特許第6185985号(P6185985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185985
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】荷重低減
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/18 20060101AFI20170814BHJP
   F02M 59/10 20060101ALI20170814BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   F02M59/18
   F02M59/10 A
   F02M59/44 K
   F02M59/44 Q
   F02M59/44 T
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-509369(P2015-509369)
(86)(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公表番号】特表2015-519507(P2015-519507A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】EP2013058358
(87)【国際公開番号】WO2013164220
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2014年12月24日
(31)【優先権主張番号】12166665.5
(32)【優先日】2012年5月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514160386
【氏名又は名称】デルファイ・インターナショナル・オペレーションズ・ルクセンブルク・エス・アー・エール・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】マクリンドル,クリストファー
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102010041002(DE,A1)
【文献】 特表2006−528744(JP,A)
【文献】 特開2004−150290(JP,A)
【文献】 特開平05−180116(JP,A)
【文献】 特表2007−507654(JP,A)
【文献】 特開2009−097517(JP,A)
【文献】 実開昭58−067965(JP,U)
【文献】 特開平09−303161(JP,A)
【文献】 特開平10−030525(JP,A)
【文献】 特開2001−003835(JP,A)
【文献】 特開2004−156569(JP,A)
【文献】 実開昭55−012027(JP,U)
【文献】 特開平03−294653(JP,A)
【文献】 米国特許第6217299(US,B1)
【文献】 特開2011−080392(JP,A)
【文献】 特表2011−518271(JP,A)
【文献】 特開2011−220223(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155050(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00−1/32
F01L 1/36−1/46
F02M 39/00−71/04
F04B 9/00−15/08
F04B 23/00−23/14
F04B 53/00−53/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャ(211)要素と前記プランジャ要素を駆動させる中間要素の接触領域との間に流体連通経路を選択的に形成するための装置であって、
第1の端部(210)領域を備える細長いプランジャ要素と、
前記プランジャ要素の別の端部(261)領域に選択的に当接してこれを押圧するように構成される接触領域を備える中間要素(231)と
を備え、
前記装置が、締まり嵌めにより前記別の端部(261)領域に固定される、屈曲可能であり且つ概略ディスク状であり、その下側に凹型形状を有する弾性ばねシート部材(260)であって、その上側表面(262)にリング形状の突起部として延在する上側環状リブ(410)を有する弾性ばねシート部材(260)をさらに備えており、
前記弾性ばねシート部材は、前記プランジャ(211)要素の動作サイクルの一部分中に前記中間要素(231)から離れるように前記別の端部領域を付勢することによって、前記別の端部領域の当接表面(400)と前記接触領域(401)との間に流体連通経路を形成することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記中間要素が、ポンプ組立体(100)のポンプハウジング(101)のハウジング孔(105a)内で往復摺動動作を行うように受け入れられるタペット(231)を備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記タペットが円筒形側壁および/またはその底部壁に少なくとも1つの貫通孔(250)を備え、前記貫通孔が前記流体連通経路(420)に接続される流体経路部分を形成する、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記流体連通経路(420)が、前記プランジャ要素(211)のリターンサイクルの終了時に前記当接表面(400)と前記接触領域(401)との間に潤滑流体を供給する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記プランジャ要素の前記第1の端部領域(210)がポンプ組立体(100)のポンプヘッド(110a)のポンプ孔(105a)の閉端部の中に配置可能であり、
前記中間要素(231)が、前記当接表面に対して前記接触領域を押圧するように前記ポンプ組立体(100)のカムまたはカムライダ要素によって駆動可能である駆動表面をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
ポンプ組立体(100)のポンプヘッド(110a)から離れるように前記ばねシート要素の表面を押圧するリターンスプリング部材
をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ばねシート部材(260)および前記プランジャ(211)要素が一体に形成されるか、または、前記ばねシート部材(260)が前記プランジャ(211)要素と共に移動するように前記プランジャ(211)要素に固定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
ポンプ組立体(100)であって、
軸方向に延在する開口部(102)および前記開口部(102)から概して径方向に延在する少なくとも1つのハウジング孔を有するポンプハウジング(101)と、
閉端部を有するポンプ孔(105a)を備え、前記ポンプハウジング(101)に固定される少なくとも1つのポンプヘッド(110a)と、
カム駆動シャフトと協働可能である内側表面および前記中間部材の駆動表面と協働可能である外側表面を有する、前記軸方向に延在する開口部(102)内にあるカムおよび/またはカムライダ要素と、
請求項1から3のいずれか一項に記載の少なくとも1つの装置と
を備えるポンプ組立体(100)。
【請求項9】
請求項8に記載のポンプ組立体(100)のプランジャ(211)要素と前記プランジャ(211)要素に駆動力を提供する前記中間要素(231)との間を潤滑する方法であって、
前記少なくとも1つのポンプヘッド(110a)の前記ポンプ孔(105a)の前記閉端部に対して第1の往復動作において前記プランジャ(211)要素の前記第1の端部(210)領域を駆動させるステップであって、別の往復動作において前記プランジャ(211)要素の前記別の端部(261)領域に近接する前記中間要素(231)の接触領域を選択的に押圧することにより、前記第1の端部(210)領域を駆動させるステップと、
前記プランジャ要素の前記別の端部領域(261)の概略ディスク状であり、その下側に凹型形状を有するばねシート部材(260)を介して、前記プランジャ(211)要素の動作サイクルの一部分中に前記中間要素(231)から離れるように前記プランジャ(211)要素を付勢するステップと、
前記中間要素から離れるように前記別の端部領域が付勢されるときに前記別の端部領域の前記当接表面(400)と前記接触領域(401)との間に潤滑流体を供給するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記潤滑流体を介して、前記当接表面(400)と前記接触領域(401)との間を冷却し、前記当接表面(400)と前記接触領域(401)との間からデブリを除去するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記潤滑流体を介して、前記当接表面(400)と前記接触領域(401)との間にスクイズフィルム層を形成するステップ
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記プランジャ(211)要素のサイクルごとに前記当接表面(400)と前記接触領域(401)との間の隙間(420)を開閉するステップ
をさらに含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
サイクルの前記一部分が、前記ポンプ孔内の流体が膨張するときである前記プランジャ要素のリターンサイクルの終了時を含み、前記第1の往復動作が、前記ポンプ孔内の流体が圧縮されるときであるポンプサイクル部分をさらに含む、
請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プランジャ(211)要素と共に一体に形成されるばねシート部材(260)を介して、または、前記プランジャ要素と共に移動するように前記プランジャ要素に固定されるばねシート部材を介して、前記別の端部領域(261)を付勢するステップ
をさらに含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの移動部品の間の所望される位置まで潤滑剤が流れるのを可能にする流体連通経路を選択的に提供するための方法および装置に関する。詳細には、限定しないが、本発明はプランジャタペット構成に関する。プランジャの移動のサイクルの特定のポイントでプランジャおよびタペットを短い距離だけ分離するのに弾性ばねシートが使用される。瞬間的に分離させることで、周囲領域からプランジャとタペットとの間に形成される空間へと潤滑剤を流すことが可能となる。
【背景技術】
【0002】
既知のポンプ組立体では、中間駆動部材としばしば称される、しばしばタペットの形態である中間要素が、カム機構からポンピングプランジャまで駆動力を伝達する。ポンピングプランジャが、所望される位置まで送出するためにポンピングチャンバ内の流体を加圧するのに使用される。例えば、流体はディーゼルエンジン燃料噴射システムのエンジン燃料であってよい。
【0003】
タペットは、ポンピングプランジャに適用される側方の力を低減するのに使用され、それにより、一般に、ポンピングプランジャが、タペットにより、動作のそれぞれの長手方向軸に沿って前後に往復動作するように駆動される。タペットは良く知られており、円筒形側壁と中実の底部とを備える概略カップ形状の要素である。排出孔がタペットの側壁および/または底部に設けられてよく、それにより、潤滑流体がカム機構の周囲からタペット内の領域まで流れることができる。これにより、ハウジング内のタペット孔内でタペットが自由運動することが流体力(hydraulic forces)によって阻害されないようにすることが補助される。したがって、高圧で動作することができるポンプは、圧送される流体に対して仕事を行うのに往復運動するプランジャを採用する。プランジャは、タペットを介してプランジャの反対側の端部に対して荷重を機械的に適用することによりポンピングストローク(pumping stroke)中に前方に移動させられる。プランジャの動作サイクルのリターンストローク(return stroke)中、プランジャはリターンスプリングと称されるばねによりタペットに接触して保持される。
【0004】
サイクルのポンピングストローク中、側方の力が小さい状態で、タペットとプランジャとの間の接触荷重が非常に大きくなり得、それにより接触ゾーンで潤滑が中断されて腐食摩耗が起こる。従来技術のシステムの表面は継続的に一体に保持されることから、プランジャの端部とタペットの接触領域との間の接触ゾーンに潤滑剤が流れ込むことが防止される。これにより摩耗屑を保持することが可能となってしまい、これにより、並置される表面が経時的にさらにすり減る可能性がある。特許出願DE1 0201 0041 002が請求項1の前提部に記載される装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は上で言及した問題を少なくとも部分的に軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特定の実施形態の目的は、プランジャ要素と中間要素の接触領域との間で、潤滑剤を沿わせて流すことができるタイプの流体連通経路を断続的に提供する方法および装置を提供することである。
【0007】
本発明の特定の実施形態の目的は、プランジャの動作サイクル中の1つまたは複数の時点で少なくとも瞬間的にタペットから離れるようにプランジャを偏倚させることである。
【0008】
本発明の特定の実施形態の目的は、構成要素部品上の並置される表面の間での腐食速度および摩耗速度を低下させるために、タペットなどの中間要素の接触領域とプランジャ要素の端部との間で潤滑剤を選択的に流すことができるポンプ組立体を提供することである。
【0009】
本発明の特定の実施形態の目的は、各負荷サイクルの前に新しい潤滑剤を用いて接触領域を洗い流すのを可能にすることによりポンプ組立体の腐食速度および摩耗速度を低下させることである。
【0010】
本発明の特定の実施形態の目的は、構成要素部品が負荷を受けていないときにポンプ組立体内の構成要素部品の間に小さい隙間を選択的に開くことである。
【0011】
本発明の特定の実施形態の目的は、ポンプ組立体内のプランジャ要素および中間要素の対向する表面の間にスクイズフィルム(squeeze film)を提供することである。
【0012】
本発明の特定の実施形態の目的は、ポンプ組立体のプランジャ要素とプランジャ要素に駆動力を提供する中間要素との間を潤滑する方法を提供することである。
【0013】
本発明の第1の態様によると、プランジャ要素とプランジャ要素を駆動させる中間要素の接触領域との間に流体連通経路を選択的に形成するための装置が提供され、この装置が、
第1の端部領域を備える細長いプランジャ要素と、
プランジャ要素の別の端部領域に選択的に当接してその別の端部領域を押圧するように構成される接触領域を備える中間要素と、
上記別の端部領域のばねシート部材と、を備え、ばねシート部材は、プランジャ要素の動作サイクルの一部分中に中間要素から離れるように別の端部領域を偏倚させることによって、上記別の端部領域の当接表面と上記接触領域との間に流体連通経路を形成する。
【0014】
適宜、中間要素が、ポンプ組立体のポンプハウジングのハウジング孔内で往復摺動動作を行うように受け入れられるタペットを備える。
【0015】
適宜、タペットが円筒形側壁および/またはその底部壁に少なくとも1つの貫通孔を備え、上記貫通孔が上記流体連通経路に接続される流体経路部分を形成する。
【0016】
適宜、流体連通経路が、プランジャ要素のリターンサイクルの終了時に上記当接表面と上記接触領域との間に潤滑流体を供給する。
【0017】
適宜、上記プランジャ要素の第1の端部領域がポンプ組立体のポンプヘッドのポンプ孔の閉端部(blind end)の中に配置可能であり、
中間要素が、上記当接表面に対して上記接触領域を押圧するようにポンプ組立体のカムまたはカムライダ要素によって駆動可能である駆動表面をさらに備える。
【0018】
適宜、装置が、ポンプ組立体のポンプヘッドから離れるようにばねシート要素の表面を押圧するリターンスプリング部材をさらに備える。
【0019】
適宜、ばねシート部材およびプランジャ要素が一体に形成されるか、または、ばねシート部材が上記プランジャ要素と共に移動するように上記プランジャ要素に固定される。
【0020】
本発明の第2の態様によると、ポンプ組立体が提供され、このポンプ組立体が、
軸方向に延在する開口部および上記開口部から概して径方向に延在する少なくとも1つのハウジング孔を備えるポンプハウジングと、
各ハウジング孔内に往復摺動動作を行うようにそれぞれ受け入れられる、内部チャンバ領域を備える少なくとも1つの中間要素と、
閉端部を有するポンプ孔を備え、上記ポンプハウジングに固定される少なくとも1つのポンプヘッドと、
各ポンプ孔によって形成されるポンピングチャンバ内の流体を加圧する第1の端部領域と、別の端部領域とを備え、各中間要素を介して使用時に駆動可能である、各チャンバ領域内にある細長いプランジャ要素と、
カム駆動シャフトと協働可能である内側表面および上記中間要素の駆動表面と協働可能である外側表面を有する、上記軸方向に延在する開口部内にあるカムおよび/またはカムライダ要素と、
別の端部領域の当接表面と上記接触領域との間に流体連通経路を形成するために、プランジャ要素の動作サイクルの一部分中に中間要素の接触領域から離れるように別の端部領域を偏倚させる、各プランジャ要素の別の端部領域にそれぞれ存在する少なくとも1つのばねシート部材と
を備える。
【0021】
適宜、ばねシート部材および上記プランジャ要素が一体に形成されるか、または、ばねシート部材が上記プランジャ要素と共に移動するように上記プランジャ要素に固定される。
【0022】
本発明の第3の態様によると、ポンプ組立体のプランジャ要素とプランジャ要素に駆動力を提供する中間要素との間を潤滑する方法が提供され、この方法が、
ポンプヘッドのポンプ孔の閉端部に対して第1の往復動作においてプランジャ要素の第1の端部領域を駆動させるステップであって、別の往復動作においてプランジャ要素の別の端部領域に近接する中間要素の接触領域を選択的に押圧することにより第1の端部領域を駆動させるステップと、
プランジャ要素の別の端部領域にあるばねシート部材を介して、プランジャ要素の動作サイクルの一部分中に中間要素から離れるようにプランジャ要素を偏倚させるステップと、
中間要素から離れるように別の端部領域が偏倚されるときに上記別の端部領域の当接表面と上記接触領域との間に潤滑流体を供給するステップと
を含む。
【0023】
適宜、本方法が、潤滑流体を介して、当接表面と上記接触領域との間を冷却し、当接表面と上記接触領域との間からデブリを除去することをさらに含む。
【0024】
適宜、本方法が、潤滑流体を介して、当接表面と上記接触領域との間にスクイズフィルム層を形成することをさらに含む。
【0025】
適宜、本方法が、プランジャ要素のサイクルごとに上記当接表面と上記接触領域との間の隙間を開閉することをさらに含む。
【0026】
適宜、サイクルの一部分が、ポンプ孔内の流体が膨張するときであるプランジャ要素のリターンサイクルの終了時を含み、上記第1の往復動作が、ポンプ孔内の流体が圧縮されるときであるポンプサイクル部分をさらに含む。
【0027】
適宜、本方法が、上記プランジャ要素と共に一体に形成されるばねシート部材を介して、または、上記プランジャ要素と共に移動するように上記プランジャ要素に固定されるばねシート部材を介して、別の端部領域を偏倚させることをさらに含む。
【0028】
本発明の特定の実施形態は、プランジャの端部とタペットなどの中間要素の接触領域との間に流体連通経路が提供されるという利点を提供する。これにより、対向する面の間の領域に潤滑剤を引き入れることと、冷却を行うことと、潤滑を行うことと、デブリを洗い流すこととが可能となる。また、これにより、対向する面が再び閉じるときに対向する面の間にスクイズフィルムが提供され、それにより、それ以外の場合の従来の既知のシステムで可能となるよりも長時間これらの面が分離されて維持される。このような長時間により、駆動動作および/または往復ポンピング動作の一部分として誘発される避けられない側方動作によって起こる摩耗が軽減される。
【0029】
本発明の特定の実施形態が、腐食および摩耗を低減するための、および、ポンプ組立体の高圧ヘッド内のデブリを除去するための方法を提供する。
【0030】
次いで、以下で、添付図面を参照しながら単に例として本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ポンプ組立体を示す図である。
図2】ポンプヘッド、リターンスプリングおよびタペットを示す図である。
図3】ポンプヘッド、リターンスプリングおよびタペットを示す別の図である。
図4】タペットの内部チャンバ内のプランジャ端部を示す図である。
図5図4に示される特徴およびばねシート部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
これらの図面では同様の参照符号は同様の部品を示す。
【0033】
図1がポンプ組立体100を示す。ポンプ組立体が、軸方向に延在する開口部102を装備する主ポンプハウジング101を有する。開口部は図1の紙面に垂直な方向に延在する。回転軸103を有するカムシャフト(図示せず)が、開口部内に取り付けられる偏心取付カム104を駆動させる。
【0034】
主ポンプハウジング101が、第1の径方向に延在する開口部または貫通孔105a、第2の径方向に延在する開口部または貫通孔105bおよび第3の径方向に延在する開口部または貫通孔105cを装備し、それらの各々が、その径方向内側端部において、ハウジングを通って延在する軸方向に延在する開口部102に連通される。当然、本発明の特定の別の実施形態に従って別の数の貫通孔が利用されてもよい。各ハウジング孔105a、105b、105cの径方向外側端部がそれぞれのポンプヘッド110a、110b、110cを受ける。各ポンプヘッドは実質的に等しく、したがって、以下では、別の図でも説明されて示される図1に示される上側ポンプヘッド110aのみを参照する。
【0035】
図2がポンプヘッド110aの部品をより詳細に示す。ポンプヘッドが、実質的に矩形の本体であるヘッド部分200を有する。実質的に円筒形の中央領域がポンプヘッドの下側領域201から下方に延在する。円筒形延長部202が実質的に円筒形のポンプ孔領域203を取り囲む。ポンプ孔203は閉端部204を有し、ここには少なくとも1つのバルブ205が位置する。ポンプ孔203はまた、ポンプヘッドの延長部に開口を提供する開端部206を有する。孔203は、孔の閉端部204とプランジャ211の第1の端部210とによって画定されるポンピングチャンバの空間をポンピングチャンバに提供する。プランジャは、ポンプヘッド内の円筒形孔203内を前後に摺動する細長いシャフト状の部材である。プランジャの第1の端部210の上側端部表面212が図2の矢印Aによって示される方向に上方に移動すると、ポンピングチャンバの容積が減少する。同様に、プランジャが図2の矢印Aによって示される方向の反対の移動軸に沿う方向に移動すると、ポンピングチャンバの容積が増大する。
【0036】
実質的に円形のカットアウト(換言すれば、切抜き)領域215がポンプヘッドの下側表面の中央に設けられる。これはリターンスプリング221の第1の端部220を配置して固定するのに利用される。緩んだ状態ではリターンスプリングがポンプヘッドから離れるようにタペットを保持し、サイクルのポンプストローク部分中にタペットをポンプヘッドの方に押圧するときに圧縮される。また、ポンプヘッドの下方の空間215はカップ状タペット231の上側円形表面230のためのクリアランスを提供する。こうして、プランジャ孔の閉端部がプランジャの外側端部面と共にポンプチャンバを画定し、そのポンプチャンバ内には比較的低圧の燃料が送出され得、カムまたはカム上に位置するライダの回転中にプランジャがポンピングストロークするように駆動されるときに、そのポンプチャンバ内で噴射に適する比較的高いレベルまで燃料が加圧される。
【0037】
タペット231は、実質的に円形の底部233の円周領域から延在する円筒形側壁232を有する実質的に中空の本体である。底部および側壁は一体に形成される。側壁232のリップ(換言すれば、開口縁部)が、ポンピング中にポンプヘッドの方に上方に押圧される円形表面を形成する。底部233がタペット内に画定される内部チャンバ240の閉端部を提供する。1つまたは複数の貫通孔250がタペットの側壁の周りに円周状に形成され、それにより、タペット本体を囲む外側領域からチャンバ240内の内側領域まで流体が流れることが可能となる。貫通孔は円形窓形態またはチャーチ窓(church window)形態などであってよい。
【0038】
ばねシート260がプランジャ211の別の端部261に位置する。図2に示されるばねシート260は締まり嵌めによりプランジャの端部に固定されるが、ばねシートが別の形でシャフト状プランジャ本体に一体に形成されるかまたは別の手法でシャフト状プランジャ本体に固定されてもよいことを認識されたい。ばねシートおよびプランジャは単一のユニットとして一体に移動する。ばねシートの上側表面262がリターンスプリングの別の下側端部263を着座させる。
【0039】
図1に示されるように駆動シャフトがカム104と協働し、やはり図1に示されるように、カムと同軸に延在する任意選択の協働可能な概略管状カムライダと協働する。外側表面上で、カムライダがフラット(flat)と称される第1、第2および第3の平坦表面を装備する。フラットの各々1つがプランジャのうちのそれぞれ1つのためにタペット231の底部表面と協働する。タペットがプランジャに動作可能に結合されると、シャフトが回転してカムライダがカムの表面上に乗り、それにより、タペットおよびプランジャの両方に駆動力が加えられる。タペット231が駆動されるとき、タペット底部の下側表面270とライダのフラットとの間である程度の摺動運動が可能となる。任意選択で、このような摺動運動を促進するために滑り面が設けられてよい。摩擦による摩耗を制限するように、燃料などの潤滑流体が、タペットの摺動するハウジングの開口部102内および孔105内に提供される。
【0040】
カムが駆動されると、タペットが開口部105内で往復運動し、プランジャがプランジャ孔203内で往復運動させられる。それにより、ハウジング孔内でタペットが第1の往復運動を行い、ポンプ孔内でプランジャが別の往復運動を行う。
【0041】
それにより、タペットおよびポンピングプランジャが共に駆動され、それによりプランジャがポンピングストロークを含めたポンピンクサイクルを行うようになり、この間、タペットおよびプランジャが中央カムシャフトから径方向外向き(すなわち、それぞれのポンプヘッドに向かう方向)に駆動され、ポンプチャンバ203内の容積が減少する。このポンピングストローク中、ポンピングプランジャがそのプランジャ孔内で内側に駆動され、ポンプチャンバ内の燃料が高いレベルにまで加圧される。その後のプランジャリターンストローク中、タペットおよびプランジャが径方向内向きに、つまり、ポンプヘッドから離れてハウジングの中心に向かうように押圧される。このリターン動作は、タペットをポンプヘッドから離すように偏倚させるリターンスプリングの弾性性質によって行われる。プランジャおよびそのそれぞれのタペットのリターンストローク中、プランジャがプランジャ孔から外側に押圧され、比較的低圧の燃料が関連するポンプチャンバをバルブを介して充填することが可能となり得る。
【0042】
このように、プランジャリターンスプリングが設けられることで、プランジャがリターンストロークを行うように押圧され、さらにそれにより、ポンピングサイクル中にタペットとカムライダのフラットとの間の接触が確実に維持されるようになる。タペットおよびプランジャは周期的な正弦波運動(cyclic sinusoidal motion)を行い、所望される振動数で駆動される。適宜、最大振動数は約130Hzである。適宜、最大振動数は約120Hzである。タペットは下死点と上死点との間で一定範囲の行程を有する。適宜、行程範囲は約15mm以下である。適宜、行程範囲は約10mm以下である。タペットは、駆動力を提供するカムおよび/またはカムライダ要素と、ポンプヘッドによって提供されるポンプ孔内で往復運動するように駆動されるプランジャとの間の中間要素として機能する。
【0043】
図3が、図2に示されるポンプヘッド、タペットおよびリターンスプリングをより詳細に示す。具体的には、図3は、タペットの径方向の最も内側の端部領域にチャーチ窓形態の開口部250がどのように形成されるのかをより明確にするのを補助する。図3では4つの開口部が示されるが、本発明の特定の実施形態に従って別の形状および数の開口部も可能であることを認識されたい。開口部は円筒形側壁およびタペットの底部からのカットアウト領域300によって形成される。また、図3はいかにポンプヘッドの形状が実質的に矩形であるかを示すのを補助するが、本発明の特定の別の実施形態に従って別の形状および構成も可能であることを認識されたい。ポンプヘッドは、使用時にポンプヘッド内のアパーチャ301を通って延在するボルトまたは別の固定機構を介してポンプハウジング101に固定され得る。図3に示されるように、タペットは、リターンスプリングの端部を取り囲む内部チャンバを提供する。リターンスプリングのもう一方の端部はその上側端部でポンプヘッド110に固定される。
【0044】
図4が、プランジャがどのようにポンプ孔の開端部206を通って、タペット内に画定されるチャンバ240内まで延在するのかを示す。プランジャ211の下側端部が、概略円形の当接表面端部400を有する。これがタペットの底部の上側を向く表面402上の中央接触領域401に当接される。図4に示されるように、中央接触領域401は、タペットの底部の上側表面402の周囲領域よりわずかに隆起していてよい。
【0045】
ばねシート260は、弾性材料で形成される実質的に円形のリング状本体である。適宜、ばねシートは硬化鋼で形成される。ばねシートの断面は(プランジャの軸に対して)径方向の最も外側の脚部403で形成され、これは、タペットの底部の上側表面404上に着座する下側環状接触表面404を有する。したがって、ばねシートとタペットの底部との間の接触点405が、図4の矢印Bによって示される方向におけるばねシートの動作を制限する。ばねシートの残りの本体は概略ディスク状であり、その下側に凹型形状を有する。ばねシートの下側にある部分的にティアドロップ形状である凹型のこの凹部によりばねシートを屈曲可能にすることが補助される。ばねシートの上側表面262はリング形状の突起部として延在する上側環状リブ410を有する。
【0046】
図4に示されるように、プランジャの端部表面400とタペットの底部の接触領域401との間に小さい隙間420が開いていてよい。この空間420が構成要素部品の間をわずかに分離させる。タペットの下側表面270に接触させてカムライダを押圧するポンピングプロセス中、タペットがプランジャの端部に対して押圧され、その力がばねシートの弾性性質に打ち勝つ。したがって、プランジャおよびタペットは単一部片として移動するように効果的に一体に位置するようになる。カムライダが図4に示される矢印Bとは反対方向にタペットおよびプランジャを駆動させてタペットおよびプランジャが一体に移動すると、ポンピングストロークが生じる。ポンピングサイクルの終了時、カムライダが矢印Bとは反対方向にタペット(さらにはそれによりプランジャ)を押圧するのを止める。次いで、タペットの底部に接触して押圧されてタペットの底部と共にプランジャを支持するばねシートの上側表面に作用するリターンスプリング221が、タペットおよびプランジャを矢印Bの方向に移動させる。リターンストロークの終了時、ばねシートが弾性性質を有することと、ばねシートがタペットの底部上にあることとにより、プランジャ端部がタペットの底部で接触領域401から離れるように瞬間的に引っ張られる。この分離動作により隙間420が形成され、構成要素部品間のゾーンの間に流体連通経路が提供される。この流体連通経路はタペット内のチャンバ240にも連通され、さらに、タペット250内の排出孔を介して周囲領域にも連通される。
【0047】
図5がタペットの円筒形性質およびばねシートの円形ディスク状性質をより詳細に示すのを補助する。図5に示されるように、タペット231は、実質的に円形の底部から延在する円筒形側壁を有するカップ状要素である。タペットの円筒形側壁の上側リップ230がタペットに対する開口を提供し、このリップ230は、ポンプヘッド本体200の下側にある中央円形挿入領域215内の凹部500内をポンプヘッドの方に向かって上方に押圧され得る。図5はまた、その上側表面にタペットの接触表面401を有する島部501を提供するようにタペットの底部の上側表面の隆起中央領域がどのように隆起され得るのかを示すのを補助する。
【0048】
ばねシートの上側表面262が最も外側にある実質的に平坦なリング表面505を提供し、これが、上方に延在する領域506を介して、上側を向くリブ領域410内まで上方に延在する。これにより、リターンスプリングの端部を配置/着座させることが補助される。ばねシートの上側表面が、リブから径方向内向きにプランジャに向かって、凸型領域512により内側凹型領域511から分離される第1の凹型領域510内に落ち込む。ばねシートの径方向の最も内側にある中央領域が接触領域を提供し、それにより、ばねシートが締まり嵌めなどを介してプランジャの端部261に固定されることが可能となる。プランジャ本体およびばねシートが任意選択で一体に形成されてよいことを認識されたい。
【0049】
本発明の特定の実施形態によると、プランジャとタペットまたは同様の構成要素との間にばね要素が追加される。これにより、負荷を受けていない構成要素部品の間に小さい隙間が開けられる。このような小さい隙間が開けられることは、面と面の間の隙間に潤滑剤を引き入れるように作用する。これにより面を冷却すること、潤滑すること、および、デブリを除去することが可能となる。また、接触領域内への潤滑剤の流れによりスクイズフィルムを形成することが可能となる。このスクイズフィルムは、それ以外の場合で従来の既知のシステムを用いて可能となるよりも長い期間、対向する面を分離させて維持するのを補助する。これは、動作によって発生する摩耗を軽減するのを補助する。
【0050】
このようなばね効果は上述したように弾性ばねシートによって提供され得る。別法として、種々の別の手法により、部品を分離させるように瞬間的に移動させる偏倚効果を得ることもできる。例えば、中実のばねシートが弾性のOリングを収容するリング環状部を備えてもよい。
【0051】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、「備える」および「包含する」という単語およびそれらの語尾変化は「含むが限定しない」ことを意味し、別の部分、追加物、構成要素、整数、または、ステップを排除することを意図されない(排除しない)。本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、文脈で特に明記しない限り、単数形は複数形も包含する。具体的には、不定冠詞が使用される場合、文脈で特に明記しない限りは本明細書は単数形と共に複数形も企図していると理解すべきである。
【0052】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例と併せて説明される特徴、整数、特性またはグループは、適合しない場合を除いて、本明細書で説明される任意の別の態様、実施形態または実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面をすべて含む)で開示されるすべての特徴、および/あるいは、同様に開示される任意の方法またはプロセスのすべてのステップは、特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互排他的であるような組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされ得る。本発明は上記の任意の実施形態の任意の細部に限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面をすべて含む)で開示される特徴のうちの任意の新規の特徴または新規の組み合わせを包含するか、または、同様に開示される任意の方法またはプロセスのステップのうちの任意の新規のステップまたは任意の新規の組み合わせを包含する。
【0053】
本出願に関連して本明細書と共に提出されるかまたは本明細書の前に提出される、本出願により公開されるすべての書類および文献、ならびに、それらのすべての書類および文献の内容が、参照により本明細書に組み込まれることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5