(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
剛性回旋性ジビニル架橋剤を含む重合性組成物と、重合性組成物から調製した高分子材料が記載されている。架橋剤は、スピロビ
スインダン(spirobisindane)型構造を有し、フリーラジカル重合反応をし得る。重合性組成物には、架橋モノマーである第1のモノマー、及びスチレン、1つ以上のアルキル基で置換されたスチレン、アルキル(メタ)アクリレート及びそれらの組み合わせから選択される第2のモノマー、が含まれる。高分子材料を調製する方法も記載されている。
【0013】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と互換可能に用いられ、1つ以上の記載される要素を意味する。
【0014】
用語「ハロ」は、ハロゲン原子のラジカルである一価の基を指す。ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードであり得る。
【0015】
用語「アルキル」は、アルカンのラジカルである一価の基を指す。アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有してよく、直鎖、分枝鎖、環状又はそれらの組み合わせであり得る。アルキルが直鎖である場合、1〜20個の炭素原子を有し得る。アルキルが分枝鎖又は環状である場合、3〜20個の炭素原子を有し得る。
【0016】
用語「アルコキシ」は、式−ORの一価の基を指し、式中、Rは、以上で定義したようなアルキルである。
【0017】
用語「アリール」とは、芳香族炭素環化合物のラジカルである一価の基を指す。アリール基は、少なくとも1つの芳香族炭素環を有し、芳香族炭素環に連結する、又は縮合している1〜5個の任意の環を有し得る。追加の環は、芳香族、脂肪族又はそれらの組み合わせであり得る。アリール基は、通常、5〜20個の炭素原子を有する。
【0018】
用語「アルカリール」は、少なくとも1つのアルキル基で置換されたアリール基を指す。アルカリール基は、6〜40個の炭素原子を含む。アルカリール基は、5〜20個の炭素原子を有するアリール基と、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基と、を含むことが多い。
【0019】
用語「アラルキル」は、少なくとも1つのアリール基で置換されたアルキル基を指す。アラルキル基は、6〜40個の炭素原子を含む。アラルキル基は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基と、5〜20個の炭素原子を有するアリール基と、を含むことが多い。
【0020】
用語「炭素環式基」は、脂肪族又は芳香族炭素環構造を指す。炭素環式基は、飽和、部分的に不飽和、又は不飽和であり得る。炭素環式基は、5〜20個の炭素原子を含むことが多い。
【0021】
用語「シリルオキシ」は、式−Si(R5)3の一価の基を指し、式中、各R5は、独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、又は5〜20個の炭素原子を有するアリール基である。
【0022】
用語「ポリマー」は、ホモポリマーのような1つのモノマーから調製される高分子材料、又はコポリマー、ターポリマー等のような2つ以上のモノマーから調製される高分子材料の両方を指す。同様に、用語「重合させる」とは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等であり得る高分子材料の製造プロセスを指す。
【0023】
第1の態様において、重合性組成物が提供される。重合性組成物は、a)モノマー混合物、及びb)フリーラジカル反応開始剤を含む。モノマー混合物には、i)式(I)の架橋剤である第1のモノマー、及び
【0024】
【化2】
ii)スチレン、1つ以上のアルキル基で置換されたスチレン、アルキル(メタ)アクリレート、又はその組み合わせである第2のモノマー、が含まれる。式(I)中、各R1は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキルである。各R2は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、シリルオキシである、又は同一の炭素原子と連結したR3と結合して環状アルキルを形成する、又は同一の炭素原子と連結したR3と結合して1つ以上の炭素環に縮合する環状アルキルを形成する、又はR3とR2及びR3の両方が連結する炭素原子と結合してカルボニル基を形成する。各R3は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、シリルオキシである、又は同一の炭素原子と連結したR2と結合して環状アルキルを形成する、又は同一の炭素原子と連結したR2と結合して1つ以上の炭素環に縮合する環状アルキルを形成する、又はR2とR2及びR3の両方が連結する炭素と結合して、カルボニル基を形成する、又は隣接炭素原子に連結したR4と結合して炭素−炭素結合を形成する。各R4は、独立して、水素である、又は隣接する炭素原子と連結したR3と結合して炭素−炭素結合を形成する。モノマー混合物中の式(I)の架橋剤の量は、第2のモノマーのモル数に基づいて最大25モルパーセントである。
【0025】
式(I)の架橋剤中の各R1は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキルである。好適なハロ基には、クロロ及びブロモが含まれるが、これらに限定されない。好適なアルキル基は、最大20個の炭素原子、最大10個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有することが多い。例えば、アルキル基は、1〜10個の炭素原子、3〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、3〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有し得る。好適なアリール基は、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有することが多い。多くの実施形態において、アリール基は、フェニルである。好適なアルカリール及びアラルキル基は、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有するアリール基と、最大10個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有するアルキル基と、を有することが多い。例示のアルカリール基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基で置換されたフェニルである。例示のアラルキル基は、フェニルで置換された1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0026】
式(I)の架橋剤中の各R2は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、シリルオキシである、又は同一の炭素原子と連結したR3と結合して環状アルキルを形成する、又は同一の炭素原子と連結したR3と結合して1つ以上の炭素環に縮合する環状アルキルを形成する、又はR3とR2及びR3の両方が連結する炭素原子と結合してカルボニル基を形成する。好適なアルキル及びアルコキシ基は、最大20個の炭素原子、最大10個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有することが多い。例えば、アルキル及びアルコキシ基は、1〜10個の炭素原子、3〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、3〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有し得る。好適なアリール基は、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有することが多い。多くの実施形態において、アリール基は、フェニルである。好適なアルカリール及びアラルキル基は、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有するアリール基と、最大10個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有するアルキル基と、を有することが多い。例示のアルカリール基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基で置換されたフェニルである。例示のアラルキル基は、フェニルで置換された、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。好適なシリルオキシ基は、式−Si(R5)3のものであり、式中、各R5は、独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、又は5〜20個の炭素原子を有するアリール基である。例示のR5基には、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有するフェニル及びアルキル基が含まれるが、これらに限定されない。R2及びR3の組み合わせによって形成する好適な環状アルキル基は、最大10個の炭素原子、最大8個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有し得る。多くの実施形態において、環状アルキル基は、3〜8個の炭素原子、又は3〜6個の炭素原子を有する。環状アルキル基は、任意で、1つ以上の炭素環に縮合可能である。各炭素環は、典型的に、最大10個の炭素原子、最大8個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有し、芳香族(すなわち、不飽和)、部分的に不飽和、又は飽和であり得る。縮合炭素環は、ベンゼン環であることが多い。1つ以上の縮合炭素環を有する例示の環状アルキルは、フルオレニル(すなわち、フルオレン(flourene)の一価ラジカル)である。
【0027】
式(I)の架橋剤中の各R3は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、シリルオキシである、又は同一の炭素原子と連結したR2と結合して環状アルキルを形成する、又は同一の炭素原子と連結したR2と結合して1つ以上の炭素環に縮合する環状アルキルを形成する、又はR2とR2及びR3の両方が連結する炭素と結合して、カルボニル基を形成する、又は隣接炭素原子に連結したR4と結合して炭素−炭素結合を形成する。好適なアルキル及びアルコキシ基は、最大20個の炭素原子、最大10個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有することが多い。例えば、アルキル及びアルコキシ基は、1〜10個の炭素原子、3〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、3〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有し得る。好適なアリール基は、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有することが多い。多くの実施形態において、アリール基は、フェニルである。好適なアルカリール及びアラルキル基は、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有するアリール基と、最大10個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有するアルキル基と、を有することが多い。例示のアルカリール基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基で置換されたフェニルである。例示のアラルキル基は、フェニルで置換された、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。好適なシリルオキシ基は、式−Si(R5)3のものであり、式中、各R5は、独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、又は5〜20個の炭素原子を有するアリール基である。例示のR5基には、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有するフェニル及びアルキル基が含まれるが、これらに限定されない。R2及びR3の組み合わせを通して形成する好適な環状アルキル基は、最大10個の炭素原子、最大8個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有し得る。多くの実施形態において、環状アルキル基は、3〜8個の炭素原子、又は3〜6個の炭素原子を有する。環状アルキル基は、任意で、1つ以上の炭素環に縮合し得る。各炭素環は、典型的に、最大10個の炭素原子、最大8個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有し、芳香族(すなわち、不飽和)、部分的不飽和、又は飽和であり得る。縮合した炭素環は、ベンゼン環であることが多い。1つ以上の縮合炭素環を有する例示の環状アルキルは、フルオレニル(すなわち、フルオレンの一価ラジカル)である。
【0028】
式(I)の架橋剤中の各R4は、独立して、水素であり、又は隣接炭素原子に連結したR3と結合して炭素−炭素結合を形成する。
【0029】
式(I)の架橋剤のいくつかの、より詳細な実施形態において、R1は、水素又はハロであり、R2は、1〜10個の炭素原子(例えば、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、1〜3個の炭素原子、又は1個の炭素原子)を有するアルキルであり、R3は、1〜10個の炭素原子(例えば、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、1〜3個の炭素原子、又は1個の炭素原子)を有するアルキルであり、R4は、水素である。式(I)の架橋剤の更に詳細な実施形態において、R1は、水素、R2は、メチル、R3は、メチル、R4は、水素であり、本モノマーは、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ
スインダン−6,6’−ジビニルである。
【0030】
式(I)の架橋剤は、任意の公知の方法を用いて調製可能である。例えば、R1及びR4が水素であり、R2及びR3がアルキルであるモノマーを、反応スキームAに示すように調製可能である。
【0032】
式(II)のビスフェノール化合物を、メタンスルホン酸(MSA)と反応させ、式(III)のスピロビ
スインダン−6,6’−ジオール化合物を生成する。スピロビ
スインダン−6,6’−ジオールを、ピリジンと、塩化メチレンのような溶媒との存在下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(TFMSA)と反応させて、式(IV)のスピロビ
スインダン−6,6’−ビストリフラート化合物を生成することが可能である。続いて、スピロビ
スインダン−6,6’−ビストリフラート化合物をスティルカップリング反応にかけて、式(V)のスピロビ
スインダン−6,6’−ジビニル化合物を生成可能である。すなわち、式(IV)の化合物を、重合性基を導入するために、ビニルトリブチルスズと反応させることができる。本合成手法に関する詳細は、更に、式(II)の化合物としてビスフェノールAから開始する、モノマー、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ
スインダン−6,6’−ジビニルの調製のための実施例の項にて記載されている。
【0033】
R2及びR3の両方が連結している炭素原子と、R2及びR3が結合し、カルボニル基を形成する式(I)の架橋剤を、反応スキームBに示すように調製可能である。
【0035】
ジオン(化合物(VI))の形成に関与する化学反応は、Org.Lett.,10,2641〜2643(2008)に記載されている。より詳細には、ジエチル−1,3−アセトンジカルボキシレートと、メトキシベンゼンとを、硫酸の存在下で反応させる。本反応には、加水分解、次に、ポリリン酸(PPA)によって仲介されるフリーデル・クラフツアシル化が続く。次に、ジオン(化合物(VI))をBBr
3と反応させて、メトキシ基をヒドロキシル基に変換する。次に、ヒドロキシル基を、ピリジンと塩化メチレンのような溶媒との存在下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(TFMSA)と反応させて、化合物(VII)中のトリフラート基を生成する。トリフラート基を、ビニルトリブチルスズと反応させて、化合物(VIII)中に重合性基を導入可能である。
【0036】
反応スキームBからのジオン(化合物(VI))を前駆体として使用して、グリニャール反応により、式(I)の種々の他の架橋剤を調製可能である。グリニャール試薬の適切な選択によって、本方法を、R2又はR3が、アルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキルである、式(I)の化合物の調製にて使用可能である。この型の反応は、反応スキームCにて、グリニャール試薬として臭化フェニルマグネシウムを用いて例示される。
【0038】
脱水ビ
スインダン(化合物(IX))が、硫酸水溶液での処理の後に形成される。化合物(IX)中のメトキシ基を、化合物(X)の形成をもたらす反応スキームB中のように、ビニル基に変換可能である。
【0039】
臭化ビフェニルマグネシウムのような、より複雑なグリニャール試薬もまた使用可能である。本反応は、スピロフルオレン基を導入して化合物(XI)を調製する反応スキームDにて示される。これは、反応スキームB及びCについて記載された同一の3つの反応を用いて、ジビニル化合物(XII)に変換可能である。
【0041】
反応スキームBからの化合物(VII)を使用して、R2又はR3がヒドロキシル基である、式(I)の化合物を調製可能である。これは、反応スキームEにて説明される。強塩基を、化合物(VII)と反応させて、化合物(XIII)を形成可能である。化合物(XIII)中のトリフラート基を、反応スキームAにて記載したようなスティルカップリング反応を用いて、ビニル基に変更して、化合物XIVを調製可能である。
【0043】
R2又はR3がアルコキシ又はシリルオキシである場合、強塩基を使用して、反応スキームE中のように、化合物(VII)を化合物(XIII)に変換可能である。次に、反応スキームFにて示すように、化合物(XIII)を化合物(R6)Xと反応させることができ、式中、Xは、ハロであり、R6は、式−Si(R5)
3のアルキル又はシリルであり、R5は、アルキル又はアリールである。生成物は、2つの基−OR6を有する化合物(XV)である。本化合物は、反応スキームAに関して記載したようなスティルカップリング反応を用いて、ジビニル化合物(XVI)に変換可能である。
【0045】
重合性組成物は、第2のモノマーの総モル数に基づいて、最大25モルパーセントの式(I)の架橋剤を含む(すなわち、式(I)のモルパーセント架橋剤は、[式(I)の架橋剤のモル数÷第2のモノマーのモル数]×100と等しい)。25モルパーセント超の式(I)の架橋剤が使用される場合、得られる高分子材料は、多くの用途に対して、架橋度が高くなり過ぎる場合もある。例えば、得られる高分子材料が、脆弱すぎる場合もある。いくつかの実施形態において、モノマー混合物は、最大20モルパーセント、最大15モルパーセント、最大10モルパーセント、又は最大5モルパーセントの、式(I)の架橋剤を含む。重合性組成物は、モノマー混合物中の第2のモノマーのモル数に基づいて、少なくとも1モルパーセントの式(I)の架橋剤を含むことが多い。1モルパーセント未満の式(I)の架橋剤を使用する場合、得られる高分子材料は、多くの用途に対して、あまりにも容易に変形し得る。モノマー混合物は、少なくとも2モルパーセント、少なくとも5モルパーセント、又は少なくとも10モルパーセントの式(I)の架橋剤を含むことが多い。いくつかの実施形態において、モノマー混合物は、1〜25モルパーセントの範囲内、1〜20モルパーセントの範囲内、1〜15モルパーセントの範囲内、1〜10モルパーセントの範囲内、2〜25モルパーセントの範囲内、2〜20モルパーセントの範囲内、2〜10モルパーセントの範囲内、5〜25モルパーセントの範囲内、5〜20モルパーセントの範囲内、5〜10モルパーセントの範囲内、10〜25モルパーセントの範囲内、又は10〜20モルパーセントの範囲内での量で、式(I)の架橋剤を含む。
【0046】
モノマー混合物中のモノマーの総重量に関して言及すると、重合性組成物は、最大60重量パーセントの式(I)の架橋剤を含むことが多い。例えば、重合性組成物は、最大50重量パーセント、最大40重量パーセント、最大30重量パーセント、又は最大20重量パーセントの、式(I)の架橋剤を含み得る。重合性組成物は、典型的に、少なくとも1重量パーセント、少なくとも2重量パーセント、少なくとも5重量パーセント、又は少なくとも10重量パーセントの式(I)の架橋剤を含む。
【0047】
式(I)の架橋剤に加えて、モノマー混合物は、単一エチレン不飽和基を有する第2のモノマーを含む。第2のモノマーは、通常、スチレン、1つ以上のアルキル基で置換されたスチレン、アルキル(メタ)アクリレート、又はこれらの組み合わせである。スチレンに対する置換基として使用可能な好適なアルキル基は、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を含むことが多い。アルキル基で置換されたスチレンの例としては、エチルスチレン及びtert−ブチルスチレンが挙げられるが、これらに限定されない。好適なアルキル(メタ)アクリレートは、典型的には、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を有する。アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロプル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。多くの実施形態において、アルキル(メタ)アクリレートは、アルキルメタクリレートである。
【0048】
重合性組成物は、モノマー混合物の総重量に基づいて、1〜60重量パーセントの式(I)の架橋剤、及び40〜99重量パーセントの第2のモノマーを含むことが多い。例えば、重合性組成物は、2〜60重量パーセントの式(I)の架橋剤と40〜98重量パーセントの第2のモノマー、5〜60重量パーセントの式(I)の架橋剤と40〜95重量パーセントの第2のモノマー、5〜50重量パーセントの式(I)の架橋剤と50〜95重量パーセントの第2のモノマー、5〜40重量パーセントの式(I)の架橋剤と60〜95重量パーセントの第2のモノマー、5〜30重量パーセントの式(I)の架橋剤と70〜95重量パーセントの第2のモノマー、又は5〜20重量パーセントの式(I)の架橋剤と80〜95重量パーセントの第2のモノマー、を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、式(I)のものではない追加の架橋剤を、モノマー混合物に加えることができる。好適な追加の架橋剤は、複数の(例えば、2〜4個の)エチレン不飽和基を有し、かつモノマー混合物中の式(I)の架橋剤及び第2のモノマーと混和可能であるものである。追加の架橋剤は、疎水性であるように選択されることが多い。好適な追加の架橋剤としては、ジビニルベンゼン、1つ以上のアルキル基で置換されたジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、1つ以上のアルキル基によって置換されたトリビニルベンゼン、及び2〜4個のメタクリロイル基を有する脂肪族(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。2つの(メタ)アクリロイル基を有する例示の脂肪族(メタ)アクリレートとしては、種々のアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート)と、種々のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びCognis Co.(Germany)製の商標BISOMER TM EP100DMAの下、市販されているもののような、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート)が挙げられるが、これらに限定されない。3個の(メタ)アクリロイル基を有する例示の脂肪族(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトール(pentaeritritol)トリ(メタ)アクリレート、Sartomer Co.(Exton,PA)製の商標CD501の下、市販されている材料のような、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。4個の(メタ)アクリロイル基を有する例示の脂肪族(メタ)アクリレートとしては、ジ−トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートと、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレートと、が挙げられるが、これらに限定されない。多くの実施形態において、(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基である。
【0050】
追加の架橋剤を、重合性組成物中、式(I)の架橋剤と組み合わせて使用する場合、架橋剤の総量は、最大25モルパーセントであり得るが、式(I)の架橋剤の量は、少なくとも1モルパーセントである。例えば、重合性組成物は、1〜24モルパーセントの式(I)の架橋剤と、1〜24モルパーセントの追加の架橋剤を含んでよい。典型的に、式(I)の架橋剤は、重合性組成物中の架橋剤の総モル数の少なくとも5パーセントである。例えば、式(I)の架橋剤は、重合性組成物中の架橋剤の総モル数の、少なくとも10パーセント、少なくとも20パーセント、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセント、少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、少なくとも80パーセント、少なくとも90パーセント、又は少なくとも95パーセントである。
【0051】
種々のモノマーに加えて、重合性組成物は、典型的に、フリーラジカル重合反応のための反応開始剤を含む。任意の好適なフリーラジカル反応開始剤を使用可能である。いくつかの実施形態において、フリーラジカル反応開始剤は、室温より上の温度で活性化可能な熱反応開始剤である。他の実施形態において、フリーラジカル反応開始剤は、酸化還元反応開始剤である。好適なフリーラジカル反応開始剤は、典型的に、重合性組成物中に含まれるモノマーと混和可能であるように選択される。フリーラジカル反応開始剤は、典型的に、0.05〜10重量パーセントの範囲内、0.05〜5重量パーセントの範囲内、0.05〜2重量パーセントの範囲内、0.05〜1重量パーセントの範囲内、0.1〜5重量パーセントの範囲内、0.2〜5重量パーセントの範囲内、0.5〜5重量パーセントの範囲内、0.1〜2重量パーセントの範囲内、又は0.1〜1重量パーセントの範囲内の量で存在する。重量パーセントは、重合性組成物中のモノマーの総重量に基づく。反応開始剤の型及び量の両方が、重合速度に影響を与え得る。
【0052】
好適な熱反応開始剤としては、有機ペルオキシドとアゾ化合物が挙げられる。例示のアゾ化合物としては、VAZO 64(AIBNと称することが多い、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))、及びVAZO 52(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル))のような、E.I.du Pont de Nemours Co.(Wilmington,DE)製の商標VAZOの下、市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。他のアゾ化合物は、V−601(ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート))、V−65(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))、及びV−59(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))のように、Wako Chemicals USA,Inc.(Richmond,VA)から市販されている。有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル(BPO)のようなビス(1−オキソアリール)ペルオキシド、過酸化ラウロイルのようなビス(1−オキソアルキル)ペルオキシド、及びジクミルペルオキシド又はジ−tert−ブチルペルオキシドのようなジアルキルペルオキシド、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。反応開始剤を活性化するために必要な温度は、25℃〜160℃、30℃〜160℃、又は40℃〜160℃の範囲内であることが多い。
【0053】
好適な酸化還元反応開始剤としては、アリールスルホン酸塩、トリアリールスルホニウム塩、又は酸化状態の金属と組み合わせたN,N−ジアルキルアニリン(例えば、N,N−ジメチルアニリン)、ペルオキシド又は過硫酸塩が挙げられる。特定のアリールスルホン酸塩としては、テトラブチルアンモニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィナート、テトラブチルアンモニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナート、及びテトラブチルアンモニウム3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィナートのような、テトラアルキルアンモニウムアリールスルフィナートが挙げられる。特定のトリアリールスルホニウム塩には、トリフェニルスルホニウムカチオンとのものと、PF
6−、AsF
6−、及びSbF
6−から選択されるアニオンとのものと、が含まれる。好適な金属イオンとしては、例えば、第III群金属、遷移金属及びランタニド金属のイオンが挙げられる。特定の金属イオンとしては、Fe(III)、Co(III)、Ag(I)、Ag(II)、Cu(II)、Ce(III)、Al(III)、Mo(VI)、及びZn(II)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が挙げられる。好適な過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸テトラアルキルアンモニウム(例えば、過硫酸テトラブチルアンモニウム)等が挙げられる。
【0054】
また他の態様において、架橋高分子材料を調製する方法が提供される。本方法には、モノマー混合物、フリーラジカル反応開始剤、及び任意の有機溶媒を含む、重合性組成物を調製する工程が含まれる。本方法には、更に、重合性組成物を、フリーラジカル重合にかけることが含まれる。重合は、バルク重合方法、溶液重合方法、懸濁重合方法、又は乳化重合方法のような、任意の公知の重合方法を用いて進めることができる。
【0055】
バルク重合方法にて、重合性組成物中に、有機溶媒は、ほとんど、又は全く含まれない。溶液重合方法にて、モノマー混合物中の種々のモノマーが、混和性有機溶媒中に溶解する。好適な有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸アミル(酢酸n−フェニル(penyl))、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、及びメチルエチルケトンが挙げられるが、これらに限定されない。任意の好適な固体パーセント(percent solids)を、重合性組成物中で使用可能である。固体パーセントが低すぎる場合、重合生成物から、より多くの溶媒を除去する必要がある。更に、固体パーセントが低くなると、重合の速度に悪影響を及ぼし得る。一方、固体パーセントが高すぎる場合、重合性組成物は、許容出来ないほど高い粘度を有し得る。固体パーセントは、重合性組成物の総重量に基づいて、0.5〜50重量パーセント、1〜40重量パーセント、1〜30重量パーセント、1〜20重量パーセント、1〜15重量パーセント、1〜10重量パーセント、1〜6重量パーセント、又は2〜6重量パーセントの範囲内であることが多い。
【0056】
重合性組成物の固体パーセントに加えて、重合の速度は、重合温度、反応開始剤及び反応開始剤の量の選択によって制御可能である。重合の速度は、典型的に、温度を上げることによって、また、より大量の反応開始剤の添加によって速くなる。
【0057】
バルク重合方法又は溶液重合方法を用いて調製した高分子材料は、全ての残留モノマーを除去するための洗浄に対して容易に粉々になり得るモノリスであることが多い。洗浄された生成物を乾燥して、粉末を形成することができる。ポリマー材料は、また、高温にて後硬化可能である。高温の後硬化は、反応混合物中の重合性基の変換の度合いを上げる助けとなり得る。高温の後硬化は、高分子材料のガラス転移温度を上げることが可能であり、高分子材料の高温での変形に対する抵抗を大きくすることが可能であり、又は両方可能である。後硬化温度は、100℃超、130℃超、又は150℃超であってよい。
【0058】
あるいは、懸濁重合方法を用いて、架橋高分子材料を形成可能である。この型の重合方法において、モノマー混合物及びフリーラジカル反応開始剤を含む有機相を調製する。モノマーと混和可能である任意の有機溶媒もまた、有機相の一部であり得る。有機相を、水及び懸濁化剤を含む水相中で懸濁させる。すなわち、重合性組成物は、有機相と分離水相の両方を含む。重合性組成物は、典型的に、十分撹拌して、これにより、有機相の液滴が、水相内で形成される。重合が進むにしたがって、高分子ネットワークが、懸濁された液滴内で拡大し、高分子ビーズの形成をもたらす。
【0059】
懸濁重合方法において、有機相組成物は、通常、バルク及び溶液重合方法に関して、上記の同一の成分を含む。同一モルパーセントの上記架橋剤モノマーが、有機相に好適である。重合性組成物中で使用するための、同一量の上記フリーラジカル反応開始剤が、有機相に好適である。
【0060】
上記バルク重合方法と同様に、懸濁重合方法のための有機相は、有機溶媒を含まないことが多い。フリーラジカル反応開始剤と架橋剤は、典型的に、第2のモノマー中に直接溶解する。有機溶媒が存在する場合、有機相の固体パーセントは、有機相の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも90重量パーセント、少なくとも95重量パーセント、又は少なくとも98重量パーセントであることが多い。
【0061】
有機相を、水相中で懸濁する。水相の有機相に対する体積比は、典型的には、1:1を越える。すなわち、水相の体積は、有機相の体積を超える。水相:有機相の体積比は、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、又は少なくとも5:1であることが多い。水相は、有機相液滴の懸濁液のための不活性媒体として機能することに加えて、重合反応の間に発生した熱を放散する。
【0062】
懸濁重合方法のための水相には、有機相液滴の形成を促進するために、懸濁化剤が含まれる。懸濁化剤は、水相と有機相との間の界面張力を改変する。更に、懸濁化剤は、有機相液滴の立体安定化をもたらす。この立体安定化は、重合プロセスの間の凝集粒子の形成を最小化又は防止する傾向がある。
【0063】
懸濁化剤は、セルロースポリマー(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシブチルメチルセルロース)、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、部分的に加水分解したポリ(ビニルアルコール)、(メタ)アクリレートポリマー(例えば、ポリ(メタクリル酸)、ナトリウムポリ(メタクリル酸)、及びエチレン無水マレイン酸コポリマーのような、非イオン性界面活性剤であることが多い。他の好適な懸濁化剤には、ポリ(スチレンスルホネート)(例えば、ナトリウムポリ(スチレンスルホネート))、タルク、ヒドロキシアパタイト、硫酸バリウム、カオリン、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、及び水酸化アルミニウムが含まれる。
【0064】
水相中の懸濁化剤の量は、少なくとも0.05重量パーセント、少なくとも0.1重量パーセント、少なくとも0.2重量パーセント、少なくとも0.5重量パーセントであることが多い。懸濁化剤の量は、高分子ビーズの大きさに影響を与え得る(すなわち、より大量の懸濁化剤の利用が、より小さな高分子ビーズの形成をもたらすことが多い)。いくつかの実施形態において、水相は、0.05〜10重量パーセントの懸濁化剤を含む。例えば、水相は、0.05〜5重量パーセントの範囲、0.1〜10重量パーセントの範囲、0.1〜5重量パーセントの範囲、0.1〜3重量パーセントの範囲、0.5〜5重量パーセントの範囲の量の懸濁化剤を含み得る。重量パーセントは、水相の総重量に基づく。
【0065】
高分子ビーズの大きさは、有機相液滴の大きさによって、かなりの程度まで決まる。液滴の大きさは、撹拌の速度、温度、懸濁化剤の選択、及び懸濁化剤の量等の変数によって影響を受け得る。撹拌の速度、懸濁化剤の型、及び懸濁化剤の量は、得られる粒子の凝集又は凝塊を制御するために様々であり得ることが多い。一般的に、凝集が無いことが好ましい。いくつかの実施形態において、水相の密度は、有機相とほぼ同一であるように選択してもよい。これらの密度をほぼ一致させることが、より球状の粒子、並びに、より均一な大きさの粒子の形成をもたらす傾向にある。
【0066】
懸濁重合方法を用いて調製した粒子(例えば、ビーズ)は、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも200マイクロメートル、又は少なくとも300マイクロメートルの平均直径を有することが多い。例えば、平均直径は、50〜5000マイクロメートルの範囲内、100〜3000マイクロメートルの範囲内、100〜2000マイクロメートルの範囲内、200〜20000マイクロメートルの範囲内、500〜2000マイクロメートルの範囲内、又は300〜1000マイクロメートルの範囲内であることが多い。
【0067】
式(I)の架橋剤を用いて調製された架橋高分子材料は、同等の量のジビニルベンゼン(すなわち、架橋剤の第2のモノマーに対する同一モル比)を用いて調製した架橋高分子材料に対してよりも、高いガラス転移温度を有することが多い。ガラス転移温度は、モノマー混合物中に含まれる架橋剤の量によって、約1℃〜約25℃高い範囲であることが多い。
【0068】
更に、式(I)の架橋剤を用いて調製された架橋高分子材料は、典型的に、同等の量のジビニルベンゼン(すなわち、架橋剤の第2のモノマーに対する同一モル比)を用いて調製した架橋高分子材料よりも、より熱的に安定している。熱重量分析を用いて分析したときに、有意な重量損失に対する開始温度における差は、モノマー混合物中に含まれる架橋剤の量にかかわらず、約40℃〜約50℃高い範囲であることが多い。
【0069】
式(I)の架橋剤を用いて調製された、架橋高分子材料は、同等の量のジビニルベンゼン(すなわち、架橋剤の第2のモノマーに対する同一モル比)を用いて調製した、架橋高分子材料と比較して、特定の温度範囲(例えば、高分子材料に対するガラス転移温度近くの温度)内での所定の力の下、圧縮が少ないことが多い。すなわち、式(I)の架橋剤を用いて調製した架橋高分子材料は、より高い圧縮抵抗を有する材料が有利である用途に大変好適である。
【0070】
1つの例示的利用において、架橋高分子材料は、サイズ排除樹脂として機能することができる。サイズ排除樹脂は、典型的に、クロマトグラフカラム内に配置される。溶液中の分子は、溶液をクロマトグラフカラムに通すことによって、分子径及び/又は分子量に基づいて分離可能である。架橋高分子材料は、このようなクロマトグラフカラム中で典型的に遭遇する圧力に抵抗可能であり、ジビニルベンゼン架橋高分子材料よりも変形又は圧縮が少ない。
【0071】
他の例示的利用において、架橋高分子材料は、プロパント粒子として使用可能である。架橋高分子材料は、種々の地下にある層からのガス及石油の採取において典型的に遭遇する温度及び圧力に適合する。更に、架橋高分子材料は、効果的なプロパント粒子として機能するために、変形及び亀裂に対する十分な抵抗を有する。
【0072】
重合性組成物、重合性組成物から形成された高分子材料、又は重合性組成物から高分子材料を製造する方法である種々のアイテムが、提供される。
【0073】
アイテム1は、重合性組成物である。重合性組成物は、a)モノマー混合物、及びb)フリーラジカル反応開始剤を含む。モノマー混合物は、i)式(I)の架橋剤である第1のモノマー、及び
【0074】
【化9】
ii)スチレン、1つ以上のアルキル基で置換されたスチレン、アルキル(メタ)アクリレート、又はそれらの組み合わせである第2のモノマー、を含む。式(I)において、各R1は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキルである。各R2は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、シリルオキシである、又は同一の炭素原子と連結したR3と結合して環状アルキルを形成する、又は同一の炭素原子と連結したR3と結合して1つ以上の炭素環に縮合する環状アルキルを形成する、又はR3とR2及びR3の両方が連結する炭素原子と結合してカルボニル基を形成する。各R3は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、シリルオキシである、又は同一の炭素原子と連結したR2と結合して環状アルキルを形成する、又は同一の炭素原子と連結したR2と結合して1つ以上の炭素環に縮合する環状アルキルを形成する、又はR2とR2及びR3の両方が連結する炭素と結合して、カルボニル基を形成する、又は隣接炭素原子に連結したR4と結合して炭素−炭素結合を形成する。各R4は、独立して、水素である、又は隣接する炭素原子と連結したR3と結合して炭素−炭素結合を形成する。モノマー混合物中の式(I)の架橋剤の量は、第2のモノマーのモル数に基づいて最大25モルパーセントである。
【0075】
アイテム2は、アイテム1の重合性組成物であり、第1のモノマーの各R1は、水素又はハロである。
【0076】
アイテム3は、アイテム1又は2の重合性組成物であり、第1のモノマーの各R2と各R3は、アルキルである。
【0077】
アイテム4は、アイテム1〜3のいずれか1つの重合性組成物であり、第1のモノマーのR4は、水素である。
【0078】
アイテム5は、アイテム1〜4のいずれか1つの重合性組成物であり、第1のモノマーは、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ
スインダン−6,6’−ジビニルである。
【0079】
アイテム6は、アイテム1〜5のいずれか1つの重合性組成物であり、モノマー混合物は、1〜25モルパーセントの式(I)の第1のモノマーを含む。
【0080】
アイテム7は、アイテム1〜6のいずれか1つの重合性組成物であり、重合性組成物は、(1)モノマー混合物及びフリーラジカル反応開始剤を含む有機相と、(2)水及び懸濁化剤を含む水相とを含み、有機相が、水相内で液滴として懸濁されている。
【0081】
アイテム8は、アイテム1〜7のいずれか1つの重合性組成物であり、重合性組成物は、更に、式(I)のものではない追加の架橋剤を含む。
【0082】
アイテム9は、重合性組成物の重合生成物を含む高分子材料である。重合性組成物は、a)モノマー混合物、及びb)フリーラジカル反応開始剤を含む。モノマー混合物は、式(I)の架橋剤である第1のモノマー、及び
【0083】
【化10】
ii)スチレン、1つ以上のアルキル基で置換されたスチレン、アルキル(メタ)アクリレート、又はその組み合わせである第2のモノマー、を含む。式(I)において、各R1は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキルである。各R2は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、シリルオキシである、又は同一の炭素原子と連結したR3と結合して環状アルキルを形成する、又は同一の炭素原子と連結したR3と結合して1つ以上の炭素環に縮合する環状アルキルを形成する、又はR3並びにR2及びR3の両方が連結する炭素原子と結合してカルボニル基を形成する。各R3は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、シリルオキシである、又は同一の炭素原子と連結したR2と結合して環状アルキルを形成する、又は同一の炭素原子と連結したR2と結合して1つ以上の炭素環に縮合する環状アルキルを形成する、又はR2並びにR2及びR3の両方が連結する炭素と結合して、カルボニル基を形成する、又は隣接炭素原子に連結したR4と結合して炭素−炭素結合を形成する。各R4は、独立して、水素である、又は隣接する炭素原子と連結したR3と結合して炭素−炭素結合を形成する。モノマー混合物中の式(I)の架橋剤の量は、第2のモノマーのモル数に基づいて最大25モルパーセントである。
【0084】
アイテム10は、アイテム9のポリマーであり、モノマー混合物は、1〜25モルパーセントの、式(I)の第1のモノマーを含む。
【0085】
アイテム11は、アイテム9又は10のポリマーであり、ポリマーは、粒子又はビーズの形態である。
【0086】
アイテム12は、アイテム9〜11のいずれか1つのポリマーであり、重合性組成物は、更に、式(I)のものではない架橋剤を含む。
【0087】
アイテム13は、架橋高分子材料を調製する方法である。本方法には、重合性組成物を調製する工程が含まれる。重合性組成物は、a)モノマー混合物、及びb)フリーラジカル反応開始剤を含む。モノマー混合物は、i)式(I)の架橋剤である第1のモノマー、及び
【0088】
【化11】
ii)スチレン、1つ以上のアルキル基で置換されたスチレン、アルキル(メタ)アクリレート、又はその組み合わせである第2のモノマー、を含む。式(I)において、各R1は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキルである。各R2は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、シリルオキシである、又は同一の炭素原子と連結したR3と結合して環状アルキルを形成する、又は同一の炭素原子と連結したR3と結合して1つ以上の炭素環に縮合する環状アルキルを形成する、又はR3とR2及びR3の両方が連結する炭素原子と結合してカルボニル基を形成する。各R3は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アリール、アルカリール、アラルキル、ヒドロキシル、シリルオキシである、又は同一の炭素原子と連結したR2と結合して環状アルキルを形成する、又は同一の炭素原子と連結したR2と結合して1つ以上の炭素環に縮合する環状アルキルを形成する、又はR2とR2及びR3の両方が連結する炭素と結合して、カルボニル基を形成する、又は隣接炭素原子に連結したR4と結合して炭素−炭素結合を形成する。各R4は、独立して、水素である、又は隣接する炭素原子と連結したR3と結合して炭素−炭素結合を形成する。モノマー混合物中の式(I)の架橋剤の量は、第2のモノマーのモル数に基づいて最大25モルパーセントである。本方法は、更に、重合性組成物を、フリーラジカル重合にかけて、架橋高分子材料を形成する工程を含む。
【0089】
アイテム14は、アイテム13の方法であり、重合性組成物が(1)モノマー混合物、及びフリーラジカル反応を含む有機相と、(2)水及び懸濁化剤を含む水相とを含み、有機相が、水相内で液滴として懸濁されている。
【0090】
アイテム15は、アイテム13又は14の方法であり、方法は、更に、架橋度を上げるように、架橋高分子材料を加熱することを含む。
【実施例】
【0091】
【表1】
【0092】
高解像度熱重量分析(TGA)
TGAを用いて分析した試料を、先に計量した(tared)プラチナTGA試料パン上に試料を載せることによって調製した。試料を、TA Instruments製のModel Q5000IR Hi−Res Thermogravimetric Analyzer(TGA)を用いて分析した。20℃/分の直線加熱速度を、1.0の高解像度設定にて適用した。これらの条件の下、重量損失が検出されるまで器具が加熱し、重量損失が消えるまで温度が安定し、そして、再び加熱を開始する。試料を、窒素大気下、5℃〜800℃の範囲の加熱プロファイルにかけた。各試料について報告された値は、観察された有意な重量損失温度の開始の微分重量シグナルである。
【0093】
変調示差走査熱量測定(MDSC)
試料を、それぞれ、分析の前1時間、200℃にて加熱した。個々の試料を、重量測定し、TA Instruments製のT
ゼロアルミニウムパン内に載せることによって調製した。試料を、TA Instruments製のModel Q2000(#130,Cell RC−02499) MOUDLATED Differential Scanning Calorimeterを用いて分析した。各試料の分析のために、以下の方法を用いた。1)30.00℃で平衡化、2)5.00分間の等温、3)データ保存、4)60秒ごとの±1.00℃調節、5)サンプリング間隔−1秒ごと1点、6)5.00℃/分で195.00℃まで上げる、8)1.00分間等温、9)5.00℃/分で30.00℃まで上げる、9)5.00分間等温、10)5.00℃/分で195.00℃まで上げる。各試料について報告された値は、第1の加熱サイクルからの中点である。
【0094】
モルパーセントの計算
架橋剤のモルパーセントは、第2のモノマーのモル数で架橋剤のモル数を割り、商に100をかけることで計算する。
【0095】
調製例1:3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ
スインダン−6,6’−ジオール(SBI−ジオール)の合成
5.0L丸底フラスコ中、1000.69グラム(4.38モル)の4,4’−イソプロピリデンジフェノール(BPA)を溶解させた。一旦全てのBPAを溶解させた時点で、50.51グラム(0.526モル)のメタンスルホン酸(MSA)をゆっくりと加えた。反応混合液の温度を135℃〜150℃の間に維持しながら、反応混合液を、窒素大気下で、3時間撹拌した。3時間後、まだ熱いまま、溶解させた反応混合液を2.0Lの脱イオン水中に注いだ。茶色い沈殿物が形成された。
【0096】
得られた沈殿物を真空濾過によって単離し、1.5Lの脱イオン水で洗浄した。次に、分離した固体を5.0Lの丸底フラスコに戻し、1.5Lの塩化メチレン(CH
2Cl
2)を加えた。固体を、1時間、還流にて、CH
2Cl
2中で撹拌した。次に、フラスコを室温(20℃〜25℃)まで冷却しておき、フラスコを一晩、冷蔵庫(約0℃)中に配置した。そして、固体を真空濾過によって単離し、最小量(約500mL)の冷却CH
2Cl
2で洗浄した。次に、固体を4.0LのErlenmeyerフラスコ中に配置し、900mLのメタノール(MeOH)中に溶解させた。この溶液に190mLのCH
2Cl
2を加えた。この溶液は、透明のままであった。この溶液を攪拌し、1.1Lの脱イオン水を分割して加えた。白色沈殿物が形成され、混合物を一晩、冷蔵庫(約0℃)中に配置した。固体を真空濾過によって単離し、最小量(約300mL)の冷却CH
2Cl
2で洗浄した。MeOH/CH
2Cl
2/H
2Oの沈殿をもう一度繰り返した。第2の沈殿からの固体を、真空オーブン中、85℃にて一晩乾燥させて、214.77グラム(48パーセント)のSBI−ジオールをもたらした。
1H NMR(500MHz、アセトン−d
6)δ 7.85(s、2H)、7.02(d,J=8.1Hz、2H)、6.68(dd,J=8.1,2.4Hz、2H)、6.19(d,J=2.4Hz、2H)、2.32(d,J=13.0Hz、2H)、2.19(d,J=13.0Hz、2H)、1.35(s、6H)、1.29(s、6H)。
【0097】
調製例2:ペルフルオロメタン−1−スルホン酸6’−(ペルフルオロメタン−1−スルホニルオキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ
スインダン−6−イルエステル(SBI−ビストリフラート)の合成
250mL丸底フラスコ中、5.0025g(16.2ミリモルミリモル)のSBI−ジオールと、4.755mL(47.1ミリモル)のピリジンと、を、150mLのCH
2Cl
2中に溶解させた。フラスコを氷/水浴中に配置した。本溶液に、7.930mL(58.8ミリモル)のトリフルオロメタンスルホン酸無水物(TFMSA)を滴下して加えた。添加が完了した後、フラスコを氷/水浴から取り出した。反応混合液を、窒素大気下、室温にて1時間撹拌した。10mLの塩酸水溶液(HCl)(10重量パーセント)を添加することによって、反応を停止した。
【0098】
得られた混合液を、CH
2Cl
2と重炭酸ナトリウム(NaHCO
3)の飽和水溶液との間で分液した。有機層を単離し、無水硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)上で乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、室温にて高真空下、3時間乾燥させて、全ての残留ピリジンを除去した。得られた黄褐色の固体(SBI−ビストリフラート)の重量は、8.51グラム(92パーセント)であった。
1H NMR(500MHz、CDCl
3)δ 7.17(d,J=8.3Hz、2H)、7.08(dd、J=8.3、2.3Hz、2H)、6.55(d,J=2.3Hz、2H)、2.26(ABq,J=13.2Hz、4H)、1.34(s、6H)、1.29(s、6H)。
19F NMR(470.5MHz、CDCl
3)δ−73.0。
【0099】
調製例3:3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ
スインダン−6,6’−ジビニル(SBI−ジビニル)の合成:
250mL丸底フラスコ内で、5.0025グラム(8.74ミリモル)のSBI−ビストリフラートを、75mLの無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解させた。この溶液に、6.125mL(21.0ミリモル)のビニルトリブチルスズと、22.2225グラム(52.4ミリモル)の塩化リチウム(LiCl)と、を加えた。反応混合液を窒素大気下、室温にて、5分間撹拌し、0.6140g(875マイクロモル)の塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を加えた。反応混合液を室温にて、窒素大気下、一晩撹拌した。室温にて24時間反応させた後、反応混合液を150mLの脱イオン水に注ぐことによって反応を止めた。沈殿物が形成された。
【0100】
水層と沈殿物を、ジエチルエーテル(Et
2O)(3×200mL)で抽出した。有機層を合わせた。次に、有機層を、等量のフッ化カリウム水溶液(KF)(10グラム/100mL)と共に1時間、室温にて激しく撹拌した。形成された灰色−白色沈殿物と混合液を、真空濾過した。濾液を、分液漏斗内に再び入れ、有機層を単離した。次に、有機層を無水Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、白色固体を得た。本固体を更にシリカゲルクロマトグラフィーによって精製した。材料をシリカゲルカラム(8×25cm)上に載せ、カラムを5%酢酸エチル(EtOAc)/95%石油エーテル(PE)(vol./vol.)で溶出した。純粋なSBI−ジビニルを含む画分を合わせ、減圧下で濃縮し、高圧下、室温にて乾燥させて、2.3822g(83%)のSBI−ジビニルを白色固体として得た。
1H NMR(500MHz、CDCl
3)δ 7.34(dd,J=7.9,1.6Hz、2H)、7.17(d,J=7.9Hz、2H)、6.85(d,J=1.6Hz、2H)、6.64(dd,J=17.6,10.9Hz、2H)、5.62(dd,J=17.6,1.0Hz、2H)、5.12(dd,J=10.9,1.0Hz、2H)、2.32(ABq,J=13.1Hz、4H)、1.42(s、6H)、1.36(s、6H)。
【0101】
実施例1:スチレンとDV−SBIの重合(モル比が49.6:1又は2モルパーセントのDV−SBI)
8mLバイアル瓶中、0.791グラム(7.59ミリモル)のスチレンと、50.1mg(153マイクロモル)のDV−SBIを、0.789グラムのEtOAc中に溶解させた。この溶液に、15.9ミリグラム(65.6マイクロモル)のBPOを加えた。したがって、重合混合物は、52重量固体パーセント及び1.9重量パーセントのBPOでの、モル比が49.6:1のスチレン:DB−SBIのEtOAc溶液からなった。重合混合物を、10分間窒素で泡立てた。次に、バイアル瓶に蓋をして、90℃にて砂浴中に配置した。重合を、この高温にて18時間、加熱した。
【0102】
透明な固体が形成され、これを真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをこのバイアル瓶に加えた。材料を30分間、EtOAc中に静置した。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをこのバイアル瓶に加えた。材料を一晩、EtOAc中に静置した。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。次に、固体を、高真空下、100℃にて一晩乾燥させた。
【0103】
実施例2:スチレンとDV−SBIの重合(モル比が20.0:1又は5モルパーセントのDV−SBI)
8mLバイアル瓶中、0.791グラム(7.59ミリモル)のスチレンと、0.125グラム(380マイクロモル)のDV−SBIを、0.789グラムのEtOAc中に溶解させた。本溶液に、15.7ミリグラム(64.8マイクロモル)のBPOを加えた。したがって、重合混合物は、54重量固体パーセント及び1.7重量パーセントのBPOでの、モル比が20.0:1のスチレン:DV−SBIのEtOAc溶液からなった。重合混合物を、窒素にて10分間泡立てた。次に、バイアル瓶に蓋をして、90℃にて砂浴中に配置した。重合を、この高温にて18時間加熱した。
【0104】
透明な固体が形成され、これを真空濾過によって単離し、EtOAcにて洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをバイアル瓶に加えた。材料を30分間、EtOAc中に静置した。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをこのバイアル瓶に加えた。材料を一晩、EtOAc中に静置した。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。次に、固体を、高真空下、100℃にて一晩乾燥させた。
【0105】
実施例3:スチレンとDV−SBIの重合(モル比が10.0:1又は10モルパーセントのDV−SBI)
8mLバイアル瓶中、0.791グラム(7.59ミリモル)のスチレンと、0.250グラム(761マイクロモル)のDV−SBIを、0.789グラムのEtOAc中に溶解させた。本溶液に、16.0ミリグラム(66.1マイクロモル)のBPOを加えた。したがって、重合混合物は、57重量固体パーセント及び1.5重量パーセントのBPOでの、モル比が10.0:1のスチレン:DV−SBIのEtOAc溶液からなった。重合混合物を、10分間窒素で泡立てた。次に、バイアル瓶に蓋をして、90℃にて砂浴中に配置した。重合を、この高温にて18時間加熱した。
【0106】
透明な固体が形成され、これを真空濾過によって単離し、EtOAcにて洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをバイアル瓶に加えた。材料を30分間、EtOAc中に静置した。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをこのバイアル瓶に加えた。材料を一晩、EtOAc中に静置した。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。次に、固体を、高真空下、100℃にて一晩乾燥させた。
【0107】
実施例4:スチレンとDV−SBIの懸濁重合(モル比が28.4:1又は4モルパーセントのDV−SBI)
100mLフラスコ中、0.1グラム(413マイクロモル)のBPOと、0.5グラム(1.52ミリモル)のDV−SBIを、4.5グラム(43.2ミリモル)のスチレン中に溶解させた。この溶液に、水中1重量%のポリ(ビニルアルコール)の溶液20mLを加えた。このフラスコを80℃にて油浴中に配置し、2cm長の磁気攪拌子で撹拌した。フラスコを、5分間窒素でパージした。次に、試料を油浴中8時間撹拌したままにした。次に、ポリマービーズを真空濾過によって槽より回収し、水ですすいだ。ビーズを、30分間、150℃オーブン中で後硬化させた。
【0108】
比較例1:スチレンとDVBの重合(モル比が49.2:1又は2モルパーセントのDVB)
8mLバイアル瓶中、2.00グラム(19.2ミリモル)のスチレンと、50.3ミリグラム(386マイクロモル)のジビニルベンゼン(DVB)を、2.04グラムのEtOAc中に溶解させた。本溶液に、40.3ミリグラム(166マイクロモル)のBPOを加えた。したがって、重合混合物は、50重量固体パーセント及び2.0重量パーセントのBPOでの、モル比が49.2:1のスチレン:DVBのEtOAc溶液からなった。重合混合物を、10分間窒素で泡立てた。次に、バイアル瓶に蓋をして、90℃にて砂浴中に配置した。重合を、この高温にて18時間加熱した。
【0109】
白色沈殿物が形成され、これを真空濾過によって単離し、EtOAcにて洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをバイアル瓶に加えた。材料を4日間、EtOAc中に静置した。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをこのバイアル瓶に加えた。固体を1時間、リストシェーカー上で振動させた。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。次に、固体を高真空下、100℃にて一晩乾燥させた。
【0110】
比較例2:スチレンとDVBの重合(モル比が20.0:1又は5モルパーセントのDVB)
8mLバイアル瓶中、2.00グラム(19.2ミリモル)のスチレンと、125ミリグラム(962マイクロモル)のDVBを、2.04グラムのEtOAc中に溶解させた。本溶液に、40.0ミリグラム(165マイクロモル)のBPOを加えた。したがって、重合混合物は、51重量固体パーセント及び1.9重量パーセントのBPOでの、モル比が20.0:1のスチレン:DVBのEtOAc溶液からなった。重合混合物を、10分間窒素で泡立てた。次に、バイアル瓶に蓋をして、90℃にて砂浴中に配置した。重合を、この高温にて18時間加熱した。
【0111】
白色沈殿物が形成され、これを真空濾過によって単離し、EtOAcにて洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをバイアル瓶に加えた。材料を4日間、EtOAc中に静置した。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをこのバイアル瓶に加えた。固体を1時間、リストシェーカー上で振動させた。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。次に、固体を、高真空下、100℃にて一晩乾燥させた。
【0112】
比較例3:スチレンとDVBの重合(モル比が10.0:1又は10モルパーセントのDVB)
8mLバイアル瓶中、2.00グラム(19.2ミリモル)のスチレンと、250ミリグラム(1.92ミリモル)のDVBを、2.05グラムのEtOAc中に溶解させた。本溶液に、40.1ミリグラム(166マイクロモル)のBPOを加えた。したがって、重合混合物は、52重量固体パーセント及び1.8重量パーセントのBPOでの、モル比が10.0:1のスチレン:DVBのEtOAc溶液からなった。重合混合物を、10分間窒素で泡立てた。次に、バイアル瓶に蓋をして、90℃にて砂浴中に配置した。重合を、この高温にて18時間加熱した。
【0113】
白色沈殿物が形成され、これを真空濾過によって単離し、EtOAcにて洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをバイアル瓶に加えた。材料を4日間、EtOAc中に静置した。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。固体を20mLバイアル瓶中に配置し、10mLのEtOAcをこのバイアル瓶に加えた。固体を1時間、リストシェーカー上で振動させた。固体を再び真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。次に、固体を高真空下、100℃にて一晩乾燥させた。
【0114】
比較例4:スチレンとDVBの懸濁重合(モル比が29.9:1又は4モルパーセントのDVB)
100mLフラスコ中、0.1グラム(413マイクロモル)のBPOと、0.2グラム(1.54ミリモル)のDVBを、4.8グラム(46.1ミリモル)のスチレン中に溶解させた。この溶液に、水中1重量%のポリビニルアルコール(PVA)の溶液20mLを加えた。このフラスコを80℃にて油浴中に配置し、2cm長の磁気攪拌子で撹拌した。フラスコを、5分間窒素でパージした。次に、試料を油浴中18時間撹拌したままにした。次に、ポリマービーズを真空濾過によって槽より回収し、水ですすいだ。ビーズを30分間、150℃オーブン中で後硬化させた。
【0115】
比較例5:スチレンとDVBの懸濁重合(モル比が8.9:1又は10モルパーセントのDVB)
50mLフラスコ中、0.09グラム(372マイクロモル)のBPOと、0.45グラム(3.46ミリモル)のDVBを、4.05グラム(38.9ミリモル)のスチレン中に溶解させた。この溶液に、水中1重量%(1 precent by weight)のPVAの溶液20mLを加えた。このフラスコを80℃にて油浴中に配置し、2cm長の磁気攪拌子で撹拌した。フラスコを、5分間窒素でパージした。次に、試料を油浴中17時間撹拌したままにした。次に、ポリマービーズを真空濾過によって槽より回収し、水ですすいだ。ビーズを90分間、140℃オーブン中で後硬化させた。
【0116】
TGA及びMDSCを用いた高分子材料の特性化(実施例1〜3及び比較例1〜3)
実施例1〜3及び比較例1〜3を、変調示差走査熱量計(MDSC)によって分析して、ガラス転移温度(T
g)を判定した。これらの同一の6つの試料をまた、熱重量分析(TGA)によって分析して、熱安定性に違いがあるか否かを判定した。
【0117】
これらの結果の要約は、表2で見ることが出来る。このデータから、2つの傾向が明らかである。DVBの代わりにDV−SBI架橋剤を使用することによって、より高いT
gと、改善された熱安定性と、を有する材料をもたらす。2モルパーセントであっても、DV−SBIが、5℃というT
gの顕著な上昇と、熱安定性の有意な向上(45℃高い開始温度)を提供した。DV−SBIの量が増加するにつれて、DVB架橋高分子材料とDV−SBI架橋高分子材料との間のT
gの差が、より大きくなる(5モルパーセントにて7℃、10モルパーセントにて18℃)。DV−SBI架橋材料に関する有意な重量損失に対する開始温度における差は、使用した架橋剤の量にかかわらず、DVB架橋材料に対してよりも、およそ40℃高かった。
【0118】
【表2】
【0119】
圧縮試験を用いた高分子ビーズの特性化(実施例4及び比較例4〜5)
高分子材料の圧縮試験を、圧縮プレートを備え、制御された力のモードにて操作された、Q800 DMA(TA Instruments,New Castle,DE)中で実施した。0.83mm〜0.95mmの直径を有する単一のビーズを、圧縮プレート間に配置した。温度を25℃にて平衡化した。13.53N/mm
2に、ビーズ直径の平方をかけることで計算したレベルまで、力を4N/分で強くした。一定の負荷を維持しながら、次に、温度を3℃/分の速度で250℃まで上げた。各温度でのビーズの圧縮抵抗を、プレート分離をビーズの本来の直径で割ることによって計算した[(高さ÷初期高さ)×100]。実施例4、比較例4及び比較例5の分析の結果を
図1に示す。圧縮抵抗を、温度の関数としてプロットした。
【0120】
DV−SBIで架橋された実施例4は、比較例4及び比較例5の両方と比較して、より高い温度で圧縮した。これらの比較例の両方が、DVBで架橋された。実施例4のより高い圧縮温度は、いずれの比較例よりも、より高いガラス転移温度を有する高分子材料を示す。比較例4と実施例4を、同等の量の架橋剤を用いて調製した。これらの試料の両方に対する弾性のある状態は、ほぼ同じパーセントの圧縮(ただし異なる温度)であったが、これは、両方の試料が、ほぼ同じ架橋密度を有したことを示している。
【0121】
ガラス転移温度は、圧縮抵抗が有意な変化を示す温度として、各試料に対して
図1で判定可能である。実施例4に関するガラス転移温度は、比較例5の架橋密度が有意に高いものの、比較例5のものと同等であった。比較例5のより高い架橋密度は、より低いパーセントの圧縮で発生する弾性プラトーと一致する。比較例5は、比較例4又は実施例4のいずれかよりも、弾性プラトー領域で、より堅い。
【0122】
言い換えれば、式(I)の架橋剤を用いて調製した実施例4に対して同等のガラス転移温度を得るために、比較例5の約2.5倍の量のDVBが必要であった。しかしながら、より高い濃度の架橋剤の利用は、結果として、有意に、より堅い高分子材料の形成をもたらす傾向がある。圧縮試験において、比較例5の、より高い架橋密度により、高分子ビーズが約60パーセントの圧縮にて機能しなくなる結果となり、一方、実施例4では、約75パーセントの圧縮まで機能していた。破損しないで圧縮される能力の向上は、材料が破損なしに適合する必要がある用途において、望ましい。