特許第6185991号(P6185991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185991セラミックスデバイス、及び圧電デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185991
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】セラミックスデバイス、及び圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/047 20060101AFI20170814BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20170814BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20170814BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20170814BHJP
   H01L 41/053 20060101ALI20170814BHJP
   H01L 41/293 20130101ALI20170814BHJP
   H01L 41/23 20130101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01L41/047
   H01L41/09
   H01L41/083
   H01L41/113
   H01L41/053
   H01L41/293
   H01L41/23
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-523983(P2015-523983)
(86)(22)【出願日】2014年6月16日
(86)【国際出願番号】JP2014065852
(87)【国際公開番号】WO2014208376
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-131242(P2013-131242)
(32)【優先日】2013年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】植谷 政之
(72)【発明者】
【氏名】小泉 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】増田 いづみ
(72)【発明者】
【氏名】賀來 健
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/145453(WO,A1)
【文献】 特開2006−237527(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/132661(WO,A1)
【文献】 特開2012−044149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/00−47
H02N 2/00
G11B 21/10
G11B 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス材料からなる部分を含む本体部と、
前記本体部の表面の少なくとも一部を覆うように前記本体部に設けられた外部電極と、
を備えた焼成体であるセラミックスデバイスであって、
前記外部電極は、
前記本体部の上下面の何れか一方又は両方の少なくとも一部を覆う表面電極と、
前記本体部の側面の少なくとも一部を覆い且つ前記表面電極と接続する側面電極と、
を備え、
前記側面電極の表面は、前記側面電極の材料のみで構成され、
前記表面電極の表面、又は、前記表面電極及び前記側面電極の接続部分の表面には、前記接続部分が延在する方向に沿って延在し且つ前記表面電極の厚さ方向に向けて突出する突出部が設けられ、
前記表面電極の表面における、前記突出部に対して前記接続部分から遠い側の領域には、導電性接合材との間のぬれ性が前記表面電極の材料より低いセラミックス材料の表面が露呈する複数の露呈部分が点在する、セラミックスデバイス。
【請求項2】
圧電材料からなる部分を含む本体部と、
前記本体部の表面の少なくとも一部を覆うように前記本体部に設けられた外部電極と、
を備えた焼成体である圧電デバイスであって、
前記本体部は、
前記圧電材料からなる少なくとも2つの圧電層と、
少なくとも1つの内部電極と、
が積層された積層体であり、
前記外部電極は、
前記積層体である本体部の上下面の何れか一方又は両方の少なくとも一部を覆う表面電極と、
前記積層体である本体部の側面の少なくとも一部を覆い且つ前記内部電極及び前記表面電極と接続する側面電極と、
を備え、
前記側面電極の表面は、前記側面電極の材料のみで構成され、
前記表面電極の表面、又は、前記表面電極及び前記側面電極の接続部分の表面には、前記接続部分が延在する方向に沿って延在し且つ前記表面電極の厚さ方向に向けて突出する突出部が設けられ、
前記表面電極の表面における、前記突出部に対して前記接続部分から遠い側の領域には、導電性接合材との間のぬれ性が前記表面電極の材料より低いセラミックス材料の表面が露呈する複数の露呈部分が点在する、圧電デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電デバイスにおいて、
前記突出部の突出高さは、0.5〜8μmである、圧電デバイス。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の圧電デバイスにおいて、
前記表面電極を前記表面電極の表面に垂直な方向からみたとき、前記表面電極における前記突出部に対して前記接続部分から遠い側の領域が占める総面積に対する、前記複数の露呈部分が占める総面積の割合は、10〜40%である、圧電デバイス。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4の何れか一項に記載の圧電デバイスにおいて、
前記表面電極を前記表面電極の表面に垂直な方向からみたとき、前記複数の露呈部分のそれぞれの等価直径の平均は、0.8〜5μmである、圧電デバイス。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5の何れか一項に記載の圧電デバイスにおいて、
前記露呈部分のセラミックス材料は、前記本体部に含まれる前記圧電材料と同じ組成を有する圧電材料である、圧電デバイス。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6の何れか一項に記載の圧電デバイスにおいて、
前記表面電極は、白金材料で構成され、
前記導電性接合材は、はんだ材料である、圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスデバイスに関し、特に、圧電デバイスに関する。圧電デバイスは、圧電/電歪デバイスとも称呼される。
【背景技術】
【0002】
この種の圧電デバイスの一例として、国際公開第2012/132661号パンフレットには、図22に示すように、本体部100と、外部電極200と、を備えた焼成体である圧電デバイスが記載されている。図22に示す圧電デバイスでは、本体部100は、圧電層110と内部電極120とが交互に積層された積層体である。外部電極200は、本体部100の上面の一部を覆う一対の表面電極210、210と、本体部100の対応する側の側面の少なくとも一部を覆い且つ対応する側の内部電極120及び表面電極210と接続する一対の側面電極220、220と、を備える。
【0003】
この種の圧電デバイスは、光学レンズの位置制御用素子(例えば、カメラ用オートフォーカスやズーム用の超音波モータ)や、磁気的情報等の読取り及び/又は書込み用素子の位置制御用素子(例えば、ハードディスクドライブの磁気ヘッド用のアクチュエータ)、或いは機械的振動を電気信号に変換するセンサ等として活発に開発されてきている。
【発明の概要】
【0004】
ところで、図22に示す圧電デバイスは、例えば、図23に示すように、はんだを利用して基板に組み付けられる場合がある。図23に示す例では、圧電デバイスの下面の両端部が、互いに離れて位置する一対の基板の向かい合う端部の上面にそれぞれ載置された状態で、圧電デバイスの一対の側面電極220、220と一対の基板の端部とが、はんだを利用して接合・固定されている。
【0005】
この場合、使用されるはんだの量が多すぎる等の理由によって、図24に白い矢印で示すように、はんだが側面電極220の上端面を乗り越えて、表面電極210の表面(上面)に侵入する事態が発生し得る。係る事態が発生すると、表面電極210の表面にはんだが付着することに起因して、圧電デバイスへの電圧印加時にて表面電極210の伸縮が制限され、圧電デバイス全体としての「電圧−変位特性」に悪影響を与える恐れがある。更には、表面電極210の表面にはんだが侵入する程度が過剰になると、一対の表面電極210、210の間の隙間にはんだが侵入し、一対の表面電極210、210が電気的に短絡する恐れもある。
【0006】
以上のように、はんだが側面電極の上端面を乗り越えて、表面電極の表面に侵入することは、圧電デバイスの「電圧−変位特性」に悪影響を与えることに繋がるので、好ましくない。本発明の目的は、はんだが側面電極の上端面を乗り越えて表面電極の表面に侵入し難いセラミックスデバイス(圧電デバイス)を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るセラミックスデバイス(圧電デバイス)の特徴は、前記側面電極の表面は、前記側面電極の材料のみで構成され(特徴1)、前記表面電極の表面、又は、前記表面電極及び前記側面電極の接続部分の表面には、前記接続部分が延在する方向に沿って延在し且つ前記表面電極の厚さ方向に向けて突出する突出部が設けられ(特徴2)、前記表面電極の表面における「前記突出部に対して前記接続部分から遠い側の領域」(以下、「内側領域」と呼ぶ)には、導電性接合材との間のぬれ性が前記表面電極の材料より低いセラミックス材料の表面が露呈する複数の露呈部分が点在すること(特徴3)、にある。
【0008】
ここにおいて、前記露呈部分のセラミックス材料は、前記本体部に含まれる前記圧電材料と同じ組成を有する圧電材料であることが好適である。また、前記表面電極(及び、側面電極)は、白金材料で構成され、前記導電性接合材は、はんだ材料であることが好ましい。また、前記「露呈部分」の表面は、前記表面電極の表面に対して、突出していても、窪んでいてもよい。また前記「露呈部分」の窪んでいる部分は、前記本体部に含まれる圧電材料が露呈している部分であっても良い。また、前記突出部の表面は、前記表面電極(又は、側面電極)の材料のみで構成されることが好適である。
【0009】
上記(特徴1)によれば、側面電極の表面が、導電性接合材(典型的には、はんだ)との間のぬれ性が比較的高い側面電極の材料(典型的には、白金)のみで構成されるので、導電性接合材が側面電極の表面にぬれ広がり易い。従って、例えば、上述のように、側面電極と基板とが導電性接合材を利用して接合・固定される際、導電性接合材と側面電極との間の密着性、及び接合性が高くなり、導電性接合材と基板との間の電気的接続に関する信頼性が高くなる。
【0010】
上記(特徴2)によれば、上述のように、側面電極と基板とが導電性接合材を利用して接合・固定される際、上述の突出部の存在によって、導電性接合材が側面電極の上端面を乗り越えて表面電極の表面(上面)に侵入する事態が発生し難くなる。
【0011】
上記(特徴3)によれば、仮に、導電性接合材が側面電極の上端面を乗り越え、更に上記突出部を乗り越えることによって、導電性接合材が表面電極の表面の「内側領域」に侵入したとしても、導電性接合材との間のぬれ性が低い前記「露呈部分」の存在によって、導電性接合材が「内側領域」においてぬれ広がる範囲の拡大が抑制され得る。この結果、圧電デバイスへの電圧印加時にて表面電極の伸縮が制限される程度が抑えられ、圧電デバイス全体としての「電圧−変位特性」に与えられる悪影響の程度を抑えることができる。
【0012】
前記突出部の突出高さは、0.5〜8μmであることが好適である。また、前記表面電極を前記表面電極の表面に垂直な方向からみたとき、前記表面電極における前記突出部に対して前記接続部分から遠い側の領域が占める総面積に対する、前記複数の露呈部分が占める総面積の割合は、10〜40%であることが好ましい。前記表面電極における前記突出部に対して前記接続部分から遠い側の領域が占める総面積に対する、前記複数の露呈部分における「前記表面電極の表面に対して窪み且つ前記本体部に含まれる圧電材料が露呈している領域」が占める総面積の割合は、0〜20%であることが好ましい。更には、前記表面電極を前記表面電極の表面に垂直な方向からみたとき、前記複数の露呈部分のそれぞれの等価直径の平均は、0.8〜5μmであることが好適である。これらの点については、後に詳述する。
【0013】
前記露呈部分は、表面電極の表面に固着したセラミックス粒子が露呈している部分であってもよい。ここにおいて、「固着」とは、表面電極の電極材料(の粒子)とセラミックス粒子とが直接又はガラスを介して接合している状態を指す。また、「セラミックス粒子が表面電極の表面に露呈する」とは、セラミックス粒子の少なくとも一部が表面電極の表面に露呈する状態を指す。更にいえば、表面電極の表面において電極材料(の粒子)に対してセラミックス粒子が突出して配置される、或いは、窪んで配置されることによって、電極材料(の粒子)とセラミックス粒子とで外部電極の表面に凹凸が形成される状態を指す。
【0014】
前記セラミックス粒子を前記表面電極の表面に固着させるため、以下の3つの手法が考えられる。
1.前記セラミックス粒子を含む電極材料のペーストを利用して前記表面電極の成形体を形成し、前記形成された成形体を焼成する。
2.前記セラミックス粒子を含まない電極材料のペーストを利用して前記表面電極の成形体を形成し、前記形成された成形体の表面に前記セラミックス粒子を散布し、前記セラミックス粒子が散布された成形体を焼成する。
3.前記セラミックス粒子を含まない電極材料のペーストを利用して前記表面電極の成形体を形成し、前記形成された成形体を焼成し、前記焼成によって形成された焼成体の表面にガラス接合法を利用して前記セラミックス材料を接合する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る圧電デバイスの斜視図である。
図2図1に示した圧電デバイスの2−2断面図である。
図3図2のZ1部の拡大図である。
図4図1に示した圧電デバイスの上面図である。
図5図2のZ2部の拡大図である。
図6】基材上に形成された大きな積層体を切断して同一工程で多数個の圧電デバイス対応部を取り出す際の切断の様子を示した図である。
図7】切断によって基材上に多数個の圧電デバイス対応部が取り出された状態を示した図である。
図8図1に示した圧電デバイスの製造過程を示す第1の図である。
図9図1に示した圧電デバイスの製造過程を示す第2の図である。
図10図1に示した圧電デバイスが、はんだを利用して基板に組み付けられた状態を示す図である。
図11図10に示した「基板に組み付けられた状態の圧電デバイス」の図2に対応する断面図である。
図12】はんだが、突出部を乗り越えて表面電極の「粒子P点在領域」に侵入する状態を示す、図11に対応する図である。
図13】本発明の実施形態の変形例に係る圧電デバイスの図4に対応する図である。
図14】本発明の実施形態の他の変形例に係る圧電デバイスの図4に対応する図である。
図15】突出部の高さと、はんだ侵入率と、の関係を示すグラフである。
図16】粒子Pが占める面積の割合と、はんだ通過率及び変位量低下率と、の関係を示すグラフである。
図17】粒子Pの平均等価直径と、はんだ通過率及び変位量低下率と、の関係を示すグラフである。
図18】本発明の実施形態の変形例に係る圧電デバイスの図3に対応する図である。
図19】本発明の実施形態の他の変形例に係る圧電デバイスの図2に対応する図である。
図20】本発明の実施形態の他の変形例に係る圧電デバイスの図2に対応する図である。
図21】本発明の実施形態の他の変形例に係る圧電デバイスの図2に対応する図である。
図22】従来の圧電デバイスの図1に対応する図である。
図23】従来の圧電デバイスが、はんだを利用して基板に組み付けられた状態を示す図である。
図24】はんだが、側面電極の上端面を乗り越えて表面電極の表面(上面)に侵入する状態を示す、図23に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明による圧電デバイスの実施形態について説明する。
【0017】
(構成)
図1、及び、図1の2−2断面図である図2に示すように、本実施形態に係る圧電デバイスは、焼成体であり、直方体状の本体部10と、本体部10の表面の少なくとも一部を覆うように本体部10に設けられた外部電極20と、を備える。
【0018】
本体部10は、圧電材料からなる複数(本例では6つ)の圧電層11と、複数(本例では5つ)の層状の内部電極12とを有し、最上層及び最下層として圧電層11が位置し且つ圧電層11と内部電極12とが交互に積層された積層体である。圧電層11と内部電極12の各層は互いに平行に積層されている。本体部10のサイズ(焼成後)は、例えば、幅(x軸方向)0.2〜10.0mm、奥行き(y軸方向)0.1〜10.0mm、高さ(z軸方向)0.01〜10.0mmである。各圧電層11(焼成後)の厚さ(z軸方向)は1.0〜100.0μmであり、各内部電極12(焼成後)の厚さ(z軸方向)は0.3〜5.0μmである。
【0019】
図2に示すように、外部電極20は、本体部10の上下面の一部を覆う表面電極21と、本体部10の側面の一部を覆う側面電極22とを備える。側面電極22は、内部電極12及び表面電極21と電気的に接続されている。より具体的には、(3つの)内部電極12A、表面電極21A、及び側面電極22A(以下、これらを総称して「第1電極群」と呼ぶ)が互いに電気的に接続され、(2つの)内部電極12B、表面電極21B、及び側面電極22B(以下、これらを総称して「第2電極群」と呼ぶ)が互いに電気的に接続されている。
【0020】
第1、第2電極群は、絶縁体である圧電層11を介して接続されることによって、互いに電気的に絶縁されている。換言すると、互いに電気的に接続された(3つの)内部電極12Aと、互いに電気的に接続された(2つの)内部電極12Bとは、櫛歯状の電極を構成している。表面電極21(焼成後)の厚さは0.5〜10.0μmであり、側面電極22(焼成後)の厚さは0.5〜10.0μmである。なお、本例では、内部電極が5層となっているが、内部電極の層の数は特に限定されない(ゼロであってもよい)。
【0021】
この圧電デバイスでは、第1、第2電極群の間に与える電位差を調整することによって圧電層11(従って、本体部10)の変形量が制御され得る。この原理を利用することによって、この圧電デバイスは、対象物の位置を制御するアクチュエータとして利用され得る。この対象物として、光学レンズ、磁気ヘッド、光ヘッド等が挙げられる。また、この圧電デバイスでは、圧電層11(従って、本体部10)の変形量に応じて第1、第2電極群の間に発生する電位差が変化する。この原理を利用することによって、この圧電デバイスは、超音波センサ、加速度センサ、角速度センサ、衝撃センサ、質量センサ等の各種センサとしても利用され得る。
【0022】
圧電層11の材料(圧電材料)としては、圧電セラミックス、電歪セラミックス、強誘電体セラミックス、或いは反強誘電体セラミックスが採用されることが好適である。具体的な材料としては、ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ナトリウムビスマス、ニオブ酸カリウムナトリウム、タンタル酸ストロンチウムビスマス等を単独であるいは混合物として含有するセラミックスが挙げられる。
【0023】
外部電極20(表面電極21と側面電極22)、及び内部電極12の材料(電極材料)としては、室温で固体であり、導電性に優れた金属で構成されていることが好ましく、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛等の金属単体、もしくはこれらの合金、もしくは絶縁材料と固溶しない材料が採用され得る。
【0024】
図2に示すように、表面電極21及び側面電極22の「接続部分」(本体部10の4角の部分)の表面には、表面電極21の厚さ方向(z軸方向)に向けて突出する突出部hがそれぞれ設けられている。各突出部hは、「接続部分」が延在する方向(y軸方向)に沿って延在している。本実施形態では、突出部hは、表面電極21及び側面電極22の材料と同じ材料で構成されている。突出部hの高さA(図2を参照)については後述する。
【0025】
図2のZ1部の拡大図である図3、及び、この圧電デバイスの上面図である図4に示すように、表面電極21の表面における「突出部hに対して幅方向(x軸方向)の内側の領域」(以下、「内側領域」と呼ぶ。図4を参照)には、複数のセラミックス粒子Pが、表面電極21の表面から突出して露呈するように点在している。これらのセラミックス粒子Pは、表面電極21の表面に固着している。図4に示すように、突出部hの表面には、セラミックス粒子Pが存在しない。
【0026】
本実施形態では、セラミックス粒子Pとして、前記圧電材料と同じ組成を有する圧電材料の粒子が使用されている。「固着」とは、表面電極21の電極材料の粒子とセラミックス粒子Pとが直接又はガラスを介して接合している状態を指す。また、「セラミックス粒子Pが表面電極21の表面に露呈する」とは、セラミックス粒子Pの少なくとも一部が表面電極21の表面にて(顕微鏡観察等によって)見える状態を指す。本実施形態では、表面電極21の「内側領域」の表面において、電極材料の粒子に対してセラミックス粒子Pが突出して配置されている。従って、電極材料の粒子とセラミックス粒子Pとによって、表面電極21の「内側領域」の表面に凹凸が形成されている。
【0027】
セラミックス粒子Pに対する「はんだ」のぬれ性は、表面電極21の材料に対する「はんだ」のぬれ性に対して低い。従って、表面電極21の「内側領域」の表面には、「はんだとの間のぬれ性が表面電極21の材料より低いセラミックス材料の表面が露呈する部分(以下、「露呈部分」と呼ぶ)が点在している、といえる。
【0028】
一方、図2のZ2部の拡大図である図5に示すように、側面電極22には、上記突出部hと同様、セラミックス粒子Pが配置されていない。従って、側面電極22の表面は、側面電極22の材料のみで構成されている、といえる。なお、側面電極22の表面が側面電極22の材料のみで構成されている限りにおいて、複数のセラミックス粒子Pが側面電極22の内部に埋設されていてもよい。
【0029】
(製造方法)
次に、上記圧電デバイスの製造方法について簡単に説明する。なお、外部電極20にセラミックス粒子Pを含ませる方法については後述する。以下、「焼成前」であることは、対応する部材の名称に「グリーン」を付し、或いは、対応する部材の符号の末尾に「g」を付すことによって示される。
【0030】
本例では、先ず、図6に示すように、平板状の基材上に、圧電デバイスに対応する部分(以下、「グリーン圧電デバイス対応部」と呼ぶ)が所定の間隔をおいてマトリクス状に複数個(3×7個)整列した状態で含まれる1枚の大きなグリーン積層体が形成される。この大きなグリーン積層体は、本体部10に対応するグリーン積層体部と、その上下面に形成された表面電極21に対応するグリーン電極膜と、を含む。
【0031】
本体部10に対応するグリーン積層体部は、圧電層11に対応するグリーン圧電シートと、内部電極12に対応するグリーン電極膜とが交互に積層されて形成される。グリーン圧電シートは、ドクターブレード法等の周知の手法の一つを利用して前記圧電材料を含むペーストを成形することによって形成される。グリーン圧電シート上へのグリーン電極膜の形成は、スクリーン印刷、スプレーコート、インクジェット等の周知の手法の一つを利用して前記電極材料を含むペーストを成形することによってなされる。グリーン圧電シートとグリーン電極膜との圧着性をより確実とするため、グリーン圧電シートとグリーン電極膜との間にグリーン接着層が介装されてもよい。この場合、グリーン圧電シート上へのグリーン接着層の形成は、塗付等の周知の手法の一つを利用してなされる。
【0032】
次いで、図6に示す切断線(2点鎖線を参照)に沿って切断加工、パンチ加工等の機械加工を施す。この結果、図7に示すように、基材上において、複数個(3×7個)のグリーン圧電デバイス対応部を同一工程で取り出すことができる。以下、説明の便宜上、取り出された複数のグリーン圧電デバイス対応部のうちの1つのみに着目して説明を続ける。
【0033】
図8は、取り出された1つのグリーン圧電デバイス対応部の図2に対応する断面を示す。図8に示すように、本例では、グリーン圧電デバイス対応部は、本体部10に対応するグリーン積層体10gと、グリーン積層体10gの上下面に形成された表面電極21に対応するグリーン電極膜21g、21gとから構成される。グリーン積層体10gは、最上層及び最下層として圧電シート11gが位置し且つ圧電シート11gと電極膜12gとが交互に積層された積層体である。
【0034】
次に、図9に示すように、グリーン圧電デバイス対応部の側面の所定箇所にそれぞれ、側面電極22に対応するグリーン電極膜22gが形成される。その際、グリーン積層体10gの4隅の部分に上述した突出部hがそれぞれ形成されるように、各グリーン電極膜22gが形成される。この形成は、スクリーン印刷、スプレーコート、インクジェット等の周知の手法の一つを利用して前記電極材料を含むペーストを成形することによってなされる。
【0035】
そして、図9に示したグリーン圧電デバイス対応部に対し、所定温度(例えば、900〜1200℃)で所定時間(例えば最高温度の保持時間が、0.5〜3時間)に亘って焼成が実行される。この結果、図1及び図2に示す圧電デバイス(焼成後)が得られる。
【0036】
なお、上述した例では、前記大きなグリーン積層体において電極膜21gが形成された状態で機械加工がなされた。この結果、図8に示すように、各グリーン圧電デバイス対応部が前記機械加工によって取り出された段階にて既に、同対応部には電極膜21gが形成されている。これに対し、前記大きなグリーン積層体において電極膜21gが形成されていない状態で機械加工がなされてもよい。この場合、各グリーン圧電デバイス対応部が前記機械加工によって取り出された後に、各グリーン圧電デバイス対応部に対して電極膜21gが形成され、その後、電極膜22gが形成され得る。また、各グリーン圧電デバイス対応部に対して電極膜22gが形成され、その後、電極膜21gが形成されてもよい。
【0037】
(表面電極21の内側領域にセラミックス粒子Pを固着させる方法)
次に、表面電極21の内側領域にセラミックス粒子Pを固着させる方法について説明する。第1、第2、及び、第3の方法について順に説明する。
【0038】
<第1の方法>
セラミックス粒子Pを含む電極材料のペーストを利用して表面電極21に対応するグリーン電極膜21gを形成する。形成されたグリーン電極膜21gを焼成することによってセラミックス粒子Pが表面電極21の内側領域の表面に固着される。
【0039】
<第2の方法>
セラミックス粒子Pを含まない電極材料のペーストを利用して表面電極21に対応するグリーン電極膜21gを形成する。形成されたグリーン電極膜21gの表面における「内側領域」に対応する部分にのみセラミックス粒子Pを均一に散布する。セラミックス粒子Pが散布されたグリーン電極膜21gを焼成することによって、セラミックス粒子Pが表面電極21の内側領域の表面に固着される。この方法の場合、電極材料の粒子とセラミックス粒子Pとの固着性を高めるため、セラミックス粒子Pの散布後においてセラミックス粒子Pが散布されたグリーン電極膜21gの表面の部分を加圧することが好ましい。
【0040】
<第3の方法>
セラミックス粒子Pを含まない電極材料のペーストを利用して表面電極21に対応するグリーン電極膜21gを形成する。形成されたグリーン電極膜21gを焼成する。焼成によって形成された表面電極21の表面における「内側領域」に対応する部分にのみガラス接合法を利用してセラミックス粒子Pを接合する。これにより、セラミックス粒子Pが表面電極21の内側領域の表面に固着される。
【0041】
(圧電デバイスの組み付けの一例)
以上、説明した本実施形態に係る圧電デバイスは、例えば、図10及び図11に示すように、はんだを利用して基板に組み付けられる。この例では、先ず、圧電デバイスの下面の両端部が、互いに離れて位置する一対の基板の向かい合う端部の上面(より具体的には、端部の上面に設けられた銅端子の上面)にそれぞれ載置される。次に、この状態で、圧電デバイスの一対の側面電極22A、22Bと一対の基板の端部とが、はんだを利用して接合・固定される。これにより、一対の基板に対する圧電デバイスの組み付けが完了する。
【0042】
このように一対の基板に対して組み付けられた圧電デバイスでは、第1、第2電極群の間に与える電位差を変更することによって、圧電層11(従って、本体部10)の変形量が変化する(図11に示す矢印を参照)。この結果、一対の基板間の距離(間隔)が変化する。この原理を利用して、この圧電デバイスは、光学レンズ等の対象物の位置を制御するアクチュエータとして利用され得る。或いは、このように一対の基板に対して組み付けられた圧電デバイスでは、一対の基板に対して基板間の距離(間隔)が変化する方向に加えられる力の大きさを変更することによって、圧電層11(従って、本体部10)の変形量が変化し(図11に示す矢印を参照)、その変形量に応じて第1、第2電極群の間に発生する電位差が変化する。この原理を利用して、この圧電デバイスは、質量センサ等の各種センサとしても利用され得る。
【0043】
(作用・効果)
次に、本実施形態に係る圧電デバイスは、図10及び図11に示すように、はんだを利用して基板に組み付けられる場合に、以下の述べる作用・効果を奏し得る。この場合、例えば、使用されるはんだの量が多すぎる等の理由によって、図12に白い矢印で示すように、はんだが側面電極22A、22Bの上端面を乗り越えて、表面電極21A、21Bの表面(上面)に侵入する事態が発生し得る。係る事態が発生すると、表面電極21A、21Bの表面にはんだが付着することに起因して、圧電デバイスへの電圧印加時にて表面電極21A、21Bの伸縮が制限され、圧電デバイス全体としての「電圧−変位特性」に悪影響を与える恐れがある。更には、表面電極21A、21Bの表面にはんだが侵入する程度が過剰になると、表面電極21A、21Bの間の隙間(図12に示す、絶縁領域を参照)にはんだが侵入し、表面電極21A、21Bが電気的に短絡する恐れもある。
【0044】
この点、本実施形態では、図12に示すように、表面電極21及び側面電極22の接続部分の表面に突出部hが設けられている。従って、側面電極22と基板とがはんだを利用して接合・固定される際、突出部hの存在によって、突出部hが存在しない場合と比較して、はんだが側面電極22の上端面を乗り越えて表面電極21の表面(上面)に侵入する事態が発生し難くなる。
【0045】
ただし、たとえ突出部hが設けられていても、はんだが突出部hを乗り越えて表面電極21の上記「内側領域」(図4を参照)の表面に侵入している場合も発生し得る。この点、本実施形態では、図4に示すように、表面電極21の「内側領域」の表面には、表面電極21の材料よりはんだとの間のぬれ性が低いセラミックス粒子Pが、表面電極21の表面から突出して露呈するように点在している(図12に示す、粒子P点在領域も参照)。従って、これらのセラミックス粒子Pの存在によって、はんだが「内側領域」においてぬれ広がる範囲の拡大が抑制され得る。この結果、圧電デバイス全体としての「電圧−変位特性」に与える悪影響の程度が抑制され得る。
【0046】
更には、本実施形態では、側面電極22の表面が、はんだとの間のぬれ性が比較的高い側面電極22の材料(典型的には、白金)のみで構成される。従って、はんだが側面電極22の表面にぬれ広がり易い。従って、上述のように、側面電極22と基板とがはんだを利用して接合・固定される際、はんだと側面電極22との間の密着性、及び接合性が高くなり、はんだと基板との間の電気的接続に関する信頼性が高くなる。
【0047】
本実施形態では、側面電極22及び突出部hを構成する材料(はんだとの間のぬれ性が比較的高い材料、典型的には白金)と圧電デバイス本体部10との焼成時における熱収縮特性を制御することによって、図13に示すように、圧電デバイスを上からみたときに、圧電デバイスの幅方向(x軸方向)の端に近づくにつれて側面電極22及び突出部hの奥行きの長さ(y軸方向の長さ)を大きくすることもできる。これにより、圧電デバイスを基板に組み付けた際において、圧電デバイスと基板との接触面積を増加することができる。この結果、圧電デバイスと基板との電気的接続部の機械的強度を大きくすることができる。
【0048】
また、図14に示すように、側面電極22における「表面が側面電極22の材料(典型的には、白金)のみで構成される部分」、並びに、突出部h(表面が側面電極22の材料(典型的には、白金)のみで構成される)を、圧電デバイスの奥行方向(y軸方向)の中央部のみに配置し、側面電極22における「複数のセラミックス粒子Pの表面が露呈する露呈部分が側面電極22の表面に点在する部分」を、圧電デバイスの奥行方向(y軸方向)の両端部に配置してもよい。これにより、圧電デバイスをはんだを用いて基板に組み付けた際、はんだが圧電素子の正面及び背面に回り込むことに起因する電気的な短絡の発生を抑制することが可能である。この場合、側面電極22における「表面が側面電極22の材料のみで構成される部分」、並びに、突出部h(表面が側面電極22の材料のみで構成される)は、単層で構成されても、セラミックス粒子を含む層を内部に含む複数層で構成されても良い。
【0049】
(突出部の突出高さ)
次に、上述した突出部hの突出高さA(図2を参照)の最適な範囲について考察するために行った実験Aについて説明する。この実験Aでは、上述した製造方法を利用して作製された圧電デバイスのサンプルであって、圧電層11の厚さが20.0μm、内部電極12の厚さが2.0μm、圧電層11の層数が10層で、外部電極20(表面電極21及び側面電極22)の厚さが5.0μm、全体のサイズが幅2.0mm、奥行き1.0mm、高さ0.2mmであり、焼成温度が1200℃のものが使用された。各数値は焼成後の値である。表面電極ペーストに含まれる電極材料(焼成前)の粒径は0.1〜1.0μmであり、圧電材料(焼成前)の粒径は0.01〜1.0μmであった。表面電極21(焼成後)に含まれる圧電材料の粒径は0.5〜7.0μmであった。
【0050】
突出部hは、図2等に示すように、表面電極21及び側面電極22の「接続部分」(本体部10の4角の部分)の表面において、「接続部分」が延在する方向(y軸方向)に沿って延在し且つ表面電極21の厚さ方向(z軸方向)に向けて突出するように設けられた。
【0051】
突出部hの高さAの調整は、側面電極22に対応する上述したグリーン電極膜22g(焼成前)が形成される際において(図9を参照)、突出部hに対応する部分の形状を調整することによってなされた。この実験Aでは、突出部hの高さAが異なるそれぞれの上記サンプルが、各高さAについて20個ずつ作製された。各サンプルが、図10及び図11に示すように、はんだを利用して基板に組み付けられた。その際、使用されるはんだの量が、種々の実験等を通して予め決定されている適正の範囲の上限の2倍の量に調整された。
【0052】
そして、各サンプルについて、はんだが突出部hを乗り越えて表面電極21の上記「内側領域」(図4を参照)の表面に侵入するか否かに基づく「はんだ侵入率」が評価された。「はんだ侵入率」とは、各高さAについて、「サンプルの総数」に対する「はんだが内側領域に侵入したものの個数」の割合を指す。
【0053】
図15から理解できるように、突出部hの高さAが0.5μm未満であると、はんだ侵入率がゼロより大きくなる。一方、突出部hの高さAが0.5μm以上であると、はんだ侵入率がゼロに維持される。以上より、はんだの内側領域への侵入を抑制する観点からは、突出部hの高さAが0.5μm以上であることが好ましい。他方、突出部hの高さAが過度に大きいと、圧電デバイスが全体として大型化する。従って、圧電デバイスの大型化の抑制の観点からは、突出部hの高さAが8μm以下であることが好適である。
【0054】
以上より、突出部hの高さAは、0.5〜8μmであることが好適である。突出部hの高さAが、0.5〜6μm、或いは、1.5〜5μmであれば、より好ましい。なお、突出部hを除く圧電デバイスの高さB(図2を参照)に対する高さAの割合(A/B)で表現すると、この割合(A/B)は、1〜20%であることが好適である。
【0055】
(内側領域における粒子Pの露呈部分が占める面積の割合)
次に、内側領域におけるセラミックス粒子Pの露呈部分が占める面積の割合の最適な範囲について考察するために行った実験Bについて説明する。より正確には、「前記露呈部分が占める面積の割合」とは、表面電極21を表面電極21の表面に垂直な方向(z軸方向)からみたとき、「表面電極21の内側領域が占める総面積」に対する「セラミックス粒子Pが露呈している前記露呈部分が占める総面積」の割合を指す。
【0056】
この実験Bでは、上記実験Aで作製した圧電デバイスのサンプルと同様の諸元を有するサンプルが作製された。突出部hは、上記実験Aと同様、表面電極21及び側面電極22の「接続部分」(本体部10の4角の部分)の表面に設けられた。突出部hの高さAは、0.5〜8μmの範囲で調整された。また、前記露呈部分の等価直径の平均は0.8〜5μmであった。
【0057】
「前記露呈部分が占める面積の割合」の調整は、表面電極21の表面に固着されるセラミックス粒子Pの粒径、及び、粒子数を調整することによってなされた。この実験Bでは、「前記露呈部分が占める面積の割合」が異なるそれぞれの上記サンプルが、各割合について20個ずつ作製された。各サンプルが、図10及び図11に示すように、はんだを利用して基板に組み付けられた。その際、はんだが突出部hを確実に乗り越えるように、使用されるはんだの量が、種々の実験等を通して予め決定されている適正の範囲の上限の2倍の量に調整された。
【0058】
そして、各サンプルについて、突出部hを乗り越えて表面電極21の「内側領域」(図4を参照)の表面に侵入したはんだが、内側領域における突出部hから0.1mmだけ離れた基準部位まで到達するか否かに基づく「はんだ通過率」が評価された。「はんだ通過率」とは、各面積割合について、「サンプルの総数」に対する「はんだが基準部位に到達したものの個数」の割合を指す。加えて、各サンプルについて、「変位量低下率」が評価された。「変位量低下率」とは、内側領域にセラミックス粒子Pが全く存在しない(即ち、前記面積割合がゼロである)基準サンプルについての基準電圧印加時の圧電デバイスの変位量(a)に対する、実験Bで作製された各サンプルについての基準電圧印加時の圧電デバイスの変位量(b)の低下率((a−b)/a)を指す。変位量が低下するのは、表面電極21内にセラミックス粒子が含まれる、又は、本体部10の表面が表面電極21の表面から窪んで露呈していると、圧電デバイスへの電圧印加時にて表面電極21の伸縮が制限されることに起因する。
【0059】
図16から理解できるように、「前記露呈部分が占める面積の割合」が10%未満である場合にはんだ通過率がゼロより大きくなり、同面積割合が10%以上である場合にはんだ通過率がゼロに維持される。一方、同面積割合が40%より大きい場合に変位量低下率がゼロより大きくなり、同面積割合が40%以下である場合に変位量低下率がゼロに維持される。以上より、はんだの内側領域でのぬれ広がりの抑制、並びに、「電圧−変位特性」に悪影響を与えることの抑制、の観点からは、「前記露呈部分が占める面積の割合」は、10〜40%であることが好適である。同面積割合が、10〜35%、或いは、20〜35%であれば、より好ましい。
【0060】
(内側領域における粒子Pの露呈部分の平均等価直径)
次に、内側領域におけるセラミックス粒子Pの露呈部分の等価直径の平均値についての最適な範囲について考察するために行った実験Cについて説明する。より正確には、前記平均等価直径とは、表面電極21を表面電極21の表面に垂直な方向(z軸方向)からみたときに得られる「表面電極21の内側領域に点在するセラミックス粒子Pの露呈部分のそれぞれの面積」についての等価直径の平均値、を指す。
【0061】
この実験Cでは、上記実験Bと同様、上記実験Aで作製した圧電デバイスのサンプルと同様の諸元を有するサンプルが作製された。突出部hは、上記実験Aと同様、表面電極21及び側面電極22の「接続部分」(本体部10の4角の部分)の表面に設けられた。突出部hの高さAは、0.5〜8μmの範囲で調整された。また、「前記露呈部分が占める面積の割合」は10〜40%であった。
【0062】
前記平均等価直径の調整は、表面電極21の表面に固着されるセラミックス粒子Pの粒径を調整することによってなされた。この実験Cでは、前記平均等価直径が異なるそれぞれの上記サンプルが、各直径について20個ずつ作製された。各サンプルが、図10及び図11に示すように、はんだを利用して基板に組み付けられた。その際、はんだが突出部hを確実に乗り越えるように、使用されるはんだの量が、種々の実験等を通して予め決定されている適正の範囲上限の2倍の量に調整された。そして、各サンプルについて、実験Bのときと同じ「はんだ通過率」、及び、「変位量低下率」が評価された。
【0063】
図17から理解できるように、前記平均等価直径が0.8μm未満である場合にはんだ通過率がゼロより大きくなり、同直径が0.8μm以上である場合にはんだ通過率がゼロに維持される。一方、前記平均等価直径が5μmより大きい場合に変位量低下率がゼロより大きくなり、同直径が5μm以下である場合に変位量低下率がゼロに維持される。以上より、はんだの内側領域でのぬれ広がりの抑制、並びに、「電圧−変位特性」に悪影響を与えることの抑制、の観点からは、前記平均等価直径は、0.8〜5μmであることが好適である。同直径が、0.8〜3μm、或いは、0.8〜2μmであれば、より好ましい。
【0064】
本発明は上記実施形態に限らず、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、図3及び図4に示すように、前記露呈部分が、複数のセラミックス粒子Pが表面電極21の表面から突出して露呈することによって形成されているが、図18に示すように、セラミックス材料(具体的には、圧電層11の材料)が表面電極21の表面から窪んで露呈することによって形成されてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、本体部10の4角のそれぞれにおいて、表面電極21及び側面電極22の「接続部分」に1つの突出部hが設けられているが、図19に示すように、本体部10の4角のそれぞれにおいて、表面電極21及び側面電極22の「接続部分」、及び、表面電極21にそれぞれ1つずつ突出部hが設けられていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、本体部10の4角のそれぞれにおいて、表面電極21及び側面電極22の「接続部分」に1つの突出部hが設けられているが、図20に示すように、本体部10の4角のそれぞれにおいて、表面電極21に1つの突出部hが設けられていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、圧電デバイスの上下面において、一対の表面電極21A、21Bがそれぞれ設けられているが、図21に示すように、圧電デバイスの上面には一方側にのみ表面電極21Aが設けられ、圧電デバイスの下面には他方側にのみ表面電極21Bが設けられていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、突出部hは、側面電極22(或いは、表面電極21)の材料で構成されているが、それ以外の材料(例えば、樹脂等)で構成されていてもよい。この場合、圧電デバイス全体の焼成が完了した後に突出部が設けられる。また、上記実施形態では、導電性接合材として「はんだ」が使用されているが、表面電極の材料との間のぬれ性よりセラミックス材料との間のぬれ性が低い限りにおいて、「はんだ」以外の導電性接合材が使用されてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、本体部10が、圧電層11と内部電極12が交互に積層された積層体であるが、本体部10が圧電材料のみからなる(内部電極を有さない)圧電体であってもよい。また、本体部10が圧電材料以外のセラミックス材料のみからなる(内部電極を有さない)セラミックス体であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、セラミックス粒子Pとして圧電材料の粒子が使用されているが、圧電材料以外の材料のセラミックス粒子が使用されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24