(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本件明細書において、不快な官能的性質とは、苦味、えぐ味、渋み、酸味、辛味若しくは痺れ感等の不快な味、又は不快な臭い等が挙げられる。
本件明細書において不快な官能的性質を有する薬物とは、通常医薬活性成分として用いられるものであれば特に制限されない。かかる医薬活性成分としては、塩酸インジセトロン、塩酸メクロフェノキサート、クロラムフェニコール、アミノフィリン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ホパテン酸カルシウム、フェノバビタール、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、塩酸プロプラノロール、フルフェナム酸、ジギトキシン、テオフィリン、塩酸プロメタジン、塩酸キニーネ、スルピリン、イブプロフェン、塩酸チクロピジン、塩化ベルベリン、ジギトキシン、スルピリン、塩酸アゼラスチン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、塩酸プロプラノロール、クロラムフェニコール、アミノフィリン、エリスロマイシン、フェノバルビタール、パントテン酸カルシウム、塩酸インデロキサジン、塩酸アミノグアニジン及びイミダフェナシン等が挙げられる。
【0013】
本明細書において、「薬物を含有する粒子」とは、薬物を含有する粒状物を意味し、例えば造粒物、コーティング顆粒、粉砕物等が挙げられるが、特に制限しない。当該粒子は、口腔内で錠剤が崩壊し、薬物含有顆粒へと分散した際に感じる口腔内でのざらつき感や、当該顆粒の口腔内への残留を改善する点で、平均粒子径が50μm以上500μm以下であること、さらに好ましくは70μm以上350μm以下、特に好ましくは70μm以上250μm以下であることが好ましい。ここでいう平均粒子径とは、ふるい分け法にて算出した平均粒子径を意味する。
【0014】
本件明細書において、水不溶性セルロースエーテルとは、エチルセルロース、アセチルセルロース、エチルメチルセルロース、エチルプロピルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。好ましくは、アセチルセルロース又はエチルセルロースが挙げられ、さらに好ましくはエチルセルロースが挙げられる。
【0015】
本件明細書において水不溶性アクリル酸系ポリマーとは、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー(例えば、商品名:オイドラギットRS100、オイドラギットRSPO、オイドラギットRL100、オイドラギットRLPO、EVONIK社製)、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチルコポリマー分散液(商品名:オイドラギットNE30、EVONIK社製)等の水不溶性アクリル酸系共重合体が挙げられる。このうち、好ましくは、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーが挙げられる。水不溶性アクリル酸系ポリマーの含有量は、放出遅延の改善という点で、水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し、好ましくは0.5重量部以上であり、より好ましくは0.5重量部以上5重量部以下であり、さらに好ましくは0.8重量部以上5重量部以下であり、特に好ましくは0.8重量部以上2重量部以下、より好ましくは0.8重量部以上1.5重量部以下である。
【0016】
水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し水不溶性アクリル酸系ポリマーの含有量を減量することにより、第二液の溶出率が上昇する傾向がある。
【0017】
よりpH非依存的な放出を示す口腔内速崩壊性錠剤が得られるという観点から、水不溶性セルロースエーテルと水不溶性アクリル酸系ポリマーの合計重量は、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子1重量部に対し、0.05重量部以上0.30重量部以下が好ましい。さらに好ましくは、0.15重量部以上0.30重量部以下、特に好ましくは0.15重量部以上0.25重量部以下である。
【0018】
本件明細書において陰イオン性界面活性剤とは陰イオン性の親水基を持つ界面活性剤であり、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸アルキル塩、高級脂肪酸塩、又はアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0019】
通常、水不溶性セルロースエーテルや水不溶性アクリル酸系ポリマー等の種類の違う複数のポリマーを単純に混合しても、安定な混合物として存在せず、相分離構造をとるが、本件発明では、両ポリマーに加え、さらに陰イオン性界面活性剤を配合することにより、両ポリマー間に相互作用し、相分離構造を安定化することを見出した。さらに、得られたポリマー混合物は、一種類のポリマーでは得られない新しい溶出特性を発揮することを見出した。
【0020】
陰イオン性界面活性剤のうちより好ましくは、硫酸アルキル塩が挙げられ、より好ましくはラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。陰イオン性界面活性剤の含有量は、水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上0.5重量部以下、さらに好ましくは0.09重量部以上0.5重量部以下、特に好ましくは0.09重量部以上0.25重量部以下である。
【0021】
水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し陰イオン性界面活性剤の含有量を増量することにより、第一液の溶出率を抑制し、第一液の溶出率と第二液の溶出率との差を縮めることができる。
【0022】
クエン酸トリエチルの含有量は、水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上0.5重量部以下、さらに好ましくは0.09重量部以上0.5重量部以下、特に好ましくは0.09重量部以上0.25重量部以下である。クエン酸トリエチルは可塑剤として働き、皮膜成分に加えることにより、水不溶性セルロースエーテル及び水不溶性アクリル酸系ポリマーに柔軟性を与える。これにより、得られた薬物含有顆粒は、衝撃や外圧に強くなり、打錠の圧力で薬物含有顆粒の皮膜が壊れることを防止することができる。
【0023】
本件明細書において口腔内速崩壊性錠剤とは、口腔内で唾液の存在下、咀嚼無しに約90秒、好ましくは約60秒、更に好ましくは40秒より短い時間で崩壊する固形医薬製剤をいう。
【0024】
本明細書においてpH非依存的な放出とは、胃及び腸における薬物放出速度の差が少なくなることを意味する。より詳しくは、第16改正日本薬局方崩壊試験法(パドル法)で試験を行った場合、溶出試験開始後0分から60分に渡り、第一液の溶出率から第二液の溶出率を差し引いた値が−20%以上+20%以下であることを意味し、好ましくは−15%以上+15%以下であり、特に好ましくは−10%以上+10%以下である。
【0025】
不快な官能的性質を抑えるためには、口腔内速崩壊性錠剤を口腔に含んでから崩壊するまでの間、薬物の溶出を抑える必要がある。口腔内は弱塩基性であることから、第16改正日本薬局方崩壊試験法(パドル法)で試験を行い、第二液(pH6.8)の溶出率1分値が7%以下である場合に、不快な官能的性質を抑えることができる口腔内速崩壊性錠剤であると判断した。
【0026】
また、医薬品製剤は単独で服用するのみならず、他の医薬品製剤と同時に服用する場合もあり得る。他の医薬品製剤がムコダイン等の酸性の医薬品であった場合、服用時に口腔内のpHが一時的に低下するが、この場合でも不快な官能的性質を抑えられる製剤が望ましい。
【0027】
実際、現在までに、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE等の胃溶性高分子を用いて味マスクをした製剤が存在するが、酸性の医薬品と同時に服用すると、苦味が出現することが知られている。このため、当該製剤が酸性の医薬品と同時に処方された場合には、同時に服用しない、さらには服用と服用の間にはうがいを行う等の注意が必要となり、患者負担が生じている。
【0028】
上記の点を改善するため、本件発明においては、第16改正日本薬局方崩壊試験法(パドル法)で試験を行い、第一液(pH1.2)の溶出率1分値が10%以下であることが好ましい。
【0029】
また、口腔内で崩壊後、胃内に移行した後は、速やかに溶出し薬効を発揮する必要がある。このため、パドル法で試験を行った場合、第一液(pH1.2)の溶出率30分値が60%以上、さらに好ましくは65%以上である製剤が好ましい。
【0030】
さらに、胃内のpHが1.2以上である低胃酸の患者が服用した場合でも、溶出が極端に遅くならないように、第二液(pH6.8)の溶出率の30分値が60%以上、さらに好ましくは65%以上である製剤が好ましい。
【0031】
本件明細書における口腔内速崩壊性錠剤は、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子と、(A)水不溶性セルロースエーテル、(B)水不溶性アクリル酸系ポリマー(C)陰イオン性界面活性剤及び(D)クエン酸トリエチルを含有する皮膜の間に、中間皮膜を有していてもよい。中間皮膜に使用される添加剤としては、水溶性ポリマーや帯電防止剤、可塑剤が挙げられるが特に制限されない。中間皮膜の使用量は、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子1重量部に対し、好ましくは0.1重量部以上0.5重量部以下、より好ましくは0.1重量部以上0.3重量部以下、特に好ましくは0.1重量部以上0.15重量部以下であることが好ましい。
【0032】
不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子の表面に中間皮膜を施すことにより、粒子表面の凹凸が滑らかな粒子が得られる。得られた粒子の上に、さらに前記(A)〜(D)を含有する皮膜を施すことにより、より効果的に不快な官能的性質のマスキング効果を発揮する。特に、不快な官能的性質を有する薬物として、水に溶けやすい、さらには水に極めて溶けやすい薬物を使用した場合は、水に溶け難い薬物に比べ、患者が服用時に苦味等の不快な官能的性質を感じやすいため、中間皮膜を使用することが好ましい。
【0033】
本明細書において、水溶性ポリマーとは、親水性の置換基を有し、水溶性を示すポリマーであり、親水性置換基として、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アミノ基、オキシメチレン基又はオキシエチレン基等、更にカルボキシル基、スルホン酸基若しくはホスホン酸基等の酸性基、又はこれら酸性基のアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩等を挙げることができる。水溶性ポリマーの例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、澱粉誘導体、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(アミノ酸)、ポリカルボキシレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオール、エポキシ樹脂、尿素樹脂若しくはフェノール樹脂、又はこれらの誘導体若しくは組合せが挙げられる。より好ましくはヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、さらに好ましくはヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0034】
本明細書において、帯電防止剤の例としては、タルク、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸又はステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩等、が挙げられる。
【0035】
本明細書において、可塑剤の例としては、ポリソルベート類、トリアセチン、フタル酸ジエチル、マクロゴール類又はクエン酸トリエチル等が挙げられる。本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、必要により医薬品製剤の製造に使用可能な賦形剤、崩壊剤又は結合剤を配合してもよい。ここで配合される賦形剤、崩壊剤又は結合剤は、医薬品製剤の製造に使用可能なものであれば特に限定はなく、例えば、医薬品添加物事典[日本医薬品添加剤協会、薬事日報社(2007年)]に記載されているものを適宜使用できる。
【0036】
賦形剤の例としては、乳糖や、ブドウ糖等の糖類、D−ソルビトールや、D−マンニトール等の糖アルコール類、結晶セルロース等のセルロース類、部分アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン類等を好適に挙げることができる。より好ましくは糖アルコール類又は結晶セルロース、さらに好ましくはD−マンニトール又は結晶セルロースが挙げられる。
【0037】
特に薬物を含有する粒子内に使用される賦形剤としては、コーティング中の粒子同士の付着が抑制でき、表面の滑らかな粒子ができるという点で、水への溶解度の低い賦形剤の使用が好ましい。水への溶解度の低い賦形剤の例として、結晶セルロースが挙げられ、特に好ましくは結晶セルロース(粒)が挙げられる。
【0038】
本明細書において、「水への溶解度の低い賦形剤」とは「水に溶けにくい賦形剤」「水に極めて溶けにくい賦形剤」又は「水にほとんど溶けない賦形剤」を意味し、「水に溶けにくい」「水に極めて溶けにくい」及び「水にほとんど溶けない」の用語は、第16改正日本薬局方通則に拠る。
【0039】
崩壊剤の例としては、カルボキシメチルセルロースカルシウムや、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、デンプン類、又はクロスポビドンが挙げられるが、速やかな崩壊性及び飲用のし易さ(口当たりのよさ)の点から低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又はクロスポビドンを使用することが好ましい。崩壊剤の配合量は、錠剤中1〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは2〜6質量%である。
【0040】
結合剤の例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプンが挙げられるが、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0041】
本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、必要により医薬品製剤の製造に使用可能な添加物を配合することができる。具体的には、医薬品添加物事典[日本医薬品添加剤協会、薬事日報社(2007年)]に記載されているものを使用でき、例えば、滑沢剤としてステアリン酸及びその金属塩類、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、並びにショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。このうち、より好ましくはステアリン酸金属塩又は含水二酸化ケイ素、さらに好ましくはステアリン酸マグネシウム又は含水二酸化ケイ素が挙げられる。滑沢剤は1又は2以上の滑沢剤を組み合わせることができる。甘味剤として糖類、糖アルコール類、アスパルテーム、サッカリン及びその塩類、グリチルリチン酸及びその塩類、ステビア、並びにアセスルファムカリウム等、嬌味剤としてクエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸及びフマル酸等、着色剤として三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カラメル、リボフラビン及びアルミニウムレーキ等、香料としてメントール及びオレンジ油等が挙げられる。
【0042】
本発明の口腔内速崩壊性錠剤を、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子とは別に崩壊剤を添加して製造する場合、V字型混合機や、ダイヤモンドミキサー、ドラムミキサー等の装置において混合し、次いで圧縮成形されて調製される。
【0043】
圧縮成形は、例えば、ロータリー打錠機等の打錠機で好適に行うことができる。但し、本発明の口腔内速崩壊性錠剤の形状は、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定はされない。例えば、中抜き、多角形及び凹型等の特殊な形状にすることができる。また、錠剤の舌の上での接触面積を増やし、口腔内水分を迅速に錠剤内部へ浸透させ、口腔内速崩壊性を高めるために、錠厚を薄く、錠径を大きくした扁平状の錠剤に成形することもできる。圧縮成形における圧力は、例えば、300〜2000kg、好ましくは、600〜1000kgが好適であり、室温、60%RHにて行うことができる。
【0044】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
1.結晶セルロース(粒)(旭化成ケミカルズ)商品名:セルフィアCP-102
2.ポリビニルピロリドン(BASF)商品名:コリドン90F
3.dl-α-トコフェロール(BASF)
4.タルク(松村産業)商品名:リスブラン
5.エチルセルロース(ダウケミカル)商品名:ETHOCEL STANDARD 7 PREMIUM
6.アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(エボニック)商品名:オイドラギットRSPO
7.クエン酸トリエチル(東京化成)
8.ラウリル硫酸ナトリウム(メルク)商品名:Dodecyl sulfate sodium salt
9.D-マンニトール(ロケット)商品名:PEARITOL
10.クロスポビドン(BASF)商品名:コリドンCL-F
11.含水二酸化ケイ素(DSLジャパン)商品名:カープレックス#67
12.ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業)商品名:ステアリン酸マグネシウム植物性
【0045】
<溶出率の測定方法>
薬物の溶出率[%]はWaters(株)製のアライアンス溶出試験システムを用い、パドル法(50rpm)にて測定した。試験液は第十六改正日本薬局方 溶出性<6.10>の溶出試験 第一液及び第二液900mLを用いた。測定は2若しくは3回行い、その平均値をとった。
(実施例1)
イミダフェナシン5g、ポリビニルピロリドン4g、dl-α-トコフェロール1gを精製水196g、エタノール294gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)990gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしイミダフェナシン含有顆粒を得た(平均粒子径:約150μm)。
別に、エチルセルロース30g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRSPO)30g、クエン酸トリエチル6g、ラウリル硫酸ナトリウム6g、タルク 30gを精製水89.8g、エタノール808.2gの混液に溶解した。イミダフェナシン含有顆粒300gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザーNQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として26.8mg中にイミダフェナシンを0.1mg含有するコーティング顆粒を得た。
さらに、このコーティング顆粒26.8g、D-マンニトール145.6g、クロスポビドン5.4g、含水二酸化ケイ素0.4g及びステアリン酸マグネシウム1.8gを加え混合後、ロータリー打錠機を用いて1錠あたりイミダフェナシン0.1mgを含む約180mgの錠剤を製した。得られた錠剤は硬度約3kg、口腔内崩壊時間約15秒を示した。
(実施例2)
イミダフェナシン5g、ポリビニルピロリドン4g、dl-α-トコフェロール1gを精製水196g、エタノール294gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)990gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしイミダフェナシン含有顆粒を得た(平均粒子径:約150μm)。
別に、エチルセルロース15g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRSPO)15g、クエン酸トリエチル3g、ラウリル硫酸ナトリウム3g、タルク 15gを精製水44.9g、エタノール404.1gの混液に溶解した。イミダフェナシン含有顆粒300gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として23.4mg中にイミダフェナシンを0.1mg含有するコーティング顆粒を得た。
さらに、このコーティング顆粒23.4g、D-マンニトール149g、クロスポビドン5.4g、含水二酸化ケイ素 0.4g及びステアリン酸マグネシウム1.8gを加え混合後、ロータリー打錠機を用いて1錠あたりイミダフェナシン0.1mgを含む約180mgの錠剤を製した。得られた錠剤は硬度約3kg、口腔内崩壊時間約15秒を示した。
(比較例1)
イミダフェナシン5g、ポリビニルピロリドン4g、dl-α-トコフェロール1gを精製水196g、エタノール294gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)990gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしイミダフェナシン含有顆粒を得た(平均粒子径:約135μm)。
別に、エチルセルロース 60g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRSPO)60g、クエン酸トリエチル12g、タルク60gを精製水180.8g、エタノール1627.2gの混液に溶解した。イミダフェナシン含有顆粒300gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として32.8mg中にイミダフェナシンを0.1mg含有するコーティング顆粒を得た。
さらに、このコーティング顆粒65.6g、D-マンニトール279.2g、クロスポビドン10.8g、含水二酸化ケイ素0.8g及びステアリン酸マグネシウム3.6gを加え混合後、ロータリー打錠機を用いて1錠あたりイミダフェナシン0.1mgを含む約180mgの錠剤を製した。得られた錠剤は硬度約3kg、口腔内崩壊時間約15秒を示した。
(比較例2)
イミダフェナシン5g、ポリビニルピロリドン4g、dl-α-トコフェロール1gを精製水196g、エタノール294gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)990gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしイミダフェナシン含有顆粒を得た(平均粒子径:約135μm)。
別に、エチルセルロース30g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRSPO)30g、クエン酸トリエチル6g、タルク30gを精製水90.4g、エタノール813.6gの混液に溶解した。イミダフェナシン含有顆粒300gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として26.4mg中にイミダフェナシンを0.1mg含有するコーティング顆粒を得た。
さらに、このコーティング顆粒26.4g、D-マンニトール146g、クロスポビドン5.4g、含水二酸化ケイ素0.4g及びステアリン酸マグネシウム1.8gを加え混合後、ロータリー打錠機を用いて1錠あたりイミダフェナシン0.1mgを含む約180mgの錠剤を製した。得られた錠剤は硬度約3kg、口腔内崩壊時間約15秒を示した。
【0046】
表1に、実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた錠剤の処方内容と、溶出率の差を纏めた。表中のポリマーコート率は、水不溶性セルロースエーテルであるエチルセルロースと、水不溶性アクリル酸系ポリマーであるオイドラギットの合計重量を、薬物含粒顆粒の重量で除したものである。
【0048】
実施例1〜2の錠剤は、薬物含有粒子の外側に、(A)〜(D)の成分を含有する皮膜を備えている(A.水不溶性セルロース(エチルセルロース)、B.水不溶性アクリル酸系ポリマー(オイドラギット)、C.陰イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)、D.クエン酸トリエチル))。溶出試験の結果から明らかな通り、実施例1〜2の錠剤は第一液の溶出率と第二液の溶出率の差が−20%以上+20%以下であり、pHに依存しない放出を示す。
【0049】
さらに、
図1〜2から分かる通り、実施例1〜2の錠剤の第二液溶出率(1分値)は7%以下であり、不快な官能的性質を抑えることができている。さらに、実施例1〜2では、第一液(pH1.2)の溶出率(1分値)も、10%以下であり、酸性の医薬品と同時に服用した場合でも、マスキング効果を維持できることが分かる。その一方で、両製剤は、第一液及び第二液の溶出率(30分値)は共に60%以上であり、口腔内で崩壊後、胃内に移行した後は、速やかに溶出し薬効を発揮すること、低胃酸の患者が服用した場合でも、溶出が極端に遅くならないことが分かる。
【0050】
なお、実施例1と実施例2の差異は、マスキングコート量にあるが、実施例1(ポリマーコート率0.2)は、溶出率の差が10%以下であり、実施例2(ポリマーコート率0.1)と比べても、優れたpH非依存的な放出を示している。
【0051】
一方、比較例2の錠剤(実施例1の処方中のラウリル硫酸ナトリウムを除いた処方)においては、第一液の溶出率が顕著に増加し、第一液−第二液間の溶出率の差は広がっている。さらに比較例2においては、第二液の溶出率(1分値)が12%と高く、マスキング効果が不十分であることが分かる(
図4参照)。
【0052】
比較例1では、比較例2の処方中、マスキングコートを倍量使用することにより、溶出率の調整を試みたが、第一液及び第二液の溶出率が共に低くなり、第一液と第二液間の溶出率の差は、縮まらなかった。さらに比較例1の製剤では、第二液の溶出率の30分値が15%と低く、低胃酸患者が服用した場合、溶出が極端に遅くなってしまう。