特許第6186237号(P6186237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186237
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】車両用内装材
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/54 20170101AFI20170814BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20170814BHJP
   B60R 21/04 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B60Q3/54
   B60R13/02 A
   B60R13/02 B
   B60R21/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-211554(P2013-211554)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-74328(P2015-74328A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】上野 達矢
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−127766(JP,A)
【文献】 特開2010−070126(JP,A)
【文献】 特開2008−114734(JP,A)
【文献】 特開2013−100100(JP,A)
【文献】 特開2010−070116(JP,A)
【文献】 特開2009−067183(JP,A)
【文献】 特開2006−282092(JP,A)
【文献】 特開2005−306309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/00− 3/88
B60R13/01−13/04
B60R13/08
B60R21/00−21/13
B60R21/34−21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部相互を所要の間隔をおいてオーバーラップさせて配置した複数の内装材要素と、
前記複数の内装材要素の端部相互間に配置した間接照明装置と、を備え、
前記間接照明装置は、一方の内装材要素の端末と他方の内装材要素との間の隙間を通して車室内に配光するレンズを備え、
前記レンズを、前記一方の内装材要素の端末と他方の内装材要素との間の隙間を埋めて配置し
前記間接照明装置は、前記一方の内装材要素に乗員の衝突荷重が作用した場合に、車体側パネルとの間で潰れ変形可能なエネルギー吸収部を備えていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
前記間接照明装置は、前記一方の内装材要素の端部の背面に固設してあって、前記他方の内装材要素を該間接照明装置を介して連接したことを特徴とする請求項1に記載された車両用内装材。
【請求項3】
前記間接照明装置は、光源を保持するとともに、前記レンズが装着されるハウジングをさらに備え、
前記ハウジングは、当該ハウジングに一体に設けられ、前記一方の内装材要素の端部の背面と向き合う側が開放した開断面を備える座部を備え、
前記座部は、当該座部の開断面の側縁に設けられ、前記一方の内装材要素の背面に当接する受圧用のフランジを備え、
前記ハウジングの前記座部自体で前記エネルギー吸収部を構成したことを特徴とする請求項1に記載された車両用内装材。
【請求項4】
前記他方の内装材要素は、前記一方の内装材要素とオーバーラップして配置した部分に、該一方の内装材要素に乗員の衝突荷重が作用した場合に、車体側パネルとの間で潰れ変形可能なエネルギー吸収部を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された車両用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のルーフトリムや室内サイドトリムに代表される車両用内装材、とりわけ、間接照明装置を付設した車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ルーフトリムの車幅方向側部に間接照明装置を車両前後方向に延在配置した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−132807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術では、ルーフトリムに溝部を段状に形成して該溝部をカバーで覆い、その内部に間接照明装置を格納配置してカバー端末と溝底面との間の隙間から配光を行って間接照明するようにしている。
【0005】
このため、配光用の隙間が車両前後方向に長く露出して見栄えが悪くなってしまうことは否めず、また、児童等が悪戯して隙間に指を差し入れてカバーの端末を引き下げて隙間を拡げたり、カバーを破損してしまう可能性がある。
【0006】
また、カバーの端末が自由端であるために上述の隙間の寸法が前後方向に一定に維持されず、配光ムラが生じる可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は間接照明装置の配光部周りの外観を整えて見栄えを良好にできることは勿論、配光性能を高めることができる間接照明装置を備えた車両用内装材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用内装材は、端部相互を所要の間隔をおいてオーバーラップさせて配置した複数の内装材要素と、これら複数の内装材要素の端部相互間に配置した間接照明装置と、を備えている。
【0009】
上述の間接照明装置は、一方の内装材要素の端末と他方の内装材要素との間の隙間を通して車室内に配光するレンズを備えている。そして、このレンズを、前記一方の内装材要素の端末と他方の内装材要素との間の隙間を埋めて配置している。
【0010】
この場合において、間接照明装置は、前記一方の内装材要素に乗員の衝突荷重が作用した場合に、車体側パネルとの間で潰れ変形可能なエネルギー吸収部を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一方の内装材要素の端末と他方の内装材要素との間の隙間が、間接照明装置の配光用のレンズで埋められて外観が整えられるため、見栄えを良好にすることができる。
【0012】
また、児童等が悪戯して上述の隙間に指を差し入れるのを阻止できるので、前記一方の内装材要素の端末が不当に拡開方向に変形されることもない。
【0013】
そして、レンズにより間接照明光を一様に車室側に照射できて、配光性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の対象とするルーフトリムの一例を示す略示的外観斜視図。
図2】本発明の第1実施形態を示す図1のA−A線に沿う断面図。
図3】本発明の第2実施形態の常態時と変形時とを(A),(B)にて示す図2と同様の断面図。
図4】本発明の第3実施形態を示す図2と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を車両用内装材としてルーフトリムを例に採って図面と共に詳述する。
【0016】
図1は、サンルーフ仕様の車両に用いられるルーフトリム1を上方から見た略示的外観斜視図で、ルーフトリム1の中央部分には図外のルーフパネルに設定されたサンルーフ部に対応した開窓部2を形成してある。
【0017】
ルーフトリム1の車幅方向両側部には、トリム前側部TFからトリム後側部TRに亘る所要の長さ領域に、長尺の間接照明装置10を配設してある。
【0018】
図1では便宜的に車両左側の間接照明装置10のみを透視した状態として示している。
【0019】
ルーフトリム1は、外周側トリム1Aと内周側トリム1Bの2つのルーフトリム要素(内装材要素)に分割して別体に型成形してある。
【0020】
図2に示すように、外周側トリム1Aおよび内周側トリム1Bは、例えば、何れも適宜の合成樹脂材からなるトリム芯材3と、該トリム芯材3の室内側の表面を覆う表皮4との積層構成体として成形することができる。
【0021】
表皮4はルーフトリム1の意匠面およびソフトパッド面を構成するもので、適宜の模様や色彩を施した軟質の合成樹脂シートを用いることができる。
【0022】
外周側トリム1Aと内周側トリム1Bは、外周側トリム1Aの内周側の端部の背面上方に内周側トリム1Bの外周側の端部を所要の間隔をおいてオーバーラップさせて配置してある。
【0023】
そして、上述のようにルーフトリム1の車幅方向両側部分において、これら外周側トリム1Aと内周側トリム1Bの端部相互間に間接照明装置10を配置して、外周側トリム1Aの内周側の端末と内周側トリム1B面との間の隙間δから点灯光を照射して、該内周側トリム1Bの意匠面(表皮4)を間接照明するようにしている。
【0024】
外周側トリム1Aには、アシストグリップ20の配設相当部位に凹陥部5を形成して、該凹陥部5にアシストグリップ20を格納配置できるようにしている。
【0025】
一方、内周側トリム1Bの内周側の端部は緩やかに湾曲して立ち上がるフランジ部6を形成して、図外のルーフパネルのサンルーフ部周りに構成されるルーフ強度メンバ21等のルーフ内面部の構造を隠蔽するようにしている。
【0026】
ルーフトリム1の車体側への固定は、例えば、外周側トリム1Aの外周縁をルーフ骨格部材である図外のルーフレールにクリップ等により固定する一方、内周側トリム1Bを上述のルーフ強度メンバ21に図2に示すように止着手段22により係着して行われる。
【0027】
このため、内周側トリム1Bには、その背面の所要部位に硬質合成樹脂あるいは金属からなるブラケット7を配設して、ルーフ強度メンバ21とブラケット7に相互に係着する上述の止着手段22を設けている。
【0028】
間接照明装置10は、ハウジング11と、ハウジング11に保持された光源12と、光源12を覆ってハウジング11に装着されたレンズ13と、を備えている。
【0029】
ハウジング11とレンズ13は何れも適宜の合成樹脂材からなり、レンズ13を上述の外周側トリム1Aの内周側の端末と内周側トリム1Bの平坦な意匠面(表皮4)との間の隙間δを埋めて配置してある。
【0030】
これにより、光源12の点灯光を図2の矢印aに示すように前記隙間δを通してレンズ13により拡散して照射し、内周側トリム1Bの意匠面4を間接照明するようにしている。
【0031】
光源12は、例えば、前述の特許文献1に示された長尺の方形断面に形成した複数のアクリル製の導光体と、その長さ方向端面に配置した平板状のLEDとの組み合わせからなる光源ユニットを用いることができる。
【0032】
そこで、図1図2に示す実施形態では、光源12を車両前後方向に複数に分割して配設してあって、ハウジング11は方形断面の導光体が嵌合可能なコ字型断面としている。
【0033】
上述の隙間δの下縁を構成する外周側トリム1Aの内周側の端末部分は、上方に向けて緩やかに湾曲して成形してあり、これに伴ってレンズ13の下面形状をこのトリム端末部分に面整合する凹凸形状としている。
【0034】
ここで、本実施形態にあっては、上述の間接照明装置10は、外周側トリム1Aの内周側の端部の背面に固設してあって、内周側トリム1Bをこの間接照明装置10を介して連接するようにしている。
【0035】
本実施形態ではハウジング11は、その長さ方向(車両前後方向)に所要の間隔をおいて前記外周側トリム1Aと内周側トリム1Bの端部相互間に介在する閉断面形状の複数の座部14を備えている。そして、この座部14の下面をレンズ13の下面と共に外周側トリム1Aの端部背面に適宜の接着材により接着固定してある。
【0036】
各座部14には、その上面側に突出して閉断面が連続するファスナー部15を形成してあり、該ファスナー部15を内周側トリム1Bおよびブラケット7を貫通して設けた取付孔8に嵌挿することにより、該内周側トリム1Bを外周側トリム1Aに接続するようにしている。
【0037】
また、ファスナー部15の頂面とルーフ強度メンバ21に前述と同様の相互に係着する止着手段22を設けて、間接照明装置10をこのファスナー部15を介してルーフ強度メンバ21に係着固定するようにしている。
【0038】
以上の構成により本実施形態のルーフトリム1によれば、外周側トリム1Aの端末と内周側トリム1Bとの間の隙間δが、間接照明装置10の配光用のレンズ13で埋められて外観が整えられるため、見栄えが良好となって品質感を高めることができる。
【0039】
また、児童等が悪戯して上述の隙間δに指を差し入れることはできないので、外周側トリム1Aの端末が不当に拡開方向(下側)に変形されることもない。
【0040】
そして、レンズ13により前記隙間δを通して間接照明光を車室側に一様に拡散照射できて、間接照明の配光性能を高めることができる。
【0041】
また、本実施形態では間接照明装置10を外周側トリム1Aの端部の背面に固設してあって、内周側トリム1Bをこの間接照明装置10を介して連接するようにしている。これにより、専用の連結手段を不要として間接照明装置10の固定とルーフトリム1のモジュール化とを設計上有利に実施することができる。
【0042】
しかも、間接照明装置10のレンズ13を外周側トリム1Aの端末に固定できるので、該端末の経時的な波打ち変形を抑制することもできて品質感をより一層高めることができる。
【0043】
図3は本発明の第2実施形態を示すもので、本実施形態では前述の間接照明装置10は、外周側トリム1Aに乗員頭部Hの衝突荷重Fが作用した場合に、車体パネルであるルーフ強度メンバ21との間で潰れ変形可能なエネルギー吸収部30を備えている。
【0044】
図3の(A),(B)に示す例では、間接照明装置10のハウジング11に一体成形した座部14を、下側が開放した開断面に形成している。そして、この開断面の車幅方向両側縁には外周側トリム1Aの背面に当接する受圧用のフランジ14aを設けてある。これにより、フランジ14aを介して所定値以上の衝突荷重Fが入力すると、座部14の車幅方向両側の側壁が(B)図に示すように車体側パネル21との間で座屈変形するようにしている。
【0045】
即ち、本実施形態ではハウジング11の座部14自体でエネルギー吸収部30を構成している。
【0046】
また、図示する例では、座部14の頂面に第1実施形態におけるファスナー部15に替えてボス部15Aを設けて、該ボス部15Aを介して内周側トリム1Bをビス16によりねじ止めして接続するようにしている。
【0047】
従って、本実施形態によれば前記第1実施形態の作用効果に加えて、車両の衝突時等に乗員頭部Hが外周側トリム1Aの間接照明装置10の配設相当部分に干渉して、エネルギー吸収部30を構成するハウジング11の座部14に所定値以上の衝突荷重Fが入力すると、上述のように該座部14の座屈変形により衝突エネルギーを吸収して優れた緩衝効果を得ることができる。
【0048】
そして、専用のエネルギー吸収部材を用いないので、レイアウトが困難となることがなく、しかも、部品点数や取付工数が嵩むこともないのでコスト的に有利に得ることができる。
【0049】
また、このような衝突荷重Fの入力に関しては、前記第1実施形態を含めて、外周側トリム1Aの端末には前記特許文献1の如き別部材のカバーモールが室内に露出して設けられていないので、このカバーモールの破損による不具合を生じることもない。
【0050】
図4は本発明の第3実施形態を示すもので、本実施形態では前述の内周側トリム1Bは、外周側トリム1Aとオーバーラップして配置した端部に、外周側トリム1Aに乗員頭部Hの衝突荷重Fが作用した場合に、車体パネルであるルーフサイドレール23との間で潰れ変形可能なエネルギー吸収部30を備えている。
【0051】
図示する例では、内周側トリム1Bの間接照明装置10を介して連結した部分よりも車幅方向外側に、部分的にあるいは長さ方向(車両前後方向)に沿って延設部を形成して、ここに下側が開放した凹形の開断面部9を形成し、該開断面部9をもって外周側トリム1Aの背面に当接して定置されるエネルギー吸収部30を構成している。
【0052】
また、本実施形態の場合も前記第2実施形態と同様に、ハウジング11の座部14の頂面にボス部15Aを設けて、該ボス部15Aを介して内周側トリム1Bをビス16によりねじ止め固定するようにしている。
【0053】
従って、本実施形態によれば前記第1実施形態の作用効果に加えて、車両の衝突時等に乗員頭部Hが外周側トリム1Aにおける前記エネルギー吸収部30の配設相当部分に干渉して、所定値以上の衝突荷重Fが入力すると、このエネルギー吸収部30を構成する内周側トリム1Bの開断面部9が車体側パネル23との間で座屈変形することにより衝突エネルギーを吸収して優れた緩衝効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態の場合も専用のエネルギー吸収部材を用いないので、レイアウトが困難となることはなく、しかも、部品点数や取付工数が嵩むこともないのでコスト的に有利に得ることができる。
【0055】
なお、前記実施形態では本発明をルーフトリムに適用した場合を例示したが、この他、ドアトリム、リヤサイドトリム、リヤピラートリム等の室内サイドトリムに本発明を採用することができる。
【0056】
また、間接照明装置10の光源12は、前述の他、公知のLEDランプを含むランプユニットを用いた単純な構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0057】
1…ルーフトリム(車両用内装材)
1A…外周側トリム(一方の内装材要素)
1B…内周側トリム(他方の内装材要素)
10…間接照明装置
13…レンズ
21…ルーフ強度メンバ(車体側パネル)
23…ルーフサイドレール(車体側パネル)
30…エネルギー吸収部
δ…トリム端部相互間の隙間
図1
図2
図3
図4