(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物に対するレーザ光の照射位置を円弧状の軌道に沿って変位させる走査を行う際、XYステージを介して当該円弧の中心を回転盤の回転中心軸上に配置し、その状態で回転盤によりXYステージ及び被加工物を回動させながら、レーザ光照射装置から被加工物にレーザ光を照射する請求項1記載のレーザ加工装置。
被加工物に対するレーザ光の照射位置を円弧状の軌道に沿って変位させる走査を行う際、XYステージを介して当該円弧の中心を回転盤の回転中心軸上に配置するのに伴い、レーザ光の焦点を被加工物に対するレーザ光の照射位置に合わせる調整を行う請求項2記載のレーザ加工装置。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工の用途の一つに、レーザ溶接が挙げられる。レーザ溶接は、主として金属の被加工物にレーザ光を照射し、被加工物を局所的に溶融、凝固させて接合を行うものである。
【0003】
例えば、
図2に示すような、上下に分割した半割構造をなす二個の部材4を、両者の境界線6に沿ってレーザ溶接する場合を考える。このような溶接処理では、溶接するべき部材4の側面の位置にレーザ光の焦点を合わせた状態を保ちながら、レーザ光5により溶接線6を一定の速度で走査する。
【0004】
各部材4の側面にはそれぞれ、平板な部位4A、4C、4I、4Kと、部分円筒面状をなすように丸面取り(フィレット)された隅角の部位4B、4D、4H、4J、4Lとが存在する。各部材4の平板部位4A、4C、4I、4K同士を溶接するときには、単純にレーザ光5の光軸を部材4の側面に対して相対的に平行移動させればよい。一方で、各部材4の隅角部位4B、4D、4H、4J、4L同士を溶接するときには、レーザ光5を出射する加工ノズルと丸面取りされた部材4の側面との距離を一定に維持し、かつレーザ光5の光軸と部材4の側面とが交わる角度をも一定に維持するように、部材4の側面に対して相対的にレーザ光5の光軸を変位させる必要がある。
【0005】
下記特許文献1に開示されている従来のレーザ加工装置では、被加工物を支持しつつ被加工物をZ軸回りに回動させることのできる回転盤をXYステージに搭載しており、XYステージを介して被加工物を加工ノズルひいてはレーザ光軸に対してX軸方向及びY軸方向に移動させ、また回転盤により被加工物をレーザ光軸に対してZ軸回りに回動させることが可能となっている。
【0006】
しかしながら、上掲のレーザ加工装置を用いて
図2に示す二個の部材4のレーザ溶接を行おうとすると、各部材4の隅角部位4B、4D、4H、4J、4L同士を溶接する際、XYステージによる被加工物の移動と、回転盤による被加工物の回動とを同期させて制御しなくてはならなくなる。レーザ光の溶接線に沿った走査速度を一定化するためには、被加工物のX軸方向に沿った移動、Y軸方向に沿った移動及びZ軸回りの回動の合成速度を求めて、その合成速度と目標速度との偏差を縮小するようにXYステージ及び回転盤の双方に同時にフィードバックをかけることとなる。従って、演算量が顕著に増大する上、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれの加減速を複雑に制御することが要求され、加工品質の向上の妨げともなり得る。また、そのような多軸同期制御コントローラは、非常に高価でもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、部分円筒面状や部分円錐面状をなす部位を含む被加工物の側面に沿ってレーザ光の照射位置を移動させるレーザ加工を好適に実施し得るレーザ加工装置を、簡便な構成で実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するべく、本発明では、被加工物を支持し、被加工物をX軸方向及びX軸方向に対して直交するY軸方向に移動させることのできるXYステージと、XYステージを支持し、XYステージ及びこれに支持させた被加工物をX軸方向及びY軸方に対して直交するZ軸回りに回動させることのできる回転盤と、被加工物にレーザ光を照射するレーザ光照射装置とを具備するレーザ加工装置を構成した。
【0010】
被加工物に対するレーザ光の照射位置を円弧状の軌道に沿って変位させる走査を行う際には、XYステージを介して当該円弧の中心を回転盤の回転中心軸上に配置し、その状態で回転盤によりXYステージ及び被加工物を回動させながら、レーザ光照射装置から被加工物にレーザ光を照射すればよい。
【0011】
なお、被加工物に対するレーザ光の照射位置を円弧状の軌道に沿って変位させる走査を行う際、XYステージを介して当該円弧の中心を回転盤の回転中心軸上に配置するのに伴い、レーザ光の焦点を被加工物に対するレーザ光の照射位置に合わせる調整を行うことがある。
【0012】
レーザ光照射装置から被加工物に照射するレーザ光の光軸をXY平面に対して平行または略平行となるように設定していれば、
図2に示す二個の部材のレーザ溶接のような加工を行う場合において、被加工物である部材の側面をXY平面に対して起立させた状態で当該被加工物をXYステージに支持させ、これに向けてレーザ光を照射するという形で、高速かつ高精度な加工を実現することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部分円筒面状や部分円錐面状をなす部位を含む被加工物の側面に沿ってレーザ光の照射位置を移動させるレーザ加工を好適に実施し得るレーザ加工装置を、簡便な構成で実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のレーザ加工装置は、被加工物を支持するXYステージ1と、XYステージ1を支持する回転盤2と、XYステージ1に支持させた被加工物に対して加工用のレーザ光5を照射するレーザ光照射装置3と、XYステージ1、回転盤2及びレーザ光照射装置3を制御する制御装置(図示せず)とを具備する。
【0016】
XYステージ1は、X軸方向に伸びるレール10に沿って移動可能なX軸ユニット11と、X軸ユニット11上に設けたY軸方向に伸びるレール12に沿って移動可能なY軸ユニット13とを要素とする。X軸ユニット11、Y軸ユニット13はそれぞれ、レール10、12に沿って走行するリニアモータ台車を用いてなる。そして、そのY軸ユニット13に、被加工物をクランプ、吸着その他適宜の手段により固定することのできる支持体14を設けており、支持体14に支持させた被加工物をX軸方向及びY軸方向に移動させることが可能となっている。支持体14ひいては被加工物の現在の位置のXY座標、即ちX軸ユニット11の位置座標及びY軸ユニット13の位置座標は、各ユニット11、13に付設したリニアエンコーダを介して検出することができる。
【0017】
回転盤2は、XYステージ1を支持しており、モータにより当該XYステージ1をZ軸回りに正逆回転させることが可能である。XYステージ1ひいては被加工物の現在のZ軸回りの向き、即ち回転盤2のZ軸回りの回転量は、回転盤2に付設したリニアエンコーダを介して検出することができる。
【0018】
レーザ照射装置3は、レーザ光源31と、レーザ光源31から供給されたレーザ光5を支持体14に支持させた被加工物に向けて出射させる加工ノズル33と、レーザ光源31と加工ノズル33との間に介在しレーザ光源31が出力するレーザ光5を加工ノズル33へと導く光学系32とを要素とする。レーザ光源31は、連続波レーザまたはパルスレーザ(連続波に近い、パルス幅の長い高周波レーザでもよい)Lを発振する。加工ノズル33は、被加工物に照射するべきレーザ光5の焦点距離やスポット径を調節するためのレンズ、及びレーザ光5の出射のON/OFFを切り替えるためのシャッタまたはミラー等を内蔵する。加工ノズル33は、支持体14に支持される被加工物の側方に位置しており、当該加工ノズル33から出射するレーザ光5の光軸を回転盤2の回転中心軸21に対して交差する方向に向けている。特に、本実施形態では、加工ノズル33から出射するレーザ光5の光軸を、XY平面に対して平行または略平行となるように設定している。レーザ光源31から加工ノズル33に向けてレーザLを伝搬させる光学系32は、光ファイバ、ミラー、プリズム、レンズ等の任意の光学要素を用いて構成できる。
【0019】
本実施形態では、加工ノズル33を不動としており、加工ノズル33と回転盤2の回転中心軸21との相対的な位置関係は不変である。また、加工ノズル33から出射するレーザ光5の光軸は、回転中心軸21を指向している。
【0020】
制御装置は、例えば汎用的なパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ワークステーション等、またはプログラマブルコントローラにより構成できる。制御装置は、XYステージ1や回転盤2、レーザ光源31、加工ノズル33等と通信可能に接続しており、これらを個別に制御することができる。即ち、制御装置は、被加工物を支持する支持体14を任意のXY座標に位置づけるための制御信号をXYステージ1に入力し、回転盤2を任意の変位量だけZ軸回りに回転させるための制御信号を回転盤2に入力し、レーザ光源31が発振するレーザ光5の出力を調節するための制御信号をレーザ光源31に入力し、並びに、加工ノズル33からのレーザ光の出射のON/OFFやレーザ光5の焦点距離またはスポット径を調節するための制御信号を加工ノズル33に入力する。
【0021】
本実施形態のレーザ加工装置は、主として被加工物のレーザ溶接を行うために使用することができる。例えば、
図2に示すような、上下に分割した半割構造をなす二個の部材4を、両者の境界線6に沿ってレーザ溶接することが可能である。レーザ溶接処理では、溶接するべき部材4の側面の位置にレーザ光の焦点を合わせた状態を保ちながら、レーザ光5により溶接線6を一定の速度で走査する。
【0022】
各部材4の側面にはそれぞれ、平板な部位4A、4C、4E、4G、4I、4Kと、丸面取りされた隅角の部位4B、4D、4F、4H、4J、4Lとが存在している。出隅の部位4B、4D、4F、4H、4Jは、外側方に向けて凸となる部分円筒面状の凸曲面となっており、入隅4Lの部位は、内側方に向けて凹となる部分円筒面状の凹曲面となっている。各部材4の平板部位4A、4C、4E、4G、4I、4K同士を溶接するときには、単純にレーザ光5の光軸を部材4の側面に対して相対的に平行移動させればよい。一方で、各部材4の隅角部位4B、4D、4F、4H、4J、4L同士を溶接するときには、レーザ光5を出射する加工ノズル33と丸面取りされた部材4の側面との距離を一定に維持し、かつレーザ光の光軸Lと部材4の側面とが交わる角度をも一定に維持するように、部材4の側面に対して相対的にレーザ光5の光軸を変位させる必要がある。
【0023】
上記の溶接処理を実行するためには、溶接線6が現れる側面がXY平面に対して起立(特に、直立)する姿勢で、被加工物たる溶接対象の部材4を支持体14に固定する。その上で、加工ノズル33から出射するレーザ光5を部材4の側面における溶接線6に照射しつつ、その照射位置が溶接線6に沿って移動するように、XYステージ1及び回転盤2を駆動して部材4を加工ノズル33に対して相対的に変位させる。
【0024】
図3ないし
図4に、本実施形態のレーザ加工装置を用いた、上記の溶接処理の手順例を示す。
図3及び
図4では、未だレーザ光5を照射していない領域、即ち溶接前の領域を実線で表し、レーザ光5を照射した領域、即ち溶接を終えた領域を破線で表している。
【0025】
図3ないし
図4に則して述べると、まず、入隅の部位4Lとこれに連なる平板な部位4Aとの境界を起点として、レーザ光5の照射を開始する(
図3(I))。なお、回転盤2の回転中心軸21からレーザ光5の照射を受ける部材4の側面までの距離が、丸面取りされた出隅の部位4B、4D、4F、4H、4J、4Lの曲率半径(丸め半径)に合致するよう、予めXYステージ1の支持体14の位置を初期設定しておく。そして、XYステージ1を駆動し、支持体14に支持させた部材4をレーザ光5の光軸と直交する方向に沿って一定の速度で平行移動させることで、レーザ光5を平板部位4Aの溶接線6をなぞるように照射する。
【0026】
レーザ光5の照射位置が部材4の平板部位4Aとこれに連なる出隅部位4Bとの境界に到達したならば(
図3(II))、次に、レーザ光5を出隅部位4Bの溶接線6に照射する。このとき、レーザ光5の照射位置が、部材4に対して相対的に、部分円筒面状をなす出隅部位4Bの側面上の円弧軌道に沿って変位することとなる。レーザ光5の照射位置が平板部位4Aと出隅部位4Bとの境界に到達した時点で、当該円弧の中心即ち出隅部位4Bの側面に合致する円筒の中心4bに回転盤2の回転中心軸21が重なる。その状態で回転盤2を駆動し、支持体14に支持させた部材4をXYステージ1諸共一定の速度で回転させれば、出隅部位4Bの側面にレーザ光5の焦点を合わせた状態を保ちながら、レーザ光5を出隅部位4Bの溶接線6をなぞるように照射することができる。
【0027】
レーザ光5の照射位置が部材4の出隅部位4Bとこれに連なる平板部位4Cとの境界に到達したならば(
図3(III))、XYステージ1を駆動して、支持体14に支持させた部材4をレーザ光5の光軸と直交する方向に沿って一定の速度で平行移動させ、レーザ光5を平板部位4Cの溶接線6をなぞるように照射する。
【0028】
レーザ光5の照射位置が部材4の平板部位4Cとこれに連なる出隅部位4Dとの境界に到達したならば(
図3(IV))、引き続き、レーザ光5を出隅部位4Dの溶接線6に照射する。このときには、レーザ光5の照射位置が、部材4に対して相対的に、部分円筒面状をなす出隅部位4Dの側面上の円弧軌道に沿って変位することとなる。レーザ光5の照射位置が平板部位4Cと出隅部位4Dとの境界に到達した時点で、当該円弧の中心即ち出隅部位4Dの側面に合致する円筒の中心4dに回転盤2の回転中心軸21が重なる。その状態で回転盤2を駆動し、支持体14に支持させた部材4をXYステージ1諸共一定の速度で回転させれば、出隅部位4Dの側面にレーザ光5の焦点を合わせた状態を保ちながら、レーザ光5を出隅部位4Dの溶接線6をなぞるように照射することができる。
【0029】
以後、平板部位4E、出隅部位4F、平板部位4G、出隅部位4H、平板部位4I、出隅部位4J、平板部位4Kの順に、レーザ光5の照射位置を溶接線6に沿って遷移させる。上述した通り、平板部位4A、4C、4E、4G、4I、4Kの溶接線6にレーザ光5を照射する際には、XYステージ1を駆動して支持体14及び部材4をX軸方向及び/またはY軸方向に平行移動させ、出隅部位4B、4D、4F、4H、4Jの溶接線6にレーザ光5を照射する際には、回転盤2を駆動して支持体14及び部材4をZ軸回りに回転させる。部材4の平板部位4Aから平板部位4Kまでの領域は、ちょうど一筆書きのように一挙にレーザ光5で走査して溶接することが可能である。その間、レーザ光5を出射する加工ノズル33と、レーザ光5の照射を受ける部材4の側面との間の距離は一定で変化しないため、レーザ光5の焦点距離を変更する必要はない。
【0030】
レーザ光5の照射位置が部材4の平板部位4Kとこれに連なる入隅部位4Lとの境界に到達したならば(
図4(V))、最後に、レーザ光5を入隅部位4Lの溶接線6に照射する。このときには、レーザ光5の照射位置が、部材4に対して相対的に、部分円筒面状をなす入隅部位4Lの側面上の円弧軌道に沿って変位することとなる。そのために、当該円弧の中心即ち入隅部位4Lの側面に合致する円筒の中心4lに回転盤2の回転中心軸21を重ね合わせ、その状態で回転盤2を駆動して、支持体14に支持させた部材4をXYステージ1諸共一定の速度で回転させる。
【0031】
尤も、レーザ光5の照射位置が平板部位4Kと入隅部位4Lとの境界に到達した時点では、回転盤2の回転中心軸21が当該円弧軌道の中心4lからずれている。従って、加工ノズル33からのレーザ光5の出射を一旦停止し、XYステージ1を駆動して、入隅部位4Lの溶接線6の円弧の中心4lが回転盤2の回転中心軸21に重なるように支持体14及び部材4を移動させる(
図4(VI))。しかる後、加工ノズル33からのレーザ光5の出射を再開し(
図4(VII))、回転盤2を駆動して支持体14に支持させた部材4を一定の速度で回転させる。これにより、入隅部位4Lの側面にレーザ光5の焦点を合わせた状態を保ちながら、レーザ光5を入隅部位4Lの溶接線6をなぞるように照射することができる。但し、部材4の入隅部位4Lにレーザ光5を照射するときと、他の部位4A〜4Kにレーザ光5を照射するときとでは、加工ノズル33からレーザ光5の照射を受ける部材4の側面までの距離が異なる。このため、入隅部位4Lにレーザ光5を照射する際には、予めレーザ光5の焦点距離を変更する必要がある。結果として、部材4の側面の各部位4A〜4Lを取り囲むように一周連続した溶接線6の溶接が完了する(
図4(VIII))。
【0032】
本実施形態では、被加工物を支持し、被加工物をX軸方向及びX軸方向に対して直交するY軸方向に移動させることのできるXYステージ1と、XYステージ1を支持し、XYステージ1及びこれに支持させた被加工物をX軸方向及びY軸方に対して直交するZ軸回りに回動させることのできる回転盤2と、被加工物にレーザ光5を照射するレーザ光照射装置3とを具備するレーザ加工装置を構成した。
【0033】
本実施形態によれば、XYステージ1による被加工物の平行移動と、回転盤2による被加工物の回動とを同時に行わずともよく、XYステージ1及び回転盤2の同期制御が不要となる。従って、レーザ光5の光軸に対する被加工物の相対的な変位を高速かつ高精度に制御することが可能となり、加工品質の向上に寄与し得る。制御装置における演算量も徒に増大しない。また、高価な多軸同期制御コントローラを採用せずに済む。
【0034】
被加工物に対するレーザ光5の照射位置を円弧状の軌道に沿って変位させる走査を行う際には、XYステージ1を介して当該円弧の中心4b、4d、4f、4h、4j、4lを回転盤2の回転中心軸21上に配置する。そして、その状態で、回転盤2によりXYステージ1及び被加工物をレーザ光5の光軸と交差(特に、直交)する軸回りに回動させながら、レーザ光照射装置3から被加工物にレーザ光5を照射する。
【0035】
加えて、被加工物に対するレーザ光5の照射位置を円弧状の軌道に沿って変位させる走査を行う際には、XYステージ1を介して当該円弧の中心4lを回転盤2の回転中心軸21上に配置するのに伴い、レーザ光5の焦点を被加工物に対するレーザ光5の照射位置に合わせる調整を行い、その上で回転盤2によりXYステージ1及び被加工物をレーザ光5の光軸と交差する軸回りに回動させつつ、レーザ光照射装置3から被加工物にレーザ光5を照射する。
【0036】
図3及び
図4に示す例では、部材4の平板部位4A、4C、4E、4G、4I、4K及び出隅部位4B、4D、4F、4H、4Jにレーザ光5を照射するときと、部材4の入隅部位4Lにレーザ光5を照射するときとで、加工ノズル33から部材4の側面までの距離が変化する。これは、出隅部位4B、4D、4F、4H、4Jの側面上の溶接線6の円弧の中心4b、4d、4f、4h、4jが部材4の内側に位置するのに対し、入隅部位4Lの側面上の溶接線6の円弧の中心4lが部材4の外側に位置することによる。それ故、部材4の他の部位4A〜4Kにレーザ光5を照射するときと、入隅部位4Lにレーザ光5を照射するときとで、レーザ光5の焦点距離を変更し、以てレーザ光5の焦点が常に部材4の側面に合うようにしている。
【0037】
レーザ加工中に加工ノズル33から被加工物の側面までの距離が変化するのは、被加工物の形状に出隅の部位と入隅の部位とが混在する場合に限られない。被加工物が、側面の曲率半径が相異なる複数の隅角部位を有しているときにも、同様の事情が生じる。即ち、曲率半径の大きい隅角部位の側面に沿った円弧軌道の中心を回転盤2の回転中心軸21上に配置するときと、曲率半径の小さい隅角部位の側面に沿った円弧軌道の中心を回転盤2の回転中心軸21上に配置するときとで、加工ノズル33から被加工物の側面までの距離が変化するため、レーザ光5の焦点をレーザ光5の照射を受ける被加工物の側面に合わせる処置を行う必要があるのである。
【0038】
本実施形態のレーザ加工装置では、被加工物のある隅角部位と他の隅角部位とにそれぞれレーザ光5を照射して加工を施すに際し、ある隅角部位の側面上の円弧軌道に沿ってレーザ光5を照射した後、その円弧軌道の中心と他の隅角部位の側面上の円弧軌道の中心とを結ぶ線分に沿って回転盤2の回転中心軸21を変位させるように、XYステージ1及びこれに支持させた被加工物を直線的に移動させる。さらに、他の隅角部位の側面上の円弧軌道の中心を回転盤2の回転中心軸21に合致させるのに同期して、レーザ光5の焦点が他の隅角部位の側面に合うようにレーザ光5の焦点距離を調整する。その上で、他の隅角部位の側面上の円弧軌道に沿ってレーザ光5を照射する。レーザ光5の焦点距離は、レーザ光5を照射する対象の隅角部位の側面から円弧軌道の中心までの距離、即ち対象の隅角部位の側面の曲率半径によって決定でき(回転中心軸21上に円弧軌道の中心を配置した状態で加工を施すことから)、XYステージ1が運搬する被加工物の現在位置のXY座標の影響を受けない。つまり、レーザ光5の焦点距離の制御は、XYステージ1の制御とは独立して行うことが可能である。そして、部分円筒面状または部分円錐面状の側面形状を有した隅角部位のレーザ加工では、XYステージ1を駆動せず、回転盤2のみを駆動して、当該側面上の円弧軌道に沿ったレーザ光5の照射を実行することができる。
【0039】
本実施形態のレーザ加工装置では、レーザ光照射装置3から被加工物に照射するレーザ光5の光軸の向きをXY平面に対して平行または略平行となるように設定しており、XY平面に対して非平行であるように起立(特に、直立)した被加工物の側面の加工に好適となる。
【0040】
本実施形態のレーザ加工装置は、被加工物のレーザ溶接の用途に供することができる。
【0041】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、加工ノズル33に内蔵したレンズの位置を操作することを通じて、加工ノズル33から出射するレーザ光5の焦点距離を調整し、以てレーザ光5の焦点が常に被加工物の側面に合うように(
図3及び
図4に示す例で言えば、部材4の入隅部位4Lにレーザ光5を照射するときと、他の部位4A〜4Kにレーザ光5を照射するときとで、レーザ光5の焦点距離を変更)していた。これ以外に、加工ノズル33自体を例えばサーボモータやステッピングモータ等によりレーザ光5の光軸と平行に変位可能に構成しておき、加工ノズル33の位置を変位させることを通じて、レーザ光5の焦点を常に被加工物の側面に合わせるようにしてもよい。
【0042】
また、本発明に係るレーザ加工装置の用途は、レーザ溶接には限定されない。
【0043】
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【課題】部分円筒面状や部分円錐面状をなす部位を含む被加工物の側面に沿ってレーザ光の照射位置を移動させるレーザ加工を好適に実施し得るレーザ加工装置を、簡便な構成で実現する。
【解決手段】被加工物を支持し、被加工物をX軸方向及びX軸方向に対して直交するY軸方向に移動させることのできるXYステージと、XYステージを支持し、XYステージ及びこれに支持させた被加工物をX軸方向及びY軸方に対して直交するZ軸回りに回動させることのできる回転盤と、被加工物にレーザ光を照射するレーザ光照射装置とを具備するレーザ加工装置を構成した。