(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細分化されて複数のダイへと分離可能なウェハを用意する工程であり、各ダイは、容量性マイクロマシントランスデューサセルのアレイを有し、各セルは、第1の電極を有する基板と、第2の電極を有するメンブレンと、前記基板と前記メンブレンとの間のキャビティとを有する、工程と、
前記複数のダイのうちの少なくとも一部のダイの各セルの前記メンブレンの上に補償プレートを配設する工程であり、各補償プレートは、前記メンブレンの撓りに影響を及ぼす構成を有し、前記補償プレートの前記構成が前記ウェハにわたって変化される、工程と、
を有するウェハを製造する方法。
前記補償プレートを配設する工程は、前記補償プレートのうちの少なくとも一部の補償プレートが他の補償プレートより多くの層を有するように、第1の層を設けること及び少なくとも第2の層を設けることを有する、請求項11に記載の方法。
容量性マイクロマシントランスデューサセルのアレイを有するダイを製造する方法であって、当該方法は、請求項11に記載の方法の工程を有し、更に、前記ウェハから前記ダイを分離する工程を有する、方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、製造が改善且つ/或いは安価にされ、特に歩留り損失が低減されたウェハを提供することである。本発明の更なる1つの目的は、特に低減された歩留り損失を有した、ウェハを製造する改善された方法及びダイを製造する改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様において、細分化されて複数のダイへと分離可能なウェハが提示され、各ダイは、容量性マイクロマシントランスデューサセルのアレイを有し、各セルは、第1の電極を有する基板と、第2の電極を有するメンブレンと、前記基板と前記メンブレンとの間のキャビティとを有し、前記複数のダイのうちの少なくとも一部のダイの各セルが、前記メンブレンの上に補償プレートを有し、各補償プレートは、前記メンブレンの撓りに影響を及ぼす構成を有し、前記補償プレートの前記構成が当該ウェハにわたって変化している。
【0008】
本発明の更なる一態様において、ウェハを製造する方法が提示され、当該方法は、細分化されて複数のダイへと分離可能なウェハを用意する工程であり、各ダイは、容量性マイクロマシントランスデューサセルのアレイを有し、各セルは、第1の電極を有する基板と、第2の電極を有するメンブレンと、前記基板と前記メンブレンとの間のキャビティとを有する、工程と、前記複数のダイのうちの少なくとも一部のダイの各セルの前記メンブレンの上に補償プレートを配設する工程であり、各補償プレートは、前記メンブレンの撓りに影響を及ぼす構成を有し、前記補償プレートの前記構成が前記ウェハにわたって変化される、工程と、を有する。
【0009】
本発明の更なる一態様において、容量性マイクロマシントランスデューサセルのアレイを有するダイを製造する方法が提示され、当該方法は、上述のウェハを製造する方法の工程を有し、更に、前記ウェハから前記ダイを分離する工程を有する。
【0010】
本発明の基本的な考えは、ウェハにわたって、特にはウェハの直径にわたって、補償プレートの構成を変化させることである。各補償プレートは、メンブレンの撓りに影響を及ぼす(すなわち、低減あるいは増大させる)構成を有する。故に、各補償プレートは、メンブレンの撓りに対する補償又は補償効果を提供する。分かっていることには、メンブレンの撓りは通常、ウェハ上の特定の位置、特にはメンブレン又はその対応するダイの位置に依存する。例えば、中心の1つ又は複数のダイは、縁部の1つ又は複数のダイと比較して異なる撓りを有する。メンブレン撓りのこの不均一性は、極めて望ましくない。というのは、例えば音響出力圧及び中心周波数などの電気特性及び音響特性は、撓りに依存し、故に、やはり不均一になるからである。トランスデューサには、特にCMUTデバイスには、厳格な仕様が存在するので、この不均一性は歩留り損失につながる。本発明は、この問題を、ウェハにわたって、特にはその直径にわたって、補償プレートの構成を変化させることによって解決する。こうして、補償の量及び/又は向きがウェハにわたって変化される。斯くして、ウェハにわたるメンブレン撓りのバラつきが実質的に抑制される。故に、ウェハにわたるメンブレン撓りのバラつきに対する補償又は補償効果が存在する。従って、製造における歩留り損失が低減される。理解されるように、直径なる用語は、本願の状況においては特に、ウェハ表面(ウェハの厚みに垂直な平面内)を横切るウェハの最大寸法を意味する。補償プレートの構成なる用語は、特には、補償プレートの形状、大きさ及び/又は厚さを意味し得る。こうして、補償プレートの形状、大きさ及び/又は厚さを用いて、補償が制御される。これらの形状、大きさ及び/又は厚さが、補償の量とともに補償の向き(又は符号)(上向き又は下向き)を決定する。
【0011】
好ましくは、補償プレートの構成は、セルのメンブレン撓りが実質的に一様になるようにウェハにわたって変化する。換言すれば、ウェハ全体のセルのメンブレン撓りが実質的に一様あるいは同じにされる。メンブレン撓りは、必ずしもゼロである必要はないが、ウェハにわたって実質的に一様にされる必要がある。理解されるように、目標は、セルのメンブレン撓りを厳密の一様あるいは同じにすることである。しかしながら、実際上、幾らかの小さいバラつき又は無視できるバラつきが依然としてメンブレン撓りに存在してもよい。例えば、上記の変化又は補償は、好ましくは少数(例えば、2又は3)の段階である複数の段階にて実行され得る。故に、実際には、幾らかのメンブレン撓りのバラつきが残存し得るが、それは小さいか無視できるかである。ウェハにわたっての補償プレートの構成の変化は、メンブレン撓りのバラつきの有意な改善をもたらす。
【0012】
好ましくは、各ダイのセルの補償プレートの構成は実質的に一様である。換言すれば、1つのダイ内のセル群のメンブレン撓りは、(実質的に)一様あるいは同じであると仮定され得る。この仮定は、ウェハの全体サイズと比較してダイのサイズが小さいことにより成り立つ。実際には、1つのダイ内にも幾らかのメンブレン撓りのバラつきが存在し得るが、ウェハの直径と比較して小さいダイのサイズにより、それは小さいか無視できるかである。換言すれば、ダイ内での撓りのバラつきは、非常に小さいか無視できるかであり得る。ダイ内にも幾らかの小さいバラつきが存在するとしても、それは、ウェハにわたるバラつきと比較して遥かに小さいものである。好ましくは、1つのダイ内のセル膜撓りが実質的に一様であるとともに、異なるダイの撓りも実質的に一様にされる。
【0013】
本発明の好適実施形態が従属請求項にて規定される。理解されるべきことには、特許請求に係るウェハを製造する方法又はダイを製造する方法は、特許請求に係るウェハ及び従属請求項に規定されるものと同様及び/又は同一の好適実施形態を有する。
【0014】
第1の実施形態において、補償プレートの形状がウェハにわたって変化する。これは、補償プレートの構成を変化させるとりわけ容易な手法を提供する。この実施形態において、補償プレートの構成とは、補償プレートの形状のことをいう。例えば、この形状は、特に円形のセル又はセル膜に対して、円形状とリング形状との間で変化することができる。円形の補償プレートと、リング状の補償プレートは、逆の補償効果を有し得る(例えば、円形はメンブレンを下方に屈曲させることができ、リング状の補償プレートはメンブレンを上方に屈曲させることができる)。
【0015】
第2の実施形態において、補償プレートの大きさがウェハにわたって変化する。これは、補償プレートの構成を変化させるとりわけ容易な手法を提供する。この実施形態において、補償プレートの構成とは、補償プレートの大きさのことをいう。例えば、製造において、補償プレートの大きさは、変化させた大きさ及び/又は形状を有するリソグラフィマスクを用いて、容易に変化されることができる。斯くして、補償プレートを設けるための1つの追加リソグラフィ工程のみが必要とされる。
【0016】
この実施形態の一変形において、各補償プレートは、プレート径を持つ円形状を有し、このプレート径がウェハにわたって変化する。この(連続した)円形状すなわちディスクは、特に円形のセル又はセル膜に対して、補償プレートの大きさを変化させるとりわけ容易且つ/或いは効果的な手法を提供する。プレート径を変化させる(すなわち、増大あるいは低減させる)とき、補償の効果が増大される。
【0017】
この実施形態の他の一変形において、各補償プレートは、プレート内径を持つリング形状を有し、このプレート内径がウェハにわたって変化する。このリング形状は、特に円形のセル又はセル膜に対して、補償プレートの大きさを変化させるとりわけ容易且つ/或いは効果的な別手法を提供する。プレート内径を変化させる(すなわち、増大あるいは低減させる)とき、補償の効果が増大される。
【0018】
第3の実施形態において、補償プレートの厚さがウェハにわたって変化する。これは、補償プレートの構成を変化させるとりわけ効果的な手法を提供する。この実施形態において、補償プレートの構成とは、補償プレートの厚さのことをいう。例えば、製造において、補償プレートの厚さは、複数のダイのうちの少なくとも一部の各セルの上に少なくとも2つの材料層を塗布/堆積することによって効果的に変化されることができる。この場合、補償プレートを設けるための複数の追加堆積工程が必要とされるが、達成され得る補償効果も非常に良好である。故に、厚さは、特には複数の(金属)堆積工程である複数の工程にて変化されることができる。(金属)補償プレートの厚さを増大させるとき、補償の効果が増大される。
【0019】
この実施形態の一変形において、補償プレートのうちの少なくとも一部の補償プレートは、他の補償プレートより多くの層を有する。これは、補償プレートの厚さを変化させるとりわけ効果的且つ/或いは容易な手法を提供する。例えば、製造において、補償プレートの厚さは、補償プレートのうちの少なくとも一部の補償プレートが他の補償プレートより多くの層を有するように、第1の層を塗布/堆積すること及び少なくとも第2の層を塗布/堆積することによって効果的に変化されることができる。
【0020】
他の一実施形態において、補償プレートの構成は、ウェハの第1の領域からウェハの第2の領域へと階段状(ステップワイズ)に変化する。斯くして、十分な補償を提供することには、限られた数のみの変化又は工程が必要とされる。具体的には、第1の領域及び第2の領域は各々、複数のダイを有する。例えば、補償プレートの構成は、第1の領域から第2の領域へと、そして第2の領域から第3の領域へと、ステップワイズに変化し得る。例えば、十分な補償を提供することには3つ以下の領域で十分であり得る。
【0021】
他の一実施形態において、補償プレートは、特にはアルミニウムである金属からなる。金属は、補償プレートをとりわけ容易な手法で設けることを可能にする。特に、アルミニウムは、とりわけ予測可能な製造プロセスを提供する。アルミニウムは好ましいものであり得るが、補償プレートの応力が十分に制御される限り、他の材料が使用されてもよい。
【0022】
更なる一実施形態において、各セル、補償プレートを覆う保護コーティングを有する。これは、環境に対する(例えば、腐食に対する)補償プレートの保護を提供する。この保護コーティング又はパッシベーション層は、例えば200nm未満又は100nm未満といった薄さとし得る。例えば、保護コーティングは窒化シリコン(Si
3N
4)からなることができる。
【0023】
他の一実施形態において、上述の方法は、補償プレートを配設する前に、各ダイのセルのメンブレン撓りを求める決定工程を有する。斯くして、ウェハにわたるメンブレン撓りのバラつきパターン又はバラつき分布を求めることができる。そして、このバラつきパターン又はバラつき分布に従って補償プレートの構成を変化させることができる。特には、この決定工程は、複数ウェハの製造を始めるときの最初のウェハに対して一度だけ行われ得る。この場合、メンブレン撓りのバラつきは、後続ウェハでも同じであると仮定され得る。当然ながら、この決定工程を、単一のウェハの各々を製造する前に行うことも可能である。こうすることは、より多くの時間が製造に掛かるという代償の下で、より正確な補償を提供することになる。例えば、この決定工程は、ウェハにわたる補償量が十分であるかを決定することと、ウェハにわたる補償量が十分でないと決定された場合に補償量を調整することとを有することができる。ウェハにわたる補償量が十分であるかを決定することは、例えば、コラプス電圧の測定などの電気測定によって行われることができる。
【0024】
更なる一実施形態において、補償プレートを配設する工程は、変化させた大きさ及び/又は形状を有するリソグラフィマスクを用いることを有する。斯くして、補償プレートの大きさ及び/又は形状をウェハにわたって変化させることができる。これは、補償プレートの構成を変化させるとりわけ容易な手法を提供する。補償プレートを設けるための1つの追加リソグラフィ工程のみが必要とされる。換言すれば、補償プレートの大きさ及び/又は形状は、リソグラフィを介して、具体的には、フォトレジストへのリソグラフィマスクの結像及びパターニングによって与えられる。
【0025】
他の一実施形態において、補償プレートを配設する工程は、補償プレートのうちの少なくとも一部の補償プレートが他の補償プレートより多くの層を有するように、第1の層を設けること及び少なくとも第2の層を設けることを有する。斯くして、補償プレートの厚さをウェハにわたって変化させることができる。これは、補償プレートの構成を変化させるとりわけ効果的な手法を提供する。換言すれば、補償プレートの厚さは、複数のダイのうちの少なくとも一部の各セルの上に少なくとも2つの材料層を塗布/堆積することによって効果的に変化されることができる。この場合、補償プレートを設けるための複数の追加堆積工程が必要とされるが、達成され得る補償効果も非常に良好である。補償プレートの厚さは堆積パラメータである。特にはセルのメンブレン撓りが実質的に一様になるように、この堆積パラメータを選定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、特にはCMUTセルである例示的な容量性マイクロマシントランスデューサセル1の模式図を示している。セル1は、底部電極としても知られる第1の電極11を有する基板10(例えば、シリコンからなる)を有している。
図1に示すこの例において、第1の電極11は、基板又は基板ベース層10に埋め込まれている。しかしながら、理解されるように、これは基板又は基板ベース層の頂部上に設けられてもよい。セル1は更に、頂部電極としても知られる第2の電極14を有するメンブレン(膜)13(例えば、窒化シリコンからなる)を有している。
図1に示すこの例において、第2の電極14は、メンブレン又はメンブレンベース層13に埋め込まれている。しかしながら、理解されるように、これはメンブレン又はメンブレンベース層の頂部上に設けられてもよい。セル1は更に、基板10とメンブレン13との間にキャビティ(空洞)12を有している。キャビティ12は通常、真空に近い低圧に維持され、基板10とメンブレン13との間の空隙を提供する。このようなCMUTセルにおいて、超音波の受信では、超音波がセル膜13を移動あるいは振動させ、そして、電極11、14間の静電容量(キャパシタンス)の変化が検出され得る。それにより、超音波が、対応する電気信号へと変換される。逆に、電極11、14に印加される電気信号がセル膜13を移動あるいは振動させることができ、それにより超音波が送信される。
【0028】
技術的な視点から、原理的に、例えば国際公開第2010/032156号パンフレットに詳細に記載されているものなどの何らかの従来手法にて、予めコラプスされた容量性マイクロマシントランスデューサセル(特にはcMUT)を製造することができる。なお、この文献をここに援用する。
【0029】
超音波の送信及び/又は受信を行うCMUTセルに関して
図1を説明しているが、また、本明細書の残りの部分もそれに関して説明されることになるが、理解されるように、容量性マイクロマシントランスデューサセルは、例えば圧力センサとしてなど、他の目的でも同様に使用されることができる。圧力センサセルにおいては、メンブレン13は圧力を被り、該圧力がメンブレン13を撓ませたり屈曲させたりする。メンブレン13の位置の変化が、第1の電極11と第2の電極14との間の距離の変化を生じさせ、それにより、これらの間に設立される静電容量を変化させる。この静電容量の変化が検出されて、圧力測定値の変化に変換される。なお、
図1に描いたものは単なる例示的なものであり、セル1は、デバイスの処理及び電気動作に必要な、他の機構又はレイヤ群若しくはレイヤスタックを有し得る。
【0030】
図2は、特には
図1を参照して説明したようなセルであるCMUTセルのアレイを3次元的に上から眺めた様子を例示している。CMUTセル1のアレイは、マトリクス(2D)トランスデューサアレイを形成している。この例において、各CMUTセル1は、セル1又はそのメンブレン13の直径が2r
mの円形状を有している。
図3は、
図2のCMUTセルの断面プロファイルを示している。
図3にて見て取れるように、セル1のメンブレン13は、屈曲又は撓りhを有している。撓りhは、メンブレンの撓み、変位又は変形として参照されるときもある。撓りhは一般に、或る特定の大きさ量を有するとともに、上向き又は下向きである特定の向きを有する。
図3のこの例において、撓りhは、上向きに約200nmの大きさを有する。撓りhは、セル1の電気特性及び音響特性にズレを生じさせる(シフトさせる)。撓りhは、コラプス電圧に影響を及ぼし(例えば、最大25%)、また、一定のバイアス電圧を仮定すると中心周波数にも影響を及ぼす(例えば、約1−2MHz)。
【0031】
撓りに影響を及ぼすよう、メンブレン又はメンブレンベース層13の上(例えば、頂部上)の補償プレート15を使用することができる。
図4は、そのような補償プレート15を有した、特には
図1−3を参照して説明したような、例示的なCMUTセル1の模式的な断面図を示している。
図4中の矢印Bは、この特定のCMUTセル1が、(メンブレンの表面に垂直な)セル又はメンブレンの中心(横)軸Aの周りで円対称性を有することを示している。
図4に示したCMUTセルの部分は、メンブレン13に注意を向けたものである。メンブレン13に関する固定箇所13aも示されている。補償プレート15は、メンブレン又はメンブレンベース層13上に配置されている。理解されるように、補償プレート15も、
図1を参照して説明したように超音波の受信及び/又は送信を行うときに振動あるいは移動する。故に、補償プレート15は、特にはメンブレンベース層上に配置された、メンブレン13の一部でもあると見なされ得る。
図4に示した例において、補償プレート15は、キャビティ12とは反対側のメンブレン又はメンブレンベース層13の外表面の上に配置されている。
【0032】
一般に、メンブレン13内の応力は、メンブレンの撓りを生じさせ得る。一例において、温度変化又は熱的に誘起される応力がメンブレンの撓り(又は撓みとも呼ばれる)の根本原因となり得る。これは一般に、メンブレン13を構築する材料の設計及び特性に起因する。第2の(頂部)電極14は、メンブレン又はメンブレンベース層のそれ自体の材料とは異なる導電材料からなる。温度変化の影響下で、これら2つの材料は異なる膨張特性にて異なる割合で膨張あるいは収縮する。これが、メンブレンの内部に熱誘起応力及びモーメントを生み出す。この熱誘起応力及びモーメントが、メンブレンの動きをトリガーし、それにより静電容量の変化を促す。メンブレン13上に補償プレート15を設けることにより、メンブレンの撓り又は撓みに影響を及ぼすことができる。
【0034】
【数1】
によってモデル化され得る。ただし、
hは、応力(例えば、熱誘起応力)による、特には中心(横)軸Aであるキャビティの中心点での基板側へのメンブレンの撓みであり、
Mは、応力(例えば、熱誘起応力)によるメンブレンのモーメントであり、
Dは、メンブレン13の曲げ剛性であり、
r
mは、(キャビティの中心点から規定される)メンブレンの半径であり、
r
b−botは、(キャビティの中心点から規定される)第2の(頂部)電極14の半径であり、
r
b−topは、(キャビティの中心点から規定される)補償プレート15の半径であり、
h
1、h
2、及びh
3は、それぞれ、(キャビティの側を形成するメンブレンの内表面から測定される)第2の(頂部)電極14の第1の面の距離、第2の(頂部)電極14の第2の面の距離、及びメンブレン13の厚さであり、
υは、ポアソン比であり、
Sは、メンブレン内の熱応力であり、
Eは、メンブレン13の材料のヤング率であり、E
1及びE
2は、それぞれ、第2の(頂部)電極14及びメンブレン13に関係し、
ΔTは、温度変化であり、
αは、材料の膨張係数であり、α
1及びα
2は、それぞれ、第2の(頂部)電極14及びメンブレン13に関係する。
【0035】
理解されるように、熱誘起応力は単なる一例であり、メンブレン内に応力を生じさせるその他又は更なる理由が存在し得る。従って、上記の式において、Sは一般的に“応力値”としても参照され得る。また、理解されるように、メンブレンの撓り又は撓みhに関する上記の式は、単純化したものである
図4に示した特定のメンブレン構成に関して得られるものである。故に、理解されるように、これは、主要な効果の一部を強調する単なる例示である。
【0036】
補償プレート15の大きさ(又は直径d、ここで、
図4には半径d/2すなわちr
b−topのみが示されている)及び/又は厚さは、異なる補償効果を生じるように変更されることができる。このことを、
図4aを参照して更に詳細に説明する。
図4aは、4つの異なる厚さの補償プレートについて補償プレート15の半径r
bの関数としてメンブレン13の撓り又は撓みを例示する図を示している。
図4aに示したものに関しては、
図4を参照して説明したようなメンブレンの中心の円形の補償プレート15を使用した。補償プレートはアルミニウムからなる。メンブレン半径r
mは30μmとした。第1の曲線C1(円によって指し示されている)は80nmの補償プレート厚さを示しており、第2の曲線C2(菱形によって指し示されている)は100nmの補償プレート厚さを示しており、第3の曲線C3(四角によって指し示されている)は120nmの補償プレート厚さを示しており、そして、第4の曲線C4(三角によって指し示されている)は140nmの補償プレート厚さを示している。直線C5は、ゼロの補償プレート厚さ、故に、補償プレートが存在しないものを示している。もはや、例えばゼロの撓り又は撓みといった特定の撓り又は撓みが達成されるように、補償プレートの厚さ及び大きさを選定することが可能である。
図4a内に点線の縦線によって指し示した24μmの補償プレート半径r
bという一具体例の場合、ゼロの撓り又は撓みを達成するためには、補償プレート厚さを約100nmにすべきである。逆に、100nmの補償プレート厚さの場合、ゼロの撓り又は撓みを達成するためには、補償プレート半径r
bを約24μmにすべきである。故に、一般に、所与の補償プレートの形状に対し、メンブレン13の撓りhに影響を及ぼすよう、補償プレート15の大きさ及び厚さが使用される。
【0037】
図5は、特には
図1−4を参照して説明したようなCMUTセルであるCMUTセル1のアレイを有するダイ110の模式的な断面図を示している。複数のCMUTセル1が、隣り合わせでアレイ状に配列される。各セルのメンブレン13が補償プレート15を有している。補償プレート15は、例えば金属からなることができ、特には、とりわけ予測可能な製造プロセスを提供するアルミニウムからなり得る。アルミニウムは好ましいものであり得るが、補償プレート15の応力が十分に制御あるいは補償される限り、他の材料が使用されてもよい。また、各セル1は必要に応じて、補償プレート15を覆う保護コーティングを有していてもよい。保護コーティング又はパッシベーション層は、例えば200nm未満又は100nm未満といった薄さとし得る。例えば、保護コーティングは窒化シリコン(Si
3N
4)からなることができる。例えば
図5に示したようなダイ110は、ウェハ100から分離された後に、特には超音波トランスデューサ又は圧力センサであるトランスデューサを形成するために使用され得る。このために、見込まれる関連ASICへの外部接続又は外部環境へのその他の接続が提供され得る。例えば、ダイ110はASICの頂部に配置され得る。
【0038】
このようなトランスデューサデバイスを製造するために使用されるウェハは、特には
図5を参照して説明したようなダイ110を複数有する。故に、ウェハは細分化されて複数のダイ110へと分離可能である。ウェハは一般的に多数のダイ110を有するので、ダイ110のサイズは、ウェハの全体サイズすなわち直径と比較して非常に小さい。例えば、ダイのサイズは、ウェハの全体サイズすなわち直径の約1/10から1/50の間であり得る。換言すれば、ウェハは例えば少なくとも10個から50個の間のダイを有し得る。非限定的な具体例をちょっと挙げれば、ダイのサイズはたった5mmから10mmの間であり得るのに対し、ウェハのサイズすなわち直径は例えば150mmから200mmであり得る。特に、ウェハサイズは、例えば150mm(6インチとも呼ばれる)、200mm(8インチとも呼ばれる)、又は300mm(12インチとも呼ばれる)など、固定値とし得る。理解されるように、ウェハはまた、例えば100mm(4インチとも呼ばれる)など、他の固定サイズを有していてもよい。
【0039】
分かっていることには、セル膜13の撓りhは通常、ウェハ上の特定の位置、特にはメンブレン13又はその対応するダイの位置に依存する。中心のダイは、縁部のダイと比較して異なる撓りhを有する。このことを、
図6を参照して更に説明する。
図6は、補償プレートの構成に変化がない場合のウェハ100にわたるコラプス電圧Vcの例示的なバラつきを模式的に示したものである。
図6中の大きい円は、ウェハ100の周縁すなわちエッジ101を表している。ウェハ100は直径Dを有している。直径Dは、ウェハ100の周縁すなわちエッジ101によって規定される。
図6は円形のウェハ100を示しているが、理解されるように、直径なる用語は、円形のウェハ形状に限定するものではなく、一般に、ウェハ表面(ウェハの厚みに垂直な平面内)を横切るウェハの最大寸法を意味する。
図6中の小さい円は各々、ウェハの複数のダイのうちの1つを表している。
図6においては、ダイを表す小さい円の各々に数字が付随している。各数字は、対応するダイのコラプス電圧Vcを示している。各ダイ内では、メンブレンの撓りは(実質的に)一様であると仮定される。コラプス電圧Vcは撓りhに関係するので、コラプス電圧Vcは撓りhの指標である。
図6にて見て取れるように、中心ダイがあるウェハ100の中心では、コラプス電圧は約96Vであり、縁部ダイがあるウェハ100のエッジ又は周縁の付近では、コラプス電圧は約130V又は140Vである。
図6が示すように、メンブレンの撓りは、ウェハの中心での約95Vから、ウェハ100のエッジ101付近で増大して約130V又は140Vにまで及ぶ、コラプス電圧のバラつきを発生させる。
図6にて見て取れるように、撓りはウェハ100にわたって変動し、ウェハ100のエッジ101に向かって増大している。
図6に示される放射状パターンは、使用した特定の堆積ツールに特有なものである。故に、理解されるように、
図6のパターンは単に例示的なものである。このような変動又はパターンが製造時にウェハごとに再現されると仮定し得る。
【0040】
例えば
図6に示したような、メンブレンの撓りのこの不均一性は、極めて望ましくない。というのは、例えば音響出力圧及び中心周波数などの電気特性及び音響特性は、撓りhに依存し、故に、やはり不均一になるからである。この問題を解決するため、補償プレートの構成が、ウェハにわたって、より具体的にはその直径Dにわたって変化される。これを以下にて更に詳細に説明する。
【0041】
図7は、細分化されて複数のダイ110へと分離可能なウェハ100の模式的な断面図を示している。各ダイ110が、例えば
図5を参照して説明したような、特にはCMUTセルである容量性マイクロマシントランスデューサセル1のアレイを有する。理解されるように、単純化の目的で
図5及び後続図の各ダイには2つのセルのみを示しているが、各ダイは、原則として、如何なる好適数のセルを有していてもよい。例えば
図1を参照して説明したように、各セル1は、第1の電極11(単純化のために
図7には図示せず)を有する基板10(例えば、シリコンからなる)と、第2の電極14(単純化のために
図7には図示せず)を有するメンブレン13と、基板10とメンブレン13との間のキャビティ12とを有する。複数のダイ110の少なくとも一部の各セル1は、メンブレン13上に補償プレート15(単純化のために
図7には図示せず)を有する。各補償プレートは、例えば
図4又は
図5を参照して説明したように、メンブレン13の撓りhに影響を及ぼす構成を有する。補償プレート15の構成は、ウェハの直径Dにわたって変化する。斯くして、補償の量がウェハにわたって変化される。補償プレート15の構成は、複数のセル1のメンブレンの撓りが実質的に一様にされるように、ウェハの直径Dにわたって変化する。メンブレンの撓りは、必ずしもゼロである必要はないが、ウェハにわたって実質的に一様にされる。また、各ダイ110の複数のセル1の補償プレート15の構成は、実質的に一様であると仮定される。この仮定は、ウェハ100の全体サイズDと比較してダイ110のサイズが小さいことにより成り立つ。
【0042】
図4を参照して説明したことには、所与の補償プレートの形状に対し、メンブレンの撓りhに影響を及ぼすよう、補償プレートの大きさ及び厚さを使用することができる。上述のように、セルのメンブレンの撓りは、必ずしもゼロにされる必要はないが、メンブレンの撓りは、例えば、
図4aを参照して説明したように所与の形状に合わせて大きさ及び厚さを選定することによって、ウェハにわたって実質的に一様にされる。より一般的には、異なる補償効果を生み出すように補償プレート15の形状、大きさ及び/又は厚さを変化させ得ると云うことができる。故に、補償プレート15の形状、大きさ及び/又は厚さを用いて、補償が制御される。これらの形状、大きさ及び/又は厚さが、補償の量とともに補償の向き(又は符号)(上向き又は下向き)を決定する。従って、補償プレートの構成とは、補償プレートの形状、大きさ及び/又は厚さ、特には(所与の形状に対する)補償プレートの大きさ(すなわち、長さ又は寸法)及び/又は厚さを意味し得る。例えば、複数の補償プレートに共通の材料を使用することができる。というのは、複数の材料を用いての製造はより複雑になるからである。しかしながら、補償プレートの構成はまた、補償プレートの材料をも意味し得る。具体的には、材料は、ヤング率E、ポアソン比υ、及び熱膨張係数αを定める。これらの特性も、上記の式に関連して説明したように、応力又はメンブレンの撓りに影響を及ぼす。
【0043】
ここで、このようなウェハ100を製造するための対応する方法を説明する。このようなダイ110を製造する方法は、追加的に、ウェハ100からダイ110を分離する(最終)工程を有する。このようなウェハを製造する方法は、先ず、細分化されて複数のダイ110へと分離可能なウェハ100、特には、
図6に示したような不均一なメンブレン撓りを有するウェハを用意する工程を有する。この方法は更に、複数のダイ110のうちの少なくとも一部の各セル1のメンブレン13上に補償プレート15を設ける工程を有し、各補償プレート15は、メンブレン13の撓りhに影響を及ぼす構成を有し、補償プレート15の構成はウェハ100の直径Dにわたって変化される。必要に応じて、この方法は、補償プレート15を設ける前に、各ダイ110のセル1のメンブレン撓りhを求める決定工程を有し得る。斯くして、ウェハにわたってのメンブレン撓りのバラつきパターン又はバラつき分布を求めることができ、そして、このバラつきパターン又はバラつき分布に従って補償プレート15の構成を変化させることができる。この決定工程は、メンブレン撓りのバラつきが後続ウェハ100でも同じであると仮定することができるとき、複数ウェハの製造を始めるときの最初のウェハに対して一度だけ行われ得る。当然ながら、この決定工程を、単一のウェハの各々を製造する前に行うことも可能である。こうすることは、より多くの時間が製造に掛かるという代償の下で、より正確な補償を提供することになる。例えば、この決定工程は、ウェハにわたる補償量が十分であるかを決定することと、ウェハにわたる補償量が十分でないと決定された場合に補償量を調整することとを有することができる。ウェハにわたる補償量が十分であるかを決定することは、例えば、コラプス電圧の測定などの電気測定によって行われることができる。これは、ウェハにわたる補償量が十分あるいは良好であるかの検証又は検査と、改善が必要である場合の調整とを提供する。
【0044】
次いで、
図8から
図14を参照して、補償プレートの構成の変化の様々な例を説明する。
図8から
図14はそれぞれ異なる一実施形態を示しているが、理解されるように、これら異なる実施形態の特徴は、好適なように組み合わされたり入れ換えられたりすることができる。
【0045】
図8は、第1の実施形態に係るウェハの模式的な断面図を示している。この第1の、
図8の実施形態においては、補償プレート15の形状が、ウェハの直径Dにわたって変化している。故に、この実施形態における補償プレートの構成なる用語は、補償プレート15の形状を意味する。ウェハの中心(領域R1)のダイ110の補償プレート15は、ウェハの縁部(領域R2)にあるダイ110の補償プレート15とは異なる形状を有している。
図8に示したこの特定の実施形態において、中心ダイ(領域R1)はリング形状を有し、縁部ダイは、ディスクとも呼び得る(連続した)円形状を有している。故に、形状が円形とリング状との間で変化している。
【0046】
図8aは、メンブレン上の円形の補償プレートの例示的な上面図を示し、
図8bは、メンブレン上のリング状の補償プレートの例示的な上面図を示している。(連続した)円形の補償プレートは、メンブレンの中心軸Aを中心にして配置されている。斯くして、メンブレンの上向きの撓りを抑制することができる。また、リング状の補償プレートも、メンブレンの中心軸Aを中心にして配置されている。斯くして、メンブレンの下向きの撓りを抑制することができる。故に、この場合、補償プレートの形状が撓りの向きに影響を及ぼす。
【0047】
図9は、第2の実施形態に係るウェハ100の模式的な断面図を示している。この第2の、
図9の実施形態においては、補償プレート15の大きさd1、d2が、ウェハの直径Dにわたって変化している。故に、この実施形態における補償プレートの構成なる用語は、補償プレート15の大きさを意味する。ウェハの中心(領域R1)のダイ110の補償プレート15は第1の大きさd1を有し、ウェハの縁部(領域R2)にあるダイ110の補償プレート15は第2の大きさd2を有し、第1の大きさd1は第2の大きさd2より小さくされている。故に、大きさd1、d2がウェハ100の直径Dにわたって変化している。大きさをウェハの中心(第1の領域R1)から縁部(第2の領域R2)へと補償プレート15の増大させるとき、メンブレン撓りが抑制される。例えば、
図9の各補償プレート15が(連続した)円形状を有する場合、大きさd1、d2はプレートの直径に相当する。しかしながら、理解されるように、一般的には、セル1はその他の如何なる好適形状を有していてもよい。例えば、補償プレートは、
図11を参照して更に詳細に説明されるリング形状を有することができる。製造において、補償プレート15の大きさは、大きさ及び/又は形状を変化させた1つのリソグラフィマスクを用いることによって、具体的には、フォトレジストへの該リソグラフィマスクの結像及びパターニングによって、容易に変化されることができる。この場合、補償プレートを設けるための1つの追加リソグラフィ工程のみが必要とされる。例えば、リソグラフィには、ステッパ又はコンタクトプリンタの何れかを使用することができる。ステッパは、高分解能で一度に1つのダイを露光する周知の製造ツールである。ステッパは典型的に4x又は5xの縮写を使用する。コンタクトプリンタは、1x縮写を使用し、一回の露光でウェハ全体を露光する。これは、補償量のより大きな変化を可能にし得る。
【0048】
図10は、第3の実施形態に係るウェハの模式的な断面図を示している。この第3の、
図10の実施形態においては、補償プレート15の厚さt1、t2が、ウェハ100の直径Dにわたって変化している。故に、この実施形態における補償プレートの構成なる用語は、補償プレート15の厚さを意味する。ウェハの中心(領域R1)のダイの補償プレート15は第1の厚さt1を有し、ウェハの縁部(領域R2)にあるダイの補償プレートは第2の厚さt2を有し、第1の厚さt1は第2の厚さt2より小さくされている。
図10の実施形態においては、中心ダイの補償プレート15は単一の層15aのみを有するのに対し、縁部ダイの補償プレート15は第1の層15aと第2の層15bとを有している。故に、この実施形態においては、補償プレートの一部(ここでは、縁部ダイ(領域R2)の補償プレート)が、他の補償プレート(この場合、中心ダイ(領域R1)の補償プレート15)より多くのレイヤを有している。
図10には単一層と二層との比較が示されているが、理解されるように、厚さに変化が存在する限り、如何なる他の好適な層数が用いられてもよい。より厚い補償プレート(例えば、金属)ほど、補償の効果を増大させる。換言すれば、厚さを増大させると、補償の効果が増大される。製造において、補償プレート15の厚さt1、t2は、複数のダイのうちの少なくとも一部(例えば、
図10の領域R2内の縁部ダイ)の各セルの上に少なくとも2つの材料層を塗布/堆積すること(例えば、金属の堆積による)によって効果的に変化されることができる。故に、複数の補償プレート15のうちの一部(例えば、
図10の領域R2内の縁部ダイの補償プレート)が他の補償プレート(例えば、
図10の領域R1内の中心ダイの補償プレート)より多くのレイヤを有するように、第1の層15a及び第2の層15bが堆積され得る。この場合、補償プレートを設けるための複数の追加堆積工程が必要とされるが、達成され得る補償効果も非常に良好である。補償プレート15の厚さtは、故に、堆積パラメータである。この堆積パラメータは、複数のセルのメンブレン撓りが実質的に一様になるように選定され得る。
【0049】
図11は、第4の実施形態に係るウェハの模式的な断面図を示している。この第4の、
図11の実施形態においては、各補償プレート15が、プレート内径di1、di2を有するリング形状を有する。これらのプレート内径di1、di2が、ウェハ100の直径Dにわたって変化している。ウェハの中心(領域R1)のダイの補償プレート15は第1の内径di1を有し、ウェハの縁部(領域R2)にあるダイの補償プレートは第2の内径di2を有し、第1の内径di1は第2の内径di2より大きくされている。プレート内径を変化させるとき、補償の効果が増大される。
【0050】
図7から11の実施形態の各々において、ウェハ100のダイ110の全てが補償プレート15を有する。しかしながら、理解されるように、複数のダイ110のうちの一部のみが補償プレートを有し、他のダイは如何なる補償プレートも有しなくてもよい。これは、例えば、第5の実施形態に係るウェハ100の模式的な断面図を示す
図12に示される。この
図12の実施形態においては、ウェハ100の複数のダイ110のうちの一部が補償プレート15を有していない。ウェハの中心(領域R1)のダイは補償プレートを有しておらず、ウェハの縁部(領域R2)にあるダイは補償プレート15を有している。この実施形態においても、補償プレートの構成がウェハの直径Dにわたって変化しており、すなわち、補償プレートを有しない構成から、補償プレート15を有する構成へと変化している。
【0051】
図7から12の実施形態の各々において、補償プレートの構成は、ウェハ100の第1の領域R1からウェハ100の第2の領域R2へと階段状(ステップワイズ)に変化しており、第1の領域はウェハの中心であり、第2の領域はウェハの縁部である。
図7から12の実施形態の各々において、第1の領域R1及び第2の領域R2は各々、複数のダイ110を有している。理解されるように、各領域R1、R2は、唯一のダイを有していてもよいし、如何なる好適数のダイを有していてもよい。また、理解されるように、
図13を参照して説明するように、3つ以上の領域を設けることもできる。
【0052】
図13は、第6の実施形態に係るウェハ100の模式的な断面図を示している。この
図13の実施形態においては、補償プレート15の構成が、第1の領域R1から第2の領域R2へ、そして、第2の領域R2から第3の領域へ、階段状に変化している。ここでは、第1の領域R1はウェハの中心にあり、第2の領域R2はウェハの中ほどにあり、そして、第3の領域R3はウェハの縁部にある。十分な補償を提供することには3つ以下の領域で十分であり得る。しかしながら、一般的には、如何なる好適数の領域が設けられてもよい。
【0053】
図8から
図13の各々では、メンブレン撓りの特定のバラつきパターンを仮定している。それは、例えば、
図6を参照して説明されており、そこでは、(コラプス電圧を測定することによって決定される)メンブレン撓りがウェハの中心から縁部へとほぼ対称的に増大している。理解されるように、これらの例は単に例示目的でのものであり、具体的な事例又は用途に応じた好適な変更がそれらから容易に推測され得る。特に、ウェハにわたるメンブレン撓りのバラつきパターン又はバラつき分布がわかるときには、この知られたバラつきパターン又はバラつき分布に従って、補償プレートの構成を好適に変更することができる。
【0054】
図14は、更なる一実施形態に係るウェハ100の上面図を示している。具体的には、
図14は、構成の対称でない変化を示している。この
図14の実施形態において、補償プレート15の構成は、第1の領域R1から第2の領域R2、第3の領域R3、第4の領域R4へ、直径Dにわたって段階的(ステップワイズ)に変化している。このケースでは、これらの領域R1、R2、R3、R4は円対称ではない。
【0055】
以下、より十分な理解のため、非限定的な具体例を示す。領域R1内の補償プレートは、下方への撓りを低減するようにメンブレンが上方に撓むようにリング形状とし得る。領域R2内では、補償プレートが存在しないようにし得る。領域R3内の補償プレートは、上方への撓りを低減するようにメンブレンが下方に撓むように円形状とし得る。領域R4内の補償プレートも円形状とし得るが、撓り量を増大させるように少なくとも2つのレイヤを有したものとし得る。理解されるように、これは単なる恣意的な非限定的な一例であり、補償プレートの構成は、例えばコラプス電圧を測定することによって決定される、メンブレン撓りの所与のバラつきパターンに依存する。
【0056】
次いで、メンブレン撓りのバラつきの補償の効果を、
図15及び
図16を参照して説明する。
図15は、補償なしでの縁部ダイ及び中心ダイのCV曲線を示し、
図16は、補償ありでの縁部ダイ及び中心ダイのCV曲線を示している。
図15の測定では、ウェハ上に補償プレートが存在しないとした。故に、ここでは、補償なし又は補償前のウェハを用いた。
図16の測定では、ウェハの中心には補償プレートが存在しないとし、ウェハの縁部には200nm厚のアルミニウムディスクの形態の補償プレートが存在するとした。これらのアルミニウムディスクは、例えば
図4aを参照して説明したように、最適に選定された大きさ又は半径を有するものとした。
図15及び
図16の各々において、縁部ダイのCV曲線(電圧に対する静電容量のカーブ)は破線によって示され、中心ダイのCV曲線は実線によって示されている。
図15及び
図16の各々に、コラプス電圧Vc及びスナップバック電圧Vsが示されている。縁部ダイのコラプス電圧はVceによって指し示され、縁部ダイのスナップバック電圧はVseによって指し示されている。中心ダイのコラプス電圧はVccによって指し示され、中心ダイのスナップバック電圧はVscによって指し示されている。
図15において、メンブレン撓りのバラつきの補償なしでは、中心ダイのコラプス電圧Vccと縁部ダイのコラプス電圧Vceとの間の差200は、約25Vである。
図16において、メンブレン撓りのバラつきの補償ありでは、中心ダイのコラプス電圧Vccと縁部ダイのコラプス電圧Vceとの間の差300は、ほぼゼロ(0V)である。
【0057】
図面及び以上の記載にて本発明を詳細に図示して説明してきたが、これらの図示及び説明は、限定的なものではなく、例示的あるいは典型的なものとみなされるべきであり、本発明は、開示の実施形態に限定されるものではない。開示の実施形態へのその他の変形が、図面、本開示及び添付の請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解されて実現され得る。
【0058】
請求項において、用語“有する”はその他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞“a”又は“an”は複数であることを排除するものではない。単一の要素又はその他のユニットが、請求項に記載される複数のアイテムの機能を果たしてもよい。特定の複数の手段が相互に異なる従属項に記載されているという単なる事実は、それらの手段の組合せが有利に使用され得ないということを指し示すものではない。
【0059】
請求項中の如何なる参照符号も、範囲を限定するものとして解されるべきでない。