特許第6186063号(P6186063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6186063
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】脱水装置及び脱水方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/62 20060101AFI20170814BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20170814BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20170814BHJP
   B01D 24/48 20060101ALI20170814BHJP
   B01D 29/60 20060101ALI20170814BHJP
   B01D 24/44 20060101ALI20170814BHJP
   B01D 29/94 20060101ALI20170814BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B01D29/38 580E
   B01D29/04 510A
   B01D29/04 520Z
   B01D29/04 530D
   B01D29/10 510C
   B01D29/10 520Z
   B01D29/10 530D
   B01D29/36 CZAB
   B01D29/42 520
   C02F11/12 D
   C02F11/12 Z
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-205311(P2016-205311)
(22)【出願日】2016年10月19日
【審査請求日】2016年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】300020603
【氏名又は名称】東栄アクアテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516314170
【氏名又は名称】有限会社東栄製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】峯松 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−165775(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0096341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/00
B01D 36/00
C02F 11/00
B04C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管と多数の孔が穿設されたテーパー管とが上下に同軸状に連結し、前記テーパー管部分の内面にろ布を被着させると共に、前記テーパー管部分の下端開口部に外向きフランジを設けたろ過管と、
下部を開口させた箱体であり、上部では前記ろ過管の上端開口部の周囲を封止し、下部の開口端に設けた外向きフランジと前記ろ過管の前記外向きフランジとの間が環状シール部材で周回封止されて、前記ろ過管の外周空間を包囲するハウジングと、
前記ろ過管の上端開口部に前記ハウジングの外側へ向けて連結されている連結管と、
前記ろ過管の下側を密閉/開放する蓋体であり、前記ろ過管の前記外向きフランジと対向する領域には環状シール部材が取り付けられ、前記ろ過管の前記テーパー管部分の下端開口部に対向する領域には通水層を介してろ布が展着されている下蓋と、
前記下蓋を回動又は移動させることにより前記ろ過管の下側を開閉せしめ、その閉状態においては前記下蓋を前記ろ過管の下側に押圧させてロックする下蓋開閉手段とを具備し、
前記連結管の上端に、スラリー状乃至スラッジ状の被脱水物を前記ろ過管内へ投入する際に開放され、前記被脱水物の脱水処理時に閉鎖される第1のバルブを設けると共に、
前記連結管の管内に第2のバルブで開閉される第1の送気管と第3のバルブで開閉される第1の排水・排気管を連通させ、
前記ハウジングが包囲した前記ろ過管の外周空間における前記ろ過管の前記外向きフランジの近傍に第4のバルブで開閉される第2の排水・排気管を連通させ、
前記下蓋の前記通水層に第5のバルブで開閉される第3の排水・排気管と第6のバルブで開閉される第2の送気管を連通させた
ことを特徴とする脱水装置。
【請求項2】
数の孔が穿設されたテーパー管の内面にろ布を被着させると共に、前記テーパー管の下端開口部に外向きフランジを設けたろ過管と、
下部を開口させた箱体であり、上部では前記ろ過管の上端開口部の周囲を封止し、下部の開口端に設けた外向きフランジと前記ろ過管の前記外向きフランジとの間が環状シール部材で周回封止されて、前記ろ過管の外周空間を包囲するハウジングと、
前記ろ過管の上端開口部に前記ハウジングの外側へ向けて連結されている連結管と、
前記ろ過管の下側を密閉/開放する蓋体であり、前記ろ過管の前記外向きフランジと対向する領域には環状シール部材が取り付けられ、前記ろ過管の下端開口部に対向する領域には通水層を介してろ布が展着されている下蓋と、
前記下蓋を回動又は移動させることにより前記ろ過管の下側を開閉せしめ、その閉状態においては前記下蓋を前記ろ過管の下側に押圧させてロックする下蓋開閉手段とを具備し、
前記連結管の上端に、スラリー状乃至スラッジ状の被脱水物を前記ろ過管内へ投入する際に開放され、前記被脱水物の脱水処理時に閉鎖される第1のバルブを設けると共に、
前記連結管の管内に第2のバルブで開閉される第1の送気管と第3のバルブで開閉される第1の排水・排気管を連通させ、
前記ハウジングが包囲した前記ろ過管の外周空間における前記ろ過管の前記外向きフランジの近傍に第4のバルブで開閉される第2の排水・排気管を連通させ、
前記下蓋の前記通水層に第5のバルブで開閉される第3の排水・排気管と第6のバルブで開閉される第2の送気管を連通させた
ことを特徴とする脱水装置。
【請求項3】
直管と多数の孔が穿設されたテーパー管とが上下に同軸状に連結し、前記テーパー管部分の内面にろ布を被着させると共に、前記テーパー管部分の下端開口部に外向きフランジを設けたろ過管と、
下部を開口させた箱体であり、上部では前記ろ過管の上端開口部の周囲を封止し、下部の開口端に設けた外向きフランジで前記ろ過管の前記外向きフランジを内嵌固定することにより、前記ろ過管の外周空間を包囲するハウジングと、
前記ろ過管の上端開口部に前記ハウジングの外側へ向けて連結されている連結管と、
前記ろ過管の下側を密閉/開放する蓋体であり、前記ろ過管の前記外向きフランジと前記ハウジングの前記外向きフランジとの嵌合境界部に対向する領域には環状シール部材が取り付けられ、前記ろ過管の前記テーパー管部分の下端開口部と対向する領域には通水層を介してろ布が展着されている下蓋と、
前記下蓋を回動又は移動させることにより前記ろ過管の下側を開閉せしめ、その閉状態においては前記下蓋を前記ろ過管の下側に押圧させてロックする下蓋開閉手段とを具備し、
前記連結管の上端に、スラリー状乃至スラッジ状の被脱水物を前記ろ過管内へ投入する際に開放され、前記被脱水物の脱水処理時に閉鎖される第1のバルブを設けると共に、
前記連結管の管内に第2のバルブで開閉される第1の送気管と第3のバルブで開閉される第1の排水・排気管を連通させ、
前記ハウジングが包囲した前記ろ過管の外周空間における前記ろ過管の前記外向きフランジの近傍に第4のバルブで開閉される第2の排水・排気管を連通させ、
前記下蓋の前記通水層に第5のバルブで開閉される第3の排水・排気管と第6のバルブで開閉される第2の送気管を連通させた
ことを特徴とする脱水装置。
【請求項4】
数の孔が穿設されたテーパー管の内面にろ布を被着させると共に、前記テーパー管の下端開口部に外向きフランジを設けたろ過管と、
下部を開口させた箱体であり、上部では前記ろ過管の上端開口部の周囲を封止し、下部の開口端に設けた外向きフランジで前記ろ過管の前記外向きフランジを内嵌固定することにより、前記ろ過管の外周空間を包囲するハウジングと、
前記ろ過管の上端開口部に前記ハウジングの外側へ向けて連結されている連結管と、
前記ろ過管の下側を密閉/開放する蓋体であり、前記ろ過管の前記外向きフランジと前記ハウジングの前記外向きフランジとの嵌合境界部に対向する領域には環状シール部材が取り付けられ、前記ろ過管の前記テーパー管の下端開口部と対向する領域には通水層を介してろ布が展着されている下蓋と、
前記下蓋を回動又は移動させることにより前記ろ過管の下側を開閉せしめ、その閉状態においては前記下蓋を前記ろ過管の下側に押圧させてロックする下蓋開閉手段とを具備し、
前記連結管の上端に、スラリー状乃至スラッジ状の被脱水物を前記ろ過管内へ投入する際に開放され、前記被脱水物の脱水処理時に閉鎖される第1のバルブを設けると共に、
前記連結管の管内に第2のバルブで開閉される第1の送気管と第3のバルブで開閉される第1の排水・排気管を連通させ、
前記ハウジングが包囲した前記ろ過管の外周空間における前記ろ過管の前記外向きフランジの近傍に第4のバルブで開閉される第2の排水・排気管を連通させ、
前記下蓋の前記通水層に第5のバルブで開閉される第3の排水・排気管と第6のバルブで開閉される第2の送気管を連通させた
ことを特徴とする脱水装置。
【請求項5】
前記ハウジングが包囲した前記ろ過管の外周空間に対して第7のバルブで開閉される第3の送気管を連通させた請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の脱水装置。
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の脱水装置において、
前記下蓋開閉手段で前記下蓋を前記ろ過管の下側に押圧させてロックし、前記第1のバルブを開放させた状態で、スラリー状乃至スラッジ状の前記被脱水物を前記連結管から前記ろ過管内に取り込み、その取り込み後に前記第1のバルブを閉鎖する被脱水物の取込手順と、
前記第3、第4及び第6のバルブを閉鎖した状態で、前記第2及び第5のバルブを開放し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第3の排水・排気管へ強制通気させる第1の通気手順と、
前記第2、第4及び第5のバルブを閉鎖した状態で、前記第3及び第6のバルブを開放し、エアーを前記第2の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第1の排水・排気管へ強制通気させる第2の通気手順と、
前記第3、第5及び第6のバルブを閉鎖した状態で、前記第2及び第4のバルブを開放し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第2の排水・排気管へ強制通気させる第3の通気手順と、
前記第2、第3及び第5のバルブを閉鎖した状態で、前記第4及び第6のバルブを開放し、エアーを前記第2の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第2の排水・排気管へ強制通気させる第4の通気手順と、
前記第3、第4及び第6のバルブを閉鎖した状態で、前記第2のバルブを開放すると共に前記第5のバルブの開閉を連続的に所定回数繰り返し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第3の排水・排気管へ振動的に強制通気させる第5の通気手順と、
前記下蓋開閉手段で前記下蓋を前記ろ過管の下側を開放させて、前記ろ過管内にある前記被脱水物の脱水後のケーキを下方へ落下させるケーキ排出手順と
を有することを特徴とする脱水方法。
【請求項7】
請求項に記載の脱水装置において、
前記下蓋開閉手段で前記下蓋を前記ろ過管の下側に押圧させてロックし、前記第1のバルブを開放させた状態で、スラリー状乃至スラッジ状の前記被脱水物を前記連結管から前記ろ過管内に取り込み、その取り込み後に前記第1のバルブを閉鎖する被脱水物の取込手順と、
前記第3、第4、第6及び第7のバルブを閉鎖した状態で、前記第2及び第5のバルブを開放し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第3の排水・排気管へ強制通気させる第1の通気手順と、
前記第2、第4、第5及び第7のバルブを閉鎖した状態で、前記第3及び第6のバルブを開放し、エアーを前記第2の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第1の排水・排気管へ強制通気させる第2の通気手順と、
前記第3、第5、第6及び第7のバルブを閉鎖した状態で、前記第2及び第4のバルブを開放し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第2の排水・排気管へ強制通気させる第3の通気手順と、
前記第2、第3、第5及び第7のバルブを閉鎖した状態で、前記第4及び第6のバルブを開放し、エアーを前記第2の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第2の排水・排気管へ強制通気させる第4の通気手順と、
前記第3、第4、第6及び第7のバルブを閉鎖した状態で、前記第2のバルブを開放すると共に前記第5のバルブの開閉を連続的に所定回数繰り返し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第3の排水・排気管へ振動的に強制通気させる第5の通気手順と、
前記第4の通気手順と第5の通気手順の間又は前記第5の通気手順の後に実行され、前記第2、第3、第4及び第6のバルブを閉鎖した状態で、第5のバルブを開放すると共に前記第7のバルブの開閉を連続的に所定回数繰り返し、エアーを前記第3の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第3の排水・排気管へ振動的に強制通気させる第6の通気手順と、
前記下蓋開閉手段で前記下蓋を前記ろ過管の下側を開放させて、前記ろ過管内にある前記被脱水物の脱水後のケーキを下方へ落下させるケーキ排出手順と
を有することを特徴とする脱水方法。
【請求項8】
請求項又は請求項の脱水方法における前記第1の通気手順において、前記第3の排水・排気管から水の吐出がなくなったことを、前記第2の通気手順への移行条件とした脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業排水のろ過機に直結されて、ろ過により得られる懸濁物質のスラリー乃至スラッジを脱水してケーキ化する脱水装置及び脱水方法に係り、特にサイクロン式ろ過機に連結させる脱水装置として好適な構成及び手順に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界では様々な分野でろ過機が用いられているが、例えば、プリント配線基板の研磨排水から銅を回収する場合や研削クーラント液・ホーニング液から研磨剤を除去する場合のろ過においては、サイクロン式ろ過機が用いられていることが多い。例えば、プリント配線基板の研磨排水のろ過に関しては下記特許文献1(第17頁、段落[0093])に、研削クーラント液のろ過に関しては下記特許文献1〜3などに記載されている。
【0003】
これは、サイクロン式ろ過機が流入液体の旋回力により生じる遠心力を利用して固液分離を促進させるものであって、325メッシュ以下の懸濁粒子の分級・捕集・濃縮に適用できると共に、構造が簡単で処理能力が大きく、また据付面積も小さいという特長から、前記の各種懸濁液を前濃縮するのに適していることによる。
【0004】
ところで、サイクロン式ろ過機はその円錐部の下側開口部から懸濁液(原水)を濃縮したスラリーを排出させるが、これを脱水して懸濁物質である銅や研磨剤等をケーキ化する必要がある。
そして、その脱水方式については、下記特許文献3〜5に示されているように、排出されたスラリーを一旦貯留槽に入れて懸濁物質を沈降分離させ、沈殿した懸濁物質のスラッジを取り出して、フィルタープレスに代表される加圧脱水方式、ベルトフィルターなどによる真空脱水方式又は回転ドラムを用いた遠心脱水方式などで懸濁物質をケーキ化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−038205号公報
【特許文献2】特開2003−210908号公報
【特許文献3】特開2003−275938号公報
【特許文献4】特開2008−289994号公報
【特許文献5】特開2009−045562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のようにサイクロン式ろ過機は処理能力の割に設置面積が小さいという特長を有している。
しかしながら、特許文献3〜5における実施例の各図からも明らかなように、サイクロン式ろ過機の据付面積は小さいものの、ろ過後のスラリーの貯留槽の設置面積が相対的にかなり大きなものとなる。
また、沈殿した懸濁物質の掻き出し機構や脱水ろ過ベルト機構、更には脱水装置まで含んだ一般的なろ過・脱水システム全体でみると、サイクロン式ろ過機以外の装置の設置規模が圧倒的に大きくなっている。
【0007】
そこで、本発明は、サイクロン式ろ過機に直結して、濃縮されたスラリー状の懸濁物質を直接取り込んで脱水・ケーキ化することが可能な脱水装置及び脱水方法を提供し、もって小規模で高効率なろ過・脱水システムを実現することを目的として創作された。
なお、本発明は、サイクロン式ろ過機への対応だけでなく、スラリーの貯留層などで分離されたスラッジ状の懸濁物質を取り込んで脱水・ケーキ化するような用途への適用も可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の発明はすべて通気脱水方式による脱水装置及び脱水方法に係る。
本願の請求項1の発明は、直管と多数の孔が穿設されたテーパー管とが上下に同軸状に連結し、前記テーパー管部分の内面にろ布を被着させると共に、前記テーパー管部分の下端開口部に外向きフランジを設けたろ過管と、下部を開口させた箱体であり、上部では前記ろ過管の上端開口部の周囲を封止し、下部の開口端に設けた外向きフランジと前記ろ過管の前記外向きフランジとの間が環状シール部材で周回封止されて、前記ろ過管の外周空間を包囲するハウジングと、前記ろ過管の上端開口部に前記ハウジングの外側へ向けて連結されている連結管と、前記ろ過管の下側を密閉/開放する蓋体であり、前記ろ過管の前記外向きフランジと対向する領域には環状シール部材が取り付けられ、前記ろ過管の前記テーパー管部分の下端開口部に対向する領域には通水層を介してろ布が展着されている下蓋と、前記下蓋を回動又は移動させることにより前記ろ過管の下側を開閉せしめ、その閉状態においては前記下蓋を前記ろ過管の下側に押圧させてロックする下蓋開閉手段とを具備し、前記連結管の上端に、スラリー状乃至スラッジ状の被脱水物を前記ろ過管内へ投入する際に開放され、前記被脱水物の脱水処理時に閉鎖される第1のバルブを設けると共に、前記連結管の管内に第2のバルブで開閉される第1の送気管と第3のバルブで開閉される第1の排水・排気管を連通させ、前記ハウジングが包囲した前記ろ過管の外周空間における前記ろ過管の前記外向きフランジの近傍に第4のバルブで開閉される第2の排水・排気管を連通させ、前記下蓋の前記通水層に第5のバルブで開閉される第3の排水・排気管と第6のバルブで開閉される第2の送気管を連通させたことを特徴とする脱水装置に係る。
また、本願の請求項2の発明は、前記請求項1の発明に係るろ過管を、「多数の孔が穿設されたテーパー管の内面にろ布を被着させると共に、前記テーパー管の下端開口部に外向きフランジを設けたろ過管」としたものであり、直管部分が存在しないため、「下蓋」の記載において、請求項1の発明で「前記ろ過管の前記テーパー管部分の下端開口部」となっている記載は、「前記ろ過管の下端開口部」となる。
これらの発明によれば、各バルブを適宜開閉制御することにより、ろ過管内に取り込まれたスラリー状乃至スラッジ状の被脱水物に対して、上側から下側へ、下側から上側へ、上側から側方(テーパー面)へ、下側から側方(テーパー面)へ、それぞれ強制通気することが可能である。
したがって、ろ布を介して水分を外部へ排出しながら被脱水物の内部に微細な通気路を縦横に形成することができ、被脱水物を効率的に脱水・乾燥してケーキ化できる。
また、ろ過管は逆漏斗上の管体又はテーパー管自体の形態をなしていることから、被脱水物のケーキは下蓋開閉手段が下蓋を開放するだけでろ過管から容易に剥離して下方へ落下する。
【0009】
本願の請求項3及び請求項4の発明は、前記請求項1及び請求項2の発明におけるハウジングと下蓋の構成が異なった脱水装置に係り、「ハウジング」に関しては『下部を開口させた箱体であり、上部では前記ろ過管の上端開口部の周囲を封止し、下部の開口端に設けた外向きフランジで前記ろ過管の前記外向きフランジを内嵌固定することにより、前記ろ過管の外周空間を包囲するハウジング』とし、また「下蓋」に関しては『前記ろ過管の下側を密閉/開放する蓋体であり、前記ろ過管の前記外向きフランジと前記ハウジングの前記外向きフランジとの嵌合境界部に対向する領域には環状シール部材が取り付けられ、前記ろ過管の前記テーパー管部分の下端開口部(請求項4では「前記ろ過管の下端開口部」)と対向する領域には通水層を介してろ布が展着されている下蓋』としたものである。
前記請求項1及び請求項2の発明ではハウジングによってろ過管の外周空間が密封されているが、この請求項3及び請求項4の発明では、ハウジングの外向きフランジがろ過管の外向きフランジを内嵌させているだけであってシールがなされていないため、そのままでは完全な密封包囲が実現できていない。
しかし、下蓋開閉手段によって下蓋がろ過管の下側に押圧・ロックせしめられた状態では、下蓋側の環状シール部材によって嵌合境界部が封止されるため、通気脱水を実行する際には、ろ過管の外周空間は密封されていることになる。
換言すれば、前記請求項1及び請求項2の発明では2つの環状シール部材が必要になるのに対して、この請求項3及び請求項4の発明では下蓋側に単一の環状シール部材を取り付けておくだけで足りる。
【0010】
本願の請求項の発明は、前記請求項1乃至4の発明において、前記ハウジングが包囲した前記ろ過管の外周空間に対して第7のバルブで開閉される第3の送気管を連通させた脱水装置に係る。
この発明によれば、ろ過管内の被脱水物に対して側方(テーパー面)から下側への強制通気も可能になり、通気脱水の効率を向上させると共に、テーパー面でのケーキの剥離条件を良好にする上で有効である。
【0011】
本願の請求項の発明は、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の脱水装置において、前記下蓋開閉手段で前記下蓋を前記ろ過管の下側に押圧させてロックし、前記第1のバルブを開放させた状態で、スラリー状乃至スラッジ状の前記被脱水物を前記連結管から前記ろ過管内に取り込み、その取り込み後に前記第1のバルブを閉鎖する被脱水物の取込手順と、前記第3、第4及び第6のバルブを閉鎖した状態で、前記第2及び第5のバルブを開放し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第3の排水・排気管へ強制通気させる第1の通気手順と、前記第2、第4及び第5のバルブを閉鎖した状態で、前記第3及び第6のバルブを開放し、エアーを前記第2の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第1の排水・排気管へ強制通気させる第2の通気手順と、前記第3、第5及び第6のバルブを閉鎖した状態で、前記第2及び第4のバルブを開放し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第2の排水・排気管へ強制通気させる第3の通気手順と、前記第2、第3及び第5のバルブを閉鎖した状態で、前記第4及び第6のバルブを開放し、エアーを前記第2の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第2の排水・排気管へ強制通気させる第4の通気手順と、前記第3、第4及び第6のバルブを閉鎖した状態で、前記第2のバルブを開放すると共に前記第5のバルブの開閉を連続的に所定回数繰り返し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第3の排水・排気管へ振動的に強制通気させる第5の通気手順と、前記下蓋開閉手段で前記下蓋を前記ろ過管の下側を開放させて、前記ろ過管内にある前記被脱水物の脱水後のケーキを下方へ落下させるケーキ排出手順とを有することを特徴とする脱水方法に係る。
この発明によれば、第1乃至第5の通気手順を実行することにより、前記請求項1の発明においても説明したように、ろ過管内の被脱水物に対してそれぞれ異なる方向と経路による通気脱水を行って、被脱水物をより効率的にケーキ化できる。
なお、第5の通気手順で第5のバルブの開閉を繰り返させているのは、振動的な強制通気によって脱水が進行してケーキ化した被脱水物と下蓋側のろ布との剥離を良好にするためである。
【0012】
本願の請求項の発明は、請求項に記載の脱水装置において、前記下蓋開閉手段で前記下蓋を前記ろ過管の下側に押圧させてロックし、前記第1のバルブを開放させた状態で、スラリー状乃至スラッジ状の前記被脱水物を前記連結管から前記ろ過管内に取り込み、その取り込み後に前記第1のバルブを閉鎖する被脱水物の取込手順と、前記第3、第4、第6及び第7のバルブを閉鎖した状態で、前記第2及び第5のバルブを開放し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第3の排水・排気管へ強制通気させる第1の通気手順と、前記第2、第4、第5及び第7のバルブを閉鎖した状態で、前記第3及び第6のバルブを開放し、エアーを前記第2の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第1の排水・排気管へ強制通気させる第2の通気手順と、前記第3、第5、第6及び第7のバルブを閉鎖した状態で、前記第2及び第4のバルブを開放し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第2の排水・排気管へ強制通気させる第3の通気手順と、前記第2、第3、第5及び第7のバルブを閉鎖した状態で、前記第4及び第6のバルブを開放し、エアーを前記第2の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第2の排水・排気管へ強制通気させる第4の通気手順と、前記第3、第4、第6及び第7のバルブを閉鎖した状態で、前記第2のバルブを開放すると共に前記第5のバルブの開閉を連続的に所定回数繰り返し、エアーを前記第1の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第3の排水・排気管へ振動的に強制通気させる第5の通気手順と、前記第4の通気手順と第5の通気手順の間又は前記第5の通気手順の後に実行され、前記第2、第3、第4及び第6のバルブを閉鎖した状態で、第5のバルブを開放すると共に前記第7のバルブの開閉を連続的に所定回数繰り返し、エアーを前記第3の送気管から前記ろ過管内の前記被脱水物内を通じて前記第3の排水・排気管へ振動的に強制通気させる第6の通気手順と、前記下蓋開閉手段で前記下蓋を前記ろ過管の下側を開放させて、前記ろ過管内にある前記被脱水物の脱水後のケーキを下方へ落下させるケーキ排出手順とを有することを特徴とする脱水方法に係る。
前記請求項の脱水装置では、前記ハウジングの包囲空間に対して第7のバルブで開閉される第3の送気管を連通させており、この請求項の発明においては、被脱水物の取込手順とケーキ排出手順は前記請求項の場合と同様であるが、第7のバルブの制御と同バルブを用いた第3の送気管による通気手順が加わっている。すなわち、第7のバルブは第6の通気手順においてのみ開放され、他の通気手順では閉鎖されており、第6の通気手順でろ過管内の被脱水物に対して側方(テーパー面)から下側への振動的な強制通気を行うようになっている。
通気脱水の効果をさらに促進すると共に、第5の通気手順で被脱水物のケーキと下蓋のろ布との剥離が良好になっているのに加えて、テーパー面のろ布との剥離が良くなり、ケーキの安定的な自然落下に資することになる。
【0013】
本願の請求項の発明は、請求項又は請求項の脱水方法における前記第1の通気手順において、前記第3の排水・排気管から水の吐出がなくなったことを、前記第2の通気手順への移行条件とした脱水方法に係る。
第1の通気手順の実行段階では、被脱水物に多くの水分が含まれているため、後の通気手順よりも通気過程での脱離水が多く、またこの手順では、被脱水物がスラリー状であった場合にはスラッジ状態まで脱水して、その内部に細かい通気路を形成することになるため、第1の通気手順の実行時間の目安として前記条件を採用することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の脱水装置及び脱水方法によれば、スラリー状乃至スラッジ状の被脱水物をろ過管に取り込んで、異なる通気経路を順次構成して被脱水物の内部に細かい通気路を形成しながら通気脱水を行うため、高効率な脱水が実現でき、下蓋の開放によりそのまま被脱水物のケーキを落下・放出させることができる。
また、本発明では、下側へ拡がったテーパー部の内側に錐台状のケーキが形成され、また通気脱水の過程でろ過管のテーパー部や下蓋に展着されているろ布とケーキとの良好な剥離性を実現できることから、下蓋を開放するだけでケーキはろ過管内に付着することなく確実に落下させることができる。
なお、本発明の脱水装置は、簡単な構成で据付面積も小さいことからサイクロン式ろ過機に直結させて利用するのに適しているが、沈降ろ過方式の貯留槽から沈殿した懸濁物質のスラッジ乃至スラリーを直接受け入れて脱水・ケーキ化するような利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る脱水装置を用いたろ過・脱水システムのフローシートである。
図2】脱水装置の構造を示す断面図である。
図3】ろ過・脱水システムの動作フローチャートである。
図4】逆洗手順に係るフローチャートである。
図5】脱水手順に係るフローチャートである。
図6】通気手順(A)における通気状態と各バルブの開閉を示す脱水装置の概略図である。
図7】通気手順(B)における通気状態と各バルブの開閉を示す脱水装置の概略図である。
図8】通気手順(C)における通気状態と各バルブの開閉を示す脱水装置の概略図である。
図9】通気手順(D)における通気状態と各バルブの開閉を示す脱水装置の概略図である。
図10】通気手順(E)における通気状態と各バルブの開閉を示す脱水装置の概略図である。
図11】下蓋が開放された状態を示す脱水装置の断面図である。
図12】通気手順(E)の前又は後に実行される通気手順(F)における通気状態と各バルブの開閉を示す脱水装置の概略図である。
図13】他の実施例の下蓋開閉手段における下蓋の回動駆動機構図(A)と、ろ過管に対する下蓋の押圧・ロック機構図(B),(C)である。ただし、(B)は押圧・ロック状態、(C)はその解除状態を示す。
図14】他の実施例の下蓋開閉手段(垂直・水平駆動)の下蓋の動作状態を示す図である。
図15】ろ過管がテーパー管のみで構成されている実施例に係る脱水装置の断面図である。
図16】1台のろ過機に対して本発明の実施例に係る脱水装置を2台接続させて利用する場合の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の脱水装置及び脱水方法に係る実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
先ず、図1は、懸濁液原水をサイクロンろ過機で濃縮したスラリーを本発明の脱水装置で脱水・ケーキ化するろ過・脱水システムのフローシートであり、1はサイクロンろ過機、2は脱水装置本体、3は懸濁液を貯留した原水槽、4は撹拌機である。
また、同図において、V1,V2,V4,V9,V10,V11,V12,V13,V14,V16,V17はグローブバルブ、V3,V6,V7,V8,V15はゲートバルブ、V5はコックバルブ、C1,C2,C3はチェックバルブ、RVは減圧バルブ、Pはポンプ、F1,F2は流量計、M1,M2,M3は圧力計であり、実線で示す管路は水系管路を、点線で示す管路は空気系管路である。
【0017】
そして、脱水装置本体2はサイクロンろ過機1の下側開口部に直結されているが、図2に示すような構成を有している。
同図において、21は逆漏斗状の形態をなしたろ過管であり、直管(円管)22と多数の孔23aが穿設されているテーパー管23とが上下に同軸状に連結されている。
また、テーパー管23の内壁面にはろ布24が被着されていると共に、テーパー管23の下端の開口部には外向きフランジ25が、直管22の上端の開口部にも外向きフランジ26がそれぞれ付設されている。
【0018】
一方、31はハウジングであって、下部が開口された円筒状箱体としての形態を有し、円筒32の上部の端板33にはろ過管21の直管22の内径に相当する孔が形成されており、下部の開口端には外向きフランジ34が付設されている。
【0019】
そして、外向きフランジ34の下面の内周側には、ろ過管21の外向きフランジ25を内嵌させる周回段差35が形成されており、その深さはろ過管21の外向きフランジ25の厚み分に相当している。
また、ろ過管21の外向きフランジ25はハウジング31の外向きフランジ34に対して内嵌した状態でその外向きフランジ34へネジ止めされている。
一方、ろ過管21の直管22に付設されている外向きフランジ26は環状シール部材36を介してハウジング31の端板33の下側面に押圧せしめられ、その結果、ろ過管21における直管22の上側開口部の周囲がハウジング31との関係で周回封止されている。
【0020】
次に、41は連結管であって、その下側端部がハウジング31の端板33の孔に封止溶接されており、その結果、連結管41はろ過管21の上側開口部に連通接続された構成になっている。
なお、連結管41はろ過管21に連通していればよく、ろ過管21における直管22の部分がハウジング31の外側まで延長されて連結管41を構成するような形態であってもよい。
また、この連結管41の上側端部にはコックバルブV5の取り付け用の外向きフランジ42が設けられており、この実施例においては、サイクロンろ過機1の下側に設けた外向きフランジ1aと前記外向きフランジ42の間にコックバルブV5を介装してボルトで挟着固定してある。
【0021】
そして、ろ過管21の下側は下蓋51によって密閉/開放できるようになっている。
この下蓋51におけるろ過管21の外向きフランジ25とハウジング31の外向きフランジ34とで構成される環状の下側面に対向する領域(少なくとも各外向きフランジ25,34の嵌合境界部を含む)には環状シール部材52が取り付けられていると共に、ろ過管21の下側(テーパー管23の下端開口部)に対向する領域には、金網で構成した通水層53を介してろ布54が展着されている。
ただし、この実施例では、環状シール部材52が下蓋51に対してねじ止めされているが、ろ布54の周縁部分は環状シール部材52によって下蓋51に挟圧固定されている。
【0022】
前記のとおり、下蓋51はろ過管21の下側を密閉/開放する蓋体であるが、その作動機構としては、回動方式のものであれば図2に示すような機構が適用できる。
先ず、下蓋51とハウジング31の外向きフランジ34とが外周部分の一箇所でヒンジ機構61によって連結されており、これによって下蓋51はヒンジ軸を中心に回動自在に支持されている。
【0023】
したがって、下蓋51によってろ過管21の下側を開閉できるが、図2に示すように閉鎖した状態においては、下蓋51における中央領域に通水層53を介して展着されているろ布54がテーパー管23の下端開口部に対向すると共に、環状シール部材52がろ過管21の外向きフランジ25とハウジング31の外向きフランジ34とで構成される環状の下側面に対向して当接するため、各外向きフランジ25,34の嵌合面に隙間があっても環状シール部材52によって封止され、これによってハウジング31内は下蓋51によって密封されることになる。
すなわち、ろ過管21の外向きフランジ25とハウジング31の外向きフランジ34との間にシール部材が施されていなくとも、下蓋51側の環状シール部材52だけで完全な密封が実現できている。
【0024】
そして、その下蓋51の閉鎖密封状態において、下蓋51をろ過管21側へ押圧・ロックさせるための機構が設けられている。
具体的には、ハウジング31の外向きフランジ34における前記ヒンジ機構61の位置とは反対側の外周面に係合レバー機構62が付設されている。
この係合レバー機構62は、フック環63で下蓋51側の対応位置に形成されている係合突起64を引っ掛けて、レバー65を立てることにより下蓋51を上側へ強力に引き寄せ、ヒンジ機構61を支点として下蓋51全体がろ過管21の下側に押圧せしめられた状態でロックさせる。
なお、この係合レバー機構62と係合突起64は、下蓋51の押圧力が十分でない場合には、図2に示すような位置だけでなく、周方向へ均等になるように複数個設けるようにしてもよい。
【0025】
次に、脱水装置本体2に対する管路とバルブの接続(図1及び図2)について説明する。
ただし、以下では、V1〜V17について、グローブ/ゲート/コックの種別に関わりなく単に“バルブ”という。
(1) 連結管41の上側端部にバルブV5が取り付けられており、脱水装置本体2がそのコックバルブV5を介してサイクロンろ過機1の下側開口部に直結せしめられていることは上記のとおりである。
(2) 連結管41に対しては側方から接続管71が連通せしめられており、その接続管71に対しては、バルブV9で開閉される送気管72と、バルブV13で開閉される排水・排気管73(図2では図示せず)が二股接続されている。なお、この実施例では接続管71に対する二股接続になっているが、送気管72と排水・排気管73がそれぞれ独立に連結管41に連通している方式であってもよい。
(3) バルブV11で開閉される排水・排気管74が、ハウジング31が包囲しているろ過管21の外周空間37における外向きフランジ25の近傍に連通するように、ハウジング31の円筒32に貫設されている。
(4) 下蓋51の下面側から通水層53へ接続管75が連通せしめられており、その接続管75に対しては、バルブV14で開閉される排水・排気管76と、バルブV12で開閉される送気管77が二股接続されている。なお、この実施例では接続管75に対する二股接続になっているが、排水・排気管76と送気管77がそれぞれ独立に通水層53に連通している方式であってもよい。
(5) バルブV10で開閉される送気管78が、ハウジング31が包囲したろ過管21の外周空間37に連通するように、ハウジング31の円筒32に貫設されている。
【0026】
この実施例に係るろ過・脱水システムは、以上の図1及び図2に示した構成に基づいて、図3のフローチャートに示すように動作する。
先ず、攪拌機4の運転を開始させてポンプPを起動させる(S1,S2)。
そして、バルブV1,V2,V3,V4,V5,V11,V14を全開状態にして、サイクロンろ過機1と脱水装置2による循環運転が開始され、適宜、流量計F1の計測値を確認してバルブV2によりサイクロンろ過機1への懸濁液の流入流量が調整される(S3)。
なお、この段階における他のバルブの開閉設定については、V8が全開状態、V16,V17はそれぞれメータM1,M2に合せて調整された開状態、V6,V7,V9,V10,V12,V13は閉状態とされている。
【0027】
前記の循環運転においては、原水槽3の懸濁液はポンプPによってサイクロンろ過機1の原水供給口11から所定の流速でシリンダ内壁の接線方向へ流入せしめられ、シリンダ内壁に沿って螺旋状に旋回しながら下降し、その過程で液中の懸濁物質が遠心力によってシリンダ内壁へ押しやられ、その作用によって濃縮生成された懸濁物質のスラリーがシリンダの内壁面に沿って下降し、さらにバルブV5を通じて脱水装置本体2のろ過管21内に流入する(S3)。
【0028】
したがって、脱水装置本体2のろ過管21には連続的に懸濁物質のスラリーが取り込まれてゆくことになるが、スラリーはテーパー管23の内壁面のろ布24によってろ過され、ろ過による脱離水をテーパー管23の多数の孔23aからハウジング31で包囲されたろ過管21の外周空間37へ流出させ、さらに脱離水は排水・排気管74を通じて原水槽3へ戻される(S3)。
また、スラリーは下蓋51のろ布54によってもろ過されて、その脱離水は通水層53から接続管75と排水・排気管76を通じて原水槽3へ戻される(S3)。
したがって、テーパー管23のろ布24と下蓋51のろ布54で囲まれた室内には、ろ過による懸濁物質の濃縮スラリーが生成されて残留することになる(S3)。
【0029】
一方、サイクロンろ過機1では、遠心分離による前記濃縮スラリーの生成によって、シリンダの中心軸付近には懸濁物質が分離された後のクリーン液が生じるが、そのクリーン液はシリンダ内の中心軸付近を上昇し、ろ布を施したフィルター12を通じて排出口13からろ過水として排水され、このろ過水は放水されることになる(S3)。
したがって、この実施例に係るろ過・脱水システムでは、循環運転が継続的になされることによって、脱水装置本体2のろ過管21には懸濁物質の濃縮スラリーが蓄積されてゆくと共に、原水槽3の懸濁液の量は減少してゆくため、システムが連続運転している状態では、適宜原水槽3の液量を確認しながら原水を供給してゆく。
【0030】
ところで、循環運転が長期間継続すると、サイクロンろ過機1の排出口13からのろ過水の排水量が低下してゆく。
これは、サイクロンろ過機1においてシリンダ内の中心軸付近を上昇するクリーン液は懸濁物質を遠心分離した後の液体であるが、懸濁物質が完全に除去されている訳ではなく、フィルター12のろ布が細かい懸濁物質で目詰まりしてゆくからである
そのため、この実施例では、流量計F2からろ過水の排水量を確認し、それが所定流量以下になった場合に逆洗手順を実行させる(S4→S5)。
【0031】
この逆洗手順における動作は図4のフローチャートに示される。
先ず、ポンプPが停止されてサイクロンろ過機1への原水の供給が停止され、バルブV4を閉鎖すると共に、バルブ6を全開させることで、前記循環運転の状態ではろ過水の排水に用いた排出口13を逆洗のための通気口として用い、圧縮エアーを前記排出口13からシリンダ内へ吹き込む(S5-1,2)。
この段階では、バルブV5、V11及びV14は全開状態のままであり、バルブV7、V9、V13、V10及びV12は閉状態になっているため、圧縮エアーによって、サイクロンろ過機1のシリンダ内に充満している懸濁液と内壁面にあるスラリーは脱水装置本体2側へ強制的に下降せしめられ、脱水装置本体2では、押し込まれた懸濁液をテーパー管23のろ布24と下蓋51のろ布54でろ過し、ろ過後の脱離水はそれぞれ排水・排気管74,76を通じて原水槽3へ戻され、濃縮スラリーがテーパー管23のろ布24と下蓋51のろ布54で囲われた室に残留することは前記循環運転の状態と同様である。
なお、この段階で濃縮スラリーは未だ前記室に充満している訳ではなく、スペース的に余裕があることから、テーパー管23の上側区間におけるろ過により、排水・排気管74,76を通じた脱離水の戻しは比較的円滑に行える。
そして、その過程において、圧縮エアーはフィルター12のろ布を前記循環運転状態での水の流れとは逆方向へ流通し、ろ布に付着している細かい懸濁物質をフィルター12の内側から脱落させて逆洗が実行されることになる。
【0032】
次に、圧縮エアーによる逆洗であるため、一定時間後には懸濁液の水分の大部分が排水・排気管74,76を通じて排水され、排水・排気管74,76からはエアーのみが吐出される状態となるが、それが確認できると、バルブV5とバルブV6を閉鎖する(S5-3→S5-4)。
バルブV5とバルブV6が閉鎖されるとサイクロンろ過機1のシリンダは密閉状態となるが、圧縮エアーによる高圧が残存しているために、それまで閉鎖されていたバルブ15を除々に開放することにより、圧力計M1又はM2の値を確認しながらシリンダ内の圧力を大気圧まで戻す(S5-6)。
【0033】
そして、シリンダ内が大気圧になると、バルブ15を閉鎖し、バルブ4を全開にした後、ポンプPを再起動させる(S5-6→S5-7,S5-8)。
ポンプPの再起動があると、サイクロンろ過機1のシリンダには原水供給口11を通じて原水槽3から懸濁液が流入し、再びシリンダ内が下側から懸濁液で満たされてゆき、懸濁液の螺旋状の旋回流が形成される。
【0034】
その場合、シリンダ内で懸濁液の旋回とろ過作用が定常状態となったことは、シリンダの排出口13からバルブ4を通じて流れるろ過水の流量が所定以上となることで確認できる。
したがって、この実施例では、流量計F2の流量値が所定値以上になると、閉鎖していたバルブV5を全開状態へ戻してサイクロンろ過機1のシリンダと脱水装置本体2のろ過管21とを再び連通させる(S5-9→S5-10)。
以上の一連の逆洗手順により、サイクロンろ過機1のフィルター12の目詰まりは解消されて、円滑にもとの循環運転状態へ移行する。
【0035】
図3のフローチャートに戻って、逆洗手順の実行(S5)が完了すると、バルブV1,V2,V3,V4,V5,V11,V14の全開状態でサイクロンろ過機1と脱水装置本体2による前記循環運転が再開され、上記のろ過動作が継続的に実行される(S6)。
このようにして、前記循環運転を行いながら、サイクロンろ過機1からのろ過水の排水量を流量計F2で確認して、所定流量以下になったときに逆洗手順を実行させる動作を繰り返していると、当然に脱水装置本体2のろ過管21内で懸濁物質の濃縮スラリーが増大してゆき、テーパー管23の内部に充満するような状態になる。
【0036】
その結果、下蓋51のろ布54を通過して排水・排気管76から吐出される脱離水や、テーパー管23のろ布24を通過して排水・排気管74から吐出される脱離水の量が大きく減少する傾向が生じる。
この実施例では、その脱離水の減少傾向を原水槽3側で確認し、その水量が所定以下になると脱水手順を実行する(S7→S8)。
なお、前記確認は、目視確認によることとしても良いが、排水・排気管74に流量計を設けておき、流量が所定値以下になったときに脱水手順へ移行させるようにしてもよい。
【0037】
脱水手順での動作は図5のフローチャートに示される。
先ず、実質的な脱水手順へ移行する前に、この実施例では予め前記逆洗手順(図4)のステップS5-1からステップS5-7までを実行する(S8-1)。
すなわち、圧縮エアーにより、サイクロンろ過機1のフィルター12を逆洗しておくと共に、サイクロンろ過機1のシリンダと脱水装置本体2のろ過管21の中にある懸濁液を脱水装置本体2側で強制的にろ過して排水させる。
そして、この時点では、前記のようにテーパー管23のろ布24と下蓋51のろ布54で囲われた室に懸濁物質のスラリーが充満した状態になっている。
【0038】
実質的な脱水手順は次の通気手順(A)〜(E)で構成されている。
(A) バルブV10,V11,V12,V13を閉鎖した状態でバルブV9,V14を全開とし、図6に示すように、テーパー管23の内部のスラリーに対して圧縮エアーを上側から入れて下側へ通気させる(S8-2)。
この実施例では、脱水手順の前に逆洗手順のS5-1からS5-7を実行しているため、ある程度の脱水が行われてスラリー乃至スラッジの状態にあるが、その中に含まれている水分が下蓋51のろ布54から通水層53へ押し出されると共に、内部に細かい通気路網を生成させる。
したがって、通気時間としては、バルブV14を配置した排水・排気管76から水が吐出しなくなるまでの時間を目安とする(S8-3)。
【0039】
(B) バルブV9,V10,V11,V14を閉鎖した状態でバルブV12,V13を全開とし、図7に示すように、テーパー管23の内部のスラリーに対して圧縮エアーを下側から入れて上側へ通気させる(S8-4)。
前記通気手順(A)で脱水は相当程度に進行しており、懸濁物質はほぼスラッジ状態にあるが、この通気手順は前記と逆方向の通気であり、内部にさらなる通気路網を生成させながら、水分を奪い去って含水率を低下させる。
したがって、懸濁物質に対応した通気時間が設定されており、その所定時間が経過することにより次の通気手順に移行する(S8-5)。
【0040】
(C) バルブV10,V12,V13,V14を閉鎖した状態でバルブV9,V11を全開とし、図8に示すように、テーパー管23の内部のスラッジに対して圧縮エアーを上側から入れて側方へ通気させる(S8-6)。
この手順では、前記通気手順(A)(B)により含水率の低下したスラッジの内部にさらに側方への通気路網を生成させ、特に前記通気手順(A)(B)では残留しがちなテーパー管23の内壁面近傍の水分をろ布24から孔23aを通じてろ過管21の外周空間37へ排出させる。
したがって、前記通気手順(B)と同様に、懸濁物質に対応して設定された所定時間が経過することにより次の通気手順に移行する(S8-7)。
【0041】
(D) バルブV9,V10,V13,V14を閉鎖した状態でバルブV11,V12を全開とし、図9に示すように、テーパー管23の内部のスラリーに対して圧縮エアーを下側から入れて側方へ通気させる(S8-8)。
この手順は、テーパー管23の内部のスラッジに対する圧縮エアーの入れ方が前記通気手順(C)の場合と上下逆になっているだけで、スラッジの内部にさらに側方への通気路網を生成させながら水分を奪ってケーキ化・乾燥を進行させる。
したがって、通気時間はテーパー管23の内部で所要含水率のケーキが得られる程度の通気時間に設定され、その時間の経過により次の通気手順へ移行する(S8-9)。
【0042】
(E) 図10に示すように、バルブV10,V11,V12,V13を閉鎖した状態でバルブV9を全開とし、バルブ14の開/閉を一定時間繰り返す(S8-10)。
この手順での通気方向については前記通気手順(A)の場合と同一であるが、前記通気手順(A)〜(D)でケーキ化した懸濁物質は下蓋51のろ布54に付着して剥離性が悪くなっていることが多いため、バルブ14の開/閉によって振動的通気状態とすることにより付着部分に多数の細かい亀裂を生じさせて前記剥離性を良好なものにしておく。
したがって、バルブ14の開/閉の繰り返し回数や時間は懸濁物質とろ布54の選択条件によって定められ、その所定時間の経過によりケーキ80の排出手順へ移行する(S8-11)。
【0043】
次に、ケーキの排出手順では、図11に示すように、下蓋51を開放させてテーパー管23の内部にある懸濁物質のケーキを落下させる(S8-12)。
具体的には、係合レバー機構62のレバー65を側方へ倒すと、下蓋51側の係合突起64に対するフック環63の係止が解除され、下蓋51がヒンジ機構61の軸を中心に回転してろ過管21の下側が開放される。
この場合、テーパー管23の内壁面が下側に拡がった傾斜面であり、前記通気手順(E)により下蓋51のろ布54とテーパー管23の内部のケーキ80との間の剥離性は良好なものになっているため、図11に示すように、ケーキ80は下蓋51に付着することなく自重で自然落下する。
【0044】
ところで、ケーキ80はテーパー管23の内壁のろ布24に対しても付着している。
前記のように、テーパー管23が下開きの傾斜面になっているため、通常は下蓋51が開放されるとケーキ80はその自重によって自然落下するが、懸濁物質やろ布24の条件によっては付着力が大きくなることもあり、円滑に落下しないような場合もある。
この問題については、図12に示すように、バルブV9,V11,V12,V13を閉鎖した状態でバルブV14を全開とし、バルブ10の開/閉を所定回数繰り返すようにした通気手順(F)を実行し、ケーキ80とテーパー管23のろ布24との剥離性を高めることで解消できる。
なお、この通気手順(F)は、前記通気手順(E)の前又は後のいずれに実行してもよい。
【0045】
ここで、再び図3に戻って、以上の脱水手順(S8)を終了した後、上記のろ過・脱水処理を再度継続して実行する場合には、ステップS2に戻ってポンプPを再起動し、バルブV1,V2,V3,V4,V5,V11,V14を全開にしてサイクロンろ過機1と脱水装置による循環運転を再開させ、以降の逆洗・脱水処理を含むステップS2〜S8の手順を実行し、ろ過・脱水システムを停止させるまでそれを繰り返すことになる(S9→S2〜S9,S9→S10)。
【0046】
この実施例における下蓋開閉手段は、図2に示したように、ヒンジ機構61により下蓋51をハウジング31の外向きフランジ34に対して回動自在に取り付けると共に、ハウジング31の外向きフランジ34に設けた係合レバー機構62と下蓋51側に設けた係合突起64により下蓋51をろ過管21の下側に押圧・ロックさせる手動方式を採用している。
【0047】
これは、上記実施例に係るろ過・脱水システムが実験機に近いものであるために手動方式を採用しているのであり、ポンプPの駆動/停止の制御やバルブを電磁バルブとして開閉制御を行うようにすれば、当然にシステム全体の自動化が図れ、その場合の下蓋開閉手段の具体的方式としては、図13に示すような下蓋51の回動駆動機構と開閉・ロック機構が適用できる。
【0048】
先ず、下蓋51の回動駆動機構として、図13(A)のように、下蓋51とハウジング31の外向きフランジ34とを外周部分の一箇所でヒンジ機構91によって連結する。
そして、ヒンジ機構91の軸92はハウジング31の外向きフランジ34側に形成されている軸受け部34aによって軸支されていると共に、下蓋51はヒンジ機構91の軸92と一体で回動し、且つその軸92がウォームホィール93の軸として電動モータ94で駆動されるウォーム95によって回動せしめられるウォーム減速駆動方式になっている。
【0049】
一方、開閉・ロック機構としては、ハウジング31の外向きフランジ34の外周部におけるヒンジ機構91の位置と反対側の位置には、エアシリンダ96の駆動力で回動するカム機構97が設けられている。
なお、カム機構97は、ヒンジ機構91の位置を基準として、周方向を均等に分割した複数位置に設けるようにしてもよい。
図13(B)は、下蓋51がろ過管21の下側を閉鎖して押圧・ロックをかけた状態を示し、エアシリンダ96がロッド98を突き出すとカム97aが回転し、カム97aの先端部分で下蓋51の周縁部を係合して外向きフランジ34側へ押圧・ロックさせている。
図13(C)は、下蓋51の押圧・ロックが解除された状態を示し、エアシリンダ96がロッド98を後退させてカム97aを逆回転させ、カム97aの先端部分が下蓋51の周縁部から解除されている。
【0050】
したがって、回動駆動機構により下蓋51を図13(B)の位置に回転させた状態で開閉・ロック機構によりろ過管21の下側に押圧・ロックし、前記脱水手順の最終段階で回動駆動機構が下蓋51を図13(C)のようにろ過管21の下側を開放するように回転させてケーキ80を落下させることになる。
【0051】
下蓋開閉手段の実施例については、図14に示すように、下蓋51を垂直方向と水平方向へ移動させる駆動方式を採用してもよく、その場合、垂直方向の移動に関してはエアシリンダを原動力とするクランク機構を介した駆動とし、水平方向への移動については電動モータを原動力とする水平搬送機構による駆動とすることが望ましい。
図14(A)は、一連の通気手順が終了した後のケーキ80の排出段階(図5:S8-12)において、エアシリンダを原動力とする押圧力で下蓋51がろ過管21の下側に押圧・ロックされていた状態から、エアシリンダを給気/排気を切り換えて押圧力を解除させることにより下蓋51を一定距離だけ下降させた段階を示す。
図14(B)は、前記状態から電動モータを駆動させて水平搬送機構によって下蓋51を水平方向へ移動させた段階を示す。
図14(C)は、電動モータの駆動を継続させて下蓋51をさらに大きく水平方向へ移動させ、ろ過管21の下側を開放させる位置まで搬送した段階を示す。
【0052】
図14(A)の段階では、ろ過管21のテーパー管23の内壁面が下側に拡がった傾斜面であることから、ケーキ80は自重によってろ布24から剥離して下蓋51と共に下降し、その状態から図14(B)のように下蓋51が水平方向へ移動せしめられると、ケーキ80がテーパー管23と係合した状態で、ケーキ80の下面と下蓋51側のろ布54とが剥離して摺接しながら下蓋51だけが移動する。
この場合、ケーキ80の下面と下蓋51側のろ布54とは予め前記通気手順(E)によって剥離性が良好なものになっているため、下蓋51の移動が妨げられるようなことはない。
そして、図14(C)の段階に至ると、ケーキ80は下蓋51の上面からずれて下方へ自然落下する。
【0053】
次に、ろ過管についての他の実施例として、上記(図2)のように直管22とテーパー管23とで構成されるものに限らず、図15に示すように、全体がテーパー管のみで構成されたろ過管100としてもよい。
ただし、図15において、図2と同様の符号が付されている部材・要素については、同一の部材・要素を示すものとし、ろ過管100以外については同一構成になっている。
【0054】
このろ過管100には、上記実施例のろ過管21におけるテーパー管23の部分と同様に、管壁全体に亘って多数の孔101の穿設されており、その内壁面全体にろ布102が被着されている。
また、このろ過管100の下端と下端には外向きフランジ103,104がそれぞれ付設されており、ハウジング31との間でシール機構を構成するようになっていることは上記実施例のろ過管21の場合と同様である。
【0055】
この実施例の脱水装置2'によると、ハウジング31内のろ過管100がすべてテーパー管になっていることで、より多くのスラリーを取り込んで通気脱水することが可能になり、固液分離性の良い懸濁物質のスラリーを対象とする場合には好適である。
ただし、通気手順(図5)を実行して下蓋51を開放する段階で、ケーキ81の量が上記実施例よりも多くなると共にテーパー部分の角度が浅くなるため、ろ過管100のろ布102とケーキ81の剥離性が悪くなる可能性がある。
この問題については、上記の通気手順(F)を実行して予めろ布102とケーキ81の剥離性を良くしておくことが有効である。
【0056】
なお、ろ過管21,100とハウジング31の間の封止について、上記実施例(図2及び図15)では、ろ過管21,100の外向きフランジ25,103とハウジング31の外向きフランジ34との間が封止されておらず、下蓋51がろ過管21,100の下側に押圧・ロックされた状態で下蓋51の環状シール部材52によって封止状態となる構成が採用されている。
下蓋51はケーキ80,81の排出時以外はろ過管21,100の下側に押圧・ロックされているため機能的には上記実施例の封止方式で問題はなく、むしろ単一の環状シール部材52だけで足りるという有利性はある。
しかし、ろ過管21,100の外向きフランジ25,103とハウジング31の外向きフランジ34との間を他の環状シール部材で独立に封止しておくという一般的な方式であってもよく、その場合には、下蓋51の環状シール部材52はろ過管21,100の外向きフランジ25,103とハウジング31の外向きフランジ34との嵌合境界部を覆う必要がなく、ろ過管21,100の外向きフランジ25,103と下蓋51の間だけを周回封止すればよい。
【0057】
この本発明の脱水装置及び脱水方法は、以上のように1台のサイクロンろ過機1に対して1台の脱水装置を接続させるだけでなく、図16に示すように、1台のサイクロンろ過機1に2台の脱水装置2a,2bを接続させて、ろ過機1と脱水装置2a又は2bによる循環運転手順(逆洗手順も含む)[図3のステップS2〜S7]と脱水装置2b又は2aによる脱水手順[図5のステップS8-2〜12]とを交互に実行させるような利用形態にしてもよい。
【0058】
すなわち、サイクロンろ過機1の下側管部が中心軸に対して左右へ30°傾斜した方向へ分岐せしめられ、各分岐管1a,1bに対して各脱水装置2a,2bがそれぞれ接続されている。
サイクロンろ過機1と各脱水装置2a,2bとの連通/遮断は各脱水装置2a,2bのバルブV5の開/閉によって行えるため、一方の脱水装置2a又は2bがサイクロンろ過機1と連通した循環運転手順(逆洗手順も含む)を実行してろ過管21内にスラリーを蓄積させてゆく過程で、他方の脱水装置2b又は2aがサイクロンろ過機1と遮断した状態で脱水手順を実行してスラリーをケーキ化するようにすれば、ろ過・脱水システムの合理的な運用が可能になり、稼動効率を大幅に向上させることができる。
【0059】
図16に示した本発明の脱水装置及び脱水方法の利用形態では、各脱水装置2a,2bの中心軸が垂直方向に対して30°傾斜していることになるが、各脱水装置2a,2bのろ過管21におけるテーパー管23の開き角度が30°であれば、脱水後のケーキ80が垂直方向へ落下することについて支障にはならない。
なお、この利用形態における各脱水装置2a,2bの下蓋51の開閉とロックについては、エアシリンダ111a,111bのロッドと下蓋51側に設けたスライダ・クランク機構112a,112bによって行うようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、通気脱水方式によりスラリー乃至スラッジを効率的にケーキ化する脱水装置及び脱水方法を提供し、プリント配線基板の研磨排水、研削クーラント液やホーニング液などの各種工業排水を対象とする固液分離処理に適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1…サイクロンろ過機、1a…外向きフランジ、2…脱水装置本体、2a,2b…脱水装置、3…原水槽、4…攪拌機、11…原水供給口、12…フィルター、13…排出口、21…ろ過管、22…直管、23…テーパー管、23a…孔、24…ろ布、25…外向きフランジ、26…外向きフランジ、31…ハウジング、32…円筒、33…端板、34…外向きフランジ、34a…軸受け部、35…周回段差、36…環状シール部材、37…ろ過管の外周空間、41…連結管、42…外向きフランジ、51…下蓋、52…環状シール部材、53…通水層、54…ろ布、61…ヒンジ機構、62…係合レバー機構、63…フック環、64…係合突起、65…レバー、71…接続管、72…送気管、73…排水・排気管、74…排水・排気管、75…接続管、76…排水・排気管、77…送気管、78…送気管、80…ケーキ、81…ケーキ、91…ヒンジ機構、92…軸、93…ウォームホイール、94…電動モータ、95…ウォーム、96…エアシリンダ、97…カム機構、97a…カム、100…ろ過管、101…孔、102…ろ布、103…外向きフランジ、104…外向きフランジ、111a,111b…エアシリンダ、112a,112b…スライダ・クランク機構、V1,V2,V4,V9,V10,V11,V12,V13,V14,V16,V17…グローブバルブ、V3,V6,V7,V8,V15…ゲートバルブ、V5…コックバルブ、C1,C2,C3…チェックバルブ、RV…減圧バルブ、P…ポンプ、F1,F2…流量計、M1,M2,M3…圧力計。
【要約】
【課題】サイクロンろ過機による濃縮スラリーは貯留槽で懸濁物質を沈降分離させた後、そのスラッジを脱水・ケーキ化しているが、貯留槽や脱水システムの設置面積が大きく、連続運転できずに処理効率が低い。
【解決手段】サイクロンろ過機1にバルブV5を介して脱水装置を連結させる。脱水装置本体2は、直管22とろ過壁(多数孔23aとろ布24)であるテーパー管23とを連結させたろ過管21と、ろ過管21の外周空間を覆うハウジング31と、ろ布54と通水層53を備えてろ過管21の下側を密閉/開放する下蓋51と、直管22に直結した連結管41とからなり、スラリーをろ過管21内に取り込み後、連結管41やハウジング31や下蓋51に接続された送気管72,77,78や排水・排気管73,74,76の開閉を制御してスラリーの通気脱水によるケーキ化を行い、下蓋51を開放してケーキを排出させる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16