108】
≪プレス機械の1サイクル期間におけるスライドクッション装置の機能≫
次に、プレス機械10の1サイクル期間におけるスライドクッション装置100の各機能について説明する。
【0109】
図9(A)は、プレス機械10の1サイクル期間におけるスライド14の位置(スライド位置)、スライドクッション位置、ダイクッションパッド210の位置(ダイクッション位置)、スライドクッション圧力、システム圧力、及びダイクッション圧力を示す波形図である。ここで、
図9(A)に示したスライドクッション位置は、スライドクッションパッドとして機能する油圧シリンダのピストン部材112の位置を表している。そして、ピストン部材112がシリンダ部114の下端に位置している場合には、スライドクッション位置とスライド位置とは同じ位置として表され、スライド14が下死点に位置する場合には、スライドクッション位置とスライド位置との相対的な変位量が最大になることが表されている。
【0110】
図9(B)〜(E)は、それぞれ第1の電磁弁164、第2の電磁弁172、176、第4の電磁弁189及び後述する第2の切換弁268のON/OFFのタイミングを示すタイミングチャートである。
【0111】
また、本実施形態では、15基の油圧シリンダ群110のうちのスライドクッション圧力作用に使用する油圧シリンダは、9基の油圧シリンダ(油圧シリンダ110a、110d、110e、油圧シリンダ110k、110m、110o、油圧シリンダ110f、110i、110j(
図4参照))であり、加圧部材120に配設されるスライドクッションピン122は、上記9基の油圧シリンダと一対一に対応する本数(9本)及び位置に調整されて配置されている。
【0112】
また、電磁弁群116(第3の電磁弁116a〜116f)のうち、油圧シリンダ110a、110d、110e、油圧シリンダ110k、110m、110o及び油圧シリンダ110f、110i、110jに対応する第3の電磁弁116a、116e、116fは、終始励磁され、他の油圧シリンダに対応する第3の電磁弁116b、116c、116dは終始消磁されている。
【0113】
<スライド−上死点(運転開始時(停止時)、又は運転中の上死点通過時)>
スライド14が上死点に位置する時、第2の電磁弁172、176のうちの少なくとも一方(本例では、第2の電磁弁176)が励磁(ON制御)され(
図9(D))、アキュムレータ156が接続されているシステム圧力作用ライン154は、第2の電磁弁176、クッション圧力発生ライン152、及び励磁状態の第3の電磁弁116a、116e、116fを介して選択された9基の油圧シリンダ110a、110d、110e、油圧シリンダ110k、110m、110o、油圧シリンダ110f、110i、110jの各加圧室に通じている。
【0114】
この状態でシステム圧力作用ライン154には約9MPaのシステム圧力が作用している。システム圧力作用ライン154は、スライドクッション用油圧装置150上で最低圧部であるが、油圧ポンプ(のケースドレン部、及びオイルシール部)等、強度(構造)上の圧力値制限を有する(許容圧力が低い)機器が配備されていない為、配管路の強度確保次第で大きなシステム圧力(本例では9MPa)を作用させることが可能である。この作用は(後述するが)、効率良くかつ応答性高くスライドクッション圧力を昇圧させる。
【0115】
結局、上記9基の油圧シリンダの各加圧室には9MPaが作用している。本スライドクッション装置100は15基の油圧シリンダ群110が配備されており、その全てを使用してシリンダ加圧室に最大使用圧力21MPaを作用させた場合に、最大推力1000kN(仕様上の最大スライドクッション力の1.5倍以上)を作用させることが可能であり、仕様上の最大スライドクッション力は600kN(スライドクッションピンを選定して使用可能な最大スライドクッション力は600kN)の仕様である。
【0116】
各油圧シリンダのシリンダ部114の面積をA(m
2)とすると、21(MPa)×15(基)×A(m
2)=1000(kN)から、A=1000/(21×15)である。
【0117】
したがって、9基の油圧シリンダの加圧室に9MPaが作用している状態では、9(MPa)×9(基)×A≒257(kN)、即ち、約257kNの力がピストン部材112を介して油圧シリンダ(機械)限に作用している。本例では、選定した9ヶ所(9本)のスライドクッションピン122を使用して、成形時に500kN(17.5MPa相当)のスライドクッション力を作用させる予定(方針)であり、不要な6ヶ所(6本)のスライドクッションピン122は使用せず(クッションピン孔115に挿入せず)、第3の電磁弁116b、116c、116dは励磁されず、油圧シリンダ110b、110d、110g、110i、110l、110nの加圧室は、サイクル中(成形中も非成形中も)終始システム圧力作用ライン154に通じている。こうすることでスライドクッション圧力を作用させる場合に、余計なシリンダ加圧室の容積を加圧する無駄を省くことが可能になり、スライドクッション圧力の昇圧応答時間の短縮化を助長する。
【0118】
<スライド−下降(成形前)>
成形開始(加圧部材120が材料(ブランク)30に接触する)前のある(予め設定された)スライド位置に到達すると、第2の電磁弁176を励磁解除(OFF制御)する(
図9(D))。この状態では、スライドクッション圧力作用に使用する9基の油圧シリンダの加圧室に9MPaが作用している状態は不変である。
【0119】
<スライド−下降(成形開始→成形完了)>
[スライドクッション圧力作用]
スライド14が下降し、加圧部材120が下金型(パンチ型)22の上面に接し(つつ、ブランクホルダ202に保持され)ている材料30に接触した時点で、プレス成形が開始される。
【0120】
先ず、加圧部材120の下方向の動作が拘束され、加圧部材120に連動するスライドクッションピン122を介して、スライドクッションピン122に連動する9基の油圧シリンダのピストン部材112が上方向に押し戻されようとする。このピストン部材112によって圧縮されたクッション圧力発生ライン152には、ロジック弁158、絞り弁166、絞り弁168、パイロットリリーフ弁160の相乗作用により、スライドクッション圧力17.5MPaが発生する。
【0121】
つまり、ピストン部材112に押し圧されて発生したクッション圧力発生ライン152の圧力を源に絞り弁166から絞り弁168、パイロットリリーフ弁160を介してシステム圧力作用ライン154に至る油流(単位時間に流れる圧油の流量)が発生し、それに伴い、絞り弁166と絞り弁168の間(パイロット圧力発生ライン162)にロジック弁158のポペット開閉を司るパイロット圧力が発生する。パイロット圧力は、クッション圧力発生ライン152の圧力に応じて発生し、ロジック弁158のポペットには主に、クッション圧力発生ライン側の受圧面積に作用するスライドクッション圧力と、システム圧力作用ライン側の受圧面積に作用するシステム圧力と、第1の電磁弁164とを介してパイロット圧力作用ライン側の受圧面積に作用するパイロット圧力と、ロジック弁158内部のバネ力と、ロジック弁158にクッション圧力発生ライン152からシステム圧力作用ライン154に至る圧油の流れを妨げる(弁を閉める)方向に作用する流体力とが、力の均衡を保持すべく作用している。ロジック弁158のポペット位置(開度)は、ピストン部材112の押し戻される速度に応じて(その速度が一定なら、ほぼ一定に)保持され、この一連の作用の中でスライドクッション圧力は発生する。
【0122】
本例では、予め設定した500kNのスライドクッション力を作用させる為に必要な17.5MPaに相当するパイロット圧力を作用させるべくパイロットリリーフ弁160を調整している。この時、スライドクッション圧力は予め作用している9MPaから17.5MPaに至る差圧分8.5MPaを作用させれば良く、スライドクッション圧力の昇圧時間を短縮化することができる。
【0123】
この作用は、スライドクッション用油圧装置150(のクッション圧力発生ライン152と最低圧部であるシステム圧力作用ライン154との間)に油圧ポンプを有していない(配備していない)特徴によって、低圧部に作用させることが可能な圧力値(強度上)の制約を受けない為に実現できる。しかも、油圧ポンプを駆動する余計な動力を要さずに実現可能になる為、高効率である。この作用は、後述する(スライドクッション圧力と)ほぼ同タイミングに作用するダイクッション力に対して、確実に先行して昇圧させる為にも重要である。
【0124】
[ダイクッション圧力作用]
更にスライド14を(やや)下降し、上金型(ダイス型)20が材料30を介してブランクホルダ202に接触した時点(スライドクッション圧力が作用開始し、75%程度昇圧完了した昇圧過程終盤の時点)で、ダイクッション圧力が作用開始する。尚、ダイクッション圧力の制御は、本発明に係る制御ではないが、後で簡単に説明する。
【0125】
そして、先行して作用したスライドクッション力によって加圧部材120と下金型22の凸部との間で材料30を挟むように加圧しながら、ダイクッション力によってブランクホルダ202と上金型20の輪郭部との間で材料30の輪郭を挟むように加圧しながら、材料30は金型(上金型20、加圧部材120、下金型22、ブランクホルダ202)の形状に応じて、絞り成形要素を主とした成形が、スライド14が下死点に至るまで行われる。成形は、ダイクッション力によって主な(筒外面に)絞り皺が発生しないように、かつ、スライドクッション力によって絞り成形中に(部分的に)皺や亀裂等の不具合が生じないように促進される。
【0126】
≪スライド−上昇≫
<スライドクッション脱圧→ロッキングと平行してダイクッション脱圧→ロッキング>
[スライドクッション脱圧]
スライド14が下降し、下死点あるいはその僅か手前(下死点近傍)に至った時点で、第1の電磁弁164をONさせると(
図9(B))、ロジック弁158のポペットは(ポペットを閉ざす方向に作用していたパイロット圧力がシステム圧力作用ライン154に開放される為)開く方向に移動し、スライドクッション圧力は、システム圧力(第1のシステム圧力)よりやや大きい第2のシステム圧力(第1のシステム圧力とロジック弁158のバネ力相当のクラッキング圧との総和に等しい圧力)まで脱圧(低下)する。この段階でロジック弁158のポペットは閉じる。
【0127】
スライドクッション圧力が第2のシステム圧力まで脱圧する時点で、ほぼ同期して、ダイクッション圧力も(0.5MPa程度の低圧値まで)脱圧し、スライド下死点位置以下の(下死点近傍)位置で停止する(ロッキングする)。
【0128】
[スライドクッションロッキング]
スライド14が下死点から上昇に転じ、下死点から若干量(1mm前後)上昇すると、スライドクッション圧力は、ロジック弁158が閉じてシステム圧力作用ライン154から遮断されている作用とピストン部材112がスライドクッションピン122を介して押圧される力が開放される作用とによって、ほぼ0MPaまで脱圧し(低下し)、スライド位置1mm前後の(下死点近傍)位置に停止する(ロッキングする)。
【0129】
[スライドクッション装置による上金型から成形品の押し出し(突き落とし)]
スライド14が更に上昇し、下死点から10mmに達した時点で、第2の電磁弁172、176をON制御すると(
図9(C),(D))、クッション圧力発生ライン152にはシステム圧力作用ライン154のシステム圧力(9MPa)が絞り弁170、174を介して通じ、システム圧力作用ライン154からクッション圧力発生ライン152に油流が生じ、ピストン部材112は(製品高さが約70mmある)製品を下方に押し出す(突き落とす)べく作用する。押し出す過程で(押し出し)ストロークのうちの3/4ストロークした時点で第2の電磁弁172をOFF制御して押し出し速度を減速し、スライド14が丁度80mm程度に上昇した時点で、ピストン部材112は突出し(機械)限位置に到達する。製品は、下金型22上に“そっと”ショック無く置かれる状態になる。その状態でダイクッションパッド210は、依然としてスライド下死点以下の位置に停止している。
【0130】
[ダイクッション装置200による製品ノックアウト]
スライド14が更に160mm程度に上昇した時点で、ダイクッションパッド210は、ブランクホルダ202を介して製品を初期位置(=ダイクッション開始位置=製品搬送位置)までノックアウトしながら上昇する。
【0131】
このように、先ず、スライドクッション装置100は、加圧部材120と下金型22との間で製品を潰すことなく、スライドクッションパッドとして機能するピストン部材112を下死点近傍で必要最小時間停止させた後、製品を下金型22上に“そっと”降ろし、次に、ダイクッション装置200は、ブランクホルダ202と上金型20との間で製品を潰さないように、ダイクッションパッド210を下点近傍でさらに停止させた後、製品搬送位置までノックアウトする。
【0132】
<スライド上死点>
スライド14が更に上昇して上死点に至る(戻る)と、この時点で第1の電磁弁164をOFF制御する(
図9(B))。
【0133】
油圧駆動の一般的な常識として最も基本的な不可欠な要素と考えられている油圧ポンプは、本スライドクッションのような“バネ”機能の一種を担う特殊な油圧駆動形態においては、諸悪の根源とも考えられる。つまり、加圧する為に油圧ポンプを“油圧ポンプありき”で配備すると、油圧ポンプは強度的に弱い部分を有す為、油圧ポンプを配備する部位の低圧側(吸い込み側)の圧力は、大きくとも1MPa程度が限界になる。そのため必要な時に、動力を用いてクッション圧力発生ラインを加圧し不必要な時に脱圧するポンピング作用を機械運転中に繰り返さなければいけない。
【0134】
スライドクッション用油圧装置150のように、油圧ポンプを配備しなければ、低圧側は圧力の制約を受けず、低圧側(のアキュムレータ156)に大きな圧力を封じ込められる。この時、封じ込める圧力は“油圧バネ”の初期圧縮量に相当するもので、外部から(クッションとして)力が作用した場合には“油圧バネ”は更に圧縮されて、弾性エネルギが蓄えられる。そして、(製品を押し出しながら)初期位置に戻る時に、蓄えた弾性エネルギは放出される。これを機械運転中に繰り返すから効率が良い。即ち、スライドクッション用油圧装置150は、“バネ”だからこそ為しうる油圧ポンプ無しの油圧駆動形態である。
【0135】
≪ダイクッション用油圧装置≫
図10は、
図1に示したダイクッション用油圧装置250の実施形態を示す回路図である。尚、このダイクッション用油圧装置250は、特開2006−315074号公報で開示されているものと同等のものであるが、2ポート2位置電磁切換弁(以下、単に「第1の切換弁」という)267と、3ポート2位置電磁切換弁(以下、単に「第2の切換弁」という)268とが追加されている点で相違する。また、本実施形態のダイクッション用油圧装置250は、スライドクッション装置100に対してクッション圧力先行加圧ライン155を介して圧油の供給が可能であり、また、スライドクッション装置100から先行加圧油量排出ライン157を介して排出される作動油を受入する。
【0136】
図10に示すようにダイクッション用油圧装置250は、アキュムレータ261と、油圧ポンプ/モータ262と、油圧ポンプ/モータ262の回転軸に接続されたサーボモータ263と、リリーフ弁265と、逆止弁266と、第1の切換弁267と、第2の切換弁268と、から構成されている。
【0137】
アキュムレータ261は、低圧のガス圧がセットされ、タンクの役割を果たすとともに、逆止弁266を介して略一定の低圧油を、第1の切換弁267及び第2の切換弁268のポートPに供給し、油圧ポンプ/モータ262の駆動時に昇圧される圧油を昇圧しやすくする役割も果す。また、アキュムレータ261には、先行加圧油量排出ライン157が接続されている。尚、アキュムレータ261に接続される低圧ラインの圧力は、スライドクッション用油圧装置150のシステム圧力作用ライン154のシステム圧力よりも低圧である。
【0138】
油圧ポンプ/モータ262の一方のポート(吐出口)は、第1の切換弁267及び第2の切換弁268のポートPに接続され、他方のポートはアキュムレータ261に接続されている。油圧ポンプ/モータ262はサーボモータ263により駆動され、第1の切換弁267のポートP及び第2の切換弁268のポートPに圧油を供給する。
【0139】
尚、リリーフ弁265は、異常圧力発生時に動作し、油圧機器の破損を防止する手段として設けられている。また、
図10において、269はダイクッション力検出器に相当する圧力検出器であり、この圧力検出器269は、油圧シリンダ220の圧力発生室220aの圧力(ダイクッション圧力)を検出する。
【0140】
ここで、第1の切換弁267のソレノイド267aを励磁すると(第1の切換弁267をONすると)、第1の切換弁267は弁開状態になり、油圧ポンプ/モータ262から第1の切換弁267を介して油圧シリンダ220の圧力発生室220aに圧油を供給可能にし、又はダイクッション圧力作用時に油圧シリンダ220の圧力発生室220aから吐出される圧油を、第1の切換弁267を介して油圧ポンプ/モータ262に流入可能にする。
【0141】
一方、第1の切換弁267のソレノイド267aを消磁すると(第1の切換弁267をOFFすると)、第1の切換弁267は弁閉状態になり、ダイクッションパッド210等の自重に抗してダイクッションパッド210等を保持する。
【0142】
また、第2の切換弁268のソレノイド268aを励磁すると(第2の切換弁268をONすると)、第2の切換弁268は、ポートPからポートA及びクッション圧力先行加圧ライン155を介してスライドクッション用油圧装置150に圧油を供給可能に切り換わる。
【0143】
一方、第2の切換弁268のソレノイド268aを消磁すると(第2の切換弁268をOFFすると)、ダイクッション用油圧装置250からスライドクッション用油圧装置150への圧油の供給が遮断される。
【0144】
これらの第1の切換弁267及び第2の切換弁268のON/OFF制御は、例えば、クランク機構のクランク角度を示す信号に基づいて、プレス機械の1サイクル期間のうちのダイクッション装置200が機能するダイクッション機能期間には、第1の切換弁267がON制御されるとともに、第2の切換弁268がOFF制御され、プレス機械の1サイクル期間のうちのダイクッション機能期間以外の期間には、第1の切換弁267がOFF制御されるとともに、第2の切換弁268がON制御される。尚、第2の切換弁268のON/OFFの動作タイミングの詳細については後述する。
【0145】
ダイクッション機能期間におけるダイクッション力制御は、予め設定されたダイクッション圧力指令と圧力検出器269により検出された油圧シリンダ220の圧力発生室220aの圧力(ダイクッション圧力)とに基づいて、ダイクッション圧力がダイクッション圧力指令に対応する圧力になるようにサーボモータ263のトルクを制御することにより行われる。尚、このダイクッション力制御は、特開2006−315074号公報で開示されている制御と同様に行われ、また、本発明の特徴部分ではないため、その詳細な説明は省略する。
【0146】
スライドクッション用油圧装置150は、外部油圧装置から圧油が供給されなくても機能し得るが、スライドクッション圧力作用開始前であって、第1の電磁弁164、第2の電磁弁172、176の全てがOFFのときに、外部油圧装置(本例のダイクッション用油圧装置250)からクッション圧力先行加圧ライン155を介して圧油を供給すると、クッション圧力発生ライン152(即ち、油圧シリンダの加圧室)はシステム圧力(本例では、9MPa)よりも高い圧力に先行して加圧される。これにより、スライドクッション圧力作用時に油圧シリンダの各加圧室の圧力が所望のクッション圧力(本例では、17.5MPa)に昇圧するまでの昇圧応答時間をより短縮化することができる。
【0147】
この時、クッション圧力先行加圧ライン155から流入した作動油は、サイクルを通してリリーフ弁186、第4の電磁弁189を介して先行加圧油量排出ライン157を通じてダイクッション用油圧装置250(の低圧ライン)に排出される。
【0148】
クッション圧力先行加圧ライン155を介して圧油の供給を可能にする第2の切換弁268と、先行加圧油量排出ライン157を介して増加した圧油の排出を可能にする第4の電磁弁189との作動タイミング例を、それぞれ
図9(E)及び(F)に示す。
【0149】
外部油圧装置(本例のダイクッション用油圧装置250)からクッション圧力先行加圧ライン155を介して先行加圧用の作動油が供給されると、スライドクッション用油圧装置150内の作動油の油量が増加(システム圧力が増加)するが、増加した作動油は、リリーフ弁186及び第4の電磁弁189(
図5)を介して、先行加圧油量排出ライン157から排出される。
【0150】
ここで、スライドクッション用油圧装置150のシステム圧力は、スライドクッション圧力作用時に増加し、増加するシステム圧の最大値は、スライドクッションストローク(使用される金型毎に決定する)に依存する。
【0151】
一方、スライドクッション用油圧装置150のシステム圧力の最小値は、スライドクッションストロークに依存せず、クッション待機状態(非成形時=非ストローク時)において一定値を示す。
【0152】
そこで、スライドクッション用油圧装置150のシステム圧力が最小となる期間であるクッション待機状態時に、圧油をリリーフさせて先行加圧用の作動油により増加するシステム圧を一定値に保持する。
【0153】
クッション待機状態は、少なくともプレス機械のクランク角度が0(上死点)から90度の範囲において生じる為、
図9(E)に示すように、この期間内に第4の電磁弁189を開くようにカムスイッチ等を使用してON制御し、圧油をリリーフさせる。この時、上流のリリーフ弁186のリリーフ設定圧は、スライドクッション用油圧装置150のシステム圧力(最小値)にセットする。
【0154】
また、先行加圧用の作動油は、スライドクッション圧力作用開始前であって、第2の電磁弁172、174がOFFの期間内に供給する必要がある。従って、ダイクッション用油圧制御装置250は、
図9(F)に示すように上記期間内に第2の切換弁268をON制御し、先行加圧用の作動油を供給する。
【0155】
[その他]
スライドクッション圧力作用時において、ロジック弁158によりスライドクッション圧力の圧油がシステム圧力に開放される場合は、ロジック弁158による圧油の絞り作用により作動油が発熱する。
【0156】
本例では、
図5に示すように表面積の大きなアキュムレータ156に送風して、アキュムレータ156(作動油)を冷却する冷却装置178が設けられている。尚、冷却装置178は、ファンによる空冷式冷却装置であるが、これに限らず、冷却水を循環させて作動油を冷却する水冷式冷却装置でもよい。また、スライドクッション装置100の使用頻度が低い場合には、冷却装置を設けずに、自然放熱だけでも対応可能であり、より安価な装置とすることができる。
【0157】
主機能であるスライドクッション圧作用に伴い、ロジック弁158を介してクッション圧力発生ライン152からシステム圧力作用ライン154に流れる圧油のエネルギ(弁を通過する単位時間あたりの油量と、クッション圧力とシステム圧との差圧の積に比例するエネルギ)は全て熱に変換されるが、このスライドクッション用油圧装置150には油圧ポンプが配備されておらず、油圧ポンプに関する補助機能に伴い発生する熱は無い。正味必要な損失分だけが熱に変換させる為、冷却設備は軽微なもので済む。
【0158】
また、本実施形態では、油圧シリンダ群が内部に一体成形される板材(ブロック)は、スライド直下に配設された板材であるが、スライド(の一部)を構成する板材でもよい。更に板材の内部に一体成形される油圧シリンダ群の数及び配置は、
図3に示した実施形態に限らず、種々の数及び配置が可能であるが、油圧シリンダ群の数は10以上が好ましい。
【0159】
また、本実施形態では、スライドクッション装置の作動液として油を使用した場合について説明したが、これに限らず、水やその他の液体を使用してもよい。即ち、本願実施例においては、油圧シリンダ、スライドクッション用油圧装置を使用した形態で説明したが、これらに限定されるものではなく、水やその他の液体を使用した液圧シリンダ、スライドクッション用液圧装置を本発明において使用できることは言うまでもない。
【0160】
更に、本発明に係るスライドクッション装置は、クランクプレスに限らず、機械式プレスを筆頭に油圧プレスなど、あらゆる種類のプレス機械に適用することができ、要はプレス・スライドを上下動させて材料をプレス成形するものであれば、如何なるものでもよい。
【0161】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいことは言うまでもない。