特許第6186181号(P6186181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6186181-ラップフィルム巻回体及び巻回体収容体 図000003
  • 特許6186181-ラップフィルム巻回体及び巻回体収容体 図000004
  • 特許6186181-ラップフィルム巻回体及び巻回体収容体 図000005
  • 特許6186181-ラップフィルム巻回体及び巻回体収容体 図000006
  • 特許6186181-ラップフィルム巻回体及び巻回体収容体 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186181
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ラップフィルム巻回体及び巻回体収容体
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/10 20060101AFI20170814BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B65H75/10
   C08J5/18
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-117294(P2013-117294)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-234271(P2014-234271A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】坂元 聡
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕子
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−168750(JP,A)
【文献】 英国特許第01246004(GB,B)
【文献】 特開2011−148540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00 − 75/32
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム厚さが6〜18μmであり、フィルム幅方向の引裂強度が2.0〜6.0cNであるラップフィルムを備えるラップフィルム巻回体であって、未使用の際の巻回し端から30周目の前記ラップフィルムの幅長X(30)〔単位:mm〕をYとした場合に、前記巻回し端から3周目の前記ラップフィルムの幅長X(3)〔単位:mm〕が、下記式(1):
Y−3.0≦X(3)≦Y−1.0 (1)
で表される条件を満たし、前記巻回し端から5周目の前記ラップフィルムの幅長X(5)〔単位:mm〕が、下記式(2):
Y−2.0≦X(5)≦Y−0.5 (2)
で表される条件を満たし、前記巻回し端から10周目の前記ラップフィルムの幅長X(10)〔単位:mm〕が、下記式(3):
Y−1.5≦X(10)<Y (3)
で表される条件を満たし、かつ、前記幅長X(3)、X(5)及びX(10)が、下記式(4):
X(3)<X(5)<X(10) (4)
で表される条件を満たす巻回体。
【請求項2】
前記巻回体を、前記ラップフィルムにおける前記フィルム幅方向に直交するように切断し2つに分割したそれぞれの巻回体において、前記巻回し端から30周目の前記ラップフィルムの幅長Xi(30)〔単位:mm〕をYiとした場合に、前記巻回し端から3周目の前記ラップフィルムの幅長Xi(3)〔単位:mm〕が、下記式(1A):
Yi−2.5≦Xi(3)≦Yi−0.5 (1A)
で表される条件を満たし、前記巻回し端から5周目の前記ラップフィルムの幅長Xi(5)〔単位:mm〕が、下記式(2A):
Yi−1.75≦Xi(5)≦Yi−0.25 (2A)
で表される条件を満たし、前記巻回し端から10周目の前記ラップフィルムの幅長Xi(10)〔単位:mm〕が、下記式(3A):
Yi−1.5<Xi(10)<Yi (3A)
で表される条件を満たし、かつ、前記幅長Xi(3)、Xi(5)及びXi(10)が、下記式(4A):
Xi(3)<Xi(5)<Xi(10) (4A)
で表される条件を満たす、請求項1に記載の巻回体。
【請求項3】
前記ラップフィルムが、塩化ビニリデン系樹脂を含む、請求項1又は2に記載の巻回体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のラップフィルム巻回体と、前記ラップフィルム巻回体が外周に巻回した筒状芯体と、前記ラップフィルム巻回体と前記筒状芯体とを収容した容器と、を備える巻回体収容体であって、前記筒状芯体の軸長さS〔単位:mm〕と前記容器の長手方向の側板間の内寸の最小値W〔単位:mm〕とが、下記式(5):
1<W−S≦3 (5)
で表される条件を満たす、巻回体収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルム巻回体及び巻回体収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装用フィルムは、磁器製又はガラス製容器などの包装対象、あるいは当該フィルム同士の密着性が高いことを要求されると共に、巻回体から円滑に引き出せること、また、引き出した際に意図せず破断しないこと、意図した方向に切断できることが要求される。
【0003】
従来、塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムは、ポリオレフィン樹脂等の他素材からなるラップフィルムに比べて、密着性、カット性、ガスバリア性に優れており、これらの特長を活かして広く食品包装材料として多くの一般家庭で使用されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、縦裂けトラブルが抑制され、かつ、密着性及び透明性に優れるポリ塩化ビニリデン樹脂ラップフィルムを提供することを主な目的として、結晶の分子鎖方向の軸がフィルム表面に対して平行に配向し、EDGE方向からの透過法2次元広角X線散乱測定による(100)面の回折ピーク強度を方位角に対してプロットした際に現れるピークの半値全幅μから特定の計算式によって規定される結晶配向度Fが、72.0%〜89.3%であるポリ塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムが提案されている。また、特許文献2には、詰替用の巻回ラップフィルムをその商品価値を大きく損なうことなく市場に安定して供給することができ、しかも、省資源化、ゴミ削減、廃棄時に減容容易といった環境問題に対応しつつ現行の商品(非詰替品)と略同等の取り扱いが可能な、詰替ラップフィルム収納体及びこれに用いる刃なし収納箱を提供することを目的として、筒状芯体の外周にラップフィルムが巻回された巻回ラップフィルムと、前記巻回ラップフィルムを収納可能な刃なし収納箱とを備え、前記刃なし収納箱は、少なくとも1枚の原紙が複数の折り線に沿って折り曲げられて外形略柱状に成形され、前記原紙は、坪量が150〜480g/m2の範囲にあり、前記刃なし収納箱の長手方向の側板間の内寸の最小値W(mm)が、前記筒状芯体の軸長さS(mm)に対し、S−1.0≦W≦Sの関係を満たし、前記筒状芯体が、その軸方向において実質的に隙間なく前記刃なし収納箱に収納されている、詰替ラップフィルム収納体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−168750号公報
【特許文献2】特開2011−148540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ラップフィルム、特に塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムは、高密着力、良好なカット性という性質を有するため、主に家庭用食品包装材として広く使用されている。しかしながら、これらの性質を有するが故に、ラップフィルム、特に塩化ビニリデン系樹脂ラップフィルムは、およそ10μmという薄さでは裂けトラブルが発生する可能性がある。ここでいう「裂けトラブル」とは、巻回体からフィルムを引き出す際、及び巻回体を収容する容器(化粧箱)の中に巻き戻ったフィルム端部を摘み出す際に、意図しない方向にフィルムが裂け、正常な使用が困難になるトラブルである。この課題に対して、例えば、フィルムを厚くする等の手法によって、裂け難くすることは可能である。しかしながら、フィルムを厚くすることにより、カット性の低下、包装対象への追従性の低下に伴う密着性能の低下、引き出しやすさの低下など、使い勝手に更に改善の余地が生じる。
【0007】
また、従来、特許文献1のように、結晶配向度を制御することにより、フィルムの裂けトラブルを抑制することが知られている。しかしながら、この方法では、ラップフィルムの裂けトラブルは低減するものの、結晶の配向に起因してフィルム切断刃のラップフィルムへの入りが低下し、かつ応力が伝播しにくくなるため、ラップフィルムのカット性が必ずしも十分ではない。
【0008】
さらに、特許文献2のように、筒状芯体の軸長さS(mm)と収容体の長手方向の側板間の内寸の最小値W(mm)との関係をW−S≦1.0とすることで、裂けを防止するという方法も知られている。このように収容体と巻回体の長手方向の隙間とをほぼゼロにすることで、収容体内部での巻回体の振動がほとんど発生しないため、傷付の発生が抑制され、使用初期時の裂けトラブルを低減することが可能である。しかしながら、特許文献2に記載のものは詰替ラップフィルム収納体であるところ、通常の巻回体収容体は、収容体からラップフィルムを引き出す必要があるため、上記W−S≦1mmの関係下では、ラップフィルムの引き出し時に筒状芯体と収容体(容器)内壁面との接触、摩擦が増加し、引き出し性に更に改善の余地があることが分かった。
【0009】
したがって、ラップフィルムの裂けトラブル防止と、引き出し性、密着性及びカット性の向上という一見相反する課題のいずれをも解決することができれば、そのようなラップフィルムは極めて有用であるといえる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ラップフィルムのカット性及び引き出し性を高いレベルで維持しつつ、使用初期において、巻回体からフィルムを引き出す際の裂けトラブルを抑制するラップフィルム巻回体、及びその巻回体を収容した巻回体収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、巻回体を使用する時に発生する裂けトラブルについて注目し検討した結果、裂けの原因は、流通や使用の際の振動により、巻回体の表層に発生した損傷であることを見出した。この原因に対し、鋭意検討を加えた結果、巻回体におけるフィルム端部の形状を特定の形状にすることで、消費者の要求を満たすレベルまで裂けトラブルを抑制でき、かつ、フィルムの引き出し性及びカット性にも優れるラップフィルム巻回体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、下記のとおりである。
〔1〕フィルム厚さが6〜18μmであり、フィルム幅方向の引裂強度が2.0〜6.0cNであるラップフィルムを備えるラップフィルム巻回体であって、未使用の際の巻回し端から30周目の前記ラップフィルムの幅長X(30)〔単位:mm〕をYとした場合に、前記巻回し端から3周目の前記ラップフィルムの幅長X(3)〔単位:mm〕が、下記式(1):
Y−3.0≦X(3)≦Y−1.0 (1)
で表される条件を満たし、前記巻回し端から5周目の前記ラップフィルムの幅長X(5)〔単位:mm〕が、下記式(2):
Y−2.0≦X(5)≦Y−0.5 (2)
で表される条件を満たし、前記巻回し端から10周目の前記ラップフィルムの幅長X(10)〔単位:mm〕が、下記式(3):
Y−1.5≦X(10)<Y (3)
で表される条件を満たし、かつ、前記幅長X(3)、X(5)及びX(10)が、下記式(4):
X(3)<X(5)<X(10) (4)
で表される条件を満たす巻回体。
〔2〕前記巻回体を、前記ラップフィルムにおける前記フィルム幅方向に直交するように切断し2つに分割したそれぞれの巻回体において、前記巻回し端から30周目の前記ラップフィルムの幅長Xi(30)〔単位:mm〕をYiとした場合に、前記巻回し端から3周目の前記ラップフィルムの幅長Xi(3)〔単位:mm〕が、下記式(1A):
Yi−2.5≦Xi(3)≦Yi−0.5 (1A)
で表される条件を満たし、前記巻回し端から5周目の前記ラップフィルムの幅長Xi(5)〔単位:mm〕が、下記式(2A):
Yi−1.75≦Xi(5)≦Yi−0.25 (2A)
で表される条件を満たし、前記巻回し端から10周目の前記ラップフィルムの幅長Xi(10)〔単位:mm〕が、下記式(3A):
Yi−1.5<Xi(10)<Yi (3A)
で表される条件を満たし、かつ、前記幅長Xi(3)、Xi(5)及びXi(10)が、下記式(4A):
Xi(3)<Xi(5)<Xi(10) (4A)
で表される条件を満たす、上記〔1〕に記載の巻回体。
〔3〕前記ラップフィルムが、塩化ビニリデン系樹脂を含む、上記〔1〕又は〔2〕に記載の巻回体。
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載のラップフィルム巻回体と、前記ラップフィルム巻回体が外周に巻回した筒状芯体と、前記ラップフィルム巻回体と前記筒状芯体とを収容した容器と、を備える巻回体収容体であって、前記筒状芯体の軸長さS〔単位:mm〕と前記容器の長手方向の側板間の内寸の最小値W〔単位:mm〕とが、下記式(5):
1<W−S≦3 (5)
で表される条件を満たす、巻回体収容体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラップフィルムのカット性及び引き出し性を高いレベルで維持しつつ、使用初期において、巻回体からフィルムを引き出す際の裂けトラブルを抑制するラップフィルム巻回体、及びその巻回体を収容した巻回体収容体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ラップフィルム巻回体における幅長を説明するための概略図である。
図2】ラップフィルム巻回体における幅長を説明するための別の概略図である。
図3】本発明に係るラップフィルムを製造する際に用いられる装置の一例を示す概略図である。
図4】本発明に係るラップフィルム巻回体収容体の一例を示す概略図である。
図5】本発明に係る筒状芯体の軸長さSと容器の側板間の内寸の最小値Wとの関係を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0016】
本実施形態のラップフィルム巻回体(以下、単に「巻回体」ともいう。)は、フィルム厚さが6〜18μmであり、フィルム幅方向の引裂強度が2.0〜6.0cNであるラップフィルムを備え、未使用の際の巻回し端から30周目のラップフィルムの幅長X(30)〔単位:mm〕をYとした場合に、巻回し端から3周目のラップフィルムの幅長X(3)〔単位:mm〕が、下記式(1):
Y−3.0≦X(3)≦Y−1.0 (1)
で表される条件を満たし、巻回し端から5周目のラップフィルムの幅長X(5)〔単位:mm〕が、下記式(2):
Y−2.0≦X(5)≦Y−0.5 (2)
で表される条件を満たし、巻回し端から10周目のラップフィルムの幅長X(10)〔単位:mm〕が、下記式(3):
Y−1.5≦X(10)<Y (3)
で表される条件を満たし、かつ、幅長X(3)、X(5)及びX(10)が、下記式(4):
X(3)<X(5)<X(10) (4)
で表される条件を満たす巻回体である。
【0017】
また、本実施形態のラップフィルム巻回体は、その巻回体を、ラップフィルムにおけるフィルム幅方向に直交するように切断し2つに分割したそれぞれの巻回体において、巻回し端から30周目のラップフィルムの幅長Xi(30)〔単位:mm〕をYiとした場合に、巻回し端から3周目のラップフィルムの幅長Xi(3)〔単位:mm〕が、下記式(1A):
Yi−2.5≦Xi(3)≦Yi−0.5 (1A)
で表される条件を満たし、巻回し端から5周目のラップフィルムの幅長Xi(5)〔単位:mm〕が、下記式(2A):
Yi−1.75≦Xi(5)≦Yi−0.25 (2A)
で表される条件を満たし、巻回し端から10周目のラップフィルムの幅長Xi(10)〔単位:mm〕が、下記式(3A):
Yi−1.5<Xi(10)<Yi (3A)
で表される条件を満たし、かつ、幅長Xi(3)、Xi(5)及びXi(10)が、下記式(4A):
Xi(3)<Xi(5)<Xi(10) (4A)
で表される条件を満たすものであると好ましい。
【0018】
図1図2は、その巻回体における上記各幅長の関係を説明するための概略図であり、本実施形態の巻回体は図示したものに限定されない。図1及び図2には、巻回体110と、その巻回体110が外周に巻回した筒状芯体(以下、単に「芯体」ともいう。)120とが示されている。巻回体110は、ラップフィルム(以下、単に「フィルム」ともいう。)110aが芯体120を軸として巻回されてなるものであり、その最外周に巻回し端110bを有する。フィルム110aの巻回し端110bの端面が図1の手前側に現れていることから明らかなように、図1及び図2中の矢印方向Dから見た際に、フィルム110aは、筒状芯体120から最外周に向かって、時計方向とは反対方向に巻回して巻回体110を形成する。
【0019】
フィルム110aの材料は、特に限定されず、従来ラップフィルムに用いられる材料、例えば樹脂であってもよいが、本発明の目的をより有効かつ確実に達成する観点から、塩化ビニリデン系樹脂を含むことが好ましい。塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデン単位を含むものであれば特に制限されず、従来知られているものであってもよい。塩化ビニリデン系樹脂に含まれる単量体単位は、塩化ビニリデン単位以外に、例えば、塩化ビニル、メチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル;メチルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート等のメタアクリル酸エステル;アクリロニトリル、酢酸ビニルが挙げられる。これらの塩化ビニリデンと共重合可能な単量体単位が、1種又は2種以上共重合されていてもよい。塩化ビニリデン系樹脂が塩化ビニリデン単位を72質量%以上の割合で有する場合、塩化ビニリデン系樹脂のガラス転移温度が高くなるのを抑制でき、その結果、冬場等の低温環境下での使用時にフィルムが脆くなったり、裂けやすくなったりするのを防ぐことができる。一方、塩化ビニリデン系樹脂が塩化ビニリデン単位を93質量%以下の割合で有する場合、結晶性の大幅な上昇を抑制できる結果、フィルム延伸時の成形加工性をより高いレベルで維持することができる。かかる観点から、塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデン単位を72〜93質量%有するものが好ましく、81〜90質量%有するものがより好ましい。
【0020】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、当該塩化ビニリデン系樹脂に、公知の食品包装材料に用いられる可塑剤、安定剤、耐候性向上剤、染料又は顔料などの着色剤、防曇剤、抗菌剤、滑剤、核剤などを添加した塩化ビニリデン系樹脂組成物を用いてもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0021】
可塑剤としては、特に限定されないが、具体的には、アセチルクエン酸トリブチルのようなクエン酸エステル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、グリセリン、グリセリンエステル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル及びエポキシ化大豆油が挙げられる。
【0022】
安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、2,5−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブロピオネート、及び4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等の酸化防止剤;エポキシ化植物油、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、オレイン酸塩、リシノール酸塩、2−エチル−ヘキシル酸塩、イソデカン酸塩、ネオデカン酸塩、及び安息香酸カルシウム等の熱安定剤が挙げられる。
【0023】
耐候性向上剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾリトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、及び2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0024】
染料又は顔料などの着色剤としては、特に限定されないが、具体的には、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、及びベンガラが挙げられる。
【0025】
防曇剤としては、特に限定されないが、具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0026】
抗菌剤としては、特に限定されないが、具体的には、銀系無機抗菌剤が挙げられる。
【0027】
滑剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレンビスステロアミド、ブチルステアレート、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル等の脂肪酸炭化水素系滑剤、高級脂肪酸滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、及び脂肪酸エステル滑剤が挙げられる。
【0028】
核剤としては、特に限定されないが、具体的には、リン酸エステル金属塩が挙げられる。
【0029】
塩化ビニリデン系樹脂組成物を用いる場合、その組成物中の塩化ビニリデン系樹脂の含有割合は、本発明による効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、92質量%以上が特に好ましい。
【0030】
本実施形態のラップフィルムの製造方法は特に限定されず、従来知られている方法であってもよく、例えば、押出機より溶融押出された後、延伸、芯体への巻き回しにより得られる。溶融された樹脂の製膜、延伸の方法としては、例えば、インフレーション法やテンター法を用いることができる。ラップフィルムのカット性を良好にするためには、延伸時の特にフィルム幅方向(以下、単に「TD」ともいう。)の制御、及びそれにより得られるTDの引裂強度(以下、「TD引裂強度」ともいう。)が重要な因子となる。TD引裂強度はカット性に深く関係するものであり、ラップフィルムとしては、2.0〜6.0cNが好ましい。以下詳細にその理由を述べる。なお、ここで述べる引裂強度の測定方法はJIS−P−8116(2000年)に準拠する。
【0031】
ラップフィルムのTD引裂強度が6.0cN以下の場合、従来の巻回体では、振動によるフィルム端部の損傷を起点とし、フィルムを引き出す際に裂けトラブルが発生しやすくなる。しかしながら、本実施形態においては、後に詳述する要因により、フィルムの裂けトラブルを抑制することができる。一方、本実施形態において、TD引裂強度が6.0cN以下であることにより、フィルム切断刃でフィルムを切断するのに要する力を低減できるため、カット性がより良好となり、より優れた使用感を有する。これらを総合的に考慮して、TD引裂強度は6cN以下であると好ましい。一方、TD引裂強度が2.0cN以上であると、振動により発生する損傷よりもより微小な損傷ではフィルムが更に裂け難くなるため、TD引裂強度は、2.0cN以上であると好ましい。以上のことから、TD引裂強度は2.0〜6.0cNの範囲が好ましく、2.3〜5.0cNの範囲がより好ましい。
【0032】
延伸されたフィルムは、ラップフィルムに適した厚さになるまで延伸される。従来の巻回体において、ラップフィルムの厚さが18μm以下の場合、引裂強度がより小さくなるため、巻回体からフィルムを引き出す際、及び容器(化粧箱)の中に巻き戻ったフィルム端部を摘み出す際、化粧箱に付帯する切断刃で切断して現れる端部からフィルムが裂ける裂けトラブルが発生しやすい。しかしながら、本実施形態においては、後に詳述する要因により、フィルムの裂けトラブルを抑制することができる。また、フィルムの厚さが18μm以下であると、フィルム切断刃でフィルムを切断するのに要する力を低減できるため、カット性の低下、及びフィルムの包装対象の形状への追従性の低下を抑制でき、包装対象への密着性を更に高めることができる。一方、本実施形態において、ラップフィルムの厚さが6μm以上であると、フィルムの引張応力の低下を抑制できるため、使用時のフィルム切れを防止することができる。これらを総合的に考慮して、特に、フィルム切れ、カット性、引き出し性、及び密着性をバランスよく優れたものとする観点から、ラップフィルムの厚さは、6〜18μmであり、好ましくは8〜15μmであり、より好ましくは9〜12μmである。
【0033】
以下、本実施形態に係るラップフィルムの製造方法の一例として、塩化ビニリデン系樹脂を用いたインフレーション法についてより具体的に説明する。図3は、本実施形態に係るラップフィルムの製造方法の一例を示す概略図である。
【0034】
まず、溶融した塩化ビニリデン系樹脂又は塩化ビニリデン系樹脂組成物(以下、単に「塩化ビニリデン系樹脂等」という。)を押出機1により、円形のダイ2のダイ口3から管状に押し出し、管状の塩化ビニリデン系樹脂等であるソック4が形成される。
【0035】
次に、押出物であるソック4の外側を冷水槽6にて冷水に接触させ、ソック4の内部にはソック液5を常法により注入して貯留することにより、ソック4を内外から冷却して固化させる。この際、ソック4はその内側にソック液5が塗布された状態となる。固化されたソック4は、第1ピンチロール7にて折り畳まれ、ダブルプライシートであるパリソン8が成形される。ソック液5の塗布量は第1ピンチロール7のピンチ圧により制御される。
【0036】
ソック液5には、水、ミネラルオイル、アルコール類、プロピレングリコールやグリセリン等の多価アルコール類、セルロース系やポリビニルアルコール系の水溶液を用いることができる。これらは単体で使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、ソック液には、本実施形態の効果を阻害しない範囲で、従来の食品包装材料に用いられる耐候性向上剤、防曇剤、抗菌剤等を添加してもよい。
【0037】
ソック液5の塗布量は、特に限定されないが、パリソンの開口性、フィルムの密着性の観点から、好ましくは50〜20000ppm、より好ましくは100〜15000ppm、更に好ましくは150〜10000ppmである。ここで、塗布量(ppm)とは、ソック4の合計質量に対して、ソック4に塗布されたソック液5の質量を、質量ppmで示したものである。
【0038】
続いて、パリソン8の内側に空気を注入することにより、再度パリソン8は開口されて管状となる。パリソン8は、温水(図示せず)により延伸に適した温度まで再加熱される。パリソン8の外側に付着した温水は、第2ピンチロール9にて搾り取られる。次いで、インフレーション工程において、適温まで加熱された管状のパリソン8に空気を注入してインフレーション延伸によりバブル10を成形し、延伸フィルムが得られる。
【0039】
フィルムの引裂強度は、延伸倍率によって一義的に決定されるわけではないが、延伸倍率によって主に制御することができる。カット性に優れ、かつ裂けトラブルを抑制するフィルムを得るためには、MD及びTD方向の延伸倍率は、延伸温度30〜45℃条件下において、共に4〜6倍が好ましい。
【0040】
その後、延伸フィルムは、第3ピンチロール11で折り畳まれ、ダブルプライフィルム12となる。ダブルプライフィルム12は、巻取りロール13にて巻き取られる。さらに、このダブルプライフィルム12はスリットされて、1枚のフィルムになるように剥がされる(シングル剥ぎ)。最終的にこのフィルムは例えば芯体に巻き取られ、ラップフィルム巻回体が得られる。
【0041】
上記の説明は、本実施形態のラップフィルムの製造方法の一例であり、上記以外の各種装置構成や条件等によってラップフィルムを製造してもよく、例えば、公知の他の方法を採用してもよい。
【0042】
本実施形態の巻回体110は、上述のように芯体120に巻かれた状態で存在してもよい。このような態様は、大量に入手して、使用時には、必要な長さのフィルムのみを引き出して切断するのに有利であることから好ましい。芯体の種類は特に限定されるものではなく、従来知られているものであってもよい。芯体としては、例えば、紙製、プラスチック製、金属製、木製などのいずれであってもよく、また、これらの組み合わせによるものであってもよい。
【0043】
図1を参照すると、本実施形態において、未使用の際の巻回し端110bから30周目のラップフィルム110aの幅長X(30)〔単位:mm〕をYとした場合に、巻回し端110bから3周目のラップフィルム110aの幅長X(3)〔単位:mm〕が、下記式(1):
Y−3.0≦X(3)≦Y−1.0 (1)
で表される条件を満たし、巻回し端110bから5周目のラップフィルム110aの幅長X(5)〔単位:mm〕が、下記式(2):
Y−2.0≦X(5)≦Y−0.5 (2)
で表される条件を満たし、巻回し端110bから10周目のラップフィルム110aの幅長X(10)〔単位:mm〕が、下記式(3):
Y−1.5≦X(10)<Y (3)
で表される条件を満たし、かつ、幅長Xi(3)、Xi(5)及びXi(10)が、下記式(4A):
X(3)<X(5)<X(10) (4)
で表される条件を満たすことが必要である。
【0044】
また、図2を参照すると、巻回体110は、その巻回体110を、ラップフィルム110aにおけるTDに直交するように切断面MCで切断し2つに分割したそれぞれの巻回体110d、110eにおいて、未使用の際のラップフィルム110aの巻回し端110bから30周目の幅長Xi(30)〔単位:mm〕をYiとした場合に、巻回し端110bから3周目のラップフィルム110aの幅長Xi(3)〔単位:mm〕が、下記式(1A):
Yi−2.5≦Xi(3)≦Yi−0.5 (1A)
で表される条件を満たし、巻回し端110bから5周目のラップフィルム110aの幅長Xi(5)〔単位:mm〕が、下記式(2A):
Yi−1.75≦Xi(5)≦Yi−0.25 (2A)
で表される条件を満たし、巻回し端110bから10周目のラップフィルム110aの幅長Xi(10)〔単位:mm〕が、下記式(3A):
Yi−1.5<Xi(10)<Yi (3A)
で表される条件を満たし、かつ、幅長Xi(3)、Xi(5)及びXi(10)が、下記式(4A):
Xi(3)<Xi(5)<Xi(10) (4A)
で表される条件を満たすことが好ましい。なお、2つに分割したそれぞれの巻回体において、Xi(3)、Xi(5)、Xi(10)及びXi(30)(すなわちYi)は、互いに異なっていても同一であってもよい。
【0045】
各幅長の測定方法としては、必要に応じて巻回体110をTDに直交するように切断した後、実際にラップフィルム110aを巻回体110(あるいは分割した巻回体)から引き出し、巻回し端110bから3周目、5周目、10周目、30周目に該当する部分のフィルム110aのTDにおける長さを測定する。その際、フィルム110aの測定する箇所にしわが入らないように、また過剰な力をかけてフィルム110aを伸ばすことがないようにして測定する。
【0046】
このような形状の巻回体110を製造する方法としては、例えば、巻回体110の中心から最外周に向けて幅長が短くなるように、巻き回す前のフィルムのTDの少なくとも一側をMDの一端から他端に向けてTDの長さが徐々に短くなるように斜めに切断してトリミングした後、そのフィルムをTDの長さが長い方から芯体に巻きつける(巻き回す)方法;フィルムを芯体に巻き回すと共にフィルムのMDへの引張応力を徐々に高くしてTDに収縮させる方法;又は芯体にフィルムを巻き付けて巻回体を得た後に、高温で巻回体を保管することにより、巻回体におけるフィルムを芯体側よりも外周側でより大きく収縮させる方法が挙げられる。ただし、その方法は特に限定されない。
【0047】
このように巻回体110の最外周に向かうにつれてフィルム110aの幅長が徐々に短くなるフィルムを芯体に巻き回すことで、巻回体110のTD端面110fの少なくとも一方が緩やかな、いわゆるテーパ状となる。これにより、流通時や使用時の振動により巻回体収容体内部で巻回体110が振動した際に、巻回体110の最外周と収容体の内壁面との接触の際に、巻回体110における衝撃を受ける箇所を分散することができる。その結果、巻回体110の特にTD端面110fの微小な損傷の発生量を低減でき、微小な損傷を起点とする裂けトラブルを大幅に低減することが可能となる。また、巻回体110のTD端面110fは、図示するように、両端とも緩やかなテーパ状になる形状が好ましいが、いずれか一端のみがテーパ状になっていてもよい。
【0048】
本発明者らが、従来の巻回体について、輸送時の振動による微小な損傷の発生を詳細に調べた結果、主に最外周から10層目、すなわち巻回し端110bから10周目までの損傷が、他の巻き回した層領域と比較して多く発生する傾向を確認した。そして、これに対する対策として、具体的には、少なくとも巻回し端110bから10周目まで、巻回体110のTD端面110fが緩やかに特定のテーパ状になるような形状にすることが有効であることを本発明者らは見出した。一方、TD端面がこのような形状になっていない従来の巻回体の場合、振動による損傷の発生傾向が十分に抑制されず、その結果、フィルムの巻回体からの引き出し時に発生し得る裂けトラブルが従来のレベルで発生してしまう要因の一つであることも判明した。そして、このような裂けトラブルは、特に塩化ビニリデン系樹脂をフィルムの材料に用いた場合に顕在化しやすいことも判明した。
【0049】
次に、本実施形態の巻回体収容体について説明する。図4は、本実施形態の巻回体収容体の一例を示す概略図である。本実施形態の巻回体収容体200は、巻回体110と、巻回体110が外周に巻回した筒状芯体120と、巻回体110と筒状芯体120とを収容した容器210とを備える。容器210は、前板211、底板212、後板213、及び側板218の各壁面で形成される上部が開口した直方体の収容室223と、後板213の上端縁から収容室223を覆う方向に接続して設けられた蓋板214、蓋板214の前端縁から前板211を覆う方向に延出した掩蓋片215、掩蓋片215の両側に設けられた側掩蓋片221の各壁面で形成される蓋体224とを備える収容箱である。また、巻回体収容体200は、フィルム110aを容易に切断できる位置にフィルム切断刃200Kを備え、例えば、掩蓋片215の先端縁部に備えられてもよい。また、巻回体収容体200は、収容された巻回体110からフィルム110aを引き出した時に、巻回体110の本体が容器210から飛び出さないように工夫されていることがより好ましい。更に、容器210の寸法は、片手で持ちやすくするために、高さ40〜54mm、奥行き40〜54mm、長さ153〜313mmであることが更に好ましい。
【0050】
容器210の材質は、特に限定されず、例えば、プラスチック、金属、木材、ダンボール及び板紙、あるいはこれらの組み合わせであってもよく、使い勝手が良い点で、板紙がより好ましい。この板紙は、厚さ0.35〜1.50mmの厚紙で、一般に肉厚のものほど剛性、強度が高く丈夫な箱が得られる。しかし、折り曲げ加工が困難になるため、厚さは0.35〜0.80mmがより好ましい。
【0051】
図5は、筒状芯体120の軸長さと容器210の側板218との間の内寸の最小値との関係を説明するための概略図である。本実施形態において、巻回体110を巻き回した芯体120の軸長さS〔単位:mm〕と、巻回体120を収容する容器210の長手方向の側板218間の内寸の最小値W〔単位:mm〕とが、下記式(5A):
W−S≦3 (5A)
で表される条件を満たすことが好ましい。軸長さSと最小値Wとがこのような条件を満たすと、容器210内部の巻回体110と側板218との隙間が狭いため、流通時や使用時の振動が抑制され、巻回体110におけるTD端面110fの損傷量が一層低減する。特に、従来の巻回体では、上記(W−S)の値が1以下でないと、フィルムの損傷を十分に抑制するのが困難である一方、(W−S)の値が1を超えないとフィルムの引き出し性をより良好にするのが困難であるため、フィルムの損傷を抑制すると共に引き出し性をより良好にするのが困難である。しかしながら、本実施形態においては、巻回体110のTD端面110fの形状を上述のようにすることにより、(W−S)が1を超えるものであっても、フィルムの損傷を十分に抑制することができ、特に、上記式(5A)で表される条件を満たすものであれば、フィルムの損傷をより十分に抑制することが可能になる。
【0052】
一方、軸長さSと最小値Wとが、下記式(5B):
1<W−S (5B)
で表される条件を満たすことも好ましい。軸長さSと最小値Wとがこのような条件を満たすことにより、容器210内部の巻回体110と側板218との隙間をある程度確保できるので、ラップフィルム110aの容器210内壁面との接触を更に有効に防止でき、その結果、ラップフィルム110aの引き出し性がより良好となる。また、フィルム110aを引き出す際の回転に伴い、芯体120が容器210内壁面との摩擦により容器210の上部へ移動する結果、芯体120が容器210から飛び出す、ということもより十分に抑制できる。
【0053】
すなわち、本実施形態において、軸長さSと最小値Wとが、下記式(5):
1<W−S≦3 (5)
で表される条件を満たすことが好ましい。
【0054】
特に、本実施形態においては、フィルムの引き出し性向上と裂けトラブル防止という相反する関係にあるものを、巻回体110のTD端面110fの形状を上述のようにすることにより、更にバランスよく達成することが可能になった。
【0055】
なお、上述では、フィルムの材料として塩化ビニリデン系樹脂を含むラップフィルム巻回体などについては主に説明したが、フィルムの材料は、従来ラップフィルムに用いられる材料であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(延伸ポリプロピレンを含む)、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ナイロン;及びそれらの組み合わせであってもよい。
【0056】
本実施形態の巻回体及び巻回体収容体は、巻回体からラップフィルムを引き出す際に、特に使用開始時の裂けトラブルが低減され、使い勝手が改善されており、しかも、フィルムのカット性及び引き出し性に優れるものである。その用途としては、例えば、食品包装用途及び調理用途が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0057】
以下、実施例、比較例及び参考例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。実施例、比較例及び参考例で用いた評価方法は、下記のとおりである。
【0058】
(評価方法)
(1.裂けトラブル発生率)
ラップフィルムの出荷後の流通、及び家庭での保管を想定し、製造直後のラップフィルム巻回体を28℃に設定した恒温槽にて1ヶ月間保管した。その後、流通時の振動を再現するために、振動試験機(アイデックス株式会社製、品番「BF−50UC」)を用いて、容器(化粧箱)内に収容されたラップフィルム巻回体を振動させた。振動試験は下記のとおりに行った。
【0059】
まず、1つの直方体状の容器(化粧箱内寸;42mm×42mm×約233mm)内に巻回体を1本収容した巻回体収容体60個を、隙間ができないように段ボール箱(内寸28cm×46cm×24cm)に収容し、巻回体の長手方向が振動台に対し垂直になるように、振動台にベルトで固定した。23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中で、振動試験機を運転して振動試験を行った。振動試験はオートモードを使用し、30秒の間に5Hz、30Hz、5Hzの順に周波数を変化させたサイクルにて、20分間行った。
【0060】
その後、23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中で裂けトラブル評価を行った。評価者として、日常、食品包装用ラップフィルムを使用する100人を選出した。評価者は、収容体に収容された幅約23cmの巻回体からフィルムを50cm引き出した後、化粧箱に付帯するブリキ製のフィルム切断刃で切断する一連の作業を10回ずつ実施した。すなわち、100人が10回ずつで計1000回のうち、巻回体からフィルムを引き出す際に、裂けが発生し、円滑にフィルムが引き出せなかった回数から、フィルムの裂けトラブル発生率を導出した。
【0061】
フィルムの裂けトラブル発生率は、以下の5段階で評価した。すなわち、裂けトラブル発生率が5%未満の場合は、裂けトラブルがほとんどなく、使い勝手に非常に優れるものとして「◎」と評価した。また、裂けトラブル発生率が5%以上10%未満の場合は、裂けトラブルが少なく、使い勝手に優れるものとして「○」と評価した。さらに、裂けトラブル発生率が10%以上15%未満の場合は、裂けトラブルがあまりなく、使い勝手が良いものとして「●」と評価した。また、裂けトラブル発生率が15%以上20%未満の場合は、裂けトラブルがやや多く、使い勝手が悪いものとして「△」と評価した。そして、裂けトラブル発生率が20%以上の場合は、裂けトラブルが非常に多く、使い勝手が非常に悪いものとして「×」と評価した。
【0062】
(2.カット性)
ラップフィルムの出荷後の流通、及び家庭での保管を想定し、製造直後のラップフィルム巻回体を28℃に設定した恒温槽にて1ヶ月間保管した。その後、フィルムのカット性を評価した。
【0063】
評価は23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中で行った。評価者として、日常、食品包装用ラップフィルムを使用する100人を選出した。評価者は、収容体に収容された幅約23cmの巻回体からフィルムを50cm引き出した後、化粧箱に付帯するブリキ製のフィルム切断刃でフィルムを切断する一連の作業を10回繰り返した。フィルムの切断(カット)のしやすさについて、1人5点で採点した。カット性は、100人の採点の合計点をもとに、以下の5段階で評価した。すなわち、100人の採点の合計が450点以上である場合は、非常に容易にフィルムを切断できるとして「◎」と評価した。また、100人の採点の合計が400点以上450点未満である場合は、容易にフィルムを切断できるとして「○」と評価した。さらに、100人の採点の合計が350点以上400点未満である場合は、フィルムの切断時にわずかに抵抗を感じるとして「●」と評価した。また、100人の採点の合計が300点以上350点未満である場合は、フィルムの切断時に抵抗を感じ、カット性が悪いとして、「△」と評価した。そして、100人の採点の合計が300点未満である場合は、フィルムの切断時に大きな抵抗を感じ、カット性が非常に悪いとして「×」と評価した。
【0064】
(3.引き出し性)
ラップフィルムの出荷後の流通、及び家庭での保管を想定し、製造直後のラップフィルム巻回体を28℃に設定した恒温槽にて1ヶ月間保管した。その後、フィルムの引き出し性を評価した。
【0065】
評価は23℃、相対湿度50%RHの雰囲気中で行った。評価者として、日常、食品包装用ラップフィルムを使用する100人を選出した、評価者は、収容体に収容された幅22cmの巻回体からフィルムを50cm引き出した後、化粧箱に付帯するブリキ製のフィルム切断刃でフィルムを切断する一連の作業を10回繰り返した。フィルムの引き出しのしやすさについて、1人5点で採点した。引き出し性は、100人の採点の合計点をもとに、以下の5段階で評価した。すなわち、100人の採点の合計が450点以上である場合は、非常に容易に、かつ、円滑にフィルムを引き出せるとして「◎」と評価した。また、100人の採点の合計が400点以上450点未満である場合は、容易に、かつ、円滑にフィルムを引き出せるとして「○」と評価した。さらに、100人の採点の合計が350点以上400点未満である場合は、容易にフィルムを引き出せるとして「●」と評価した。また、100人の採点の合計が300点以上350点未満である場合は、フィルムの引き出し時に抵抗を感じ、引き出し性が悪いとして「△」と評価した。そして、100人の採点の合計が300点未満である場合は、フィルムの引き出し時に大きな抵抗を感じ、引き出し性が非常に悪いとして、「×」と評価した。
【0066】
(4.総合評価)
上記のそれぞれの評価において、「◎」を5点、「○」を4点、「●」を3点、「△」を2点、「×」を1点として、総合評価を行った。それぞれの評価の合計で12点以上であれば合格とした。
【0067】
[実施例1]
塩化ビニリデン単位を90質量%含み、塩化ビニル単位を10質量%含む重量平均分子量90,000の塩化ビニリデン系樹脂(以下、「PVDC」とも表記する。)、ATBC(アセチルクエン酸トリブチル、田岡化学工業株式会社製)、エポキシ化大豆油(商品名「ニューサイザー510R」、日本油脂株式会社製)をそれぞれ93.4質量%、5.5質量%、及び1.1質量%の割合で混ぜたものの合計5kgを、ヘンシェルミキサーにて5分間混合し、24時間以上熟成して塩化ビニリデン系樹脂組成物を得た。
【0068】
上記の塩化ビニリデン系樹脂組成物を溶融押出機に供給して溶融し、押出機の先端に取り付けられた環状ダイのスリット出口での溶融樹脂組成物温度が170℃になるように、押出機の加熱条件を調節しながら、環状に10kg/hrの押出速度で押し出した。これを過冷却した後、インフレーション延伸によって、MDに4.1倍に延伸し、TDに5.6倍に延伸して筒状フィルムとした。この筒状フィルムをニップして扁平に折り畳んだ後、ニップロールと巻き取りロールとの速度比の制御によって、MDにフィルムを10%緩和させ、折幅280mmの2枚重ねのフィルムを巻取速度18m/minにて巻き取った。このフィルムを、227mmの幅にスリットし、1枚のフィルムになるように剥がしながら、外径92mmの第1の紙管に巻き直した。その後、フィルムを第1の紙管から巻き戻しながら、筒状芯体である外径36mm、長さ230mmの第2の紙管に巻きつける際に、巻回し端から10周目に該当する位置から巻回し端に向かって徐々にフィルムのTD両端を斜めに切断してトリミングしながら20m巻きつけることで、フィルム厚さが11μmであり、X(3)が(Y−2.0)mm、X(5)が(Y−1.6)mm、X(10)が(Y−1.0)mm、Y(つまりX(30))が227mm、X1(3)が(Y1−1.0)mm、X1(5)が(Y1−0.8)mm、X1(10)が(Y1−0.5)mm、Y1(つまりX1(30))が120mm、X2(3)が(Y2−1.0)mm、X2(5)が(Y2−0.8)mm、X2(10)が(Y2−0.5)mm、Y2(つまりX2(30))が107mmである巻回体を得た。この巻回体を(W−S)が1.5mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×231.5mm)に収容し、実施例1の巻回体収容体を得た。なお、紙製の容器は図4に示すのと同様の構成を備える物であった(以下同様)。また、上記X1(3)、X1(5)、X1(10)及びY1は、巻回体をTDに直交するように巻回体の中央付近を切断し、2つに分割した一方の巻回体において、それぞれXi(3)、Xi(5)、Xi(10)及びYiに相当するものであり、X2(3)、X2(5)、X2(10)及びY2は、2つに分割した他方の巻回体において、それぞれXi(3)、Xi(5)、Xi(10)及びYiに相当するものであった(以下同様)。それぞれの評価結果を表1に示す。表中、X(3)、X(5)及びX(10)の数値は、Yに対してどれだけ短いかを示す数値であり、X1(3)、X1(5)及びX1(10)の数値は、Y1に対してどれだけ短いかを示す数値であり、X2(3)、X2(5)及びX2(10)の数値は、Y2に対してどれだけ短いかを示す数値である(以下同様)。
【0069】
[実施例2]
第2の紙管にフィルムを巻きつける際に、巻回し端から10周目に該当する位置から巻回し端に向かって徐々にフィルムのTD両端を斜めに切断してトリミングしながら20m巻きつけることで、フィルム厚さが11μmであり、X(3)が(Y−2.0)mm、X(5)が(Y−1.6)mm、X(10)が(Y−1.0)mm、X1(3)が(Y1−1.7)mm、X1(5)が(Y1−1.2)mm、X1(10)が(Y1−1.0)mm、X2(3)が(Y2−0.3)mm、X2(5)が(Y2−0.2)mm、X2(10)が(Y2−0.0)mmである巻回体を得た。この巻回体を(W−S)が1.5mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×231.5mm)に収容した。これら以外は実施例1と同様にして、実施例2の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例3]
(W−S)が2.8mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×232.8mm)に巻回体を収容した以外は実施例1と同様にして、実施例3の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0071】
[実施例4]
(W−S)が2.8mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×232.8mm)に巻回体を収容した以外は実施例2と同様にして、実施例4の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0072】
[実施例5]
(W−S)が0.5mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×230.5mm)に巻回体を収容した以外は実施例1と同様にして、実施例5の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0073】
[実施例6]
(W−S)が0.5mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×230.5mm)に巻回体を収容した以外は実施例2と同様にして、実施例6の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0074】
[実施例7]
(W−S)が3.8mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×233.8mm)に巻回体を収容した以外は実施例1と同様にして、実施例7の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例8]
(W−S)が3.8mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×233.8mm)に巻回体を収容した以外は実施例2と同様にして、実施例8の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0076】
[実施例9]
押出速度を8kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを8μmに変更した以外は実施例3と同様にして、実施例9の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0077】
[実施例10]
押出速度を8kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを8μmに変更した以外は実施例4と同様にして、実施例10の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0078】
[実施例11]
押出速度を8kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを8μmに変更した以外は実施例5と同様にして、実施例11の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0079】
[実施例12]
押出速度を8kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを8μmに変更した以外は実施例6と同様にして、実施例12の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0080】
[実施例13]
押出速度を8kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを8μmに変更した以外は実施例7と同様にして、実施例13の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0081】
[実施例14]
押出速度を8kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを8μmに変更した以外は実施例8と同様にして、実施例14の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0082】
[実施例15]
押出速度を14kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを15μmに変更した以外は実施例3と同様にして、実施例15の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0083】
[実施例16]
押出速度を14kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを15μmに変更した以外は実施例4と同様にして、実施例16の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0084】
[実施例17]
押出速度を14kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを15μmに変更した以外は実施例5と同様にして、実施例17の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0085】
[実施例18]
押出速度を14kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを15μmに変更した以外は実施例6と同様にして、実施例18の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0086】
[実施例19]
押出速度を14kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを15μmに変更した以外は実施例7と同様にして、実施例19の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0087】
[実施例20]
押出速度を14kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを15μmに変更した以外は実施例8と同様にして、実施例20の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0088】
[実施例21]
X(3)が(Y−2.8)mm、X(5)が(Y−1.8)mm、X(10)が(Y−1.2)mm、X1(3)が(Y1−1.4)mm、X1(5)が(Y1−0.9)mm、X1(10)が(Y1−0.6)mm、X2(3)が(Y2−1.4)mm、X2(5)が(Y2−0.9)mm、X2(10)が(Y2−0.6)mmとなるようにトリミングした以外は実施例3と同様にして、実施例21の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0089】
[実施例22]
X(3)が(Y−2.8)mm、X(5)が(Y−1.8)mm、X(10)が(Y−1.2)mm、X1(3)が(Y1−2.1)mm、X1(5)が(Y1−1.4)mm、X1(10)が(Y1−1.0)mm、X2(3)が(Y2−0.7)mm、X2(5)が(Y2−0.4)mm、X2(10)が(Y2−0.2)mmとなるようにトリミングした以外は実施例3と同様にして、実施例22の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0090】
[実施例23]
X(3)が(Y−2.8)mm、X(5)が(Y−1.8)mm、X(10)が(Y−1.2)mm、X1(3)が(Y1−2.5)mm、X1(5)が(Y1−1.6)mm、X1(10)が(Y1−1.2)mm、X2(3)が(Y2−0.3)mm、X2(5)が(Y2−0.2)mm、X2(10)が(Y2−0.0)mmとなるようにトリミングした以外は実施例3と同様にして、実施例23の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例24]
X(3)が(Y−1.1)mm、X(5)が(Y−0.6)mm、X(10)が(Y−0.1)mm、X1(3)が(Y1−0.6)mm、X1(5)が(Y1−0.3)mm、X1(10)が(Y1−0.1)mm、X2(3)が(Y2−0.5)mm、X2(5)が(Y2−0.3)mm、X2(10)が(Y2−0.0)mmとなるようにトリミングした以外は実施例3と同様にして、実施例24の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例25]
リケンテクノス株式会社製の営業用フォーラップ45M(商品名、ポリメチルペンテン(以下、「PMP」とも表記する。))を、筒状芯体である外径36mm、長さ230mmの第2の紙管に巻き直す際に、巻回し端から10周目に該当する位置から巻回し端に向かって徐々にフィルムのTD両端を斜めに切断してトリミングしながら20m巻きつけることで、フィルム厚さが9μmであり、X(3)が(Y−2.0)mm、X(5)が(Y−1.6)mm、X(10)が(Y−1.0)mm、X1(3)が(Y1−1.0)mm、X1(5)が(Y1−0.8)mm、X1(10)が(Y1−0.5)mm、X2(3)が(Y2−1.0)mm、X2(5)が(Y2−0.8)mm、X2(10)が(Y2−0.5)mmである巻回体を得た。この巻回体を(W−S)が2.8mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×232.8mm)に収容し、実施例25の巻回体収容体を得た。
【0093】
[比較例1]
第2の紙管にフィルムを巻きつける際に、フィルムのトリミングを行わないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0094】
[比較例2]
(W−S)が2.8mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×232.8mm)に収容した以外は比較例1と同様にして、比較例2の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0095】
[比較例3]
(W−S)が0.5mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×230.5mm)に巻回体を収容した以外は比較例1と同様にして、比較例3の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0096】
[比較例4]
(W−S)が3.8mmになるよう紙製の容器(化粧箱:内寸42mm×42mm×233.8mm)に巻回体を収容した以外は比較例1と同様にして、比較例4の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0097】
[比較例5]
押出速度を8kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを8μmに変更した以外は比較例2と同様にして、比較例5の巻回体収容体を得た。
【0098】
[比較例6]
押出速度を8kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを8μmに変更した以外は比較例3と同様にして、比較例6の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0099】
[比較例7]
押出速度を8kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを8μmに変更した以外は比較例4と同様にして、比較例7の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0100】
[比較例8]
押出速度を14kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを15μmに変更した以外は比較例2と同様にして、比較例8の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0101】
[比較例9]
押出速度を14kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを15μmに変更した以外は比較例3と同様にして、比較例9の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0102】
[比較例10]
押出速度を14kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを15μmに変更した以外は比較例4と同様にして、比較例10の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0103】
[比較例11]
X(3)が(Y−0.0)mm、X(5)が(Y−0.0)mm、X(10)が(Y−0.0)mm、X1(3)が(Y1−0.0)mm、X1(5)が(Y1−0.0)mm、X1(10)が(Y1−0.0)mm、X2(3)が(Y2−0.0)mm、X2(5)が(Y2−0.0)mm、X2(10)が(Y2−0.0)mmとなるようにトリミングした以外は実施例25と同様にして、比較例11の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0104】
[参考例1]
押出速度を6kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを5μmに変更した以外は比較例2と同様にして、参考例1の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0105】
[参考例2]
押出速度を18kg/hrに変更することによって、巻回体におけるフィルム厚さを20μmに変更した以外は比較例2と同様にして、参考例2の巻回体収容体を得た。評価結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の巻回体及び巻回体収容体は、巻回体からフィルムを引き出す際に、特に使用開始時の裂けトラブルが低減され、使い勝手が改善されており、しかも、フィルムのカット性及び引き出し性にも優れるものなので、食品包装用、及び調理用等の用途として広く且つ有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1…押出機、2…ダイ、3…ダイ口、4…ソック、5…ソック液、6…冷水槽、7…第1ピンチロール、8…パリソン、9…第2ピンチロール、10…バブル、11…第3ピンチロール、12…ダブルプライフィルム、13…巻取りロール、110…巻回体、120…筒状芯体、200…巻回体収容体、210…容器。
図1
図2
図3
図4
図5