(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
伸縮部の下端側は、着用者の臀溝の下側と正面側の鼠径部とを結ぶように延び、臀溝の下側から鼠径部に向けて上方に傾斜する形状である請求項5又は6に記載の男性用下着。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態から第4実施形態に係る男性用下着について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の構成例に過ぎず本発明の技術的範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
[第1実施形態]
図1及び
図2に第1実施形態に係る男性用下着1(以下、単に下着と称する。)を示す。本実施形態の下着1は、
図3に示したように、着用者の排尿器官を覆い、着用者の背筋方向に沿って排尿器官の両側面側に配される第1開口111及び第2開口112を備える第1編布11と、第1編布に配された第1開口111及び第2開口112を覆い隠すように配される第2編布12とを含む排尿器官の取出部13を有する。排尿器官の取出部13は、
図1及び
図3に示したように、着用者の腰回りの方向に延びており、第1編布11と第2編布12との間に第2編布12の端部から構成される第3開口121を備えている。第1開口111又は第2開口112と、第3開口121とは互いに連通しており、後述する
図17に示したように、第1開口111又は第2開口112と第3開口121とを経て排尿器官を取り出すことが可能である。
【0024】
図3に示したように、本実施形態の下着1では、第1編布11は、腹当布113と、股布114とを含む。そして、第2編布12は、前立布122を含む。より具体的には、第1編布11(腹当布113)は、着用者の肌側となる内布113aと、外側となる外布113bとを含む。股布114は、着用者の肌側となる内布114aと、外側となる股布114の外布114bとを含む。第2編布12(前立布122)は、
図4(e)に示したように、編布を折り重ねて構成されており、第2編布12(前立布122)の折曲部123が第3開口121の端部となっている。
【0025】
本実施形態の下着1では、腹当布113の内布113aと、股布114の内布114aとを外布113b、114bに比べて編目の小さい緻密な編物から構成している。このため、着用者が下着1を着用した際に下着1の肌触りが軟らかくなるようになっている。一方、前立布122と、腹当布113の外布113bと、股布114の外布114bとは、内布113a、114aに比べて伸縮性が強い編布から構成している。このため、着用者が下着1を着用した際に身体を引き締めて、弛んだ身体を引き締める補正下着として機能するようになっている。上述の通り、内布113a、114aは柔軟性に富む編布から構成されているため、外布113b、114bで身体を締め付けても、着心地が悪化することを防ぐことが可能となっている。
【0026】
上述の通り、本実施形態の下着1では、前立布122を腹当布113等の内布113a、114aに比べて伸縮性が強い編布で構成し、着用者の弛んだ身体を引き締める補正下着としての機能を持たせている。前立布122には張力が掛かった状態であるため、
図17に示したように、手指を出し入れする際に第3開口121の端部に手指の爪やささくれなどが引っかかるなどして第3開口121の端部から解れが生じやすくなる。しかしながら、
図4(e)に示したように、第3開口121の端部は折曲部123となっており補強されているので、第3開口121の端部から解れが生じることを防ぐことが可能になる。補正下着としての機能を持たせた場合は、第3開口121の端部が着用者の腹部に強く当たる。上述の通り、第3開口121の端部は折曲部123となっており、縫合部となっていない。このため、着用者の腹部に端部の縫合部が強く当たることによって着心地が損なわれることを防ぐことができる。
【0027】
本実施形態の下着1では、第2編布12を2重に構成している。このため、例えば、
図17に示したように、右手又は左手の全体を第3開口121の内側に入れて排尿器官を出し入れしたとしても、第2編布12の型崩れを防ぐことが可能である。
【0028】
排尿器官の取出部13の構造を
図4に示した縫製手順を参照して説明する。まず、
図4(a)に示したように、
図5(a)に示した腹当布113を構成する外布113bと、
図6(a)に示した内布113aとを重ねる。内布113a及び外布113bは、互いに略同形であり、略方形状であり、下側の一端が円弧部A1となっており、上側の他端B1は略直線状になっている。左右の端部113c、113dの中ほどから一端側に向かって第1凹部115と第2凹部116とが配される。第1凹部115及び第2凹部116は、腹当布113の端部が内側に窪んだ形状となっている。第1凹部115及び第2凹部116は、それぞれ第1開口111、及び第2開口112として機能する。なお、
図4、
図5及び
図6、並びに後述する
図20、
図21、
図22及び
図23における二点鎖線は、対称線を示し、それぞれの布は二点鎖線を軸として左右方向に略対称な形状である。
【0029】
図4(a)に記載したように、腹当布113の内布113aと外布113bとを重ねた状態で着用者の背丈方向に沿って第1凹部115と第2凹部116とをかがり縫いによって縫合し筒状にする。
図4(a)において矢印で示した方向に、筒状の腹当布を構成する内布113aと外布113bとをひっくり返して、縫合部113c、113dを第1編布11(腹当布113)の内側に隠し、
図4(b)のような状態とする。
【0030】
本実施形態の下着1では、腹当布113の外布113b及び前立布122を腹当布113の内布113aに比べて伸縮性が強い編布で構成し、着用者の弛んだ身体を引き締める補正下着としての機能を持たせている。前立布122には張力が掛かった状態であるため、
図17に示したように、手指を出し入れする際に第1開口111又は第2開口112の端部に手指の爪やささくれなどが引っかかるなどして第1開口111又は第2開口112の端部から解れが生じやすくなる。しかしながら、上述の通り、第1開口111及び第2開口112の縫合部113c、113dは内側に隠された状態となっているので、第1開口111又は第2開口112の端部から解れが生じることを防ぐことが可能になる。
【0031】
次に、
図4(c)、及び
図6(b)に示した股布114を構成する内布114aに対して
図4(b)の筒状の腹当布113を重ねて、
図4(d)に示したように筒状の腹当布113の一端側の円弧部A1と股布114を構成する内布114aの一端側に配された円弧部A3がほぼ一致するようにする。股布114を構成する内布114a及び外布114bは、互いに略同形状であり、それぞれの上下方向における他端B2、B3に対して上下方向における一端A2、A3が幅広であり、それぞれの一端A2、A3が腹当布113の一端A1に配した円弧部A1と同程度の曲率である円弧状であり、全体としては略短冊状である。
【0032】
図5及び
図6に示したように、前立布122の一端A4と他端A5の形状は、腹当布113を構成する内布113a及び外布113bの円弧部A1並びに股布114を構成する内布114a及び外布114bの円弧部A2、A3と同程度の曲率である円弧状であり、全体としては略短冊状である。前立布122は、
図4(e)に示したように、一端と他端との円弧部A4、A5がほぼ一致するように折り重ねて、折曲部123を形成する。
図4(d)で準備しておいた、筒状にした腹当布113の円弧部A1と、股布114を構成する内布114aの円弧部A3とが一致するように重ねたものの円弧部A1、A3に対して折曲部123を形成した前立布122の円弧部A4、A5がほぼ一致するように重ねて
図4(f)の状態とする。
【0033】
股布114を構成する内布114aの円弧部A3と、筒状とした腹当布113の円弧部A1と、前立布122の円弧部A4、A5とがほぼ一致するように重ねたものの円弧部A1、A3、A4、A5に対して股布114を構成する外布114bの円弧部A2がほぼ一致するように重ねる。そして、股布114を構成する内布114aの円弧部A3と、筒状の腹当布113の円弧部A1と、前立布122の円弧部A4、A5と、股布114を構成する外布114bの円弧部A2とを円弧形状に沿ってかがり縫いして
図4(h)の状態とする。
【0034】
次いで、股布114を構成する外布114bと内布114aとを
図3(a)において矢印で示したように折り返して、股布114の内布114aと外布114bとを重ね合わせて、
図3(b)及び(c)の状態とする。上述の通り、腹当布113の一端、前立布122の一端及び他端、並びにそれぞれの股布114の一端は、円弧部A1、A2、A3、A4、A5となっているため、腹当布113と股布114との縫合部分には、
図3(b)に示したように、略円錐状に膨らんだ膨出部131が形成される。この膨出部131は、排尿器官を収納する空間として機能する。なお、
図1(a)及び
図2(a)等において、膨出部131は、複数本の破線で示した。
【0035】
上述の通り、本実施形態の下着1は膨出部131を有する。このため、外布114b、113b、及び/又は前立布122を伸縮性が強い編布で構成し、着用者の身体を締め付けた場合において、排尿器官の周辺が窮屈になることを防ぐことができる。
【0036】
上述の通り、円弧部A1、A2、A3、A4、A5を互いに縫合した後、股布114を構成する内布114aと外布114bとを
図3(a)において矢印で示したように折り返す。このため、縫合部分が内布114aと外布114bとの間に隠される。これによって、縫合部分が着用者の身体に直接に接触することを防ぐことが可能にし、下着1の着け心地を向上させることが可能になる。
【0037】
本実施形態の下着1は、
図1及び
図2に示したように、排尿器官の取出部13に加えて、外布部14と、外布部14の内側に配される内布部15とをさらに備えている。外布部14及び内布部15は、
図1、
図2、及び
図24を照らし合わせれば明らかなように、少なくとも着用者の鼠径部91と臀裂部92を覆い、着用者の脚93を通すことができる足ぐりを有する形状である。より具体的には、内布部15は、ボクサーブリーフ型の内衣であり、外布部14は、内衣よりもやや丈の長く、膝上丈のスパッツ型の外衣である。
【0038】
内布部15の構成は、例えば、ボクサーブリーフ型、ブリーフ型など任意の構成にすることができる。外布部14は、例えば、スパッツ型など内布部15よりも丈が長いもの又は内布部15と丈が同じものとして構成することができる。
【0039】
図1に示したように、外布部14は、右身頃141と、左身頃142とを含む。右身頃141と左身頃142とは、それぞれ、筒状であり、着用者の右脚又は左脚を通すことができる足ぐりを構成する。
図2に示したように、内布部15も同様に、右身頃151と左身頃152とを含む。右身頃151と左身頃152とは、それぞれ、筒状であり、着用者の右脚又は左脚を通すことができる足ぐりを構成する。
【0040】
図2に示したように、筒状の右身頃141及び左身頃142からなる外布部14の内側に、筒状の右身頃151及び左身頃152からなる内布部15が収納された状態となっている。すなわち、本実施形態の下着は、丈の長い外衣の内側に丈の短い内衣が内蔵された二重構造となっている。
【0041】
以下、外布部14について説明する。
図1(b)及び
図7(a)に示したように、外布部14の右身頃141は左端Cに、左身頃142の右端Eとの縫合部C1と、股布114の他端B2、B3との縫合部C2と、右身頃141の右端Dとの縫合部C3を有する。
図1(b)及び
図24に示したように、縫合部C1は着用者の臀裂部92に沿って、背筋方向に延びる。縫合部C2は、縫合部C1の下端から着用者の腰回り方向に延びる。縫合部C3は、縫合部C2の端部から着用者の背筋方向に沿って下方に延びる。なお、
図7における破線は、後述する伸縮部17の位置を示し、一点鎖線は、後述する内布部15の裾の位置を示す。
【0042】
図1(a)及び
図7(a)に示したように、外布部14の右身頃141は右端Dに、排尿器官の取出部13との縫合部D1と、右身頃141の左端Cとの縫合部D3とを有する。後述するように排尿器官の取出部13との縫合部D1の下方には、余部D2が配される。
図1(a)に示したように、縫合部D1は、着用者の正面側において背丈方向に沿って下方に延び、排尿器官側にカーブして着用者の背面側に至り、縫合部C2と接続する。
【0043】
図1(b)及び
図7(b)に示したように、外布部14の左身頃142は右端Eに、右身頃141の左端Cとの縫合部E1と、股布114の他端B2、B3との縫合部E2と、左身頃142の左端Fとの縫合部E3を有する。
図1(b)及び
図24に示したように、縫合部E1は着用者の臀裂部92に沿って、背筋方向に延びる。縫合部E2は、縫合部E1の下端部から着用者の腰回り方向に延びる。縫合部E3は、縫合部E2の端部から着用者の背筋方向に沿って下方に延びる。
【0044】
図1(a)及び
図7(a)に示したように、外布部14の左身頃142は左端Fに、排尿器官の取出部13との縫合部F1と、左身頃142の右端Eとの縫合部F3とを有する。後述するように排尿器官の取出部13との縫合部F1の下方には、余部F2が配される。
図1(a)に示したように、縫合部F1は、着用者の正面側において背丈方向に沿って下方に延び、排尿器官側にカーブして着用者の背面側に至り、縫合部E2と接続する。
【0045】
図1及び
図4に示したように、右身頃141及び左身頃142の上端は、着用者の腰部を覆う環状弾性材16と縫い合わされる。そして、右身頃141及び左身頃142の下端は、下着1の裾を構成する。裾は、右身頃141及び左身頃142の端部を折り返して縫われている。
【0046】
本実施形態の下着1では、
図8に示したように、外布部14の裏側(肌側)に着用者の臀部94を押し上げる伸縮部17が縫着されている。伸縮部17は、外布部14を構成する右身頃141及び左身頃142の両方に設けられる。伸縮部17は、外布部14の右身頃141又は左身頃142に対してその上端側及び下端側で、
図8(c)に示したように、3点千鳥ミシンによって、ジグザグに縫合されている。このため、外布部14及び伸縮部17が延びた際に縫合部分の糸が伸びやすく、糸が切れたり、編布が破れにくくなっている。
【0047】
伸縮部17は、外布部14における着用者の肌側に縫着される。後述するように、外布部17の内側には、内布部15が内蔵される。したがって、伸縮部17は、外布部14と内布部15の間に隠された状態となる。伸縮部17は下着1の外側に表れないため、摩擦等に外力によって、その端部が破れたり、解れたりすることを防ぐことができる。
【0048】
図1(b)及び
図24に示したように、伸縮部17は、その下端が着用者の臀溝95の下側に位置し、その上端が臀溝95の上側に位置する形状である。具体的には、
図24に示したように、伸縮部17の下端側の形状は、着用者の臀溝95の下側と、着用者の正面側の鼠径部91とを結ぶように延びており、臀溝95の下側から鼠径部91に向けて上方に傾斜する形状である。
【0049】
伸縮部17を構成する編布は、編布の縦方向及び横方向のいずれか一方の方向に対して伸縮性が強く、残りの他方の方向に対しては、前記一方の方向に対する伸縮性に比べて伸縮性が弱い編布を使用している。
図9において双方向の矢印で示したように、伸縮部17の下端が延びる方向に沿って強い伸縮性が得られるように編布を裁断している。
【0050】
一方、伸縮部17の上端は、
図9及び
図24に示したように、着用者の臀溝95の上側を凹曲線を描いて着用者の腰部の側面に至るまで延びる形状となっている。伸縮部17の下端の曲率に対して、伸縮部17の上端の曲率は大きくなる形状である。これによって、伸縮部17の上端側では、下端側に比べて伸縮性が弱くなり、締め付け力が比較的に小さくなる。
【0051】
上述の通り、本実施形態の下着1は、着用者の臀部94を押し上げる伸縮部17を備えているため、着用者の臀部94を押し上げて、着用者のヒップラインを美しく見せることができる。
【0052】
また、上述の通り、本実施形態の下着では、伸縮部17の下端側は上端側に対して伸縮性が強くなるように構成され、伸縮部の上端側は下端側に対して伸縮性が弱くなるように構成されている。これによって、24(b)に小さな矢印で示したように、伸縮部17の下端側で着用者の臀部94の分量を押し上げつつ、伸縮部17の上端側で臀部94を強く押えすぎることを防ぐことが可能になる。これによって、伸縮部17の上端によって臀部94の分量の移動が分断されることを防いで、伸縮部17の上端側で臀部94の分量が伸縮部17の上側に自然に移動することが可能なるため、着用者のヒップラインをより美しく見せることが可能になる。
【0053】
また、上記の通り、本実施形態の下着1では、伸縮部17の下端側は、着用者の臀溝95の下側と正面側の鼠径部91とを結ぶように延び、臀溝95の下側から鼠径部91に向けて斜め上方に傾斜する形状となっている。これによって、
図24(a)において矢印で示したように、着用者の臀部94を身体の内側に向けて斜め上方に押し上げることが可能になり、着用者の臀部94を背面視において略円形状に補正し、着用者のヒップラインをより美しく見せることが可能になる。
【0054】
次に、内布部15について説明する。内布部15の構成は、上端から下端に至る長さ、すなわち丈が異なる点を除いては、基本的外布部14と同じ構成である。
【0055】
すなわち、
図2(b)及び
図10(a)に示したように、内布部15の右身頃151は左端(左右方向における一端)Gに、左身頃152の右端(左右方向における他端)Iとの縫合部G1と、股布114の他端B2、B3との縫合部G2と、右身頃151の右端Hとの縫合部G3を有する。
図2(b)及び
図24に示したように、縫合部G1は着用者の臀裂部92に沿って、背筋方向に延びる。縫合部G2は、縫合部G1の下端から着用者の腰回り方向に延びる。縫合部G3は、縫合部G2の端部から着用者の背筋方向に沿って下方に延びる。
【0056】
図2(a)及び
図10(a)に示したように、内布部15の右身頃151は右端Hに、排尿器官の取出部13との縫合部H1と、右身頃の左端Gとの縫合部H3とを有する。後述するように排尿器官の取出部13との縫合部H1の下方には、余部H2が配される。
図2(a)に示したように、縫合部H1は、着用者の正面側において背丈方向に沿って下方に延び、排尿器官側にカーブして着用者の背面側に至り、縫合部G2と接続する。
【0057】
図2(b)及び
図10(b)に示したように、内布部15の左身頃152は右端Iに、右身頃151の左端Gとの縫合部I1と、股布114の他端B2、B3との縫合部I2と、左身頃の左端Jとの縫合部I3を有する。
図2(a)に示したように、縫合部I1は着用者の臀裂部92に沿って、背筋方向に延びる。縫合部I2は、縫合部I1の下端から着用者の腰回り方向に延びる。縫合部I3は、縫合部I2の端部から着用者の背筋方向に沿って下方に延びる。
【0058】
図2(a)及び
図10(b)に示したように、内布部15の左身頃152は左端(左右方向における一端)Jに、排尿器官の取出部13との縫合部J1と、左身頃152の右端(左右方向における他端)Iとの縫合部J3とを有する。後述するように排尿器官の取出部13との縫合部J1の下方には、余部J2が配される。
図2(a)及び
図24に示したように、縫合部J1は、着用者の正面側において背丈方向に沿って下方に延び、排尿器官側にカーブして着用者の背面側に至り、縫合部I2と接続する。
【0059】
内布部15の右身頃151及び左身頃152の下端は、折り返すことなく、
図11に示したように、裁った編布の端部を2本針のオーバーロックミシンで端縢縫いされている。編布を折り返すことなく編布の端部を解れにくいように処理しているため、下着を着用した際に、編布の折り返し部分が着用者の身体を圧迫し難い。しかも、端縢縫いされた糸は、編布が伸びても切れにくいので好ましい。なお、内布部15の右身頃151及び左身頃152の上端は、後述するように、着用者の腰部を覆う環状弾性材16に縫合される。
【0060】
次に、外布部14と内布部15の構造を
図12ないし
図16に示した縫製手順を参照して説明する。以下では外布部14を構成する右身頃141と、内布部15を構成する右布部151と、上記
図13で得た排尿器官の取出部13を縫合する手順を例にして説明する。
【0061】
図12に示したように、外布部14を構成する右身頃141の縫合部D1の上端と、
図3で得た排尿器官の取出部13の右端の上部と、内布部15を構成する右身頃151の縫合部H1の上端とがほぼ一致するように、それぞれの布を重ね合わせる。
【0062】
外布部14を構成する右身頃141は、
図12に示したように、排尿器官の取出部13の右端から外方向に突出する余部D2を備える。同様に、内布部15を構成する右身頃151も、
図14に排尿器官の右端から外方向に突出する余部H2を備える。
【0063】
図13(a)及び(b)に示したように、上記の余部D2、H2の上端が排尿器官の取出部13の右端とほぼ一致するように重ね合わせて、排尿器官の取出部13の右端と、外布部14の右身頃141の縫合部D1及び余部D2と、内布部15の右身頃151の縫合部H1及び余部H2とを端縢縫いで縫合する。そして、外布部14の右身頃141と内布部15の右身頃151を、
図13(b)に矢印で示したように、排尿器官の取出部13の右側に折り返す。なお、
図15においては各布の位置関係を理解しやすくするために、排尿器官の取出部13及び内布部15の右身頃151は、外布部14の右身頃141から多少ずらした状態で示している。
【0064】
外布部14を構成する左身頃142と、内布部15を構成する左身頃152と、排尿器官の取出部13の縫合方法については、
図13(a)及び
図13(b)で示した外布部の右身頃141及び内布部の右身頃151を左右に反転させた位置関係で行うため、図示は省略する。すなわち、外布部14を構成する左身頃142の縫合部F1(
図7)の上端と、排尿器官の取出部13の左端の上部と、内布部15を構成する左身頃152の縫合部J1の上端とがほぼ一致するように、それぞれの編布を重ね合わせて縫合する。そうすると
図14に示した状態となる。
【0065】
図14において矢印で示したように、内布部15の右身頃151の縫合部G1と、内布部15の左身頃152の縫合部I1とを合わせて、二本針のオーバーロックミシンで端縢縫いして縫合する。同様に、外布部14の右身頃141の縫合部C1と、外布部14の左身頃142の縫合部E1とを合わせて、二本針のオーバーロックミシンで端縢縫いして縫合する。そうすると、
図15に示す、筒状の内布部15と筒状の外布部14とが排尿器官の取出部13を介して連結された状態となる。
【0066】
図15に示したように、外布部14の右身頃141の縫合部C3及び縫合部D3と、内布部15の右身頃151の縫合部H3及びG3とを縫合し;外布部14の右身頃141の縫合部C2と、内布部15の右身頃151の縫合部G2と、外布部14の左身頃142の縫合部E2と、内布部15の左身頃152の縫合部I2と、股布11の他端B2及びB3とを縫合し;外布部14の左身頃142の縫合部E3及びF3と、内布部14の左身頃142の縫合部I3及びJ3とを縫合する。そうすると、
図16に示した状態となる。
【0067】
図16において矢印で示したように、内布部15の縫合部G1、I1を外側にひっくり返し、外布部14の縫合部C1、E1を外側にひっくり返すことで、
図1及び
図2に示したように、外布部14の足ぐりに対して内布部15の足ぐりが内蔵された状態となる。内布部15、外布部14、及び排尿器官の取出部13の上端を上述の環状弾性材16に縫合し、
図1(a)及び
図1(b)に示す右身頃141及び左身頃142の下端を折り返して縫い上げ裾を構成すると、下着1が完成する。
【0068】
内布部15及び外布部14を
図16において矢印で示したようにひっくり返した状態では、
図2に示したように、縫い代が内布部15と外布部14との間に隠された状態となる。本実施形態の下着1では、縫合部G1、I1、I2、G2、I3、G3、J3、H3、D1、D2、F1、F2、H1、H2、J1、及びJ2が隠された状態となる。すなわち、本実施形態の下着1では、外布部14の右身頃141を筒状にするための縫合部C3、D3と、外布部14の左身頃142を筒状にするための縫合部E3、F3を除いて、全ての縫合線が内布部15に隠された状態となるため、下着1をつけたときの着心地が良好である。外布部14の伸縮性を内布部15に対して強くして、補正用下着として構成した場合でも、縫い代が直接に着用者の身体に触れない。このため、補正用下着として構成しても、着心地は良好である。
【0069】
また、内布部15は、外布部14に比べて編目の小さい緻密な編布から構成されており、外布部14は、内布部15に比べて伸縮性の強い編布から構成している。着用者が下着1を着用した際に内布部15が肌に当たるため、肌触りが軟らかくなるようになっている。一方、外布部14は、着用者が下着1を着用した際に身体を引き締めて、弛んだ身体を引き締めることができるようになっている。上述の通り、内布部15は柔軟性に富む編布から構成されているため、外布部14で身体を締め付けることによる着心地の悪化を防ぐことが可能となっている。
【0070】
図17に示したように、第3開口121は、着用者の腰回りの方向に延びている。第3開口121には、着用者から見て上方から手指をれることができるため、排尿器官を取り出しやすい。外布部14及び内布部15は伸縮性に富む編布から構成されている。このため、手指を第3開口に挿入すると、
図17(a)において矢印で示したように、外布部14及び内布部15が伸長して第3開口に指を入れやすくなる。手指を第3開口から抜くと外布部14及び内布部15が収縮して元に戻る。
【0071】
本実施形態の下着1は、
図17(b)に示した通り、第1開口111及び第2開口112を右側と左側のに備えているので、着用者の好みの開口から排尿器官を取り出することができる。
【0072】
本実施形態の下着1では、着用者の身体に接触し、比較的に伸縮性が弱い編布は、異形断面のフィラメント糸を使用した編物から構成されている。このため、吸水性に優れており、ある程度の伸縮性を備えており、しかも蒸れにくい。異形断面のフィラメント糸は、例えば、ポリエルテルなどの合成樹脂から構成することが好ましい。
【0073】
着用者の身体の外側に配され、着用者の身体には接触せず、比較的に伸縮性が強い編布は、ポリウレタンなどのエラストマーと、ポリエステルなどの伸縮性に乏しい合成樹脂材料とから構成される芯鞘繊維を使用した編物から構成されている。これによって、比較的に強い伸縮性を発揮する。
【0074】
[第2実施形態]
図18に第2実施形態に係る下着2を裏返した状態を示す。本実施形態の下着2は、上記の下着1における内布部15を備えない点、及び外布部14は比較的に伸縮性の弱い編布で構成されている点で、上記の下着1とは異なる。なお、腹当布113、股布114、前立布122は、
図3に示したのと同じ2重構造となっており、その点では上記の実施形態に係る下着1と同様である(後述の第3実施形態に係る下着、及び第4実施形態に係る下着において同じ。)。
【0075】
本実施形態の下着2では、外布部14の伸縮性が比較的に弱く、着用者の身体を強く締め上げないので、内布部15を省いている。外布部14と前立布122との縫合線や伸縮部17と外布部14との縫合線が着用者の肌に直接に接触するものの、外布部14の伸縮性が比較的に弱いので、縫着線が着用者の身体に強く接触することを防ぐことができる。本実施形態の下着2では、内布部15を縫い合わせる手順を省略することができるので、より容易に下着を縫製することが可能になる。
【0076】
[第3実施形態]
図19に第3実施形態に係る下着3を示す。本実施形態の下着3は、着用者の腰部96、及び下腹部97を覆う環状部18を備える点で上記の下着1とは異なる。
図19に示したように、環状部18は、
図1において、2点鎖線を引いた領域より上に設けられる。具体的には、着用者の下腹部97が位置する第3開口121の上の部分が、内布部15、外布部14、及び排尿器官の取出部13の上端部となっている。この上端部に、環状部18の下端部が縫着される。本実施形態の下着3では、環状部18が着用者の腰部96を締めるため、腰部96を覆う環状弾性帯16は省略されている。
【0077】
環状部18は、
図20に破線で示したように、伸縮性を有する帯状の編布を中ほどで折り重ねて、
図21に示したように、両端部分を縫合して、環状かつ帯状にした部材である。上端部分では、伸縮性を有する編布が2枚、山折りされているため、着用者の腰部96を下端部分に比べてより強く締め付けることができる。
【0078】
環状部18を設けることによって、
図19に示すように、着用者の腰部96を締めて、腰痛を緩和したり、姿勢を矯正することが可能になる。また、環状部18を設けることによって、着用者の下腹部97を締めて、出っ張った下腹部97を美しく補正することが可能になる。
【0079】
環状部18は、編物や天然ゴム又は合成ゴムなどのエラストマーを編み込んだ編布などから構成することができる。上述の芯鞘繊維を使用した編物で構成してもよい。
【0080】
[第4実施形態]
図22に第4実施形態に係る下着4を示す。本実施形態の下着4は、着用者のみぞおち部分98を覆う環状体19を備える点で上記の下着1とは異なる。
図22に示したように、環状弾性帯16の上端部に、着用者の腰部96からみぞおち部分98、より具体的にはみぞおちの上部を覆う環状体19の下端部が縫着される。
【0081】
環状部19は、
図23に破線で示したように、伸縮性を有する帯状の編布を中ほどで折り重ねて、両端部分を縫合して、環状かつ帯状にした部材である。上端部分では、伸縮性を有する編布が2枚、山折りされているため、着用者のみぞおちの上部を比較的に強めに締め付けることができる。みぞおちの上部には胸骨の下端が隣接しており、肥満の度合いが進むと胸骨の下端部から着用者の腹の上部が突出する。本実施形態の下着4では、環状体19を設けることによって、腹部の突出の起点となるみぞおちの上部を強めに締め付けることによって、着用者の腹部のラインを引き締めて美しく補正することが可能になる。また、腹部が突出する起点よりも下に環状体19の上端が位置すると、環状体19がずり落ちる原因となる。本実施形態の下着では、腹部が突出する起点であるみぞおちの上部よりも上に環状体19の上端が位置するようになっているので環状体19がずり落ちることを防止することが可能になる。
【0082】
環状体19は、編物や天然ゴム又は合成ゴムなどのエラストマーを編み込んだ編布などから構成することができる。上述の芯鞘繊維を使用した編物で構成してもよい。
【0083】
上記実施形態に係る下着1等では、第1編布11は、外布部14とは別の布で構成されている。第1編布11は、外布部11と一体の布から構成してもよいし、第1編布11の腹当布113と股布114とは一体に構成してもよい。また、排尿器官の取出部13は外布部11と一体に構成してもよい。また、上記実施形態に係る下着1等では、第2編布12が前立布122から構成されている。第2編布12は、前立布122と股布114の外布114aとを一体に構成してもよい。
着用者の排尿器官を覆い、着用者の背筋方向に沿って排尿器官の両側面側に配される第1開口及び第2開口を備える第1編布と、第1編布に配された第1開口及び第2開口を覆い隠すように配される第2編布とを含む排尿器官の取出部を有する男性用下着であって、排尿器官の取出部は、第1編布と第2編布との間に、着用者の腰回りの方向に延びており、第2編布の端部から構成される第3開口を備えており、第1開口又は第2開口と第3開口とは互いに連通しており、第1開口又は第2開口と第3開口とを経て排尿器官を取り出し可能に構成された男性用下着である。