特許第6186227号(P6186227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186227
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】蓄電池監視装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20170814BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170814BHJP
   G01R 31/36 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H02J7/00 Y
   H01M10/48 P
   G01R31/36 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-200311(P2013-200311)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-70638(P2015-70638A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 茂
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−218666(JP,A)
【文献】 特開2011−232345(JP,A)
【文献】 特開2001−257010(JP,A)
【文献】 特開2000−175374(JP,A)
【文献】 特開2011−254651(JP,A)
【文献】 特開2007−024756(JP,A)
【文献】 特開平09−134742(JP,A)
【文献】 特開2007−225430(JP,A)
【文献】 実開昭59−041038(JP,U)
【文献】 特開2008−293776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
G01R 31/36
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を蓄電池に充電し、前記蓄電池に充電した電力を負荷に放電する充放電サイクルが繰り返される前記蓄電池を監視する蓄電池監視装置において、
少なくとも平均的な日照時間が得られた場合に、一日で前記蓄電池を満充電可能な発電量を得ることが可能なソーラーパネルと、
周囲の明るさを検出する照度センサーと、
毎日、前記照度センサーの検出結果に基づいて昼間の時間帯か夜間の時間帯かを判定し、前記昼間の時間帯は前記ソーラーパネルの発電電力で前記蓄電池を充電する制御を行い、前記夜間の時間帯は前記蓄電池の電力で前記負荷を駆動させる制御を行う充放電制御部とを備え、
前記蓄電池は、無日照日が連続しても前記負荷を駆動可能な容量を有し、
前記蓄電池の放電直前電圧、放電直後電圧及び放電終了直前電圧を測定する電圧測定部と、
前記充放電サイクル毎に、前記放電直前電圧に基づいて充電不足か否かを判定し、充電不足でないと判定した場合に、前記放電直後電圧が、前記負荷を駆動不能な低い電圧か否かを判定し、前記低い電圧でないと判定した場合に、前記放電終了直前電圧に基づいて前記蓄電池の劣化の状態を判定する一方、前記放電直前電圧に基づいて充電不足と判定した場合に、以降の前記放電直前電圧に基づいて充電不足でないと判定されるまで、前記放電直後電圧と放電終了直前電圧の測定をキャンセルする監視制御部と
前記蓄電池の劣化の状態を判定した場合に、判定結果を送信する通信部とを備えることを特徴とする蓄電池監視装置。
【請求項2】
前記負荷は、航空障害灯であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電池監視装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記蓄電池の劣化の状態の判定結果、前記蓄電池の放電直前電圧、前記放電直後電圧、及び、前記放電終了直前電圧をセンター局に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電池監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池を監視する蓄電池監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、太陽電池と、この太陽電池に電気的に接続された変換器と、この変換器に電気的に接続された負荷と、前記変換器に電気的に接続された蓄電池と、この蓄電池に電気的に接続された外部発電装置とを備えたソーラーシステムが知られている。
ここで、蓄電池は使用頻度、使用条件、及び、経年変化により劣化し、蓄電池が劣化した場合には太陽光パネルで発電された電力を効率良く蓄電することができず、また、所定の電圧を出力できず、負荷を正常に作動させることができなくなる場合がある。従って、蓄電池に劣化の兆候が確認された場合にはいち早くこれを検出して、蓄電池をメンテナンスするか、或いは交換する必要がある。
【0003】
そこで、太陽電池で発電される電力を蓄電し、蓄電した電力を負荷に供給するバッテリ(蓄電池)の劣化状態を検出するバッテリ監視システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、バッテリの出力電圧とバッテリに流れる電流から内部抵抗を算出し、更に、この内部抵抗を温度補正してバッテリの劣化状態を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−254651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成は、劣化状態を検出するために、バッテリ(以下、蓄電池と言う)の内部抵抗を算出する装置や、蓄電池の電流、電圧、温度を測定する装置が必要であった。このため、部品点数が増えるとともに構成が複雑化し、コスト低減に不利であった。また、劣化状態を判定するアルゴリズム作成のために大量のデータの取得も必要であった。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、簡易な構成で蓄電池の劣化状態を判定でき、コスト低減に有利な蓄電池監視装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、電力を蓄電池に充電し、前記蓄電池に充電した電力を負荷に放電する充放電サイクルが繰り返される前記蓄電池を監視する蓄電池監視装置において、少なくとも平均的な日照時間が得られた場合に、一日で前記蓄電池を満充電可能な発電量を得ることが可能なソーラーパネルと、周囲の明るさを検出する照度センサーと、毎日、前記照度センサーの検出結果に基づいて昼間の時間帯か夜間の時間帯かを判定し、前記昼間の時間帯は前記ソーラーパネルの発電電力で前記蓄電池を充電する制御を行い、前記夜間の時間帯は前記蓄電池の電力で前記負荷を駆動させる制御を行う充放電制御部とを備え、前記蓄電池は、無日照日が連続しても前記負荷を駆動可能な容量を有し、前記蓄電池の放電直前電圧、放電直後電圧及び放電終了直前電圧を測定する電圧測定部と、前記充放電サイクル毎に、前記放電直前電圧に基づいて充電不足か否かを判定し、充電不足でないと判定した場合に、前記放電直後電圧が、前記負荷を駆動不能な低い電圧か否かを判定し、前記低い電圧でないと判定した場合に、前記放電終了直前電圧に基づいて前記蓄電池の劣化の状態を判定する一方、前記放電直前電圧に基づいて充電不足と判定した場合に、以降の前記放電直前電圧に基づいて充電不足でないと判定されるまで、前記放電直後電圧と放電終了直前電圧の測定をキャンセルする監視制御部と、前記蓄電池の劣化の状態を判定した場合に、判定結果を送信する通信部とを備えることを特徴とする。この構成によれば、電流や温度を測定する構成が不要であり、劣化状態を判定するアルゴリズム作成のために大量のデータ(例えば、温度補正用のデータ)を取得することが不要である。また、充放電サイクル中の3箇所の電圧を測定するだけで良いので、測定回数も少なくて済む。これらにより、簡易な構成で蓄電池の劣化状態等を判定することができ、コスト低減に有利である。
【0007】
記監視制御部は、前記放電直前電圧に基づいて充電不足判定した場合に、以降の記放電直前電圧に基づいて充電不足でないと判定されるまで、前記放電直後電圧と放電終了直前電圧の測定をキャンセルするので、充電不足を原因として低下することが明らかな放電直後電圧や放電終了直前電圧を測定すること、及び、これら電圧に基づいて電池異常や劣化を判定する処理を行ってしまうことを避けることができる。
【0008】
また、前記監視制御部は、前記放電直前電圧に基づいて充電不足か否かを判定し、充電不足でないと判定した場合に、前記放電直後電圧が、前記負荷を駆動不能な低い電圧か否かを判定するので、電池異常が生じているか否かを早期に検知することができる。
【0009】
また、前記監視制御部は、前記放電直前電圧に基づいて充電不足でないと判定し、前記放電直後電圧が、前記負荷を駆動不能な低い電圧でないと判定した場合に、前記放電終了直前電圧に基づいて前記蓄電池の劣化状態を判定するので、精度良く劣化状態を判定することができる。
【0010】
また、上記構成において、前記負荷は、航空障害灯であっても良い。この構成によれば、航空障害灯に使用される蓄電池の状態を、簡易な構成で判定できる蓄電池監視装置を提供することができる。
【0011】
また、上記構成において、前記通信部は、前記蓄電池の劣化の状態の判定結果、前記蓄電池の放電直前電圧、前記放電直後電圧、及び、前記放電終了直前電圧をセンター局に送信するようにしても良い。この構成によれば、センター局側で蓄電池を容易に遠隔監視することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で蓄電池の劣化状態を判定でき、コスト低減に有利な蓄電池監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る蓄電池監視システムを示すブロック図である。
図2】蓄電池が未劣化の場合の一日の電圧変動の一例を示した図である。
図3】蓄電池監視装置の劣化判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る蓄電池監視システムを示すブロック図である。
この蓄電池監視システム10は、山間部の鉄塔等に設置される航空障害灯(光源31)の電源として使用される鉛蓄電池21を監視するシステムである。図1に示すように、この蓄電池監視システム10は、航空障害灯システムを構成する負荷回路20と、鉛蓄電池21と、鉛蓄電池21を監視する蓄電池監視装置22と、蓄電池監視装置22とセンター局23との間の通信を中継する中継局24とを備えている。
【0015】
負荷回路20は、鉄塔等に設置されるLEDの光源(負荷)31と、鉛蓄電池21の電力で光源31を点灯駆動する駆動部32と、太陽光を受光して直流電力を生成するソーラーパネル(発電装置)33と、充放電制御部34とを有している。
充放電制御部34は、ソーラーパネル33の発電電力で鉛蓄電池21を充電(蓄電)し、また、鉛蓄電池21の電力を駆動部に出力する制御を実行する。この充放電制御部34は、蓄電池監視装置22の制御の下、ソーラーパネル33が発電する昼間の時間帯は、鉛蓄電池21を充電する制御を行い、周囲が暗い夜間の時間帯は、鉛蓄電池21の電力で光源31を点灯駆動させる制御を行う。
本実施形態では、周囲の明るさを検出する照度センサー(不図示)を備え、この照度センサーの検出結果に基づいて蓄電池監視装置22が、昼間の時間帯か夜間の時間帯かを判定する自動消灯タイプに構成されている。
【0016】
なお、充放電制御部34が、照度センサーの検出結果に基づいて昼間の時間帯か夜間の時間帯かを判定し、この判定結果に基づいて、充電する制御と点灯駆動させる制御とを自律的に切り替えるようにしても良い。
また、照度センサーを用いる方法に代えて、蓄電池監視装置22又は充放電制御部34の少なくとも一方がタイマー回路を備え、予め設定された昼間の時間帯に鉛蓄電池21を充電する制御を行い、予め設定された夜間の時間帯に光源31を点灯駆動させる制御を行うようにしても良い。
また、充放電制御部34が昼間の時間帯か夜間の時間帯かを判定する場合には、その判定結果を蓄電池監視装置22に通知し、蓄電池監視装置22側でも昼間の時間帯か夜間の時間帯かを特定可能に構成される。
【0017】
鉛蓄電池21は、航空障害灯システムの駆動に適した容量を有するサイクルユース用の6セル12V系の鉛蓄電池である。より具体的には、この鉛蓄電池21は、無日照日が連続しても航空障害灯システムを駆動し続けられるように余裕のある容量を有し、例えば、連続無日照日が5日の場合でも、光源を駆動し続けられる容量に構成されている。
ソーラーパネル33は、一日で鉛蓄電池21を満充電可能な発電量を得ることが可能なソーラーパネルである。このため、少なくとも平均的な日照時間が得られた場合に、鉛蓄電池21は満充電される。
【0018】
蓄電池監視装置22は、鉛蓄電池21の近傍に配置され、鉛蓄電池21の劣化状態を監視する装置である。この鉛蓄電池21の劣化状態を監視するための構成や劣化判定処理については、後段に詳述する。
この蓄電池監視装置22は、鉛蓄電池21の情報等を送信するための通信部41を備えている。この通信部41は、中継局24と無線通信することで、中継局24を介してセンター局23と通信する。ここで、蓄電池監視装置22がセンター局23に送信する情報には、鉛蓄電池21の劣化状態の判定結果、鉛蓄電池21の電圧(後述する電圧V1、V2、V3)、鉛蓄電池21が充電不足か否か等を示す情報が含まれる。なお、中継局24とセンター局23との間の通信は、有線通信となっている。
【0019】
このように、負荷回路20の近傍に蓄電池監視装置22を設置し、この蓄電池監視装置22が無線通信により中継局24と無線通信するため、負荷回路20から離れた位置に中継局24を設置できる。従って、山間部以外のエリアに中継局24を設置することが可能である。また、この中継局24を、鉄塔毎に設置される複数台の蓄電池監視装置22の通信エリア内に配置することで、複数台の蓄電池監視装置22が単一の中継局24を介してセンター局23と通信することが可能になる。
【0020】
センター局23は、有線通信網を介して中継局24に接続され、中継局24を介して複数台の蓄電池監視装置22から送信された情報を管理する。より具体的には、センター局23は、各蓄電池監視装置22から送信された鉛蓄電池21の情報を蓄積し、蓄積した情報を、作業者等が操作する端末装置(不図示)に表示させる。これにより、遠隔地に設置された鉛蓄電池21の情報を作業員等に知らせることができる。
作業員等は、鉛蓄電池21の情報を確認することで、鉛蓄電池21を遠隔監視し、必要に応じて鉛蓄電池21の交換等の対応を採る。
【0021】
ところで、鉛蓄電池21の劣化状態を検出するための情報としては、従来、鉛蓄電池21の内部抵抗、鉛蓄電池21の電流、鉛蓄電池21の電圧、鉛蓄電池21の温度等がある。そして、この種の鉛蓄電池21の劣化判定には、電流と電圧と温度を測定し、測定された電流と電圧から内部抵抗を算出し、更に、この内部抵抗を温度補正して鉛蓄電池21の劣化状態を判定する方法が採用されている。
しかし、この方法は、電流と電圧と温度を測定する必要があるため、部品点数が増えて構成が複雑化してしまう。また、劣化状態を判定するアルゴリズム作成のために大量のデータ(例えば、温度補正用のデータ)の取得が必要であり、アルゴリズム作成作業が繁雑になり易い。
【0022】
一方、航空障害灯用の鉛蓄電池21を監視する蓄電池監視装置22は、コスト低減や装置の小型化や故障原因の削減等の観点から、簡易な構成にすることが望まれる。簡易な構成にする方法として、例えば、鉛蓄電池21の電流又は鉛蓄電池21の電圧のいずれか一方だけを検出し、所定時点の電流又は電圧が予め定めた閾値を下回っている場合に、劣化状態と判定するように構成することが考えられる。
しかしながら、この構成では、電流又は電圧が閾値を下回る原因が、鉛蓄電池21の劣化なのか、鉛蓄電池21の充電不足なのかが判らず、劣化か否かを精度良く判定できない。
そこで、本実施形態では、簡易な構成で劣化状態を判定可能にするために、鉛蓄電池21の電圧だけを測定する構成にし、且つ、充放電(蓄放電)のサイクル毎に、鉛蓄電池21の放電直前電圧V1、放電直後電圧V2、及び、放電終了直前電圧V3を監視するようにしている。
【0023】
本発明において前記放電直前電圧V1、放電直後電圧V2、放電終了直前電圧V3は鉛蓄電池21の放電特性データに基づきそれぞれ規定したものであり、鉛蓄電池電圧による判定基準として使用するものである。
放電直前電圧V1は、鉛蓄電池21が充電不足か否かを判定する閾値であり、その値を12.6Vとし、鉛蓄電池21の電圧が12.6V以上であれば充電不足ではないとし、鉛蓄電池21の電圧が12.6V未満であれば充電不足と判定する。
放電直後電圧V2は、鉛蓄電池21が異常であるか否かを判定する閾値であり、その値を11.7Vとし、蓄電池21の電圧が12.7V以上であれば鉛蓄電池21は異常なしとし、鉛蓄電池21の電圧が11.7V未満であれば異常(鉛蓄電池21劣化も含む)と判定する。
放電終了直前電圧V3は、鉛蓄電池21が正常レベルであるか否かを判定する閾値であり、その値を12.0Vとし、鉛蓄電池21の電圧が12.0V以上であれば鉛蓄電池21は正常レベルとし、蓄電池21の12.0V未満であれば予め設定した注意レベル下限値と比較し、下限値以上であれば注意レベル、下限値未満であれば劣化レベルと判定する。
【0024】
次に、蓄電池監視装置22の通信部41以外の構成を説明する。
図1に示すように、蓄電池監視装置22は、鉛蓄電池21の電圧を測定する電圧測定部42と、劣化判定処理等を行う監視制御部43とを備えている。
電圧測定部42は、監視制御部43の制御の下、鉛蓄電池21の電圧(出力電圧)を測定するものであり、公知の電圧測定回路を広く適用可能である。監視制御部43は、劣化判定処理等を行う演算処理部として機能するだけでなく、電池監視装置22の制御中枢としても機能する。この監視制御部43は、CPUやメモリー(ROMやRAM等)を備えたコンピューター構成を具備し、CPUがメモリーに記録された制御プログラムを実行することにより、劣化判定処理や各部(電圧測定部42や通信部41)の制御を行う。
なお、本発明において、前記電圧測定部42で放電直前電圧V1、放電直後電圧V2、放電終了直前電圧V3を測定するのは、前記するように単に電流や電圧が予め定めた閾値を下回る原因が充電不足によるものか、劣化によるものかを判定することが困難であり、鉛蓄電池の放電特性から放電電流、放電時間が一定の負荷を用いた場合、V1、V2、V3より充電不足や劣化判断を推測することができるからである。
【0025】
図2は、鉛蓄電池21が未劣化の場合の一日の電圧変動の一例を示した図であり、横軸が時間tを示し、縦軸が鉛蓄電池21の電圧Vを示している。
図2中、時刻t1は、照度センサー(不図示)の検出値が、充電終了タイミングを規定する第1閾値を下回ったタイミングであり、ソーラーパネル33が発電しない明るさに至ったタイミングに設定されている。また、時刻t2は、照度センサーの検出値が、航空障害灯システムの点灯開始タイミングを規定する第2閾値を下回ったタイミングである。また、時刻t3は、航空障害灯システムの点灯終了タイミングであって、充電開始タイミングを規定する第3閾値を上回ったタイミングである。
【0026】
蓄電池監視装置22の監視制御部43は、上記の照度センサーの検出値に基づいて時刻t1に至るまでは、充放電制御部34により鉛蓄電池21を充電させる。これによって、図2に示すように、鉛蓄電池21の電圧Vは徐々に上昇する。
監視制御部43は、照度センサーの検出値に基づいて時刻t1に至ると、鉛蓄電池21の充電を停止させる。鉛蓄電池21の充電を停止させた後は、図2に示すように、暗電流により鉛蓄電池21の電圧Vは低下していく。
次いで、監視制御部43は、照度センサーの検出値に基づいて時刻t2に至ると、充放電制御部34により駆動部32に鉛蓄電池21の電力を供給させ、負荷である航空障害灯(光源31)を点灯させる。このため、鉛蓄電池21は放電を開始し、図2に示すように、鉛蓄電池21の電圧Vは徐々に低下していく。
【0027】
続いて、照度センサーの検出値に基づいて時刻t3に至ると、監視制御部43は、光源31の点灯を停止させた後(放電停止)、充放電制御部34により鉛蓄電池21を充電させる。これによって、鉛蓄電池21の蓄電が開始され、鉛蓄電池21の電圧Vは徐々に上昇する。
このようにして、鉛蓄電池21の充電(蓄電)と放電のサイクルが繰り返し実行される。このサイクルによれば、一日毎の充電や放電のタイミングが同様となり、各日の充電時間、及び、放電時間は同様とみなすことができる。上記したように、ソーラーパネル33は、一日で鉛蓄電池21を満充電可能な発電量を得る仕様に構成されるため、雨天の日を除けば、各日の充電後は満充電となる。また、一日当たりの航空障害灯(光源)の消費電力も同様とみなせるため、時刻t1、t2、t3時点の鉛蓄電池21の電圧Vは、鉛蓄電池21が未劣化であれば、各日で同様とみなすことができる。
【0028】
図3は、蓄電池監視装置22の劣化判定処理を示すフローチャートである。
図3に示すように、監視制御部43は、鉛蓄電池21の放電直前電圧V1を、電圧測定部42により取得する(ステップS1)。
この放電直前電圧V1は、鉛蓄電池21の充電後、鉛蓄電池21が負荷(光源31)に放電する前の電圧であり、図2に示すように、時刻tA(時刻t1以降、時刻t2以前の範囲内)のタイミングで測定される。本実施形態では、時刻tAは、光源31の点灯開始(時刻t2)から所定時間前(10分前)に設定される。
この放電直前電圧V1を取得する具体的な方法としては、電圧測定部42によって、充電後に継続的に鉛蓄電池21の電圧を測定してメモリー(不図示)に一時的に格納しておき、時刻t1の確定後にその10分前の電圧を、放電直前電圧V1として取得する方法がある。また、タイマー処理により、時刻t2の10分前のタイミングで測定した電圧を、放電直前電圧V1として取得する方法等を適用しても良い。
【0029】
次いで、監視制御部43は、放電直前電圧V1と予め設定した充電量判定閾値とを比較することにより、充電不足か否かを判定する(ステップS2)。つまり、この充電量判定閾値は、鉛蓄電池21が充電不足か否かを判定する値であり、本実施形態では、12.6Vに設定される。このため、放電直前電圧V1が12.6V未満であれば充電不足と判定する(ステップS3)。
充電不足と判定した場合には、放電時の鉛蓄電池21の電圧Vが極端に低下しても、その原因が鉛蓄電池21の劣化によるものか、雨天を原因とした充電不足によるものかを判別不能である。このため、監視制御部43は、ステップS4以降の処理をスキップし、次のサイクルにおいて上記ステップS1及びS2の処理を再開する。
【0030】
一方、放電直前電圧V1が12.6V以上の場合は、充電不足ではないため、監視制御部43は、次のステップS4の処理に移行する。
ステップS4では、監視制御部43は、鉛蓄電池21の放電直後電圧V2を、電圧測定部42により取得する。
この放電直後電圧V2は、負荷(光源31)に電力供給後の電圧であり、図2に示すように、時刻tB(時刻t2以降、且つ、時刻t2近傍)のタイミングで測定される。より具体的には、時刻tBは、光源31の点灯開始(時刻t2)から所定時間後(5分後〜10分後の範囲内)に設定される。
この放電直後電圧V2を取得する具体的な方法としては、時刻t2に至った時点から上記の所定時間後(5分後〜10分後の範囲内)をカウントし、カウント後の鉛蓄電池21の電圧を測定すれば良い。
【0031】
次いで、監視制御部43は、放電直後電圧V2と予め設定した電池異常判定閾値とを比較することにより、電池異常か否かを判定する(ステップS5)。
この電池異常判定閾値は、何らかの不具合(電池劣化も含む)により鉛蓄電池21の電圧が放電後に想定以上に低下したことを検出するための閾値であり、本実施形態では、11.7Vに設定される。
このため、放電直後電圧V2が11.7V未満の場合(ステップS5;NO)、監視制御部43は、電池異常と判定する(ステップS6)。
【0032】
電池異常と判定した場合、監視制御部43は、その旨を通信部41によりセンター局23へ送信する。これにより、放電開始後、速やかに電池異常を検出してセンター局23へ通知することができる。
また、上記の11.7Vは、航空障害灯(光源31)を点灯不能な低い電圧でもある。このため、放電開始後(航空障害灯の点灯を開始すべき時間の後)、速やかに電池異常をセンター局23へ通知することにより、航空障害灯が点灯不能であることをセンター局23側で迅速に把握することも可能になる。なお、電池異常の判定結果に加えて、放電直後電圧V2をセンター局23へ送信するようにしても良い。
【0033】
また、電池異常と判定した場合、監視制御部43は、ステップS7以降の処理をスキップし、次のサイクルにおいて上記ステップS1〜S6の処理を行う。このため、再びステップS6で電池異常と判定された場合、その旨がセンター局23へ送信される。
【0034】
一方、電池異常と判定されなかった場合(ステップS5;YES)、監視制御部43は、次のステップS7の処理に移行する。
ステップS7では、監視制御部43は、鉛蓄電池21の放電終了直前電圧V3を、電圧測定部42により取得する。
この放電終了直前電圧V3は、負荷(光源31)への電力供給停止前の電圧であり、図2に示すように、時刻tC(時刻t3前、且つ、時刻t3近傍)のタイミングで測定される。より具体的には、時刻tCは、光源31の点灯終了(時刻t3)から所定時間前(30分前)に設定される。
この放電終了直前電圧V3を取得する具体的な方法としては、電圧測定部42によって、放電時に継続的に鉛蓄電池21の電圧を測定してメモリー(不図示)に一時的に格納しておき、時刻t3の確定後にその30分前の電圧を、放電終了直前電圧V3として取得する方法がある。また、タイマー処理により、時刻t3の30分前のタイミングで測定した電圧を、放電終了直前電圧V3として取得する方法等を適用しても良い。
【0035】
次いで、監視制御部43は、放電終了直前電圧V3と予め設定した正常レベル下限値(本実施形態では12.0V)とを比較することにより、放電終了直前電圧V3が正常レベルか否かを判定する(ステップS8)。監視制御部43は、放電終了直前電圧V3が正常レベル下限値より大きい場合に、正常レベルであると判定する。
正常レベルと判定した場合(ステップS9)、監視制御部43は、その旨を通信部41によりセンター局23へ送信する。これにより、鉛蓄電池21が正常である旨をセンター局23へ通知することができる。
【0036】
正常レベルでないと判定した場合(ステップS8;NO)、監視制御部43は、放電終了直前電圧V3と予め設定した注意レベル下限値(本実施形態では11.7V)とを比較する。そして、監視制御部43は、放電終了直前電圧V3が注意レベル下限値以上であれば、鉛蓄電池21の劣化の可能性を示す注意レベルと判定する(ステップS11)。つまり、11.7V≦V3≦12.0Vの場合に注意レベルと判定する。
【0037】
また、監視制御部43は、放電終了直前電圧V3が注意レベル下限値未満であれば(ステップS10;NO)、放電終了直前電圧V3が、鉛蓄電池21が劣化していることを示す劣化レベルと判定する(ステップS12)。つまり、V3<11.7Vの場合に劣化レベルと判定する。
このようにして、注意レベル又は劣化レベルのいずれかと判定すると、監視制御部43は、判定結果を通信部41によりセンター局23へ送信する。これにより、鉛蓄電池21が注意レベル又は劣化レベルである旨をセンター局23へ通知することができる。この場合、放電終了直前電圧V3もセンター局23へ送信するようにしても良い。以上が図3に示すフローチャートの説明である。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では、蓄電池監視装置22の監視制御部43が、鉛蓄電池21の蓄放電のサイクル毎に、鉛蓄電池21の放電直前電圧V1、放電直後電圧V2、及び、放電終了直前電圧V3を監視し、監視した電圧V1〜V3に基づいて鉛蓄電池21の状態を判定する。これにより、電流や温度を測定する構成が不要であり、劣化状態を判定するアルゴリズム作成のために大量のデータ(例えば、温度補正用のデータ)を取得することが不要である。また、充放電のサイクル中の3箇所の電圧V1〜V3を測定するだけで良いので、測定回数も少なくて済む。これらにより、簡易な構成で鉛蓄電池21の劣化状態等を判定することができ、コスト低減に有利である。
【0039】
ここで、本実施形態では、放電直前電圧V1から充電不足と判定した場合、以降のサイクルで充電不足が解消されたと判定されるまで、即ち放電前電圧V1が12.6V以上となるまで放電直後電圧V2、放電終了直前電圧V3の測定をキャンセルする(図3のステップS3)。これにより、充電不足により低い電圧となる放電直後電圧V2や放電終了直前電圧V3を測定すること、及び、これら電圧V2、V3に基づいて電池異常や劣化を判定する処理を行ってしまうことを避けることができる。従って、無駄な測定を回避でき、且つ、電池異常の誤検知や電池劣化の誤検知を回避し、判定精度を向上することができる。
【0040】
また、放電直後電圧V2に基づいて電池異常が生じているか否かを判定するので、図2に示すように、鉛蓄電池21が放電を開始した後、速やかに電池異常が生じているか否かを検知することができる。このことは、負荷(光源31)の駆動を開始すべき時間の後、速やかに電池異常を検知することに相当するため、負荷への悪影響を速やかに検知することができる。
しかも、本実施形態では、放電直後電圧V2が負荷(光源31)を駆動不能な低い電圧の場合に(放電直後電圧V2が11.7V未満の場合に)、電池異常と判定するので、負荷を駆動不能であることを迅速に検出することができる。従って、負荷が駆動不能であることをセンター局23側で迅速に把握することが可能になる。
【0041】
なお、この電池異常か否かの判定は、1回の放電直後電圧V2が電池異常判定値(図3)未満になった場合に電池異常と判定する方法に限らず、連続する複数回のサイクルに渡って測定した放電直後電圧V2がいずれも電池異常と判定された場合に、電池異常と確定判定するようにしても良い。この場合、蓄電池監視装置22の判定精度がより向上する。
【0042】
また、本実施形態では、放電終了直前電圧V3に基づいて鉛蓄電池21の劣化状態を判定するので、図2に示すように、鉛蓄電池21の電圧Vが最も低く、且つ、放電中の状態、つまり、鉛蓄電池21にとって最も厳しい条件のときの電圧Vに基づいて劣化状態を判定することができる。これにより、劣化状態を良好に判定することができる。
なお、この劣化状態の判定においても、1回の放電終了直前電圧V3だけで劣化状態を判定する方法に限らず、連続する複数回のサイクルに渡って測定した放電終了直前電圧V3から同じ判定結果が得られた場合に、その判定結果を確定するようにしても良い。この場合、蓄電池監視装置22の劣化判定精度がより向上する。
【0043】
また、本実施形態の蓄電池監視装置22は、放電電流、放電時間等が一定の負荷として、例えば航空障害灯システムに適用されるので、放電直前電圧V1、放電直後電圧V2、及び、放電終了直前電圧V3の変動要因が限定される。従って、これら電圧V1〜V3に基づいて鉛蓄電池21の状態(充電不足、電池異常、電池劣化)を簡易に判定することができ、劣化状態を判定するアルゴリズムも簡易化できる。
このようにして、航空障害灯システムに使用される鉛蓄電池21の状態を、簡易な構成で判定できる蓄電池監視装置22を提供することができる。
【0044】
また、蓄電池監視装置22は、センター局23と通信可能な通信部41を備え、通信部41は、監視制御部43の監視結果や測定電圧V1〜V3をセンター局23に送信するので、センター局23側で鉛蓄電池21を容易に遠隔監視することができる。なお、本実施形態では、中継局24を設ける場合を説明したが、中継局24を設けるか否かは、立地条件や通信環境、或いは、どのような通信システムを採用するかによって判断すれば良く、公知の通信形態を広く適用可能である。
【0045】
以上、本発明を実施するための形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、蓄電池監視装置22が、監視制御部43の監視結果や放電直前電圧V1、放電直後電圧V2、及び、放電終了直前電圧V3をセンター局23に送信する場合を説明したが、これに限らず、送信する情報は、適宜に増減や変更すれば良い。
【0046】
また、上記実施形態において、放電直前電圧V1、放電直後電圧V2、及び、放電終了直前電圧V3は、上記実施形態の時刻tA、tB、tCから若干ずれた時点の電圧に変更しても良い。例えば、放電直前電圧V1を、時刻t2を基準にした30分前以内の電圧、或いは、その範囲内の複数の測定電圧の平均電圧としても良い。同様に、放電直後電圧V2を、時刻t2を基準にした30分経過以内の電圧、或いは、その範囲内の複数の測定電圧の平均電圧としても良い。また、放電終了直前電圧V3についても、時刻t3を基準にした30分経過以内の電圧、或いは、その範囲内の複数の測定電圧の平均電圧としても良い。
要は、放電直前電圧V1は、鉛蓄電池21の充電電圧を検知可能な電圧であれば良いし、放電直後電圧V2は、放電直後の電圧の急低下を検知可能な電圧であれば良いし、放電終了直前電圧V3は、放電終了前の電圧の過度な低下を検知可能な電圧であれば良い。
【0047】
また、上記実施形態では、負荷として、航空障害灯を例に挙げて説明したが、これに限らず、屋外用照明等の他の負荷を適用しても良い。例えば、負荷が屋外用照明の場合も、放電電流、放電時間等が一定の負荷であれば、本発明の蓄電池監視装置を適用できる。なお、鉛蓄電池21以外の蓄電池を監視する蓄電池監視装置に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0048】
10 蓄電池監視システム
20 負荷回路(航空障害灯システム)
21 鉛蓄電池(蓄電池)
22 蓄電池監視装置
23 センター局
24 中継局
31 光源(負荷、航空障害灯)
32 駆動部
33 ソーラーパネル(発電装置)
34 充放電制御部
41 通信部
42 電圧測定部
43 監視制御部
V1 放電直前電圧
V2 放電直後電圧
V3 放電終了直前電圧
図1
図2
図3