特許第6186048号(P6186048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6186048
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】混合用複室輸液袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/32 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   B65D81/32 D
   B65D81/32 F
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-127334(P2016-127334)
(22)【出願日】2016年6月28日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】596089104
【氏名又は名称】杉山 和義
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和義
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−023683(JP,U)
【文献】 特開2009−161212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁部の開放部を強接着部として封止した袋体であって、該袋体は分画接着部によって2又はそれ以上に区画された分室を有し、上記分画接着部はその中央部位よりも上記袋体の外周縁部との隣接部位を易開封部とし、上記中央部位は上記易開封部に続いて開封される開封性である混合用複室輸液袋。
【請求項2】
上記分画接着部は、袋体の外周縁部に対して傾斜状態になるように形成されている請求項1に記載の混合用複室輸液袋。
【請求項3】
上記分画接着部は、袋体の外周縁部に対してS字状を描く傾斜状態に形成されている請求項2に記載の混合用複室輸液袋。
【請求項4】
上記分画接着部に隣接して袋体の外周縁部から袋体の内方に突出する突出部が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の混合用複室輸液袋。
【請求項5】
上記袋体は2つの分室を有し、一方の分室に粉剤を収納し、他方の分室に粉剤用の溶液を収納している請求項1〜4のいずれかに記載の混合用複室輸液袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分室に収納されている薬剤などの収納物を混合して使用する混合用複室輸液袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、反応等を避けるために別種の内容物を分画された分室に分離して収納しておき、使用に当って分室を仕切っている易剥離性の接着部を剥して、各分室に収納されている内容物を混合して用いるようにした内容物混合袋が知られている。(特許文献1)
こうした易剥離性の接着部は、全長に亘って同じ接着性を有するように形成されているので、剥離される部位が必ずしも一定せず、また、かなり強い力を加えて分室を連通させる必要がある。
【0003】
特に、一方の分室に粉剤を収納し、他方の分室に溶液を加えたようなものにおいて、粉剤の溶解性が低いものがあり、例えば、難溶性の薬剤としてペントシリン(富山化学工業株式会社製:ピペラシンナトリウム)、チエナム(MSD株式会社製:イミベネム・シラスタチンナトリウム)のようなものがある。
【0004】
こうしたものの場合には、混合袋の溶液側の分室を強く押圧することによって、易剥離性接着部を剥すように開いて、溶液を粉剤側の分室に流入させ、次に粉剤側の分室を押圧して溶液側の分室に戻すという作業を何回も繰返さなければ、うまく混合できず全体を均一な溶解液にすることに相当の手間を要することが見られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−286470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数の分室に分画している分画接着部を定位置から剥がれるようにすると共に、分室内に収納されている内容物を、溶け難いようなものであっても、確実に、かつ迅速に撹拌、混合できるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外周縁部の開放部分を強接着部として封止して形成した袋体において、該袋体には分画接着部によって2又はそれ以上に区画されている分室を有しており、上記した分画接着部はその中央部位よりも上記袋体の外周縁部に隣接する部位がより開封し易い易開封部にして混合用複室輸液袋としたものである。
上記分画接着部の中央部位は、上記易開封部に続いて開封されたりするようにできるし、又は開封されないように形成することができる。
また、上記分画接着部は、袋体を斜めに分画するように袋体の外周縁部に対して傾斜状態になるように設けるようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記したように分画接着部は、袋体の外周縁部に隣接する両端の部位が中央部位よりも開封性の易開封部に形成されているので、各分室に収納されている収納物を混合する場合、一方の分室を押圧すると、両端側の易開封部が先ず剥がれてその部分から収納物が他方の分室に流れ込むようになるが、そのときに剥された部分が狭いので、収納物が渦を巻くようにして他方の分室に流れ込んで行き、撹拌作用が起るようなる。次に、他方の分室を押圧すると、同様に渦を巻きながら元の分室に戻って行くようになり、これを繰返すと渦を巻きながら全体が混ざり合うようになって分室に分納されている収納物が早期に、均一に混ざり合った輸液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例を示す正面図である。
図2図1に示すものの混合状態を示す説明図である。
図3】本発明の他の実施例を示す正面図である。
図4】本発明の更に他の実施例を示す正面図である。
図5】本発明の他例を示す正面図である。
図6】本発明の更に他例を示す正面図である。
図7】本発明の他の実例を示す一部省略正面図である。
図8図7に示すものの混合状態を示す説明図である。
図9】本発明の更に他の実例を示す一部省略正面図である。
図10図9に示すものの混合状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドその他のプラスチックフイルム、チューブ、プラスチックラミネートフイルムなどによって袋体1を形成する。上記プラスチックフイルム、チューブなどの内面側は、収納物に影響を及ぼさないものであると共にヒートシール可能な材質で形成するとよい。
【0011】
上記袋体1において、その外周縁部2の開放部3となっている部位は、接着力の強い強接着部4として、収納物を確実に収納しておくことができるように容易に剥がれないようにしている。
こうした袋体1は、分画接着部5によって複数の分室9,10に区画されており、各分室には後に混合される収納物11、12を区分けして収納するようになっている。
【0012】
そして、上記分画接着部5は、全体が均一的な接着性を示すものではなく、中央部位8よりも袋体1の外周縁部2に隣接する両端部の接着性がより弱くなっている易開封部6、7となっていて、中央部位8よりも一層剥し易い状態になっている。
【0013】
図1に示すものは、プラスチックのチューブ体15の下端部16を強接着部4として開放部3を封止すると共に、強接着部に輸液の導出部17を設けている。
チューブ体15の上部はその上端部18と、その両側部19、19を強接着部4としており、その上端部18の強接着部には吊孔20を設けている。
こうした袋体1は、分画接着部5によって、下方の大きな分室9と、上方のこれよりも小さな分室10に仕切られている。
【0014】
上記分画接着部5が袋体1の上記両側部19、19と繋がる隣接部位では、その中央部位8よりもヒートシールの幅を狭くすることによって、より接着性を弱くした易開封部6、7としている。この場合、シールの幅を同じとしながら接着強度を変えることによって、上記の如き易開封部を形成することもできる。
【0015】
上記分画接着部5の中央部位8は、上記易開封部6、7が開封された後に、これに引続いて開封されるように形成することができるし、又は中央部位は開封されないように形成することもできる。
上記の分画接着部5は、袋体1に対して真横に伸びるように形成することができるが、図に示すように、袋体1に対して傾斜状態になるように形成すると後記するように好ましいことが多い。
【0016】
図示する袋体1では、下方の大きな分室9に生理食塩液を100mlとか、その他の溶液を収納し、上方の小さな分室10には抗生物質その他の粉剤などを収納するようにしている。
この場合、各分室の強接着部などの一部が非接着状態になっているときに、各分室内に上記の如き所望の収納物を各々収納してから接着することなどによって、各収納物を分室内に各々封入することができる。
こうした上記各分室に収納されている収納物11、12は、各分室内において隔離され、分離して収納されているので、各収納物が互いに反応性であったとしても、安定的に収納状態を保持しておくことができる。
【0017】
図示の輸液袋22は縦長になっているので、上下に折り畳むようにして保存すると取扱いが便利になるし、更に、折り畳んだ状態のものを外袋に収納したりすると衛生的であり、一層取扱い易くなる。
また、分室内に封入する収納物が光線を嫌うようなものである場合には、分室の外側に遮光シートなどを貼り付けておき、使用する際にこれを引き剥がすようにすると良いこともある。
【0018】
こうした輸液袋22を使用する場合、図2に示すように、折畳まれた輸液袋を開いた状態にしてテーブルなどの上に置き、溶液側の分室9の上から強く押さえ付けるようにすると、分画接着部5の易開封部6が剥がされてその部分から溶液が他方の分室10に流れ込むようになるが、そのとき剥された部分が狭いので溶液は渦を巻くようにしながら他方の分室10に流れ込んで行き、粉剤に対して撹拌作用を起すようになる。
【0019】
そして、次に溶液が流入した他分室10側を押圧すると、分画接着部5の他の易開封部7も剥され、両端部の易開封部6、7の連通部分から同様に渦を巻いて撹拌作用を起しながら元の分室9に流れ込んで行くようになる。
こうした作業を繰返すと、収納されていた溶液は渦を起しながら撹拌されて紛体とより早く混ざり合うようになり、各室に収納されている収納物が均一状態に混ざり合った輸液を手軽に得ることができる。
【0020】
そして、上記中央部位8も開封性である場合には、上記易開封部6、7を通じて両分室9、10間に溶液を往復させていると混ざり合った収納物によって、上記分画接着部は両端部の易開封部6、7から次第に中央部位8へと剥されて行って両分室9、10間の連通部分が広がり、全部が剥されるようになって良好に混合することができるようにもなる。
上記のようにして各分室内に収納されていた収納物が均一的に撹拌されて混合された輸液は、導出部17から点滴などによって患者に供給することができる。
【0021】
図3に示すものは、上記分画接着部5の傾斜状態の程度を大きくしたものであり、これによって分画接着部5の端部の易開封部6、7の引き剥がしを一層容易にすることができるようになり、使い勝手がよいことがある。
また、図4に示すものは、上記分画接着部5を略S字状としたものを、その傾斜状態の程度を大きくしたものであって、溶液の流れがよりスムーズになることがあり、上記したものと同様にして使用することができる。そして、この分画接着部は上記したものの他、波形状、W形状の他必要に応じてその他の適宜の形状にすることができる。
【0022】
図5のものは、分画接着部5の易開封部6の近傍に、上記強接着部4が分室10の内方に突出するような凸出部24を設けたものである。上記分画接着部5の易開封部6が引き剥がされたとき、一方の分室9から他方の分室10に侵入する溶液は、上記凸出部24に衝突するようになり、これによって溶液の流れは乱されて一層複雑な渦流が生じるようになり、これによって撹拌、混合の作用をより効率的に行うことができるようになる。
【0023】
図6に示すものは、袋体の上端部18の強接着部4の中央部から分室10内に突出するように凸出部25を形成したものであり、分画接着部5の易開封部6、7から流入し、分室10の内端壁26に沿って流れる溶液がこの凸出部25に衝突することによって、流れが邪魔されて渦流が生ずるようになり、撹拌作用を向上させることができるようになる。
【0024】
図7図8に示すものは、袋体1の周囲を強接着部4に形成したものであり、分画接着部5の易開封部6の近傍に上記強接着部4が分室10の内方に突出するような凸出部27を設け、易開封部7の近傍に上記強接着部4が分室9の内方に突出するような凸出部28を設けたものである。
上記分画接着部5の易開封部6、7が引き剥がされたとき、一方の分室9から他方の分室10に侵入する溶液、及び分室10から分室9に戻る溶液は、上記凸出部27、28に衝突し、上記と同様に溶液の流れは乱されて一層複雑な渦流が生じるようになり、より効率的な撹拌、混合の作用を行うことができるようになる。
【0025】
図9図10に示すものは、袋体の上端部18の強接着部4の中央部から分室10内に突出するように凸出部30を、及び下端部16の強接着部4の中央部から分室9内に突出するように凸出部31を形成したものであり、分画接着部5の易開封部6、7から流入し、分室10の内端壁26、分室9の内端壁29に沿って流れる溶液がこの凸出部30、31に衝突することによって、流れが乱されて渦流が生ずるようになり、より撹拌作用を向上させることができるようになる。
【0026】
上記には、主として分室に収納する収納物として、紛体と溶液の組合せについて述べてきたが、溶液と溶液、粘稠液と粘稠液、粘稠液と溶液の組合せにおいても同様に使用することができるし、分画接着部によって3つ以上の分室に区画形成し、各分室のものを順次、又は一度に混ぜ合わせるようにすることもできる。
また、上記には上下、左右などの用語が一部使用されているが、これは絶対的な位置関係を示すものではなく、理解を容易にするための相対的な位置関係を示すものである。
【符号の説明】
【0027】
1 袋体
4 強接着部
5 分画接着部
6,7 易開封部
8 中央部位
9,10 分室
15 チューブ体
16 下端部
17 導出部
18 上端部
22 輸液袋
24,25,27,28,30,31 凸出部
【要約】      (修正有)
【課題】複数の分室に分画して収納されている内容物を容易、迅速かつ確実に撹拌して混合物にできるようにする。
【解決手段】外周縁部の開放部分を強接着部4として封止して形成した袋体1は、分画接着部5によって2又はそれ以上に区画されている分室9、10を有している。上記した分画接着部5はその中央部位8よりもよりも上記袋体1の外周縁部に隣接する部位が開封し易い易開封部にされて、混合用複室輸液袋22となっている。上分画接着部5の中央部位8は開封されないものでもよいし、易開封部の後で開封されるものでもよい。また、上記分画接着部5は、袋体1を斜めに分画するように袋体の外周縁部2に対して傾斜状態になるように設けている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10