(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリル樹脂バインダーの重量平均分子量が、3000以上50000以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーティング剤。
前記金属微粒子分散剤が、さらに、下記式(1)で示される(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物を含有することを特徴とする、請求項2〜10のいずれか一項に記載のコーティング剤。
CH2=C(R1)CO[O(CH2)5CO]nOH (1)
(式(1)中、R1は、水素原子、メチル基を示し、nは、1〜10を示す。)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のコーティング剤は、分散媒中に金属微粒子が分散された金属微粒子分散液からなる。具体的には、コーティング剤は、金属微粒子と、分散媒と、金属微粒子分散剤と、バインダーとを含有している。
【0024】
金属微粒子としては、特に制限されないが、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化スズ、酸化イットリウム(イットリア)、酸化ビスマス、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化インジウム、酸化ケイ素(二酸化ケイ素、シリカなど)などの金属酸化物の微粒子や、例えば、それら金属酸化物に、例えば、ガリウム、アンチモン、スズ、フッ素、リン、アルミニウムなどの異種元素をドープして得られる異種元素ドープ金属酸化物の微粒子などが挙げられる。これら金属酸化物の結晶構造は、特に制限されず、例えば、立方晶系、正方晶系、斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系、六方晶系、三方晶系などのいずれであってもよい。
【0025】
金属微粒子として、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0026】
また、金属微粒子は、必要により、公知の方法によって表面処理されていてもよい。
【0027】
これら金属微粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0028】
金属微粒子の形状は、特に制限されず、例えば、塊状、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、不定形状およびそれらの混合物などが挙げられる。
【0029】
また、金属微粒子の粒径は、金属微粒子自体の一次粒子径として測定され、例えば、200nm以下、好ましくは、90nm以下、より好ましくは、50nm以下であり、通常、1nm以上、好ましくは、3nm以上である。
【0030】
金属微粒子の一次粒子径が上記範囲であれば、金属微粒子の入手が容易であり、また、コーティング剤の保存安定性や、コーティング膜(後述)の透明性の向上を図ることができる。
【0031】
分散媒としては、特に制限されないが、例えば、ヘキサン、ミネラルスピリットなどの石油系炭化水素溶剤、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ―ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ピリジンなどの非プロトン性極性溶剤などの有機溶剤が挙げられる。
【0032】
また、分散媒として、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤などの水系溶剤も挙げられる。
【0033】
また、分散媒は、市販品としても入手可能であり、具体的には、石油系炭化水素溶剤として、例えば、AFソルベント4〜7号(以上、新日本石油社製)などが挙げられ、芳香族炭化水素系溶剤として、例えば、インキソルベント0号、エクソン化学社製のソルベッソ100、150、200(以上、新日本石油社製)などが挙げられる。
【0034】
これら分散媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
金属微粒子分散剤は、分散媒中における金属微粒子の分散性を向上させるための添加剤であって、必須成分として、2つ以上の活性エネルギー硬化基、および、少なくとも1つのカルボキシル基を有するモノマーまたはオリゴマー(以下、モノマーおよびオリゴマーを、化合物と総称する場合がある。)を含有している。
【0036】
活性エネルギー硬化基は、活性エネルギー線(後述)の照射により架橋構造を形成し、硬化する基であって、例えば、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基などが挙げられる。活性エネルギー硬化基として、好ましくは、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0037】
なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および/または「メタクリロイル基」と定義される。
【0038】
また、以下に記述される「(メタ)アクリル」も、上記と同じく、「アクリル」および/または「メタクリル」と定義され、「(メタ)アクリレート」も「アクリレート」および/または「メタクリレート」と定義される。
【0039】
2つ以上の(メタ)アクリロイル基、および、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、2つ以上の(メタ)アクリロイル基、および、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物を、酸無水物で変性した変性体などが挙げられる。
【0040】
そのような変性体として、より具体的には、例えば、2つ以上の(メタ)アクリロイル基、および、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリル化合物(以下、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物と略する場合がある。)の酸無水物変性体(以下、(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体と略する場合がある。)が挙げられる。
【0041】
ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物は、例えば、ポリオール(例えば、グリセリン(ヒドロキシル基数3)、トリメチロールプロパン(ヒドロキシル基数3)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(ヒドロキシル基数3)、ジグリセリン(ヒドロキシル基数4)、ジトリメチロールプロパン(ヒドロキシル基数4)、ペンタエリスリトール(ヒドロキシル基数4)、ジペンタエリスリトール(ヒドロキシル基数6)、トリペンタエリスリトール(ヒドロキシル基数8)などの公知の多官能アルコール)に、そのポリオールのヒドロキシル基数に対して等モル未満の(メタ)アクリル酸が付加したアダクト体(付加物)である。
【0042】
ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンジ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリ(メタ)アクリレート、およびこれらのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)付加物(ランダム付加物、ブロック付加物を含む。)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
これらヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0044】
ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物として、好ましくは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられ、コーティング膜(後述)の硬度の観点から、より好ましくは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられる。
【0045】
なお、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物は、後述するヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物と、適宜の割合で併用することもできる。
【0046】
酸無水物としては、ジカルボン酸一無水物、トリカルボン酸一無水物、テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0047】
ジカルボン酸一無水物としては、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(C12〜C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、ハイミック酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラプロムフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物などが挙げられる。
【0048】
トリカルボン酸一無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物などが挙げられる。
【0049】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−オキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0050】
これら酸無水物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0051】
酸無水物として、好ましくは、ジカルボン酸一無水物、テトラカルボン酸二無水物が挙げられ、より好ましくは、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸が挙げられる。また、酸無水物として、好ましくは、ジカルボン酸一無水物が挙げられ、コーティング膜(後述)の硬度の観点から、より好ましくは、無水コハク酸、無水フタル酸が挙げられ、とりわけ好ましくは、無水フタル酸が挙げられる。
【0052】
ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体を得るには、例えば、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物と酸無水物とを配合し、必要により、溶剤中において、加熱して反応させる。
【0053】
ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物と酸無水物との配合割合は、例えば、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物のヒドロキシル基に対する酸無水物の無水カルボン酸基との当量比(無水カルボン酸基/ヒドロキシル基)が、例えば、0.5以上、好ましくは、0.67以上であり、例えば、1以下、好ましくは、0.91以下である。
【0054】
溶剤としては、例えば、上記した有機溶剤(分散媒として上記した有機溶剤)、上記した水系溶剤(分散媒として上記した水系溶剤)などが挙げられる。これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。溶剤として、好ましくは、有機溶剤、より好ましくは、ケトン系溶剤、さらに好ましくは、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0055】
また、この反応では、必要により、触媒を添加することもできる。
【0056】
触媒としては、例えば、金属、有機金属化合物、金属ハロゲン化物、アミン化合物などが挙げられる。
【0057】
金属としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属が挙げられる。
【0058】
有機金属化合物としては、例えば、上記したアルカリ金属のアルコキシド(アルカリ金属アルコキシド)およびその誘導体、例えば、トリエチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム化合物およびその誘導体、例えば、チタン酸テトラブチルなどのアルコキシチタン化合物、2−エチルヘキサン酸錫、オクチル酸錫、ジブチル錫ラウレートなどの有機錫化合物などが挙げられる。
【0059】
金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化錫(具体的には、二塩化錫:SnCl
2)などの錫ハロゲン化物が挙げられる。
【0060】
アミン化合物としては、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
【0061】
これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0062】
触媒として、好ましくは、アミン化合物が挙げられ、より好ましくは、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンが挙げられ、さらに好ましくは、トリエチルアミンが挙げられる。
【0063】
触媒の配合割合は、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物と酸無水物との総量100質量部に対して、例えば、0.0001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、0.5質量部以下である。
【0064】
また、この反応では、必要により、重合禁止剤を添加することもできる。
【0065】
重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−ヒドロキシトルエン、4−tert−ブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルカテコール)などのフェノール化合物、例えば、フェノチアジン、ジフェニルフェニレンジアミン、ジナフチルフェニレンジアミン、p−アミノジフェニルアミン、N−アルキル−N’−フェニレンジアミンなどの芳香族アミン類、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アセトキシ−1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイロキシ−1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アルコキシ−1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1−オキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートの2,2,6,6−テトラメチルピペリジンのN−オキシル誘導体、N−ニトロソジフェニルアミン、ジエチルジチオカルバミン酸の銅塩、p−ベンゾキノンなどが挙げられる。
【0066】
これら重合禁止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0067】
重合禁止剤として、好ましくは、p−メトキシフェノールが挙げられる。
【0068】
重合禁止剤の配合割合は、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物と、酸無水物との総量100質量部に対して、例えば、0.0001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、例えば、1.0質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
【0069】
また、反応条件としては、酸素雰囲気下、または、不活性ガス−酸素ガス混合気雰囲気下において、加熱温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、140℃以下、好ましくは、110℃以下である。また、加熱時間が、例えば、4時間以上、好ましくは、8時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0070】
これにより、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物を酸無水物により変性させることができ、(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体が得られる。
【0071】
(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体として、より具体的には、例えば、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのフタル酸変性物、ペンタエリスリトールトリアクリレートのフタル酸変性物、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールトリアクリレートのコハク酸変性物などが挙げられる。
【0072】
(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の酸価は、例えば、20mgKOH/g以上、好ましくは、73mgKOH/g以上、より好ましくは、80mgKOH/g以上であり、例えば、500mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下である。
【0073】
また、(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の水酸基価は、例えば、0mgKOH/gを超過し、好ましくは、1mgKOH/g以上であり、例えば、350mgKOH/g以下、好ましくは、230mgKOH/g以下である。
【0074】
なお、2つ以上の(メタ)アクリロイル基、および、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物としては、上記の(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体に限定されず、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレートなどを用いることもできる。
【0075】
2つ以上の(メタ)アクリロイル基、および、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物として、分散性、分散安定性および塗膜硬度の観点から、好ましくは、(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体が挙げられる。
【0076】
2つ以上の(メタ)アクリロイル基、および、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物(好ましくは、上記(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体)の配合割合は、金属微粒子100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、7質量部以上であり、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下、さらに好ましくは、70質量部以下、とりわけ好ましくは、50質量部以下である。
【0077】
また、金属微粒子分散剤は、さらに、(B)単官能(メタ)アクリル化合物を含有することができる。
【0078】
(B)単官能(メタ)アクリル化合物は、具体的には、1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物であって、下記(b1)〜(b3)で示される化合物の少なくとも1種を含有している。
【0079】
(b1)下記式(1)で示される(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物。
【0080】
CH
2=C(R
1)CO[O(CH
2)
5CO]
nOH (1)
(式(1)中、R
1は、水素原子、メチル基を示し、nは、1〜10を示す。)
(b2)下記式(2)で示されるヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の酸無水物変性体。
【0081】
CH
2=C(R
1)COOR
2O[CO(CH
2)
5O]
nH (2)
(式(2)中、R
1は、水素原子、メチル基を示し、R
2は、エチレン基、プロピレン基およびテトラメチレン基からなる群から選択される少なくとも1種を示し、nは、1〜10を示す。)
(b3)下記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の酸無水物変性体。
【0082】
CH
2=C(R
1)COO(C
mH
2mO)
nH (3)
(式(3)中、R1は、水素原子、メチル基を示し、mは、2〜4を示し、nは、1〜10を示す。)
以下において、上記(b1)〜(b3)で示される化合物のそれぞれについて、詳述する。
【0083】
(b1)で示される化合物は、下記式(1)で示される(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物である。
【0084】
CH
2=C(R
1)CO[O(CH
2)
5CO]
nOH (1)
(式(1)中、R
1は、水素原子、メチル基を示し、nは、1〜10を示す。)
上記式(1)において、R
1は、水素原子および/またはメチル基を示し、好ましくは、水素原子を示す。
【0085】
また、上記式(1)において、nは、(メタ)アクリル酸1モルに対するカプロラクトンの平均付加モル数であり、1以上、好ましくは、2以上であり、10以下、好ましくは、5以下、より好ましくは、3以下である。
【0086】
このような(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物は、(メタ)アクリル酸にε−カプロラクトンを付加反応(開環付加)させることにより、得ることができる。
【0087】
(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタアクリル酸であり、好ましくは、アクリル酸である。
【0088】
ε−カプロラクトンとしては、特に制限されず、市販品をそのまま使用することができる。
【0089】
(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとを反応(開環付加)させる方法としては、特に制限されず、公知の方法(例えば、特開昭62−135521、特開昭60−67446などに記載の方法)を採用することができる。
【0090】
より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとを配合し、必要により、触媒および溶剤の存在下において、加熱および撹拌する。
【0091】
(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの配合割合は、目的物(上記式(1)で示される化合物)の分子量、すなわち、(メタ)アクリル酸に対するε−カプロラクトンの平均付加モル数nに応じて適宜設定される。
【0092】
例えば、(メタ)アクリル酸1モルに対して、ε−カプロラクトンが、例えば、1モル以上、好ましくは、2モル以上であり、例えば、10モル以下、好ましくは、5モル以下、より好ましくは、3モル以下である。
【0093】
また、例えば、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、ε−カプロラクトンが、例えば、50質量部以上、好ましくは、150質量部以上であり、例えば、10000質量部以下、好ましくは、2000質量部以下である。
【0094】
また、反応条件としては、不活性ガス、または、不活性ガス−酸素ガス混合気雰囲気下において、反応温度が、例えば、80℃以上、好ましくは、120℃以上であり、例えば、240℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間は、例えば、4時間以上、好ましくは、6時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0095】
触媒としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化第二スズなどのルイス酸、例えば、硫酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スルホン酸型イオン交換樹脂などのブレンステッド酸などの酸触媒などが挙げられる。
【0096】
これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0097】
触媒として、反応液に対する溶解性の観点から、好ましくは、硫酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0098】
触媒の配合割合は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0099】
溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。
【0100】
溶剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0101】
また、(メタ)アクリル酸のε−カプロラクトン付加物は、無溶剤でも製造できる。
【0102】
なお、反応においては、必要により、上記した重合禁止剤を添加することもできる。
【0103】
重合禁止剤として、好ましくは、p−メトキシフェノールが挙げられる。
【0104】
重合禁止剤の配合割合は、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの総量100質量部に対して、例えば、0.0001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、例えば、1.0質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
【0105】
また、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物は、例えば、(メタ)アクリル酸と、カプロラクトンが開環したω−オキシカプロン酸とのエステル化反応(縮合重合)によっても得られる。
【0106】
また、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物は、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、例えば、アロニックスM−5300(ω−カルボキシルカプロラクトンモノアクリレート、東亜合成製)などが挙げられる。
【0107】
(b1)上記式(1)で示される(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物の酸価は、例えば、45mgKOH/g以上、好ましくは、135mgKOH/g以上であり、例えば、310mgKOH/g以下である。
【0108】
(b2)で示される化合物は、下記式(2)で示されるヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の、酸無水物変性体である。
【0109】
CH
2=C(R
1)COOR
2O[CO(CH
2)
5O]
nH (2)
(式(2)中、R
1は、水素原子、メチル基を示し、R
2は、エチレン基、プロピレン基およびテトラメチレン基からなる群から選択される少なくとも1種を示し、nは、1〜10を示す。)
上記式(2)において、R
1は、水素原子および/またはメチル基を示し、好ましくは、水素原子を示す。
【0110】
また、上記式(2)において、R
2は、エチレン基、プロピレン基およびテトラメチレン基からなる群から選択される少なくとも1種を示し、好ましくは、エチレン基を示す。
【0111】
また、上記式(2)において、nは、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート1モルに対するカプロラクトンの平均付加モル数であり、1以上、好ましくは、2以上であり、10以下、好ましくは、5以下である。
【0112】
(b2)で示される化合物を得るには、例えば、まず、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとを反応(開環付加)させ、上記式(2)で示されるヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物を得る。その後、上記式(2)で示されるヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物と、酸無水物とを反応させる。
【0113】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数が2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)クリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0114】
これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0115】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして、好ましくは、炭素数が2のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレートが挙げられる。
【0116】
ε−カプロラクトンとしては、特に制限されず、市販品をそのまま使用することができる。
【0117】
ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとを反応(開環付加)させる方法としては、特に制限されず、公知の方法(例えば、特開平10−7774参照などに記載の方法)を採用することができる。
【0118】
具体的には、例えば、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンとを配合し、必要により、上記の触媒、および、上記の溶剤の存在下において、加熱および撹拌する。
【0119】
ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの配合割合は、目的物(上記式(2)で示される化合物)の分子量、すなわち、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートに対するε−カプロラクトンの平均付加モル数nに応じて適宜設定される。
【0120】
例えば、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート1モルに対して、ε−カプロラクトンが、例えば、1モル以上、好ましくは、2モル以上であり、例えば、10モル以下、好ましくは、5モル以下である。
【0121】
また、例えば、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート100質量部に対して、ε−カプロラクトンが、例えば、90質量部以上、好ましくは、190質量部以上であり、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下である。
【0122】
また、反応条件としては、酸素ガス、または、不活性ガス−酸素ガス混合気雰囲気下、反応温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、90℃以上であり、例えば、140℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、反応時間は、例えば、4時間以上、好ましくは、8時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0123】
なお、反応においては、必要により、上記した重合禁止剤を添加することもできる。
【0124】
重合禁止剤として、好ましくは、p−メトキシフェノールが挙げられる。
【0125】
重合禁止剤の配合割合は、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの総量100質量部に対して、例えば、0.0001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、例えば、1.0質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
【0126】
なお、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物は、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、例えば、プラクセルFA−1、プラクセルFA−2、プラクセルFA−2D、プラクセルFA−3、プラクセルFA−4、プラクセルFA−5、プラクセルFA−10L、プラクセルFM−1、プラクセルFM−2、プラクセルFM−2D、プラクセルFM−3、プラクセルFM−4、プラクセルFM−5(いずれもダイセル化学社製)(プラクセル(PLACCEL)は登録商標)などが挙げられる。
【0127】
これらヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0128】
そして、上記のヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物と、酸無水物とを反応させることにより、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の酸無水物変性体(すなわち、(b2)で示される化合物)を得ることができる。
【0129】
酸無水物としては、上記した酸無水物((A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の製造において用いられる酸無水物)が挙げられ、好ましくは、ジカルボン酸一無水物が挙げられ、コーティング膜(後述)の硬度の観点から、より好ましくは、無水コハク酸、無水フタル酸が挙げられ、さらに好ましくは、無水コハク酸が挙げられる。
【0130】
そして、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物と、酸無水物との反応では、例えば、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物と酸無水物とを配合し、必要に応じて、溶剤、触媒などの存在下において、加熱する。
【0131】
溶剤としては、例えば、上記した有機溶剤(分散媒として上記した有機溶剤)、上記した水系溶剤(分散媒として上記した水系溶剤)などが挙げられる。これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。溶剤として、好ましくは、有機溶剤、より好ましくは、ケトン系溶剤、さらに好ましくは、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0132】
触媒としては、例えば、上記した触媒((A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の製造において用いられる触媒)が挙げられる。これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。触媒として、好ましくは、アミン化合物が挙げられ、より好ましくは、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンが挙げられ、さらに好ましくは、トリエチルアミンが挙げられる。
【0133】
ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物と酸無水物との配合割合は、例えば、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物中のヒドロキシル基に対する酸無水物中の無水カルボン酸基との当量比(無水カルボン酸基/ヒドロキシル基)が、例えば、0.5以上、好ましくは、0.67以上であり、例えば、1以下、好ましくは、0.91以下である。
【0134】
また、反応条件としては、酸素ガス、または、不活性ガス−酸素ガス混合気雰囲気下において、加熱温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、140℃以下、好ましくは、110℃以下である。また、加熱時間が、例えば、4時間以上、好ましくは、8時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0135】
これにより、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の酸無水物変性体(すなわち、(b2)で示される化合物)が得られる。
【0136】
(b2)上記式(2)で示されるヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の酸無水物変性体の酸価は、例えば、40mgKOH/g以上、好ましくは、60mgKOH/g以上であり、例えば、280mgKOH/g以下、好ましくは、150mgKOH/g以下である。
【0137】
(b3)で示される化合物は、上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の、酸無水物変性体である。
【0138】
CH
2=C(R
1)COO(C
mH
2mO)
nH (3)
(式(3)中、R1は、水素原子、メチル基を示し、mは、2〜4を示し、nは、1〜10を示す。)
上記式(3)において、R
1は、水素原子および/またはメチル基を示し、好ましくは、水素原子を示す。
【0139】
また、上記式(3)において、mは、2以上であり、4以下、好ましくは、3以下である。
【0140】
すなわち、上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物は、炭素数2〜4のオキシアルキレン(C
mH
2mO)を有している。
【0141】
炭素数2〜4のオキシアルキレンとしては、オキシエチレン(−CH
2CH
2O−)、オキシトリメチレン(−CH
2CH
2CH
2O−)、オキシテトラメチレン(−CH
2CH
2CH
2CH
2O−)などの直鎖状オキシアルキレン、例えば、オキシプロピレン(−CH
2CH(CH
3)O−)、オキシブチレン(−CH
2CH(CH
2CH
3)O−、−CH(CH
3)CH(CH
3)O−)などの分岐状オキシアルキレンなどが挙げられ、好ましくは、直鎖状オキシアルキレン、より好ましくは、オキシエチレンが挙げられる。
【0142】
また、上記式(3)において、nは、(メタ)アクリル酸1モルに対するアルキレンオキサイドの平均付加モル数であり、1以上、好ましくは、2以上であり、10以下、好ましくは、5以下である。
【0143】
(b3)で示される化合物を得るには、例えば、まず、(メタ)アクリル酸と、アルキレンオキサイドとを反応(開環付加)させ、上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物を得る。その後、上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物と、酸無水物とを反応させる。
【0144】
(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタアクリル酸であり、好ましくは、アクリル酸である。
【0145】
アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが挙げられ、具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド(オキセタン)、ブチレンオキサイドなどの炭素数2〜4の環状エーテル化合物が挙げられる。
【0146】
これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0147】
なお、アルキレンオキサイドが2種類以上併用される場合、その付加形態は特に制限されず、例えば、ランダム付加、ブロック付加などであってもよい。
【0148】
アルキレンオキサイドとして、好ましくは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられ、より好ましくは、エチレンオキサイドが挙げられる。
【0149】
(メタ)アクリル酸に、アルキレンオキサイドを付加させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
【0150】
より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとを配合し、必要により、上記の触媒、および、上記の溶剤の存在下において、加熱および撹拌する。
【0151】
(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとの配合割合は、目的物(上記式(3)で示される化合物)の分子量、すなわち、(メタ)アクリル酸に対するアルキレンオキサイドの平均付加モル数nに応じて適宜設定される。
【0152】
例えば、(メタ)アクリル酸1モルに対して、アルキレンオキサイドが、例えば、1モル以上、好ましくは、2モル以上であり、例えば、10モル以下、好ましくは、5モル以下である。
【0153】
また、例えば、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、アルキレンオキサイドが、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上であり、例えば、5000質量部以下、好ましくは、1500質量部以下である。
【0154】
また、反応条件としては、不活性ガス−酸素ガス混合気雰囲気下において、反応温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、100℃以上であり、例えば、240℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間は、例えば、1時間以上、好ましくは、3時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0155】
これにより、上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物が得られる。
【0156】
(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物として、より具体的には、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレートなどの水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、例えば、(モノ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(モノ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(モノ)トリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(モノ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(モノ)テトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基末端モノアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0157】
これら(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0158】
(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物として、好ましくは、水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0159】
なお、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物は、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、例えば、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーAEシリーズ、ブレンマーPPシリーズ、ブレンマーAPシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマーPETシリーズ、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマーPPTシリーズ、ブレンマーAPTシリーズ(いずれも、日本油脂製)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0160】
そして、上記の(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物と、酸無水物とを反応させることにより、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の酸無水物変性体(すなわち、(b3)で示される化合物)を得ることができる。
【0161】
酸無水物としては、上記した酸無水物((A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の製造において用いられる酸無水物)が挙げられ、好ましくは、ジカルボン酸一無水物が挙げられ、硬化物(後述)の硬度の観点から、より好ましくは、無水コハク酸、無水フタル酸が挙げられ、さらに好ましくは、無水コハク酸が挙げられる。
【0162】
そして、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物と、酸無水物との反応では、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物と酸無水物とを配合し、必要に応じて、溶剤、触媒などの存在下において、加熱する。
【0163】
溶剤としては、例えば、上記した有機溶剤(分散媒として上記した有機溶剤)、上記した水系溶剤(分散媒として上記した水系溶剤)などが挙げられる。これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。溶剤として、好ましくは、有機溶剤、より好ましくは、ケトン系溶剤、さらに好ましくは、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0164】
触媒としては、例えば、上記した触媒((A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の製造において用いられる触媒)が挙げられる。これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。触媒として、好ましくは、アミン化合物が挙げられ、より好ましくは、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンが挙げられ、さらに好ましくは、トリエチルアミンが挙げられる。
【0165】
(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物のカプロラクトン付加物と酸無水物との配合割合は、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物中のヒドロキシル基に対する酸無水物中の無水カルボン酸基との当量比(無水カルボン酸基/ヒドロキシル基)が、例えば、0.5以上、好ましくは、0.67以上であり、例えば、1以下、好ましくは、0.91以下である。
【0166】
また、反応条件としては、酸素雰囲気下、または、不活性ガス−酸素ガス混合気雰囲気下において、加熱温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、140℃以下、好ましくは、110℃以下である。また、加熱時間が、例えば、4時間以上、好ましくは、8時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0167】
これにより、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の酸無水物変性体(すなわち、(b3)で示される化合物)が得られる。
【0168】
(b3)上記式(3)で示される(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の酸無水物変性体の酸価は、例えば、55mgKOH/g以上、好ましくは、95mgKOH/g以上であり、例えば、400mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下である。
【0169】
これら(B)単官能(メタ)アクリル化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0170】
(B)単官能(メタ)アクリル化合物としては、コーティング剤の分散安定性の向上を図る観点から、好ましくは、(b1)で示す化合物が挙げられ、より好ましくは、(B)前記単官能(メタ)アクリル化合物が、上記式(1)で示され、nが1〜3である(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物を含有することが挙げられる。
【0171】
金属微粒子分散剤として、(B)単官能(メタ)アクリル化合物が用いられる場合、その含有割合は、金属微粒子分散剤の総量に対して、例えば、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0172】
また、金属微粒子分散剤は、好ましくは、さらに、(C)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤を含有する。
【0173】
(C)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤は、アニオン性基含有モノマーを含有するモノマー成分を、後述の方法で反応させた反応物である。
【0174】
アニオン性基含有モノマーは、アニオン性基と重合性不飽和基とを、それぞれ1つ以上有するモノマーである。
【0175】
アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、これらは単独使用または併用される。アニオン性基として、コーティング膜(後述)の硬度の観点から、好ましくは、カルボキシル基、リン酸基が挙げられ、より好ましくは、カルボキシル基が挙げられる。
【0176】
重合性不飽和基は、重合可能な不飽和結合を有する基であって、例えば、エチレン性不飽和基が挙げられ、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニルアリール基、ビニルオキシ基、アリル基などが挙げられ、これらは単独使用または併用される。重合性不飽和基として、入手容易性の観点から、好ましくは、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
【0177】
アニオン性基含有モノマーとして、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β−不飽和カルボン酸またはその塩などのカルボキシル基含有モノマー、例えば、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、モノ(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)ホスフェートなどのリン酸基含有(メタ)アクリレートなどのリン酸基含有モノマー、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸などのスルホン酸基含有モノマーなどが挙げられる。
【0178】
これらアニオン性基含有モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0179】
アニオン性基含有モノマーとして、コーティング膜(後述)の硬度の観点から、好ましくは、カルボキシル基含有モノマー、リン酸基含有モノマーが挙げられ、より好ましくは、カルボキシル基含有モノマーが挙げられ、さらに好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸が挙げられ、とりわけ好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0180】
なお、(メタ)アクリル樹脂分散剤では、モノマー成分がアニオン性基含有モノマーを含有するので、(メタ)アクリル樹脂として、アニオン性基を含有する(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0181】
また、モノマー成分は、アニオン性基含有モノマーと共重合可能なその他のモノマーを含有することができる。
【0182】
その他のモノマーとして、具体的には、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。
【0183】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、1−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、イソステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート(ベヘニル(メタ)アクリレート)、テトラコシル(メタ)アクリレート、トリアコンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜30の直鎖状、分岐状または環状アルキルの(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0184】
芳香環含有モノマーとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、o−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有(メタ)アクリレート、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーなどが挙げられる。
【0185】
なお、モノマー成分が芳香環含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル樹脂として、芳香環を含有する(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0186】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0187】
なお、モノマー成分がヒドロキシル基含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル樹脂として、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0188】
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、イソシアナトメチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートなどのイソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーなどが挙げられる。
【0189】
なお、モノマー成分がイソシアネート基含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル樹脂として、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0190】
さらに、その他のモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有モノマー、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマーなどが挙げられる。
【0191】
これらその他のモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0192】
その他のモノマーとして、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマーが挙げられ、より好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーおよびイソシアネート基含有モノマーのすべてを含有することが挙げられる。
【0193】
モノマー成分が、芳香環含有モノマーを含有していれば(すなわち、(メタ)アクリル樹脂が芳香環を含有する(メタ)アクリル樹脂であれば)、コーティング膜(後述)の密着性の向上を図ることができる。
【0194】
また、モノマー成分が、ヒドロキシル基含有モノマーおよびイソシアネート基含有モノマーを含有していれば、後述の方法により、容易に(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することができ、コーティング膜(後述)の密着性の向上を図ることができる。
【0195】
モノマー成分がアルキル(メタ)アクリレートを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0196】
また、モノマー成分が芳香環含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、コーティング膜(後述)の密着性の観点から、モノマー成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0197】
また、モノマー成分がヒドロキシル基含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0198】
また、モノマー成分がイソシアネート基含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0199】
また、このようなモノマー(アニオン性基含有モノマーを除くモノマー)をモノマー成分が含有する場合、モノマー成分中のアニオン性基含有モノマーの含有割合は、モノマー成分の総量に対して、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0200】
モノマー成分の総量に対するアニオン性基含有モノマーの含有割合が5質量%以上であれば、そのモノマー成分の反応により得られる(メタ)アクリル樹脂分散剤は、金属微粒子を良好に分散させることができる。とりわけ、モノマー成分がアニオン性基含有モノマーを10質量%以上の割合で含有する場合、そのモノマー成分の重合により得られる(メタ)アクリル樹脂分散剤は、金属微粒子の分散性および分散安定性の向上を図ることができる。
【0201】
なお、モノマー成分の総量に対するアニオン性基含有モノマーの含有割合が5質量%以上である場合、そのモノマー成分の反応により得られる(メタ)アクリル樹脂を、(メタ)アクリル樹脂分散剤とする。また、後述するが、モノマー成分の総量に対するアニオン性基含有モノマーの含有割合が5質量%未満である場合、そのモノマー成分の反応により得られる(メタ)アクリル樹脂を、(メタ)アクリル樹脂バインダー(後述)とする。これにより、(メタ)アクリル樹脂分散剤と、(メタ)アクリル樹脂バインダー(後述)とを区別する。
【0202】
そして、(C)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤は、以下の反応により、合成される。
【0203】
すなわち、この方法では、まず、上記モノマー成分の一部を重合させて、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有しない(メタ)アクリル樹脂を得る。次いで、得られた(メタ)アクリル樹脂と、モノマー成分の残部とを反応させ、重合物の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する。
【0204】
モノマー成分の一部として、好ましくは、アニオン性基含有モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー(具体的には、イソシアネート基含有モノマーを除くモノマー)が挙げられる。
【0205】
モノマー成分の一部において、アニオン性基含有モノマーの含有割合は、モノマー成分の総量に対して、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0206】
また、モノマー成分の一部がアルキル(メタ)アクリレートを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0207】
また、モノマー成分の一部が芳香環含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、コーティング膜(後述)の密着性の観点から、モノマー成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0208】
また、モノマー成分の一部がヒドロキシル基含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0209】
モノマー成分の一部を重合させる方法は、特に制限されないが、例えば、公知の溶媒中において、上記のモノマー成分の一部(好ましくは、アニオン性基含有モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー)を上記割合で混合し、公知のラジカル重合開始剤(例えば、アゾ系化合物、パーオキサイド系化合物など)の存在下において加熱して、重合させる。
【0210】
重合条件は、モノマー成分の処方やラジカル重合開始剤の種類などにより異なるが、例えば、重合温度が、30℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、重合時間は、例えば、2時間以上、好ましくは、4時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、8時間以下である。
【0211】
これにより、分散剤を得るための(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0212】
分散剤を得るための(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(GPC測定:ポリスチレン換算)は、例えば、2000以上、好ましくは、3000以上であり、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下、より好ましくは、15000以下である。
【0213】
重量平均分子量が上記の範囲であれば、透明性、密着性、硬度および耐久性(耐アルカリ性、耐光性)に優れるコーティング膜(後述)を得ることができる。
【0214】
また、上記の方法において、(メタ)アクリル樹脂の原料であるモノマー成分が、ヒドロキシル基含有モノマーを含有する場合、上記の重合により得られる(メタ)アクリル樹脂は、ヒドロキシル基を有する。
【0215】
そこで、この方法では、上記で得られた重合物(すなわち、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂)と、モノマー成分の残部とを反応させる。
【0216】
モノマー成分の残部としては、例えば、イソシアネート基含有モノマーが挙げられ、好ましくは、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。より好ましくは、モノマー成分の残部は、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーからなる。
【0217】
モノマー成分の残部として、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーを用いれば、以下のようにヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂と、モノマー成分の残部とを反応させ、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することができる。
【0218】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂と、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーとを反応させるには、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂と、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーとを配合し、必要により公知の触媒および溶剤の存在下において、加熱する。
【0219】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂と、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーとの配合割合は、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂のヒドロキシル基1モルに対して、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーのイソシアネート基が、例えば、0.1モル以上、好ましくは、0.8モル以上であり、例えば、2.0モル以下、好ましくは、1.2モル以下である。
【0220】
また、反応条件は、例えば、空気雰囲気下、反応温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、反応時間は、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0221】
なお、反応においては、必要により、上記した重合禁止剤を添加することもできる。
【0222】
重合禁止剤として、好ましくは、p−メトキシフェノールが挙げられる。
【0223】
重合禁止剤の配合割合は、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーとの総量100質量部に対して、例えば、0.0001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、例えば、1.0質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
【0224】
これにより、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂のヒドロキシル基と、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーのイソシアネート基とがウレタン反応する。
【0225】
その結果、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーが結合され、側鎖末端に(メタ)アクリロイル基が導入される。
【0226】
これにより、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤が得られる。
【0227】
なお、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法は、上記の方法に制限されず、公知の方法を採用することができる。
【0228】
例えば、モノマー成分が、イソシアネート基含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル樹脂は、イソシアネート基を有する。そのため、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル樹脂と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとをウレタン反応させることにより、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することもできる。
【0229】
また、例えば、モノマー成分がアニオン性基含有モノマー(例えば、カルボキシル基含有モノマーなど)を含有する場合、(メタ)アクリル樹脂は、アニオン性基(例えば、カルボキシル基など)を有する。そのため、アニオン性基を有する(メタ)アクリル樹脂と、グリシジル基含有(メタ)アクリレートとをエステル化反応させることにより、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することもできる。
【0230】
また、例えば、モノマー成分がグリシジル基含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル樹脂は、グリシジル基を有する。そのため、グリシジル基を有する(メタ)アクリル樹脂と、アニオン性基含有(メタ)アクリレート(例えば、カルボキシル基含有(メタ)アクリレートなど)とをエステル化反応させることにより、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することもできる。
【0231】
(メタ)アクリル樹脂分散剤が、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有していれば、コーティング膜(後述)の密着性の向上を図ることができる。
【0232】
(C)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤の重量平均分子量(GPC測定:ポリスチレン換算)は、例えば、2000以上、好ましくは、3000以上であり、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下、より好ましくは、15000以下である。
【0233】
重量平均分子量が上記の範囲であれば、透明性、密着性、硬度および耐久性(耐アルカリ性、耐光性)に優れるコーティング膜(後述)を得ることができる。
【0234】
また、(C)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤の、(メタ)アクリロイル基当量は、例えば、400以上、好ましくは、800以上であり、例えば、30000以下、好ましくは、10000以下である。
【0235】
なお、(メタ)アクリル基当量は、2重結合1molあたりのポリマー質量(2重結合当量)であると定義する(以下同様)。
【0236】
このような(C)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤が金属微粒子分散剤に含有される場合には、金属微粒子の分散性および分散安定性の向上を図ることができ、また、透明性、密着性、硬度および耐久性(耐アルカリ性、耐光性)に優れるコーティング膜(後述)を得ることができる。
【0237】
(C)側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤の含有割合は、金属微粒子分散剤の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、80質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0238】
バインダーは、コーティング膜(後述)の硬度、密着性、耐久性(耐アルカリ性、耐光性)などの各種物性を向上させるための添加剤であって、必須成分として、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂バインダーを含有している。
【0239】
側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂バインダーは、以下に示すモノマー成分を、後述の方法で反応させた反応物である。
【0240】
より具体的には、モノマー成分に含まれるモノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。
【0241】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、上記(メタ)アクリル樹脂分散剤の原料として例示したアルキル(メタ)アクリレートと同じアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0242】
芳香環含有モノマーとしては、上記(メタ)アクリル樹脂分散剤の原料として例示した芳香環含有モノマーと同じ芳香環含有モノマーが挙げられる。なお、モノマー成分が芳香環含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル樹脂として、芳香環を含有する(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0243】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、上記(メタ)アクリル樹脂分散剤の原料として例示したヒドロキシル基含有モノマーと同じヒドロキシル基含有モノマーが挙げられる。なお、モノマー成分がヒドロキシル基含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル樹脂として、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0244】
イソシアネート基含有モノマーとしては、上記(メタ)アクリル樹脂分散剤の原料として例示したイソシアネート基含有モノマーと同じイソシアネート基含有モノマーが挙げられる。なお、モノマー成分がイソシアネート基含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル樹脂として、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0245】
さらに、(メタ)アクリル樹脂バインダーにおいて、モノマー成分に含まれるモノマーとしては、上記の他、例えば、上記したグリシジル基含有モノマー、ビニルエステル系モノマーなどが挙げられる。
【0246】
これらのモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0247】
モノマーとして、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマーが挙げられ、より好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーおよびイソシアネート基含有モノマーのすべてを含有することが挙げられる。
【0248】
モノマー成分が、芳香環含有モノマーを含有していれば(すなわち、(メタ)アクリル樹脂が芳香環を含有する(メタ)アクリル樹脂であれば)、コーティング膜(後述)の密着性の向上を図ることができる。
【0249】
また、モノマー成分が、ヒドロキシル基含有モノマーおよびイソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーを含有していれば、後述の方法により、容易に(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することができ、コーティング膜(後述)の密着性の向上を図ることができる。
【0250】
モノマー成分がアルキル(メタ)アクリレートを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0251】
また、モノマー成分が芳香環含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、コーティング膜(後述)の硬度の観点から、モノマー成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0252】
また、モノマー成分がヒドロキシル基含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0253】
また、モノマー成分イソシアネート基含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0254】
また、(メタ)アクリル樹脂バインダーにおいて、モノマー成分は、アニオン性基含有モノマーを含有しないか、または、モノマー成分の総量に対して5質量%未満の割合でアニオン性基含有モノマーを含有する。
【0255】
アニオン性基含有モノマーを含有する場合、そのようなアニオン性基含有モノマーとしては、上記した(メタ)アクリル樹脂分散剤におけるアニオン性基含有モノマーと、同じアニオン性基含有モノマーが挙げられる。
【0256】
これらアニオン性基含有モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0257】
アニオン性基含有モノマーとして、コーティング膜(後述)の硬度の観点から、好ましくは、カルボキシル基含有モノマーが挙げられ、より好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸が挙げられ、さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0258】
(メタ)アクリル樹脂バインダーにおいて、モノマー成分は、上記のアニオン性基含有モノマーを含有しなくともよいが、好ましくは、その総量に対して5質量%未満の割合でアニオン性基含有モノマーを含有する。
【0259】
モノマー成分がアニオン性基含有モノマーを含有していれば、そのモノマー成分の反応により得られる(メタ)アクリル樹脂バインダーは、コーティング膜(後述)の密着性の向上を図ることができる。
【0260】
モノマー成分がアニオン性基含有モノマーのを含有する場合、モノマー成分中のアニオン性基含有モノマーの含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、5質量%未満、好ましくは、4.5質量%以下である。
【0261】
なお、モノマー成分の総量に対するアニオン性基含有モノマーの含有割合が5質量%未満(0質量%を含む)である場合、そのモノマー成分の反応により得られる(メタ)アクリル樹脂を、(メタ)アクリル樹脂バインダーとする。また、上記したように、モノマー成分の総量に対するアニオン性基含有モノマーの含有割合が5質量%以上である場合、そのモノマー成分の反応により得られる(メタ)アクリル樹脂を、(メタ)アクリル樹脂分散剤とする。これにより、(メタ)アクリル樹脂バインダーと、上記した(メタ)アクリル樹脂分散剤とを区別する。
【0262】
そして、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤は、以下の反応により、合成される。
【0263】
すなわち、この方法では、まず、上記モノマー成分の一部を重合させて、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有しない(メタ)アクリル樹脂を得る。次いで、得られた(メタ)アクリル樹脂と、モノマー成分の残部とを反応させ、重合物の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する。
【0264】
モノマー成分の一部として、好ましくは、アニオン性基含有モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーが挙げられる。
【0265】
モノマー成分の一部が、アニオン性基含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、5質量%未満、好ましくは、4.5質量%以下であり、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上である。
【0266】
また、モノマー成分の一部がアルキル(メタ)アクリレートを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0267】
また、モノマー成分の一部が芳香環含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、コーティング膜(後述)の密着性の観点から、モノマー成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0268】
また、モノマー成分の一部がヒドロキシル基含有モノマーを含有する場合、その含有割合は、モノマー成分の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0269】
モノマー成分の一部を重合させる方法は、特に制限されないが、例えば、公知の溶媒中において、上記のモノマー成分の一部(好ましくは、アニオン性基含有モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー)を上記割合で混合し、公知のラジカル重合開始剤(例えば、アゾ系化合物、パーオキサイド系化合物など)の存在下において加熱して、重合させる。
【0270】
重合条件は、モノマー成分の処方やラジカル重合開始剤の種類などにより異なるが、例えば、重合温度が、30℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、重合時間は、例えば、2時間以上、好ましくは、4時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、8時間以下である。
【0271】
これにより、バインダーを得るための(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0272】
バインダーを得るための(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(GPC測定:ポリスチレン換算)は、例えば、2000以上、好ましくは、3000以上であり、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下、より好ましくは、15000以下である。
【0273】
重量平均分子量が上記の範囲であれば、透明性、密着性、硬度および耐久性(耐アルカリ性、耐光性)に優れるコーティング膜(後述)を得ることができる。
【0274】
また、上記の方法において、(メタ)アクリル樹脂の原料であるモノマー成分が、ヒドロキシル基含有モノマーを含有する場合、上記の重合により得られる(メタ)アクリル樹脂は、ヒドロキシル基を有する。
【0275】
そこで、この方法では、(メタ)アクリル樹脂分散剤と同様に、上記で得られた重合物(すなわち、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂)と、モノマー成分の残部とを反応させる。
【0276】
モノマー成分の残部としては、例えば、イソシアネート基含有モノマーが挙げられ、好ましくは、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。より好ましくは、モノマー成分の残部は、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーからなる。
【0277】
モノマー成分の残部として、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーを用いれば、以下のようにヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂と、モノマー成分の残部とを反応させ、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することができる。
【0278】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂と、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーとを反応させるには、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂と、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーとを配合し、必要により公知の触媒および溶剤の存在下において、加熱する。
【0279】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂と、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーとの配合割合は、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂のヒドロキシル基1モルに対して、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーのイソシアネート基が、例えば、0.1モル以上、好ましくは、0.8モル以上であり、例えば、2.0モル以下、好ましくは、1.2モル以下である。
【0280】
また、反応条件は、例えば、空気雰囲気下、反応温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、反応時間は、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0281】
なお、反応においては、必要により、上記した重合禁止剤を添加することもできる。
【0282】
重合禁止剤として、好ましくは、p−メトキシフェノールが挙げられる。
【0283】
重合禁止剤の配合割合は、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂とイソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーとの総量100質量部に対して、例えば、0.0001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、例えば、1.0質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
【0284】
これにより、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂のヒドロキシル基と、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーのイソシアネート基とがウレタン反応する。
【0285】
その結果、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に、イソシアネート基含有(メタ)アクリルモノマーが結合され、側鎖末端に(メタ)アクリロイル基が導入される。
【0286】
これにより、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂バインダーが得られる。
【0287】
なお、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法は、上記の方法に制限されず、公知の方法を採用することができる。
【0288】
例えば、モノマー成分が、イソシアネート基含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル樹脂は、イソシアネート基を有する。そのため、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル樹脂と、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとをウレタン反応させることにより、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することもできる。
【0289】
また、例えば、モノマー成分がアニオン性基含有モノマー(例えば、カルボキシル基含有モノマーなど)を含有する場合、(メタ)アクリル樹脂は、アニオン性基(例えば、カルボキシル基など)を有する。そのため、アニオン性基を有する(メタ)アクリル樹脂と、グリシジル基含有(メタ)アクリレートとをエステル化反応させることにより、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することもできる。
【0290】
また、例えば、モノマー成分がグリシジル基含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル樹脂は、グリシジル基を有する。そのため、グリシジル基を有する(メタ)アクリル樹脂と、アニオン性基含有(メタ)アクリレート(例えば、カルボキシル基含有(メタ)アクリレートなど)とをエステル化反応させることにより、(メタ)アクリル樹脂の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入することもできる。
【0291】
(メタ)アクリル樹脂バインダーが、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有していれば、コーティング膜(後述)の密着性の向上を図ることができる。
【0292】
側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂バインダーの重量平均分子量(GPC測定:ポリスチレン換算)は、例えば、2000以上、好ましくは、3000以上であり、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下、より好ましくは、15000以下である。
【0293】
重量平均分子量が上記の範囲であれば、透明性、密着性、硬度および耐久性(耐アルカリ性、耐光性)に優れるコーティング膜(後述)を得ることができる。
【0294】
また、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂バインダーの、(メタ)アクリロイル基当量は、例えば、400以上、好ましくは、800以上であり、例えば、30000以下、好ましくは、10000以下である。
【0295】
また、バインダーとしては、その他のバインダーを含有することができる。
【0296】
その他のバインダーとしては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂などの合成樹脂が挙げられる。また、その他のバインダーとして、上記した(メタ)アクリル樹脂バインダーを除く(メタ)アクリル樹脂も挙げられる。
【0297】
これらその他のバインダーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0298】
そして、上記の金属微粒子と、上記の分散媒と、上記の金属微粒子分散剤と、上記のバインダーとを、一括または順次配合し、混合することにより、コーティング剤が得られる。
【0299】
コーティング剤における各成分の配合割合は、金属微粒子100質量部に対して、金属微粒子分散剤が、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下、さらに好ましくは、70質量部以下である。また、コーティング剤100質量部に対して、金属微粒子が、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、2.5質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。また、コーティング剤100質量部に対して、バインダーが、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0300】
なお、分散媒の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、例えば、金属微粒子100質量部に対して、例えば、100質量部以上、好ましくは、200質量部以上であり、例えば、2000質量部以下、好ましくは、1000質量部以下である。
【0301】
また、コーティング剤は、さらに、架橋剤を含有することができる。
【0302】
架橋剤としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート(酸無水物により変性されていない多官能(メタ)アクリレート)などが挙げられる。
【0303】
多官能(メタ)アクリレートは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であって、例えば、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物、ヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物などが挙げられる。
【0304】
ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物は、上記したように、2つ以上の(メタ)アクリロイル基、および、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する、多官能(メタ)アクリル化合物である。
【0305】
ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物としては、上記したヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物((A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の製造において用いられるヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物)が挙げられる。
【0306】
ヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物は、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、ヒドロキシル基を有さない多官能(メタ)アクリル化合物である。
【0307】
より具体的には、ヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物は、例えば、ポリオール(例えば、1,3−ブタンジオール(ヒドロキシル基数2)、1,6−ヘキサンジオール(ヒドロキシル基数2)、エチレングリコール(ヒドロキシル基数2)、ジエチレングリコール(ヒドロキシル基数2)、ネオペンチルグリコール(ヒドロキシル基数2)、トリエチレングリコール(ヒドロキシル基数2)、テトラエチレングリコール(ヒドロキシル基数2)、ポリエチレングリコール(ヒドロキシル基数2)、グリセリン(ヒドロキシル基数3)、トリメチロールプロパン(ヒドロキシル基数3)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(ヒドロキシル基数3)、ジグリセリン(ヒドロキシル基数4)、ジトリメチロールプロパン(ヒドロキシル基数4)、ペンタエリスリトール(ヒドロキシル基数4)、ジペンタエリスリトール(ヒドロキシル基数6)、トリペンタエリスリトール(ヒドロキシル基数8)などの公知の多官能アルコール)に、そのポリオールのヒドロキシル基数と等モルの(メタ)アクリル酸が付加したアダクト体(付加物)である。
【0308】
ヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0309】
また、架橋剤としては、上記の他、例えば、単官能(メタ)アクリル化合物(上記(B)単官能(メタ)アクリル化合物を除く単官能(メタ)アクリル化合物。)が挙げられる。このような単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、上記したアルキル(メタ)アクリレート、上記した芳香環含有モノマー、上記したヒドロキシル基含有モノマー、上記したアニオン性基含有モノマーなどが挙げられる。
【0310】
これら架橋剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0311】
架橋剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0312】
また、架橋剤の配合方法は、特に制限されず、例えば、上記の金属微粒子分散剤とは別途添加してもよく、例えば、上記の(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の製造時において、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物を過剰に用いることにより、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物を酸無水物により変性させずに残存させ、そのヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物を架橋剤として用いてもよい。
【0313】
さらに、上記の(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の製造時において、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物と、ヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物との混合物を使用することもできる。
【0314】
ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物と、ヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物との混合物は、例えば、ポリオール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの公知の多官能アルコール)に、そのポリオールのヒドロキシル基数に対して等モル未満の(メタ)アクリル酸を反応させることにより、得られる。
【0315】
具体的には、この反応では、通常、一部のポリオールに対して、そのポリオールのヒドロキシル基数に対して等モルの(メタ)アクリル酸が付加し、ヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物が生成する。
【0316】
また、残部のポリオールに対して、そのポリオールのヒドロキシル基数に対して等モル未満の(メタ)アクリル酸が付加し、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物が生成する。
【0317】
その結果、ヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物と、ヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物との混合物が得られる。
【0318】
このようなヒドロキシル基含有−多官能(メタ)アクリル化合物と、ヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物との混合物を、(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の製造に用いた場合、ヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物は、酸無水物によって変性されずに残存する。そして、残存するヒドロキシル基不含−多官能(メタ)アクリル化合物を、そのまま架橋剤として用いることができる。
【0319】
架橋剤の配合割合は、金属微粒子分散剤の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、1500質量部以下、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、200質量部以下である。
【0320】
また、コーティング剤は、必要に応じて、重合開始剤を含有することができる。
【0321】
重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンなどの光重合開始剤などが挙げられる。
【0322】
これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0323】
重合開始剤の配合割合は、金属微粒子分散剤(および必要により配合される架橋剤)の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、7質量部以下である。
【0324】
なお、架橋剤および重合開始剤を配合するタイミングは、特に制限されず、例えば、金属微粒子、溶剤、金属微粒子分散剤およびバインダーの混合時に、同時に配合してもよく、また、金属微粒子、溶剤、金属微粒子分散剤およびバインダーとは別途、架橋剤および重合開始剤を一括または順次配合してもよい。
【0325】
また、コーティング剤の調製では、特に制限されず、金属微粒子、溶剤および金属微粒子分散剤(さらに、必要により配合されるバインダー、架橋剤および重合開始剤)を混合するときに、例えば、ペイントシェイカー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、超音波分散機などの公知の分散機を用いることができる。
【0326】
コーティング膜の透明性などの向上を図る観点から、好ましくは、ボールミル、ビーズミルが挙げられ、より好ましくは、ビーズミルが挙げられる。
【0327】
分散機としてビーズミルを用いる場合には、ジルコニアビーズ、ガラスビーズなどの公知の分散メディアを用いることができる。
【0328】
分散メディアのビーズ径は、特に制限されないが、例えば、10μm以上であり、例えば、500μm以下、好ましくは、100μm以下である。なお、分散メディアの充填率は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0329】
また、分散機としてビーズミルやボールミルを用いる場合には、上記の分散メディアにより金属微粒子を粉砕し、その平均粒子径を上記の範囲に調整することもできる。このような場合、分散機には、平均粒子径が上記の範囲よりも大きい金属微粒子を投入することができる。
【0330】
さらに、コーティング剤には、例えば、顔料、乾燥剤、防錆剤、可塑剤、塗膜表面調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、さらには、上記した金属微粒子分散剤を除く分散剤(例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤など)などの各種添加剤を添加することができる。なお、添加剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0331】
コーティング剤の不揮発分は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0332】
また、コーティング剤中において、金属微粒子の粒径は、金属微粒子が一次粒子や二次粒子として存在しているので、これらの平均粒径(平均粒子径)として測定され、例えば、200nm以下、好ましくは、90nm以下、より好ましくは、50nm以下であり、通常、1nm以上、好ましくは、3nm以上である。
【0333】
そして、このようなコーティング剤は、上記の金属微粒子分散剤を含むため、金属微粒子の分散性および分散安定性に優れ、また、透明性、密着性、硬度および耐久性(耐アルカリ性、耐光性)に優れるコーティング膜を得ることができる。
【0334】
コーティング膜を得るには、例えば、コーティング剤をコーティング剤として用い、公知の方法により基材に塗布および乾燥させた後、活性エネルギー線を照射して、硬化させる。
【0335】
基材としては、特に制限されず、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂などのプラスチックや、例えば、金属、木材、紙、ガラス、スレートなどが挙げられる。
【0336】
塗布方法としては、特に制限されず、例えば、ロールコーター、バーコーター、ドクターブレード、メイヤーバー、エアナイフなど、塗布の際に、一般的に使用される機器を用いた塗布や、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、はけ塗り、スプレー塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工といった公知の塗布方法が採用される。
【0337】
乾燥条件としては、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、180℃以下、好ましくは、140℃以下であり、乾燥時間が、例えば、1分以上、好ましくは、2分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0338】
また、乾燥後の膜厚は、例えば、50nm以上、好ましくは、500nm以上であり、例えば、10μm以下、好ましくは、7μm以下である。
【0339】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線などが挙げられる。
【0340】
紫外線により硬化させる場合には、光源として、例えば、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどを有する紫外線照射装置が用いられる。紫外線照射量、紫外線照射装置の光量、光源の配置などは、必要により適宜調整される。具体的には、高圧水銀灯を使用する場合には、例えば、コーティング剤が塗布された基材を、光度80〜1000mW/cm
2程度の1灯に対して、搬送速度5〜50m/分で搬送する。紫外線の照射量は、例えば、100〜10000mJ/cm
2である。また、電子線により硬化させる場合には、コーティング剤が塗布された基材を、例えば、10〜300kVの加速電圧を有する電子線加速装置にて、搬送速度5〜50m/分で搬送する。
【0341】
このような活性エネルギー線の照射によって、金属微粒子分散剤中の(メタ)アクリロイル基が架橋し、三次元構造を形成する。これにより、コーティング剤の硬化物として、コーティング膜が得られる。
【0342】
そして、得られるコーティング膜は、上記のコーティング剤を用いて得られるため、透明性、密着性、硬度および耐久性(耐アルカリ性、耐光性)に優れる。
【0343】
そのため、コーティング膜は、例えば、発光ダイオード(LED)、レンズ、光学デバイスなどの光学部品、例えば、ファインセラミック、例えば、導電性フィルム、光学フィルムなどの機能性被膜などとして、各種産業製品において好適に用いられる。
【実施例】
【0344】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0345】
なお、以下において用いられる測定方法を下記する。
【0346】
<重量平均分子量>
サンプルをテトラヒドロフランに溶解させ、試料濃度を3.5g/Lとして、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって測定し、サンプルの分子量分布を得た。
【0347】
その後、得られたクロマトグラム(チャート)から、標準ポリスチレンを検量線として、サンプルの重量平均分子量(Mw)を算出した。測定装置および測定条件を以下に示す。
データ処理装置:品番HLC−8220GPC(東ソー社製)
示差屈折率検出器:品番HLC−8220GPCに内蔵されたRI検出器
カラム:TSKgel G2000HXL、G3000HXL、G4000HXL(東ソー社製、重量平均分子量2万以下)、TSKgel GMHXL(東ソー社製、重量平均分子量2万以上)
移動相:テトラヒドロフラン
カラム流量:1mL/min
試料濃度:3.5g/L
注入量:100μL
測定温度:40℃
分子量マーカー:標準ポリスチレン(POLYMER LABORATORIES LTD.社製標準物質)(POLYSTYRENE−MEDIUM MOLECULAR WEIGHT CALIBRATIO KIT使用)
<(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体>
合成例1
撹拌機、温度計、還流冷却管および混合気導入管が備わった1Lフラスコに、メチルイソブチルケトン(溶剤)327.2部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物(東亞合成社製 アロニックスM403、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート含有率50〜60%)300部、トリエチルアミン(触媒)0.33部、および、p−メトキシフェノール(重合禁止剤)0.16部を仕込み、80℃まで加熱撹拌した。
【0348】
次いで、無水フタル酸27.2部を添加し、窒素−酸素混合気(酸素濃度7%)を導入して、80℃で8時間保持した。その後、冷却し、固形分50%、酸価23mgKOH/gの(A)多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体の溶液を得た。
【0349】
<(メタ)アクリル樹脂バインダー>
合成例2
攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管および滴下ロートを備えたフラスコに、メチルイソブチルケトン100部を入れ、窒素雰囲気下で100℃まで昇温した。
【0350】
一方、モノマー成分の一部として、アクリル酸4部、メチルメタクリレート70部、n−ブチルアクリレート10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート16部、および、重合開始剤としての2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル5部を混合し、モノマー混合液を調製した。
【0351】
そして、メチルイソブチルケトンが入ったフラスコに、モノマー混合液を3時間かけて滴下し、次いで、3時間熟成反応させた。
【0352】
これにより、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂(バインダーを得るための(メタ)アクリル樹脂)を得た。
【0353】
その後、反応温度を80℃に設定し、雰囲気条件を窒素雰囲気から空気雰囲気に切り換え、モノマー成分の残部として、2−イソシアナトエチルアクリレート(カレンズAOI、昭和電工製)2部、および、メチルイソブチルケトン5部、重合禁止剤としてのp−メトキシフェノールを0.1部加え、4時間反応させた。
【0354】
これにより、不揮発分50%の、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂バインダーの溶液を得た。
【0355】
得られた(メタ)アクリル樹脂バインダーの重量平均分子量は、6500であった。
【0356】
合成例3〜7および比較合成例1〜2
表1に示す配合処方に変更した以外は、合成例2と同様にして、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂バインダーの溶液を得た。
【0357】
なお、比較合成例1では、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有しない(メタ)アクリル樹脂バインダーの溶液を得た。
【0358】
また、比較合成例2では、アクリル酸を8部(モノマー成分の総量に対して、7.8%)用いた。つまり、得られた(メタ)アクリル樹脂は、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤であった。
【0359】
【表1】
【0360】
<(メタ)アクリル樹脂分散剤>
合成例8
攪拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管および滴下ロートを備えたフラスコに、メチルイソブチルケトン100部を入れ、窒素雰囲気下で100℃まで昇温した。
【0361】
一方、モノマー成分の一部として、アクリル酸15部、n−ブチルアクリレート10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、イソボルニルメタクリレート70部、および、重合開始剤としての2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル6部を混合し、モノマー混合液を調製した。
【0362】
そして、メチルイソブチルケトンが入ったフラスコに、モノマー混合液を3時間かけて滴下し、次いで、3時間熟成反応させた。
【0363】
これにより、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂(分散剤を得るための(メタ)アクリル樹脂)を得た。
【0364】
その後、反応温度を80℃に設定し、雰囲気条件を窒素雰囲気から空気雰囲気に切り換え、モノマー成分の残部として、2−イソシアナトエチルアクリレート(カレンズAOI、昭和電工製)2部、および、メチルイソブチルケトン5部、重合禁止剤としてのp−メトキシフェノールを0.1部加え、4時間反応させた。
【0365】
これにより、不揮発分50%の、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤の溶液を得た。
【0366】
得られた(メタ)アクリル樹脂分散剤の重量平均分子量は、6700であった。
【0367】
合成例9〜13
表2に示す配合処方に変更した以外は、合成例8と同様にして、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂分散剤の溶液を得た。
【0368】
【表2】
【0369】
<(b2)ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の酸無水物変性体>
合成例14
撹拌機、温度計、還流冷却管および混合気導入管が備わった500mLフラスコに、メチルイソブチルケトン(溶剤)143.5部、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物(ダイセル製 プラクセルFA−1 カプロラクトン平均付加モル数:1モル)100部、トリエチルアミン(触媒)0.14部、および、p−メトキシフェノール(重合禁止剤)0.07部を仕込み、80℃まで加熱撹拌した。
【0370】
次いで、無水コハク酸43.5部を添加し、窒素−酸素混合気(酸素濃度7%)を導入して、80℃で8時間保持した。その後、冷却し、固形分50%、酸価85mgKOH/gの(b2)ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物の酸無水物変性体の溶液を得た。
【0371】
<(b3)(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物の酸無水物変性体>
合成例15
撹拌機、温度計、還流冷却管および混合気導入管が備わった500mLフラスコに、メチルイソブチルケトン(溶剤)137.0部、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物(日本油脂製 ブレンマーAE−200 アルキレンオキサイド平均付加モル数:4.5モル)100部、トリエチルアミン(触媒)0.14部、および、p−メトキシフェノール(重合禁止剤)0.07部を仕込み、80℃まで加熱撹拌した。
【0372】
次いで、無水コハク酸37.0部を添加し、窒素−酸素混合気(酸素濃度7%)を導入して、80℃で8時間保持した。その後、冷却し、固形分50%、酸価64mgKOH/gの(b3)(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物の酸無水物変性体の溶液を得た。
【0373】
<コーティング剤およびコーティング膜>
実施例1
合成例1で得られた多官能(メタ)アクリル化合物の酸無水物変性体(金属微粒子分散剤)の不揮発分(固形分)が9部となり、合成例2で得られた(メタ)アクリル樹脂バインダーの不揮発分(固形分)が9部となり、金属微粒子としての酸化ジルコニウム(第一稀元素製 UEP−100、平均一次粒子径15nm)の不揮発分(固形分)が25部となり、分散媒としてのメチルイソブチルケトンが56.1部となり、重合開始剤としてのIRGACURE907(BASF製 2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)が0.9部となるように、各成分を混合し、コーティング剤を得た。
【0374】
その後、得られたコーティング剤を、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製 UH−13 厚さ125μm)に対して、バーコーターで乾燥後の膜厚が1μmとなるように塗布し、80℃において2分間乾燥させた。
【0375】
次いで、紫外線照射装置(日本電池社製 装置名CSOT−40)の高圧水銀灯によって、300mJ/cm
2および240mW/cm
2の紫外線を照射し、塗膜を硬化させ、基材およびコーティング膜の積層体を得た。
【0376】
実施例2〜23および比較例1〜7
表3〜5に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして、コーティング剤と、基材およびコーティング膜の積層体とを得た。
【0377】
<評価>
実施例、比較例などにおいて得られるコーティング剤およびコーティング膜を、以下の方法で評価した。その結果を、表3〜5に併せて示す。
【0378】
(1)分散性
コーティング剤の平均粒子径を、動的光散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル製 製品名「nanotrac wave」)により測定した。評価の基準を下記する。
A:平均粒子径30nm未満。
B:平均粒子径30nm以上70nm未満。
C:平均粒子径70nm以上。
【0379】
(2)分散安定性
コーティング剤を23℃において1週間〜6ヶ月静置し、分散安定性について目視、粒度測定により確認した。評価の基準を下記する。
A+:6ヶ月後にも沈降物がなく、平均粒子径の変化も無かった。
A :3ヶ月後にも沈降物がなく、平均粒子径の変化も無かった。
B :3ヶ月後に沈降物はないが、平均粒子径が上昇した。
C :3ヶ月以内に、沈降物が確認された。
【0380】
(3)透明性(ヘイズ)
基材およびコーティング膜の積層体を、常態(23℃、相対湿度50%)において40時間放置した後、ヘイズメーター(日本電色工業製、濁度計NDH5000)によりヘイズを測定した。ヘイズの測定はJIS K 7136「透明材料のヘイズの求め方」(2000年版)に準じた。
【0381】
なお、測定では、コーティング膜側の面から光を照射して測定した。
【0382】
また、測定サンプルとして、一辺50mmの正方形のコーティング膜を10サンプル準備し、それぞれ1回ずつ、合計10回測定した。そして、各測定における平均値を、ヘイズ値とした。そして、得られたヘイズ値から透明性を評価した。評価の基準を下記する。
A++:ヘイズ値1.0%未満。
A+ :ヘイズ値1.0%以上1.2%未満。
A :ヘイズ値1.2%以上1.5%未満。
B :ヘイズ値1.5%以上2.5%未満。
C :ヘイズ値2.5%以上。
【0383】
(4)密着性
JIS K 5400の碁盤目試験(旧規格)に準じて、密着性を評価した。なお、同一箇所で最大5回剥離試験した。評価の基準を下記する。
A++:5回密着試験を実施し、剥離無し。
A+ : 4〜5回目で塗膜剥離あり。
A : 2〜3回目で塗膜剥離あり。
A− : マス目の格子部分に微少の剥離あり。
B : 剥離面積がマス目の5%未満。
C : 剥離面積がマス目の5%以上。
【0384】
(5)硬度
コーティング膜の表面を、スチールウール#0000にて、幅40mm以上となるように、以下に記載の荷重で10往復磨耗した。その後、基材(PETフィルム)の裏面に黒テープを貼り、三波長蛍光灯下にて傷の有無を確認した。評価の基準を下記する。
A++:200g/cm
2荷重で傷が確認されなかった。
A+ :200g/cm
2荷重で傷が1〜5本確認された。
A :100g/cm
2荷重で傷が確認されなかった。200g/cm
2荷重で傷が6本以上確認された。
B :100g/cm
2荷重で傷が1〜5本確認された。
C :100g/cm
2荷重で傷が6本以上確認された。
【0385】
(6)耐アルカリ性
積層体中のコーティング膜の膜厚を事前に測定し、4質量%のNaOH水溶液に40℃で5分間浸した。フィルムを取り出した後にフィルムを蒸留水ですすぎ、乾燥させた後に再度、膜厚を測定し、試験前後の膜厚の変化を確認した。評価基準を下記する。
A :膜厚減少率が15%未満であった。
B :膜厚減少率が15%以上30%未満あった。
C :膜厚減少率が30%以上あった。
【0386】
(7)耐光性
積層体中のコーティング膜に、紫外線照射装置(日本電池社製 装置名CSOT−40)の高圧水銀灯によって、500mJ/cm
2、400mW/cm
2の紫外線を照射した。その後、コーティング膜が基材から剥離するか確認した。
【0387】
剥離しなかった場合は、さらに、コーティング膜が基材から剥離するまで、上記のように紫外線を照射し、その照射回数を測定した。これを、耐光性試験とした。評価基準を下記する。
A+:10回紫外線を照射、剥離なし。
A :6〜10回目紫外線を照射した場合に剥離。
B :3〜5回目紫外線を照射した場合に剥離。
C :1〜2回目紫外線を照射した場合に剥離。
【0388】
【表3】
【0389】
【表4】
【0390】
【表5】
【0391】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0392】
酸化ジルコニウム:第一稀元素製 UEP−100、平均一次粒子径15nm
酸化チタン:石原産業製 TTO−51、平均一次粒子径20nm
酸化アルミニウム:大明化学工業製 TM−300、平均一次粒子径10nm
NKエステルCBX−0:新中村化学工業製
ディスパロンDA7301:商品名ディスパロンDA−7301、楠本化成社製、高分子量ポリエステル酸のアルキルシクロヘキサン
アロニックスM−5300:商品名アロニックスM−5300、東亜合成製、ω−カルボキシルカプロラクトンモノアクリレート
DPHA:架橋剤、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(含有率95%以上)
イルガキュア907:商品名、BASF製、重合開始剤、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン
【課題】金属微粒子の分散性および分散安定性に優れ、また、コーティング膜の透明性、密着性、硬度および耐久性(耐アルカリ性、耐光性)の向上を図ることができるコーティング剤、および、そのコーティング剤を硬化して得られるコーティング膜を提供すること。
【解決手段】金属微粒子と分散媒と金属微粒子分散剤とバインダーとを含有するコーティング剤において金属微粒子分散剤が金属微粒子分散剤は、2つ以上の活性エネルギー硬化基、および、少なくとも1つのカルボキシル基を有するモノマーまたはオリゴマーを含有し、バインダーは、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂バインダーを含有し、(メタ)アクリル樹脂バインダーが、アニオン性基含有モノマーを含有しないか、または、5質量%未満の割合でアニオン性基含有モノマーを含有するモノマー成分の反応物である。