特許第6186017号(P6186017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186017
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ペプチドの濃度を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/12 20060101AFI20170814BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20170814BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20170814BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20170814BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20170814BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C07K1/12ZNA
   G01N27/62 V
   G01N33/68
   G01N33/50 F
   G01N21/78 C
   C12Q1/37
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2016-283(P2016-283)
(22)【出願日】2016年1月4日
(62)【分割の表示】特願2012-556416(P2012-556416)の分割
【原出願日】2011年3月9日
(65)【公開番号】特開2016-128812(P2016-128812A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2016年2月2日
(31)【優先権主張番号】10002664.0
(32)【優先日】2010年3月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512236249
【氏名又は名称】イョットペーテー・ペプタイド・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】JPT PEPTIDE TECHNOLOGIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ツェルヴェック
(72)【発明者】
【氏名】マイク・シュトコウスキー
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・ヴェンシュー
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−545419(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02124060(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0033530(US,A1)
【文献】 特開2006−300758(JP,A)
【文献】 特開2003−111599(JP,A)
【文献】 特表2008−513782(JP,A)
【文献】 特表2009−517083(JP,A)
【文献】 JPT PEPTIDE TECHNOLOGIES GMBH,SPIKETIDESTM: LOW COST PROTEOTYPIC PEPTIDES-LIGHT-HEAVY-QUANTITFIED,[ONLINE],2009年12月16日,URL,http://dev.jpt.glutrot.de/news/press_releases/single_view/?tx_ttnews[tt_news]=22&cHash=8c5e30d0e32e8d586928dbf055f7208e
【文献】 Final Program,International Society for Biological Therapy of Cancer,2009年10月,24th Annual Meeting,Pages 14-15
【文献】 jpt,SpikeTidesTM Synthetic Proteotypic Peptide:light-heavy-quantified,[online],[平成27年4月13日検索]、インターネット,URL: https://www.jpt.com/?id=42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/12
G01N 21/78
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある1つのアミノ酸配列を含む第1のペプチドをカップリングした第1のタグを含む内部ペプチド標準であって、該第1のペプチドのアミノ酸配列のC末端が、ペプチドのアミド結合、エステル結合またはチオエステル結合の配列特異的加水分解によって作製されたC末端に対応し、該第1のタグが標識を含み、化学的切断、酵素的切断および物理的切断を含む群から選択される手段によって除去可能であり、該標識がメタ−ニトロ−チロシンである、内部ペプチド標準。
【請求項2】
第1のタグの除去が配列特異的である、請求項1に記載の内部ペプチド標準。
【請求項3】
第1のペプチドが質量標識を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の内部ペプチド標準。
【請求項4】
質量標識がC同位体およびN同位体を含む群から選択される、請求項に記載の内部ペプチド標準。
【請求項5】
第2のタグを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の内部ペプチド標準。
【請求項6】
第2のタグが、アンカー部分を含む、請求項に記載の内部ペプチド標準。
【請求項7】
アンカー部分が、ビオチン、デスチオビオチン、アビジンおよびストレプトアビジンを含む群から選択されるか、または表面での、適当な反応性官能基との化学選択的反応を可能にする化学基である、請求項に記載の内部ペプチド標準。
【請求項8】
アンカー部分と第1のペプチドの間をリンカーが連結する、請求項またはに記載の内部ペプチド標準。
【請求項9】
第1のタグが、第1のペプチドのC末端とカップリングされる、請求項1からのいずれかに記載の内部ペプチド標準。
【請求項10】
第2のタグが、第1のペプチドのN末端とカップリングされる、請求項1からのいずれか一項に記載の内部ペプチド標準。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の内部ペプチド標準の複数の異なる種を含む組成物であって、該複数の異なる種の内部ペプチド標準が、第1のタグならびに/または第1のペプチドのアミノ酸配列において互いに異なる、組成物。
【請求項12】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の標的ポリペプチドの存在および/または量、および/または精製ポリペプチドの量を決定する方法における、請求項1から10のいずれか一項に記載の内部ペプチド標準の使用。
【請求項13】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法であって、
)種々のポリペプチドの混合物を提供することと;
b)(i)ある1つのアミノ酸配列を含む第1のペプチドをカップリングした第1のタグを含む内部ペプチド標準であって、該第1のペプチドのアミノ酸配列のC末端が、ペプチドのアミド結合、エステル結合またはチオエステル結合の配列特異的加水分解によって作製されたC末端に対応する、内部ペプチド標準、または(ii)該内部ペプチド標準の複数の異なる種であって、第1のタグおよび/または第1のペプチドのアミノ酸配列において互いに異なる該内部ペプチド標準の異なる種の一定量を加え、それによってスパイクされた混合物を作製することと;
c)スパイクされた混合物を配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、内部ペプチド標準(単数または複数)から第1のタグを切断除去し、このようにして第1のペプチドを放出し、それによって、複数のペプチドが種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドと内部標準から放出された第1のペプチドとを含むことと;
d)スパイクされた混合物中に含有される第1のタグの量を決定することならびにそれから工程b)において添加された内部標準(単数または複数)の量を決定することと;
e)各々工程c)において作製された、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定することと;
f)工程d)において決定された内部標準(単数または複数)の比および量から種々のポリペプチドの混合物中の標的ポリペプチドの量を算出することと
を含み、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドまたは内部ペプチド標準(単数または複数)の第1のペプチドいずれかが質量標識を含む、方法。
【請求項14】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法であって、
)種々のポリペプチドの混合物を提供することと;
b)(i)ある1つのアミノ酸配列を含む第1のペプチドをカップリングした第1のタグを含む内部ペプチド標準であって、該第1のペプチドのアミノ酸配列のC末端が、ペプチドのアミド結合、エステル結合またはチオエステル結合の配列特異的加水分解によって作製されたC末端に対応する、内部ペプチド標準、または(ii)該内部ペプチド標準の複数の異なる種であって、第1のタグおよび/または第1のペプチドのアミノ酸配列において互いに異なる該内部ペプチド標準の異なる種を提供し、内部ペプチド標準または該内部ペプチド標準の複数の異なる種を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、内部ペプチド標準または該内部ペプチド標準の複数の異なる種から第1のタグを切断除去し、このようにして、第1のペプチドを放出することと;
ca1)工程a)の種々のポリペプチドの混合物に、工程b)において得られた反応混合物を添加することと;
ca2)工程ca1)において得られた混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドがプロテオタイプのペプチドを含むこと、
または
cb1)工程a)の種々のポリペプチドの混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドがプロテオタイプのペプチドを含むことと;
cb2)工程cb1)において得られた混合物に、工程b)において得られた反応混合物を添加すること
のいずれかによって、工程ca2)およびcb2)後に、それぞれ、スパイクされた混合物が得られることと;
d)スパイクされた混合物中に含有される第1のタグの量を決定することならびにそれから工程ca1)またはcb2)において添加された内部標準(単数または複数)の量を決定することと;
e)スパイクされた混合物中の、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定することと;
f)工程d)において決定された内部標準(単数または複数)の比および量から、種々のポリペプチドの混合物中の標的ポリペプチドの量を算出することと
を含み、
種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドまたは内部ペプチド標準(単数または複数)の第1のペプチドのいずれかが質量標識を含む、方法。
【請求項15】
工程a)において、ポリペプチドが標的ポリペプチドを含有する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法であって、
a)(i)ある1つのアミノ酸配列を含む第1のペプチドをカップリングした第1のタグを含む内部ペプチド標準であって、該第1のペプチドのアミノ酸配列のC末端が、ペプチドのアミド結合、エステル結合またはチオエステル結合の配列特異的加水分解によって作製されたC末端に対応する、内部ペプチド標準、または(ii)該内部ペプチド標準の複数の異なる種であって、第1のタグおよび/または第1のペプチドのアミノ酸配列において互いに異なる該内部ペプチド標準の異なる種を提供し、内部ペプチド標準または該内部ペプチド標準の複数の異なる種を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、内部ペプチド標準または該内部ペプチド標準の複数の異なる種から第1のタグを切断除去し、このようにして第1のペプチドを放出することと;
b)場合によっては、配列特異的加水分解のための手段を除去することと;
c)工程a)またはb)から得られた混合物中に含有されている第1のタグの量を決定することならびにそれから前記混合物中に含有された内部標準の量を決定することと;
)種々のポリペプチドの混合物を提供することと;
da1)工程d)の種々のポリペプチドの混合物に、工程a)またはb)において得られた反応混合物の一部を添加することと;
da2)工程da1)において得られた混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドがプロテオタイプのペプチドを含むこと;
または
db1)工程d)の種々のポリペプチドの混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドがプロテオタイプのペプチドを含むことと;
db2)工程db1)において得られた混合物に、工程a)またはb)において得られた混合物の一部を添加すること
のいずれかによって、工程da2)およびdb2)後にそれぞれ、スパイクされた混合物が得られることと;
e)スパイクされた混合物中の、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定することと;
f)内部標準(単数または複数)の比および量から、種々のポリペプチドの混合物中の標的ポリペプチドの量を算出することと
を含み、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドまたは内部ペプチド標準(単数または複数)の第1のペプチドのいずれかが質量標識を含む、方法。
【請求項17】
工程d)において、ポリペプチドが標的ポリペプチドを含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
質量標識が、C同位体およびN同位体を含む群から選択される、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
内部ペプチド標準から放出された第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比が、質量分析によって決定される、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
内部ペプチド標準から放出された第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比が、多段質量分析によって決定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
配列特異的加水分解のための手段が、タンパク質分解性酵素、配列特異的化学反応または配列特異的物理的処理から選択される、請求項13から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法、内部ペプチド標準を調製する方法、複数の種の内部ペプチド標準からなる内部ペプチド標準のライブラリーを調製する方法、内部ペプチド標準を調製する方法によって得ることができる内部ペプチド標準および内部ペプチド標準を調製する方法によって得ることができる内部標準のパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では、細胞溶解物から得たタンパク質および修飾されたタンパク質を定量化するための新規方法を提供することが必要である。さらに、2つの異なる状態にある細胞間のタンパク質発現レベルを正確に比較するための、特に、低含量のタンパク質を比較するための新規方法を提供することが必要である。
【0003】
タンパク質検出、より詳しくは、タンパク質定量化のための現行標準は、免疫反応性検出(ウェスタン分析)に基づいている。しかし、この技術には、適切に特異的な抗体を入手できることが必要である。さらに、多数の抗体は、フォールディングされていない(変性した)形態でタンパク質を認識するだけであり、交差反応性がひどく制限的であり得、定量化は、一般に、相対的なものである。
【0004】
ミクロキャピラリー液体クロマトグラフィー(LC)およびデータベース検索と併せた、自動化された、データ依存性エレクトロスプレーイオン化(ESI)タンデム質量分析法(MS/MS)のための方法および機器使用の開発は、ゲルで分離されたタンパク質の同定の感度および速度を大幅に増大した。ミクロキャピラリーLC−MS/MSは、個々のタンパク質を、ゲル電気泳動的分離を行わず、混合物から直接的に大規模同定するために成功裏に使用されている(Link et al., 1999; Opitek et al., 1997)。しかし、これらのアプローチはタンパク質同定を著しく加速するが、分析されたタンパク質の量は、容易には決定され得ず、これらの方法は、2DE/MS/MSアプローチもが直面するダイナミックレンジの問題を実質的に軽減しないことがわかっている。したがって、複雑なサンプル中の低含量のタンパク質はまた、事前濃縮を行わずにミクロキャピラリーLC/MS/MS方法によって分析することが困難である。
【0005】
別の方法論が、最近記載された。ICAT試薬技術は、同位体コードアフィニティータグ(ICAT)と呼ばれる化学試薬のクラスを利用する。これらの試薬は、それぞれ、8個の重水素または水素原子を除いて化学的に同一である同位体的に重い形態および軽い形態で存在する。2種の細胞溶解物から得たタンパク質は、システイニル残基で、一方またはもう一方のICAT試薬を用いて独立に標識され得る。溶解物を混合およびタンパク質分解した後、ICAT標識されたペプチドが、各ICAT試薬中に組み込まれたビオチン分子との親和性によって単離される。ICAT標識されたペプチドをLC−MS/MSによって分析し、それらは重いおよび軽いペプチド対として溶出する。定量化は、サンプル中の各ICAT標識されたペプチド対の量に関する相対発現比を求めることによって実施される。
【0006】
ICAT標識されたペプチド各々の同定は、第2段階の質量分析(MS/MS)および配列データベース検索によって実施される。最終結果は、大規模での相対タンパク質発現比である。この技術の主要な欠点は、1)定量化が、相対的にしかすぎないこと;2)専門的な化学が必要であること、および3)データベース検索が、大きなICAT試薬分子の存在によって妨げられること、および4)翻訳後修飾された(例えば、リン酸化された)タンパク質の相対量が、分析に対して見えないことである。
【0007】
国際特許出願WO03/016861には、内部ペプチド標準が使用される、細胞溶解物から直接的にタンパク質を絶対定量化する方法が開示されている。この方法は、既知量の内部標準ペプチドの添加を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底にある問題は、種々のポリペプチドの混合物において、標的ポリペプチドの存在を決定する方法を提供することである。本発明の根底にある問題は、種々のポリペプチドの混合物において、標的ポリペプチドの量を決定する方法を提供することである。
【0009】
本発明の根底にあるさらなる問題は、種々のポリペプチドの混合物において標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法において使用するのに特に適している内部ペプチド標準を作製する方法を提供することである。
【0010】
さらに、本発明の根底にある問題は、種々のポリペプチドの混合物において標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法において使用するのに特に適している、内部ペプチド標準および内部標準ペプチドのパネルをそれぞれ提供することである。
【0011】
本発明の根底にあるこれらおよびその他の問題は、添付の独立クレームの主題によって解決される。好ましい実施形態は、添付の従属クレームおよび以下の説明から理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様の第1の実施形態でもある第1の態様では、本発明の根底にある問題は、
a)第1のタグを提供することと
b)第1のタグに、ある1つのアミノ酸配列を含む第1のペプチドをカップリングすること
または
a)第1のタグを提供することと
b)ある1つのアミノ酸配列を含む第1のペプチドを形成するアミノ酸を、第1のタグにカップリングすることと
を含み、第1のペプチドのアミノ酸配列のC末端が、ペプチドのアミド結合、エステル結合またはチオエステル結合、好ましくは、アミド結合の配列特異的加水分解によって作製したC末端に対応する、内部ペプチド標準を調製する方法によって解決される。
【0013】
第1の態様の第1の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第2の実施形態では、配列特異的加水分解は、タンパク質分解性酵素の反応、配列特異的化学反応または配列特異的物理的処理を含む群から選択される反応によって起こる。
【0014】
第1の態様の第2の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第3の実施形態では、タンパク質分解性酵素は、ヒドロラーゼ、ペプチダーゼ、プロテアーゼ、トリプシン、トロンビン、V8プロテアーゼ、プロリルエンドペプチダーゼ、スブチリシンおよびキモトリプシンおよびエスラスターゼ(eslastase)を含む群から選択される。
【0015】
第1の態様の第2の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第4の実施形態では、配列特異的化学反応が、C末端ホモセリンラクトンをもたらす臭化シアンのようなハロゲン化シアンを用いる処理およびC末端アスパラギン酸残基をもたらすアスパルチル−プロリル結合の選択的酸性加水分解を含む群から選択される。
【0016】
第1の態様の第1から第4の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第5の実施形態では、C末端は、アルギニン、リシン、グルタミン酸およびプロリンを含む群から選択されるアミノ酸である。
【0017】
第1の態様の第1から第5の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第6の実施形態では、内部ペプチド標準は、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の標的ポリペプチドの存在および/もしくは量ならびに/または精製されたポリペプチドの量を決定する方法において使用するためのものである。
【0018】
第1の態様の第1から第6の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第7の実施形態では、第1のタグは、ペプチド、プロテアーゼ基質および脱離基を含む群から選択される。
【0019】
第1の態様の第1から第7の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第8の実施形態では、第1のタグは、2〜10個のアミノ酸残基、好ましくは、2〜6個のアミノ酸残基、より好ましくは、2〜4個のアミノ酸残基、最も好ましくは、3個のアミノ酸残基からなるペプチドである。
【0020】
第1の態様の第8の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第9の実施形態では、第1のタグは、少なくとも1個の生体アミノ酸残基を含む。
【0021】
第1の態様の第8の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第10の実施形態では、第1のタグは、少なくとも1個の非生体アミノ酸残基を含む。
【0022】
第1の態様の第8の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第11の実施形態では、第1のタグは、少なくとも1個のD−アミノ酸残基を含む。
【0023】
第1の態様の第8から第11実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第12の実施形態では、第1のタグのアミノ酸残基の少なくとも1個が、α−アミノ酸残基、β−アミノ酸残基、γ−アミノ酸残基およびδ−アミノ酸残基を含む群から選択される。
【0024】
第1の態様の第7から第12の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第13の実施形態では、第1のタグはペプチドであり、第1のタグを形成するペプチドのアミノ酸残基の少なくとも1個は、ペプチドの合成の非同位体識別法において得られた同位体組成とは異なる同位体組成を含む。
【0025】
第1の態様の第7の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第14の実施形態では、第1のタグは、好ましくは、ペプチド、芳香族アミド、芳香族エステルまたはチオエステル、脂肪族アミド、エステルまたはチオエステルを含む群から選択されるプロテアーゼ基質の一部である。
【0026】
第1の態様の第7の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第15の実施形態では、第1のタグは、好ましくは、ペプチド、芳香族アミン、フェノールまたはチオフェノール、脂肪族アミン、脂肪族アルコールまたは脂肪族チオールを含む群から選択される脱離基である。
【0027】
第1の態様の第1から第15の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第16の実施形態では、第1のタグは、標識の特異的カップリングを可能にする反応性基を含む。
【0028】
第1の態様の第16の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第17の実施形態では、第1のタグの第1のペプチドとのカップリング後に、標識が第1のタグにカップリングされる。
【0029】
第1の態様の第1から第17の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第18の実施形態では、第1のタグは標識を含む。
【0030】
第1の態様の第16から第18の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第19の実施形態では、標識は、質量標識、蛍光標識およびUV標識を含む群から選択される。
【0031】
第1の態様の第1から第19の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第20の実施形態では、標識は、ケージ化合物中に含有される質量標識である。
【0032】
第1の態様の第19から第20の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第21の実施形態では、質量標識は、同位体標識であり、同位体は、好ましくは、C同位体、N同位体、Cl同位体およびBr同位体を含む群から選択される。
【0033】
第1の態様の第19の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第22の実施形態では、蛍光標識は、β−7−メトキシ−クマリル−アラニン、クマリル誘導体、ナフチルアミン誘導体、ナフタレンのヒドロキシルおよびチオール誘導体、アミノ−、ヒドロキシル−またはチオール−フルオレセイン誘導体、アミノ−、ヒドロキシル−またはチオール−ローダミン誘導体およびアミノ安息香酸誘導体を含む群から選択される。
【0034】
第1の態様の第19の実施形態の一実施形態でもある、第1の態様の第23の実施形態では、UV標識は、置換アニリン、置換アニリド、置換フェノール、置換チオフェノール、置換ナフチルアミン、置換ナフチルアミド、置換チオアリールエステル、置換アリールエステルのような置換芳香族アミン、アミド、フェノール、チオフェノール、エステル、チオエステルならびに置換第1級および第2級アミン、置換第2級および第3級アミド、置換アルコール、置換チオール、置換チオエステル、置換エステルのような置換脂肪族アミン、アミド、アルコール、チオール、エステル、チオエステルを含む群から選択される。
【0035】
第1の態様の第1から第23の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第24の実施形態では、第1のタグまたは第1のタグの第1の部分は、第1のペプチドとのカップリング後に除去可能である。
【0036】
第1の態様の第24の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第25実施形態では、第1のタグまたはその第1の部分は、化学的切断、酵素的切断および物理的切断を含む群から選択される手段によって除去可能である。
【0037】
第1の態様の第24から第25の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第26の実施形態では、第1のタグまたはその第1の部分の除去は、配列特異的である。
【0038】
第1の態様の第1から第26の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第27の実施形態では、第1のタグまたはその第1の部分は、検出方法においてシグナルを提供する。
【0039】
第1の態様の第1から第27の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第28の実施形態では、シグナルは、標識によって提供される。
【0040】
第1の態様の第28の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第29の実施形態では、シグナルは、第1のタグまたはその第1の部分を特異的に示す特異的シグナルである。
【0041】
第1の態様の第27から第29の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第30の実施形態では、シグナルは、定量的シグナルである。
【0042】
第1の態様の第27から第30の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第31の実施形態では、シグナルは、好ましくは、1:1の化学量論に一致して第1のタグまたはその第1の部分に比例する。
【0043】
第1の態様の第27から第31の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第32の実施形態では、検出方法は、蛍光検出、UV検出および質量検出を含む群から選択される。
【0044】
第1の態様の第1から第32の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第33の実施形態では、第1のペプチドのアミノ酸配列は、プロテオタイプのポリペプチドまたはプロテオタイプのポリペプチドの断片のアミノ酸配列に対応する。
【0045】
第1の態様の第1から第32の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第34の実施形態では、第1のペプチドのアミノ酸配列は、複数のプロテオタイプのポリペプチドアミノ酸配列に対応する。
【0046】
第1の態様の第1から第34の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第35の実施形態では、第1のペプチドの第1のタグとのカップリングは、第1のペプチドのアミノ酸配列を第1のタグへ合成することによって実施される。
【0047】
第1の態様の第35の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第36の実施形態では、第1のタグに第1のペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸が順次加えられる。
【0048】
第1の態様の第1から第36の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第37の実施形態では、第1のタグが表面に固定される。
【0049】
第1の態様の第1から第36の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第38の実施形態では、第1のタグは、表面で合成され、その後、第1のペプチドが第1のタグとカップリングされる。
【0050】
第1の態様の第1から第38の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第39の実施形態では、第1のタグは、第1のペプチドのC末端とカップリングされる。
【0051】
第1の態様の第1から第39の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第40の実施形態では、第1のペプチドは、第2のタグを含む。
【0052】
第1の態様の第1から第40の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第41の実施形態では、第2のタグが、第1のペプチドのN末端と、好ましくは、第1のペプチドのN末端アミノ酸とカップリングされる。
【0053】
第1の態様の第41の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第42の実施形態では、第2のタグは、第1のペプチドの全長アミノ酸配列の合成またはカップリングの完了時に第1のペプチドのN末端アミノ酸とカップリングされる。
【0054】
第1の態様の第41の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第43の実施形態では、第2のタグは、第1のペプチドのアミノ酸配列のN末端アミノ酸とカップリングされ、前記の第2のタグは、好ましくは、第1のタグに続いて、第1のペプチドとカップリングされる。
【0055】
第1の態様の第40から第43の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第44の実施形態では、第2のタグは、第1のタグとは異なっている。
【0056】
第1の態様の第40から第44の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第45の実施形態では、第2のタグは、ペプチド、プロテアーゼ基質および脱離基を含む群から選択される。
【0057】
第1の態様の第45の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第46の実施形態では、第2のタグは、2〜10個のアミノ酸残基、好ましくは2〜6個のアミノ酸残基、より好ましくは2〜4個のアミノ酸残基、最も好ましくは3個のアミノ酸残基からなるペプチドである。
【0058】
第1の態様の第46の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第47の実施形態では、第2のタグは、少なくとも1個の生体アミノ酸残基を含む。
【0059】
第1の態様の第46の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第48の実施形態では、第2のタグは、少なくとも1個の非生体アミノ酸残基を含む。
【0060】
第1の態様の第46の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第49の実施形態では、第2のタグは、少なくとも1個のD−アミノ酸残基を含む。
【0061】
第1の態様の第46から第49の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第50の実施形態では、第2のタグのアミノ酸残基の少なくとも1個は、α−アミノ酸残基、β−アミノ酸残基、γ−アミノ酸残基およびδ−アミノ酸残基を含む群から選択される。
【0062】
第1の態様の第45から第50の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第51の実施形態では、第2のタグはペプチドであり、第2のタグを形成するペプチドの少なくとも1個のアミノ酸残基は、ペプチドの合成の非同位体識別法において得られた同位体組成とは異なっている同位体組成を含む。
【0063】
第1の態様の第45の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第52の実施形態では、第2のタグは、好ましくは、エンドプロテアーゼ基質のN末端部分を摸倣するペプチドおよびペプチド誘導体を含む群から選択されるプロテアーゼ基質である。
【0064】
第1の態様の第45の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第53の実施形態では、第2のタグは、好ましくは、ペプチドおよび置換ペプチドを含む群から選択される脱離基である。
【0065】
第1の態様の第40から第53の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第54の実施形態では、第2のタグは、標識の特異的カップリングを可能にする反応性基を含む。
【0066】
第1の態様の第40の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第55の実施形態では、第1のタグを第1のペプチドとカップリングした後に、標識が第2のタグとカップリングされる。
【0067】
第1の態様の第40から第55の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第56の実施形態では、第2のタグは、標識を含む。
【0068】
第1の態様の第54から第56の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第57の実施形態では、標識は、質量標識、蛍光標識およびUV標識を含む群から選択される。
【0069】
第1の態様の第57の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第58の実施形態では、標識は、ケージ化合物中に含有される質量標識である。
【0070】
第1の態様の第57から第58の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第59の実施形態では、質量標識は同位体標識であり、同位体は、好ましくは、C同位体、N同位体、Cl同位体およびBr同位体を含む群から選択される。
【0071】
第1の態様の第57の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第60の実施形態では、蛍光標識は、β−7−メトキシ−クマリル−アラニン、クマリル誘導体、ナフチルアミン誘導体、ナフタレンのヒドロキシルおよびチオール誘導体、アミノ−、ヒドロキシル−またはチオール−フルオレセイン誘導体、アミノ−、ヒドロキシル−またはチオール−ローダミン誘導体およびアミノ安息香酸誘導体を含む群から選択される。
【0072】
第1の態様の第57の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第61の実施形態では、UV標識は、置換アニリン、置換アニリド、置換フェノール、置換チオフェノール、置換ナフチルアミン、置換ナフチルアミド、置換チオアリールエステル、置換アリールエステルのような置換芳香族アミン、アミド、フェノール、チオフェノール、エステル、チオエステルならびに置換第1級および第2級アミン、置換第2級および第3級アミド、置換アルコール、置換チオール、置換チオエステル、置換エステルのような置換脂肪族アミン、アミド、アルコール、チオール、エステル、チオエステルを含む群から選択される。
【0073】
第1の態様の第40から第61の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第62の実施形態では、第2のタグまたは第2のタグの第1の部分は、第1のペプチドとのカップリング後に除去可能である。
【0074】
第1の態様の第62の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第63の実施形態では、第2のタグまたはその第1の部分は、化学的切断、酵素的切断および物理的切断を含む群から選択される手段によって除去可能である。
【0075】
第1の態様の第62から第63の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第64の実施形態では、第2のタグまたはその第1の部分の除去は、配列特異的である。
【0076】
第1の態様の第40から第64の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第65の実施形態では、第2のタグまたはその第1の部分は、検出方法においてシグナルを提供する。
【0077】
第1の態様の第65の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第66の実施形態では、シグナルは、標識によって提供される。
【0078】
第1の態様の第66の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第67の実施形態では、シグナルは、第2のタグまたはその第1の部分を特異的に示す特異的シグナルである。
【0079】
第1の態様の第65から第67の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第68の実施形態では、シグナルは、定量的シグナルである。
【0080】
第1の態様の第65から第68の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第69の実施形態では、シグナルは、第1のタグまたはその第1の部分に比例する。
【0081】
第1の態様の第65から第69の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第70の実施形態では、検出方法は、蛍光検出、UV検出および質量検出を含む群から選択される。
【0082】
第1の態様の第40から第70の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第71の実施形態では、第1のタグおよび第2のタグは、異なる標識を含む。
【0083】
第1の態様の第40から第71の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第72の実施形態では、第2のタグは、アンカー部分を含む。
【0084】
第1の態様の第72の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第73の実施形態では、アンカー部分は、第2のタグおよび/または内部ペプチド標準を表面に付着させるのに適している。
【0085】
第1の態様の第72から第73の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第74の実施形態では、アンカー部分は、第2のタグおよび/または内部ペプチド標準の表面への可逆的付着を可能にする。
【0086】
第1の態様の第72から第74の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第75の実施形態では、アンカー部分は、ビオチン、デスチオビオチン、アビジンおよびストレプトアビジンを含む群から選択され、または表面での、適当な、すなわち、対応する反応性官能基との化学選択的反応を可能にする化学基である。
【0087】
第1の態様の第72の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第76の実施形態では、アンカー部分は、第2のタグおよび/または内部ペプチド標準の表面への不可逆的付着を可能にし、好ましくは、不可逆的付着は共有結合による付着である。
【0088】
第1の態様の第72から第76の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第77の実施形態では、アンカー部分は、アンカー部分と第2のタグの間に配置されるリンカーに付着される。
【0089】
第1の態様の第77の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第78の実施形態では、リンカーは、N−(3−{2−[2−(3−アミノ−プロポキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピル)−スクシンアミド酸または分岐鎖もしくは直鎖いずれかのアルカン、好ましくは2〜30個の炭素原子からなるもの、より好ましくは4〜20個の炭素原子からなるもの、最も好ましくは4〜10個の炭素原子からなるもの;あるいはポリエーテル、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜5のエチレンオキシドもしくはポリプロピレンオキシド単位からなるポリマーまたは分岐もしくは非分岐のポリアルコールまたはポリウレタン、ポリヒドロキシ酸、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、好ましくは1〜100個の単量体単位からなるもの、より好ましくは1〜50個の単量体単位からなるもの、最も好ましくは1〜20個の単量体単位からなるもの、または前記アルカンと前記ポリウレタン、ポリヒドロキシ酸、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンとの組合せ、または分岐鎖または直鎖いずれかのジアミノアルカン、好ましくは2〜30個の炭素原子からなるもの、より好ましくは2〜20個の炭素原子からなるもの、最も好ましくは2〜10個の炭素原子からなるもの、ならびにジアミノアルカンとポリエーテルの組合せ、好ましくは2〜30個の炭素原子からなるもの、より好ましくは2〜20個の炭素原子からなるもの、最も好ましくはコハク酸もしくはグルタル酸のような2〜10個の炭素原子からなるもの、アミノ酸および好ましくは1〜20個の残基またはより好ましくは1〜10個の残基または最も好ましくは1〜3個の残基からなるペプチドを含む群から選択され、好ましくは、リンカーは、N−(3−{2−[2−(3−アミノ−プロポキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピル)−スクシンアミド酸のようなジカルボン酸とジアミノポリエーテルの組合せである。
【0090】
第1の態様の第72から第78の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第79の実施形態では、第2のタグは、ある1つのアミノ酸配列を含むペプチドを含み、リンカーは、アンカー部分とN末端の間に、好ましくは、第2のタグのN末端アミノ酸残基の間に配置される。
【0091】
第1の態様の第1から第79の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第80の実施形態では、内部ペプチド標準は精製される。
【0092】
第1の態様の第40から第80の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第81の実施形態では、内部ペプチド標準は第2のタグ、第1のペプチドおよび第1のタグを含み、内部ペプチド標準はペプチドの混合物中に含有され、内部ペプチド標準は表面に固定され、内部ペプチド標準は、内部ペプチド標準のアンカー部分を介して表面と特異的に相互作用する。
【0093】
第1の態様の第80から第81の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第82の実施形態では、内部ペプチド標準とは異なっているペプチドは、混合物から除去される。
【0094】
第1の態様の第81から第82の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第83の実施形態では、内部ペプチド標準は、表面から除去され、反応器に移される。
【0095】
第1の態様の第1から第83の実施形態の一実施形態、好ましくは、第1の態様の第1から第67の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第84の実施形態では、第1および/または第2のタグは、第1のペプチドから除去される。
【0096】
第1の態様の第1から第84の実施形態の一実施形態でもある第1の態様の第85の実施形態では、第1および/または第2のタグの量が定量化される。
【0097】
第2の態様の第1の実施形態でもある第2の態様では、本発明の根底にある問題は、
a)複数の種の内部ペプチド標準を個々に調製し、それによって、内部ペプチド標準の各種が第1の態様の実施形態のいずれかに従って調製されることと、
b)内部ペプチド標準の個々に調製された種を所望により混合することと
を含み、
内部ペプチド標準の種が、第1および/または第2のタグおよび/または第1のペプチドのアミノ酸配列において互いに異なる、複数の種の内部ペプチド標準からなる内部ペプチド標準のライブラリーを調製する方法によって解決される。
【0098】
第2の態様の第1の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第2の実施形態では、第1および/または第2のタグは、ある1つのアミノ酸配列を有するペプチドを含み、内部ペプチド標準のライブラリーの各種のアミノ酸配列は、内部ペプチド標準のライブラリーのその他の種のアミノ酸配列とは異なっている。
【0099】
第2の態様の第1および第2の実施形態の一実施形態でもある第2の態様の第3の実施形態では、内部ペプチド標準のライブラリーの内部ペプチド標準の各種は、プロテオタイプのペプチドを含む。
【0100】
第3の態様の第1の実施形態でもある第3の態様では、本発明の根底にある問題は、第1の態様の任意の実施形態の方法によって得ることができる内部ペプチド標準によって解決される。
【0101】
第4の態様の第1の実施形態でもある第4の態様では、本発明の根底にある問題は、第2の態様の任意の実施形態の方法によって得ることができる内部ペプチド標準のパネルによって解決される。
【0102】
第5の態様第1の実施形態でもある第5の態様では、本発明の根底にある問題は、
a)好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物を提供することと;
b)第3の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準の、または第4の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準のパネルの一定量を加え、それによってスパイクされた(spiked)混合物を作製することと;
c)スパイクされた混合物を配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、内部ペプチド標準(単数または複数)から第1のタグおよび/または第2のタグを切断除去し、このようにして第1のペプチドを放出し、それによって、複数のペプチドが種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドと内部標準から放出された第1のペプチドとを含むことと;
d)スパイクされた混合物中に含有される第1および/または第2のタグの量を決定することならびにそれから工程b)において添加された内部標準(単数または複数)の量を決定することと;
e)各々工程c)において作製された、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定することと;
f)工程d)において決定された内部標準(単数または複数)の比および量から種々のポリペプチドの混合物中の標的ポリペプチドの量を算出することと
を含む、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法であって、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドまたは内部ペプチド標準(単数または複数)の第1のペプチドのいずれかが質量標識を含む方法によって解決される。
【0103】
第5の態様の第1の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第2の実施形態では、質量標識は、C同位体およびN同位体を含む群から選択される。
【0104】
第5の態様の第1および第2の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第3の実施形態では、請求項91の工程c)において内部ペプチド標準から放出された第1のペプチド対請求項91の工程c)における種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比は、質量分析によって決定される。
【0105】
第5の態様の第1から第3の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第4の実施形態では、質量分析は、多段質量分析(mass spectometry)である。
【0106】
第5の態様の第1から第4の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第5の実施形態では、ペプチドの存在に特徴的である、フラグメンテーションおよびタンデム質量分析計におけるそれに続く分析によって得られたペプチドサインは、プロテオタイプのペプチドについて公知である。
【0107】
第5の態様の第1から第5の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第6の実施形態では、配列特異的加水分解の手段は、タンパク質分解性酵素、配列特異的化学反応または配列特異的物理的処理から選択される。
【0108】
第5の態様の第1から第6の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第7の実施形態では、第3の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準または第4の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準のパネルは、好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物への添加に先立って精製されない。
【0109】
第5の態様の第1から第6の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第8の実施形態では、第3の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準または第4の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準のパネルは、好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物への添加に先立って精製される。
【0110】
第5の態様の第8の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第9の実施形態では、精製は、第2のタグによる前記内部ペプチド標準(単数または複数)の合成の副生成物からの内部ペプチド標準(単数または複数)の選択的除去に基づいている。
【0111】
第5の態様の第1から第9の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第10の実施形態では、工程d)において量が決定されるタグは蛍光標識を含み、タグの量は、標識の蛍光シグナルを測定することによって決定される。
【0112】
第5の態様の第1から第9の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第11の実施形態では、工程d)において量が決定されるタグはUV標識を含み、タグの量は、標識のUVシグナルを測定することによって決定される。
【0113】
第5の態様の第1から第11の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第12の実施形態では、工程c)後であって工程d)前に、処理されたスパイク混合物が分離工程に付されて、処理されたスパイク混合物の成分から第1および第2のタグが分離される。
【0114】
第5の態様の第1から第11の実施形態の一実施形態でもある第5の態様の第13の実施形態では、工程c)後であって工程e)前に、処理されたスパイク混合物が分離工程に付されて、第1のペプチドおよび種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドが、処理されたスパイク混合物の成分から分離される。
【0115】
第6の態様の第1の実施形態でもある第6の態様では、本発明の根底にある問題は、
a)好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物を提供することと;
b)第3の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準または第4の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準のパネルを提供し、内部ペプチド標準または内部ペプチド標準のパネルを、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、内部ペプチド標準または内部ペプチド標準のパネルから第1のタグおよび/または第2のタグを切断除去し、このようにして第1のペプチドを放出することと;
ca1)工程a)の種々のポリペプチドの混合物に、工程b)の実施において得られた反応混合物を添加することと、
ca2)工程ca1)の実施において得られた混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドがプロテオタイプのペプチドを含むこと、
または
cb1)工程a)の種々のポリペプチドの混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドがプロテオタイプのペプチドを含むことと;
cb2)工程cb1)の実施において得られた混合物に、工程b)の実施において得られた反応混合物を添加すること
のいずれかであって、工程ca2)およびcb2)後に、それぞれ、スパイクされた混合物が得られることと;
d)スパイクされた混合物中に含有される第1および/または第2のタグの量を決定することならびにそれから工程b)において添加された内部標準(単数または複数)の量を決定することと;
e)スパイクされた混合物において、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定することと;
f)工程d)において決定された内部標準(単数または複数)の比および量から、種々のポリペプチドの混合物中の標的ポリペプチドの量を算出することと
を含む、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法であって、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドまたは内部ペプチド標準(単数または複数)の第1のペプチドのいずれかが質量標識を含む方法によって解決される。
【0116】
第6の態様の第1の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第2の実施形態では、質量標識は、C同位体およびN同位体を含む群から選択される。
【0117】
第6の態様の第1および第2の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第3の実施形態では、内部ペプチド標準から放出された第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比は、質量分析によって決定される。
【0118】
第6の態様の第1から第3の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第4の実施形態では、質量分析は、多段質量分析である。
【0119】
第6の態様の第1から第4の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第5の実施形態では、ペプチドの存在に特徴的である、フラグメンテーションおよびタンデム質量分析計におけるそれに続く分析によって得られたペプチドサインは、プロテオタイプのペプチドについて公知である。
【0120】
第6の態様の第1から第5の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第6の実施形態では、配列特異的加水分解のための手段は、タンパク質分解性酵素、配列特異的化学反応または配列特異的物理的処理から選択される。
【0121】
第6の態様の第1から第6の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第7の実施形態では、第3の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準または第4の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準のパネルは、好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物への添加に先立って精製されない。
【0122】
第6の態様の第1から第6の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第8の実施形態では、第3の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準または第4の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準のパネルは、好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物への添加に先立って精製される。
【0123】
第6の態様の第8の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第9の実施形態では、精製は、第2のタグによる、前記内部ペプチド標準(単数または複数)の合成の副生成物からの内部ペプチド標準(単数または複数)の選択的除去に基づいている。
【0124】
第6の態様の第1から第9の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第10の実施形態では、工程d)において量が決定されるタグは、蛍光標識を含み、タグの量は、標識の蛍光シグナルを測定することによって決定される。
【0125】
第6の態様の第1から第9の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第11の実施形態では、工程d)において量が決定されるタグはUV標識を含み、タグの量は、標識のUVシグナルを測定することによって決定される。
【0126】
第6の態様の第1から第10の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第12の実施形態では、工程d)の前に、スパイクされた混合物は分離工程に付されて、処理されたスパイクされた混合物の成分から第1および第2のタグが分離される。
【0127】
第6の態様の第1から第11の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第13の実施形態では、工程e)の前に、スパイクされた混合物は分離工程に付されて、第1のペプチドおよび種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドが、処理されたスパイク混合物の成分から分離される。
【0128】
第6の態様の第1から第13の実施形態の一実施形態でもある第6の態様の第14の実施形態では、工程b)において使用される配列特異的加水分解のための手段は、工程ca1)またはcb1)を実施する前に工程b)の実施において得られた混合物から除去される。
【0129】
第7の態様の第1の実施形態でもある第7の態様では、本発明の根底にある問題は、
a)第3の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準または第4の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準のパネルを提供し、内部ペプチド標準または内部ペプチド標準のパネルを、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、内部ペプチド標準または内部ペプチド標準のパネルから第1のタグおよび/または第2のタグを切断除去し、このようにして第1のペプチドを放出することと;
b)配列特異的加水分解のための手段を所望により除去することと;
c)工程b)のa)の実施から得られた混合物中に含有されている第1および/または第2のタグの量を決定することならびにそれから前記混合物中に含有された内部標準の量を決定することと;
d)好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物を提供することと;
da1)工程d)の種々のポリペプチドの混合物に、工程a)またはb)の実施において得られた反応混合物の一部を添加することと;
da2)工程da1)の実施において得られた混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドが、プロテオタイプのペプチドを含むこと;
または
db1)工程d)の種々のポリペプチドの混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドがプロテオタイプのペプチドを含むことと;
db2)工程db1)の実施において得られた混合物に、工程a)またはb)の実施において得られた混合物の一部を添加すること
のいずれかによって、工程da2)およびdb2)後にそれぞれ、スパイクされた混合物が得られることと;
e)スパイクされた混合物中の、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定することと;
f)内部標準(単数または複数)の比および量から、種々のポリペプチドの混合物中の標的ポリペプチドの量を算出することと
を含む、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法であって、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドまたは内部ペプチド標準(単数または複数)の第1のペプチドのいずれかが質量標識を含む方法によって解決される。
【0130】
第7の態様の第1の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第2の実施形態では、質量標識は、C同位体およびN同位体を含む群から選択される。
【0131】
第7の態様の第1および第2の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第3の実施形態では、内部ペプチド標準から放出された第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比は、質量分析によって決定される。
【0132】
第7の態様の第1から第3の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第4の実施形態では、質量分析は、多段質量分析である。
【0133】
第7の態様の第1から第4の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第5の実施形態では、ペプチドの存在に特徴的である、フラグメンテーションおよびタンデム質量分析計におけるそれに続く分析によって得られたペプチドサインは、プロテオタイプのペプチドについて公知である。
【0134】
第7の態様の第1から第5の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第6の実施形態では、配列特異的加水分解のための手段は、タンパク質分解性酵素、配列特異的化学反応または配列特異的物理的処理から選択される。
【0135】
第7の態様の第1から第6の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第7の実施形態では、第3の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準または第4の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準のパネルは、好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物への添加に先立って精製されない。
【0136】
第7の態様の第1から第6の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第8の実施形態では、第3の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準または第4の態様の任意の実施形態の内部ペプチド標準のパネルは、好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物への添加に先立って精製される。
【0137】
第7の態様の第8の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第9の実施形態では、精製は、第2のタグによる、前記内部ペプチド標準(単数または複数)の合成の副生成物からの内部ペプチド標準(単数または複数)の選択的除去に基づいている。
【0138】
第7の態様の第1から第9の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第10の実施形態では、量が工程c)において決定されるタグは、蛍光標識を含み、タグの量は、標識の蛍光シグナルを測定することによって決定される。
【0139】
第7の態様の第1から第9の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第11の実施形態では、量が工程c)において決定されるタグはUV標識を含み、タグの量は、標識のUVシグナルを測定することによって決定される。
【0140】
第7の態様の第1から第11の実施形態の一実施形態でもある第7の態様の第12の実施形態では、方法において、
a)工程da1)の前に、工程a)またはb)の実施において得られた反応混合物は分離工程付されて、前記反応混合物の成分から第1および第2のタグが分離されるか、または
b)工程db2)の前に、工程db1)の実施において得られた反応混合物は分離工程に付されて、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドが前記反応混合物の成分から分離される。
【0141】
本発明者らは、驚くべきことに、特定の形態の内部標準を使用して、種々のポリペプチドの混合物において、ポリペプチドの存在を決定することが可能であることを見出した。
より詳しくは、本発明者らは、驚くべきことに、標識された内部標準が、このような目的にとって適していることおよびこのような標識された内部標準は、種々のポリペプチドの混合物に添加される前に定量化される必要はないが、種々のポリペプチドの混合物に添加されたときにその量を決定することで十分であるということを見出した。しかしまた、標識されたまたは標識されていない内部標準が定量化され、その後、種々のポリペプチドの混合物中に添加されることも本発明の範囲内にある。
【0142】
本発明の種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法は、プロテオタイプのペプチドの概念に基づいている。
【0143】
本明細書において使用されることが好ましいプロテオタイプのペプチドとは、ポリペプチドの混合物中のポリペプチドにとって独特である、対象とするポリペプチドのペプチド断片である。このために、プロテオタイプのペプチドの同定および定量化はそれぞれ、個々のポリペプチドの混合物中の対象とするポリペプチドの存在および量と直接的に、明確に相関している。プロテオタイプのペプチドのアミノ酸配列は、対象とするポリペプチド中に1回のみ含有されることが好ましいが、対象とするポリペプチド中に数回含有されるアミノ酸配列も、プロテオタイプのペプチドのアミノ酸であるのに適したものであり得る。このような場合には、プロテオタイプのペプチドのアミノ酸配列として作動し、したがって、有用であるためのこの種のアミノ酸配列の適合性にとっての唯一の必要条件は、対象とするポリペプチドのアミノ酸配列中に含有されるこのようなアミノ酸配列のコピー数間に定義された関係または化学量論があることである。
【0144】
しかし、プロテオタイプのペプチドのアミノ酸配列が、ポリペプチドの混合物中の2種以上のポリペプチド中に含有されるということも本発明の範囲内にある。このような場合には、プロテオタイプのペプチドは、ポリペプチドの混合物中の2種以上のポリペプチドと相関している。このような場合には、プロテオタイプのペプチドの定量化は、プロテオタイプのペプチドのアミノ酸配列を共有する混合物中に含有される2種以上のポリペプチドの全体量の定量化である。
【0145】
好ましくは、プロテオタイプのペプチドの長さは、4〜40個のアミノ酸残基、好ましくは、6〜25個のアミノ酸残基、より好ましくは、8〜15個のアミノ酸残基、最も好ましくは、8〜12個のアミノ酸残基である。
【0146】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する種々の方法の実施は、好ましくは、内部ペプチド標準の使用を必要とする。したがって、本出願の第1の態様は、内部ペプチド標準を調製する方法である。好ましい実施形態では、このように作製された標準または標準のパネルが、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の標的ポリペプチドの存在および/もしくは量ならびに/または精製されたポリペプチドの量を決定する方法において使用される、または使用されるためのものであり、それによって、好ましくは、このような方法は、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の標的ポリペプチドの存在および/もしくは量ならびに/または本発明の精製されたポリペプチドの量を決定する方法である。
【0147】
本発明の内部ペプチド標準を調製する方法は、以下の工程
a)第1のタグを提供する工程と
b)ある1つのアミノ酸配列を含む第1のペプチドを、第1のタグとカップリングする工程と
を含み、それによって、第1のペプチドのアミノ酸配列のC末端は、アミド結合、エステル結合またはチオエステル結合の配列特異的加水分解によって作製したC末端に対応する。好ましくは、結合は、アミド結合であり、より詳しくは、ペプチドのアミド結合である。本発明の方法のこの実施形態では、第1のペプチドは、通常、全長ペプチドの形態の合成の生成物として提供される。ペプチドの合成のための方法は、当業者には公知であり、中でも、Pennington, 1994, Peptide Synthesis Protocols (Methods in Molecular Biology); Benoiton, 2005, Chemistry of Peptide Synthesisに記載されている。
【0148】
あるいは、本発明の内部ペプチド標準を調製する方法は、以下の工程
a)第1のタグを提供する工程、および
b)第1のタグに、ある1つのアミノ酸配列を含む第1のペプチドを形成するアミノ酸をカップリングする工程
を含み、それによって、第1のペプチドのアミノ酸配列のC末端は、アミド結合、エステル結合またはチオエステル結合の、好ましくは、ペプチドのアミド結合の配列特異的加水分解によって作製したC末端に対応する。この実施形態では、第1のペプチドを形成する個々のアミノ酸は、続いて、第1のタグに付着される。第1のペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸形成部分の基が、第1のタグに付着される、または第1のペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸形成部分の1つまたはいくつかが第1のタグに付着されると第1のタグに付着されることも本発明の範囲内にある。
【0149】
本明細書において、用語、アミノ酸配列のC末端は、好ましくは、アミノ酸配列の最後の、すなわち、最もC末端のアミノ酸残基を意味する。
【0150】
配列特異的加水分解は、タンパク質分解性酵素の反応、配列特異的化学反応または配列特異的物理的処理を含む群から選択される反応によって実施される。この種の反応は、当業者には公知であり、例えば、Handbook of Proteolytic Enzymes, Academic Press, 1998; Kaiser and Metzka, 1999参照のこと。
【0151】
配列特異的加水分解が、タンパク質分解性酵素によって実施される実施形態では、タンパク質分解性酵素は、ヒドロラーゼ、特に、C末端アルギニンおよびリシン残基をもたらすトリプシン、主にC末端アルギニン残基をもたらすトロンビン、C末端グルタミン酸残基をもたらすV8プロテアーゼ、C末端プロリン残基をもたらすプロリルエンドペプチダーゼ、主に、C末端フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニンもしくはロイシン残基をもたらすスブチリシンおよびキモトリプシンおよびC末端アラニン、グリシンセリンもしくはバリン残基をもたらすエスラスターゼのようなエンドプロテアーゼを含む群から選択される。
【0152】
配列特異的加水分解が配列特異的化学反応によって実施される実施形態では、配列特異的化学反応は、好ましくは、C末端ホモセリンラクトンをもたらす臭化シアンのようなシアンハロゲン化物を用いる処理およびC末端アスパラギン酸残基をもたらすアスパルチル−プロリル結合の選択的酸性加水分解を含む群から選択される。
【0153】
配列特異的加水分解が配列特異的物理的処理によって実施される実施形態では、このような配列特異的物理的処理は、好ましくは、例えば、質量分析計中で起こり得る高真空下でのイオン化によるフラグメンテーション反応から選択される(Pfeifer, T., Schierhorn, A., Friedemann, R., Jakob, M., Frank, R., Schutkowski, M., & Fischer G. (1997) Specific Fragmentation of Thioxo Peptides Facilitates the Assignment of the Thioxylated Amino Acid. J. Mass Spec. 32, 1064-1071)。
【0154】
好ましい実施形態では、配列特異的加水分解のためにどの種類の手段が使用されるかに関わらず、C末端は、アミノ酸残基であることが好ましい。好ましくは、このようなアミノ酸残基は、アルギニン、リシン、グルタミン酸およびプロリンを含む群から選択される。
【0155】
第1のペプチドは、アミノ酸配列を含む。一実施形態では、第1のペプチドは、アミノ酸配列からなる。前記の第1のペプチドに、第1のタグが付着される。好ましくは、このような第1のタグは、共有結合によって第1のペプチドに付着される。一実施形態では、第1のペプチドに付着された第2のタグがある。一実施形態では、第1のタグおよび第2のタグは両方とも、第1のペプチドに付着される。第1のタグが第1のペプチドに付着され、第2のタグが第1のペプチドに付着される実施形態では、好ましくは、第1のタグが、第1のペプチドのC末端アミノ酸残基に付着され、第2のタグが第1のペプチドのN末端アミノ酸残基に付着される。
【0156】
以下では、第1のタグの種々の実施形態が、より詳細に記載される。異なって示されない場合には、第1のタグについて記載される種々の実施形態は、第2のタグの実施形態でもあり得る。特徴および実施形態の記載が簡単にタグを指す場合には、特徴および実施形態のこのような記載は、第1のタグおよび第2のタグの両方の特徴および実施形態の記載であることを意味する。
【0157】
一実施形態では、タグは、ペプチド、プロテアーゼ基質および脱離基を含む群から選択される。
【0158】
タグがペプチドである実施形態では、このようなペプチドは、2〜10個のアミノ酸残基、好ましくは、2〜6個のアミノ酸残基、より好ましくは、2〜4個のアミノ酸残基、最も好ましくは、3個のアミノ酸残基からなる。このようなアミノ酸およびアミノ酸残基の化学については、それぞれ、個々のアミノ酸は、各々、ペプチドのその他のアミノ酸残基とは独立に、生体アミノ酸または非生体アミノ酸であり得るということは認められるべきである。また、個々のアミノ酸は、各々、ペプチドのその他のアミノ酸残基とは独立に、L−アミノ酸またはD−アミノ酸であり得る。個々のアミノ酸は、各々、ペプチドのその他のアミノ酸残基とは独立に、α−アミノ酸、β−アミノ酸残基、γ−アミノ酸残基またはδ−アミノ酸残基であり得るということも本発明の範囲内にある。一実施形態では、タグのアミノ酸配列は、L−アミノ酸残基からなる。別の実施形態では、タグのアミノ酸配列は、D−アミノ酸残基からなる。一実施形態では、タグのアミノ酸配列は、L−αアミノ酸残基からなる。別の実施形態では、タグのアミノ酸配列は、D−αアミノ酸残基からなる。
【0159】
一実施形態では、タグはペプチドであり、タグを形成するペプチドのアミノ酸残基の少なくとも1個が、ペプチドの合成の非同位体識別法において得られた同位体組成とは異なっている同位体組成を含む。本明細書において、好ましく使用されるように、ペプチドの合成の非同位体識別法は、原子の個々の同位体、ひいては、個々の同位体を含有するアミノ酸が、識別されない合成法である。結果として、個々の原子の同位体は偏らない。このような偏りは、1種または数種の同位体が濃縮されているようなものである場合がある。
あるいは、このような偏りは、1種または数種の同位体が枯渇しているようなものである場合がある。最後に、偏りは、同位体のある種または種の群が濃縮されているが、同位体の別の種または種の群が枯渇しているようなものである場合もある。本発明の方法に関連して使用される質量分析では、同位体およびその分布が重要な役割を果たすので、タグの合成のための非同位体識別法の使用は、好ましい。
【0160】
一実施形態では、タグは、好ましくは、ペプチド、芳香族アミド、芳香族エステルまたはチオエステル、脂肪族アミド、エステルまたはチオエステルを含む群から選択されるプロテアーゼ基質またはプロテアーゼ基質の一部である。一実施形態では、プロテアーゼ基質は、好ましくは、1〜20個のアミノ酸残基、好ましくは、1〜10個のアミノ酸残基、より好ましくは、1〜5個のアミノ酸残基、最も好ましくは、1〜3個のアミノ酸残基を含む、またはからなるペプチドである。
【0161】
一実施形態では、タグは、反応性基、好ましくは、化学反応性基を含む。このような反応性基は、標識のタグへのカップリングを可能にする。一実施形態では、カップリングは、タグおよび標識間の化学的結合の形成によって起こる。代替実施形態では、標識は、反応性基、好ましくは、化学反応性基を含む。このような反応性基は、タグの標識へのカップリングを可能にする。一実施形態では、カップリングは、タグおよび標識間の化学的結合の形成によって起こる。
【0162】
標識のタグへのカップリングについては、タグの第1のペプチドへのカップリング後に、標識がタグにカップリングされることは本発明の範囲内にある。代替実施形態では、タグの第1のペプチドへのカップリングの前に、標識がタグにカップリングされる。
【0163】
第1のタグおよび第2のタグのいずれかまたは両方の一実施形態では、標識は、アミノ酸の一部である。それと一致して、アミノ酸は、好ましくは、修飾されたアミノ酸である。このようなアミノ酸、好ましくは、修飾されたアミノ酸は、タグの合成において使用される。好ましい実施形態では、タグは、このようなアミノ酸を含むペプチドである。一実施形態では、このような修飾されたアミノ酸は、例えば、Cawley et al., J. Biol. Chem. 278, (2003)に記載されるようなメタ−ニトロ−チロシンである。
【0164】
タグ、第1のタグおよび第2のタグのいずれかまたは両方に付着される標識は、好ましくは、質量標識、蛍光標識およびUV標識を含む群から選択される。
【0165】
一実施形態では、質量標識は、ケージ化合物中に含有される。ケージド化合物は、当技術分野で公知であり、例えば、Capello et al., Cancer Biother. Radiopharm. 18, 2003, Storch et al., J. Nucl. Med. 46, 2005に記載されている。
【0166】
標識が質量標識である実施形態では、質量標識は同位体標識であり、同位体は、好ましくは、C同位体、N同位体、Cl同位体およびBr同位体を含む群から選択される。13Cとして好ましいC同位体。好ましいN同位体は、15N同位体である。好ましいBr同位体は、79Brおよび81Brである。好ましいCl同位体は、35Clおよび37Clである。
【0167】
標識が蛍光標識である実施形態では、蛍光標識は、中でも、Handbook of Proteolytic Enzymes, Academic Press, 1998に、またはThe Handbook - A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Invitrogen, http://www.invitrogen.com/site/us/en/home/References/Molecular-Probes-The-Handbook.htmlに記載されるような、β−7−メトキシ−クマリル−アラニン、クマリル誘導体、ナフチルアミン誘導体、ナフタレンのヒドロキシルおよびチオール誘導体、アミノ−、ヒドロキシル−またはチオール−フルオレセイン誘導体、アミノ−、ヒドロキシル−またはチオール−ローダミン誘導体およびアミノ安息香酸誘導体を含む群から選択されることが好ましい。
【0168】
標識がUV標識である実施形態では、UV標識は、中でも、Handbook of Proteolytic Enzymes, Academic Press, 1998, Peters et al., Curr. Microbiol. 18, 1989; Harper et al., Anal. Biochem. 118, 1981; Janowski et al., Anal. Biochem. 252, 1997; Glucksman et al., Biophys. J. 62, 1992またはSoeda et al., Chem. Pharm. Bull. 33, 1985に記載されるような、置換アニリン、置換アニリド、置換フェノール、置換チオフェノール、置換ナフチルアミン、置換ナフチルアミド、置換チオアリールエステル、置換アリールエステルのような置換芳香族アミン、アミド、フェノール、チオフェノール、エステル、チオエステルならびに置換第1級および第2級アミン、置換第2級および第3級アミド、置換アルコール、置換チオール、置換チオエステル、置換エステルのような置換脂肪族アミン、アミド、アルコール、チオール、エステル、チオエステルを含む群から選択されることが好ましい。
【0169】
タグまたはタグの第1の部分は、第1のペプチドへのカップリング後に除去可能である、すなわち、タグまたはその第1の部分が、タグまたはタグの第1の部分を含むコンストラクトから再度除去されるということは本発明の範囲内にある。これから生じる利点は、タグ、より詳しくは、除去されたタグと存在している第1のペプチド間の化学量論関係、このように除去または放出されたタグは、第1のペプチド、より詳しくは、タグにカップリングされた第1のペプチドの指標であるということである。これによって、タグの除去の前に、それぞれ、タグを定量化することによって、第1のペプチドおよびタグにカップリングされ第1のペプチドの定量化が可能となる。第1のタグおよび第2のタグの両方とも、それに定量化が基づくタグとして使用され得るが、定量化に使用されるタグは第1のタグであることが好ましい。
【0170】
第1のペプチドからのタグの除去は、化学的切断、酵素的切断および/または物理的切断によって起こり得る。このような化学的切断、酵素的切断または物理的切断を実施するための手段は、当業者に公知である。好ましい実施形態では、このような手段は、ペプチドのC末端が生成する配列特異的加水分解に関連して本明細書に記載されるものである。
一実施形態では、第1のペプチドからのタグの切断において使用される手段は、ペプチドのC末端が生成する配列特異的加水分解において使用されるものである。好ましい実施形態では、第1のタグまたはその第1の部分の除去は、配列特異的である。これは、このような実施形態では、配列特異的化学的切断のための手段、配列特異的酵素的切断のための手段または配列特異的物理的切断のための手段である前記手段、すなわち、化学的切断、酵素的切断および物理的切断のための手段の使用から起こることが好ましい。
【0171】
本発明に関連して、タグの機能の1つは、検出され得るシグナルを提供することである。このようなシグナルは、タグによって、タグに付着された標識によって、または両方によって提供され得る。このようなシグナルは、内部ペプチド標準を利用して、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法において使用するためのものである。好ましくは、このような方法は、本発明の種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法である。一実施形態では、シグナルは、タグを示し、さらにより好ましくは、定量的シグナルである。別の実施形態では、シグナルは、タグまたはその一部に比例する。シグナルは、1:1の化学量論に従う、すなわち、1シグナル単位(unity)は、1つのタグまたは標識に対応するということが好ましい。当業者ならば、化学量論が公知であり、方法の実施において再現性がある限り、本発明の方法の実施においてその他の化学量論も使用され得るということを理解するであろう。
【0172】
化学的切断、酵素的切断および/または物理的切断による第1からのタグの除去について、本明細書に開示されるその多様な実施形態においていわれてきたことは、タグの部分のみが、タグおよび第1のペプチドの両方を含むコンストラクトから除去される実施形態にも当てはまる、または適用可能である。したがって、この実施形態では、タグは、第1のペプチドから部分でのみ除去される。結果として、タグの一部は、第1のペプチドにカップリングされているままであるが、タグの別の部分は、タグおよび第1のペプチドを含むコンストラクトから除去される。この実施形態の通常の実施例は、第1のペプチドおよびタグを含むコンストラクトからタグの一部の切断除去の過程で、FRETシステムの2種の成分の一方が、FRETシステムのもう一方の成分から分離されるいわゆるFRETシステムである。このような切断除去によって、本発明の方法に関連して検出および使用され得るシグナルが生成する。FRETシステムは、例えば、Yaron et al. 1979、Bratovanova and Petkov 1987、Meldal et al. 1994、Wang et al. 1990、Lee et al., Blood 103, 204に記載されている。
【0173】
シグナルに応じて、種々の検出方法が使用され得る。このような検出方法は、蛍光検出、UV検出および質量検出を含む群から選択され得る。どのシグナルのためにどの検出方法が使用されるか、およびこれがそれぞれ、どのタグおよび標識のためであるかを決定することは、当業者の範囲内にある。
【0174】
タグは、第1のペプチドおよびタグを含むコンストラクトの固定化のために使用され得る。一実施形態では、タグが、表面に固定され、続いて、第1のペプチドがタグにカップリングされる。一実施形態では、タグが、表面に固定され、第1のペプチドのアミノ酸配列を形成するアミノ酸またはアミノ酸の基が、固定タグまたは第1のペプチドのアミノ酸配列の1個または数個のアミノ酸がすでにカップリングもしくは付着されている固定タグにカップリングまたは付着される。その一実施形態では、タグは、第1のタグである。代替実施形態では、タグは、第2のタグである。
【0175】
第2のタグがプロテアーゼ基質である一実施形態では、プロテアーゼ基質が、エンドプロテアーゼ基質のN末端部分を摸倣するペプチドおよびペプチド誘導体を含む群から選択されることが好ましい。第1のタグが、好ましくは、第1のペプチドのC末端に付着されているプロテアーゼ基質である一実施形態では、プロテアーゼ基質が、エンドプロテアーゼ基質のC末端部分を摸倣するペプチドおよびペプチド誘導体を含む群から選択されることが好ましい。
【0176】
一実施形態では、第2のタグは、ペプチドである。好ましくは、このようなペプチドは、ペプチドである第1のタグの1つまたはいくつかの特徴を有する。一実施形態では、第2のタグであるか、または第2のタグの一部であるペプチドが、N末端、好ましくは、第1のペプチドのアミノ酸配列のN末端アミノ酸残基に付着される。
【0177】
第1のタグおよび第2のタグが第1のペプチドにカップリングされる実施形態では、第1のタグおよび第2のタグは、互いに異なっていることが好ましい。第2のタグのカップリングの前に、第1のタグが第1のペプチドにカップリングされることは、本発明の範囲内である。しかし、第1のタグのカップリングの前に、第2のタグが第1のペプチドにカップリングされることも本発明の範囲内である。これは、第1および第2のタグがそれぞれ、全長分子としてカップリングされない場合、第1のタグおよび第2のタグのビルディングブロックが、続いて、第1のペプチドに付着される実施形態においても等しく当てはまる。
【0178】
第1のタグおよび第2のタグが、第1のペプチドにカップリングされる実施形態では、一実施形態では、第1のタグおよび第2のタグは異なっている。第1のタグおよび第2のタグが第1のペプチドにカップリングされ、第1のタグおよび第2のタグが異なっている実施形態では、第1のタグの標識は、第2のタグの標識とは異なっている。あるいは、第1のタグの標識および第2のタグの標識は同一である。
【0179】
第1のタグおよび第2のタグが第1のペプチドにカップリングされる実施形態では、一実施形態では、第1のタグおよび第2のタグは同一であるが、第1のタグの標識および第2のタグの標識は異なっている。
【0180】
一実施形態では、第2のタグは、アンカー部分を含む。アンカー部分は、リンカーに付着され、それによって、リンカーがアンカー部分と第2のタグの間に配置されることが好ましい。アンカー部分は、第2のタグおよび/または内部ペプチド標準を、好ましくは固体表面である表面に付着させるのに適していることが好ましい。代替実施形態では、表面は、可溶性であるが、溶媒が変更されると収縮および沈殿できるポリマーなどの非固体表面である。このようなポリマーは、当業者には公知である(Reactive and Functional Polymers, Volume 44, Issue 1, 14 April 2000, Pages 41-46, The effect of PEG groups on swelling properties of PEG-grafted-polystyrene resins in various solvents, Byeong-Deog Parka and Yoon-Sik Lee; BioPharm International Supplements, Mar 2, 2010, PEG Precipitation: A Powerful Tool for Monoclonal Antibody Purification, Michael Kuczewski, Emily Schirmer, PhD, Blanca Lain, PhD, Gregory Zarbis-Papastoitsis, PhD; Current Opinion in Chemical Biology, Volume 1, Issue 1, June 1997, Pages 107-113, Synthesis on soluble polymers: new reactions and the construction of small molecules, Dennis J Gravert and Kim D Janda)。
【0181】
一実施形態では、このようなポリマーは、修飾されたエチレングリコールである。表面との付着は、内部ペプチド標準の精製を目的として使用され得る。一実施形態では、アンカー部分によって、内部ペプチド標準の、表面との可逆的付着が可能になる。しかし、アンカー部分の付着および/または内部ペプチド標準が不可逆的である場合も本発明の範囲内である。付着が不可逆的である実施形態の場合には、付着は、共有結合による付着である。好ましい実施形態では、共有結合による付着は、アンカー部分、第2のタグまたは第1の内部ペプチド標準の化学選択的反応によって確立される。
【0182】
一実施形態では、アンカー部分は、ビオチン、イミノビオチン、デスチオビオチン、アビジン、ストレプトアビジンを含む群から選択され、アンカー部分が結合する表面は、互いに結合することが当技術分野で公知であるこれらのアンカー部分の相互作用パートナーを含む。あるいは、アンカー部分は、表面上の適当な反応性官能基との化学選択的反応を可能にする化学基である。このような化学基は、マレイミド基;ブロモピルビン酸または4−カルボキシ−α−ブロモ−アセトフェノンのようなα−ハロ−ケトン、4−カルボキシ−α−イソチオシアナト−アセトフェノンのようなα−イソチオシアナト−ケトン、カルボキシベンズアルデヒドのようなアルデヒド、レブリン酸のようなケトン、チオセミカルバジド、コハク酸モノチオアミドのようなチオアミド、ブロモ酢酸のようなα−ブロモ−カルボン酸、4−ヒドラジノ安息香酸のようなヒドラジン、アミノオキシ酢酸のようなO−アルキルヒドロキシルアミンおよびグルタル酸モノヒドラジドのようなヒドラジドのような第1のペプチドおよび/または第1のタグ中に見られない化学基に相当する。
【0183】
より詳しくは、それ自体当業者に公知であるいくつかの反応が、アンカー部分または第2のタグまたは内部標準ペプチドの付着のための化学選択的(chemosselective)反応を達成するために使用され得る。このような反応は、中でも、Lemieux & Bertozzi(Lemieux、G. A. & Bertozzi, C. R.,1998, Chemoselective ligation reactions with proteins, oligosaccharides and cells, TIBTECH, 16, 506-513、図16および17参照のこと)に記載されている。必要な方向性の固定を目的として、基本的に、それぞれの相互作用条件下で、実質的に1種のみの特定の化合物が、アミノ酸配列および表面の間で形成されることは保障されなければならない(図14および15)。したがって、アミノ酸配列側の反応性基の選択は、実質的に、個々の配列に応じて変わる。あるいは、すべてのアミノ酸配列の末端構造標準が提供され、この末端構造が、表面、特に、活性化された表面との特異的反応に利用されることは本発明の範囲内で提供される(図14および15)。通常、化学選択的反応の際に、アミノ酸配列中に含有されるアミノまたはカルボキシル基は、悪影響を受けない。適した反応の例として、ハロカルボン酸およびチオールからのチオエーテルの形成があり、これは、ハロカルボン酸およびチオールからのチオエーテル、チオールおよびマレイミドからのチオエーテル、チオエステルおよび1,2−アミノチオールからのアミド結合、ジチオエステルおよび1,2−アミノチオールからのチオアミド結合、アルデヒドおよび1,2−アミノチオールからのチアゾリジン、アルデヒド/ケトンおよび1,2−アミノアルコールからのオキサゾリジン、アルデヒド/ケトンおよび1,2−ジアミンからのイミダゾール(図16および17も参照のこと)、チオアミドおよびα−ハロ−ケトンからのチアゾール、アミノオキシ化合物およびα−イソチオシアナト−ケトンからのアミノチアゾール、アミノオキシ化合物およびアルデヒドからのオキシム、アミノオキシ化合物およびケトンからのオキシム、ヒドラジンおよびアルデヒドからのヒドラゾン、ヒドラジドおよびケトンからのヒドラゾンの形成を含む。さらに、図16および17において示されるラジカルR1〜R5または上記の化学選択的反応における残基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはアリールラジカルまたは複素環式化合物であり得、ここで、アルキルは、分岐および非分岐C1−20−アルキル、C3−20−シクロアルキル、好ましくは、分岐および非分岐−C1−12アルキル、C3−12シクロアルキル、特に好ましくは、分岐および非分岐C1−6−アルキル、C3−6−シクロアルキルラジカルを表す。アルケニルは、分岐および非分岐C2−20−アルケニル、分岐および非分岐C1−20−アルキル−O−C2−20アルケニル、C1−20(−O/S−C2−202−20アルケニル、アリール−C2−20−アルケニル、分岐および非分岐ヘテロシクリルC2−20アルケニル、C3−20−シクロアルケニル、好ましくは、分岐および非分岐C2−12−アルケニル、分岐および非分岐C1−12(−O/S−C2−122−12アルケニル、特に好ましくは、分岐および非分岐C2−6−アルケニル、分岐および非分岐C1−6(−O/S−C2−82−8アルケニルラジカルを表し;アルキニルは、分岐および非分岐C2−20−アルキニル、分岐および非分岐C1−20(−O/S−C2−202−20アルキニル、好ましくは、分岐および非分岐C2−12−アルキニル、分岐および非分岐C1−12(−O/S−C2−122−12アルキニル、特に好ましくは、分岐および非分岐C2−6−アルキニル、分岐および非分岐C1−6(−O/S−C2−82−8アルキニルラジカルを表し;シクロアルキルは、架橋および非架橋C3−40−シクロアルキル、好ましくは、架橋および非架橋C3−26−シクロアルキル、特に好ましくは、架橋および非架橋C3−15−シクロアルキルラジカルを表し;アリールは、置換および非置換単一連結−または多重連結フェニル、ペンタレニル、アズレニル、アントラセニル、インダセニル、アセナフチル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニルを表し、好ましくは、置換および非置換単一連結または多重連結フェニル、ペンタレニル、アズレニル、アントラセニル、インデニル、インダセニル、アセナフチル、フルオレニルを表し、特に好ましくは、置換および非置換単一連結または多重連結フェニル、ペンタレニル、アントラセニルラジカルならびにその部分水和された誘導体を表す。複素環式化合物は、1〜7個のヘテロ原子を有する不飽和および飽和3〜15員単環式、二環式および三環式環、好ましくは、1〜5個のヘテロ原子を有する3〜10員の単環式、二環式および三環式環、特に好ましくは、1〜3個のへテロ原子を有する5員、6員および10員の単環式、二環式および三環式環であり得る。
【0184】
さらに、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロ原子、複素環式化合物、生体分子または天然物質で、0〜30(好ましくは、0〜10、特に好ましくは、0〜5)の以下の置換基:フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、アミド、エステル、酸、アミン、アセタール、ケタール、チオール、エーテル、ホスフェート、スルフェート、スルホキシド、ペルオキシド、スルホン酸、チオエーテル、ニトリル、尿素、カルバマートが、単独で、または互いに組み合わせて生じてもよく、以下:フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシル、アミド、エステル、酸、アミン、エーテル、ホスフェート、スルフェート、スルホキシド、チオエーテル、ニトリル、尿素、カルバマートが好ましく、塩素、ヒドロキシル、アミド、エステル、酸、エーテル、ニトリルが特に好ましい。
【0185】
アンカー部分と第2のタグの間に配置されているリンカーは、一実施形態では、リンカーは、少なくとも2つの官能基からなる化学構造である。リンカーは、アンカー部分を、共有結合で第1のペプチドとつなぐことが好ましい。リンカーは、アンカー部分を第1のペプチドから離して配置し、これによって、アンカー部分と固体表面間の適切な相互作用が可能となる。さらに、リンカーによって、第2のタグ/第1の(fist)ペプチド結合の効率的な酵素的切断が可能となる。
【0186】
一実施形態では、リンカーは、N−(3−{2−[2−(3−アミノ−プロポキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピル)−スクシンアミド酸または分岐鎖もしくは直鎖いずれかのアルカン、好ましくは、2〜30個の炭素原子からなるもの、より好ましくは、4〜20個の炭素原子からなるもの、最も好ましくは、4〜10個の炭素原子からなるもの;またはエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドのポリマー、好ましくは、1〜10、より好ましくは、2〜5のエチレンオキシドもしくはポリプロピレンオキシド単位からなるポリマーを意味するポリエーテル、またはポリグリコールおよびO,O’−ビス(2−アミノプロピル)−ポリエチレングリコールのようなその誘導体のような分岐もしくは非分岐のポリアルコールまたはポリウレタン、ポリヒドロキシ酸、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、好ましくは、1〜100個の単量体単位からなるもの、より好ましくは、1〜50個の単量体単位からなるもの、最も好ましくは、1〜20個の単量体単位からなるものまたは記載されたアルカンと、記載されたポリウレタン、ポリヒドロキシ酸、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンの組合せ、または分岐鎖もしくは直鎖いずれかのジアミノアルカン、好ましくは、2〜30個の炭素原子からなるもの、より好ましくは、2〜20個の炭素原子からなるもの、最も好ましくは、1,3−ジアミノプロパン、1,6−ジアミノヘキサンおよび1,8−ジアミノオクタンのような2〜10個の炭素原子からなるもの、ならびにジアミノアルカンと1,4−ビス−(3−アミノプロポキシ)ブタンのようなポリエーテルもしくはカルボン酸およびジカルボン酸およびヒドロキシ−、メルカプト−およびアミノカルボン酸または分岐もしくは直鎖いずれかのジカルボン酸のような誘導体、好ましくは、2〜30個の炭素原子からなるもの、より好ましくは、2〜20個の炭素原子からなるもの、最も好ましくは、コハク酸もしくはグルタル酸のような2〜10個の炭素原子からなるものとの組合せを含む群から選択される。アミノ酸およびペプチドは、好ましくは、1〜20個の残基またはより好ましくは、1〜10個の残基または最も好ましくは、リシンの三量体、3−アミノプロピオン酸の二量体および6−アミノヘキサン酸の単量体のような1〜3個の残基からなる。好ましくは、リンカーは、N−(3−{2−[2−(3−アミノ−プロポキシ)−エトキシ]−エトキシ}−プロピル)−スクシンアミド酸のようなジカルボン酸とジアミノポリエーテルとの組合せである。
【0187】
一実施形態では、第2のタグは、リンカーが、アンカー部分とN末端の間、好ましくは、第2のタグのN末端アミノ酸残基の間に配置される、アミノ酸配列を含むペプチドを含む。
【0188】
本発明の方法の一実施形態では、内部ペプチド標準は第2のタグ、第1のペプチドおよび第1のタグを含み、内部ペプチド標準はペプチドの混合物中に含有され、内部ペプチド標準は表面に固定され、内部ペプチド標準は、内部ペプチド標準のアンカー部分を介して表面と特異的に相互作用する。1つのまたはいくつかのその後の工程では、内部ペプチド標準とは異なっているペプチドが、混合物から除去される。好ましくは、第2のタグおよびアンカー部分、それぞれによる内部ペプチド標準の固定の特異性によって、第2のタグおよびアンカー部分それぞれの、表面との相互作用が可能となる。このために、任意の非結合性化合物または、非特異的結合性化合物が、洗浄などによって除去され得、この結果、通常、表面に固定される、意図される内部ペプチド標準が精製される。
【0189】
上記から、一実施形態では、内部ペプチド標準は、表面に付着されていることが理解されよう。付着が、ビオチン、デスチオビオチン、アビジンまたはストレプトアビジンの使用などによって可逆性である場合には、これらおよび同様の化合物の添加が、このように固定された内部ペプチド標準と前記化合物の相互作用パートナーの間の競合をもたらし、そこで、固定された内部ペプチド標準が放出される。付着が共有結合である代替実施形態では、第1のタグを含むかどうかにかかわらず、第2のタグと第1のペプチド間の配列特異的切断のための手段の使用が好ましく、そこで、このような第1のペプチドが、表面から放出される。いずれの場合も、この種の手順によって、精製された内部ペプチド標準が提供される。
【0190】
このように得られた、または任意の形態の精製された内部ペプチド標準は、好ましくは、特に、複数の種の内部ペプチド標準からなる、内部ペプチド標準のライブラリーを調製する方法および種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法をはじめとする本発明の任意の方法においてさらに使用され得る。前記方法において使用するために、このように精製された内部ペプチド標準は、第2および/または第1のタグを依然として含有するかどうかにかかわらず、種々の反応器に移されることが好ましい。前記方法の種々の実施形態に応じて、第2のタグが、内部ペプチド標準の使用に先立って除去されるということは、当業者には認められよう。前記方法の種々の実施形態に応じて、第1のタグが内部ペプチド標準の使用に先立って除去されるということは、当業者には認められよう。最後に、前記方法の種々の実施形態に応じて、第1および第2のタグが内部ペプチド標準の使用に先立って除去されるということは、当業者には認められよう。第1のタグ、第2のタグまたは第1のタグおよび第2のタグの両方が除去されると、第1、第2、または第1および第2のタグの両方の定量化、ひいては、最終的に、内部ペプチド標準の定量化のための方法が進行し得る。第1のタグ、第2のタグならびに第1のタグおよび第2のタグの定量化のための方法は、当業者に公知である。当業者には認められており、明らかであるように、使用される特定の方法は、個々のタグの種類に応じて、タグが少なくとも1種の標識を有する実施形態では、標識の種類に応じて異なる。
【0191】
本発明はまた、内部ペプチド標準のライブラリーまたはパネルおよびそれらを調製する方法に関する。好ましくは、内部ペプチド標準のライブラリーまたはパネルは、複数の種の内部ペプチド標準を含む。本明細書において、好ましく使用されるように、複数の種の内部ペプチド標準とは、少なくとも2種の内部ペプチド標準を意味する。内部ペプチド標準のライブラリーを調製するための本発明の方法は、以下の工程:
a)複数の種の内部ペプチド標準を個々に調製し、それによって、内部ペプチド標準の各種が、本発明の内部ペプチド標準を調製する方法に従って調製される工程と;
b)個別に調製された内部ペプチド標準の種を所望により混合する工程と
を含み、内部ペプチド標準の種は、第1および/または第2のタグおよび/または第1のペプチドのアミノ酸配列において互いに異なる。
【0192】
一実施形態では、第1および/または第2のタグは、アミノ酸配列を有するペプチドを含み、内部ペプチド標準のライブラリーの各種のアミノ酸配列は、内部ペプチド標準のライブラリーのその他の種のアミノ酸配列とは異なっている。その一実施形態では、種々の種のアミノ酸配列が、第1のペプチドのアミノ酸配列に関して互いに異なる。
【0193】
種々の種のアミノ酸配列が、第1のペプチドのアミノ酸配列に関して互いに異なる実施形態では、種々の種の第1および第2のタグは、同一であり得る。種々の種の第1および第2のタグが同一である場合およびそれらが標識を有する場合は、種々の種の種々の第1および/または第2のタグについて標識が同一であることは本発明の範囲内である。このような場合には、標識の定量化は、通常、個々の種々の種によって寄与される分子の個々の数間を識別せずに、反応または容器中に含有される内部ペプチド標準分子の総数に関する情報を提供する。種々の種の第1および第2のタグが同一である場合およびそれらが標識を有する場合には、種々の種の第1のタグおよび/または第2のタグの標識が異なっていること、より好ましくは、種々の種の第1のタグの標識が異なっており、したがって個々の種について特徴的であることは本発明の範囲内である。このような場合には、標識の定量化は、通常、個々の種々の種によって寄与される分子の個々の数間を識別して、反応または容器中に含有される種々の個々の内部ペプチド標準の数に関する情報を提供する。
同じ考慮が、第1のタグ(単数または複数)および第2のタグ(単数または複数)が特定の標識を必要としないが、第1のタグ(単数または複数)および第2のタグ(単数または複数)が、その化学的および/または物理的特徴のために、標識によって別に付与される情報を提供する場合に当てはまる。このように構成する場合の一例および実施形態として、第1および/または第2のタグの配列(単数または複数)が、それぞれの第1のペプチドの配列のコードを表すような方法での、第1および/または第2のタグ(単数または複数)の配列(単数または複数)の作製のための規定されたアミノ酸残基のコンビナトリアルケミストリーにおける使用がある。言い換えれば、特定の第1および/または特定の第2のタグは、特定の第1のペプチドを示し、特定の第1および/または第2のタグの同定および/または定量化は、事実上、第1のペプチドの同定および/または定量化である。
したがって、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の方法において、第2の特定の第1のペプチドを示す第2の特定の第1および/または第2の特定の第2のタグがある場合には、第2の第1のペプチドが、標的ポリペプチド、好ましくは、第2の標的ポリペプチドのプロテオタイプのペプチドであるという条件で、種々のポリペプチドの混合物において前記の第1のペプチドと前記の第2の第1のペプチド間を識別し得る。
【0194】
第2の態様では、本発明は、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法に関する。
【0195】
第1の基本的な実施形態では、本発明の種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法は、以下の工程:
a)好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物を提供する工程と;
b)本発明の内部ペプチド標準または本発明の内部ペプチド標準のパネルを添加し、好ましくは、本発明の内部ペプチド標準の量または本発明の内部ペプチド標準のパネルの量が未知であり、それによって、スパイクされた混合物を作製する工程と;
c)スパイクされた混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、内部ペプチド標準(単数または複数)から第1のタグおよび/または第2のタグを切断除去し、このようにして第1のペプチドを放出し、複数のペプチドが、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドと内部標準から放出された第1のペプチドとを含む工程と;
d)スパイクされた混合物中に含有される第1および/または第2のタグの量を決定することならびにそれから工程b)において添加された内部標準(単数または複数)の量を決定する工程と;
e)各々、c)において作製された、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定する工程と;
f)工程d)において決定された内部標準(単数または複数)の比および量から、種々のポリペプチドの混合物中の標的ポリペプチドの量を算出する工程と
を含む、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法であって、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドまたは内部ペプチド標準(単数または複数)の第1のペプチドのいずれかが質量標識を含む方法である。本発明の内部ペプチド標準の量または本発明の内部ペプチド標準のパネルの量に、好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物が添加され、それによってスパイクされた混合物を作製することは、当業者には認められよう。
【0196】
この第1の基本的な実施形態では、本発明の内部ペプチド標準の量は、種々のポリペプチドの混合物に、このような内部ペプチド標準が添加される場合には未知である。第1のタグおよび/または第2のタグは、プロテオタイプのペプチドが配列特異的加水分解によって種々のポリペプチドの混合物から作製される場合に第1のペプチドから切断除去されるだけであり、そのために、例えば、本明細書に開示されるような配列特異的加水分解が使用され得る。この第1の基本的実施形態では、プロテオタイプのペプチドの放出ならびに第1および第2のタグのいずれかまたは両方、好ましくは、第1のタグの放出をもたらす配列特異的加水分解は、配列特異的加水分解のための同一手段によって達成されることが好ましい。
【0197】
第1の基本的実施形態では、工程c)において配列特異的加水分解のための手段で処理された後のスパイクされた混合物は、分画工程に付され得る。このような分画工程は、クロマトグラフィー手順によって、好ましくは、液体クロマトグラフィーによって実施され得る。このような分画工程の目的は、工程c)を実施した際に得られた反応混合物の複雑性を低減することである。このような工程c)において、前記混合物中に含有されるポリペプチドの種の数に応じて、種々のポリペプチドの混合物の配列特異的加水分解によって膨大な数のペプチドが生じ得るということは、当業者には認められよう。生体サンプル、より詳しくは、細胞または臓器の溶解物などの複雑な混合物では、配列特異的加水分解は、最終的に、何十万種のペプチドの生成をもたらし得る。工程c)を実施した際に得られた反応混合物の複雑性を低減することによって、スパイクされた混合物中に含有される第1および/または第2のタグの量を決定する工程ならびにそれから工程b)において添加された内部標準(単数または複数)の量を決定する工程、より好ましくは、工程e)の主題として、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定する工程が、より容易に実施され得、分析装置の性能は、あまり進歩していないものであってもよい。
【0198】
第1の基本的実施形態に従う方法の一実施形態では、工程c)の後、工程e)の前に、処理されたスパイク混合物、すなわち、工程c)を実施した後に得られた反応混合物が分離工程に付されて、第1のペプチドおよび種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドが、処理されたスパイク混合物の成分から分離される。この実施形態は、事実上、直前の実施形態の極めて特定の実施形態である。
【0199】
第1の基本的な実施形態に従う方法の一実施形態では、工程c)の後、工程e)の前に、処理されたスパイク混合物が分離工程に付されて、処理されたスパイク混合物の成分から第1および第2のタグが分離される。この分離工程によって、第1および/または第2のタグは、工程c)を実施した後に得られた反応混合物から除去される。第1のタグおよび/または第2のタグのこのような分離は、第1および/または第2のタグの検出および定量化が、工程c)を実施した後に得られた反応混合物中に含有されるその他の化合物によって妨げられないか、または不明瞭にされない限り有利であり得る。これによって、第1および/または第2のタグの検出および定量化のための、より高い正確度および/またはより少ない複雑性の分析方法が可能となる。
【0200】
第2の基本的な実施形態では、本発明の種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法は、
a)好ましくは、標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物を提供することと;
b)本発明の内部ペプチド標準または本発明の内部ペプチド標準のパネルを提供し、好ましくは、内部ペプチド標準および/または内部ペプチド標準のパネルの提供された量が未知であり、内部ペプチド標準または内部ペプチド標準のパネルを、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、内部ペプチド標準または内部ペプチド標準のパネルから第1のタグおよび/または第2のタグを切断除去し、このようにして第1のペプチドを放出することと;
ca1)工程a)の種々のポリペプチドの混合物に、工程b)の実施において得られた反応混合物を添加することもしくは工程b)の実施において得られた反応混合物に、工程a)の種々のポリペプチドの混合物を添加することおよび
ca2)工程ca1)の実施において得られた混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドがプロテオタイプのペプチドを含むこと;
または
cb1)工程a)の種々のポリペプチドの混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドがプロテオタイプのペプチドを含むこと;および
cb2)工程cb1)の実施において得られた混合物に、工程b)の実施において得られた反応混合物を添加することもしくは工程b)の実施において得られた反応混合物に、工程cb1)の実施において得られた混合物を添加すること
のいずれかによって、工程ca2)およびcb2)の後に、それぞれ、スパイクされた混合物が得られることと;
d)スパイクされた混合物中に含有される第1および/または第2のタグの量を決定することならびにそれから工程b)において添加された内部標準(単数または複数)の量を決定することと;
e)スパイクされた混合物中の、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定することと;
f)工程d)において決定された内部標準(単数または複数)の比および量から、種々のポリペプチドの混合物中の標的ポリペプチドの量を算出することと
を含む、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法であって、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドまたは内部ペプチド標準(単数または複数)の第1のペプチドのいずれかが質量標識を含む方法である。
【0201】
この第2の基本的な実施形態では、2つの基本的な代替案があり得る。第1の代替案では、工程ca1)およびca2)が実施される。第2の代替案では、工程cb1)およびcb2)が実施される。それにもかかわらず、この第2の実施形態では、内部ペプチド標準(単数または複数)を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理することは、好ましくは、標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物の処理とは別個に達成される。
【0202】
第2の基本的な実施形態では、工程ca2)の実施後に、または工程cb1)もしくはcb2)の実施後に得られた反応混合物は、分画工程に付され得る。このような分画工程は、クロマトグラフィー手順によって、好ましくは、液体クロマトグラフィーによって実施され得る。このような分画工程の目的は、工程ca2)を実施した際に得られた反応混合物または工程cb1)もしくはcb2)を実施した際に得られた反応混合物の複雑性を低減することである。前記工程ca2)、cb1)およびcb2)では、前記混合物中に含有されるポリペプチドの種の数に応じて、種々のポリペプチドの混合物の配列特異的加水分解によって膨大な数のペプチドが生じ得るということは、当業者には認められよう。
生体サンプル、より詳しくは、細胞または臓器の溶解物などの複雑な混合物では、配列特異的加水分解は、最終的に、何十万種のペプチドの生成をもたらし得る。それぞれ、工程ca2)、cb1)およびcb2)を実施した際に得られた反応混合物の複雑性を低減することによって、スパイクされた混合物中に含有される第1および/または第2のタグの量を決定する工程ならびにそれから添加された内部標準(単数または複数)の量を決定する工程、より好ましくは、工程e)の主題として、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定する工程が、より容易に実施され得、分析装置の性能は、あまり進歩していないものであってもよい。この実施形態に関連して、スパイクされた混合物はまた、工程ca2)およびcb2)の実施後に得られ、前記分画工程に付されている反応混合物も指す。
【0203】
第2の基本的な実施形態に従う方法の一実施形態では、工程e)の前に、処理されたスパイク混合物、すなわち、工程ca2)、cb1)またはcb2)を実施した後に得られた反応混合物は分離工程に付されて、第1のペプチドおよび種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドが、処理されたスパイク混合物の成分から分離される。この実施形態は、事実上、直前の実施形態の極めて特定の実施形態である。この実施形態に関連して、スパイク混合物はまた、工程ca2)およびcb2)の実施後に得られ、前記分離工程に付されている反応混合物も指す。
【0204】
第2の基本的な実施形態に従う方法の一実施形態では、工程d)の前に、処理されたスパイク混合物は分離工程に付されて、処理されたスパイク混合物の成分から第1および第2のタグが分離される。この分離工程によって、第1および/または第2のタグは、工程c)を実施した後に得られた反応混合物から除去される。第1のタグおよび/または第2のタグのこのような分離は、第1および/または第2のタグ検出および定量化が、工程ca2)、cb1)およびcb2)を実施した後に得られた反応混合物中に含有されるその他の化合物によって妨げられないか、または不明瞭にされない限り有利であり得る。これによって、第1および/または第2のタグの検出および定量化のための、より高い正確度および/またはより少ない複雑性の分析方法が可能となる。この実施形態に関連して、スパイクされた混合物はまた、工程ca2)およびcb2)の実施後に得られ、前記分離工程に付されている反応混合物も指す。
【0205】
第2の基本的な実施形態に従う方法の一実施形態では、工程b)において使用される配列特異的加水分解のための手段は、工程ca1)またはcb1)の実施に先立って工程b)の実施において得られた混合物から除去される。このような手段は、当業者に公知である。配列特異的加水分解のための手段を除去するための手順の限定されない例として、液体クロマトグラフィー、高性能逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、キャピラリー電気泳動、ゲル電気泳動およびアフィニティークロマトグラフィーがある。この実施形態において使用されるように、配列特異的加水分解のための手段の除去はまた、このような手段の不活性化も包含する。例えば、手段は、酵素であり、この酵素は、熱処理によって、pHシフトまたは酵素活性に対する阻害剤の添加によって不活化され得る。
【0206】
第3の基本的実施形態では、本発明の種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法は、
a)本発明の内部ペプチド標準または本発明の内部ペプチド標準のパネルを提供し、本発明の内部ペプチド標準または本発明の内部ペプチド標準のパネルの量が未知であり、内部ペプチド標準または内部ペプチド標準のパネルを、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、内部ペプチド標準または内部ペプチド標準のパネルから第1のタグおよび/または第2のタグを切断除去し、このようにして第1のペプチドを放出することと; b)配列特異的加水分解のための手段を、所望により除去することと;
c)工程b)のa)の実施から得られた混合物中に含有されている第1および/または第2のタグの量を決定することならびにそれから前記混合物中に含有された内部標準の量を決定することと;
d)好ましくは、標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物を提供することと;
da1)工程d)の種々のポリペプチドの混合物に、工程a)もしくはb)の実施において得られた反応混合物の一部を添加することもしくは工程a)もしくはb)の実施において得られた反応混合物の一部に、工程d)の種々のポリペプチドの混合物を添加することおよび
da2)工程da1)の実施において得られた混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドが、プロテオタイプのペプチドを含むこと;
または
db1)工程d)の種々のポリペプチドの混合物を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理して、種々のポリペプチドの混合物から複数のペプチドを作製し、それによって、複数のペプチドがプロテオタイプのペプチドを含むこと;および
db2)工程db1)の実施において得られた混合物に、工程a)またはb)の実施において得られた混合物の一部を添加することもしくは工程a)もしくはb)の実施において得られた混合物の一部を添加することに、工程db1)の実施において得られた混合物を添加すること;
のいずれかによって、工程da2)およびdb2)後にそれぞれ、スパイクされた混合物が得られることと;
e)スパイクされた混合物中の、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定することと;
f)内部標準(単数または複数)の比および量から、種々のポリペプチドの混合物中の標的ポリペプチドの量を算出することと
を含む、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定する方法であって、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドまたは内部ペプチド標準(単数または複数)の第1のペプチドのいずれかが質量標識を含む方法である。
【0207】
この第3の基本的実施形態では、2つの基本的な代替案があり得る。第1の代替案では、工程da1)およびda2)が実施される。第2の代替案では、工程db1)およびdb2)が実施される。それにもかかわらず、この第2の実施形態では、内部ペプチド標準(単数または複数)を、配列特異的加水分解のための手段を用いて処理することは、好ましくは、標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物の処理とは別個に達成され、さらに、工程c)として、工程b)のa)の実施から得られた混合物中に含有される第1および/または第2のタグの量が決定され、それから、前記混合物中に含有される内部標準の量が決定される。それと一致して、好ましくは標的ポリペプチドを含有するこのような種々のポリペプチドの混合物が、方法のその段階で配列特異的加水分解に付されているかどうかにかかわらず、反応、工程a)またはb)の実施において得られた反応混合物の一部を添加することで、好ましくは、前記反応混合物の既知アリコートによって、好ましくは標的ポリペプチドを含有する種々のポリペプチドの混合物に、内部ペプチド標準の既知量が添加される。
【0208】
第3の基本的実施形態では、工程da2)の実施後に、または工程db1)またはdb2)の実施後に得られた反応混合物は、分画工程に付され得る。このような分画工程は、クロマトグラフィー手順によって、好ましくは、液体クロマトグラフィーによって実施され得る。このような分画工程の目的は、工程da2)を実施した際に得られた反応混合物または工程db1)もしくはdb2)を実施した際に得られた反応混合物の複雑性を低減することである。前記工程da2)、db1)およびb2)では、前記混合物中に含有されるポリペプチドの種の数に応じて、種々のポリペプチドの混合物の配列特異的加水分解によって膨大な数のペプチドが生じ得るということは、当業者には認められよう。生体サンプル、より詳しくは、細胞または臓器の溶解物などの複雑な混合物では、配列特異的加水分解は、最終的に、何十万種のペプチドの生成をもたらし得る。それぞれ、工程da2)、db1)およびdb2)を実施した際に得られた反応混合物の複雑性を低減することによって、工程e)の主題として、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定する工程が、より容易に実施され得、分析装置の性能は、あまり進歩していないものであってもよい。特に、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比が、質量分析によって決定される場合には、低い解像度を有する質量分析計が使用されてもよく、これによって、本発明の方法が、自由に使える最新式の質量分析計を有さない実験室によっても使用され得ることが可能となる。この実施形態に関連して、スパイクされた混合物はまた、前記分画工程に付されており、工程da2)およびdb2)の実施後に得られる反応混合物も指す。
【0209】
第3の基本的実施形態に従う方法の一実施形態では、工程e)の前に、処理されたスパイク混合物、すなわち、工程da2)、db1)またはdb2)を実施した後に得られた反応混合物は分離工程に付されて、第1のペプチドおよび種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドが、処理されたスパイク混合物の成分から分離される。この実施形態は、事実上、直前の実施形態の極めて特定の実施形態である。この実施形態に関連して、スパイク混合物はまた、前記分画工程に付されており、工程da2)およびdb2)の実施後に得られる反応混合物も指す。
【0210】
第3の実施形態に従う方法の一実施形態では、工程da1)の前に、工程a)またはb)の実施において得られた反応混合物は分離工程に付されて、前記反応混合物の成分から第1および第2のタグが分離される。第1のタグおよび/または第2のタグのこのような分離は、第1および/または第2のタグ検出および定量化が、工程da2)、db1)およびdb2)を実施した後に得られた反応混合物中に含有されるその他の化合物によって妨げられないか、または不明瞭にされない限り有利であり得る。これによって、第1および/または第2のタグの検出および定量化のための、より高い正確度および/またはより少ない複雑性の分析方法が可能となる。この実施形態に関連して、スパイクされた混合物はまた、工程da2)、db1)およびcb2)の実施後に得られ、前記分離工程に付されている反応混合物も指す。第3の実施形態に従う方法の代替実施形態では、工程db2)の前に、工程db1)の実施において得られた反応混合物は分離工程に付されて、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドが、前記反応混合物の成分から分離される。この実施形態は、事実上、分画工程を含む上記の実施形態の極めて特定の実施形態である。この実施形態に関連して、スパイクされた混合物はまた、工程da2)、db1)およびdb2)の実施後に得られ、前記分離および/または分画工程に付されている反応混合物も指す。
【0211】
第3の実施形態に従う方法の一実施形態では、工程a)において使用される配列特異的加水分解のための手段は、工程c)またはd)を実施する前に、工程a)の実施において得られた混合物から除去される。第3の基本的実施形態に従う方法のさらなる実施形態では、配列特異的加水分解のための手段は、工程da1)において、または工程db1)において使用されると、工程e)を実施する前に除去される。このような手段は、当業者に公知である。配列特異的加水分解のための手段を除去するための手順の限定されない例として、液体クロマトグラフィー、高性能逆相液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、キャピラリー電気泳動、ゲル電気泳動およびアフィニティークロマトグラフィーがある。この実施形態において使用されるように、配列特異的加水分解のための手段の除去はまた、このような手段の不活性化も包含する。例えば、手段は、酵素であり、酵素は、熱処理または酵素活性に対する阻害剤の添加によって不活化され得る。
【0212】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の方法の第1、第2および第3の基本的実施形態の各々およびいずれかにおいて、種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドまたは内部ペプチド標準(単数または複数)の第1のペプチドのいずれかが、少なくとも1種の質量標識を含むことが好ましい。質量標識の使用によって、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を決定することが可能になる。
【0213】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の方法に関連して、内部ペプチド標準から放出された第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比は、質量分析によって決定されることが好ましい。
【0214】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の方法の第1、第2および第3の基本的実施形態の各々およびいずれかにおいて、質量標識は、C同位体およびN同位体を含む群から選択されることが好ましい。適したC同位体およびN同位体は、当業者に公知である。好ましいC同位体は、質量分析によって、第1のタグおよび/または第2のタグおよび/または第1のペプチドおよび/またはプロテオタイプ(proteotpyic)のペプチドの識別、好ましくは、第1のペプチドをプロテオタイプのペプチドと識別することを可能にするものである。このような好ましいC同位体は、13C同位体を含む群から選択されることが好ましい。好ましいN同位体は、質量分析によって、第1のタグおよび/または第2のタグおよび/または第1のペプチドおよび/またはプロテオタイプのペプチドの識別、好ましくは、第1のペプチドをプロテオタイプのペプチドと識別することを可能にするものである。このような好ましいN同位体は、15N同位体を含む群から選択されることが好ましい。この実施形態では、内部ペプチド標準は、好ましくは標的ポリペプチドおよびプロテオタイプのペプチドそれぞれを含有する種々のポリペプチドの混合物の同位体と比較して、重いまたは軽い同位体を含有し得る。しかし、好ましくは標的ポリペプチドおよびプロテオタイプのペプチドをそれぞれ含有する種々のポリペプチドの混合物が、内部ペプチド標準中に含有される同位体と比較して、重いまたは軽い同位体を含有し得ることも本発明の範囲内である。このような同位体は、それぞれの同位体(単数または複数)を含有するこのような内部ペプチド標準のビルディングブロックの使用によって、内部ペプチド標準中に組み込まれ得、ならびに/または、このような同位体は、このような同位体(単数または複数)を有するこのような種々のポリペプチドおよびプロテオタイプのペプチドのビルディングブロックを使用することによって、好ましくは標的ポリペプチドおよびプロテオタイプのペプチドをそれぞれ含有する種々のポリペプチドの混合物の種々のポリペプチド中に組み込まれ得る。種々のポリペプチドまたは種々のポリペプチドの混合物が、細胞、組織、臓器または生物体などの生物システムから導かれる場合には、それぞれ標識された種々のポリペプチドおよびプロテオタイプのペプチドは、このような 生物システムに、このような種々のポリペプチドおよびプロテオタイプのペプチドの標識されたビルディングブロックまたは前駆体をそれぞれ供給することによって得られ得る。
【0215】
異なって標識された第1のペプチドおよびプロテオタイプのペプチドの使用に起因する分子量のこの相違のために、第1のペプチド対種々のポリペプチドに由来するプロテオタイプのペプチドの比を、好ましくは、質量分析によって決定することが可能である。
【0216】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の方法の第1、第2および第3の基本的実施形態の各々およびいずれかにおいて使用されるように、質量分析(Mass spectromertry)は、当業者に公知であり、例えば、Gsteiger and Aebersold,Nat. Rev. Genet. 10, 2009に記載されている。好ましい実施形態では、質量分析は、多段質量分析である。Pan et al., J. Proteome Res. 8, 2009。
【0217】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の方法の第1、第2および第3の基本的実施形態の各々およびいずれかでは、ペプチドの存在に特徴的であるフラグメンテーションによって得られるペプチドサインは、プロテオタイプのペプチドについて、ひいては、第1のペプチドについても公知であることが好ましい。その一実施形態では、フラグメンテーションによって得られるペプチドサインが、好ましくは、タンデム質量分析計における、それに続く分析に付される。フラグメンテーションのための方法は、当業者に公知であり、衝突誘起解離(例えば、Wells JM, McLuckey SA (2005). 「Collision-induced dissociation (CID) of peptides and proteins」Meth. Enzymol. 402: 148-85参照のこと)、電子捕獲解離(例えば、Zubarev RA, Kelleher NL, McLafferty FW (1998).「Electron capture dissociation of multiply charged protein cations. A nonergodic process」J. Am. Chem. Soc. 120 (13): 3265-66参照のこと)、電子移動解離(例えば、Syka JE, Coon JJ, Schroeder MJ, Shabanowitz J, Hunt DF (2004).「Peptide and protein sequence analysis by electron transfer dissociation mass spectrometry」Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101 (26): 9528-33参照のこと)、赤外多光子解離(例えば、Little DP, Speir JP, Senko MW, O'Connor PB, McLafferty FW (1994).「Infrared multiphoton dissociation of large multiply charged ions for biomolecule sequencing」 Anal. Chem. 66 (18): 2809-15参照のこと、黒体赤外放射解離(例えば、Schnier PD, Price WD, Jockusch RA, Williams ER (1996).「Blackbody Infrared Radiative Dissociation of Bradykinin and Its Analogues: Energetics、Dynamics、and Evidence for Salt-Bridge Structures in the Gas Phase」Journal of the American Chemical Society 118 (30): 7178-7189参照のこと)を含む群から選択される。
【0218】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の方法の第1、第2および第3の基本的実施形態の各々およびいずれかでは、本発明の内部ペプチド標準または本発明の内部標準のパネルは、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の前記方法における使用の前に精製される。好ましい実施形態では、精製は、第2のタグに基づいている、または利用する。このような実施形態では、内部ペプチド標準または内部ペプチド標準のパネルの合成の副生成物は、内部ペプチド標準または内部ペプチド標準のパネルが、同様に本明細書に開示される表面に、固定もしくは付着されながら、または固定もしくは付着されて、反応混合物から除去されることが好ましい。代替実施形態では、本発明の内部ペプチド標準または本発明の内部ペプチド標準のパネルは、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の前記方法における使用の前に精製されない。このような代替実施形態では、本発明の内部ペプチド標準または本発明の内部ペプチド標準のパネルは、内部ペプチド標準を調製するための本発明の方法から得られるように使用され得る。
【0219】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の方法の第1、第2および第3の基本的実施形態の各々およびいずれかでは、内部ペプチド標準の量または内部ペプチド標準のパネルの量は、前記内部ペプチド標準(単数または複数)に付着されている第1のタグまたは第2のタグ、好ましくは、第1のタグの量に基づいて決定されることが好ましい。その一実施形態では、タグは、当業者に公知の蛍光標識を含み、その一部の限定されない例が本明細書に開示されている。タグの量は、標識の蛍光シグナルを測定することによって決定される。代替実施形態では、タグは、当業者に公知のUV標識を含み、その一部の限定されない例が本明細書に開示されている。タグの量は、標識のUVシグナルを測定することによって決定される。
【0220】
種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の方法の第1、第2および第3の基本的実施形態の各々およびいずれかでは、好ましくは、種々のポリペプチドの混合物は、好ましくはサンプルである。一実施形態では、このようなサンプルは、少なくとも1種のポリペプチド、好ましくは、2種以上のポリペプチドを含有する。サンプルは、生体サンプルであっても、非生体サンプルであってもよい。生体サンプルは、生体物質から得られるサンプルであり得る。生体物質は、体液サンプル、細胞またはその一部の溶解物または調製物、組織またはその一部の溶解物または調製物、臓器またはその一部の溶解物または調製物、完全生物体またはその一部の溶解物または調製物、発酵ブロスまたはその一部および細胞培養液またはその一部を含む群から選択され得る。体液サンプルは、体液が、血液、血漿、血清、尿、髄液(liquor)、痰、糞便を含む群から選択される体液のサンプルであり得る。非生体サンプルは、化学反応から得られるサンプルであり得る。化学反応は、ポリペプチドの合成または翻訳後修飾をシミュレートするポリペプチドの化学修飾のプロセスであり得る。
【0221】
種々のポリペプチドの混合物が、好ましくは、標的ポリペプチドを含有すると本発明の方法において示される限り、好ましくは、これは、混合物は、前記標的ポリペプチドを含有するか、または前記標的ポリペプチドを含有しないかのいずれかであることを意味する。好ましい実施形態では、混合物は、前記標的ポリペプチドを含有する。混合物が前記標的ポリペプチドを含有しない場合には、その量は決定され得ないということは、当業者には明らかである。それにもかかわらず、種々のポリペプチドの少なくとも1種の混合物中の、第1のペプチドがプロテオタイプのペプチドである標的ポリペプチドの存在および/または量を決定するための本発明の方法を実施する場合、混合物は、前記標的ポリペプチドを含有しないという知見は、すでに、前記方法によって得られる価値ある情報および価値ある結果を構成し得る。
【0222】
化合物、容器反応混合物または同様のものに添加される本発明の内部ペプチド標準の量または本発明の内部ペプチド標準のパネルの量が未知であると本発明の方法において示される限り、好ましくは、これは、前記化合物、容器、反応混合物または同様のものに添加される、本発明の内部ペプチド標準の分子数または本発明の内部ペプチド標準のパネルの分子数は未知であることを意味する。それに関連して、本発明の内部ペプチド標準または本発明の内部ペプチド標準のパネルの添加は、好ましくは、前記の本発明の内部ペプチド標準または本発明の内部ペプチド標準のパネルを含有する液体のアリコートを移すことによって生じるということは、当業者には認められよう。本発明の方法の実施において、アリコートの容量は公知であることが好ましい。しかし、アリコートの容量が公知ではないことも本発明の範囲内である。しかし、特に、後者の実施形態では、前記化合物、容器、反応混合物または同様のものに、前記の本発明の内部ペプチド標準または本発明の内部ペプチド標準のパネルを添加することによって得られる反応混合物の容量が、公知であることが好ましい。
【0223】
好ましく使用されるように、例えば、「1〜5」などの範囲の限界を特定する任意の表現は、1〜5の任意の整数、すなわち、1、2、3、4および5を意味する。言い換えれば、2つの整数によって規定されている任意の範囲は、前記の定義の限界を規定する2つの整数および前記範囲によって含まれる、または前記範囲内に含有される任意の整数を両方とも含む。
【0224】
本発明のさらなる特徴、実施形態および利点は、以下の図および実施例からとられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0225】
図1図1は、本発明の内部ペプチド標準の作製を示す模式図である。
図2図2は、本発明の精製された内部ペプチド標準の定量化を示す模式図である。
図3図3は、キャッピング工程を用いて合成される、本発明の精製されていない内部ペプチド標準の定量化を示す模式図である。
図4図4は、HPLC−MSによって分析される、精製されていない内部ペプチド標準の定量化を示す模式図である。
図5図5は、内部ペプチド標準の酵素的切断を用いる、第1のタグ中に組み込まれた発色団の適合性を示す実験を示す模式図である。
図6図6は、実施例2において論じられる、トリプシン消化の前および後の第1のタグで標識された第1のペプチドの実行の特徴を示すクロマトグラムである。
図7図7は、メタ−ニトロ−チロシンを含有する第1のタグの組成を示す。
図8図8は、実施例3において論じられる、メタ−ニトロ−チロシンを含有するアセチル化された第1のタグのUV−Visスペクトルを示す。
図9図9は、UV−Vis検出器を備えたHPLC−ESI−MSによって分析された精製されていない内部ペプチド標準の定量化の結果を示す。
図10図10は、第1および第2のタグの両方を含む内部ペプチド標準の作製および使用を示す模式図である。
図11図11は、内部ペプチド標準の支持体なし(off-support)切断を示す模式図である。
図12図12は、内部ペプチド標準の支持体あり(on-support)切断を示す模式図である。
図13図13は、精製された内部ペプチド標準の切断によって放出された第1のペプチドを定量化するための種々の選択肢を示す模式図である。
図14図14は、デスチオ−ビオチンを含有する第2のタグの組成を示す。
図15図15は、蛍光標識を含有する第1および第2のタグの組成を示す。
図16図16は、支持体上へのペプチド誘導体の固定に使用され得る種々の化学選択的化学反応を示す。
図17図17は、支持体上へのペプチド誘導体の固定に使用され得る種々の化学選択的化学反応を示す。
図18図18は、図7に示される第1のタグの濃度の関数としての吸収単位を示す図であり、これによって吸収が350nmまたは410nmのいずれかで決定される。
図19図19は、5種の異なる標識されたペプチドおよび標準Ac−SA−ニトロTyr−R−OHの定量化のための直線の検量線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0226】
図1は、本発明の内部ペプチド標準の作製の模式図である。図1A)では、a)予備合成された第1のタグが、予備合成された第1のペプチドに1工程で融合され、内部ペプチド標準が得られる。図1B)に示されるように、第1のタグが段階的に合成される場合には、EP0651762に記載されるものなどの最先端のペプチド合成プロトコールに従って、追加のアミノ酸が段階的に加えられる。最後のアミノ酸残基をカップリングした後、第1のペプチドのアミノ酸配列が完了し、固体合成支持体からの保護基の除去および化合物の任意選択の除去の後に、内部ペプチド標準の合成が完了する。
【0227】
図2は、本発明の精製された内部ペプチド標準の定量化を示す模式図である。理想的には、100%純粋または少なくとも98%純粋または95%純粋な、精製された内部ペプチド標準が、配列特異的切断のための手段を用いて切断され、規定の比の第1のタグおよび第1のペプチドを放出する。好ましくは、比は、1:1である。切断反応がほぼ100%である場合および出発純度が高い場合には、放出される第1のタグの量は、放出される第1のペプチドの量に比例する。
【0228】
図3は、キャッピング工程を用いて合成される、本発明の精製されていない内部ペプチド標準の定量化を示す模式図である。この実施形態では、内部ペプチド標準は、改変された手順によって合成される。各カップリング工程の後であって保護基の各除去の前に、追加のキャッピング工程が導入される。例えば、適宜活性化された酢酸が使用される場合には、不完全なカップリング工程に起因する副生成物がアセチル化され、それによって、化学的に反応性ではなくなる。第1のペプチドの合成の最後に、第1のタグが加えられる。
キャッピング工程のために、第1のタグは、第1のペプチドのみと反応し、アセチル化された不純物とは反応しない。合成の最後に、第1のタグを保持しないアセチル化された不純物とともに、所望の内部ペプチド標準が作製される。切断反応の後に、第1のタグが、第1のペプチドのみから放出され得る。したがって、この場合には、放出される第1のタグの量は、放出される(release)第1のペプチドの量を示す。
【0229】
図4は、HPLC−MSによって分析される、精製されていない内部ペプチド標準の定量化を示す模式図である。内部ペプチド標準が、合成され、UV−Vis検出器を備えた質量分析計に接続されたHPLCによって分析される。HPLC実施の間に、内部ペプチド標準が、依然として第1のタグを保持する不純物から分離される。内部ペプチド標準のシグナルは、HPLCに接続された質量分析計によって同定され得る。第1のペプチドと結合している第1のタグの相対量は、HPLC実施のUV−Visトレースから算出され得る。この算出によって、内部標準の相対量が、精製されていない内部ペプチド標準内のパーセントで得られる。適当な切断反応の後に、放出された第1のタグの量が測定され、次いで、出発物質の相対量に対して補正される。この実施例では、UV−Visトレースによって、質量トレースによって同定された内部ペプチド標準に対応している、ペプチドを含有するすべての第1のタグの22%が得られた。切断後に、放出された第1のタグの測定された総量は、内部ペプチド標準の22%の含量を反映して、0.22の係数によって補正されなければならない。
【0230】
図7は、メタ−ニトロ−チロシンを含有する第1のタグの組成を示した。第1のタグの組成は、天然に存在するアミノ酸残基の一文字コードを使用して示されている。この化合物は、プロテアーゼトリプシンを使用する切断に対して最適化された第1のタグの代表例である。セリンおよびアラニン残基が、P1’およびP2’位をそれぞれ占めている。発色団含有アミノ酸残基メタ−ニトロ−チロシンは、P3’位に対して最適化されている。
P4’位では、アルギニン残基が使用される。修飾されたアミノ酸残基メタ−ニトロ−チロシンの構造が示されている。この残基のヒドロキシル基のプロトン化状態に応じて、芳香族環構造は、強い吸光度を有し、ヒドロキシルのプロトン化状態については350nmで最大であり、ヒドロキシル基の解離した形態については410nmで最大である。
【0231】
図10は、第1および第2のタグの両方を含む内部ペプチド標準の作製および使用を示す模式図である。より複雑なペプチド標準は、図10に示されるようなペプチド合成を使用して製造され得る。段階的合成によるまたは予備合成されたタグの固相支持体への直接的な付着のいずれかによる固相支持体上での第1のタグの作製後に、第1のペプチドとそれに続く第2のタグが、段階的に合成される。あるいは、第1のペプチドが、第1のタグに付着され、次いで、第2のタグが、結合している第1のペプチド−第1のタグ構造に付着される。さらに、段階的合成および予備合成された構造の付着の組合せがあり得る。
【0232】
図11は、第1のタグおよび第2のタグの両方を含む内部ペプチド標準の支持体なし切断を示す模式図である。第2のタグを介して支持体に固定された内部ペプチド標準は、洗浄工程の後に支持体から放出され得る。これらの洗浄工程は、特異的に結合しなかったか、または共有結合を形成しなかったペプチド合成の副生成物を除去する。放出された、精製された内部ペプチド標準は、切断され、第2および第1のタグと一緒に、第1のペプチドを生成し得る。第1のタグおよび/または第2のタグは、切断反応によって生じた第1のペプチドの量の定量化に使用され得る。
【0233】
図12は、第1のタグおよび第2のタグの両方を含む内部ペプチド標準の支持体あり切断を示す模式図である。第2のタグを介して支持体に固定された内部ペプチド標準は、洗浄工程の後に支持体上で直接的に切断され得る。これらの洗浄工程は、特異的に結合しなかったか、または共有結合を形成しなかったペプチド合成の副生成物を除去する。精製されたが、依然として固定されている内部ペプチド標準は、支持体上で切断され、第1のタグと一緒に、第1のペプチドを生成し得る。第2のタグは、依然として支持体に結合されている(図では示されていない)。第1のタグは、切断反応によって生成した第1のペプチドの量の定量化に使用され得る。
【0234】
図14は、デスチオ−ビオチンを含有する第2のタグの組成を示す。第2のタグの組成は、天然に存在するアミノ酸残基の3文字コードを使用して示されている。この示される第2のタグは、プロテアーゼトリプシンを使用する切断のために最適化された第2のタグの一実施形態である。アルギニン残基が、P1位を占めている。プロリン残基は、P2位で、プロテアーゼトリプシンによって好ましいものであるとわかっている。アラニン残基は、P3位において良好に受け入れられている。デスチオ−ビオチンは、アビジンまたはストレプトアビジンのようなビオチン/デスチオビオチン結合タンパク質を用いて修飾された支持体との選択的結合を可能にする、第2のタグ内の反応性部分として使用される。
デスチオ−ビオチン残基を、アミノ酸残基から離して配置し、デスチオ−ビオチンの、デスチオ−ビオチン結合支持体上の結合ポケットとの効果的な相互作用を可能にするために、リンカー分子、Ttdsが導入された。リンカーの化学的構造は、デスチオ−ビオチンの化学的構造と一緒に示されている。デスチオ−ビオチンは、タンパク質ストレプトアビジンまたはアビジンとのデスチオ−ビオチンの親和性が、ビオチンの親和性よりもかなり低いために、ビオチンの代わりに使用される。これによって、デスチオ−ビオチン修飾された化合物と効果的に競合する試薬としてビオチンを使用して、結合されたデスチオ−ビオチン含有内部ペプチド標準の支持体からの溶出が可能になる。
【0235】
図15は、蛍光標識を含有する第1および第2のタグの組成を示す。第1のタグおよび第2のタグの組成は、天然に存在するアミノ酸残基の3文字コードを使用して示されている。示される第1のタグおよび第2のタグは各々、プロテアーゼトリプシンを使用する切断に対して最適化された第1および第2のタグ表す。第1のタグでは、セリンおよびアラニン残基は、P1’およびP2’位をそれぞれ占めている。フルオロフォア含有アミノ酸残基Cal=β−7−メトキシ−クマリル−アラニンは、P3’位に対して最適化されて
いる。P4’位では、グリシン残基が使用される。第2のタグでは、アルギニン残基がP1位を占めている。プロリン残基は、P2位で、プロテアーゼトリプシンによって好ましいものであるとわかっている。Cal=β−7−メトキシ−クマリル−アラニン残基は、切断媒介プロテアーゼとしてトリプシンの場合には、P3位において良好に受け入れられている。そのアラニン誘導体では、置換クマリル残基が、より強い蛍光シグナルを生じた。デスチオ−ビオチンは、アビジンまたはストレプトアビジンのようなビオチン/デスチオビオチン結合タンパク質を用いて修飾された支持体との選択的結合を可能にする、第2のタグ内の反応性部分として使用される。デスチオ−ビオチン残基を、アミノ酸残基から離して配置し、デスチオ−ビオチンの、デスチオ−ビオチン結合支持体上の結合ポケットとの効果的な相互作用を可能にするために、リンカー分子、Ttdsが導入された。リンカーの化学的構造は、デスチオ−ビオチンの化学的構造と一緒に図14に示されている。
デスチオ−ビオチンは、タンパク質ストレプトアビジンまたはアビジンとのデスチオ−ビオチンの親和性が、ビオチンの親和性よりもかなり低いために、ビオチンの代わりに使用される。これによって、デスチオ−ビオチン修飾された化合物と効果的に競合する試薬としてビオチンを使用して、結合されたデスチオ−ビオチン含有内部ペプチド標準の支持体からの溶出が可能になる。
【0236】
図16は、支持体上へのペプチド誘導体の固定化のために使用され得る種々の化学選択的化学反応を示す。内部ペプチド標準と適宜修飾された支持体間の共有結合の化学選択的形成に適している4種の種々の化学反応が示されている。反応A)では、アルデヒド(R=水素)またはケトン(水素ではないR)が結合している支持体および内部ペプチド標準を含有するアミノオキシ部分が、オキシム結合の形成によって反応する。反応B)では、メルカプタンが結合している支持体および内部ペプチド標準を含有するマレイミドが、置換スクシンイミドの形成によって反応する。反応C)では、ヒドラジドが結合している支持体および内部ペプチド標準を含有するアルデヒドが、置換ヒドラゾンの形成によって反応する。反応D)では、キニンが結合している支持体および内部ペプチド標準を含有するシクロペンタジエンが、置換ディールス・アルダー付加物の形成によって反応する。
【0237】
図17は、支持体上へのペプチド誘導体の固定化のために使用され得るさらなる化学選択的化学反応を示す。内部ペプチド標準と適宜修飾された支持体間の共有結合の化学選択的形成に適している4種の種々の化学反応が示されている。反応A)では、アルデヒド(R=水素)またはケトン(水素ではないR)が結合している支持体および内部ペプチド標準内の置換ヒドロキシル−アミンが、ニトロンの形成によって反応する。反応B)では、アルデヒド(R=水素)が結合している支持体および内部ペプチド標準を含有する芳香族アミノカルボキシルが、置換2,3,4a,8a−テトラヒドロ−1H−キナゾリン−4−オンの形成によって反応する。反応C)では、チオアミドが結合している支持体および内部ペプチド標準を含有するα−ブロモ−ケトンが、置換チアゾールの形成によって反応する。反応D)では、チオアミドが結合している支持体および内部ペプチド標準を含有する置換フェニレンジアミンが、置換ベンゾイミダゾールの形成によって反応する。
【0238】
図19は、5種の異なる標識されたペプチドの定量化のための直線の検量線を示す。すべてのペプチドは、350nmでのUV測定による定量化を可能にするC末端定量化タグ−SA−ニトロTyr−R−OHを保持する(ペプチドA〜E、表1)。また、外部標準Ac−SA−ニトロTyr−R−OHの検量線が表されている。
【実施例1】
【0239】
内部ペプチド標準の酵素的切断を用いる、第1のタグに組み込まれた発色団の適合性
この実施例の基本的実験主題が図5に示されている。
【0240】
天然に存在するアミノ酸残基の一文字コードとして示される所与の配列の内部標準ペプチドを、固相支持体上で段階的に合成した。第1のタグは、修飾されたアミノ酸残基(ニトロTyr=3’−ニトロ−チロシン)を含有し、これは、350〜410nmの間の波長で特定のUV−Vis吸収をもたらした。ペプチドが固相支持体から放出され、プロテアーゼトリプシンを用いて32℃で1時間処理した。切断反応の前および後に、HPLC−MS分析を実施して、切断反応の有効性を推定した。基本的実験が図5に示されている。
【0241】
この実施例から、第1のタグへの発色団の組み込みは、内部ペプチド標準の酵素的切断と適合していると結論付けた。
【実施例2】
【0242】
内部ペプチド標準の切断の前および後の410nmでのUV−Visトレース
天然に存在するアミノ酸残基の一文字コードを使用して図7に表される内部ペプチド標準を、HPLCを使用して分析した。410nmでのUV−Visトレースが示されている。図6A)は、プロテアーゼトリプシンの添加前の反応溶液のUVトレースを示す。410nmで吸収するメタ−ニトロ−チロシンを含有する内部ペプチド標準は、PR−18カラムから約1.85分の保持時間で溶出する。図6B)は、プロテアーゼトリプシンの添加および32℃で1時間の反応混合物のインキュベーション後の反応溶液のUVトレースを示す。410nmで吸収するメタ−ニトロ−チロシンを含有する放出された第1のタグは、PR−18カラムから約0.8分の保持時間で溶出する。放出された第1のペプチドは、その波長では目に見えない。約1.85分の保持時間で目に見える残存するシグナルはほとんどないので、切断反応は、100%に近い切断率を有し、極めて有効であると思われる。
【0243】
この実施例の根底にある実験の結果が、図6に示されている。
【0244】
この結果は、第1のタグ中のメタ−ニトロ−チロシン残基が、プロテアーゼトリプシンによって媒介される切断反応に適合することを実証する。
【実施例3】
【0245】
メタ−ニトロ−チロシンを含有するアセチル化された第1のタグのUV−Visスペクトル
アセチル化された第1のタグSer−Ala−mニトロTyr−Argの300〜500nmの範囲のUV−Visスペクトルが、図8に示されている。トリフルオロ酢酸を含有する種々のアセトニトリル/水混合物中のタグの溶液のスペクトルを記録した。トリフルオロ酢酸によって引き起こされる、これらの混合物のpH値は、pH2の範囲にある。
さらに、15mM TRISバッファーpH8.2中に溶解した、アセチル化されたタグSer−Ala−mニトロTyr−ArgのUV−Visスペクトルを記録した。測定された範囲における吸光度の最大は、pH8.2については約420nmであるが、pH2.0については約355nmである。その相違の原因は、メタ−ニトロ−チロシン残基の側鎖のプロトン化状態である。種々のプロトン化状態の種々の構造が示されている。左側に、プロトン化されたメタ−ニトロ−チロシン残基の構造が示されている。これは、pH2.0で主要な部分である。右側に、解離されたメタ−ニトロ−チロシン残基の構造が示されている。これは、pH8.2で主要な部分であり、ニトロ官能基に近接しているフェノール基の酸性特徴の増大によって引き起こされる。
【0246】
種々の溶媒混合物の、pH2.0の極めて類似したUV−Visスペクトルによって、HPLC勾配を使用するメタ−ニトロ−チロシンを含有する第1のタグの定量化が可能となる。355nmでの総吸光度は、溶媒のアセトニトリル含量とはほぼ独立している。
【実施例4】
【0247】
HPLC−MSによって分析される、精製されていない内部ペプチド標準の定量化
この定量化の結果が図9に示されている。
【0248】
内部ペプチド標準は、UV−Vis検出器を備えたHPLC−ESI−MSによって分析される。図9の上部に、220nmでのUVトレースが示されている。標的内部ペプチド標準の他に、種々の不純物に相当するいくつかのシグナルがあり、2.425〜2.502分の保持時間領域内のESIマススペクトルにおいて同定され得る。図9の中央に、この場合には、2のpH値で350nmで特異的に吸収する発色団(メタ−ニトロ−チロシン)を備えた第1のタグを示す350nmでのUVトレースが示されている。220nmでのUV−Visトレースにおけるシグナルを、350nmでのUV−Visトレースにおけるシグナルと比較すると、副生成物のほぼすべてが第1のタグを有することが明確になる。それにもかかわらず、HPLC_MSシステムは、規定量のメタ−ニトロ−チロシンを含有する第1のタグを用いて較正される場合には、350nmでの種々のピークの領域によって、各副生成物の、および標的内部標準ペプチドの正確な定量化が可能となる。
【実施例5】
【0249】
第1および第2のタグの両方を含む内部ペプチド標準の作製および使用
より複雑なペプチド標準は、図10に示されるようなペプチド合成を使用して製造され得る。段階的合成によるまたは予備合成されたタグの固相支持体への直接的な付着のいずれかによる固相支持体上での第1のタグの作製後に、第1のペプチドとそれに続く第2のタグが、段階的に合成される。あるいは、第1のペプチドが、第1のタグに付着され、次いで、第2のタグが、結合している第1のペプチド−第1のタグ構造に付着される。さらに、段階的合成および予備合成された構造の付着の組合せがあり得る。
【0250】
適当な方法によって内部ペプチド標準を固相支持体から放出する時点で、内部ペプチド標準は、第2のタグ内の部分を介して別の支持体上に再固定され得る。この固定化反応は、化学的結合の化学選択的形成から、または第2のタグもしくは第2のタグの一部の、結合パートナーもしくは相互作用パートナーとの特異的結合から選択され得る。
【実施例6】
【0251】
精製された内部ペプチド標準の切断によって放出された第1のペプチドを定量化するための方法
図13に示されるように、第1のタグおよび第2のタグの両方を含む内部ペプチド標準が、支持体に固定されている。第2および第1のタグの両方が、蛍光アミノ酸残基を用いて標識されている。精製されていない内部ペプチド標準の固定化後に、支持体が洗浄されて、特異的に結合しなかったか、または共有結合を形成しなかった、ペプチド合成のアセチル化された副生成物を除去する。その後、精製された内部ペプチド標準は、支持体上で直接的に切断され得る(図13の左側)か、支持体からの放出後に切断され得る(支持体なし切断、図13の右側)。支持体あり切断後に、第2のタグは、支持体上のままとなり、第1のペプチドが、第1のタグと一緒に、支持体から放出される。第1のペプチドおよび第1のタグの放出された混合物は、蛍光検出器を備えたHPLCによって分析され得る。このシステムが蛍光参照第1のタグを用いて較正される場合に、放出された第1のタグの蛍光強度(蛍光単位、FUで測定される)が第1のタグの定量化のために、したがって、第1のペプチドの定量化のために使用され得る。
【0252】
支持体なし切断後、第1のペプチドが、第1のタグおよび第2のタグと一緒に、支持体から放出される。第1のペプチド、第1のタグおよび第2のタグの放出された混合物は、蛍光検出器を備えたHPLCによって分析され得る。このシステムが蛍光参照第1のタグおよびまたは蛍光第2のタグを用いて較正される場合に、放出された第1のタグおよび第2のタグの蛍光単位、FUで測定された蛍光強度が、タグの定量化のために、したがって、第1のペプチドの定量化のために使用され得る。
【実施例7】
【0253】
規定量の発色団を含有する第1のタグを使用するHPLCシステムの較正
第1のタグ(Ac−Ser−Ala−ニトロTyr−Arg、図7参照のこと)のアセチル化形態を合成し、アミノ酸分析によって絶対定量化した。規定量の定量化された、アセチル化第1のタグを、HPLCカラム上にロードし、350nmまたは410nmのいずれかで検出されたピークの得られた面積−吸収単位、AUを、アセチル化された第1のタグの総量に対してプロットした。2シリーズの実験の線形回帰分析を実施し、それぞれ0.9994および0.9986の相関関係が得られた。結果は、図18に示されている。
【0254】
図18から(form)明らかである線形相関関係によって、適当な内部ペプチド標準から放出された、メタ−ニトロ−チロシンを含有する第1のタグの量を決定することが可能となる。図18から同様に明らかであるように、350nmでの吸収を決定することは、第1のタグのより正確な決定を可能にする、観察される勾配の点で、410nmでの吸収と比較して明らかに有利である。
【実施例8】
【0255】
ニトロ−チロシンをベースとするタグを用いるペプチド定量化:直線性およびペプチド配列からの独立
C末端定量化タグ−SA−ニトロTyr−G−OH(ペプチドA〜E、表1)を保持する5種の種々のペプチドを、Fmocをベースとする固相ペプチド合成によって合成し、HPLCによって精製した。図19は、外部標準Ac−SA−ニトロTyr−R−OHと比較した、HPLCによる5種のペプチドの定量化のための直線の検量線を示す。定量化は、350nmで実施した。
【0256】
定量化は、すべてのペプチドの試験された濃度範囲(100〜700nmol/ml)にわたって直線であり、ペプチド配列と無関係であることがわかった。定量化の総合誤差(SD)は、5.4%であった。
【0257】
【表1】
【実施例9】
【0258】
ニトロ−チロシンベースのタグを用いるペプチド定量化:23の種々のペプチドからのタグ切断の効率
C末端定量化タグ−SA−ニトロTyr−G−OHを保持する23種のペプチドを、Fmocベースの固相ペプチド合成によって合成し、HPLCによって精製した。各ペプチドを、以下のトリプシン切断プロトコールに付した:
【0259】
トリプシン活性化:トリプシン(20μg、配列決定等級修飾トリプシン、Promega Corporation、Madison、WI、USA、カタログ番号V511、比活性16.965u/mg)を、トリプシン再懸濁バッファー(200μL、Promega、カタログ番号V542A、成分50mM酢酸)に溶解し、37℃で15分間インキュベートした。
【0260】
還元およびアルキル化:ペプチド(約0.05mg)を、1M尿素および100mM新鮮な炭酸水素アンモニウム(300μL)に溶解した。TCEP(Tris(2−カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリド、0.2M、7.5μL、最終濃度5mM)を加え、溶液を37℃で1時間インキュベートした。ヨードアセトアミド(0.5M、6.0μL、最終濃度10mM)を添加した後、溶液を室温、暗所で、さらに30分間インキュベートした。
【0261】
消化:サンプルを、活性化されたトリプシン溶液(ウェルあたり10μL、1.0μg、得られる酵素/基質比1:50)を用いて、室温で一晩消化した。消化を停止するために、HCl(2M、8μL、最終濃度50mM)およびTFA(3.2μL、最終濃度1%、pH<2)を加えた。最後に、サンプルをLC−MSによって350nmで分析した。
【0262】
表2は、LC−MSおよび350nmでのUV検出によって決定される切断効率が、わずか75%であったペプチド20(HLVSPEALDLLD−K−SA−ニトロTyr−G)を除いて、すべての場合において>99%であったことを示す。これは、1種のペプチドを除いて、定量化タグの切断が基本的に定量的であることを意味する。
【0263】
ペプチド20は、C末端リシンに付着されたアスパラギン酸を有する。LysまたはArgおよび酸性アミノ酸AspおよびGlu間のペプチド結合は、トリプシンによってゆっくりと切断されることが多いことがわかっている(Rehm, H.; Letzel, T. Der Experimentator Proteinbiochemie/Proteomics, 6th edition, 2010, Spektrum Akademischer Verlag, Heibelberg, p.242)。しかし、これらの結合の不完全な切断は、MSベースのプロテオミクスにおいてタグがついたペプチドを適用することには問題はないが、これは、この情報が、プロテオタイプのペプチドの選択プロセスのために考慮され得るからである。実際には、これは、D−K−およびE−K−結合を有するペプチドが、タンパク質の検出および定量化のためのプロテオタイプのペプチドとして簡単に選択されないことを意味する。
【0264】
還元およびアルキル化プロセスを試験ペプチドに適用したが、これは、ペプチドを、同様のワークフローに付すことを目的としていたからであり、これは、同様のワークフローがタンパク質からのプロテオタイプのペプチドの調製に通常使用されるからである。これは、タグがつけられたペプチドは、トリプシン消化によるその切断の前に、生体サンプル中に添加されてもよく、したがって、タンパク質と同時に切断されるという利点を有する。すべての切断実験が、所望の生成物につながったので、定量化タグは、還元もアルキル化工程も干渉しないということが結論付けられ得る。
【0265】
【表2】
【実施例10】
【0266】
ニトロ−チロシンベースのタグを用いるペプチド定量化:38種の種々のペプチドからのタグ切断の効率
N末端定量化タグAc−ニトロTyr−SGK−を保持する38種のペプチドを、SPOT合成によって合成した(表3)。ペプチド配列は、各場合において、リシンにN末端が付着された19個の種々のアミノ酸を含有する2種の異なるアミノ酸配列をベースとする(システインを除く、20種の天然に生じるアミノ酸)。
【0267】
すべてのペプチドを、実施例9に記載されるものと同様のトリプシン切断プロトコールに付した。LC−MSおよび350nmでのUV検出によって決定される38種のペプチドの切断効率が、表3に示されている。ほぼすべての場合において(>99%)、定量化タグが効率的に切断されることは明らかである。
【0268】
4種のペプチドは効率的に切断されなかった。これらは、K−D−(ペプチド3および23)およびK−P−結合(ペプチド13および33)を含有するペプチドである。Lys/ArgおよびProならびに酸性アミノ酸AspおよびGlu間のペプチド結合は、トリプシンによってゆっくりと切断されることが多いということがわかっているので、これは驚くべきことではない(Rehm, H.; Letzel, T. Der Experimentator Proteinbiochemie/Proteomics, 6th edition, 2010, Spektrum Akademischer Verlag, Heibelberg, p.242)。しかし、これらの結合の不完全な切断は、MSベースのプロテオミクスにおいてタグがついたペプチドを適用することには問題ではないが、これは、プロテオタイプのペプチドの選択プロセスのために考慮され得るからである。実際には、これは、D−K−、E−K−およびP−K−結合を有するペプチドが、タンパク質の検出および定量化のためのプロテオタイプのペプチドとして簡単に選択されないことを意味する。
【0269】
KK−またはKR−モチーフを有するペプチドは、この基のC末端で切断され、良好な切断効率を有していた(ペプチド9、15、29、35)。
【0270】
【表3】
【0271】
本明細書、特許請求の範囲、配列表および/または図面において開示される本発明の特徴は、別個に、およびその任意の組合せで、その種々の形態の本発明を実現するための材料であり得る。
図1
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]