(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、電気掃除機は吸引した塵埃が本体に蓄積してくると吸込力が低下して掃除機の性能が悪化するため、JIS C 9108に定められた吸込仕事率を向上させることによって掃除機の基本性能を高めている。特に業務用掃除機やその他の電気掃除機では、大量の塵埃を吸引したり、特殊な用途で使用されることが多く吸込仕事率を高めたりする必要がある。
【0005】
そのような課題に対して定格消費電力を1000W以上とすることによって吸込仕事率を向上させる手段があるが、日本の一般的な電源コンセントは100Vであり最大許容電流は15A以下である。そのため電気掃除機の最大電流を15A以下に抑え吸込仕事率を最大限向上させることが望まれる。
【0006】
本発明は、電気掃除機の基本性能である吸込仕事率向上を図りつつ、一般的な電源コンセントを用いても問題の無い使い勝手の良い電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電動送風機を内蔵し、電源コード巻取装置を備えた電気掃除機本体において、前記電気掃除機の定格消費電力を1000W以上に設定するとともに、前記電気掃除機の最大電流を15A以下に設定し、前記電源コードの定格電流値を15Aとし、前記電源コードの種類を二種ビニルキャブタイヤ丸型コード(HVCTF)とし、導体公称断面積を1.8mm
2とし、前記掃除機本体に制御回路を設け、前記電動送風機を位相角制御するとともに、最大吸込仕事率点の位相角を0°とし、前記制御回路の位相角制御に用いるトライアック素子の定格電流値を25A
又は30A
又は40Aとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気掃除機の基本性能である吸込仕事率向上を図りつつ、一般的な電源コンセントを用いても問題の無い使い勝手の良い電気掃除機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の実施例の要旨を述べる。
電動送風機を内蔵し、電源コード巻取装置を備えた電気掃除機本体において、前記電気掃除機の定格消費電力を1000W以上に設定するとともに、前記電気掃除機の最大電流を15A以下に設定し、前記電源コードの定格電流値を15Aとしたことを特徴とする。これにより定格消費電力1000Wの電気掃除機に比べて吸込仕事率を大幅に向上することができる。
【0011】
また、前記電源コードの種類を二種ビニルキャブタイヤ丸型コード(HVCTF)とし、導体公称断面積を1.8mm
2としたことを特徴とする。これにより電源コードの定格電流値を15Aとする場合に、導体公称断面積を2.0mm
2とした電気掃除機に比べて電源コードを軽くできるので電気掃除機の本体質量を軽減できる。更に、導体公称断面積を1.25mm
2とした電気掃除機に比べて電源コードの電気抵抗を少なくできるので電動送風機に印加する実効電圧を向上できるので掃除機の出力を向上することができる。
【0013】
また、掃除機本体に制御回路を設け、前記電動送風機を位相角制御するとともに、最大吸込仕事率点の位相角を0°としたことを特徴とする。これにより、電気掃除機の吸込仕事率の出力値を安定させることができるため、使い勝手の良い電気掃除機を提供することができる。
【0014】
また、掃除機の制御回路で位相角制御を行うトライアック素子の定格電流値を20A以上としたことを特徴とする。これにより、トライアック素子での電気損失を低減できるので、トライアック素子の定格電流値を20A以下とした電気掃除機に比べて電動送風機に印加する実効電圧を向上できるので掃除機の出力を向上することができる。
【0015】
以上で要旨を説明した本発明を、一実施例の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施例の電気掃除機は、掃除機本体105と、ホース104と、手元操作管103と、延長管102と、吸口体101とを備えて構成されている。掃除機本体105の内部には吸引力を発生させる電動送風機や、この電動送風機の吸引力で集塵した塵埃を収容する集塵部および電源コード巻取装置などが内蔵されている。
【0017】
被掃除面に堆積している塵埃を吸引するときは吸口体101から塵埃を吸引し、延長管102を介して手元操作管103の内部を塵埃が通り、ホース104を経て掃除機本体105に集塵される。また、延長管102は使用者が使いやすいように長さが自在に調整できる伸縮構造となっている。
【0018】
図2は手元操作管103を示しており、操作管本体201は延長管102と接続して塵埃が通過する筒状部208と操作者が手で握るグリップ部209とが一体となっている。操作管本体201の上部には、全体を覆うように構成した上部カバー202を設け、吸込力を調整するためのスイッチ基板(図示せず)や、延長管102を着脱するための着脱ボタン205を内包している。掃除機本体105を運転するためには、上部カバー202に設けた手元スイッチ204を押して運転を開始し、吸引力の調整や運転停止なども手元スイッチ204で行う。
【0019】
図3は手元スイッチ204を表しており、一般的に「強」「中」「弱」「切」の運転モードが選択可能で、吸引力が足りないときには「強」運転を選択し、運転音が気になるときなどは「中」や「弱」を選択することができる。また、掃除が終われば「切」を押すことで掃除機の運転を停止できる。
【0020】
操作管本体201の後側(下流側)にはホース104が備えられ掃除機本体105へ塵埃を搬送している。また、操作管本体201とホース104は回転自在なホースカバー206で構成している。207に示す収納フックは掃除機を収納するときに延長管102と手元操作管103を取り外した際に延長管102先端や様々な部分に引っ掛けられるようになっている。
【0021】
図4は掃除機本体105の内蔵品を表した図であり、一部の部品を表示していない状態である。電源コード301は電源コ−ド巻取装置302によって巻取り可能な構造になっている。電源コード巻取装置302はゼンマイ303を設けており、まず初めに使用者が電源コード301を引き出すとゼンマイ303が巻締まり、トルクを蓄積する。使用者が手を離しても巻取りボタン304がストッパーの役割を果たすので電源コード301は掃除機本体105には巻戻らない。使用者が掃除を終え巻取りボタンを押すとストッパーが解除されゼンマイ303に蓄えられたトルクによって電源コード301が掃除機本体105へと収納される。電源コード301はJIS C 9108によって電気掃除機では5mと規定されており、この導体抵抗による電圧低下が約1%程度発生する。
【0022】
図5は掃除機本体105の内蔵品を表した図であり、前述した電源コード巻取装置302および一部の部品を表示していない状態である。掃除機本体105内には電動送風機401を設けており、この電動送風機401から発生する吸引力により塵埃を吸引可能としている。電動送風機401は電源電圧100Vで動作するが、前述した手元スイッチ204で運転を切り替えるためには制御基板305を使って位相角制御する必要がある。また、掃除機本体105に塵埃が堆積してくると吸引力が低下してくるため、近年の電気掃除機は制御基板305に設けたマイコンを使って塵埃の量を電流センサーや圧力センサーで判断しながら「強」運転であっても吸引力を自動で制御している。また、吸引力を制御するためには電動送風機401に印加する実効電圧を100V以下にすることで消費電力を下げて吸引力をコントロールしている。
【0023】
図6は本実施例の電気掃除機を運転したときに電気的制御を行った状態を表しており、掃除機の風量と消費電力と電流値を表した図である。塵埃が少ないときには風量が大きく吸引力もあることから、電動送風機401に印加する実効電圧を下げ消費電力を抑えている。塵埃が堆積してくると風量が低下するため吸引力も低下する。このとき制御基板305で風量が低下したことを判断し、電動送風機401に印加する実効電圧を上げ消費電力も増加するため吸引力が向上し、塵埃が堆積した場合でも吸引力が保たれ使い勝手を損なうことが無い。更に塵埃が堆積してくると風量が更に減少するため、ある程度の風量以下になった場合には、電動送風機の保護と使用者への塵埃廃棄を知らせるため、電動送風機401に印加する実効電圧を極端に下げて消費電力を抑えるとともに、報知ランプなどでお知らせする機能となっている。
【0024】
本来、電動送風機401は
図6の点線で示した特性を持っている。前述したマイコン制御などにより消費電力をコントロールしない機種などは、この点線で動作する。比較的高級な掃除機は本体内部に制御基板305を設けて吸引力を調整可能になっており、交流100Vの電源電圧を位相角制御によって調整し、電動送風機401に印加する実効電圧を調整し消費電力を変化させている。しかしながら位相角制御で実効電圧を下げても電源波形が歪んで力率が悪化し実効電流値は殆ど低下しない。
【0025】
具体的事例をもとに説明する。定格消費電力を1150Wとし±10%の許容範囲である1035Wから1265Wの間で消費電力をコントロールする場合、
図6に示す最大風量(約2.7m
3/min)の状態で1035Wとして消費電力を抑えるが実効電流値は力率の低下によって14.5A程度となっている。また、塵埃が堆積して風量が低下してきた状態(風量 約2.0m
3/min前後)では消費電力を1265Wまで向上し消費電力を上げて吸引力を向上しているが、このときの実効電流は12.8A程度となる。
【0026】
日本の一般的な電源コンセントは電圧100Vで許容電流は15Aが主流である。つまり電気掃除機の特性は電流値を15A以下にする必要があり、前述した吸引力調整機能が付いた状態でも同様であり、掃除機がどんな状態でも15A以下にする必要がある。消費電力を調整し吸引力を下げても電動送風機の特性によって最大風量の状態が最も実効電流値が高いことから、最大風量の状態で実効電流を15A以下にすることが肝要である。
【0027】
前述した電源コード301はJIS C 3306に規定された二種ビニルキャブタイヤ丸型コード(HVCTF)としている。JIS C 3301に規定されたゴムコードを採用することも可能であるが電源コード巻取装置302で巻取るためには、コードのしなやかさが大切であり、二種ビニルキャブタイヤ丸型コード(HVCTF)が適している。二種ビニルキャブタイヤ丸型コード(HVCTF)の導体被覆には塩化ビニルを用いるが耐熱温度によって、許容電流値が電気用品安全法およびJIS C 9335−1で定められている。また、電気掃除機に使う電源コード301はできるだけ軽くて細いコードが求められる。一般的には導体公称断面積が1.25mm
2のコードを用いており耐熱温度60℃の被覆では許容電流が12A、耐熱温度75℃の被覆では許容電流が14A、耐熱温度80℃の被覆では許容電流が15Aである
。
【0029】
他の手段として二種ビニルキャブタイヤ丸型コード(HVCTF)の導体被覆に耐熱温度75℃の塩化ビニルを用い、導体公称断面積が1.8mm
2のコードを用いることで許容電流値を15A以上にすることができる。この場合、電源コード301の導体抵抗値が下がるので、電圧損失が導体公称断面積1.25mm
2に比べて少なくなるので電動送風機401の出力が向上し、電気掃除機の吸込仕事率を向上することができる。また、JIS C 3306で定められた2.0mm
2のコードを用いるよりも軽量にできるため掃除機本体105の軽量化が図れる。
【0030】
ところで、
図6のグラフで電動送風機401の消費電力が点線で示す部分では本体の制御基板305で位相角制御を行い、消費電力を抑えているため、電動送風機401の出力である吸込仕事率が不安定である。したがって、
図6のグラフのF領域。つまり位相角制御の位相角が0°の状態で出力が安定するので、電気掃除機の最大吸込仕事率が発生する風量をF領域に設定することが望ましい。これにより、吸込力の指標であるJIS C 9108に規定された吸込仕事率を安定して測定することができる。
【0031】
更に掃除機の吸込仕事率を向上させるための手段として次の構造がある。
【0032】
図5における制御基板305には位相角制御を行うためのトライアック素子(スイッチング素子)402を設けている。このトライアック素子で交流100Vの電圧を変化させて電動送風機401へ印加する。このときトライアック素子402は発熱するため冷却する必要があり、素材がアルミニウム材料もしくは銅材料もしくは銀材料、金材料からなる放熱プレート403と接触させて配置することで放熱を行っている。
【0033】
前述した制御基板305で位相角制御を行うためのトライアック素子402を通常は定格電流16Aとしているが、このトライアック素子402の定格電流値を20A以上(具体的には25A、30A、40A)の素子を用いることで電動送風機401へ印加する実効電圧が約0.2〜0.4%程度上昇する。これにより、電動送風機401の出力が向上するので電気掃除機としての吸込仕事率を向上することができる。また、本実施例の電気掃除機では電動送風機401の実効電流が15A近くなるのでトライアック素子402の定格電流値が16Aの場合、発熱温度に問題が生じる可能性があるため、定格電流20A以上のトライアック素子を使うことが重要となる。
【0034】
以上述べたように、電気掃除機の消費電力を1000W以上とした場合には、様々な制約があるので、電気掃除機の最大電流を15A以下に設定し、前記電源コードの定格電流値を15Aとすることで、最も適した状態で吸引力の強い電気掃除機を提供することができる。
【0035】
また、電源コードの定格電流値を15Aとするために、電源コードの種類を二種ビニルキャブタイヤ丸型コード(HVCTF)とし、導体公称断面積を1.8mm
2とすれば、更に吸引力(吸込仕事率)を向上することができる。
【0037】
更に、掃除機本体に制御回路を設け、前記電動送風機を位相角制御するとともに、最大吸込仕事率点の位相角を0°とすることで吸込仕事率を安定して測定することができる。
【0038】
また、制御回路の位相角制御に用いるトライアック素子の定格電流値を20A以上とすることで更に吸込仕事率を向上できるとともにトライアック素子の温度上昇を抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、種々の形態で実施することができる。