(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186073
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】水車装置と該装置による発電方法
(51)【国際特許分類】
F03B 3/14 20060101AFI20170814BHJP
F03B 17/06 20060101ALI20170814BHJP
F03B 13/26 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
F03B3/14
F03B17/06
F03B13/26
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-507509(P2016-507509)
(86)(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公表番号】特表2016-514805(P2016-514805A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】NL2013000022
(87)【国際公開番号】WO2013154421
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】515282038
【氏名又は名称】オリオン コンサルタンシー アンド ディヴェロップメント ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】オリユ、ヤコブス ヨハネス
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06109863(US,A)
【文献】
国際公開第2010/004286(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/142523(WO,A2)
【文献】
実開昭54−182745(JP,U)
【文献】
英国特許出願公開第02237330(GB,A)
【文献】
特開2012−017729(JP,A)
【文献】
特開2006−125378(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1205661(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/14
F03B 13/26
F03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水中で使用される水車装置であって、
作動中に上流側に位置する給水範囲と、作動中に下流側に位置する排水範囲と、を備えた少なくとも1つの実質的に水平の流路を画定する水誘導手段と、
少なくとも2つのブレードホイールであって、それぞれが、作動中に実質的に流れ方向に垂直に向く回転シャフトと、流れ方向の運動成分で移動時は前記少なくとも1つの流路を通過する水に対して比較的高い抵抗係数を有し、流れ方向に逆らう運動成分で移動時は前記少なくとも1つの流路を通過する水に対して比較的低い抵抗係数を有するように設計された少なくとも3つのブレードと、を有する、前記流路内に前後に並んで設けられた少なくとも2つのブレードホイールと、
前記少なくとも1つのブレードホイールの前記回転シャフトの回転運動を永久磁石発電機に伝達する伝達手段と、を備え、
前記ブレードはそれぞれ、前記ブレードホイールの前記回転シャフトに少なくとも実質的に並行に延在する旋回軸を中心に旋回可能な薄板を備え、各薄板の前記旋回軸は、それぞれの薄板の一長辺上またはそれに隣接して位置しており、前記ブレードが流れに沿って移動する時は、前記薄板の旋回移動は制限手段によって阻止され、前記ブレードが流れ方向に逆らって移動する時は、前記薄板は自由に旋回でき、
前後に並んで配置されたブレードホイールは、互いに対向する方向に回転し、
前記旋回軸から前記旋回軸の反対側の先端に向かう前記薄板の断面であって、前記旋回軸に直交する前記薄板の断面は、収束するように設計されており、
前記給水範囲は、流入口によって画定され、少なくとも1つの流路の方向に収束する漏斗状であり、
前記流入口の側壁には水門開口が設けられており、
当該水車装置はさらに前記ブレードへの水圧あるいは前記ブレードの回転速度を測定するためのセンサを備え、当該センサからの信号に応じて前記水門開口が開閉されることを特徴とする水車装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの流路は、形状が前記少なくとも1つのブレードホイールで記載された範囲に対応する内壁を備えることを特徴とする請求項1に記載の水車装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの流路は、そこを通過する水を、前記少なくとも1つのブレードホイールの前記ブレードが前記流れに沿って移動する方向に誘導するように設計されていることを特徴とする請求項1または2に記載の水車装置。
【請求項4】
前記薄板のそれぞれは、前記制限手段によって課された制限に従いながら、前記関連する旋回軸を中心に自由に旋回可能であるように、それぞれのブレードに固定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の水車装置。
【請求項5】
ブレードは、前記ブレードホイールの半径の少なくとも50%の長さに亘って薄板を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水車装置。
【請求項6】
2つの相互に隣接する薄板の旋回軸間の距離は、前記2つの旋回軸のいずれかに付随する薄板の幅より小さいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水車装置。
【請求項7】
薄板の旋回軸は、隣接する薄板に対する制限手段を形成することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の水車装置。
【請求項8】
前記ブレードは、前記回転シャフトまわりに少なくとも実質的に一定の角度間隔で配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の水車装置。
【請求項9】
前記給水範囲は、前記水中に存在するあるサイズ以上の物や動物の前記水車装置への進入を防止するように設計された保護部材を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の水車装置。
【請求項10】
流れ方向で見た時に、前記保護部材は斜め上方に延在していることを特徴とする請求項9に記載の水車装置。
【請求項11】
前記水誘導手段、上部壁および下部壁によって画定され、従って前記流路を囲むハウジングを少なくとも備えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の水車装置。
【請求項12】
前記給水範囲と前記排水範囲はそれぞれ、流入口およびまたは流出口によって画定されることを特徴とする請求項11に記載の水車装置。
【請求項13】
2つ以上の流路がハウジング内に設けられていることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の水車装置。
【請求項14】
永久磁石発電機が収容される水密空間を備えることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の水車装置。
【請求項15】
積み重ねられた2つ以上のブレードホイールを備えることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の水車装置。
【請求項16】
互いに対向する2つの流れ方向で作動できることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の水車装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの流路が完全に水面下にある川や潮汐水などの水路での、請求項1から16のいずれかに記載の水車装置の使用。
【請求項18】
前記少なくとも1つの流路は、前記水路の底部からある距離離れて位置することを特徴とする請求項17に記載の水車装置の使用。
【請求項19】
前記水路の底部からの前記少なくとも1つの流路までの垂直距離は少なくとも50cmであることを特徴とする請求項17または18に記載の水車装置の使用。
【請求項20】
前記少なくとも1つの流路は、前記水路内で実質的に水平に向いていることを特徴とする請求項17から19のいずれかに記載の水車装置の使用。
【請求項21】
前記少なくとも1つの流路の流出口は、わずかに上方の方向に延在していることを特徴とする請求項17から20のいずれかに記載の水車装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、川や潮汐水などの流水で使用され、完全に水中に設置されて流水の力を電気エネルギーに変換できるように設計された水車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流水の力からの電気エネルギーの生成は既知である。このエネルギーの生成は、特に大きな落差がある所や大きなレベル差を人工的に作り出せる所では、興味深い選択肢である。しかしながら、落差が小さい場合でも、流水は、人間に有用なエネルギーへの変換に依然として活用し得る。しかしながら、既知の用途での欠点は、それが、流水の使用者(海運業など)のみならず、魚にも障害となることが多いことである。従って、こうした障害を最小化するために追加の設備が必要となる。
【0003】
米国特許出願第2008/0231057号には、流入口と流出口を備えた水平の流路と、ブレードホイールと、を有する水車装置が開示されている。ブレードホイールの外周には、ホイールにスプリングダンパー式に取り付けられたヒンジフラップが設けられており、これらのヒンジフラップは、流れに沿って移動時には比較的大きな抵抗を有し、流れに逆らって移動時には比較的小さな抵抗を有する。例えばベルト形態の伝達手段がさらに設けられており、ブレードホイールの回転運動を発電機に伝える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、既知の装置に比べて流水の力を電気エネルギーにより効率的に変換する、導入段落で定義した水車装置を提供することである。
【0005】
本発明によれば、この目的は、ブレードがそれぞれ、ブレードホイールの回転軸に少なくとも実質的に並行に延在する旋回軸を中心に旋回可能な薄板を備え、旋回軸は常に、それぞれの薄板の一長辺上またはそれに隣接して位置し、該ブレードが流れに沿って移動する時は、薄板の旋回移動は制限手段によって阻止され、該ブレードが流れ方向に逆らって移動する時は、薄板は自由に旋回可能である請求項1のプリアンブルに記載の水車装置によって達成される。本明細書において「方向」が言及される場合、それは常に、流れ方向に並行の、実質的に水平の流路を備える水車装置が水路内で配置される方向を指すものとする。本発明による水車装置は、完全に水中に配置されてもよく、従って、流水(本明細書では水路とも言う)の使用者、例えばボートや水泳者などには全くあるいはほとんど妨害にならない。水車装置は、深さが川の通行に支障をきたさない程十分に深い川などの水路の底部に配置されてもよい。水車装置は、十分な落差を確保したり、あるいは通路を狭める目的で、その全幅に亘って水路を堰き止める必要がない。作動中、水は、流入口を通過して少なくとも1つの流路内に入り、少なくとも1つのブレードホイールに沿って流れる。
【0006】
本発明によれば、ブレードホイールの薄板の旋回中心の物理的シャフトまたは仮想軸はそれぞれ、該薄板の長辺上またはそれに隣接して位置し、その結果、ブレードは原理的に羽根のように動いて、常に最小の抵抗を有する方向を探し求める。これは、流動媒体に配置された薄板はそれ自身、下流方向の流れ方向と並行な該旋回軸から離れる方向に向く傾向を有することを意味している。しかしながら、ブレードが流れ方向に沿って移動する場合、リミット手段によって、薄板が最小抵抗を有する方向位置を取ることは妨げられるであろう。リミット手段は、流れに沿って移動しているブレードの薄板をその流れに対して実質的に垂直に向けさせるよう設計されており、そのために、流水に大きな抵抗を与える薄板によって、少なくとも実質的に閉じられたブレードが形成される。こうして、該ブレードには、流水によって比較的大きな力がかかる。本発明による装置では、ブレードホイールの実質的全幅に亘って薄板を設けられるため、比較的高効率が達成できる。流れに沿って移動するブレードホイールは、その流れに対して比較的大きな抵抗を受け、一方、流れに逆らって移動するブレードホイールは、その流れに対して比較的小さな抵抗を受けるので、ブレードホイールは、その回転シャフト回りに回転するであろう。水の流れによってブレードに作用するブレードホイール駆動力は、ブレードホイールの一回転に亘って、ブレードが流れ方向に実質的に垂直であり流れに沿って移動時の最大から、ブレードが流れ方向に実質的に並行な時に最小を経由してさらなる最小まで変化するであろう。すなわち、ブレードが流れ方向に実質的に垂直であり流れに逆らって移動時には負の方向の駆動力となり、その後の並行方向での最小を経由して回転終了時に再び最大に変化するであろう。この流れ抵抗は、回転中の連続的に変化する位置に依存するので、ブレードホイールは回転し続けるであろう。本発明の目的はこうして達成される。
【0007】
フランス特許第2525694号(以下、D2と呼ぶ)には、ブレードホイールの回転シャフトに並行に延在する薄板の中心縦軸回りにそれぞれが旋回可能な薄板を有するブレードを備えた水車装置が記載されている。中心縦軸回りに回転可能な薄板は、流れに並行に向いた時には不安定である。薄板が配置された流体の流れの小さな乱れによって、薄板は(部分的に)上方にはためく場合がある。これによって薄板は不安定になり、該ブレードが流れに逆らって移動する時は抵抗が不必要に高くなって、水車装置の効率が低下する。該ブレードが流れに沿って移動する時は、薄板も流体の流れの乱れに影響を受け易くなり、その結果、抵抗は相対的に低下する。これによっても、効率が低下する。また、流体の流れに大きな乱れがあれば、薄板が完全に上方にはためいて、回転するブレードホイールがほとんど完全に停止する場合がある。水車は、流れに影響を及ぼし好適には比較的多量の流体を水車装置内に導くハウジング内に配置されるので、流れに乱れが発生することは避けられない。
【0008】
本発明による水車の少なくとも1つの流路は、好適には、作動中に内壁を通過して流れる水に対して流れ抵抗が低い内壁を備える。本発明による水車装置の効率は、流路内の水の流速が高くなるにつれて向上することは明らかであろう。
【0009】
少なくとも1つの流路が、そこを通過する水を少なくとも1つのブレードホイールのブレードがその流れに沿って移動する方向に誘導するように設計されていれば、その流れは、駆動されるべき該ブレードの駆動にさらに一層活用でき、駆動されるべきでないブレードに任意の瞬間に加えられる抵抗は、その流れが該ブレードから離れる方向に部分的に誘導されるために低減される。
【0010】
少なくとも2つのブレードホイールが流路内で縦に並んで設けられていれば、縦に並んで配置されたこのブレードホイールが互いに対向する方向に回転することが好ましい。水は、該流路をこのように波状に移動してもよく、これにより、流路内の水によって、該ブレードホイールでは最適な活性化効果が得られる。
【0011】
本発明の好適な実施形態では、少なくとも1つのブレードホイールの回転シャフトは、少なくとも実質的に垂直に延在する。回転シャフトの代替となる方向、好ましくは流れ方向に垂直な方向(例えば水平方向)も可能であるが、垂直方向の回転シャフトを有するブレードホイールは、回転シャフトが作動中に変化するブレードの重力の影響を実質的に受けない最も好ましい方法で装着される。
【0012】
薄板のそれぞれが、制限手段によって課される制限に従いながら、関連する旋回軸を中心に自由に移動可能なようにそれぞれのブレードに固定されることが好ましい。薄板はこうして、制限手段によって課される制限を除いて、常に最小の抵抗を有する方向を求めその方向に向く自由を有する。
【0013】
本発明では、ブレードが、ブレードホイールの半径の少なくとも50%の長さに亘って薄板を備えていることが好ましい。このことは、薄板が該ブレードと並行に向いている場合、ブレードによって画定されるホイール半径の長さの少なくとも50%が該ブレードの表面領域上の薄板によって被覆されることを意味する。薄板を備えるブレードの表面領域が広いほど、ブレードホイールによって達成され得る効率は上がる。
【0014】
本発明の好適な実施形態では、互いに隣接する2つの薄板の旋回軸間の距離は、前記2つの旋回軸のいずれかに付随する薄板の幅より小さい。これによって、互いに隣接する2つの薄板は並行に向いている場合に部分的に重なり、これらの薄板によって閉曲面が形成されるという配置が得られる。
【0015】
ここでは、薄板の旋回シャフトが隣接する薄板に対する制限手段を形成することが好ましい。これによって、薄板の移動の自由に対する想定される制限は、簡単な方法で実現できる。
【0016】
薄板の流動効率の良い形状は、該薄板の旋回軸に垂直な方向の旋回軸に対向して位置する先端の方向の旋回軸における薄板の横断面が収束するように設計されていることによって実現できる。こうした形状(例えば落差形状)では、流れ方向と並行に向いた配置における薄板を通過する流体に及ぼす抵抗は比較的低いことが分かった。
【0017】
薄板の旋回軸側は、そこを通過して流れる水に対する抵抗が、該側が上流方向に面している時に最小化されるように設計されることが好ましい。この手段は、ここでは希望として考案されるように見えるが、この要求に適合するための薄板の該側の取り得る形状は、水文学の当業者には即座に明白であろう。
【0018】
ブレードは、回転シャフト回りに少なくとも実質的に一定の角度間隔で配置されていることが好ましい。回転シャフト回りにブレードを一定に配置することによって、ブレードホイールの好ましい、通常は均一な回転運動が得られる。
【0019】
本発明の好適な実施形態では、流路内に、少なくとも2つのブレードホイールが縦に並んで設けられる。本目的のために恐らく延長されたハウジング内への第2、および恐らくは第3およびさらなるブレードホイールの設置に要する手間は、回転シャフトの回転を電気エネルギーに変換するために設けられるブレードホイールをそれぞれが1つ備える第2、および恐らくは第3およびさらなる水車装置の設置に比べて比較的少ない。少なくとも1つの流路内の水の流速は、第1の上流側のブレードホイールによって確かに低減されるため、第2のブレードホイールの効率は、第1のブレードホイールに比べて低くなるが、多くの場合、第2、第3またはさらなるブレードホイールは、依然として有益である。
【0020】
給水範囲は、少なくとも1つの流路の方向に収束する漏斗状であることが好ましい。このために、流路内の流れの比較的大部分が流路内に押し込まれるため、水車装置の効率はより高まる。
【0021】
さらに、給水範囲は、水中に存在する所定のサイズ以上の物や動物の水車装置への進入を防止するように設計された保護部材を備えていることが好ましい。ブレードと流路壁間に進入し、そこで詰まり得る物および魚やその他の動物によって、水車装置の電気生成量は悪影響を受けることは明らかであろう。これらによって、水車装置が詰まったり損傷する可能性もある。こうした保護部材によって、こうしたリスクは少なくともかなりの程度まで防止される。
【0022】
流れ方向に見た時に、保護部材が斜め上方に延在していれば、保護部材およびまたは動物に対する損傷のリスクが低減される比較的簡単な方法で、水車装置から離れる方向に物や動物を誘導できる。
【0023】
好適な実施形態では、水車装置は、水誘導手段、上部壁および下部壁によって画定され、従って流路を囲む少なくともハウジングを備える。こうして、ハウジングによって、少なくとも流れ方向に対して横方向に見た時に、完全に閉じた水流路が提供される。また、上部壁および下部壁は、可動部を保護する役目を果たしてもよい。あるいは、上部壁およびまたは下部壁は、例えば保守作業での装置へのアクセス性を向上させるために省略されてもよい。
【0024】
完全に閉じた流路を備える実施形態では、給水範囲およびまたは排水範囲は、それぞれ流入口およびまたは流出口によって画定されることが好ましい。
【0025】
本発明の好適な実施形態では、2つ以上の流路がハウジング内に設けられる。水車装置の電気生成量および多くの場合効率も、これによって高められる。第2の流路にはより大きなハウジングが必要となることは事実だが、種々の回転シャフトの回転運動を電気エネルギーに変換する設備と、それの乾燥地までの輸送は、効率的な方法で行なわれる。
【0026】
本発明の好適な実施形態では、流入口およびまたは少なくとも1つの流路は、例えば水路の流速が比較的高い時に、少なくとも1つのブレードホイールに大きな(大きすぎる)圧力がかかることを防ぐように設計された少なくとも1つの水門開口を備える。その場合、流入口を経由して導入された水の一部は、少なくとも1つの水門開口を通ってハウジングの外部に排出される。
【0027】
水車装置は、永久磁石発電機が収容される水密空間を備えていることが好ましい。永久磁石発電機は、水なし空間で作動させなければならない。従って、ハウジングと一体化されること、あるいは少なくともその水密区画と一体化されることが望ましい。代替手段では、永久磁石発電機(PMG)が独立のユニットとして、水車装置のハウジングからある距離に設けられる、あるいは設けなければならない。
【0028】
電気エネルギー生成量を増やすために、2つ以上のブレードホイールを積み重ねて水車装置を構築してもよい。これは、モジュラー構築システムと呼ばれる。
【0029】
本発明の好適な実施形態では、水車装置は可逆的であるように構築される、すなわち、水車装置は、互いに対向する2つの流れ方向で作動できる。多くの場合、これは、装置が対称中心を有するように少なくとも実質的に設計されることで、すなわち、明らかに対向する方向から見た時に、給水範囲が排水範囲と同じデザインを有し、流路に対して同じ水門を有するように実質的に設計されることで実現される。こうした水車装置は、潮汐水などのように、水が2つの対向する方向に流れ得る領域での使用に非常に適している。
【0030】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による水車装置であって、その少なくとも1つの流路が好適には完全に水中にある装置の、川や潮汐水などの流水での使用に関する。また、流路が部分的に水から出ている状態での作動も明らかに可能である。しかしながら、少なくとも1つの流路が完全に水中にある状態での作動によって、水車装置の効率は高くなる。水中で作動させる別の主要な利点は、見えない水流、すなわち所定の十分に深い水流が存在し得る所で水車装置が利用できるため、ある喫水までの船あるいはすべての船が、水車装置に妨害されずに水路を通過できることである。
【0031】
少なくとも1つの流路は、流水の底部からある距離の所に位置していることが好ましい。流水の底部から少なくとも1つの流路までの垂直距離は、少なくとも50cmである。該底部から好適には少なくとも75cmの(十分な)距離に配置されているので、堆積物が水と共に流れてハウジング内に入ることや、水路底部に影響を与え得る底流が流れ内に発生するリスクが防止あるいは少なくとも低減される。
【0032】
少なくとも1つの流路は、流水内で実質的に水平方向を向いていることが好ましい。流路が少なくとも実質的に水平方向であることを考慮すると、流路を通過する水は不必要に妨害されることはなく、水車装置の効率は、比較的高くなるであろう。
【0033】
流路の流出口側底部への損傷を防止するためには、流れ方向に見た時に、少なくとも1つの流路の流出口が、少なくとも1つの流路に対してわずかに上方に延在していることが好ましい。これによって、水車装置後方の水路底部への損傷は、防止あるいは少なくとも低減され易くなる。
【0034】
以下、本発明による水車装置の2つの好適な実施形態の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1a】本発明による水車装置のある実施形態の切欠平面図である。
【
図2】
図1の水車装置のブレードホイールに沿う流れの切欠平面図である。
【
図3】本発明による水車装置の代替実施形態の切欠平面図である。
【
図4】
図3のIV−IV線上の垂直横断面図である。
【
図5】本発明による水車装置の別の代替実施形態の斜視図である。
【
図7a】それぞれ関連するブレードが流れに沿って、および流れに逆らって移動する状態での相互に隣接する2つの薄板を通した横断面図である。
【
図7b】それぞれ関連するブレードが流れに沿って、および流れに逆らって移動する状態での相互に隣接する2つの薄板を通した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1aは、本発明による水車装置1のある実施形態の切欠平面図である。水車装置1は、流入口3、流路4、および水密のPMG区画5を構成するハウジング2を備える。流入口3は、流路4に向かって収束する2つの垂直側壁6、7と、下部壁8と、上部壁(
図1aでは非図示)と、を有する。水門シリンダー10は側壁7に設けられている。上部壁にある水門ストリップ11の位置を図に示す。流路4は、2つの側壁12、13と、下部壁14と、上部壁(
図1aでは非図示)と、によって画定される。横断面が円錐台形状の垂直に延在するプロファイル16は、流路4の側壁12、13の内側に存在する。3つのブレードホイール17a、17b、17cは流路4内に配置され、ブレード28のパスは、前記パスの一部から短い距離にあるプロファイル16によって部分的に境界づけられている。ブレードホイール17a〜17cは、作動中、それぞれの回転シャフト18a、18b、18cを中心に矢印Pa、Pb、Pcに沿って回転する。水密のPMG区画5は、流入口3から流路4への遷移領域において、流入口3の側壁6の一部と、流路4の側壁13の一部と、側壁19と、側壁20と、下部壁21と、上部壁(
図1aでは非図示)と、により形成される。
図1aの参照番号23は、ブレードホイール17の回転運動を水密のPMG区画5内の永久磁石発電機(PMG)に伝える既知の機械式トランスミッションを表す。流入口3は、その上流側に、魚や汚染物に対する格子25を備える。
【0037】
図1bは、
図1aの水車装置1の切欠側面を示す。明らかなように、水車装置1の構成要素には、
図1aと同じ参照番号を付した。ここでは、流入口3の上部壁を参照番号9で示し、流路4の上部壁を参照番号15で示す。水車装置1は、柱26によってベース面27にしっかりと固定される。
【0038】
図2は、ブレードホイール17aが存在する流路4の一部の切欠平面図である。
図1aより詳細に、ブレードホイール17aを示す。ブレードホイール17aは、作動中に流路に垂直方向に延在し、それを中心にして3つのブレード28が回転できる回転シャフト18aを有する。ここでは、3つのブレード28はそれぞれ、粗いラスターの形態の中央表面29を有する。垂直軸30を中心に旋回可能な薄板31が前記ラスターに取り付けられる。
【0039】
図3は、本発明による水車装置51の代替実施形態を示す。水車装置51は水車装置1と同等だが、2つの流路54を有する。特に明記されない限り、
図1aと1bの構成要素に対応する
図3の構成要素には、
図1aと1bの参照番号より50大きい番号を付した。水車装置51と水車装置1との著しい差異は、水車装置51では、分離壁82で分離された2つの流路54a、54bには、分離壁82もそれを通過して延在する1つの流入口53が注いでいることである。
図1aの側壁12、13が機能するように、分離壁82は、2つの流路54a、54bに対して機能する。
【0040】
最後に、
図4は、
図3のIV−IV線上の垂直横断面図である。
図3の構成要素に対応する
図4の構成要素には、
図3の構成要素と同じ参照番号を付した。流路54a、54bは、下部壁64と、上部壁65と、側壁62、63と、分離壁82と、によって画定される。流路54a、54b内に、2つのブレードホイール67a1、67a2が存在する。ブレードホイール67a1および67a2はそれぞれ、回転シャフト68a1、68a2と、ブレードと、を有する。ブレードは、中央表面を形成するラスター79だけが
図4に示されている。薄板は、回転シャフト68a1、68a2のクロスハッチングした側では、関連するブレードのラスターにもたれて存在する。この結果、ラスターの前に位置する薄板は可視となる。しかしながら、回転シャフトの反対側では、薄板は、ラスター79の垂直部(薄板の旋回軸80と一致する)の真後ろに、すなわち、可視方向に見えるようにラスター79を延長した方向に位置するため、ラスターは薄板の前で可視となる。
【0041】
図5および
図6a、6bはそれぞれ、本発明による水車装置101のある実施形態の斜視図および平面図であり、流路104は、水誘導部材106a、106bおよび107a、107bそれぞれの2つの側壁112a、112bおよび113a、113bだけで画定される。以下、これについてより詳細に議論する。水車装置101はPMG区画も備えるが、明瞭化のために、この実施形態の図面から省略した。当業者には、ブレードホイール117a、117bをPMG発電機に接続して、ブレードホイール117a、117bの回転を電気エネルギーに変換する方法は既知である。ブレードホイール117a、117bはそれぞれ、互いに120°の角度で配置された3つのブレード128を備える。ブレード128はそれぞれ、上腕128aと下腕128bを備えており、その間に旋回可能薄板131が延在している。薄板131は、該ブレード128が流れに沿って移動する時には、薄板131の旋回軸130が隣接する薄板131用の迫台を構成するように水車装置101に配置される。こうして、旋回軸130は、隣接する旋回可能薄板131の旋回移動を制限する。これは
図6a、6bで見ることができ、より詳細には
図7bで見ることができる。水車装置101の水誘導部材は、互いに重畳するブレードホイール117a、117bの回転軸またはシャフト118aに対称中心を有する。この中心対称については詳細に言及する必要はないが、それは、2つのブレードホイール117a、117bが両側からの流れを確実に受け取れるように機能する。従って、水車装置101は、潮汐水内での配置に適しており、その場合、ブレードホイール117a、117bは、水の流れ方向によって、時計回り方向(
図6aの矢印R1)に、あるいは流れに逆らって(
図6bの矢印R2)回転する。
【0042】
図7a、7bはそれぞれ、旋回軸30回りを矢印Z方向に旋回可能なように薄板31a、31bが取り付けられたブレード28が、矢印Sで示す流れ方向に逆らって移動時の、および該流れ方向に沿って移動時の状態における互いに隣接する2つの薄板31a、31bを示す。以下、水車装置1の作動について説明する。水車装置1を、
図1bに示すように流入口3を上流側に向けて、柱26で例えば河床の底部27に固定すると、川の水は、矢印Sに沿って、魚および汚染物阻止格子25と流入口3を通って水車装置1内に流入するであろう。魚および汚染物阻止格子25はメッシュを有しており、水は実質的に妨害されることなく通過でき、また、水車装置(の作動)を全くあるいは実質的に妨害しない小さな物と小魚は通過できるが、粗い物と比較的大きな動物は格子25によって阻止される。詰まりを防ぐために、格子25は、
図1bに示すように、流入口3の前にある角度で配置されているため、汚染物は格子25から滑り落ち得る。水は、通常の流れで流入口3から流路4内に流入するであろう。しかしながら、流れが強すぎると、水は、水門ストリップ11の水門ゲートおよび水門シリンダー10を通って流出するであろう。この目的のために、ブレードへの水圧あるいはブレードの回転速度を、既知の方法で排水できる水門シリンダーに信号を発信するセンサによって測定してもよい。それが望ましい場合、例えば、水車装置外部の水の流速を記録する、ハウジング外部のセンサを用いてもよい。また、センサ信号に応じて機械弁を開閉させることもできる。これによって、水がブレードホイール18a、18b、18cに及ぼす力によって水車装置1が損傷する危険性が防止あるいは少なくとも低減される。流入口の側壁6は、プロファイル16によって延長されているので、水は、流れ方向に見た時に、特にブレードホイール18aの左側に流れる。該ブレード28の薄板31は閉じられている、すなわち、薄板31は、ブレード28が閉じられ、従って、流れによって該ブレード28に力がかかる中央の平面29(
図2参照)に少なくとも実質的に並行に延在する。上流側の薄板31にかかる力が下流側のそれより大きい限り、薄板31は、流れの上流側に留まるであろう。そこで、流れ方向に対して横方向に延在する薄板31は、薄板31に下流にあるラスターに対して促されるであろう。ブレードホイール17aがさらに回転方向Paに回転するにつれて、薄板31は旋回して、
図2に示す他の2つのブレード28で示した方向に向くであろう。
図2から明らかなように、このブレード28が流れ方向に逆らって移動する時は、薄板31は該ブレード28の下流側に存在し、従って、実質的に中央面29に位置する対応するラスターを通る水の通過に対して、該ブレード28を開放するであろう。少なくとも当業者には、これによって、ブレードホイール17aの回転運動が生じ維持されることは明らかであろう。この流れはその後、プロファイル16と側壁13によってブレードホイール17aからブレードホイール17bに向けて押しやられ、上記と同じ原理によって対向する方向に向きを変える。水はその後、ブレードホイール17cの方向に流れ、流出口4から流出して、水車装置1の回りを流れていた水と混合される。ハウジングの回りを流れる水の速度に対してハウジングを通過して流れる水の速度は、部分的には、流入口の上流側の表面積と流路の表面積との比によって決定される。水は、流路の断面積より大きな断面積の流入口を使用すると加速される。一方、この速度は流路内で低減される。(流路に対して)大き過ぎない流入口を考えると、流出口でベンチュリ効果が生じ、それによって流路4内の流れが加速されて、水車装置の効率はさらに高められる。ブレードホイール17a、17b、17cは、それぞれの回転シャフト18a、18b、18cを中心に回転し、該シャフトの運動は、当業者に既知の方法によって、例えばギアとロッドシステムによってPMG区画5内の永久磁石発電機24に伝達され、回転運動が電気に変換される。この電気は、ケーブル(非図示)を経由して乾燥地に輸送され、そこで活用され得る。
【0043】
水車装置51の作動は水車装置1のそれに相当するため、さらなる説明は不要である。
【0044】
以下、
図5および6の水車装置101の作動について説明する。前述の実施形態とは対照的に、流路104の上部壁と下部壁はないので、水車装置101は、上部側および下部側において少なくとも実質的に開いている。その利点は、異常およびまたはメンテナンスの場合に、ブレードホイール117に常に良好にアクセスできることである。水誘導部材106a、106bはそれぞれ、上流側に位置し(作動中)、水車装置101の作動を通常妨げる流れの一部を流路104の方向にそらす誘導面103を有する。流路104は、該ブレードホイール117のブレード128のトラックBに近接する側壁112、113によって画定される。ブレード128のトラックと側壁112、113間の距離は、
図5、6では比較的大きく示されている。該距離は実際には、該ブレード128を駆動することなく、ブレード128と側壁112、113間に流れ得る水量を制限するために最小化されてもよい。流路104を通過した水は、水車装置101から自由に出られる。水車装置101が実質的に対称的に配置されているために、その作動は、潮汐水でのように、流れSの方向の反転に伴って可逆的である。このことは
図6bに示されており、水の流れSの方向が
図6aのそれに対向する場合のブレード128の薄板131の方向が示されている。水車装置101は、これに適合させたり、あるいは違ったように調整される必要はない。薄板131と旋回軸130は、その時点では実際に対向しているが、それらは、
図6aの状態における時と同じように働く。
【0045】
水車装置101には同様に、格子などの、魚およびまたは汚染物を止める手段を設けてもよいことは明らかであろう。こうした手段はその後、魚およびまたは汚染物を水路のより高い位置に誘導するという効果を有するであろう。流路を区切る上部壁の有無は、これに対しては重要ではない。
【0046】
本発明の主な態様は、関連するブレードが流れSの方向に逆らって(部分的に)移動する時、すなわち、該ブレードの動きに水の流れ方向に対向する成分が含まれていれば、薄板は常に、水の流れによって、最小の抵抗となる方向を自動的に探し求める手段であり、一方、こうした方向は、関連するブレードが流れSの方向に沿って(部分的に)移動する時、すなわち、該ブレードの動きに水の流れ方向に並行な成分が含まれていれば、打ち消されるか制限される。
図7は、これが本発明に準拠してどのように実施され得るかを示す。
図7aは、ブレード28が、水の流れSの方向に対して対向する方向に移動する状態を示す。少なくともこの状態で自由に旋回可能な薄板31a、31bは、
図7aに示すように、自動的にこれに応じた方向に向くであろう。これは物理的に決定される。該ブレード28がさらに移動すると、該ブレード28が流れSの方向と並行に向く瞬間まで、薄板は常に、旋回軸30の後方の流れSの方向に並行に向いているであろう。これは、旋回軸30に対向して位置する該薄板31aの後縁が、隣接する薄板31bに対する迫台内に入る瞬間であり、これによって、薄板31aのそれ以上の旋回は阻止される。この状態は、ブレードホイールの約180°の回転運動に亘って維持され、薄板31bに対する薄板31aの迫台は、水の流れによって再び持ち上げられる。水車装置101の薄板131の作動は、薄板31のそれと同様である。
【0047】
薄板の移動の迫台または制限を実現する手段は種々考えられることは明らかであろう。本発明は、
図7に示した手段に限定するものではないことは明白である。
【0048】
本発明による水車装置に関して、2つの実施形態だけを図示し記述した。当業者に明白であるか否かに拘わらず、添付の請求項で定義される本発明の保護の範囲内で種々の変更が考えられることは明らかであろう。従って、流路内にブレードホイールを1つのみ、2つ、あるいは3つ以上設けることも可能である。また、必ずしも必要ではないが好適には異なる流路において、ハウジング内に3列、4列、あるいは5列以上のブレードホイールを収容することも可能である。必ずしも必要ではないが、流れを誘導するプロファイルが望ましく、それらの形状も代替のものであってもよい。水車装置は、川床だけではなく、潮汐水の底部、例えば潮路内に設けてもよい。潮路は比較的深く、その流れは、通常集中しており、すなわち比較的強く、実質的に常に同じ方向である。