(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186078
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】乗り物用座席
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
B60N2/08
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-514615(P2016-514615)
(86)(22)【出願日】2014年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2014061447
(87)【国際公開番号】WO2015162727
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】598147400
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ミンホ
【審査官】
渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−321403(JP,A)
【文献】
特公平6−13268(JP,B2)
【文献】
特開2005−289232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物の座部と、
前記乗り物に固定可能な固定レールと、前記固定レールに対してスライド可能に係合し前記座部に組み付け可能な可動レールとを備えたスライド装置と、
適宜の位置で前記可動レールのスライドを阻止するロックオン状態と前記可動レールのスライドを可能とするロックオフ状態とに選択的に移行可能なロック部と、
を備え、
前記ロック部は、
前記座部への前記スライド装置の組み付けの際は、前記ロックオン状態に保持され、
前記座部への前記スライド装置の組み付け後は、前記ロックオフ状態と前記ロックオン状態とに選択的に移行可能となる
乗り物用座席。
【請求項2】
前記ロック部は、前記可動レールに支持され、
前記ロック部は、
前記ロック部が前記ロックオン状態になる第1の位置と前記ロック部が前記ロックオフ状態になる第2の位置との間を移動可能なロック部材と、
前記座部への前記スライド装置の組み付けの際は、前記ロック部材を前記第1の位置に保持する位置に移動し、前記座部への前記スライド装置の組み付け後は、前記ロック部材を前記第1の位置及び前記第2の位置に選択的に移動可能とするヒッターと、
前記ヒッターに連結された伝達部と、
前記伝達部に連結され、前記座部に着座した乗員が前記ロック部を前記ロックオフ状態及び前記ロックオン状態に選択的に移行する操作を可能とする操作部と、
を備えた
請求項1記載の乗り物用座席。
【請求項3】
前記ロック部は、前記ヒッターに係止する下端部と前記座部に係止する上端部とを有する付勢部であって、前記ロック部材の前記ロックオン状態を維持し得る方向に前記ヒッターを常時付勢する付勢部を備えた
請求項2記載の乗り物用座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物用座席に関する。
【背景技術】
【0002】
座部と座部を移動自在としたスライド装置とを予め分離して、スライド装置のみを車体など骨格に支持した後、そのスライド装置に座部を固定するようにした乗り物用座席が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−321403号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、上記の乗り物用座席では、乗り物の骨格に支持したスライド装置に座部を組み付ける作業の際に、スライド装置のスライドを阻止するロックオン状態とスライドを可能とするロックオフ状態との何れかを選択し得るロック部の操作部に組立作業員が触れてスライド装置がスライドしてしまう恐れがある。不用意にスライド装置がスライドしてしまわないように、慎重に組み付け作業をすると、組み付け工数が増大し、原価高騰の原因となる。
【0005】
本発明は、座部にスライド装置を組み付ける際にロック部を操作する操作部に組立作業員が触れても、スライド装置のロック部がロックオフ状態に移行しない乗り物用座席を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の実施形態に係る乗り物用座席は、乗り物の座部と、前記乗り物に固定可能な固定レールと前記固定レールに対してスライド可能に係合し前記座部に組み付け可能な可動レールとを備えたスライド装置と、適宜の位置で前記可動レールのスライドを阻止するロックオン状態と前記可動レールのスライドを可能とするロックオフ状態とに選択的に移行可能なロック部とを備える。前記ロック部は、前記座部への前記スライド装置の組み付けの際は、前記ロックオン状態に保持され、前記座部への前記スライド装置の組み付け後は、前記ロックオフ状態と前記ロックオン状態とに選択的に移行可能となる。
【0007】
また、前記ロック部は、前記可動レールに支持されてもよい。前記ロック部は、前記ロック部が前記ロックオン状態になる第1の位置と前記ロック部が前記ロックオフ状態になる第2の位置との間を移動可能なロック部材と、前記座部への前記スライド装置の組み付けの際は前記ロック部材を前記第1の位置に保持する位置に移動し、前記座部への前記スライド装置の組み付け後は前記ロック部材を前記第1の位置及び前記第2の位置に選択的に移動可能とするヒッターと、前記ヒッターに連結された伝達部と、前記伝達部に連結されて前記座部に着座した乗員が前記ロック部を前記ロックオフ状態及び前記ロックオン状態に選択的に移行する操作を可能とする操作部とを備えてもよい。
【0008】
また、前記ロック部は、前記ヒッターに係止する下端部と前記座部に係止する上端部とを有する付勢部であって、前記ロック部材の前記ロックオン状態を維持し得る方向に前記ヒッターを常時付勢する付勢部を備えてもよい。
【0009】
上記構成によれば、前記座部に前記スライド装置を組み付ける際に、前記ロック部がロックオン状態に保持される。このため、組み付け作業の際に前記ロック部を操作する前記操作部に組立作業員が触れても、前記スライド装置の前記ロック部がロックオフ状態に移行しない。一方、前記座部に前記スライド装置を組み付けた後は、前記ロック部は、ロックオフ状態にもロックオン状態にも選択的に移行可能となる。このため、乗り物を操作する人にスライド装置の通常のロックオフ・ロックオン機能を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る乗り物用座席の座部をスライド装置に組み付ける際のロック部を後方より示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る乗り物用座席の座部をスライド装置に組み立て後のロック部を後方より示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明において、座部にスライド装置を組み付ける際にロック部を操作する操作部に組立作業員が触れても、スライド装置のロック部がロックオフ状態に移行しない乗り物用座席を提供するという目的を、以下の構成により実現した。すなわち、乗り物用座席は、乗り物の座部と、前記乗り物に固定可能な固定レールと前記固定レールに対してスライド可能に係合し前記座部に組み付け可能な可動レールとを備えたスライド装置と、適宜の位置で前記可動レールのスライドを阻止するロックオン状態と前記可動レールのスライドを可能とするロックオフ状態とに選択的に移行可能なロック部とを備える。前記ロック部は、前記座部への前記スライド装置の組み付けの際は、前記ロックオン状態に保持され、前記座部への前記スライド装置の組み付け後は、前記ロックオフ状態と前記ロックオン状態とに選択的に移行可能となる。
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る乗り物用座席を、
図1〜
図5を用いて説明する。本実施形態に係る乗り物用座席は、自動車に搭載されるものとして説明を行うが、乗り物は自動車に限定されず、飛行機や船舶、鉄道車両などであってもよい。本実施形態に係る乗り物用座席は、乗り物としての自動車の座席の座部(図示省略)と、固定レール(図示省略)及び可動レール(図示省略)を備え座部を自動車の前後、即ち前側FR及び後側RRに適宜スライド可能なスライド装置(図示省略)と、スライド装置の可動レールの移動を阻止するロックオン状態と可動レールを移動可能とするロックオフ状態とに選択的に移行可能なロック部1とを備える。
【0013】
スライド装置は、自動車の車体(図示省略)に固定可能な固定レールと固定レールに対してスライド可能に係合して座部に組み付け可能な可動レールとを備え、可動レールがスライドすることで座部を適宜の位置に移動可能としているが、周知のため、説明及び図示を割愛する。固定レールは、左右に平行して設けられ、前後に長尺状に形成されている。
【0014】
ロック部1は、座部へのスライド装置の組み付けの際には、ロックオン状態に保持され、座部へのスライド装置の組み付け後には、ロックオフ状態とロックオン状態とに選択的に移行可能となる。より詳細には、ロック部1は、可動レールに支持された爪(図示省略)と、ロック部材20と、ヒッター2、5と、操作部6とを備える。爪は、固定レールに複数形成されたロック穴(図示省略)に係合することで可動レールを固定レールに対してスライド出来ない状態、つまりロックオン状態にすること及びロック穴から離脱することで可動レールを固定レールに対してスライド出来る状態、つまりロックオフ状態にすることができるようになっている。ロック部材20は、爪をロック穴から離脱させるように爪を制御可能である。ヒッター2、5は、ロック部材20を制御可能である。操作部6は、ヒッター2、5を操作可能である。
【0015】
ロック部材20は、可動レールに支持されている。また、ロック部材20は、固定レールのロック穴の何れかに爪が係合する方向に爪を付勢する付勢力に抗してロック穴から爪を解除する方向に回転操作可能となっている。ロック部材20の上面20aから被押圧部32が垂下して形成されている。
【0016】
ヒッター2とヒッター5とは、左右に離間して配置されている。ヒッター2は、レバー状の本体2aと、本体2aの上端部2bと、本体2aの下端部2cと、第1バー4の本体4aが貫通して溶接支持された貫通孔2dと、下端部2cの前側FRに形成され且つロック部材20の被押圧部32と左右対称の図示しない被押圧部材を押圧可能とすることでロックオン状態又はロックオフ状態それぞれに制御可能である押圧部2eとを備える。同様に、ヒッター5は、レバー状の本体5aと、本体5aの上端部5bと、本体5aの下端部5cと、第1バー4の本体4aが貫通して溶接支持された貫通孔5dと、下端部5cの前側FRに形成され且つロック部材20の被押圧部32を押圧可能とすることでロックオン状態又はロックオフ状態それぞれに制御可能である押圧部5eとを備える。
【0017】
ヒッター2、5の一方のヒッター2と座部との間には、付勢部としてのコイルスプリング3が懸架されている。コイルスプリング3の下端部は、ヒッター2に形成した貫通口である係合部2f(
図1、
図4参照)に係止している。コイルスプリング3の上端部は、座部に係止している。コイルスプリング3は、ロック部材20の被押圧部材32と左右対称の図示しない被押圧部材への制御が出来ない方向(ロックオン状態を維持し得る方向)(
図2の時計方向)にヒッター2を常時付勢する。ヒッター2、5の他方のヒッター5と第1レバー10との間には、付勢部としてのコイルスプリング9が懸架されている。コイルスプリング9の上端部9bは、ヒッター5の上端部5bに形成した貫通口である係合部5f(
図2〜
図4参照)に係止している。コイルスプリング9の下端部9aは、第1レバー10の下端部10cに形成した貫通口である係合部10e(
図2〜
図4参照)に係止している。コイルスプリング9は、ロック部材20の被押圧部材32及び上面20aを押圧する方向(
図2の反時計方向)にヒッター5を常時付勢している。
【0018】
操作部6は、第2バー13の本体13aに溶接支持された後端部6bと、後端部6bから下側LWRに形成されて座部から前側FRに突出する前端部6aとを備える。
【0019】
伝達部11は、前後、即ち前側FRから後側RRに延在するロッド状をなす。伝達部11の前端部11aは、後述する第2レバー14の下端部14cに連結されており、伝達部11の後端部11bは、第1レバー10の下端部10cに形成した貫通口である係合部10fに連結されている。
【0020】
第1レバー10は、本体10aが上端部10bと下端部10cとの間で左右方向に曲成されている。本体10aの上下、即ち上側UPと下側LWRとの中間位置に第1バー4の本体4aにブッシュ4b、4dを介して回転自在に設けられたカラー4cが貫通して溶接支持された貫通孔10dが形成されている。本体4aの端末は、ストッパ4e、4eにより、図示しない座部に支持されている。
【0021】
第2レバー14は、平板状の本体14aと、上端部14bと、下端部14cと、上端部14bに形成された貫通口である係合部14dと、本体14aの上下、即ち上側UPと下側LWRとの中間位置に第2バー13の本体13aに貫通して溶接支持された貫通孔14eとを備える。本体14aの端末は、第2バー13のストッパー13d、13eにより、図示しない座部に支持されている。係合部14dと図示しない座部との間には、スプリング15が懸架されている。スプリング15は、第2レバー14を
図5の時計方向に常時付勢する。
【0023】
本実施形態に係る乗り物用座席の座部にスライド装置を組み付ける際に、ロック部1がロックオン状態に保持されている。このため、ロック部1を操作する操作部6に組立作業員が触れても、スライド装置のロック部1がロックオフ状態にならない。これにより、組立時の作業効率が著しく向上し、原価低減となる。また、本実施形態に係る乗り物用座席は、座部とスライド装置との組立時の作業効率が良いので、座部とスライド装置とを組み付けない状態でシャシーメーカーに持ち込んでシャシーメーカーで両者を組み付けることも考えられる。この場合、車体などの骨格への座席の組付けを行う際の座席メーカーの荷姿が、前後寸法の大きなスライド装置を予め座席に組み付けた場合と比べて小さな荷姿となるので、座席を一度に大量に搬送することができる。また、ロングレールと言われるように前後寸法が1メートルを超えるなど長いスライド装置であればあるほど、かかる効果は大きくなる。一方、座部へのスライド装置の組み付け後は、ロック部1は、ロックオフ状態にもロックオン状態にも選択的に移行可能であるので、乗り物を操作する人にスライド装置の通常のロックオフ・ロックオン機能を提供することができる。
【0024】
可動レールに支持されたロック部1は、ロック部1がロックオン状態になる位置とロック部1がロックオフ状態になる位置との間を移動可能なロック部材20と、座部へのスライド装置の組み付けの際は、ロック部材20がロック部1のロックオン状態を解除し得ない位置(つまり、ロック部1をロックオン状態に保持する位置)に移動し、座部にスライド装置を組み付け後は、ロック部材20をロック部1がロックオフ状態になる位置にもロック部1がロックオン状態になる位置にも選択的に移動可能とするヒッター2、5と、ロック部1がロックオフ状態及びロックオン状態に選択的に移行可能なようにヒッター2、5を作動し得るように連結された伝達部11と、伝達部11に連結されて座部に着座した乗員がロック部1をロックオフ状態及びロックオン状態に選択的に移行する操作を可能とする操作部6とを備えている。このため、予め車体に固定したスライド装置に座部を組み付けるように、座部をスライド装置側に下げていくと、
図1及び
図2に示すように、ヒッター2、5がロック部材20の上面20aに載り、たとえ操作部6を操作しても、或いはたとえ操作部6に触れてもロック部材20の被押圧部材32がロックオフ状態側に回転せず、ロックオフしない。座部へのスライド装置の組み付け後は、ヒッター5をロック部材20の被押圧部32を押圧部5eが押し込み可能な位置に移動できる。このため、第1バー4の本体4aの回転によりヒッター2も図示しないロック部材の被押圧部を押圧部2eが押し込み可能な位置に移動できることになり、ロック部1は、ロックオフ状態にもロックオン状態にも選択的に移行可能となる。
【0025】
また、ヒッター2、5は、座部に付勢部3、9を介して支持されているので、座部をスライド装置側に下げていっっても、ヒッター2、5がロック部材20の上面20aに弾接し、強干渉にならない。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。