(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、シリコーンオイル、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリブテン類、パラフィン類、ワセリン類及びジアルキルスルフィド化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の漁網防汚塗料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
漁網防汚塗料組成物
本発明の漁網防汚塗料組成物は、
(A)2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロールと、(B)テトラエチルチウラムジスルフィド、ビス(ジメチルジチオカルバモイル)エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン・トリフェニルボラン、n−オクダデシルアミン・トリフェニルボランよりなる化合物群から選ばれる1種又は2種以上とを含有する。
【0014】
<2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(A)>
本発明に用いられる2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロールは、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、Econea 028(登録商標、ヤンセンPMP社製)が挙げられる。
【0015】
前記2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロールの含有量は、特に限定されないが、固形分換算で、展着樹脂100質量部に対して5〜200質量部であり、好ましくは、10〜150質量部であり、さらに好ましくは、15〜100質量部である。
【0016】
<化合物(B)>
本発明の化合物(B)としては、テトラエチルチウラムジスルフィド、ビス(ジメチルジチオカルバモイル)エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン・トリフェニルボラン、n−オクダデシルアミン・トリフェニルボランが挙げられ、これらの化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。化合物(B)として、長期防汚性の観点からテトラエチルチウラムジスルフィドが好ましい。
【0017】
前記化合物(B)の含有量は、特に限定されないが、固形分換算で、展着樹脂100質量部に対して5〜200質量部であり、好ましくは、10〜150質量部であり、さらに好ましくは、15〜100質量部である。
【0018】
前記化合物(A)と、前記化合物(B)との配合割合としては、特に限定されないが、前記化合物(B)/前記化合物(A)の質量比は、固形分換算で、0.1〜8が好ましく、0.3〜4がさらに好ましい。
この質量比は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。(A)成分と(B)成分とを上記の配合割合で併用することにより、想定している併用効果が発揮できるとともに、相乗的な防汚効果が得られる。
【0019】
前記テトラエチルチウラムジスルフィドは、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、TET−G(登録商標、三新化学工業社製)が挙げられる。
【0020】
前記ビス(ジメチルジチオカルバモイル)エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛は、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、ビスダイセン(登録商標、ダウ・アグロサイエンス社製)、TOC−3204F(ロームアンドハース社製)等が挙げられる。
前記ビス(ジメチルジチオカルバモイル)エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛[C]は、水中分散性の観点から、平均粒子径が0.01〜20μm、好ましくは0.05〜5μmのものが用いられる。
【0021】
前記3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン・トリフェニルボランは、公知の方法により合成できる(例えば、特許文献3の製造例1)。例えば、常温下又は加熱下、トリフェニルボランと3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンとを有機溶剤中に溶解させた状態で反応させることによって得ることができる。有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール等を使用できる。トリフェニルボランと3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンとの使用割合は、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミンに対するトリフェニルボランのモル比として、1.0〜1.2が好ましく、1.0がより好ましい。前記反応は、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。得られた反応混合物について、必要に応じて後処理を行ってもよい。後処理では、例えば有機溶剤を留去し、目的の3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン・トリフェニルボランを晶出させる。また、必要により再結晶等を行い精製してもよい。
また、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、OPA(登録商標、日東化成社製)が挙げられる。
【0022】
前記n−オクダデシルアミン・トリフェニルボランは、公知の方法により合成できる(例えば、特許文献3の比較製造例2を参照)。例えば、常温下又は加熱下、トリフェニルボランとn−オクダデシルアミンとを有機溶剤中に溶解させた状態で反応させることによって得ることができる。有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール等を使用できる。トリフェニルボランとn−オクダデシルアミンとの使用割合は、n−オクダデシルアミンに対するトリフェニルボランのモル比として、1.0〜1.2が好ましく、1.0がより好ましい。前記反応は、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。得られた反応混合物について、必要に応じて後処理を行ってもよい。後処理では、例えば有機溶剤を留去し、目的のn−オクダデシルアミン・トリフェニルボランを晶出させる。また、必要により再結晶等を行い精製してもよい。
また、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、ODA(登録商標、ベニートヤマ社製)が挙げられる。
【0023】
本発明の組成物には、必要に応じて以下の成分を含有させることができる。
【0024】
<シリコーンオイル>
シリコーンオイルは溶出調整剤としての役割を果たすことができる。すなわち、シリコーンオイルを含有させることにより、塗膜の溶出速度を好適に抑制することができ、長期間、防汚効果を発揮させることができる。
【0025】
シリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリアルキル(メチル)シロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、長鎖アルキル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル長鎖アルキルアラルキル変性ジメチルシリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、その他各種官能基による変性シリコーンオイル等が挙げられる。特に、親水親油バランス(HLB値)が0.5〜9のポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましく、具体的には0.5〜9のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエーテル長鎖アルキルアラルキル変性ジメチルシリコーンオイルが望ましい。さらに好ましいものとして、親水親油バランス(HLB値)が1〜5の範囲にあるポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエーテル長鎖アルキルアラルキル変性ジメチルシリコーンオイルが挙げられる。HLB値が0.5〜9の範囲内のシリコーンオイルを使用することで、十分な防汚性能を得ることができる。
本発明では、これらのシリコーンオイルを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
シリコーンオイルの粘度は、塗工性能および塗膜物性の観点から、1000ポイズ以下が好ましく、100ポイズ以下がより好ましい。
シリコーンオイルの含有量は、特に限定されないが、固形分換算で、展着樹脂100質量部に対して0.5〜150質量部であり、好ましくは0.5〜100質量部であり、さらに好ましくは、1〜50質量部である。
【0027】
<エチレン・α−オレフィン共重合体>
エチレン・α−オレフィン共重合体は溶出調整剤としての役割を果たすことができる。すなわち、エチレン・α−オレフィン共重合体を含有させることにより、塗膜の溶出速度を好適に抑制することができ、長期間、防汚効果を発揮させることができる。
エチレン・α−オレフィン共重合体としては、例えば、一般式(1):
【0028】
【化1】
(式中、R
1は炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、x、yおよびpはそれぞれ同一又は異なって1以上の整数を示す)で表されるエチレン・α−オレフィン共重合体が挙げられる。
R
1で表される炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基としては、特に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(1)で表されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンとを共重合させることにより得られる共重合体である。前記エチレン・α−オレフィン共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体としては市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ルーカントHC−10、ルーカントHC−20、ルーカントHC−40、ルーカントHC−100、ルーカントHC−150、ルーカントHC−600、ルーカントHC−2000(いずれも登録商標、三井化学株式会社製)等が挙げられる。これらのエチレン・α−オレフィン共重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体の数平均分子量(Mn)は、塗工性能および塗膜物性の観点から、10,000以下が好ましく、1,000〜3,000がより好ましい。前記エチレン・α−オレフィン共重合体は、0℃における粘度が20,000PaS以下のものが好ましく、500PaS以下のものがより好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体の含有量は、特に限定されないが、シリコーンオイル100質量部に対して、固形分換算で、1〜1000質量部であり、好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは50〜300質量部である。
【0030】
<ポリブテン類>
ポリブテン類は溶出調整剤としての役割を果たすことができる。ポリブテン類としては、ポリブテン、ポリイソブテン等が挙げられる。ポリブテン類としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ポリブテンLV−7、ポリブテンLV−10、ポリブテンLV−25、ポリブテンLV−50、ポリブテンLV−100、ポリブテンHV−35、ポリブテンHV−100、ポリブテンHV−300、ポリブテンHV−1900(いずれも日本石油化学株式会社製);ポリブテン0H、ポリブテン5H、ポリブテン10H、ポリブテン300H、ポリブテン2000H、ポリブテン0R、ポリブテン15R、ポリブテン35R、ポリブテン100R、ポリブテン350R(いずれも出光石油化学株式会社製);ポリブテン0N、ポリブテン06N、ポリブテン3N、ポリブテン10SH、ポリブテン200N(いずれも日油株式会社製)等が挙げられる。
ポリブテンの含有量は、特に限定されないが、固形分換算で、シリコーンオイル100質量部に対して1〜1000質量部であり、好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは50〜300質量部である。
【0031】
<パラフィン類>
パラフィン類としては、例えば、n−パラフィン、固形パラフィン、流動パラフィン、塩素化パラフィン等が挙げられる。
パラフィン類の含有量は、特に限定されないが、固形分換算でシリコーンオイル100質量部に対して1〜1000質量部であり、好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは50〜300質量部である。
【0032】
<ワセリン類>
ワセリン類としては、例えば、白色ワセリン、黄色ワセリン等が挙げられる。
ワセリン類の含有量は、特に限定されないが、固形分換算でシリコーンオイル100質量部に対して1〜1000質量部であり、好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは50〜300質量部である。
【0033】
<ジアルキルスルフィド化合物>
ジアルキルスルフィド化合物としては、ジ−tert−ブチルデカスルフィド、ジペンチルテトラスルフィド、ジペンチルペンタスルフィド、ジペンチルデカスルフィド、ジオクチルテトラスルフィド、ジオクチルペンタスルフィド、ジノニルテトラスルフィド、ジノニルペンタスルフィド、ジ−tert−ノニルテトラスルフィド、ジ−tert−ノニルペンタスルフィド、ジデシルテトラスルフィド、ジドデシルテトラスルフィド、ジオクタデシルテトラスルフィド、ジノナデシルテトラスルフィド等が挙げられる。
ジアルキルスルフィド化合物の含有量は、特に限定されないが、固形分換算でシリコーンオイル100質量部に対して1〜1000質量部であり、好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは50〜300質量部である。
【0034】
<防汚薬剤>
防汚薬剤として、前記化合物(A)及び化合物(B)以外にも、他の無機防汚剤および有機防汚剤を含有させることができる。これにより、形成した塗膜がさらに好適な防汚効果を発揮させることができる。
例えば、銅紛、キュプロニッケル、亜酸化銅、ロダン銅等の銅系無機防汚剤、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾリン、クロロメチル−n−オクチルジスルフィド、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N'−ジメチル−N'−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、N,N'−ジメチル−N'−トリル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2,3−ジクロロ−N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2'−エチル、6'−メチルフェニル)マレイミド、3−ベンゾ[b]チエン−2−イル−5,6−ジヒドロ−1,4,2−オキサチアジン−4−オキサイド、テトラクロロイソフタロニトリル等の有機防汚剤が挙げられる。
【0035】
<展着樹脂>
展着樹脂を含有させることにより、塗膜形成における作業性が向上する。また、被塗膜形成物との密着性に優れた塗膜を形成することができる。
前記展着樹脂としては、合成樹脂および天然樹脂が用いられる。
合成樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、塩素化ポリエチレン等を使用できる。前記ビニル樹脂としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アルキルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル樹脂等を例示できる。
また、天然樹脂としては、例えば、ウッドロジン、ガムロジン、変性ロジン等が挙げられる。
前記展着樹脂としては、特に、アクリル樹脂を含有することが好ましい。
前記展着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−100〜100℃が好ましく、−50〜80℃がより好ましい。Tgが低すぎると漁網への塗布後の塗膜のタックが大きく、塗布作業に支障をきたす。また、Tgが高すぎると、塗膜の柔軟性が損なわれ、クラック・割れなどを生じ、防汚効果を落とす原因となるという点で上記範囲が好ましい。前記のTgの値は、示差走査熱量測定装置(例:METTLER TOLEDO社製、DSC1)を用いて、JIS K 7121の測定法を参照し、実測した値をいう。
前記展着樹脂の質量平均分子量(Mw)は、5,000〜1,000,000が好ましく、7,000〜500,000がより好ましい。Mwの測定方法としては、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)が挙げられる。GPCによってMwを測定する場合、Mwは、ポリスチレンを標準物質として検量線を作成して測定することにより求めた値(ポリスチレン換算値)として表示される。
前記展着樹脂の含有量は、特に限定されないが、固形分換算で防汚塗料組成物中に1〜50質量%使用され、好ましくは5〜30質量%である。
【0036】
<その他>
本発明の組成物には、必要に応じて公知の添加剤を含有させてもよい。
公知の添加剤としては、例えば、染料、顔料、分散剤(例えば、ポリアマイド燐酸系分散剤、ポリアマイド系分散剤、不飽和ポリカルボン酸系分散剤等)、可塑剤(例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリクレジルフォスフェート等)、消泡剤、タレ止め剤、界面活性剤等が挙げられる。
これら添加剤については、本発明の効果を妨げない任意の配合割合で含有させることができる。
【0037】
本発明の組成物は、通常、水又は有機溶剤に溶解又は分散させておく。これにより、塗料として好適に用いることができる。
有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、ソルベッソ100、ソルベッソ150(いずれも登録商標、エクソンモービル製)等の芳香族系溶剤;イソブチルメチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル等のエステル系溶剤が使用できる。
【0038】
また、低毒・低臭・低環境負荷を考慮した有機溶剤も使用することができ、例えば、ペガソールAN45、ペガソールAS100(いずれも登録商標、エクソンモービル製)、LAWS、HAWS(いずれもシェルケミカルズ製)等の芳香族・脂環式・脂肪族炭化水素混合溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコール系エステル溶剤;エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、リカソルブ(登録商標)900(C9芳香族水添体)、リカソルブ(登録商標)1000(C10芳香族水添体)等の脂環式炭化水素系溶剤;シェルゾールD40(登録商標、シェルケミカルズ製)、エクソールD30、エクソールD40(いずれも登録商標、エクソンモービル製)等の脂環式・脂肪族炭化水素混合溶剤;アイソパーG、アイソパーH(いずれも登録商標、エクソンモービル製)等の脂肪族炭化水素混合溶剤なども使用することができる。
これら有機溶剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
本発明の組成物は、種々の漁業具、水中構造物等の防汚塗膜の形成に使用できる。特に、本発明の組成物は、漁網用防汚塗料組成物として好適に使用できる。
【0040】
本発明の漁網防汚塗料組成物は、上記(A)及び(B)成分、ならびに必要に応じて上記各成分を混合することにより調製できる。混合する際の各成分の添加量については、上記配合量および含有量となるよう適宜調整すればよい。各成分を混合する順序については特に制限されない。混合方法については、撹拌装置を用いて混合する等、公知の方法を採用すればよい。
【0041】
漁網防汚塗膜の形成方法、防汚塗膜、および塗装物
本発明の漁網防汚塗膜の形成方法は、上記漁網防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形成することを特徴とする。本発明の形成方法により得られる防汚塗膜は、表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。また、塗膜を溶解させた後、上記組成物を上塗りすることにより、継続的に防汚効果を発揮することができる。
被塗膜形成物としては、例えば、漁業具、水中構造物等が挙げられる。漁業具としては、例えば、養殖用又は定置用の漁網、該漁網に使用される浮き子、ロープ等の漁網付属具等が挙げられる。水中構造物としては、例えば、発電所導水管、橋梁、港湾設備等が挙げられる。
【0042】
本発明の漁網防汚塗膜は、上記漁網防汚塗料組成物を被塗膜形成物の表面(全体又は一部)に塗布することにより形成できる。
塗布方法としては、例えば、ハケ塗り法、スプレー法、ディッピング法、フローコート法、スピンコート法等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用して行ってもよい。例えば、本発明の漁網防汚塗料組成物を漁網に塗布する場合、塗布方法としてはディッピング法を採用することが好ましい。
塗布後、乾燥させる。乾燥温度は、室温でよい。乾燥時間は、漁網防汚塗料の付着量に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
前記漁網防汚塗料の付着量は、被塗膜形成物の種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、被塗膜形成物が漁網の場合、乾燥塗膜の付着量が漁網100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは4〜15質量部である。
【0044】
本発明の塗装物は、前記防汚塗膜を表面に有する。本発明の塗装物は、前記防汚塗膜を表面の全体に有していてもよく、一部に有していてもよい。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例等を示し本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明は実施例等に限定されるものではない。
【0046】
製造例1(金属カルボキシレート含有共重合体の製造)
温度計、還流冷却器、撹拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えたフラスコに、酢酸ブチル50g及びn−ブタノール50gを加えて90〜100℃に加温した後、窒素雰囲気下でアクリル酸10.8g、エチルアクリレート64.2g、メチルメタクリレート75g、及びアゾビスイソブチロニトリル3gの混合溶液を4時間にわたって滴下した。滴下終了後1時間が経過するまで100℃に保温し、酢酸ブチル30g及びアゾビスイソブチロニトリル0.5gの混合溶液を1時間にわたり滴下した。次いで、酸化亜鉛12g、ブタノール20g及び脱イオン水1.5gを加え、120℃で10時間反応させて金属カルボキシレート含有共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液の加熱残分は50.5%、Mwは7,500であった。
【0047】
<分子量分析方法>
重量平均分子量(Mw)は、GPCにより求めた値(ポリスチレン換算値)である。GPCの条件は下記の通りである。
装置・・・ 東ソー株式会社製 HLC-8220GPC
ガードカラム・・・ TSKguardcolumn SuperHZ-L(東ソー株式会社製)
カラム・・・ TSKgel SuperHZM-M(東ソー株式会社製)2本直列接続
流量・・・ 0.35 mL/min
検出器・・・ RI
カラム恒温槽温度・・・ 40℃
展開溶媒・・・ THF(和光純薬工業社製;試薬特級)
標準サンプル・・・ TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)
【0048】
<加熱残分分析方法>
加熱残分は、JIS K5601−1−2(125℃、1時間加熱)により求めた値である。
【0049】
実施例1〜12および比較例1〜14
表1〜表2に記載の成分を表1〜表2に記載の割合(質量%)で混合することにより、漁網防汚塗料組成物を得た。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1〜表2中の各成分の詳細は、以下の通りである。
商品名「ニットールHN」...アクリル樹脂キシレン溶液(固形分40%、Tg=約20℃、Mw=約230000、日東化成(株)製)
商品名「Econea 028」...2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(ヤンセンPMP製)
商品名「TET−G」...テトラエチルチウラムジスルフィド(三新化学工業(株)製)
商品名「OPA」...トリフェニルボラン・3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン(日東化成(株)製 純度99%)
商品名「TOC−3204F」...ビス(ジメチルジチオカルバモイル)エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛(ロームアンドハース社製)
商品名「ODA」...n−オクタデシルアミントリフェニルボラン(ベニートヤマ(株)製)
商品名「PK」...ピリジン・トリフェニルボラン(北興化学工業(株)製)
商品名「Sea Nine211」...4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾリン(固形分30%キシレン溶液、ロームアンドハース社製)
商品名「ZnPT」...ジンクピリチオン(アーチケミカル社製)
商品名「CuPT」...銅ピリチオン(アーチケミカル社製)
商品名「X−22−2516」...ポリエーテル長鎖アルキルアラルキル変性ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業(株)製)
商品名「KF−6020」...ポリエーテル変性ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業(株)製)
商品名「ルーカントHC−40」...エチレン・α−オレフィン共重合体(Mn=1600、三井化学(株)製)
商品名「ポリブテン0N」...ポリブテン(日本油脂製)
商品名「DAF−1」...ジ−tert−ノニルペンタスルフィド(大日本インキ(株)製)
商品名「ディスパロン4200−20X」...酸化ポリエチレン(固形分20%、楠本化成(株)製)
商品名「ディスパロン6900−20X」...脂肪酸アマイド(固形分20%、楠本化成(株)製)
商品名「ディスパロンFA−62」...アクリル系重合物とシリコーンとの混合物(固形分35%、楠本化成(株)製)
キシレン...キシダ化学(株)製、1級試薬
【0053】
試験例1(防汚効果確認試験)
ポリエチレン製の漁網(400デニール、40本、8節)を、実施例1〜12および比較例1〜14で得られた各漁網防汚塗料組成物に、乾燥塗膜の付着量が漁網100質量部に対し、8質量部になるように浸漬塗布し乾燥させた。塗膜を形成した漁網を40×60cmSUSの枠に固定し、岩手県大船渡地先の定置網にて、海面下1mに垂下浸漬して付着生物による漁網の汚損を8ヶ月間観察した。
結果を表3〜表4に示す。
表3〜表4中の数字は汚損生物の付着表面積(%)を表す。なお、汚損生物の付着表面積(%)は、試験期間(1、2、4、6又は8ヶ月)後に海面の上から漁網の写真を撮影し、漁網における汚損生物の占有面積を目視で評価した。
また、表3〜表4中の防汚効果の欄における「○」は、8ヶ月後に、該当する生物が確認されなかったことを示し、「×」は、8ヶ月後に、該当する生物が確認されたことを示している。また、「○S]は、二種以上の防汚薬剤の組み合わせによる相乗効果によって、該当する生物に対して防汚効果が発揮されたことを示している。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
<考察>
比較例1を参照すると、エコニアは、甲殻動物類には有効であるがそれ以外の生物に対しては十分な防汚効果を有さないことが分かる。比較例2を参照すると、TET−Gは、緑藻類には有効であるがそれ以外の生物に対しては十分な防汚効果を有さないことが分かる。これらの結果を考慮すると、エコニアとTET−Gを併用した実施例1の防汚塗膜は、甲殻動物類及び緑藻類にのみ防汚効果を発揮することが予測される。しかし、実際は、甲殻動物類及び緑藻類に加えて、紅藻類についても防汚効果が発揮された。しかも、生物が付着し始めるまでの期間も比較例1〜2では2〜4ヶ月であったのに対し、実施例1では、8ヶ月であった。このように、実施例1では、(1)単体の防汚薬剤では防汚効果が発揮されない生物に対しても、防汚効果が発揮された点、及び(2)生物付着が始まるまでの期間が大幅に伸びた点、の2点において、防汚薬剤の組み合わせによる相乗効果が得られた。
【0057】
比較例3を参照すると、TOC−3204Fは、腔腸動物類にのみ有効であることが分かる。従って、エコニアとTOC−3204Fを併用した実施例2の防汚塗膜は、甲殻動物類及び腔腸動物類にのみ有効であると予想されるが、実際は、緑藻類に対しても防汚効果を発揮した。しかも、生物付着が始まるまでの期間が大幅に伸びた。
【0058】
比較例4〜5を参照すると、OPA及びODAは、紅藻類には有効でないことが分かる。エコニアも紅藻類には有効でないので、エコニアと、OPA又はODAを併用した実施例3〜4の防汚塗膜は、紅藻類には有効ではないことが予想されるが、実際は、紅藻類に対しても防汚効果を発揮した。しかも、生物付着が始まるまでの期間が大幅に伸びた。
【0059】
実施例5は、防汚薬剤の組み合わせは実施例1と同様であるが、エコニアの割合が実施例1よりも大きい。実施例5では、腔腸動物類、紅藻類及びその他生物に対しても、相乗効果によって防汚効果が発揮され、8ヶ月経過後も生物付着が全く無いという極めて優れた結果が得られた。
【0060】
実施例6は、防汚薬剤の組み合わせは実施例2と同様であるが、エコニアの割合が実施例2よりも大きい。実施例6では、緑藻類及びその他生物に対して、相乗効果によって防汚効果が発揮された。
【0061】
実施例7は、防汚薬剤の組み合わせは実施例3と同様であるが、エコニアの割合が実施例3よりも大きい。実施例7では、防汚効果を奏する生物の種類は実施例3と同じであるが、8ヶ月経過後の生物付着面積が実施例3よりも小さいという点で、実施例3よりも優れた結果が得られた。
【0062】
実施例8は、防汚薬剤の組み合わせは実施例1と同様であるが、防汚薬剤の量が実施例1よりも多い。実施例8では、腔腸動物類、紅藻類及びその他生物に対しても、相乗効果によって防汚効果が発揮され、8ヶ月経過後も生物付着が全く無いという極めて優れた結果が得られた。
【0063】
実施例9では、エコニアと、TET−Gと、TOC−3204Fの三種を併用した。その結果、実施例1〜2の何れでも防汚効果が発揮されなかったその他生物に対しても、相乗効果によって防汚効果が発揮され、8ヶ月経過後も生物付着が全く無いという極めて優れた結果が得られた。
【0064】
実施例10では、エコニアと、TET−Gと、OPAの三種を併用した。その結果、実施例1及び3の何れでも防汚効果が発揮されなかった腔腸動物類に対しても、相乗効果によって防汚効果が発揮され、8ヶ月経過後も生物付着が全く無いという極めて優れた結果が得られた。
【0065】
実施例11〜12は、防汚薬剤の種類と配合量は実施例1と同じで、展着樹脂の種類が実施例1と異なる。実施例11〜12でも、実施例1と同様に、相乗効果による優れた結果が得られた。
【0066】
比較例10〜13は、エコニアと、PK、Sea Nine211、ZnPT、又はCuPTとを併用したものであるが、比較例1と比較例6〜9から予測される防汚効果が得られたのみであり、併用による相乗効果は見られなかった。