【実施例1】
【0017】
[掻取押付式加熱撹拌釜の全体構成]
図1は、掻取押付式加熱撹拌釜を示し一部を切り欠いた正面図である。
図2は、掻取押付式加熱撹拌釜を示し一部を省略した平面図である。
図3は、掻取押付式加熱撹拌釜を示す側面図である。
【0018】
本発明の掻取羽根を備える掻取押付式加熱撹拌釜1は、流動性のある被撹拌物の加熱撹拌に用いられ、特に流動性の悪い被撹拌物、例えば含水粉体や餡等の粉体や固体又は粘性の高い物質或いは塑性流動する物質等の加熱撹拌に用いられるものである。ただし、流動性の良い被撹拌物に適用することも可能である。また、本発明の掻取羽根は、加熱を伴わない撹拌装置に適用することもできる。
【0019】
図1〜
図3のように、掻取押付式加熱撹拌釜1は、撹拌容器である加熱容器3と、攪拌ユニット5と、駆動部である駆動モータ7と、制御ボックス9と、油圧ユニット11と、配管ユニット12とを支持フレーム15に支持することによって構成されている。なお、
前記支持フレーム15は、蓋収容部17が一体に設けられ、脚部19によってフロア21上に配置されている。脚部19は、例えばロードセル等で構成された重量センサ23が介設されており、加熱容器3、攪拌ユニット5、駆動モータ7、制御ボックス9、油圧ユニット11、蓋収容部17等を含めた支持フレーム15上の全重量を検出する構成となっている。この重量測定によって、加熱容器3内の食材の加熱調理による水分蒸発量等を演算し、掻取押付式加熱撹拌釜1の自動加熱撹拌等を行わせることが可能となっている。
【0020】
前記加熱容器3は、横置きの円筒部25上にホッパー部27を設けたものである。加熱容器3は、支持フレーム15に回転可能に支持され、
図3の二点鎖線のように、油圧ユニット11の油圧シリンダ29によって傾動回転される。加熱容器3は、上端開口から食材等の被撹拌物が投入され、前記傾動により上端開口から加熱撹拌後の被撹拌物を排出することができるようになっている。前記上端開口には、着脱可能に割蓋31が設けられている。また、下部外周には、加熱及び冷却用の流体ジャケット33を備えている。
【0021】
前記円筒部25の軸心部には、回転軸35が回転自在に支持されている。回転軸35は、駆動モータ7によって回転駆動されるようになっている。回転軸35には、所定間隔で攪拌ユニット5が取り付けられ、回転駆動によって加熱容器3内の被撹拌物を撹拌可能としている。なお、攪拌ユニット5の詳細については後述する。
【0022】
前記駆動モータ7は、回転軸35に連動連結されている。駆動モータ7は、制御ボックス9によって制御され、所定の周期毎に正転及び正転とは逆回転の反転を繰り返すようになっている。
【0023】
前記制御ボックス9は、駆動モータ7の動作の他、加熱容器3の流体ジャケット33への蒸気の供給、油圧ユニット11の動作等を制御する。
【0024】
[掻取羽根]
図4は、掻取押付式加熱撹拌釜の攪拌ユニットを示す斜視図である。
図5は、攪拌ユニットの取り付けを示す要部拡大側面図である。
図6は、掻取羽根の取り付けを示す背面図である。
図7は、掻取羽根の側面図である。
図8は、掻取羽根の分解側面図である。
図9は、掻取羽根の分解斜視図である。
【0025】
図1〜
図5のように、前記各攪拌ユニット5は、支持部としてのアーム37と、該アーム37の先端に設けられた掻取羽根39とを備えている。
【0026】
前記アーム37は、基端側に設けられたクランプ部43によって回転軸35に対して支持されている。アーム37の先端には、掻取羽根39の取付用のブラケット部45が設けられている。ブラケット部45は、前記回転軸35の軸心に対しθの角度を持って設定されている。本実施例では、
図4のように、回転軸と羽根面とのなす角度が設定角度θ=約30°となっている。ただし、設定角度θは任意である。
【0027】
クランプ部43は、回転軸35を挟む合わせ構造のカップリングで形成されている。カップリング基部43aがアーム37の先端に固定して設けられている。カップリング蓋部43bは、カップリング基部43aに回転軸35を挟んでボルト43cにより締結結合されている。
【0028】
回転軸35を挟んだカップリング基部43a及びカップリング蓋部43bの締結結合により回転軸35に対する攪拌ユニット5の締結固定が行なわれている。
【0029】
ブラケット部45は、アーム37の軸方向に沿って延設されている。ブラケット部45は、基部45aと壁部45bと突片部45caとを備えている。
【0030】
基部45aは、アーム37の先端に結合されている。ブラケット部45は、アーム37に含まれる構成であり、支持部を構成する。突片部45caは、一対が対向して配置され、壁部45bから突出している。一対の突片部45caは、二股部45cを形成し、挿通穴を有している。
【0031】
掻取羽根39は、加熱容器3の内周面において正転方向aに対し、後傾となるように傾斜配置されている。つまり、掻取羽根39は、正転時に加熱容器3の内周面に接する羽根先61aが先行して内周面を移動するように傾斜設定されている。
【0032】
図5〜
図9のように、掻取羽根39は、羽根支持板59に樹脂製の羽根部61が取り付けられたものであり、撹拌ユニット5のブラケット部45に取り付けられ、加熱容器3の回転軸35側に支持された構成となっている。羽根支持板59に対する羽根部61の取り付けには、押え体63と留め具65とが用いられている。
【0033】
羽根支持板59は、ステンレス、樹脂等で形成され、先端の羽根支持部67に対し基端側のナックル部69を備えている。
【0034】
羽根支持部67は、
図6の背面方向から見て縁部が若干弧状となる様に湾曲形成されている。羽根支持部67の湾曲形状は、羽根部61に応じている。羽根支持部67は、羽根部61取付のために羽根部61に沿った長さを有している。この羽根支持部67には、長さ方向の中央部の両側において各一対の取付穴67aが合計4個貫通形成されている。
【0035】
ナックル部69は、羽根支持部67の長さ方向の中央に一体に備えられている。ナックル部69には、突部69a画形成され、取り付け用の軸穴が形成されている。ナックル部69には、スペーサーパネル71が
図7のように溶着され又は接着されている。スペーサーパネル71は、金属、樹脂、セラミック、硬質ゴム、弾性を有したゴムなどにより矩形の平板状に形成され、ブラケット部45の壁部45bと共に掻取羽根39の一定範囲の揺動を設定するストッパーとなる。
【0036】
羽根部61は、樹脂製であり、耐摩耗性の樹脂で形成され、羽根支持板59の取付面に羽根裏面が重ねられて固定されている。羽根部61には、4箇所の取付穴67aに対向する貫通穴61bが4箇所に形成されている。
【0037】
羽根部61は、正転方向aの前面から見て略矩形状に形成されている。羽根部61は、ブラケット部45を介し回転軸35の軸心に対しθの角度を持って設定されているから、羽根先61aは、加熱容器3の内周面を設定状態で掻き取れるように若干の円弧状に形成されている。
【0038】
押え体63は、ステンレスなどで形成され、ピン本体63aが、4箇所の取付穴67aに対応して4本備えられている。ピン本体63aの一端には、羽根押え板63bを一体的に有し、ピン本体63aの他端には、括れ部63cを有している。
【0039】
羽根押え板63bは、羽根部61の羽根表面を押さえるものであり、羽根部61に沿って長板状に形成されている。羽根押え板63bが羽根部61の表面を羽根支持部67に対して押さえている。
【0040】
各ピン本体63aは、位置的に対応する取付穴67a及び貫通穴61bにそれぞれ挿通され、各括れ部63bが、羽根支持板59の背面から突出している。
【0041】
なお、押え体63は、羽根押え板63bを各ピン本体63aに応じて分割し独立に形成することもできる。羽根押え板63bは、羽根部61の羽根表面を押さえることができればよく、その形状は、矩形状、円板状、楕円状等、自由に設定できる。
【0042】
留め具65は、括れ部63bに着脱自在に取り付けられ、押え体63により羽根部61を羽根支持部67に押えて固定する。
【0043】
留め具65は、ステンレス、樹脂などにより形成され、左右一対備えられている。この留め具65は、対称形状に形成され、それぞれスライド板65aと位置決め部65bとを一体的に有している。
【0044】
スライド板65aは、羽根支持部67の長手方向で2箇所の取付穴67aに渡る寸法に形成されている。スライド板65aには、挿入孔65aaとスライド孔65abとが形成されている。挿入孔65aaは、ピン本体63aの括れ部63c側を貫通させるものであり、ピン本体63aの外形よりも若干大きな径に形成されている。スライド孔65abは、挿入孔65aaに連続してスライド板65aに沿って形成されている。
【0045】
スライド孔65abは、ピン本体63aを移動と共に軸方向に引き付ける形状に形成されている。挿入孔65aaとスライド孔65abの奥側との間には、ガイド斜面65acが形成されている。
【0046】
スライド板65aを挿入孔65aaにおいてピン本体63aに嵌合させ、スライド板65aをスライドさせてスライド孔65abがピン本体63aの括れ部63cに嵌合するとき、ピン本体63aの括れ部63c側先端がガイド斜面65acを乗り上げて移動するため、ピン本体63aがスライド板65a側へ軸方向に引き付けられる。
【0047】
ピン本体63aの括れ部63c側先端と羽根押え板63bとの間の寸法は、羽根部69と羽根支持部67とスライド板65aとの合計の厚み寸法よりも若干小さく形成され、ピン本体63aの括れ部63c側先端がガイド斜面65acで乗り上げ案内されると、ピン本体63aの括れ部63c側先端と羽根押え板63bとの間で、羽根部69と羽根支持部67とスライド板65aとが締結保持される形態となる。
【0048】
留め具65の取り付け状態で、スライド孔65abがピン本体63aの括れ部63c
に締まり嵌合し、ピン本体63aを羽根支持部67に固定する。
【0049】
位置決め部65bは、スライド板65aの端部に一フランジ状に一体に形成され、挿通穴を備えている。スライド板65aと位置決め部65bとの間は、捻り形成され、位置決め部65bがスライド板65aに対して略直交する形態となっている。
【0050】
各留め具65の位置決め部65bは、羽根支持板59のナックル部69両側に配置され、位置決め部65bを備えたナックル部69が、二股部45cの突片部45ca間に配置されている。この配置により、留め具65の位置決め部65bが、二股部45cとナックル部69との間に配置された構成となる。
【0051】
この配置状態で、突片部45ca及び位置決め部65bの挿通孔及びナックル部69の軸穴を結合ピン73が貫通し、この結合ピン73により掻取羽根39がブラケット部45に着脱自在に結合されている。
【0052】
従って、掻取羽根39は、アーム37に対して結合ピン73により回転自在となっている。
【0053】
結合ピン73は、一端に頭部73aが形成され、他端にロック部73bが回転可能に結合されている。ロック部73bを、結合ピン73に対し直状にし、突片部45ca及び位置決め部65b、ナックル部69を貫通させ、貫通後にロック部73bを回転させて
図6のようなロック状態にする。ロック部73bの回転の戻りは、例えば軸周りの摩擦力により規制される。作業者が、手により、或いは工具を介してロック部73bを摩擦力に抗して回転させ、結合ピン73に対し直状にして取り外すことができる。
【0054】
[掻取羽根の分解]
掻取羽根39の分解に際しては、結合ピン73のロック部73bを直状にし、頭部73a側へ引き抜く。
【0055】
ナックル部69を二股部45cから離脱させ、掻取羽根39を取り外す。
【0056】
掻取羽根39の各留め具65をスライド板65aにおいてスライドさせ、ピン本体63aの括れ部63bに対しスライド板65aをスライド孔65abに沿ってスライド移動させる。
【0057】
このスライド移動によりスライド板65aの挿入孔65aaをピン本体63aの括れ部63bに合わせる。このとき、位置決め部65bに力を加えるなどしてスライド板65aのスライド移動を容易に行わせることができる。
【0058】
各留め具65をピン本体63aから離脱させ、押え体63の固定を解除する。
【0059】
各ピン本体63aを取付穴67a及び貫通穴61bから引き抜かせ、押え体63を離脱させる。
【0060】
従って、羽根部61の支持が無くなり、羽根部61を羽根支持板59の羽根支持部6から取り外すことができる。
【0061】
この取り外し状態で、羽根部61、押え体63、及び各留め具65を容易に洗浄することができる。
【0062】
洗浄後は、上記とは逆の手順により掻取羽根39を再度二股部45cに容易に取り付けることができる。
【0063】
従って、ボルトをスパナで緩め、或いは締結する煩雑な作業を伴わず、掻取羽根39の分解清掃を極めて容易に行わせることができる。
【0064】
[掻取押付式加熱撹拌釜の作用]
本実施例では、被撹拌物として水分を含有した粘性の高い餡製造用材料を用いている。
【0065】
材料を加熱撹拌する際には、予め加熱容器3の割蓋31を取り外し、割蓋31を蓋収容部17に収容しておく。そして、開口した加熱容器3の上方開口から材料を投入する。このとき、重量センサ23により投入材料の投入重量が検出される。この重量検出に際しては、取り外した割蓋31も含めて検出されており、割蓋31装着後に、加熱撹拌中の重量検出制御に際し、割蓋31の脱着を考慮した演算をする必要がなく、制御ソフトを簡単にすることができる。また、配管ユニット12は、フレキシブルパイプ32による支持フレーム15側に対し独立して接地されているため、重量センサ23による重量検出に際して配管ユニット12の重量の影響を受けることが抑制され、正確な検出を行わせることができる。
【0066】
材料投入後は、割蓋31を加熱容器3の上方開口に再び装着し、予めインストールされたプログラムで制御ボックス9により駆動モータ7を自動的に駆動制御する。かかる制御によって、撹拌ユニット5を所定の周期毎に正転及び反転させる。例えば正転を3回転行わせた後、反転を3回転行わせ、水分蒸発により材料が目的重量となるまでこれを繰り返す。ただし、正転及び反転の回転数は材料、煮詰まり状態、混合状態などに応じて任意に設定することができ、例えば正転を2回転行わせた後、反転を2回転行わせることも可能である。
【0067】
正転及び反転を所定周期毎に繰り返すと、逆方向の回転力によって材料が撹拌ユニット5と供回りするのを抑制又は解消することができ、材料を流動させることができる。
【0068】
正転時(
図5の矢印a方向が正転方向)には、撹拌ユニット5の掻取羽根39によって材料の掻き取りを行うことができる。
【0069】
すなわち、掻取羽根39は、反転方向b側へ後傾しているため、正転方向aにおいて、掻取羽根39の羽根部61の下面と加熱容器3の内周面との間の掻き取り作用のための角度が鋭角をなしながら摺動回転する。
【0070】
このため、掻取羽根39は、材料を加熱容器3の内周面から離反させるように掻き取り案内流動させる。従って、材料は、加熱容器3の内周面で加熱された部分とその内側の加熱されていない部分とが混合されて全体として加熱撹拌が行われる。
【0071】
また、正転時には、材料の抵抗によって掻取羽根39の羽根部61の羽根先61aが加熱容器3の内周面に押し付けられるため、掻き取りを確実に行わせることができる。
【0072】
正転時には、ブラケット部45の壁部45b下端と羽根支持板59のスペーサーパネル71との間に隙間が形成される。
【0073】
反転時(
図5の矢印b方向が反転方向)には、撹拌ユニット5の掻取羽根39によって材料の押し付けを行うことができる。
【0074】
すなわち、掻取羽根39は、背面が材料から抵抗を受け、結合ピン73の回りに回転する。この回転は、壁部45b下端と羽根支持板59のスペーサーパネル71との間の隙間が無くなるまで行なわれる。
【0075】
この反転時の揺動位置では、羽根部61の羽根先61aと加熱容器3の内周面との間に隙間が形成される。
【0076】
反転方向bでは、加熱容器3の内周面上の材料が掻取羽根39と内周面との間の楔状の形状によってガイドされ、加熱容器3の内周面側に向けて案内流動される。
【0077】
流動した材料は、掻取羽根39によってガイドされながら羽根先61aと加熱容器3の内周面との間の隙間に到達し、隙間において羽根部61の羽根先61aと加熱容器3の内周面との間に入り込み加熱容器3の内周面に対して押し付けられる。
【0078】
羽根先61aと加熱容器3の内周面との間の隙間に応じて材料が加熱容器3の内周面に膜状又は層状に確実に塗り付けられる。
【0079】
被撹拌物を掻取羽根39で加熱容器3の内周面に塗りつける操作により、被撹拌物中に含まれるダマ状の物質を圧壊させることができる。このダマ状の物質の圧壊効果は、羽根先61aと加熱容器3の内周面との隙間、つまり壁部45b下端と羽根支持板59のスペーサーパネル71との間の隙間を調節することで変えることができる。
【0080】
塗り付けられた材料は、正転掻き取り時に内周面上に残留した材料に上塗りされた状態となる。この結果、残留材料には、上塗材料から水分移動が行われると共に上塗材料への熱移動が起こり、過熱が防止される。
【0081】
従って、残留材料は、水分移動と熱移動とにより焦げ付きを防止される。残留材料は、水分移動により膨軟状態となっており、次の正転時に容易に掻き取られる。
【0082】
なお、反転時に被攪拌物である材料の内周面への塗り付けは、基本的に膜状又は層状になるが、内周面上に残留した材料への水分移動があれば、塗り付け状態は、必ずしも膜状又は層状に限るものではない。従って、羽根部61の形状変更による隙間の形状も自由な設定が可能である。
【0083】
前記反転時には、正転時に使用されなかった掻取羽根39の背面を使用して材料の押し付け作用をさせるため、材料が掻取羽根39背面を滑るようにして隙間側へ移動し、この部分への材料の付着滞留を抑制することができる。
【0084】
また、正転と反転とによって反転時に運動方向が逆方向となって材料に逆方向の回転力を加えるため、撹拌ユニット5のアーム37や回転軸35等と材料が供回りすることを防止でき、且つ付着した材料も流動させて付着滞留を抑制することができる。