(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性ポリウレタン発泡粒子を構成する、熱可塑性ポリウレタンがエーテル系熱可塑性ポリウレタンである請求項4に記載の熱可塑性ポリウレタン発泡粒子成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱可塑性ポリウレタン発泡粒子は、分散剤が付着している熱可塑性ポリウレタン発泡粒子の表面に水溶性アニオン系界面活性剤が50mg/m
2〜1000mg/m
2付着している。
【0011】
[熱可塑性ポリウレタン(TPU)]
本発明の発泡粒子を構成するTPUは、長鎖ポリオールとジイソシアネートとがウレタン結合で重合したソフトセグメントと、短鎖グリコールとジイソシアネートとがウレタン結合で重合したハードセグメントとが、相互に結合した構造を有している。そして、主に、ソフトセグメントが伸縮性を発現し、かつ、ウレタン結合部が強固な水素結合を生成しており、ソフトセグメントとハードセグメントの比率によって、可塑剤等の添加剤を要することなく、硬度を調節することができる。
【0012】
TPUには、主にエステル系及びエーテル系のタイプがあり、特に、長鎖ポリオールのタイプが、得られるTPUの特性に与える影響が大きい。一般にエステル系TPUは、特に、機械的強度や耐熱性等に優れ、一方、エーテル系TPUは、特に、耐寒性や耐加水分解、耐菌性等に優れている。
【0013】
エステル系TPUにおける長鎖ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブテンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルジオール、ペンタンジオール等の多価アルコールと、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、芳香族カルボン酸等の二塩基酸との縮合反応により得られる化合物や、ラクトン系エステルポリオールが挙げられる。一方、エーテル系TPUにおける長鎖ポリオールとしては、例えば、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0014】
前記TPUの構成要素は、特に限定されるものではなく、得られるTPU発泡粒子成形体に求められる物性に応じて適宜選択することができる。上述したエーテル系TPU及びエステル系TPUのいずれも用いることができるが、本発明では、成形体において引張強度をより高度に向上できるという観点から、エーテル系TPUが好ましい。
エーテル系TPUは、エステル系TPUに比べて分散剤を引きつけやすい傾向にある。そのため、エーテル系TPUを用いた発泡粒子では、エステル系TPU発泡粒子よりも分散剤の付着量が多くなりやすく、水溶性アニオン系界面活性剤とともに分散剤が成形時の水蒸気等で落ちることにより引張強度の改善効果がより大きくなるものと考えられる。
【0015】
また、本発明の発泡粒子は、前記TPUにより構成されるが、発泡粒子成形体の用途、目的に応じて、ポリオレフィンやスチレン系エラストマー、スチレン系樹脂等の他の重合体を、本発明の目的を阻害しない範囲で前記TPUに混合して使用することもできる。なお、これらの他の重合体の使用量は、TPU100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0016】
また、前記発泡粒子を構成するTPUは、軟化温度が110〜160℃であることが好ましい。TPUの軟化温度が上記範囲内であれば、より成形性や融着性に優れた発泡粒子となる。上記観点から、前記軟化温度は、115〜160℃であることがより好ましい。
【0017】
また、前記発泡粒子を構成しているTPUは、190℃、荷重10kgにおけるメルトフローレイト(MFR)が60g/10分以下であることが好ましい。MFRが上記範囲内であれば、発泡時に気泡の合一が起こり難く、気泡膜が破壊されることなく、良好な発泡粒子となる。前記MFRは、1〜50g/10分であることが好ましく、より好ましくは5〜40g/10分である。
【0018】
[発泡粒子]
TPU発泡粒子は、軽量性の観点から、見掛け密度が0.3g/cm
3以下であることが好ましい。前記発泡粒子は、見掛け密度が0.3g/cm
3以下であっても、優れた二次発泡性を有するとともに、成形性にも優れている。前記見掛け密度は、0.02〜0.25g/cm
3であることがより好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.2g/cm
3である。
【0019】
[TPU発泡粒子の製造方法]
本発明のTPU発泡粒子の製造方法は特に限定されるものではないが、密閉容器内でTPU樹脂粒子を分散媒中に分散させるとともに、加熱下で前記樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とする工程(1)と、前記発泡性樹脂粒子を、前記密閉容器から、前記TPUの軟化温度より30℃低い温度以上にて低圧下に放出して発泡させ、TPU発泡粒子を得る工程(2)とを含む製造方法により得ることが好ましい。
このような発泡粒子の製造方法は、ダイレクト発泡法と呼ばれる方法であり、分散媒体中の樹脂粒子に、高圧下、比較的高温で、発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得、そのまま分散媒体とともに該発泡性樹脂粒子を低圧下に放出して発泡粒子を得るものである。
【0020】
<工程(1)>
まず、上記工程(1)では、密閉容器内でTPU樹脂粒子を分散媒中に分散させるとともに、加熱下で発泡剤を前記樹脂粒子に含浸させて発泡性樹脂粒子とする。
このように、密閉容器中に発泡剤を導入し、樹脂粒子を分散媒中に分散させた状態で、加熱することにより、高温高圧雰囲気となり、軟化した樹脂粒子中に発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子が得られる。
【0021】
前記TPU樹脂粒子の1個あたりの平均質量は、目的とするTPU発泡粒子の大きさや発泡倍率に応じて適宜設定されるが、0.5〜30mgであることが好ましく、より好ましくは1〜20mgである。上記範囲内であれば、発泡成形型内への充填性が向上し、成形性に優れた発泡粒子となる。
なお、TPU樹脂粒子は、その製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法により得ることができる。例えば、押出機先端に付設された口金の小孔からストランド状に押し出し、これをペレタイザーで所定の質量となるように切断して得ることができる。また、溶融したTPU樹脂を押出機から水中に押出して切断するアンダーウォーターカット法によっても得ることができる。
【0022】
また、前記TPU樹脂粒子には、通常使用される気泡調整剤、帯電防止剤、導電性付与剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属不活性剤、顔料、染料、結晶核剤、充填材等の各種の添加剤を、必要に応じて適宜配合することができる。気泡調整剤としては、タルク、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、カーボン等の無機物の他、リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の有機系核剤が挙げられる。これらの各種添加剤の添加量は、発泡粒子成形体の用途目的により異なるが、前記TPU100質量部に対して25質量部以下であることが好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。
【0023】
前記TPU樹脂粒子は、オートクレーブ等の加圧可能な密閉容器中で、分散媒である水性媒体(通常は水)に分散させる。
分散媒中には、樹脂粒子が分散媒中に均一に分散するように、カオリン、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、マイカ、及びタルク等の難水溶性無機物質等の分散剤が使用され、これらの中でもカオリンを用いることが好ましい。また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びアルカンスルホン酸ナトリウム等の分散助剤を分散させることが好ましい。また、該分散剤の平均粒径は通常0.001〜100μmであり、特に0.001〜30μmのものが好ましく用いられる。なお、該平均粒径は遠心沈降式粒度分布測定装置により個数基準で得られた粒度分布より粒子径と個数で算出される値が採用される。
【0024】
TPU発泡粒子に対する分散剤の付着量は、通常100〜10000質量ppm程度である。なお、水や酸性水溶液による発泡粒子の洗浄を行った場合にはTPU発泡粒子に対する分散剤の付着量は、概ね0質量ppmとすることができるが、用途によっては成形体の引張強度が不十分となるおそれや、TPUの種類と酸の強さによっては成形体が黄変してしまうおそれがある。
一方、分散剤が付着したままのTPU発泡粒子を成形した場合、TPU発泡粒子は柔軟であるため分散剤が付着していても成形体の融着性は維持されるが、成形条件によっては引張強度に劣る成形体となるおそれがある。本発明においては、発泡粒子表面に100〜10000質量ppm程度の分散剤が付着していても、さらにその上から水溶性アニオン系界面活性剤を塗布することによって、十分な融着性を示し、さらに引張強度に優れた成形体を得ることができる発泡粒子とすることができる。
【0025】
上記分散剤の付着量は、蛍光X線分析測定によって求めることができる。例えば、分散剤としてカオリンを用いる場合、カオリンの付着量は、発泡性樹脂粒子、発泡粒子、または発泡粒子成形体より、直径40.0mm、厚み4.0mmのサンプルをヒートプレスにより作製し、株式会社リガク社製の蛍光X線分析装置superminiを用い、定性分析モードによりアルミニウムの酸化物量を測定し、検量線から求めた検量式に分析値を代入することにより求められる。なお、発泡性樹脂粒子、発泡粒子及び発泡粒子成形体を測定サンプルとする場合には良く脱泡し、気泡が入らないサンプルを用いなければならない。
上記検量線は、密閉容器内で分散媒中に分散させる前のTPU樹脂粒子をカオリン量0wt%とし、カオリンを0.1wt%加えたサンプル、及びカオリンを1.0wt%添加したサンプルをそれぞれ作製し、蛍光X線測定することにより得られた値から作成できる。また、分散剤として第三リン酸カルシウムを用いる場合には、上記の方法においてリン酸化物の蛍光X線を測定することにより第三リン酸カルシウムの付着量を求めることができる。
【0026】
発泡剤としては、二酸化炭素を用いることが好ましい。二酸化炭素を用いることにより、発泡時における気泡の微細化を防止することができ、発泡粒子をダイレクト発泡法で容易に得ることができる。また、二酸化炭素は、無機系発泡剤の中でも、TPUとの相溶性に優れており、TPU樹脂粒子に均一に効率よく含浸させることができる。さらに、発泡剤として二酸化炭素を用いれば、防爆対策が不要であり、安全性の確保が容易であり、設備投資コストを低減することができる。
【0027】
なお、発泡剤としては、その他の物理発泡剤や化学発泡剤を併用することもできる。
その他の物理発泡剤としては、有機系物理発泡剤として、プロパン、ブタン、ヘキサン、ペンタン、及びヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、及びシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、クロロフロロメタン、トリフロロメタン、1,1−ジフロロエタン、1,1,1,2−テトラフロロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、及びメチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等が挙げられる。また、無機系物理発泡剤として、窒素、アルゴン、空気、及び水等が挙げられる。
【0028】
発泡剤の使用量は、目的とする発泡粒子の見掛け密度、TPUの種類等を考慮して適宜設定されるが、通常、樹脂粒子100質量部に対して0.5〜30質量部であることが好ましい。また、発泡剤中の二酸化炭素の配合比率は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0029】
TPU樹脂粒子に発泡剤を含浸させる際には、短時間で十分に含浸させる観点から、加熱下で行われ、TPU樹脂粒子の軟化温度より30℃低い温度以上に加熱することが好ましい。
また、前記密閉容器内の圧力(含浸圧力)は、0.5〜10MPa(G:ゲージ圧)であることが好ましく、より好ましくは1〜8MPa(G)、さらに好ましくは2〜5MPa(G)である。上記圧力範囲であれば、発泡剤をTPU樹脂粒子に十分に含浸させることができ、また、密閉容器の耐圧性を比較的確保しやすい。
また、加熱する時間(含浸時間)は、密閉容器内の圧力、TPU樹脂粒子の種類や質量等に応じて適宜設定されるが、生産性の観点から、好ましくは0.05〜3時間、さらに好ましくは0.1〜1時間である。
上記のようにして、TPU樹脂粒子に発泡剤が含浸され、発泡性樹脂粒子が形成される。
【0030】
<工程(2)>
次に、上記工程(2)では、前記発泡性樹脂粒子を、前記TPUの軟化温度より30℃低い温度以上にて低圧下に放出して発泡させ、TPU発泡粒子を得ることが好ましい。
発泡性樹脂粒子を低圧下に放出する際には、密閉容器内の温度(発泡温度)をTPUの軟化温度よりも30℃低い温度以上とする。このような温度範囲で発泡を行うことにより、発泡倍率が高く、見掛け密度が低い発泡粒子を容易に得ることができる。
前記発泡温度は、上記の観点から、TPU樹脂粒子の軟化温度より27〜5℃低い温度であることがより好ましく、さらに好ましくは25〜10℃低い温度である。
【0031】
なお、密閉容器から発泡性樹脂粒子を放出する際は、得られる発泡粒子の見掛け密度や気泡径のばらつきを小さくするために、二酸化炭素や空気等で背圧をかけることにより、開放した前記容器内の温度及び圧力を一定に保持する、あるいは、徐々に高めるようにすることが好ましい。
【0032】
なお、TPU発泡粒子は、特に、高発泡倍率とした場合には、収縮が起こりやすくなる。この収縮は、発泡粒子の気泡内の温度の高い気体の冷却や発泡粒子外部への逸散により、気泡内部が減圧状態となることによって生じる。このような場合には、発泡粒子を大気圧下で養生後、空気で加圧処理して安定状態として養生することが好ましい。具体的には、得られた発泡粒子を密閉容器内に入れ、40℃の大気圧下で24時間放置することにより養生後、30℃で、0.3MPaの圧縮空気により12時間加圧処理することで安定状態にできる。
【0033】
また、上記のようにして得られた発泡粒子の発泡倍率をさらに高くしたい場合には、必要に応じて、二段発泡を行ってもよく、例えば、高圧雰囲気中の発泡粒子をスチームや加熱空気等を用いて加熱すること等により、より見掛け密度の低い発泡粒子を得ることができる。
【0034】
本発明は、得られた発泡粒子には分散剤が付着しているので、型内成形時において該分散剤の影響を低下せしめて、発泡粒子同士の融着性を高めて成形体の引張物性を向上させるため、水溶性アニオン系界面活性剤を付着させる。そのため、本発明の発泡粒子には、分散剤が付着している発泡粒子の表面に水溶性アニオン系界面活性剤が付着している。
なお、本発明における発泡粒子表面への水溶性アニオン系界面活性剤の付着においては、発泡粒子と水溶性アニオン系界面活性剤とを混合機で混ぜる方法、発泡粒子と水溶性アニオン系界面活性剤をスクリューを備えた押出型のコーティング装置により混合する方法、及び分散剤が付着している発泡粒子を貯蔵槽に空送する途中の配管内で水溶性アニオン系界面活性剤を空送用配管内に投入する方法等により、該界面活性剤が発泡粒子の表面に存在していればよく、発泡粒子の表面を完全に覆っている態様がより好ましい。したがって、本発明においては、必ずしも発泡粒子の表面が完全に覆われている必要はなく、発泡粒子表面に該界面活性剤にて覆われていない部分を有する態様も包含される。なお、発泡粒子表面に水溶性アニオン系界面活性剤を付着させる工程は、発泡直後、上記大気圧下で養生した後、及び加圧処理で養生を行った後のいずれでも良い。
【0035】
本発明に用いられる水溶性アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型、高分子型で水溶性のものが例示される。
カルボン酸型界面活性剤としては、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシルグルタミン酸塩などが挙げられる。
上記脂肪族モノカルボン酸塩としてはラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、パルミトイル酸、オレイン酸、マレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ネルボン酸などのナトリウム、及びカリウム塩が挙げられる。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボン酸などのナトリウム、及びカリウム塩が挙げられる。上記N-アシルサルコシン塩としては、オレオイルサルコシンナトリウム塩などが挙げられる。上記N-アシルグルタミン酸塩としては、オレオイルグルタミンナトリウム塩などが挙げられる。
【0036】
スルホン酸型界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ホルムアルデヒド縮合物アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、などが挙げられる。上記ジアルキルスルホコハク酸塩としてはジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩が好ましく挙げられる。上記アルカンスルホン酸塩としてはオレイルスルホン酸ナトリウム塩が好ましく挙げられる。上記アルキルベンゼンスルホン酸塩としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩が好ましく挙げられる。上記アルキルナフタレンスルホン酸塩としてはドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩が好ましく挙げられる。上記ホルムアルデヒド縮合物アルキルナフタレンスルホン酸塩としてはホルムアルデヒド縮合物ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩が好ましく挙げられる。上記アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩としてはラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩が好ましく挙げられる。
【0037】
硫酸エステル型界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルコールエトキシサルフェート油脂硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などが挙げられる。
【0038】
リン酸エステル型界面活性剤としては、アルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩などが挙げられる。上記アルキルエーテルリン酸塩としては、ラウリルエーテルリン酸ジナトリウムが挙げられる。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ジナトリウムが挙げられる。上記ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩としては、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルリン酸ジナトリウム等が挙げられる。
【0039】
高分子型界面活性剤としては、ポリカルボン酸塩、ポリアルギン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸アルキル共重合体の塩、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル共重合体の塩、オレフィンマレイン酸共重合体の塩、ポリアクリル酸マレイン酸共重合体の塩、ポリアクリル酸スルホン酸共重合体の塩が挙げられる。
【0040】
前記アニオン系界面活性剤の中でも、引張強度に優れる発泡粒子成形体となる発泡粒子が得られることから、ポリアクリル酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリアクリル酸スルホン酸共重合体塩を発泡粒子の表面に付着させることが好ましく、ポリアクリル酸塩が特に好ましい。具体的には、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましく挙げられる。
また、本発明において前記アニオン系界面活性剤は単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0041】
さらに前記アニオン系界面活性剤は、25℃の水に5質量%以上の溶解性を有する水溶性アニオン系界面活性剤であることを要する。水溶性アニオン系界面活性剤を用いると、型内成形時の短い時間や少ないスチーム量でも分散剤を洗浄する効果が大きく、引張強度に優れたTPU成形体とすることができる。なお、本発明において水溶性とは、25℃の水に界面活性剤が5質量%以上溶解することをいう。
【0042】
前記アニオン系界面活性剤の分子量は、200〜200000が好ましく、より好ましくは300〜50000であり、さらに好ましくは300〜6000である。
また、前記アニオン系界面活性剤の内で高分子型界面活性剤の数平均分子量は、2000〜200000、より好ましくは特に3000〜50000であり、さらに好ましくは3000〜6000である。該分子量が上記範囲内であることにより、前述の洗浄能力が強まり、引張強度向上効果が高くなる。また、水への溶解性の良化や水溶液の適性粘度化の観点から、工業的に扱いやすいものとなる。
なお、本明細書において水溶性アニオン系界面活性剤の分子量は、分子式を基に原子量から算出することによって求められる値であるが、高分子型界面活性剤の数平均分子量は、GPC測定によるポリエチレングリコール換算値である。
【0043】
発泡粒子の水溶性アニオン系界面活性剤の表面積当たりの付着量は、50mg/m
2以上であり、好ましくは100mg/m
2以上、特に好ましくは200mg/m
2以上である。一方、該表面積当たりの付着量の上限は、1000mg/m
2以下であり、好ましくは800mg/m
2以下である。該付着量が上記範囲内であることにより、所望の引張強度向上効果が一層顕著なものとなる。
【0044】
本明細書において、水溶性アニオン系界面活性剤の発泡粒子への付着量はTOC測定装置を用いて測定した値を基に算出した値を採用する。
なお、TOCの測定は島津全有機炭素計TOC−V
CSHを用いて、TC−IC法にて行なうことができる。具体的には、次のように行なう。
(1)機器の較正を、TC(全炭素量測定)については0〜20mgC/Lのフタル酸水素カリウム水溶液にて行い、IC(無機炭素分測定)については0〜20mgC/Lの炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム1:1(モル比)混合溶液にて行う。
(2)次に、メーカーの測定した既知濃度の界面活性剤を10000〜20000倍希釈した水溶液を作成する。
(3)界面活性剤希釈水溶液のTC値およびIC値を測定し、TC値からIC値を減算した値をTOC値として、各種界面活性剤のTOC値と濃度で検量線を作成する。
(4)室温(摂氏25℃)の条件で界面活性剤を被覆した発泡粒子を約10gと純水100mlを密閉可能なガラス容器に封入し、密閉状態で1分間振盪し、純水に界面活性剤を抽出する。
続いて、ガラス濾紙で抽出液を濾過し、そのTOC値を測定する。既知濃度の界面活性剤希釈溶液から作製した検量線を基に抽出液のTOC値から界面活性剤濃度を算出し、該濃度と界面活性剤抽出溶液量と測定に使用した約10gの発泡粒子群を構成する発泡粒子の個数に基づき、発泡粒子1個あたりの界面活性剤付着量(mg)を算出する。次いで発泡粒子1個あたりの界面活性剤付着量(mg)を下記の方法にて求められる発泡粒子1個あたりの表面積(m
2)にて除して発泡粒子単位表面積あたりの界面活性剤付着量(mg/m
2)を求める。
なお、本発明の実施例、比較例では、得られた値を絶対値としてそのまま表記した。また、この測定方法では、水溶性アニオン系界面活性剤を付着させない発泡粒子の場合においても付着量が算出されたが、これは、ポリウレタン系発泡粒子が加水分解して発生した低分子量物の影響によるものと考えられる。
【0045】
発泡粒子1個あたりの表面積の算出は、まず、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日放置した500個以上の発泡粒子の重量を精秤する(発泡粒子群の重量W1)。次に、23℃のエタノールの入ったメスシリンダーを用意し、前記発泡粒子群を、金網などを使用して沈めて、エタノール水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積を求める。該発泡粒子群の容積をその発泡粒子群を構成する発泡粒子の個数にて除することにより発泡粒子1個あたりの容積V1を求める。次に、発泡粒子を真球と仮定し、球の体積公式(V1=4πR1
3/3)と該容積V1から発泡粒子群の真球相当半径R1(m)を導き、真球相当半径R1(m)を球の表面積公式(S1=4πR1
2)に代入して求められる値S1を、発泡粒子1個あたりの表面積(m
2)とする。
【0046】
[発泡粒子成形体]
本発明のTPU発泡粒子を型内成形して得られた発泡粒子成形体は、後述するように、優れた特性を有するものである。
本発明のTPU発泡粒子成形体は、引張強度や軽量性等の特性が十分に発揮されるものとする観点から、密度が0.05〜0.4g/cm
3であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3g/cm
3、さらに好ましくは0.15〜0.25g/cm
3である。
【0047】
水溶性アニオン系界面活性剤を付着させた発泡粒子は、分散剤を積極的に洗浄除去したものではなく、分散剤がかなりの量付着したままの状態で成形型内へ充填される。発泡粒子が成形型内に充填された後、成形時の水蒸気等により水溶性アニオン系界面活性剤と共に分散剤が除去されることにより引張強度に優れる成形体とすることができる。上記TPU発泡粒子成形体の引張強度は、1.0MPa以上であることが好ましく、1.2MPa以上であることがより好ましく、1.4MPa以上であることがさらに好ましい。
【0048】
上記発泡粒子成形体の引張強度の測定方法は、JISK6251(2010年)に規定するダンベル状1号型形状のサンプルを作製し、JIS K6767(1999年)の引張伸びの測定方法に準拠して測定することにより求めることができる。
【0049】
アニオン系界面活性剤を付着させた発泡粒子成形体の引張強度が向上する理由については定かではないが、型内成形時に導入される水蒸気由来の凝集水により分散剤がアニオン系界面活性剤と共に洗い流されて、発泡粒子成形体の引張強度が向上することが第1の理由として考えられる。また、アニオン系界面活性剤のマイナス電荷とアニオン系界面活性剤の付着によりマイナス電荷を帯びた分散剤のマイナス電荷が反発するので、分散剤が洗い流されやすくなることも第2の理由として推察される。上記の理由により、発泡粒子表面に存在するアニオン系界面活性剤と共に分散剤が効果的に除去され、発泡粒子相互の接触面積が大きくなり、その結果、優れた引張強度を有する発泡粒子成形体が得られることが考えられる。
【0050】
本発明のTPU発泡粒子成形体を得るための型内成形法は、特に限定されるものではなく、公知の方法により、所望の形態の成形体を得ることができる。
例えば、以下のような方法が挙げられる。
まず、加熱及び冷却が可能であり、かつ開閉し密閉できる公知の熱可塑性樹脂発泡粒子型内成形用の金型キャビティ内にアニオン系界面活性剤が付着した発泡粒子を充填し、飽和水蒸気を供給し、金型キャビティ内で発泡粒子を加熱膨張させ、発泡粒子相互を融着させて発泡粒子成形体を形成する。次いで、この発泡粒子成形体を冷却して、金型キャビティから取り出すバッチ式型内成形法(例えば、特公平4−46217号公報、及び特公平6−49795号公報等参照)を採用して、TPU発泡粒子成形体を製造することができる。
なお、TPU発泡粒子は、熱に対する応答性が高いため、上記型内形成時の成形圧力を高くし過ぎると発泡粒子成形体が溶融や収縮してしまうおそれがある。上記観点から、金型キャビティ内に供給する飽和蒸気圧は0.05〜0.48MPa(G)(金型内に供給される水蒸気の飽和蒸気圧の最大値)が好ましく、より好ましくは0.08〜0.42MPa(G)である。
また、連続式成形方法(例えば、特開平9−104026号公報、特開平9−104027号公報、及び特開平10−180888号公報等参照)により製造することもができる。
【0051】
発泡粒子を金型キャビティ等の成形型内に充填する方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、圧縮充填法や、クラッキング充填法等も採用することができる。上述した二段発泡における操作と同様にして、高圧雰囲気中で、発泡粒子内の圧力を0.1〜1.0MPa(G)に調整し、この発泡粒子を型内に充填して成形してもよい。
【0052】
型内成形法における飽和水蒸気による加熱は、公知の方法により、一方加熱、逆一方加熱、本加熱等の加熱方法を適宜組み合せることにより行うことができる。特に、予備加熱、一方加熱、逆一方加熱、本加熱の順に、発泡粒子を加熱する方法が好ましい。
なお、一方加熱とは、雄型又は雌型のいずれか一方の金型の内部に加熱媒体を供給してキャビティ内の発泡粒子を加熱し、次いで、他方の雌型又は雄型の内部から加熱媒体を排出させることを言う。また、前記一方加熱の場合とは加熱媒体が供給される側の金型と、加熱媒体が排出される側の金型とが逆になる場合を、逆一方加熱と言う。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[評価及び測定方法]
下記実施例及び比較例における原料樹脂粒子、発泡粒子及び発泡粒子成形体の各種物性は、以下のような評価及び測定により求めたものである。
【0054】
発泡粒子成形体についての、以下の(5)〜(6)の測定値は、得られた発泡粒子成形体を、40℃の大気圧下で24時間養生した後、相対湿度50%、23℃の恒温室内にて10日間放置し養生したサンプルについて測定した値である。
【0055】
(1)軟化温度
軟化温度の測定は、TMA(Thermo−MechanicalAnalyzer)により測定した。株式会社日立ハイテクサイエンス製TMA7100を用い、針入プローブとしては1.0mmのプローブを使用した。このプローブを用い、これに98mNの荷重を掛け、厚み2mmのサンプルに押し当て、測定温度範囲30〜250℃で昇温(昇温速度=5℃/min)したときの、プローブの押し込み深さ(変位量)をモニタし、変化量が急激に変化する温度を外挿して求めた。
【0056】
(2)分散剤付着量
分散剤の付着量は、発泡粒子、発泡粒子成形体からそれぞれ直径40.0mm、厚み4.0mmのサンプルをヒートプレスにより作製し、株式会社リガク社製の蛍光X線分析装置superminiを用い、定性分析モードによりアルミニウムの酸化物量を測定し、検量線から求めた検量式に分析値を代入することにより求めた。上記操作を3回行い、得られた値の相加平均値を分散剤付着量とした。
【0057】
(3)発泡粒子の見掛け密度
23℃の水の入ったメスシリンダーに、約500mlの発泡粒子W
1(g)を、金網を用いて沈めた。水位上昇分から、金網の体積を考慮して、発泡粒子群の体積V
1(cm
3)を求めた。そして、メスシリンダーに入れた発泡粒子の質量W
1(g)を体積V
1で除して(W
1/V
1)、発泡粒子の見掛け密度(g/cm
3)を求めた。
【0058】
(4)アニオン系界面活性剤の水溶性評価
アニオン系界面活性剤の水溶性の評価は、2000mLのガラス容器に界面活性剤を50g入れた後に、25℃の水950gで希釈してよく攪拌した後、目視にてアニオン系界面活性剤の水溶性を判断した。
【0059】
(5)成形体密度
発泡粒子成形体の質量を発泡粒子成形体の外形寸法から求めた体積により除した値を求め、単位換算した。
【0060】
(6)融着率
縦200mm、横60mm、厚さ33mmの金型キャビティで成形した発泡粒子成形体から、縦170mm、横30mm、厚さ33mmのサンプルを切り出した。このサンプルの表面の一方に、カッターナイフで該成形体の縦の長さを2等分するように約15mmの切り込みを入れ、切り込み部から成形体を折り曲げて破断した。破断面に存在する材料破壊した発泡粒子の個数mと、破断面に存在する発泡粒子の個数nの比(m/n)の値を算出し、融着率とした。発泡粒子の個数nは、材料破壊した発泡粒子の個数mと、発泡粒子間で剥離した発泡粒子の個数との総和である。
m/nの値が大きいほど、発泡粒子間の融着率が高く、曲げ強さや引張強さ等の機械的物性が良好な発泡粒子成形体となる。なお、成形体を折り曲げても破断できない場合は、融着率100%とした。
【0061】
(7)引張強度
[引張試験](引張最大点荷重)
引張強度の測定方法は、JIS K6251(2010年)に規定するダンベル状1号型形状の10mm厚みのサンプルを用い、JIS K6767(1999年)の引張伸びの測定方法に準拠して測定した。この場合、前記サンプルを23℃、湿度50%の条件下、24時間放置後、試験速度500mm/minで引張試験を行い、測定における最大点応力を引張強度とした。上記測定を5回行い、得られた値の相加平均値を採用した。
【0062】
[樹脂粒子の製造]
コベストロ社製の市販グレードのTPU原料樹脂(DP9385A、軟化温度140℃、MFR14g/10min[190℃、10kgf])100質量部に対して、気泡調整剤タルクを0.10質量部添加し、内径20mmの二軸押出機で溶融混練した。該混練物を押出機から水中に押出して切断(アンダーウォーターカット法)し、約5mgのTPU系樹脂粒子を得た。
【0063】
[発泡粒子の作製]
上記で得られたTPU系樹脂粒子1kgと、分散媒として水3リットルとを、撹拌機を備えた5リットルの耐圧密閉容器内に仕込み、樹脂粒子100質量部に対して、分散剤としてカオリン0.1質量部と、分散助剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.004質量部とを添加した。
攪拌しながら、所定の含浸温度まで昇温し、該密閉容器内に発泡剤としての二酸化炭素を所定の圧力になるまで圧入し、所定の発泡温度で15分間保持した。
その後、窒素にて背圧を加え、容器内圧力が一定になるように調整しつつ、分散媒とともに発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子を大気圧下に放出して、分散剤が表面に付着したTPU系発泡粒子を得た。
【0064】
[アニオン系界面活性剤が付着したTPU系発泡粒子の製造]
上記で得られたTPU系発泡粒子に、表1に示す界面活性剤1〜9を表2及び表3に示す塗布量(有効成分量)で、以下に述べるコーティング法にて付着させ、処理後の発泡粒子を40℃、湿度50%のオーブン内で12時間乾燥し、界面活性剤が付着されたTPU系発泡粒子を得て、各実施例、比較例の発泡粒子とした。
コーティング法:TPU系発泡粒子3kgと界面活性剤溶液をブレンダーに投入し、15分間攪拌混合する操作を行った。
【0065】
【表1】
【0066】
[発泡粒子成形体の製造]
上記方法で得られた発泡粒子を平板金型内にクラッキング充填し、表2及び表3に示す成形圧、0.20〜0.35MPa(G)の水蒸気にて加熱して、発泡粒子を二次発泡させ、発泡粒子を相互に融着させた後に、金型を水冷し、面圧が0.02MPa(G)まで低下したことを確認してから、金型から取り出して発泡粒子成形体を得た。
成形条件、得られた発泡粒子成形体について前記の方法で評価した結果等をまとめて、実施例については表2に、比較例については表3に示した。
【0067】
実施例1〜3、比較例1〜3
界面活性剤として表1の界面活性剤1を用い、発泡粒子100質量部に対する塗布量を0.25質量部(実施例1)、0.025質量部(実施例2)、1質量部(実施例3)塗布した発泡粒子による成形体では、界面活性剤の付着量が実施例1で271mg/m
2、実施例2で83mg/m
2、実施例3で776mg/m
2で、塗布量に反映する値であった。なお、界面活性剤の付着量の測定は、明細書に記載の方法にて行った。
一方、比較例1では界面活性剤処理を施さず、比較例2では、発泡粒子を水洗いした。また、比較例3では、発泡粒子を界面活性剤1の5%水溶液で洗浄後、大量の水で洗浄した。
これらの比較例では、界面活性剤としての付着量はいずれも45mg/m
2と算出された。これは、ポリウレタン系発泡粒子が加水分解して発生した低分子量物等の影響によるものと考えられる。したがって、比較例における付着量は界面活性剤以外のものと考えられるが、測定により得られた値を絶対値としてそのまま表記した。比較例1〜3はいずれも引張強度が0.9MPa以下であった。
また、上記の測定方法によって求めた分散剤の付着量を示すと、実施例1において発泡粒子では171ppm、成形体では59ppmであった。一方、アニオン系界面活性剤を塗布しなかった比較例1の分散剤付着量は、発泡粒子で203ppm、成形体で203ppmであった。さらに、分散剤が添加した発泡粒子を硝酸で洗浄した比較例4において、洗浄前の発泡粒子は200ppm、洗浄後の発泡粒子は30ppmであった。
【0068】
実施例4、5
実施例1と同じ界面活性剤1を用い、成形圧を0.20MPa(G)(実施例4)、0.35MPa(G)(実施例5)として成形体密度の異なる成形体を得た。
【0069】
実施例6〜実施例8
実施例6においては、界面活性剤として表1の界面活性剤1と同系であるが分子量が17000の界面活性剤2を用いた。
また主成分が異なる界面活性剤3(実施例7)、界面活性剤4(実施例8)を用いて、発泡粒子の界面活性剤処理を行い、これらを用いて成形体を得た。
【0070】
比較例4
分散剤として第三リン酸カルシウムを用いて得られたTPU系発泡粒子を、硝酸を用いて酸洗浄処理した。これを用いて発泡成形体を得た。引張強度は1.6MPaと高い値が得られたが、成形体表面が黄変しており外観に劣るものであった。
【0071】
比較例5〜6
界面活性剤として表1に示すカチオン系の界面活性剤5(比較例5)、ノニオン系の界面活性剤6(比較例6)により発泡粒子の界面活性剤処理を行い、これらを用いて成形体を得た。いずれも、引張強度が低かった。
【0072】
比較例7〜8
界面活性剤として表1に示すアニオン形であって非水溶性である界面活性剤7(比較例7)及び界面活性剤8(比較例8)により発泡粒子の界面活性剤処理を行い、これらを用いて成形体を得た。いずれも、引張強度が低かった。
【0073】
比較例9
界面活性剤としてポリアクリル酸を主成分とするノニオン系の界面活性剤9を用い発泡粒子の界面活性剤処理を行い、これらを用いて成形体を得た。
得られた成形体は引張強度が0.3MPaと低いものであった。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示した評価結果から分かるように、実施例1〜8の発泡粒子を用いた成形体は、いずれも、高い引張強度を有しており、熱可塑性ポリウレタン系発泡体の特性を発現できている。
【0076】
【表3】
【0077】
一方、表3に示すように比較例1〜3、5〜9の成形体は引張強度が低いものであった。また、硝酸による酸洗浄を行った比較例4は、引張強度は1.6MPaと高い値が得られたが、黄変して外観の劣る物となった。
付着していることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン発泡粒子であり、該熱可塑性ポリウレタン発泡粒子を成形型内に充填して水蒸気にて加熱することにより発泡粒子を相互に融着させる発泡粒子成形体の製造方法である。