(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186209
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】組電池の冷却兼加熱構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6554 20140101AFI20170814BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20170814BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20170814BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20170814BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20170814BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20170814BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20170814BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20170814BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20170814BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
H01M10/6554
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6569
H01M10/6571
F28D15/02 101H
F28D15/02 D
H01M2/10 S
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-172888(P2013-172888)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-41558(P2015-41558A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 広仲
(72)【発明者】
【氏名】多賀 和夫
【審査官】
杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−77374(JP,A)
【文献】
特開平7−283564(JP,A)
【文献】
特開平9−119788(JP,A)
【文献】
特開2003−187857(JP,A)
【文献】
特開2005−283093(JP,A)
【文献】
特開2009−140714(JP,A)
【文献】
特開2011−243358(JP,A)
【文献】
特開2013−73722(JP,A)
【文献】
特開2013−157111(JP,A)
【文献】
実開昭57−127175(JP,U)
【文献】
実開昭63−52073(JP,U)
【文献】
特表2013−524406(JP,A)
【文献】
特表2014−504779(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0059346(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/020614(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/091459(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
H01M 2/10
H01M 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直状に配置される複数の扁平状単電池と、ヒートパイプ部が設けられた基板を有し、かつ単電池と左右方向に交互に並んで配置される複数の平板状ヒートパイプとを備えており、平板状ヒートパイプの基板が、単電池よりも前方のみに突出した部分を有しており、平板状ヒートパイプの基板が、単電池の少なくとも片面に熱的に接触させられた状態で単電池とともに積層状に配置される鉛直状受熱部と、基板における単電池よりも前方に突出した部分の上部に設けられた放熱部と、基板における単電池よりも前方に突出した部分の下部に設けられ、かつ加熱源に熱的に接触させられる加熱部とを有し、ヒートパイプ部が、内部空間が全体に1つの空間となっている中空無端状作動液封入部内に作動液が封入されることによって、基板の受熱部、放熱部および加熱部にかけて設けられている組電池の冷却兼加熱構造。
【請求項2】
平板状ヒートパイプの基板の加熱部が、放熱部との間に隙間が形成されるように放熱部の下方に間隔をおいて設けられており、放熱部と加熱部との間に作動液封入部が存在しないようになっている請求項1記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【請求項3】
平板状ヒートパイプの基板における放熱部と加熱部との間に形成される隙間が、放熱部および加熱部の突出端から単電池まで延びている請求項2記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【請求項4】
基板の放熱部が、平面から見て波形となっている請求項2または3記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【請求項5】
基板の放熱部の突出端部が、加熱部の突出端部よりも単電池に対して外側方に位置している請求項1〜4のうちのいずれかに記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【請求項6】
基板の放熱部に放熱部材が設けられている請求項1〜5のうちのいずれかに記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【請求項7】
両面に平板状ヒートパイプの基板の受熱部が熱的に接触させられた単電池と、同じく片面のみに受熱部が熱的に接触させられた単電池とが混在している請求項1〜6のうちのいずれかに記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は組電池の冷却兼加熱構造に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、
図1および
図2の上下を上下というものとする。
また、この明細書および特許請求の範囲において、図1の左側を前、これと反対側を後といい、図2の左右、すなわち前方から後方を見た際の左右を左右というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境問題などから、ハイブリッド自動車、電気自動車等が注目されており、そのために各種の二次電池が開発されている。各種の二次電池の中でもリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、密閉性に優れ、かつメンテナンスフリーであるため、ハイブリッド自動車や電気自動車用のバッテリとして優れているが、大型のものは実用化されていない。そこで、複数個の小型の単電池を直列または並列に接続して組電池の形態とすることにより、所望の電圧や容量を確保している。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、使用温度によって性能や寿命が変化するので、長時間にわたって効率良く使用するためには適正な温度で使用する必要があるが、上述したような組電池の形態で用いた場合、各単電池自体から発せられる熱を放熱することが困難であり、各単電池の温度が上昇して寿命が短くなるという問題がある。
【0005】
そこで、上述したような組電池における単電池の温度上昇を抑制することを目的として、複数の扁平状の単電池と、複数の平板状ヒートパイプとが、両者が水平となるように交互に積層状に配置されており、平板状ヒートパイプの周縁部の少なくとも一部に、単電池よりも外方に突出しかつ放熱用ヒートシンクに接触させられる放熱部が設けられている冷却構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
ところで、寒冷地においては、使用開始前には使用環境温度の影響により単電池の温度が適正温度よりも低くなり、単電池の温度が適正温度に上昇するまでは効率良く使用することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−140714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、組電池を構成する単電池を効率良く冷却することができるとともに、寒冷地においても使用開始前に短時間で単電池を適正温度域に加熱しうる組電池の冷却兼加熱構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)鉛直状に配置される複数の扁平状単電池と、ヒートパイプ部が設けられた基板を有
し、かつ単電池と左右方向に交互に並んで配置される複数の平板状ヒートパイプとを備えており、
平板状ヒートパイプの基板が、単電池よりも前方のみに突出した部分を有しており、平板状ヒートパイプの基板が、単電池の少なくとも片面に熱的に接触させられた状態で単電池とともに積層状に配置される鉛直状受熱部と、
基板における単電池よりも前方に突出した部分の上部に設けられた放熱部と、
基板における単電池よりも前方に突出した部分の下部に設けられ、かつ加熱源に熱的に接触させられる加熱部とを有し、ヒートパイプ部が、
内部空間が全体に1つの空間となっている中空
無端状作動液封入部内に作動液が封入されることによって、基板の受熱部、放熱部および加熱部にかけて設けられている組電池の冷却兼加熱構造。
【0011】
2)平板状ヒートパイプの基板の加熱部が、放熱部との間に隙間が形成されるように放熱部の下方に間隔をおいて設けられており、
放熱部と加熱部との間に作動液封入部が存在しないようになっている上記1)記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【0012】
3)平板状ヒートパイプの基板における放熱部と加熱部との間に形成される隙間が、放熱部および加熱部の突出端から単電池まで延びている上記2)記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【0013】
4)基板の放熱部が、平面から見て波形となっている上記2)または3)記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【0014】
5)基板の放熱部の突出端部が、加熱部の突出端部よりも単電池に対して外側方に位置している上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【0015】
6)基板の放熱部に放熱部材が設けられている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【0016】
7)両面に平板状ヒートパイプの基板の受熱部が熱的に接触させられた単電池と、同じく片面のみに受熱部が熱的に接触させられた単電池とが混在している上記1)〜6)のうちのいずれかに記載の組電池の冷却兼加熱構造。
【発明の効果】
【0017】
上記1)〜7)の冷却兼加熱構造によれば、鉛直状に配置される複数の扁平状単電池と、ヒートパイプ部が設けられた基板を有
し、かつ単電池と左右方向に交互に並んで配置される複数の平板状ヒートパイプとを備えており、
平板状ヒートパイプの基板が、単電池よりも前方のみに突出した部分を有しており、平板状ヒートパイプの基板が、単電池の少なくとも片面に熱的に接触させられた状態で単電池とともに積層状に配置される鉛直状受熱部と、
基板における単電池よりも前方に突出した部分の上部に設けられた放熱部と、
基板における単電池よりも前方に突出した部分の下部に設けられ、かつ加熱源に熱的に接触させられる加熱部とを有し、ヒートパイプ部が、
内部空間が全体に1つの空間となっている中空
無端状作動液封入部内に作動液が封入されることによって、基板の受熱部、放熱部および加熱部にかけて設けられているので、以下に述べるように単電池を効率良く冷却しうるとともに、寒冷地においては使用開始前に単電池を短時間で適正温度に加熱することが可能になる。
【0018】
すなわち、単電池を冷却する際には、単電池から発せられる熱によって、平板状ヒートパイプの基板における単電池に熱的に接触している受熱部が加熱され、この熱がヒートパイプ部の受熱部の作動液封入部内の作動液に伝わって作動液が蒸発する。一方、平板状ヒートパイプの基板の放熱部においては、熱が放熱されて作動液封入部内の気相の作動液が凝縮し、作動液封入部内の圧力が低下する。そして、受熱部の作動液封入部で発生した気相作動液が、圧力が低下した放熱部の作動液封入部に流れるとともに、再凝縮した液相作動液が受熱部の作動液封入部に流れるので、ヒートパイプ部において、気相作動液の流れと液相作動液の流れとが発生し、作動液の循環が起きる。放熱部の作動液封入部で再凝縮した液相作動液は、受熱部の作動液封入部に流れるまでの間においても、単電池から熱を奪って蒸発する。したがって、単電池における平板状ヒートパイプの基板の受熱部に熱的に接触している部分の全体が均等に冷却される。
【0019】
寒冷地において、使用開始前に単電池を加熱する際には、加熱源から平板状ヒートパイプの基板の加熱部に熱を供給する。供給された熱は平板状ヒートパイプの基板の加熱部に伝わるとともに、加熱部の作動液封入部内の作動液に伝わって作動液が蒸発する。一方、単電池に熱的に接触している平板状ヒートパイプの基板の受熱部においては、単電池によって基板から熱が奪われて作動液封入部内の気相の作動液が凝縮し、作動液封入部内の圧力が低下する。これと同時に、基板から奪われた熱により単電池が加熱される。そして、加熱部の作動液封入部内で発生した気相作動液が、圧力が低下した受熱部の作動液封入部に流れるとともに、再凝縮した液相作動液が加熱部の作動液封入部に流れるので、ヒートパイプ部において、気相作動液の流れと液相作動液の流れとが発生し、作動液の循環が起きる。したがって、単電池における平板状ヒートパイプの基板の受熱部に熱的に接触している部分の全体が均等に加熱され、単電池の全体が短時間で適正温度に加熱される。
【0020】
上記2)および3)の冷却兼加熱構造によれば、平板状ヒートパイプの基板の放熱部および加熱部が、それぞれ他方からの熱影響を受けにくくなる。
【0021】
上記4)〜6)の冷却兼加熱構造によれば、平板状ヒートパイプの基板の放熱部からの放熱効果が一層優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明による組電池の冷却兼加熱構造を示す一部を切り欠いた右側面図である。
【
図3】
図1に示す冷却兼加熱構造の一部分を示す分解斜視図である。
【
図4】
図1の冷却兼加熱構造に用いられる平板状ヒートパイプの第1の変形例を示す
図3相当の図である。
【
図5】
図1の冷却兼加熱構造に用いられる平板状ヒートパイプの第2の変形例を示す
図3相当の図である。
【
図6】
図1の冷却兼加熱構造に用いられる平板状ヒートパイプの第3の変形例を示す
図3相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して
説明する。
【0024】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0025】
さらに、全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0026】
図1および
図2はこの発明による組電池の冷却兼加熱構造の全体構成を示し、
図3はその一部分の構成を示す。
【0027】
図1および
図2において、組電池の冷却兼加熱構造は、リチウムイオン二次電池からなり、かつ鉛直状に配置された複数の単電池(1)と、ヒートパイプ部(12)が設けられた基板(3)を有
し、かつ単電池と左右方向に交互に並んで配置される複数の平板状ヒートパイプ(2)とを備えている。
【0028】
単電池(1)は扁平直方体状であり、左右方向に積層状に並ぶように配置されている。単電池(1)の上端に1対の端子(4)が上方突出状に設けられており、端子(4)を利用して全ての単電池(1)が直列状または並列状に接続されることにより組電池(5)が構成されている。
【0029】
なお、この明細書において、「直方体」という用語には、数学的に定義される厳密な直方体だけではなく、直方体に近似した形状も含むものとする。また、単電池(1)は扁平直方体状に限らず、扁平状であればよい。
【0030】
図1〜
図3に示すように、
平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)は、単電池(1)よりも前方のみに突出した部分を有している。平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)は互いに接合された2枚のアルミニウム板からなり、隣り合う単電池(1)間およびいずれか一端、ここでは左端の単電池(1)の左側に配置されて単電池(1)に熱的に接触している鉛直状受熱部(6)と、
基板(3)における単電池(1)よりも前方に突出した部分の上部に設けられた鉛直状放熱部(7)と、
基板(3)における単電池(1)よりも前方に突出した部分の下部に設けられた鉛直状加熱部(8)とを備えている。
すなわち、受熱部(6)の前側縁部の上部に、鉛直状放熱部(7)が単電池(1)よりも前方に突出するように一体に設けられ、受熱部(6)の前側縁部の下部に、鉛直状加熱部(8)が単電池(1)よりも前方に突出するように一体に設けられている。放熱部(7)と加熱部(8)とは一体に連なっている。平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の放熱部(7)の片面、ここでは右側面に放熱部材(9)が設けられ、同じく加熱部(8)の片面、ここでは右側面に加熱源(11)が熱的に接触させられている。
【0031】
図示は省略したが、単電池(1)と平板状ヒートパイプ(2)の受熱部(6)との間には電気絶縁フィルムが介在させられるか、あるいは平板状ヒートパイプ(2)の受熱部(6)の左右両面に電気絶縁コーティングが施されることによって、単電池(1)と平板状ヒートパイプ(2)の受熱部(6)との間が電気絶縁状態となっていることが好ましい。
【0032】
平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)には、
内部空間が全体に1つの空間となっている1つの中空無端状作動液封入部(13)内に作動液が封入されることにより形成されたヒートパイプ部(12)が、基板(3)の受熱部(6)、放熱部(7)および加熱部(8)にかけて設けられている。ヒートパイプ部(12)および作動液封入部(13)は、放熱部(7)および加熱部(8)において、上下に直接連なるように設けられている。作動液封入部(13)は、基板(3)のいずれか一方のアルミニウム板、ここでは右側のアルミニウム板のみを外側に膨出させることにより形成されており、基板(3)の受熱部(6)、放熱部(7)および加熱部(8)の左側面は平坦面となっている。
【0033】
平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)は、たとえば2枚のアルミニウム板の合わせ面のうちの少なくともいずれか一方の面に圧着防止剤を所要パターンに印刷し、この状態で2枚のアルミニウム板を圧着して合わせ板をつくり、合わせ板の非圧着部に流体圧を導入することによって作動液封入部(13)を一挙に形成する、所謂ロールボンド法によって製造される。合せ板の非圧着部は、作動液封入部(13)に対応する形状の作動液封入部用非圧着部と、作動液封入部用非圧着部から合せ板の周縁に至る流体圧導入用非圧着部とからなる。流体圧導入用非圧着部から流体圧を導入して作動液封入部(13)を形成すると、流体圧導入用非圧着部は、一端が作動液封入部(13)に連なるとともに他端が合せ板の周縁に開口した作動液注入部となる。作動液注入部は作動液の注入後封止される。
【0034】
なお、基板(3)は、少なくとも1枚のアルミニウム板が作動液封入部(13)を形成するための外方膨出部を有する2枚のアルミニウム板を、たとえばろう付することにより形成してもよい。
【0035】
放熱部材(9)はアルミニウム押出形材製であって、上下方向に長い方形状放熱基板(14)の片面に上下方向にのびる複数の放熱フィン(15)が一体に設けられたものであり、放熱基板(14)の放熱フィン(15)が形成されていない他面が、放熱部(7)の作動液封入部(13)における平坦な膨出面に熱的に接触するようにして、適当な方法で放熱部(7)に取り付けられている。加熱源(11)としては、内部に高温流体が流される流体加熱式ヒータや、電気ヒータなどが用いられる。
【0036】
上述した冷却兼加熱構造において、単電池(1)を冷却する際には、単電池(1)から発せられる熱によって、平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)における単電池(1)に熱的に接触している受熱部(6)が加熱され、この熱が受熱部(6)の作動液封入部(13)内の作動液に伝わって作動液が蒸発する。一方、平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)における放熱部材(9)の放熱基板(14)に熱的に接触している放熱部(7)から熱が奪われ、放熱部(7)において作動液封入部(13)内の気相の作動液が凝縮し、作動液封入部(13)内の圧力が低下する。そして、受熱部(6)の作動液封入部(13)で発生した気相作動液が、圧力が低下した放熱部(7)の作動液封入部(13)に流れるとともに、再凝縮した液相作動液が受熱部(6)の作動液封入部(13)に流れるので、ヒートパイプ部(12)において、気相作動液の流れと液相作動液の流れが発生し、作動液の循環がおきる。ヒートパイプ部(12)の放熱部(7)の作動液封入部(13)で再凝縮した液相作動液は、受熱部(6)の作動液封入部(13)に流れるまでの間においても、単電池(1)から熱を奪って蒸発する。したがって、単電池(1)における平板状ヒートパイプ(2)の受熱部(6)に熱的に接触している部分の全体が均等に冷却される。
【0037】
寒冷地において、使用開始前に単電池(1)を加熱する際には、加熱源(11)から平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の加熱部(8)に熱を供給する。供給された熱は平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の加熱部(8)に伝わるとともに、加熱部(8)の作動液封入部(13)内の作動液に伝わって作動液が蒸発する。一方、単電池(1)に熱的に接触している平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の受熱部(6)においては、単電池(1)によって熱が奪われて作動液封入部(13)内の気相の作動液が凝縮し、作動液封入部(13)内の圧力が低下する。これと同時に、基板(3)から奪われた熱により単電池(1)が加熱される。そして、加熱部(8)の作動液封入部(13)内で発生した気相作動液が、圧力が低下した受熱部(6)の作動液封入部(13)に流れるとともに、再凝縮した液相作動液が加熱部(8)の作動液封入部(13)に流れるので、ヒートパイプ部(12)において、気相作動液の流れと液相作動液の流れとが発生し、作動液の循環が起きる。したがって、単電池(1)における平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の受熱部(6)に熱的に接触している部分の全体が均等に加熱され、単電池(1)の全体が短時間で適正温度に加熱される。
【0038】
図4〜
図6は、上述した冷却兼加熱構造に用いられる平板状ヒートパイプの変形例を示す。
【0039】
図4に示す平板状ヒートパイプ(20)の場合、基板(3)の加熱部(8)は、放熱部(7)との間に隙間(21)が形成されるように、放熱部(7)の下方に間隔をおいて設けられており、隙間(21)は、放熱部(7)および加熱部(8)の突出端から単電池まで延びている。したがって、基板(3)のいずれか一方のアルミニウム板、ここでは右側のアルミニウム板のみを外側に膨出させることにより形成された作動液封入部(23)は、隙間(21)を迂回するように設けられるとともに、隙間(21)の部分において上下に途切れさせられており、直接には通じていない。
その結果、放熱部(7)と加熱部(8)との間の隙間(21)に作動液封入部が存在しないようになっており、放熱部(7)および加熱部(8)に存在する作動液封入部(23)どうしは、受熱部(6)に存在する作動液封入部(23)を介して通じている。したがって、作動液封入部(23)内に作動液が封入されることにより形成されたヒートパイプ部(22)も、隙間(21)を迂回するように設けられるとともに、隙間(21)の部分において上下に途切れさせられており、放熱部(7)と加熱部(8)との間で短絡しないようになっている。
【0040】
その他の構成は、
図3に示す平板状ヒートパイプ(2)と同様である。
【0041】
図5に示す平板状ヒートパイプ(25)の場合、基板(3)の受熱部(6)の前側縁部の上部に、単電池(1)よりも前方に突出するように一体に設けられた鉛直状放熱部(26)の受熱部(6)からの突出長さは、加熱部(8)の受熱部(6)からの突出長さよりも長くなっており、放熱部(26)の突出端部が、加熱部(8)の突出端部よりも単電池(1)に対して前方に位置している。作動液封入部(23)および作動液封入部(23)内に作動液が封入されることにより形成されたヒートパイプ部(22)は、放熱部(26)の突出端部の近傍に至っている。
【0042】
なお、図示の例では、放熱部(26)には、放熱フィンは設けられていないが、
図3に示されている構成の放熱部材(9)が設けられていてもよい。
【0043】
その他の構成は、
図4に示す平板状ヒートパイプ(2)と同様である。
【0044】
図6に示す平板状ヒートパイプ(30)の場合、基板(3)の受熱部(6)の前側縁部の上部に、単電池(1)よりも前方に突出するように一体に設けられた放熱部(31)は、平面から見て波形となるように曲げられている。作動液封入部(23)および作動液封入部(23)内に作動液が封入されることにより形成されたヒートパイプ部(22)は、放熱部(31)の突出端部の近傍に至っている。
【0045】
その他の構成は、
図5に示す平板状ヒートパイプ(2)と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明による組電池(5)の冷却兼加熱構造は、たとえば複数のLi二次電池からなる組電池(5)を備えたハイブリッドカーに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
(1):単電池
(2)(20)(25)(30):平板状ヒートパイプ
(3):基板
(5):組電池
(6):受熱部
(7)(26)(31):放熱部
(8):加熱部
(9):放熱部材
(12)(22):ヒートパイプ部
(13)(23):作動液封入部
(21):隙間